井之頭五郎「ここが見滝原か」 (59)
~G県某所~
五郎「ふぅ、漸く着いたな」
まだまだ残暑が続く時期、ガシッとした体型の男が、スーツと鞄を左手に携えながら汗を拭く。
太陽が照り付け、都会特有であるアスファルトの反射は見てるだけで歩く気が失せる。
駅の構内から出るのを止めてすぐ近くの予約したホテルで冷たいサイダーでも飲みたい…
五郎「いかんいかん」
小さい仕事でも仕事は仕事。
自営業の俺にとっては、商売相手がいるだけでも有り難い。
千里ならぬ万客の道も一歩からだ。
頑張ればきっとお天道様も見ていてくれるだろう。
五郎「それに、今回の相手は少し特別だしな」
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――時間や社会に囚われず幸福に空腹を満たすとき、つかの間、彼は自分勝手になり、自由になる。
誰にも邪魔されず、気を使わず物を食べるという孤高の行為。
この行為こそが現代人に平等に与えられた
最高の癒しと言えるのである。
~孤独のグルメSpecial~
「G県見滝原編」
まどか「おっはよーさやかちゃん!」
さやか「おはよーまどか。今日もリボンが似合ってますな!」
まどか「ウェヒヒ、ありがとう。そういえば杏子ちゃんとほむらちゃんは?」
さやか「ああ、あの二人なら先に行ったよ。明日の学園祭の下準備で忙しいんだって」
まどか「そっか、そういえば杏子ちゃんもほむらちゃん企画を考えた担当者だもんね」
さやか「お陰で私達はのんびり朝学校に行けて楽チン楽チンってね!」
まどか「それは…ウェヒヒ」
五郎「弱ったな…」
駅で案内書を貰うべきだったか。
都会の近くだからと言われてて下調べするの忘れてたんだ…。
周りにちらほら学生が歩いてるから多分通学路なんだろうけど、何処の学校の制服かとんと判らん。
五郎「う~ん」チラッ
まだ時間に余裕はあるが、昼を考えると何とも言えないなこりゃ。
…ええい、仕方ない。多少怪しまれるかもしんないが道を聞くとしよう。
五郎「あの~…」
まどか「は、はにゃ!?」
さやか「!」ビクッ
五郎(そんな身構えなくても…)
まどか「な、なにかご用ですか…?」
さやか「……」
五郎「えーと、道を聞きたくて…」
さやか「あ、はい」
五郎「見滝原中学校ってここからどう行けば良いのかな」
まどか「ああそれなら、ここをこうで…」
…3分後。
五郎(わざわざ地図書いてくれるとは)
五郎「ありがとう。助かったよ」
まどか「いえいえ。すみません、私達学校があるので失礼します」ぺこり
五郎「ごめんね時間を捕らせてしまって」ぺこり
さやか「…行っちゃったね。あの人こんな暑い中スーツなんか来て、うちの学校に用事でもあるのかなぁ」
まどか「うーん、もしかして新任の先生だったりして」
さやか「まぁどちらにせよ、なんというか、THE大人って感じだったね!」
まどか「私もあんな風にスーツを着こなせたら、それはとってもカッコいいなって」ウェヒヒ
五郎「やれやれ、やっとこさ着いたな」
……にしても中学校とは思えないほどの広いキャンバスだ。
外装も外国風を取り入れた…謂わば今時ウケるような佇まい。
きっと中も真新しいに違いない。
流石、都会でも人気のある学校とは聞いていたがここまで立派だとは。納得。
五郎「…俺の時代とは真逆だな」
学生たちの雑多な話を聞き流しながら正門を過ぎ、校舎に入る。
そこで受付らしき事務員に、俺は今回の依頼人である人物の名前を告げた。
五郎「私は井之頭と申します」
五郎「暁美ほむらさんは…おりますでしょうか」
事務員は内線用の受話器を取り、少し話をした後、こう告げた。
「暁美さんの担任の先生が対応しますので少々お待ちください」
五郎「ええ、ありがとうございます」
五郎「…ところで、この学校に喫煙所ってありますか」
事務員「申し訳ありません。当学校は成長期の児童育成の観点から…」ペラペラ
五郎「あ…はい…」
うへー…地雷踏んじゃった。
今日はここまで。
今回の五郎さんのイメージはやっぱり孤独のグルメドラマ版松重豊さんですね。
次はグルメします。たぶん。
~教室~
杏子「おーいほむら、飾りつけの位置はこんなもんで良いか?」
ほむら「白ユリはその高貴な香りと姿で相手を迎える為のお花。だから玄関先…言わば入口に相応しいわ。そんなど真ん中に置いちゃダメよ」
杏子「立派で見栄えも良いしいいじゃん別に」
ほむら「貴女はもう少し花言葉を勉強するべきね」
さやか「おっすおはよう!」
杏子「おう、おはようさん。あんたらもちゃちゃっと手伝ってくれ。ほむらの人使いの荒さにゃうんざりさ」
ほむら「ひどい言い方ね。私はただ今回の学園祭を最高のものにするためだけに立案してるだけ」
ほむら「何事にも対処し最善を尽くす…。それが今まで私が学んだ全てよ」ファサ
杏子「はぁそうですか」
まどか「流石ほむらちゃん!クールなふりして情熱を燃やすなんて」
さやか「意外と熱い一面がありますな~!」
ほむら「そ、そんな訳じゃ」
女子生徒「暁美さん、この小物は何処に置こうか」
ほむら「それはそっち、あれは…」テキパキ
まどか「それじゃ私達も頑張ろっか」
さやか「いっちょ頑張りますか!」
五郎「すみませんわざわざ案内して頂いて…」
早乙女先生「いえいえ全然!暁美さんの知り合いの方なら尚更ですよ」
五郎「はぁ、どうも」
思った通り内装もピカピカだ。
まさか教室が高そうなガラス張りで、机やイスが床下に収納できるスペースまで付いているとは。
渡り廊下なんか、どっかの美術館みたいな造りだな…
早乙女先生「うふふ、最初来られた方はみんな驚きますよね~。私も赴任した最初は床すら歩くのが落ち着かなかったです」
五郎「ははは…。しかしこの建物の設計を考案した人、凄いですね」
早乙女先生「あら、それうちの校長先生ですよ。何でも日本にはない前衛的な学校を目指していたらしくて」
五郎「は、ははは…」
俺には理解出来ない感性…。
早乙女先生「ところで、井之頭さんは暁美さんにどういったご用事なのですか?」
五郎「ええ、実は注文した荷物を届けに来たんです。直接家に出向いても良かったのですが、なにぶん急ぎらしいので」
早乙女先生「そうでしたか、わざわざ御苦労様です。暁美さんもきっと学園祭の準備で切羽詰まってるのかしらね」
五郎「今回の学園祭、先生達のクラスは何をされるんですか?」
早乙女先生「ええ、カフェ的なものをやるらしいです。私もいろいろ考えましたが生徒達が主役なので、敢えて自由にやらせてますね」
五郎「カフェ…ですか」
五郎「あ」
なるへそピーンときたよ。稲妻炸裂。
だからあんな多く注文したのか。
確かに、あれなら使った後は置物にするなり家で使うなり出来るな…。
考えたなあ、ほむらちゃん。
~やがて雑談をしているうちに、教室~
早乙女先生「着きましたよ井之頭さん」
五郎「ありがとうございました。…おっ、やってるやってる」
男子も女子も混ざって話し合いながら、忙しく物を動かしている。
あの赤毛の子とほむらちゃんが指示を出しながらやっているのか。
なんというか、良いチームワーク。
見ているこっちが感心しちゃう。
お陰で教室は既に完成しかけてる感じだな。
早乙女先生「うふふ、みんな頑張ってるわね!暁美さんも佐倉さんもバリバリね」
五郎「しかし男子生徒も一生懸命やってますね。普通なら一人や二人サボりがちなのに」
早乙女先生「ああそれなら」チラッ
さやか「う~ん…」ヨッコラ…
男子「大丈夫か美樹、俺が持ってやるよ」ヒョイ
さやか「お、ありがとう!助かるわ~」ニコ
男子「へへ…」
上条「大丈夫かい暁美さん、ここは僕が」
ほむら「それには及ばないわ。それより、志筑さんのを手伝ってあげて」
仁美「あらあら…私の目の前で浮気ですか、上条くん?」
上条「」
なるほど、いつの時代も男ってのは分かりやすい生き物なんだな。
……って考えてる場合じゃない。
早く荷物を渡して昼にするとしよう。
五郎「お邪魔しま~す…」
生徒達「?」ピタ
あ~…そりゃ固まるか。
もし俺も中学生ならそうなるよ。
杏子「あれ、何で一般人がいるんだ?」
まどか「あ、今朝のおじさんだ」
さやか「ホントだ。やっぱり新任の先生?」
ざわざわ…
早乙女先生「みなさん落ち着いて聞いて下さい!こちらは暁美さんの知り合いの井之頭さんです」
生徒「へー!」
シーン…
五郎(ちょ、先生…いきなり話してそれだけってないでしょ普通!?)
五郎「あ…えと…」
ほむら「先生、井之頭さんがお困りです。後は私が説明します」
ほむら「彼は井之頭五郎さん、外国からの輸入雑貨を販売している方よ」
五郎「ど、どうも」ぺこり
まどか「へー!外国の物ですか!」
杏子「マミが好きそうな仕事だねえ」
さやか「あー分かる。この前も外国製のティーカップが欲しいって言ってたし」
ワイワイ…
五郎(助かった…ありがとうほむらちゃん)
ほむら「それじゃちょっと場所を変えて、例の荷物を…」
まどか「えーずるいよほむらちゃん!私達も見てみたいよ!」
ほむら「そ、そんな大したものじゃ…。当日のお楽しみ…ってことで」ウィンク
さやか「クラスの皆でお金出しあったんだし、私達にも見る権利がある!」
杏子「食いもんかもしれねー」
中沢「どっちかというと、僕も見たいな」
ほむら(ひ、引くに退けなくなったわ…。仕方無い、少し恥ずかしいけどバレないはず)
五郎「良いのかいほむらちゃん」
ほむら「仕方無いですね。確かにこれはクラスの皆のお金で買ったもの、見る権利はありますから」
五郎「分かりました。…よいしょっと」
そう言って五郎は教卓の上にずっと担いできたアタッシュケースを置いた。
ケースの鍵を開ける為に向きを変えて、五郎が鍵を開け、中を確認する。
五郎の一挙一足に視線が集中され、生徒達の緊張と期待が、徐々にと高まってくる。
まどか「一体何なんだろう…♪」
五郎「よし、欠陥はないな」
五郎が小さく頷いたあと、スッと生徒が集まっている側にケースを向けた。
五郎「はい、ほむらちゃん。ちゃんと全員分の数があるか確認してみて」
ほむら「…確かに確認しました。間違いないですね」
まどか「わぁ…!」
仁美「あらまぁ…素敵ですわ」
さやか「これって、ティーカップ?だよね」
五郎が見せたそれはアンティーク風で小振りな白いティーカップだった。
下縁の部分には小さく文字が刻まれている。
まどか「可愛いなぁ」
杏子「くいもんじゃなかった」
さやか「良いチョイスしましたなぁほむら!でもこれ、今回使うやつなの?」
ほむら「いいえ、これはあくまで一人一人の記念品にと注文したの。これなら日常生活にも使えるしちょっとした部屋の飾りになるでしょう」
ほむら「ちなみに、店用のは事前に用意してたから安心してね」
まどか「流石だねほむらちゃん!」
ほむら「…//」ホムホム
まどか「ところで井之頭さん、この下の文字ってどう読むんですか?パッと見、フランス語かな…?」
五郎「お、よく分かったね。意味は…」
ほむら「あ…」
五郎「le souvenir、 ル・スーヴニール、意味は『思い出』だよ」
まどか「なるほど~。…あ、もしかして」
さやか「むふふ、あたしも気づいちゃいましたな~」ニヤニヤ
ほむら(やばい)
杏子「どういうことだ?」
ほむら「ちょ、それ以上は…」
まどか「思い出だよ。今回の学園祭を成功させる為に、みんな同じ目標を持って頑張った。それってきっと素敵な思い出になるんじゃないかって、ほむらちゃんのその思いがこのカップに込められているんだね」
まどか「そうだよね、ほむらちゃん!」ニッコリ
ほむら「……」カァァァァ
さやか(うわ~…ほむら顔真っ赤っか)
杏子(まどか…ちょっとは後で言うとかすれば…聞いたあたしもあれだけどさ)
男子達(ほむらちゃんマジホムホム…)
ほむら「と、兎に角!みんな明日に向けて頑張るわよ!私の気持ち伝わったでしょ!?」
仁美「ええ、美しいほど伝わりましたわ!これが友情なんですね!」
杏子「へっ…独りぼっちは淋しいもんな。良いぜ、一緒にやってやるよ」ププ
男子「おいお前ら急げ、作業再開ッ!」
ほむら「きゅぅ~…//」
まどか「ありがとうほむらちゃん。やっぱりほむらちゃんは、最高の友達だね。…こんな良い物を見つけて頂いた井之頭さんも、私達の為にありがとうございます」
生徒達「ありがとうございます!」
五郎「いえいえ、大切なお客様ですから。君達の学園祭の成功を祈ってます」
早乙女先生「これが青春なんですね…」グス
五郎「…」
早乙女先生の言う通り、これぞ青春。
俺が学生だった頃はこんな穏やかな感じはあんまりなかったけど、これはこれでグッとくる。
男女の壁を越えてひとつの目標に向かう。
良いじゃないか、良いじゃないか…。
俺にも昔、あったんだよ。
こういう純粋で真っ直ぐ生きてた時代が…
ほむら「あの、五郎さん。どうかしましたか」
五郎「あ、悪い悪い」ゴシゴシ
ほむら「ティーカップの件は本当にありがとうございます。足りない分は後で払いますから。…それよりもうひとつの荷物を。もうじきお昼ご飯の時間ですし」
五郎「ああ、あれね…。ちょっと待って」ガサガサ…
五郎「あれ確かここにあるはずだが…」
ほむら「忘れたとか無しですからね」
五郎(やれやれ、それにしても…もう昼か)
五郎(あ…昼…)ハッ
ほむら「五郎さん?」
五郎(感動してたから忘れていた)
さやか「いやー可愛いなぁこのカップ、マミさん聞いたら羨ましがるだろうな~」
まどか「もうさやかちゃんたら」ウェヒヒヒ!
五郎(今の俺は)
杏子「あー腹へった。今日の学食あのメニューあるかな~」
さやか「ああ、あれね。でもさ、あれは争奪戦だし~」
杏子「いんや、今日こそは絶対にあいつを…この腹で迎え打つんだ!」
五郎(腹が…減った…)
五郎「…」テキパキ
ほむら「あの…無言で片付けしないで下さい」
ほむら「しかもめっちゃ早いし」
五郎「ほむらちゃん、後で必ず持ってくるから。君も昼食食べなさい」スタスタ…
ほむら「ちょ…行っちゃった」
ほむら「ほんと、ゴローちゃんは昔っから変わらないわよね」ファサ
五郎「飯…飯…」
あああ…!俺とした事が今日一番の失敗だ。
見滝原の名物、全っ然調べてない!
五郎「完全に八方塞がりだよ…」
五郎「今から探したとしてもほむらちゃんとの約束の時間に間に合わん…」
学生だって忙しいんだ。万事休すか…。
いや、諦めるな五郎。諦めたらそれまでだ。必ず美味い飯にありつける道があるはずだ…!
五郎「待てよ…」
早乙女先生『今だけ限定ですが、学園祭特別で三年生が学食で料理を振る舞ってるんですよね。その中でもあれがまた美味しくて美味しくて…』
さやか『いやぁあれは争奪戦だしね~』
杏子『あいつをこの腹で迎え打つんだ!』
五郎「あれしかない!」
五郎「マミさん特製デミグラスソースハンバーグ定食ッ!」スタスタスタスタ!
次回、孤独のグルメSpecial 見滝原編
『マミさん特製デミグラスソースハンバーグ定食』
お楽しみに。
本日はここまで。
グルメは…片足まで突っ込んだから良しとしましょう。次回五郎節が炸裂します。たぶん。
ユリの花ネタは某コミックからの引用です。
あしからず。
アームロックは…中学生相手なんでしません。
ゴローちゃんは紳士ですからね☆
五郎「えーと学食学食」ウロウロ
五郎「おっ、良いところに案内板発見」
これぞまさに助け船、これ以上迷って時間掛かったら俺、行き倒れしちまうぞ。
五郎「あった、ここか!」
よし、ここまで辿り着けば大丈夫。
ゴールイン。見事空腹に耐えた俺に拍手。
さてと、メインはもう決まっている。
『マミさん特製デミグラスソースハンバーグ定食』
先生が雑談で話してたし、教室から出る前にちらっと聞いた、食べ盛りのあの子たちが奪い合うほどのものだ。
絶対美味いに違いない。
…それにしても、マミさんって一体誰なんだろうか。調理師の叔母さんの名前かな。
五郎「まぁ良いや、早く頼んでしまおう」スタスタ…
なるほど、やっぱり学食、券売機で注文するシステムか。ここは今も昔も変わらんな。
前衛的思想、入るべからず。
五郎「あったな、本日の俺の勝負品…」
ボタンに花柄のシールがあってすぐ判る。
しかし限定30食か、こりゃあ間違いなく争奪戦になるわな。
すまない学生諸君、君らの貴重な一皿、大人の俺が貰ってくよ。
五郎「四時間目の終わり際を突いて買える権利、これぞ大人の特権なり」ポチ…
さて後は食券を渡すだけ…。
いや待て、いまの俺は究極に腹ペコちゃん、本当にハンバーグ定食だけで足りるだろうか。
…無理だ。
五郎「ならここで必要な一手と言えば…」
五郎「これだな、ハムエッグ」ポチ
五郎「それとコッペパンをセレクトだ」ポチポチ
キーンコーン…
五郎「あ、やばい。四時間終了のチャイム」
腹を空かせた野獣達に囲まれる前に退散退散。…あそこで食券を渡せば良いんだな。
マミ「いらっしゃいませ~」
五郎「これ、お願いします」
マミ「は~い!ハンバーグ定食はちょっとだけ時間が掛かりますのでこれを持ってお待ちください♪」
五郎「はい」
マミ「それと、ご飯と汁物はおかわり自由ですので」
五郎「わかりました」
マミ「ふんふんふ~ん♪」
学生服にエプロンしてたあの子、先生が言っていた三年生なんだろうな。
学園祭に合わせて調理実習か何かも授業の一環として兼ねてるんだろう。
しかし特徴的な髪型してたけど、なんかお上品な雰囲気だったな。
杏子「今日こそは肉を食べてやるぜ!」ガルル
さやか「あんたは猛獣かっつーの」
ほむら「まどかは何を食べるのかしら」
まどか「う~ん、昨日はカツ丼だったし今日はパンかなあ」
ほむら「丁度私も同じこと考えてたところよ、奇遇ね」
さやか「昨日も同じやり取り聞いた気がするんだけど」
五郎「うーむ」
暇潰しにメニューのサンプルが並べられてるコーナーを眺めていたんだけど、最初にメインを決めていて大正解。
セットも豊富だし、和洋中のバランスも整ってる。おまけに一品ものも多い。
ここから組み立てるのは至難の技だ。
ほー…デザートにケーキ。
しかもバリエーション豊か。
チーズ増し増しケーキ…そういうのもあるのか。
サールティーローヤーリー
五郎「わわ」
変わった着信音、びっくらこいた。
完成したみたいだな。
よし、窓際の席が空いてるしあそこで食うとしますか。
杏子「やっりい!マミデミハンバーグ定食ゲットだぜ!」
さやか「くっそー!何であんたが買った後に売り切れなんだよ!許さん!」
ほむら「今日はカレーにパンを浸したい気分だわ」ポチ
まどか「パンも良いけど、やっぱりお米が一番!炒飯セットだよ」ポチ-
ほむら「そんな…まどか…」
マミ「はい、お待ちどうさまです!熱いので気を付けて下さいね」
五郎「ありがとうございます」
五郎「よし…」
~見滝原中学校学食ランチ 五郎'sセレクト~
『マミさん特製デミグラスソースハンバーグ定食』
ハンバーグ、ポテト、人参、正に王道ここに極まりけり。サラダ付きがまた嬉しい。
『ハムエッグ』半熟玉子とハムの合わせ技、パンにご飯に何でもござれ。
『コッペパン』昔なつかし、給食の代名詞。一口食べれば青春の味。
五郎「いただきます」
まずはこいつだ、ハンバーグ。
期待はしているが学食は学食…どうかな。
五郎「…」モグモグ…
五郎「…!」ハフ…
美味い。素直に美味い。
とゆうより、予想以上だぞ、これ。
ジューシーなのに油っ濃く過ぎず、それでも噛み応えがある。
しかも肉の噛み応えと一緒に、野菜のシャキシャキという歯応え。加えて微かな赤ワインの風味がまたそそる。
良いじゃないか良いじゃないか…
五郎「うん…」ムシャムシャ…
なるほど、玉葱ともやしを細かく刻んで練り込んでいるのか。
考えたな、ありがとうマミさん。
五郎「ハフ…」カッカッカッ
肉に米、ああ…タマラナイ。
旨味を持った肉汁が俺の食欲をグイグイ駆り立ててくる。
五郎「うむ…」シャキシャキ…ハムシャ
ハンバーグの脇を固めるサラダも頼もしい。
ポテトも良い胡椒加減。
五郎「ずず…」
あ~…濃すぎず薄すぎず、良いまろやかさ。コーンクリーム、選んで正解。
コーン少ないのがちょっと淋しい。
杏子「いっただきまーす!」ニッコリ
さやか「さやかちゃんも負けじと牛カツ定食なのだ~!」
まどか「おいし~い」モグモグ…
ほむら「ああ…いいわ。やっぱりぴたパンが一番ね」ホムシャ…
さて次はハムエッグ、色合いがそそるじゃあないか。醤油を黄身に垂らしてっと…
五郎「うぐっ」アチチ…
うほ、懐かしい味わい。
ガキの時に食べたお袋のヤツにそっくりだ。
学生気分に浸っているいまの俺には、こういうのが良いんですよ。
五郎「…」ムシャムシャ…カッカッカ…
五郎「いかん、米が足りん」ガタッ
杏子「そういえばさっきのおっちゃん、カップ渡したあと教室からすぐに出ていったけど急ぎの用事でもあったのかな」
さやか「あれね。すっごいポカーンとした顔の後に、急に帰り支度してた時ね」ムシャムシャ
まどか「やっぱり大人だから忙しいのかな」
ほむら「いえ、ゴローちゃんは昔っからああいう人なの。何というかしら…自分の欲望に正直な人ね」
杏子「昔からって…」
ほむら「あら…私ったら言い忘れてたのね。彼は私の親戚よ」
さやか「えー!?」
まどか「全然気づかなかった…」
ほむら「といっても、彼からすれば姪っ子に当たるから近くはないんだけどね。それでも、ゴローちゃんは私が病弱だった頃、よく美味しいものを持ってきてくれて、色んな話をしたの」
五郎『ほむらちゃん、これ、この前話してたスイーツ』
メガほむ『ゴローちゃんいつもありがとう…。でも私、甘いものはお医者さんに控えて下さいって』
五郎『あらら…。それなら次は煎餅にするよ』
メガほむ『あ…出来たらお餅が食べたいな』
五郎『う~む』
杏子「ゴローちゃん、良いヤツなんだな」グスッ
さやか「えっ今の泣きどころなの」
マミ「はーやっと一段落だわ」
まどか「お疲れ様ですマミさん」
マミ「本当、肩が凝るし疲れるし仕方無いわ」
ほむら「その割には良い表情ね」
マミ「ふふ、まあね」
杏子「おうマミ、お疲れ様さん!やっぱマミの飯が一番うめぇ!」ムシャムシャムシャ…
マミ「こら、食べながら喋らないの」
まどか「ここ最近は先生や外部の人もご飯食べに来るくらいだし、ほんとマミさんさまさまですよ」
さやか「ほらあのリーマンだって、マミさんの手料理にメロメロですからね!」
五郎「………」チギリチギリ…
俺が米だけじゃなくパンを選んだ理由。
まさにこの為だけにある。
学生の頃よくやっていた、給食にパンが出た時の醍醐味、如何にパンを上手く使うか。
しくじったら最後、貴重なパンを無駄にしちまう。このスリルが堪らない。
まずはコーンクリーム、次にわざと残したハンバーグとサラダだ。
五郎「はむ」モチモチ…
あ~…幸せ。
コッペぴたパン、間違いなし。
マミ「ふふ、やっぱり作った料理が美味しそうに食べられるのって幸せね」マミマミ
さやか「マミさんどうせなら、作ったのは私です!って、声かけたらどうですか。きっとビックリしますよ~」
マミ「いえ、それは駄目よ美樹さん。だって」
マミ「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず
自由で、なんというか救われてなきゃあダメなのよ。独りで静かで豊かで…」
さやか「は、はあ…」キョトンヌ
杏子「あたしには分かるぜ…その気持ち…」
ほむら「ああ、分かるわ…」コクコク
まどか「わけがわからないよ」
五郎「よーし」
コッペパンにハンバーグとサラダ、玉子を合わせて、なんちゃってハンバーガー。
五郎「はぐ」ムシャ…ハムシャ…
和と洋、パンを挟めばみんな仲良し。
米に乗っかれば関取級。
五郎「さて…負けてはいられんな」
五郎「…」カッカッカ…ムシャムシャ
ヒタヒタ…モグシャ…
シャキシャキシャキ…
ゆとりやら悟りやら、俺達大人はつい自分の世代と違うと、区切りたがる。
だから子供達の本当の気持ちや考えを汲み取る事に目を背け、昔は良かった、いまの子供は…なんてぼやいてしまうが、それは間違いだ。
俺達だって彼らと同じ歳の頃、周りの大人から同じ事を言われてきたんだ。
だが、そんな小言を突っぱねて、頑張ったからこそ今の豊かな日本がある。
だから今を生きる子供達は、熱い飯をもりもり食べて育っていって、俺達世代を追い抜いて欲しい。
いつの時代だって、将来を絶望する老人より未来に希望を馳せて一生懸命生きている若者が、無限に可能性を秘めているんだ。
五郎「あー…」
五郎「ごちそうさまでした」
杏子「ごちそうさまでした!」
マミ「はいはい、お粗末さま」ニッコリ
ほむら「ふぅ…美味しかったわ」フキフキ
まどか「美味しいご飯も食べたことだし、午後も頑張って、明日最高の学園祭にしなくちゃね!」
ほむら「ふふ、そうね」
さやか「その前に、別腹であま~い物が欲しいですな~」
マミ「美樹さんったら、サービスしたくなるじゃない」
杏子「賛成賛成!だってほら」チラ
五郎「…」スタスタ…
~一分後~
五郎「……ゴクリ」スタスタ…
まどか「チーズ増し増しケーキ持ってるよ」
ほむら「ほんと甘いもの好きよね…」
杏子「だからあたしらもティータイムさ」
マミ「もう、仕方無いわね…今回だけよ?」
四人「わーい!」
その後、俺はほむらちゃんにもうひとつの品物を渡した。
素朴ながらも味わいがあるオルゴール、メロディは日本人が唄っていたやつ、『愛を込めて花束を』
大事な友達の誕生日記念に渡すらしい。
きっと喜んでもらえるはず。
明くる日、何十年ぶりかに俺は学園祭を眺めてきた。
学生が手書きで作ったチラシや看板、出店や劇など、見るものひとつひとつに当時学生だった時の気持ちが甦ってくる。
彼女達のお店におじゃましようとも思ったが、気を遣わせてしまいそうだから遠慮した。ただでさえ頑張ってるのに、知らないおじさんに付き合わせるのも悪いしな。
五郎「…それにしても、男子がワイシャツなのは分かるが、なぜ女子はあんなセーラームーンみたいな格好なんだ?」
まどか「あれ、杏子ちゃん何であんなにいっぱいいるんだろ」
さやか「マジで魔法使うのはやめろってば杏子!」
夜、風見野市。
五郎「いただきます」
うん、こいつは良い。
オーソドックスながらも味わい深い味噌ラーメン。こういうのが侮れない。
ネギたっぷりのスープの上にシナチクに味染み玉子、海苔、役者揃いだ。
五郎「うむ…うん…」ズズー
おや…よくよく店内を見ると、この店の名物『特大ロッソ盛りラーメン』を平らげたのって、あの赤毛の子じゃあないか。
満面のピースに笑顔、流石だ。
五郎「ハフ…」ズゾゾゾー
五郎「ごちそうさまでした」
カチカチ…シュボ…
五郎「ふぅ」
星空が綺麗だ。天の川だって見通せる。
…さてと、明日は久々なお休み、早くホテルに戻って風呂にでも入るとするか。
五郎「あっ」
あちゃー、絢子との約束、すっかり忘れてた。宅飲みに良いグラスを2つと、綺麗なリボン、確か明日までだったよな…。
娘さんの誕生日に合わせてだから、今からやらないと間に合わないか。
五郎「やれやれ…」
徹夜に備えて、帰りに何か買ってこうか。
確か、駅を降りてすぐの牛筋煮込み、美味かったよなぁ…。
おしまい。
これにておしまい。
五郎さんの食べている場面は、お好きなドラマ版の曲を思い出して貰えるとほんの少し臨場感があるかもしれない(適当)
さて、夜食にお茶漬けと行きますかな…
このSSまとめへのコメント
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