井之頭五郎「喫茶店モナリザのランチ」 (48)

五郎(不思議な感覚と言ったら人並みだろうか。一言で表すなら『夢見心地』だった)

五郎(知らないはずの石畳の通りを歩き、そして知らないはずの街並みを通り過ぎ)

五郎(かすかな空腹感を頼りに足を進め、たどり着いたのはアンティークな店構えをしている喫茶店)

五郎「……俺はまだねぼけているのだろうか。今一、頭がしゃっきりしない」

五郎(特段疲れているわけでもない、しかし特段元気と言うわけでもない)

五郎(ボケているわけでもないのだが、俺はさっきまで何をしていたっけか……仕事? ではないな……)

五郎「いかんいかん、きっと空腹のせいだな、これは」

五郎(この歳になっても身体はいつでも正直だ。おあつらえ向きに喫茶店もある。軽く何か腹に入れるか)

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カランコローン

ベネット「いらっしゃい――あら珍しい、見ない顔だわ」

五郎(見たところこの店の……主人だろうか? おしとやかなイギリス美人といった感じだ)

五郎「今の時間、えーと、ランチ……やってますかね?」

ベネット「ここは特にランチとかは決めてないの。だからメニューから好きなものを注文していって」

五郎「どうも」

ベネット「ここに来るのなんて、暇を持て余したおじいさんぐらいだもの、ふふ」

五郎(ランチには少し早かっただろうか、あるいは偶然か、客は俺以外にいないようだ)

ベネット「いつもは朝から常連さんたちが居着いてるのだけど、今日は少し遠くまで写生に行ったみたい。あ、好きなところに座ってちょうだい」

五郎(写生で遠出か……健康的だ)

五郎(メニューは……紅茶、お茶菓子、サンドウィッチにスパゲティ。少し洒落た喫茶店のイメージそのまんまだ)

五郎「それじゃあ、紅茶をまず一杯」

ベネット「紅茶ね。……あ、そうそう、丁度、今朝にアッサムを仕入れたばかりなの。ミルクティーなんてどうかしら?」

五郎「ミルクティー……うん、じゃあそれで」

五郎(あまり洒落を決め込むような性質ではないが、郷に入ればと言うものだろう)

ベネット「ミルクティーね。常連さんたちがご不在だし、シャーリーを呼んでもよかったかもしれないわね」

五郎(シャーリー……知り合い? お友達……娘さんかな?)

カランコローン

五郎「ん?」

シャーリー「す、すいません。営業中に失礼します……」

ベネット「あら! 噂をすればってものかしら。どうしたのシャーリー? 何か急ぎの用事?」

シャーリー「実は『ベネット・クランリー様に急ぎでお話が』と言われまして……今すぐにと頼み込まれて、こうして呼びに来た次第でして」

ベネット「モナリザに来ないで家に直接……? 内密なお話かしら」

シャーリー「なんでもお知り合いのサーの使いと仰っておられましたが」

ベネット「……あっ! もしかしてあの悪戯おじ様! ごめんシャーリー、ちょっとだけお留守番頼めるかしら!」

シャーリー「へっ? は、はいっ」

ベネット「すいませんお客様! 少しばかり席を外しますわ! シャーリー、ご注文を受けたらお願いね!」

五郎「あっ、どうも、お構いなく」

シャーリー「道中お気を付けていってらっしゃいませ」

ベネット「悪い予感が当たらないといいけどぉっ……!」

バタバタ カランコローン

シャーリー「……」

五郎「……」

五郎(メイドだ……それも子供じゃないか)

シャーリー「えと……何かご注文はございますでしょうか?」

五郎「えっ。あ、あー……そうだ、紅茶を頼んでた。ミルクティー」

シャーリー「畏まりました」スッ

タッタッタッタ…

五郎(……嵐が過ぎ去ったかのように、いつの間にかメイドさんと二人きりになっていた)

五郎(輸入雑貨という商品を扱う以上、顧客は小金持ち相手が多い。顧客先の家で家政婦さんやお手伝いさんを見たことはある、が)

五郎「……しっかりした子だ」

五郎(テキパキと紅茶の準備をしつつ、特徴的かつベーシック……というよりかは、由緒正しきメイド服を着ているその姿は、家政婦よりもメイドと言う言葉が似合った)

五郎(見たところ小学生と中学生の間……12歳から14歳の間ぐらいだろうか。店主さんが言っていた『シャーリー』というのはこの子のことだろう)

シャーリー「……?」

五郎「ん……?」

シャーリー「いえ、こちらを見ていましたので、ご注文かなと」

五郎(いかん、そんなにじろじろ見ていたか)

五郎「ああ、いや。その年で、それもメイドってのが珍しくてね」

シャーリー「歳についてはたまに……メイド、珍しいですか?」

五郎「少なくとも自分は……本職は初めて見たな」

シャーリー「そうでしたか」

シャーリー(ステップガールの人が多かったのかな……?)

五郎「あの人のメイドなのかな?」

シャーリー「はい、半年以上程前から」

五郎(この歳でか……何か事情がありそうだ)

シャーリー「……」

五郎「……」

五郎(まいった……話が続かない)

五郎(こうして他に客もいない空間に二人きりか……いつもは気にしないのだが、相手が相手のせいだろうか、どうにも気まずい)

シャーリー「……]モジモジ

五郎(この子も微妙にシャイなのだろうか、緊張しているのか気まずいのか。勝手ではあるが話を持ちかけなければならない気がしてくるから不思議だ)

シャーリー「……あっ」

五郎「ん」

シャーリー「お腹……空いてませんか? もうすぐお昼になりますから」

五郎「……そうだ、ランチ」

五郎(そういえば、元々空腹だからここに入ったわけだし。この子に助けられたな。すっかり頭から抜けていた)

五郎「何か作れるものはあるかな?」

シャーリー「このお店の料理なら全部出来ますよ。一部のメニューは私が考えたものですし」

五郎「そいつはすごいな……」

五郎(それじゃあ遠慮なく選んでみるかな? なんとなくこの子が作る料理に興味が出てきた)

五郎(せっかくミルクティーを頼んだわけだし――)

五郎「それじゃあ、鳩のパテと、デザートにティプシーケーキ、お願いできるかな」

シャーリー「……」

五郎「……もしかして駄目だった?」

シャーリー「あっ! い、いえ! 今すぐ用意しますね!」

パタパタ

五郎「……変なもの頼んじゃったかな?」

五郎(鴨のパテはお客さんとの付き合いで食べたことがあるんだが、鳩のパテは見たことがないな)

五郎(……ティプシーケーキってお酒の匂いが強いって聞くが、さすがに俺でも大丈夫だよな……?)

〈20分後〉

シャーリー「お待たせいたしました、鳩のパテとティプシーケーキのセット。サービスのパンとスコッチブロスになります」

五郎「お、きたきた」


鳩のパテ…野菜の彩りが目新しい二枚の切り身。添えられているソースがよく映える。

ティプシーケーキ…生クリームとメープルシロップのデコレーションが食欲をそそる。

パン…山型の形をしたイギリスパン。

スコッチブロス…麦と豆が煮込まれたシンプルなもの。

五郎(……予想を超えて見た目が綺麗だ、いや、うまそうだと言うべきだろうか)

五郎「美味しそうじゃないか、いい感じの量だ」

シャーリー「あ、ありがとうございます」

五郎「いただきます、と」

五郎(まずはスープを一口……豆はひよこ豆か。ん? この豆と一緒に入ってるのは――)ズズズッ

五郎「なるほど、麦かこれは」

五郎(確か麦にはデトックス効果があるとかなんて話を耳に入れていたが……うん、スープで食感がある、いいじゃないか)

五郎(学生の頃の弁当でよく見た冷や麦飯を思い出すな。今となってはあの少し臭い飯もありだと感じる)

五郎「これが鳩のパテ……と黄色のソース」

五郎(まずはそのまま一口――うんうん、ぷりぷりでかまぼこっぽいこの感じ。それにこれも中の野菜がちょっとだけ大きくて噛みごたえがある)

五郎(次はこの黄色いソースを付けて……ん)

五郎「ちょっと癖が強い感じ。いけるいける、これはうまい」

五郎(パテ自体がシンプルな味だからいい感じに混ざってる。一瞬辛いとも思ったけど、甘味も強いときた)

シャーリー「……」ソワソワ

五郎「……?」

シャーリー「!」ソソソッ

五郎(こっちを隠れながら見てる……ああ、それもそうか)

五郎「結構うまいよ、これ。俺よりも数倍料理が出来てる」

シャーリー「あっ……! あ、ありがとうございますっ」

五郎「普段から料理してるのかい?」

シャーリー「はい。けどその、自分の御主人様以外に振舞うのはあまり慣れてなくて……」

五郎(料理はできてもやはり子供といったところだろうか。……にしては大人びてる気もするが)

五郎「お客さんもいないんだ、一緒に食べるかい? 二人分に分けたらちょうど良さそうだ」

シャーリー「えっ!? で、ですけど……」

五郎(ずっと立ちっぱなしのそわそわしっぱなしを放っておくのもなぁ……)

五郎「君もお腹が空いたろう、ほら、遠慮せず」

シャーリー「……そ、それでは失礼ながらもお言葉に」モジモジ

五郎(まぁ普通はお腹も空くだろうなぁ……仕事に真面目な子だ)


〈数分後〉

シャーリー「んしょ……」

五郎「いつも昼は?」

シャーリー「えと、厨房を好きにしていいと言われているので、簡易的なものをひとりで。家事の合間に」ヨイショット

五郎「ということは君はオールワークか」

五郎(器量がいいのか慣れているのか。……俺にはある意味真似出来んな)

五郎「んむ……このパテのソースはなんだろう?」

シャーリー「それはハニーマスタードソースですね。常連さんに教えてくれたんです」

五郎「なるほど……」

五郎(甘いマスタード……チキンとかにかけるよな。パテにもありなのか、なるほどなるほど)

シャーリー「パテは私もよく作ってまして……実はクランリーさん――いえ、先ほどの主人様の好物も、鳩のパテとティプシーケーキで」

五郎「これは偶然だな……道理でうまいわけで」

五郎(しかしこう、誰かと話しながら食事をするのに新鮮さを覚える。いつもと違うのは間違いないが――)

シャーリー「余ったパテはパンにハニーマスタードを塗って折り畳みながら挟むとおいしいんです」

五郎「ほう?」

シャーリー「お恥ずかしながら、時間がない時はこれをすることが多くて……」

五郎「ふむ、折り畳んで――」

五郎(なるほど、んむ。これは確かにうまい。ファストフード感覚だ)

五郎「でもちょっと贅沢をした気分だ」

五郎(パンにマスタードという組み合わせもさることながら、パテの野菜やマッシュルームのおかげで華やかな味がする)

五郎「それにパンとスープは合う」

シャーリー「……♪」

五郎(――まぁ、たまには誰かと、っていのもありだな)

五郎(量的には少し物足りないが、俺の舌は気持ち満足げのようだ。後はデザート)

五郎「――さすがアッサム、ミルクティーでも香りが強い」

シャーリー「あっ、でしたらティプシーケーキをどうぞ」

五郎「そうしよう――ああ、なるほど。ブランデーの紅茶割りか」

五郎(おそらくブランデーの香りも強いんだろうが、だからこそミルクティーと一緒にか)

シャーリー「……」ジー…

五郎「……?」

シャーリー「……おいしそうに食べるなぁ、と」

五郎「そう? 初めて言われたな」

シャーリー「作っているのは私ですから……嬉しい、です」

五郎「それはよかった」

シャーリー「今日はお仕事でこちらに?」

五郎「ん? ああ、そうか、地元民には見えないよな。今日は休みでなんとなく。いつもは輸入雑貨の仕事を」

シャーリー「輸入雑貨……?」

五郎「外国で売られてる家具を取り扱うんだ。君ぐらいの歳だと――」

シャーリー「シャーリー、シャーリー・メディスンっていいます。まだ自己紹介してなかった……」

五郎「……そういえば。ゴロー・イノガシラ。好きに呼んでくれ」

シャーリー「ゴロー……」

五郎「うん……シャーリーぐらいの歳の子に分かり易い例だと、アンティークの人形もこの前取引したな」

シャーリー「人形……?」

五郎「ああ、古くて状態がいいものがたまに。それと――そうそう、アンティークの人形用の家具を売ったこともあったな」

シャーリー「人形用の家具……!」

五郎「……もしかして、そういうの好き?」

シャーリー「は、はいっ。部屋に飾ってある人形が……」

五郎「知り合いの骨董屋を紹介しようか? そういうの探せばまだあるはず」

シャーリー「見せていただければっ……! 後は自分で作ってみたいです」

五郎「……作れるのかい? つくづく器用だ」

シャーリー「いえ……私はそれしか出来ませんし」

五郎(同じ歳の子たちで同じくらいできる子は果たしてどれくらいの数か……)

五郎「俺もまだガキだった頃は色々付き合わされたっけかなぁ……やっぱり、親からそういうのは教わるのかい?」

シャーリー「いえ、親は……」

五郎「……」

シャーリー「……」

五郎(……いかん、また話が途切れた。この感じ、大阪のたこ焼き屋台の時を思い出す)

五郎「……」モグモグ

五郎(あ、冷めてもうまいな。このミルクティー)

五郎「――あれ?」

五郎(ポケットの中に……饅頭? いつの間にこんなの入れてたんだろう?)

五郎(……あっ、そうだ。これ確か贔屓の相手にもらった土産ものだっけか)

シャーリー「……マフィン?」

五郎「え? ああ、これはマフィンじゃなくて、酒饅頭。確か新潟のだったかな……」

シャーリー「???」

五郎「って、新潟とか饅頭って言っても分からないか。あげるよ、ひとつしかないけど」

シャーリー「……」ジー

シャーリー「……ありがとうございます」

シャーリー「……」モグモグ

シャーリー「ちょっと不思議な香り……でもフワフワしてる……! 美味しい」

シャーリー「中のは……甘いソース? ジャム?」

五郎「それは餡子。香りは酒粕というもので……いわば、これと同じかな」

シャーリー「ティプシーケーキと同じ?」

五郎「中にお酒が入ってるのさ」

シャーリー「……」ナルホドナルホド

五郎「洋酒じゃなくて、日本酒なんだけど。俺が下戸なことを聞いて、よくもらうようになってね」

シャーリー「……ゲコ?」

五郎「それだと蛙みたいだな。つまり、お酒が苦手ってこと」

シャーリー「お酒が……紅茶割りはどうでしょうか?」

五郎「紅茶割りとなると……これ(ティプシーケーキ)みたいなのか」

シャーリー「私もお酒は苦手で……でも紅茶とか、アプリコットティーの中にちょっとだけお酒を入れると、香りがよかった気がします」

五郎「ほう……? アプリコットか、初めて聞いたな」

シャーリー「ハーブティーは香りが強いですのでオススメ、です、はい」

カランコローン

ベネット「ふぅ……よかったわぁ、大事じゃなくて。焦って損しちゃった」

シャーリー「おかえりなさいませ。……水、飲みますか?」

ベネット「ごめんなさい、お願いするわ。汗かいちゃったし」

シャーリー「かしこまりました」トテトテ

ベネット「ごめんなさいねぇ、慌しくしちゃって」

五郎「いえ、お構いなく。ランチももらいましたし。こちらも色々あの子とお話しましたし」

ベネット「あら? あの子が?」

五郎「ええ」

ベネット「あら珍しい。あの子少しだけ人見知りする性格だし、あの子から話しをするのって多いわけじゃないの」

五郎(それは確かに……)

ベネット「あなたのことが気に入ったのかしら。仲良くしてあげてくださいね」

五郎「まぁ、その、自分でよければ」

五郎(色々と釣り合わないとは思うが……まぁ、いいかな? 何かと楽しかった、気がする)

シャーリー「どうぞ、氷で冷えてますので」

ベネット「あぁ、ありがと……ふぅ、もう、らしくなく走り込んじゃったわ」

五郎「それでは俺はこれで……支払いお願いします」

ベネット「ああ、いいのいいの。シャーリーに任せちゃったし、お代はいらないわ」

五郎「いいんですか……?」

ベネット「シャーリーの相手もしてくれたみたいだしね?」

シャーリー「は、はい」コクコク

五郎「そうだ……これ、気が向いたら」

ベネット「あら、名刺かしら?」

五郎「輸入雑貨を扱ってるので」

ベネット「ご丁寧にどうも。そうねぇ、今度シャーリーの部屋に家具でも入れようかしら」

五郎「どうも。かわいいの揃えておきますよ」

シャーリー「あ、あの!」

五郎「ん?」

シャーリー「……ありがとう、ございました」

五郎「こちらこそ。ごちそうさま」

カランコローン

ベネット「……随分仲良くなったみたいね?」

シャーリー「ゴローさん、って言う人らしいです」

ベネット「ゴロー……珍しい名前。もしかして日本の人かしら?」

シャーリー「……不思議な人、だったなぁ」

シャーリー「……マンジュー」

ベネット「あはは……シャーリー?」

ベネット「?」

ベネット「……お腹すいちゃった。お願い、できる?」

シャーリー「ふふっ、はい。ただいま」


~~~~~

[現代/事務所]

五郎(――不思議な夢を、見ていた気がするなぁ……)

五郎「見ていた夢を覚えていないことはよくあることだけど、うーん……」

五郎(知り合いの骨董品店で、つい買ってしまった……アンティークの人形)

五郎「どうしたものかなぁ……」

五郎(何を思ったのか。……懐かしさ? 興味? その知り合いに強くすすめれたっていうのもあるけど)

五郎「百年物の人形かぁ……よほど大事にされたのか、保存状態もいいし」

五郎(刺繍されてるこれは……マリー。名前かな?)

五郎「いかんいかん、腹が空いてるから変なことも考えるんだな。このもらいもののブランデーもどうしたものか……」

五郎「――そうだ、この前もらった紅茶で割ってみるか? それがいい」

五郎(なんでこの組み合わせが思いついたかはわからないが、酒を少なめにすればいける気がする)

五郎「まだ机仕事が残ってるし、なにか甘い物……うん、こだわって前にもらった酒饅頭がまだ残ってたはず」ガサゴソ

五郎「――あれ?」

五郎(饅頭、ひとつだけなくなってる。……いつ食べたっけなぁ)

五郎「……思い出せん、気にしないことにしよう」

五郎(饅頭は、軽く炙るとうまいんだよなぁ……よし、軽く贅沢だ)


~~~

五郎「炙った酒饅頭、ブランデーの紅茶割り。なんだか気分は飲兵衛だ」

五郎(主食が欲しくなる……まだ腹が減ってたらコンビニに行くとしよう。スープでも買って)

五郎「……焼いた饅頭って、ケーキっぽいんだなぁ。気分はイギリスだ」

五郎(……この人形も、イギリスから流れてきたって言ってたなぁ)

五郎「……お前の持主は飲兵衛だったかい?」

五郎(なんて……そんなはずもないか、子供だろうし)

五郎「乾杯」カラン ゴクッ

五郎「……やっぱり、お酒はお菓子でいいな」

五郎(少し不思議な気分だったが、その人形を眺めながら飲んだ紅茶割りの香りは、充足感とちょっとの懐かしさを感じた――)


~~~~~

[エドワード朝時代/喫茶店モナリザ]

ベネット「……うーん、やっぱり思い出せないわねぇ」

常連の老人「どうしたい、そんなうんうん唸って」

ベネット「いやね、店の引き出しから名刺が出てきたのだけれど、いつもらったのかも、誰からもらったのかも分からないのよねぇ」

常連の老人「……なんだこりゃ、これどこの言葉だ?」

ベネット「多分、日本語っぽいなぁとは思うのだけれど……」モグモグ

常連の老人「で、その食べてるのはなんだい?」

ベネット「うちのメイドが作ったお菓子。『マンジュー』って言うんだって」

常連の老人「……マンジュー?」

ベネット「ええ、マンジュー」

常連の老人「マンジューねぇ。……ところで、客の分は――」

ベネット「2ポンド」

常連の老人「あ、やっぱお金取るのね」

ベネット「これ、風味が違うティプシーケーキみたいで好みなのよね!」

常連の老人「客の前で堂々ティータイムとはさすがだぁね……」

[ベネット・クランリー宅]

シャーリー「……サケ・マンジュー、難しい」

シャーリー(いつ、どこで、なんで覚えたのかは分からないけど……マンジューを作ってると、不思議な感覚を覚える)

シャーリー(懐かしい? ……楽しい、かな。多分)

シャーリー「……ブランデーの紅茶割り、かぁ」

シャーリー「……」ゴクッ

シャーリー「――やっぱり、お酒はお菓子でいいかなぁ」


―fin ―

一発ネタにお付き合いいただき、ありがとうございました
孤独のグルメは漫画が新装版で好評発売中、
ドラマも今やシーズン4です、明日の夕食はたこ飯に決定です
漫画シャーリーも二巻まで絶賛発売中
お腹を空かせたい時は孤独のグルメ、可愛いメイドでほっこりしたい時はシャーリーをどうぞ

良かった
孤独のグルメ2巻の発売日はどうなったんだ…

>>45
焦るんじゃない、俺は腹が減ってるだけなんだ。

ドラマを見てゆったり腹を空かせながら待つとしましょう

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