春香「765プロ読書週間ですか?」 (30)


P「そうだ。実は教育番組の仕事が来てな。お前達に本を推薦して欲しいそうだ。その為の本をこの一週間で見つけてきてほしい」

響「そういうことなら自分に任せるさー!自分これでも読書家なんだぞー!」

P「ライトノベルはダメだぞ」

響「えーなんでさー!プロデューサーもライトノベルは読書じゃないとかいう口か!」

P「いや……そんなことないが番組側の意向なんだ」

響「そうなのか……いっぱい紹介したいのあったのに残念だぞ」

P「後で俺が聞いてやるって」
 
響「本当!?じゃあオススメいっぱい持ってきちゃうからなー!」



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亜美「兄ちゃん兄ちゃん!やまだゆーすけはいいのー?」

P「うっ、これまた微妙なとこをついてくるな……」

真美「ラノベではないっしょー!」

P「まぁ番組側からは特に言われてないしな。よしとしよう。ただ、あまり残酷なのはやめてくれ。山田悠介の中でもマイルドなのなら許可しよう」

亜美「やったー!」

P「よし、さらに付け足そう。残酷なのとか性的表現が過激なのはやめてくれ。それに引っかからなければジャンルは問わない。各々好きな本を持ってきてくれ」

全員「はーい」

やよい「せーてきひょーげんってなんですかー?」

伊織「やよいは気にしなくていいのよ」

P「来週の月曜にチェックするからな。忘れるなよー」



ーー1週間後


P「さて、1週間経ったわけだが。どうだ皆、本は持ってきたか?」

全員「はーい!」

P「よし、じゃあまずは春香からだな。見せてくれ」

春香「はいっ!私が持ってきた本はこれです!」

律子「太宰の『女生徒』……一見春香にピッタリそうだけど、主人公の性格なんて春香と真逆だし、読みづらくなかった?」

春香「実は私も最初は『女の子の普通の一日を切り取った作品』としか聞いてなくて、もっと明るい感じの話かなって思ってたんです」

春香「でも読んでみたらちょっと違くて、私なんかと違って主人公は日常の中でも色んなことを考えているんです。何気ないことでも……例えば草むしりをしているシーンから、読んでる側が不自然に感じないように女性の感性の話になってたりするんです」

春香「でも本当は、そういった色んなことを私も普段考えてるんじゃないかって思うんです。記憶に残らないから忘れているだけで、文章にしないからわからないだけで」

春香「もちろん、私はあんな風に難しい哲学的なことは考えられませんし、綺麗な女の先生を見て『風呂敷みたいにキレイ』なんて表現浮かんできませんけど……たはは」

律子「すごいわね、春香。1回読んだだけでそれだけの場面を覚えてて感想も言えるなんて」

春香「1回じゃないですよぉ、何回か読み返してます。なんか『すごく面白い!』っていう本じゃないんですけど多彩な表現とかがついつい何度も読ませたくしてるっていうか……」




P「俺も『女生徒』は太宰の中でも好きだぞ。ところで春香、何年か前までジャンプで連載してた『バクマン。』って漫画知ってるか?」

春香「あっ、テレビでアニメやってたのを少し見たことがあります」

P「その中で漫画家の主人公二人のうちストーリー担当の高木秋人ってキャラクターが言った台詞があってな」

春香「どんなですか?」

P「『何気ないシーンを面白く描ける漫画家は本物の天才』だと思うっていう台詞だ。言い回しまでははっきりとは覚えてないんだが、太宰のそういった天才っぷりが顕著に現れてるのがこの『女生徒』って作品だと思う。まぁ太宰は漫画家じゃなくて作家だけどな」

春香「それわかるかもしれません……もし私が今日一日あったこを面白く書けっていわれてもあんなふうには書けないと思います。それこそただの日記になっちゃいそうです」

律子「しかもそれをフィクションな上、当時30のおっさんが書いてるっていうのがすごいわよね」

小鳥(30がおっさん……ていうことは私もあと2年で……ぴよぉ……)

P「よし。春香はオッケーだ!よく読んできたな!」

春香「ありがとうございます!」



千早「次は私ですね。どうぞ」

P「『女歌』………?読んだことないな。律子、知ってるか?」

律子「私も知りません……作者は誰なんですか?」

P「中島みゆき……?あの有名な歌手と同姓同名なのか」

千早「いえ、彼女本人が書いた小説です」

P「えっ、中島みゆきって本も書けるのか?」  

千早「彼女は元々国文学科の出で、国語教師の資格も持っていますから。そういった教養とセンスが相まってこそ素晴らしい歌が生みだせるのだと思います」

律子「よく知ってるわね千早。中島みゆきのファンなの?」

千早「ファン……というのとは少し違うかもしれません。彼女は自らの歌声で感動を生み出すだけじゃなく、多くの歌手に楽曲を提供して、しかもそのほとんどを大ヒットさせて人を幸せにしているんです。私がもし彼女だったら……そんな素晴らしい歌を手放したくはありません。それができる彼女を歌手としてだけではなく人として尊敬しているという方が適切かもしれません。」

律子「そういった風に思えるのも千早がそれだけ歌を大切にしているからよ」

P「そうだな。それに千早も歌を歌うこと以外でも人を幸せにしているぞ」

千早「アイドルとしての活動のことですか?……もちろんそれを目指してはいますが、私にできているかどうか」

P「できてるさ。それにそれだけじゃない。もっと身近なところにも千早が幸せにしてる人はいるじゃないか」

千早「えっ……」

春香「そうだよ、千早ちゃん!」

千早「は、春香っ」

全員「うんうん!」

千早「みんなっ……!」

小鳥「あのー、すごいいい話のところ申し訳ないんですが、本の紹介は……」

律子「空気読めませんね、小鳥さん」

亜美「そんなんだから結婚できないんっしょー」

小鳥「ひ、酷くないですか!?」





P「まぁ、小鳥さんの言うことももっともだ。空気は読めてないけど」

小鳥「プロデューサーさんまでっ!?」

P「千早、内容の紹介をしてくれるか」

千早「わかりました」

千早「この本は彼女の書いた初の書き下ろし小説なんです。様々な女性にスポットライトを当てた短篇集で構成されているんですが、その女性たちというのが、歌手の華やかな姿に霞んでしまうコーラス・ガールやコンサートツアーを支える裏方スタッフなど他の小説では物語の主人公にはなりえないような人たちなんです」

千早「実はこの小説は彼女が上京してからの8年間の実体験だと言われているんですが、ジャンルとしてはフィクションになっているんです。どこまでが実際にあったことで、どこからが虚構なのかは未だにはっきりしていないのですけど、それでも彼女の感受性の豊かさや他人に対する誠実さなどが伝わってきて、彼女が往年のスターと呼ばれる程の歌手である理由がわかるような気がするんです」

P「意外だな……中島みゆきって曲も暗いしメディアにも出ないし、もっとなんていうか人間味のない人かと思ってた」

千早「そんなことないですよ。彼女がメディアに露出しなくなったのは、上京したてでテレビに初出演した時に何もわからず要領が悪かったのを、スタッフが偉そうにしているのだと勘違いし陰口を言っているのを聞いてしまったことがトラウマになっていると、他の著書で語っていました。私もテレビへの初出演はあまりいい思い出ではないので気持ちはわかります」

P「すまなかったな千早……」

千早「すいません。プロデューサーを責めたつもりはなかったんです」

P「いや、いいんだ。続けてくれ」



千早「わかりました。それに彼女は自らがパーソナリティーを務めたオールナイトニッポンではとても軽快で明るい話し方をされていたんですよ。彼女は今も『中島みゆきのオールナイトニッポン 月イチ』と題して月に一回ラジオ放送を行っているのでよかったら聞いてみてください」

あずさ「あらあら~私も毎月聞いているわよ~」

千早「あずささん!そうだったんですか」

あずさ「ええ。ネガティブ川柳、いつも応募しているわ~」

千早「私もです!一番好きなコーナーは『今月のニャンコ』だったんですけど終了してしまって……あずささんは何級なんですか?」

P「やばいぞ律子……ついていけない」

律子「大丈夫です。私もですから。級ってなんなんでしょうね」

あずさ「私は5級よ~」

千早「6回も採用されたんですか!すごいじゃないですか!」

律子「どうやら採用された回数で級が決まるらしいですね」

あずさ「そんなことないわ~、千早ちゃんは?」

千早「私はまだ9級です……2回しか採用されなくて。チハゴスというラジオネームで応募しているのですが……」

あずさ「あらあら~、チハゴスさんって千早ちゃんだったのね?この間採用されてたの聞いたわ~たしか……『わが胸も 夏の野菜も もろ平野』……だったかしら?」

千早「やめてください!そういうあずささんこそ!ラジオネームを教えてください……はっ!もしかしてあずキングってあずささんですね?」

あずさ「あ、あらあら?人違いじゃないかしら~」

千早「『おめでとう 心の底から 言えてない』」

あずさ「ち、千早ちゃん?」

千早「『初対面 確認作業 薬指』」

あずさ「千早ちゃん?ちょっとあっちでお話しましょうか~」ズルズル

春香「千早ちゃんが給湯室に引きづられていった……」

P「ま、まぁ千早もオッケーってことでな。つ、次にいこうか」

伊織(ちょっと待ちなさいよ……二人ともレベル高くない!?もっと簡単な本を持ってくると思ってたわ……)




美希「zzz」

P「やっぱりか……おい、起きろ美希」

律子「プロデューサー、待ってください。美希のお腹のところに本が置いてありますよ」

P「本当だ……なんだこれ……『一流の睡眠』?」

律子「考えましたね……睡眠をすすめる本を紹介することにより自分の睡眠を正当化しに来ましたか」

P「いや、残念ながらそうはならない。おそらく美希はこの本の内容自体は知らないだろう、どこを見ても読んだ跡が見当たらない。どうせ睡眠に関する本を適当に選んできたんだ」

律子「本当ですね……美希の性格上こんな綺麗には読めないでしょうし」

P「つまりだな……この本の内容によっては、美希にとっては逆効果になる。」ペラペラ

P「よし……これだ」

P「美希ー!起きろおおおおお!!!!!」

美希「うわぁ!なんなのなのハニー!美希の睡眠を邪魔するなんてこの本に対して失礼なの!」

P「ふふふ……残念だったな美希!このページを見るんだ!」

美希「『昼寝は午後のパフォーマンスを高める……』ほら!美希は正しいの!」

P「その後をよく読んでみろ」

美希「『ただし20分以上の睡眠は逆効果である……』なん……なの」

P「残念だったな美希!これからは事務所で好きに昼寝をしていい……ただし!20分以内だ!」

美希「な……の……」ぐにやぁっ…

真美「ミキミキが福本伸行タッチになっちゃってるYO」

P「とにかく美希は選び直しだ!番組は来週撮影だからな」



P「次は真だな。どのスポーツの入門書を持ってきたんだ?」

真「なんでスポーツの入門書限定なんですか、はっ倒しますよ」

P「じゃあロミオとジュリエットでも持ってきたか?」

真「たしかに憧れではありますけど……ラストが悲しすぎますよ。ハッピーエンドじゃないと嫌なんです!ほらっ!」

P「『ヘルマンとドローテア』……ゲーテの本じゃないか。よく読む気になったな」

真「ボクだってゲーテくらい読みますよ!」

律子「私が貸したのよね、真」

真「うっ……、実はそうなんです……前に律子がゲーテを読んでるのを見て、『そんなに難しそうなのよく読めるなぁ』ってボクが言ったんです。そしたら律子が、これなら読みやすいしハッピーエンドだからって」

P「なるほどな。それで、どんなところが良かったんだ?」

真「物語自体は単純でボクにもすごくわかりやすかったんです。ドイツのお金持ちの青年と革命で避難民となった女の子が結ばれるって話で、やっぱりちょっと憧れちゃいました」

真「これだけだとなんかありきたりな小説に聞こえるんですけど、物語の色んなところに散りばめられた言葉がすごいんです!特に女性観についてがすごくて!あの時代に女性の強さというか逞しさというかを語っているんですよ!すごくないですか!」

P「うん。真がそれだけすごいすごい言うんだもんな。すごいよ」

律子「『男では耐えられない痛みでも女なら耐えられます強いから』THE IDOLM@STERの歌詞にもあったわね」

真「あー!それだよ律子!なんかうまくまとめる言葉がどこかにあった気がしてモヤモヤしてたんだ!」

律子「『殿方が二十人よったところでこの苦労には堪えられませんでしょう』この気持ちをわかってくれるような男ばかりならどんなにいいかしらね……」

P「な、なんで俺を見るんだ!真!お前も言われて悔しくないのか!」

真「そろそろグーでいきますからね?」


P「次は……雪歩……だが。一応、聞くがどんなジャンルの本を持ってきたんだ?」

雪歩「詩集ですぅ」

P「……だよな。ちなみに誰の詩集なんだ?」

雪歩「田村隆一さんですぅ」

律子(プロデューサー……これって)ヒソヒソ

P(ああ。完全に『響き』だけに酔っちゃってるパターンだな)

雪歩「それじゃあ私の好きな詩を読みますね」

雪歩「『毎朝数千の天使を殺してから』……」

P「ストップ雪歩!田村隆一は他にもいい詩を書いてるだろ?他のを紹介したらどうだ」

雪歩「えっ、わ、わかりました。では……『一篇の詩が生れるためには、われわれは殺さなければならない 多くのものを殺さなければならない 多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ……』

律子「す、ストップストップ雪歩!ちょ、ちょっと教育番組で紹介するのにはどうなのかしら?もう少し『殺す』とかそういう単語がない詩にしたらどうかしら」

雪歩「ええっ……せっかく好きな誌を選んできたんですけど……、わかりました。『言葉なんかおぼえるんじゃなかった あなたが美しい言葉に復讐されても そいつは ぼくとは無関係だ きみが静かな意味に血を流したところで そいつも無関係だ……』」

律子(『帰途』……ぎ、ギリギリセーフですかね?)ヒソヒソ

P(う、うーん。ま、まぁいいんじゃないか)ヒソヒソ

P「よ、よし雪歩!雪歩の田村隆一の詩への愛は十二分に伝わった!オッケーだ!もういいぞ!」

雪歩「えっ、でももっともっと紹介したい詩が……」

P「真、ちょっとこっち来てくれ」

真「なんですかプロデューサー……って!いきなり引っ張らないでくださいよ!」

P「ふむふむ……なるほどなるほど、そうか!真は雪歩のおすすめの詩がもっともっと聞きたいか!」

真「えっ、ボクそんなこと」

雪歩「嬉しい!それじゃあ真ちゃんにいっぱい詩の魅力を伝えてあげるね!」グイグイ

真「ちょっと雪歩、は、離して!このー!謀ったなプロデューサー!」

P「君の父上がいけないのだよ」

春香「その言葉は真に本当にダメージ入るのでやめてあげてください」



P「次はやよいだな!どんなのを持ってきたんだ?」

やよい「うっうー!私のはこれです!」

律子「『子ぎつねヘレンがのこしたもの』……やよいらしいわね」

伊織(!?)

やよい「実は前に伊織ちゃんが読んでたのを思い出して図書館で借りてきたんですー!」

P「伊織もこういうの読むのか。意外だな」

やよい「伊織ちゃん、この本を読み終わったあとずっと泣いちゃってたんですよ~『ヘレン……私の心の中にはたしかに……たしかに残ったわよ……うぅ……』って」

響「伊織ぃ……」

伊織「うっ、うっさいわね!あんたも読んでみなさいよ!子ども向けだからってナメてたら絶対号泣するんだから!」

響「ご、ごめんって伊織。でも自分、動物が死んじゃう話は悲しくて見れないんだ」

伊織「……あっ、こっちこそごめんなさい」

P「伊織の言う通り子どもだけじゃなく全年齢に読んでほしい本なのはたしかだな。少し前に映画がヒットしたがあれは少し内容が違うからな」

伊織「そうなのよ……映画は映画で感動的な話なんだけど、少しスケールが大きすぎるっていうか……本当に生きていたヘレンの姿とは違うのよ」

律子「じゃあやよい、みんなの中には読んだことない人もいると思うから簡単に内容を説明してちょうだい」

やよい「わかりました!えーっと……目も耳も鼻も使えない子ぎつねのヘレンとそれを保護したじゅーいさんの竹田津先生夫婦と……あと親代わりのきつねのメンコの話です!」

律子「か、簡潔にまとまっているようなまとまっていないような……」



やよい「ところで伊織ちゃんは何持ってきたのー?」

伊織「でちょっ!わ、私のはいいじゃないの!」

律子「伊織のことだから私も知らないような難しい本を持ってきていたりするかもね」

伊織「ま、まぁそれくらいは当然よね!」

伊織「あ……ちょ、ちょっとお腹が痛くなってきちゃったわ……」ヨロヨロ

ドサッ

やよい「あ、伊織ちゃん。本落ちたよー」

律子「こ……これって」

P「子ぎつねヘレンがのこしたもの……」

伊織「な、なによ!悪いわけ!」

P「い、いや、そんなことは言ってないぞ。ただ……なぁ?」

律子「そ、そうなのよ。ちょっと意外だったってだけで」

伊織「きーっ!もういいわよ!来週までに新しい本を選んでくるわ!」

やよい「なんで伊織ちゃん?一緒に紹介しようよ!」

伊織「うっ……やよいと一緒に?そ、それなら……」

やよい「一緒に、ね?」

伊織「わ、わかったわよ……それでいいかしら、プロデューサー」

P「ああ、構わないぞ。二人の仲の良さもよりアピールできるだろうしな」

やよい「やったー!頑張ろうね伊織ちゃん!」

伊織「こ、こら!抱きつかないの!」



律子「亜美、真美ー!次はあんた達よー」

亜美「了解りっちゃん!」

真美「真美達はスペシャルな本を持ってきたYO!」

P「山田悠介じゃなかったのか?」

亜美「甘い!甘いよ兄ちゃん!」

真美「テレビ業界のタブーに切り込むのだー!どーん!」

P「『新興宗教〇〇の真実』と『堕ちていく女達~売れるためには枕も仕方ないんです~』か。うん、お前らはこのプロダクションを潰す気か!」

律子「こんなのテレビで紹介したら最後よ。というかなんでこんな本持ってるわけ!まさか買ったんじゃないでしょうね……」

亜美「ま、まっさかー、ピヨちゃんの机に入ってたんだYO」

小鳥「ピヨ!?」

真美「そーそー!まったくピヨちゃんったらけしからんですなあ!」

律子「小鳥さん……同人誌だけじゃ飽きたらずこんな本まで読んでるんですか」

小鳥「冤罪です!冤罪ですって!」

P「とにかく亜美と真美は選び直しだ!せめて事務所が潰れないような本を持って来なさい!」



P「次はあずささんですね。亜美と真美はちゃんと聞いとけよ。参考にするんだぞ」

あずさ「あらあら~、そんなにすごい本を持って来たわけじゃありませんよ。ほら」

律子「林芙美子集ですか」

あずさ「はい。この中には『放浪記』や『浮雲』など有名な作品も入っているんですけど、中でも私は短篇の『下町』が好きなんです」

P(主人公が未亡人……いや、シベリアから帰らないだけで死んではないか)

律子(あずささんと未亡人の組み合わせ……あ、でも夫は引き揚げが済んでないだけだったわね)

あずさ「お話の内容自体は、出征した夫の帰りを待つ、お茶売りのりよと運送屋の鶴石の恋愛を描いた話なんですけど……あまりにも呆気無くて切ない結末が印象的で」

あずさ「それと林芙美子さんは貧しい生い立ちから、庶民の貧窮した生活や、私欲や悪意に満ちた人々を書くのがとても上手なんです。それなのにこの『下町』に出てくる鶴石という男性はとても誠実な方なんです。不自然に感じるほどに」

あずさ「猜疑心に満ちた作家である彼女がこんな人間を書くことがどこか非現実的というか、彼女のかすかな夢や幻想が投影されているような感じがして……いろいろと考えさせられちゃうんですよ」

P「ほら、亜美、真美。ちゃんと聞いてたか?」

亜美「う、うん!幻想がぶち壊されて」

真美「宝具が投影される話だね!」

P「うん、全然聞いてなかったことはわかった」

真美「聞いてたけど難しくてわからなかったよ~」

律子「まぁ無理もないかもしれないわね。林芙美子の作品はある程度、歳を重ねないと良さがわからないでしょうし」

あずさ「律子さん……?それって……」

律子「わわわ!違います!そういう意味じゃないですから!」

P「と、とにかくあずささんはオッケーです!さすが最年長ですね!……あっ」

律子「ちょっと!火に油を注いでどうするんですか!……はっ!」

あずさ「律子さん……?プロデューサーさん?」ユラァ

P 律子「ひぃっ!」



P「ハ、ハイ、ジャアツギヒビキ。ヨロシク」

響「大丈夫かプロデューサー……新井浩文みたいな目になってるぞ」

律子「キニシナクテイイワヨ、サ、ホンヲダシテ」

響「いや、律子も大丈夫か!?バラエティで浮いてる時の中川翔子みたいな目になってるぞ!」

響「じ、じゃあ紹介するぞ。自分は好きな著者さんの本をたくさん持ってきたさー」ドサドサッ

P「ほぉ……高野秀行か。最近、テレビ番組の『クレイジージャーニー』とかに出てるルポライターだな。超危険なところに次々に行くっていう」

響「そうさー!アヘンの密造に加わってアヘン中毒になったり、乗る予定だった車にロケットランチャーを撃ちこまれたりしてる人さー!」

律子「無茶苦茶じゃないの。それで響はなんでそんな本を読んでいるの?てっきり響のことだから動物関係の本を持ってくると思ったんだけど」

響「ロケの参考にするんだ!」

律子「えっ」




響「高野秀行さんの行ったところにロケに行く予定があったり、もう行ってたりするからね!これから行くところは予習で、もう行ったところは復習って感じかな!」

律子「ちょっとプロデューサー?響の海外ロケ予定を教えてもらっていいですか?」

P「えーっと、今月末にソマリア、来月はアマゾン、再来月がコンゴで幻の怪獣ムベンベを探して、その次の月がアフガニスタンで、来年の4月にはサハラ砂漠でのマラソンも入ってるな!」

律子「あんた馬鹿なんじゃないですか」ギリギリギリ

P「り、りづご……苦じい……」

律子「ベア・グリルスでもこんなキツいスケジュールじゃないですよ!一体響を何にするつもりなんですか!こんなんだから『765プロ?あー、あの超能力開発所ね』とか言われちゃうんですよ!」ギリギリギリギリギリ

響「や、やめてよ律子!自分も楽しんで行ってるさー!プロデューサーは悪くないぞ!」

律子「……まぁ響がそう言うなら」パッ

P「ゲッホゲホ、そ、それに安全管理はきちんと行っているぞ」

律子「響、今までのロケで一番危なかったと思うことってなに?」

響「うーん。ヨハネスブルグで空港から出て2分で身ぐるみ剥がされたことかなぁ、あっ、でもそれよりパプアニューギニアで魔女だって疑いをかけられて追いかけ回された時かもしれないぞ」

律子「何が安全管理ですって……?」ドスッドスッ

P「ぐほっ……り、律子、鳩尾は……鳩尾はやめてぐれ」



律子「じゃあ貴音。次お願いできるかしら?」

貴音「あの……プロデューサーは大丈夫なのでしょうか?」

律子「平気よ平気。ちょっと意識失ってるだけだから」

貴音「……はぁ。それでは私の選んできた本を紹介いたします」

貴音「折角の機会ですので冒頭部分を朗読させていただきます」

律子「へっ?朗読?」

貴音「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり」

律子「ストップストップ!えっ、なに。竹取物語?」

貴音「はい。私と非常に似た境遇のかぐや姫とやらに心を惹かれまして」

律子「……なんか重大なことを聞いちゃった気がするけど、とりあえずいいわ」

貴音「ですがこの物語には間違っているところが多々あります。月の人間は見た目は地球の人間とさして変わりはありません。皆、地球に来るときはそれに合わせた服を身につけていますし、ましてや空飛ぶ車など……」

律子「あー!あー!聞こえなーい!」

貴音「ふふっ……」

律子「!?」

貴音「じょぉくですよ。律子嬢」

律子「な、なんだ。驚かさないでよ……貴音が言うと本当に聞こえちゃうわ」

貴音(まだ迎えの日は遠そうですからね……)




律子「よし!それじゃあ最後は私が本を紹介しちゃうわよ!」

P「り、律子のことだ……『資本論』とか持ってきてるんじゃないのか?」

律子「プロデューサー。生き……もとい起きてたんですか」

P「今とんでもないことが聞こえた気がするんだが黙っておこう」

真「プロデューサー、律子がそんな本を持ってくると本気で思っているんだったら、プロデューサーはまだまだ律子のことをわかってませんよ」 

P「真……生きてたのか」

真「あまり使いたくはなかったんですけど、王子様モードで雪歩はなんとかしましたよ」

P「そうか……、それよりどういう意味だ?俺が律子のことをわかっていないって」

真「まぁ見ててくださいよ」

律子「今回ご紹介するのはこちらっ!『アイドルマスター 全アイドル名鑑 2005-2016』っ!」

真「ほらね、プロデューサー」

P「やめろ律子!それは、それは紹介してはいけない!」

律子「プロデューサーの言いたいこともわかります。内容は薄い、情報もイラストも既存ばかり、抜けている情報の多さ!正直に言いましょう!この本の内容に価値はありません!」

P「言いやがった!」

律子「しかしっ!この表紙をご覧ください!」

P「なっ、なにっ!」

律子「この春香のイラストはなんと田宮さんの描き下ろしっ!これだけでも!真のファンなら買う価値があるはずですっ!」

P「お、おお!」

真「なんかこれ字面だけだとボクのファンみたいに見えますね」

P「だが!中身に満足できない人はどうすればいいんだ!」

律子「ビジュアルコレクションでも買えばいいんじゃないですかね?」

P「あ、そこは適当なんだ」


P「よし、これで一応全員のチェックが終わったわけだが。亜美と真美、それに美希!わかってるな?」

亜美「はーい」

真美「しゃーないっしょー」

美希「zzz」

律子「美希ぃ!」

美希「はいなのっ!」

P「そして、全員の本の紹介が終わったところでだ……俺のおすすめのジョージ・オーウェルの『1984』という本の話をだな……」

律子「あ、読んだことあるんでいいです」

春香「私も……なんか難しそうですし」

千早「レッスンがあるので失礼します」

真「さてと……雪歩起こしてこなくちゃ」

貴音「らぁめんの時間ですね」

伊織「やよい、一緒に本番の内容を考えましょう」

やよい「うん!伊織ちゃん!ということで、ごめんなさいプロデューサー!」

美希「zzz」

あずさ「私も海外の作家さんは苦手で……」

亜美「興味ないね」

真美「だったら壁にでも話してろよ」


P「えっ、みんな……」

響「自分は聞いてあげるぞ」

P「響ぃ……」

響「ラノベの紹介するって約束したからな!それがどんなにプロデューサーの自己満足にしかならなくても聞いてあげるさー!」

P「…………やめとくわ」





おしりちん






どんな本でも、ページを開くきっかけに慣れたら幸いです

最近書いたの↓

小鳥「千早ちゃんがネトゲにはまった?」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52177714.html

P「アイドル達がガンダムのキャラだったら」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52177807.html

響「画廊?秋葉原にそんなのあったのかー!」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52177904.html

千早「スマートフォンを買ったわ」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52177994.html

雪歩「やっぱり芋砂は楽しいですぅ」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52178080.html

小鳥「疲れたわ……どこかで1杯やりたいわね」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52178157.html

真「窓の外から誰かが見てる」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52178250.html

P「アイドルのセキュリティをチェックする」(下品なノリのため閲覧注意)
http://elephant.2chblog.jp/archives/52177453.html


慣れたら→なれたらです。すいません

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