卯月「シンデレラプロジェクトが無くなっちゃうんですか...?」 (63)


美城常務「なにか言いたいことはあるか?」

美城常務の問いに武内Pは苦悶の表情を浮かべた。
彼がプロデュースしているプロジェクト、シンデレラプロジェクト(以下CP)は存続の危機に立たされていた。
美城常務が346プロダクションのアイドル部門統括重役に就任してから既存のアイドルプロジェクトの刷新が進められてきた。
CPもその例にもれず刷新の対象となっていたが、武内Pの必死の懇願によりある条件と引き換えに存続が認められることになっていた。
その条件とは冬のライブである《シンデレラの舞踏会》の成功である。
このライブの成功を条件にCPの存続および武内Pが目指す「アイドルの個性を伸ばすプロデュース」を認めさせることができる。
そのために武内PはもちろんCPのアイドル達は全霊を込めて頑張ってきた。
が、それは叶わなかった。
結論から言えば《シンデレラの舞踏会》は失敗に終わったのである。


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武内P「…私はあのライブが失敗したとは思ってはいません…!」

美城常務をぐっと見据えて鬼気迫る表情で訴えた。

武内P「会場に来てくれたファンのみなさんは笑顔でいてくれました。アイドルのみなさんも笑顔でとてもよいステージをしてくれました。
あれが失敗などとは到底思えません!」

普段無口な彼がこれほどまで語気を強める事はあっただろうか。
美城常務が切れ長な目で武内Pを一瞥して口を開く。

美城常務「君はアイドル活動を学芸会と勘違いしているのではないのか?」

ぎょっとした武内Pを冷ややかに見つめながら続ける。

美城常務「アイドル活動は遊びではない。それくらいは君も承知しているだろう?」

武内P「…」

美城常務「我々は企業だ。利益の伴わないものに時間と金を割いている暇はないのだよ。」

武内P「しかし!あれは不可抗力です!それにCPのこれまでの活動の実績を顧みて頂ければCPの解散はプロダクションの不利益となります!」

彼の主張することは事実である。
夏以降CPの活動はプロダクション内でも一定の評価を受けており、将来を期待されていた。
が、時の運に見放された。
シンデレラの舞踏会は当日に数十年に1度の大雪に見舞われたのである。
そのため主要な交通機関はストップし、熱心なファンですら会場にたどり着くことが難しかったのである。
そのため来場者は予想の半数程度であった。
それでも来てくれたファンのためにアイドルはステージを行い、それは誰の目をもってしても大成功であった。
だが、不幸なことに大雪の影響でライブ会場を含めた地域一帯が大規模な停電に見舞われ、タイムテーブルの半分も消化されないうちに中止になってしまったのだった。
美城常務はふっと息をつき椅子から立ち上がり言った。

美城常務「君の必死の懇願に対して私はどのような条件を提示したのか覚えているか?」

武内P「それは…」

【シンデレラの舞踏会の成功】武内Pの頭の中にはこの半年間、この文字が鎮座していた。

美城常務「では次に聞こう。今回のシンデレラの舞踏会、このライブは成功であったと言えるか?」

シンデレラの舞踏会が成功とは言えないことは、武内Pはわかっていた。
彼も企業の人間である。
346プロほどの事務所が大規模なライブを行うにあたってどれほどのお金が動いているのかも当然知っていた。
しかし、どうしても、いや、どうやってもその事実を認める事はできなかった。


武内P「しかし…」

美城常務「しかしもなにもあるのか!」

武内Pの言葉を遮ってように美城常務が言い放つ。

美城常務「私は半年前君の提案を聞き入れたのだ。あのときに君に取り合わずこちらで全て決めることもできたのだ。
それなのに君はここまで醜く食い下がろうとするのか?」

武内P「…しかし!あのような天候でなければシンデレラの舞踏会は…」

美城常務「君は天に見放されたとは思わないのか?」

武内P「…」

美城常務「言いたい事はそれだけか?」

武内P「…」

武内Pの絶望した顔をよそ目に時計に目をやる。

美城常務「では、CPは本日をもって解散、CPのアイドルは明日、各部署への割り振りを行う。以上だ。」

再び椅子に座りなおすとパソコンの画面を見ながら口を動かす。

美城常務「そろそろ朝礼の時間だろう?君のシンデレラたちに最後の挨拶をしてきたらどうだ?」

武内Pは辞儀すら忘れ、ふらふらとした足取りで部屋から出ていった。

美城常務はその姿を見届ける時間すら惜しむようにキーボードを叩いていた


CPのプロジェクトルームの空気は酷く重かった。
CP発のユニット、ニュージェネレーションズの島村卯月はみんなの不安な顔と時間は必ず守る武内Pが朝礼の時間になっても姿を現さないことで困惑していた。
普段なら莉嘉やみりあが元気な声でおしゃべりをしているが、これから何が起こるかを理解しているらしく、口を閉ざしたまま不安な表情を浮かべていた。
それはアイドルが、ましてこんな小さい子がしていい表情ではない。
しかし、ルーム内にいる全員がそんな顔をしていたのだ。

みく「みくたちをこんなに待たせて、Pチャンはなにやってるにゃ。こんなんじゃプロデューサー失格どころか、男性として失格にゃ。」

唐突にみくが口を開いた。
場の嫌な空気を変えようと声を震わせながらなんとか言葉を作った。

未央「そうだよ!全くこんなに可愛い娘達を待たせてプロデューサーは罪な男だよね全く!」

隣で震えていた未央もそれに乗じた。
しかし、さすがの未央とみくを持ってしてもこの空気は変えられなかった。
むしろ誰かが口を開く事でパンパンになった炭酸飲料の蓋を開けるように、中に溜まっていたものを一気に外に噴出させることになる。

智絵里「あの…プロデューサーさんはなんでこんなに遅いんでしょう…今まで遅れてきたことなんてなかったのに…」

みく「それは…そう!たぶん打ち合わせが長引いちゃってるだけにゃ!シンデレラの舞踏会がああなっちゃって、それの後処理がまだ残ってるだけにゃ!」

ここで全員ができるだけ口にしないようにしていた言葉が出てしまった。
みくがはっと口をつぐんだが遅かった。


みりあ「…ねぇ…この間のステージは失敗しちゃったの?」

小さい子は純粋である。
それゆえみんなが遠慮している部分をストレートに突いてくる。
これはみりあが悪いわけではない、むしろいずれ全員で話し合いをしなくてはいけないことなのだ。

みく「失敗なわけないにゃ!」

語気を強める。

みく「確かにお客さんは少なかったし、予定の半分もいかないうちに終わっちゃったにゃ…でも、みんな笑顔だったにゃ!
ファンの子猫チャンたちも楽しんでいたにゃ!それを失敗したなんてみくは絶対言わせないにゃ!」

李衣菜「でもさ」

みくのパートナーが口を開いた。

李衣菜「あのライブって本当に成功だったのかな…」

みく「…それってどういう意味にゃ?」

李衣菜「どういう意味って…確かにファンのみんなは楽しんでくれてた。それはわかってる。
でもさ、あの規模のライブをするのにたぶん結構なお金がかかってたんじゃない?」

李衣菜は冷静に見えた。

李衣菜「私も詳しい事はわからないけどさ、中止になったあとお客さんのチケットの払い戻しとかあったじゃん?
他にも金銭的な面の損害っていうのも出てるだろうし…」

ヘッドホンを掛け直す。

李衣菜「それに中止ってことは主催者への信頼を揺るがすものだよ?私もライブ見に行って途中で『 本日のライブは中止です。チケット代はお返ししますが、ステージはもう行いません。』なんて言われたら頭に来ちゃうよ、それにどんな事情がたったとしてもさ。」

確かにそうだと卯月は思った。楽しみにしていたイベントが途中で強制的に終わるなんて興が冷めるし、なにより寂しい。

みく「…ずいぶんと落ち着いてるね李衣菜チャン…」

李衣菜「だってしょうがないじゃん。もう終わっちゃったんだしさ。」

卯月はふっと李衣菜に目をやる。澄ましているように見えるが明らかにおかしかった。

みく「そうやっていつでもクールにしてることが李衣菜チャンにとってのロックなのかどうか知らないけど、李衣菜チャンはなんでそんな風にしていられるの!?CPのみんなを見て何も思わないの!?CP解散の危機なのに何も言うことはないの!?」

李衣菜「実際そうでしょ。そうやってすぐ感情的になるの、みくの悪いところだよ。」

バァン!

みくがテーブルを叩いた。莉嘉とみりあがびっくりして泣きそうな顔になる。それをきらりが宥めている横でみくが今にも李衣菜に飛びかかろうとしている。
最悪の空気になってしまった。とりあえず2人を止めなきゃと卯月が口を開こうとした。

杏「2人ともその辺にしたら?」

全員が一斉にばっと声の主の方に振り返る。

杏「みくちゃんもほら飴でも舐めて少し落ち着きなよ。」

杏がみくに飴玉を渡す。

杏「みくちゃんだって李衣菜の言ってることくらいわかってるでしょ?それを認めたくない気持ちは杏にもわかるけどそれを李衣菜にぶつけたってなんの意味も無いでしょ?」

前川「そんなこと分かってるにゃ…でも…そんなのあんまりにゃ…」

声を震わせてうじうじするみくに杏はうんうんと頷きながら声をかける。

杏「うん、わかるよ。杏だってCPが無くなるのは寂しいもん。」

かな子ときらりを見ながらため息をつく。

杏「それにさ、みくちゃんの言ってる事はここにいる誰もがが思ってることだもんね。みんながなかなか言い出せないことをズバズバ言うのもみくちゃんらしいよ。」

杏はみくに微笑みかけながら話している。

杏「でもね、」

ここで真面目な顔になった。

杏「テーブルを叩くのはちょっとやりすぎたかな。ちびっ子を見てみなよ?」

テーブルの前の長椅子には目に涙を浮かべてきらりにしがみつく2人の女の子がいた。

杏「まずはさ、2人に言うことあるよね?」

杏はうながす。

みく「…2人ともごめんにゃ…すぐ感情的になって周りを疎かにするのは…みくの悪いところにゃ…」

杏「はいよくできましたっと。じゃ、飴舐めながらプロデューサーのことを待とっか。」

そういうといつものようにうさぎクッションに体を預けた杏は寝ることはせず、目をしっかりと開けていた。
その覚悟を決めたような表情をした杏を見た瞬間から卯月はプロデューサーがプロジェクトルームに入ってきてから、
そしていつものように朝礼が始まってから、その口からどんな言葉が発せられるのか想像できてしまっていた

ガチャリと扉を開けて入ってきたのは武内Pとアシスタントの千川ちひろであった。
アイドルたちは誰1人とも口を開かなかった。ただ武内Pがいつもの場所へと歩を進める姿を見ているだけだった。

凛「…」

武内Pの姿を見て顔をしかめる凛を横目に見ながら卯月も武内Pの言葉を待った。

武内P「………………みなさん、おはようございます…」

しばしの沈黙の後いつもの朝礼が始まった。

武内P「…以上が各部署から寄せられた意見となります。各人ともこれらの点に気をつけて生活をなさってください。」

ここでまずみりあや莉嘉が質問を投げかけプロデューサーを困らせる、そしてそこからみんなが思い思いにおしゃべりを始める。これが普段のCPの朝礼だ。
だが今日は違う。誰も口を開かない。
ただ武内Pの口から例の件について説明されるのを待っているのだ。

ちひろ「プロデューサーさん…」

ちひろが催促をする。

武内P「……」

ちひろ「私からお話してしまいますよ?それでいいんですか?」

武内P「……わかり、ました…」

苦虫を何匹も噛み潰したような顔で声を絞り出した。

武内P「…まず、先日のライブ…シンデレラの舞踏会についてですが…」

苦しそうな笑顔で続ける。

武内P「みなさん、とてもいいステージでした。この半年間のみなさんの頑張りが表れた、とても素晴らしい結果だったと思います。」

微かに光が見えた気がした。現にみくはもし猫耳が生えていたらピコピコ動かしていそうだ。

武内P「しかし…」

ここで武内Pの顔から笑顔が消えて苦しそうな顔だけが残った。

武内P「…みなさんご存知の通り、ステージ当日は記録的な豪雪に見舞われました…」

武内P「ファンのみなさんも会場に辿り着けない方が多く、また、都内を中心とした大規模な停電によりステージの半分も消化しないうちに中止となってしまいました。」

あの日は本当に酷かった。
彼女達のライブ会場だけでなく一時的に都内の交通網がストップしたのだから。
自然を相手にしては誰も責める事はできない。
誰にも責任は無いし、346プロをもってしてもどうすることも出来なかった。

武内P「…繰り返しますがみなさん素晴らしいステージでした!本当にみなさんが笑顔で楽しいステージができていました!
私はこのようなステージを見られてプロデューサー冥利に尽きます!」

ぎょっとした。あのプロデューサーがこんなに大きな声で早口で話すなんて。
CPのアイドルたちは誰もが驚愕していた。

武内P「…しかし」

ここで言葉を切って俯いた。みんなが不思議そうにしてるが、卯月は頬を流れる涙を逃さなかった。

武内P「一つのライブを中止にすることは、後援をしていただいた企業やステージの準備をしていただいた裏方のみなさんを初め、関係者のみなさまに多大なご迷惑をかけることになります…」

武内P「…それを承知の上で美城常務と話し合いの場を設けさせていただき、CPの今後についてお話をさせていただきました…」

ここで皆が息をついた。次の武内Pの言葉を待った。

武内P「…しかし…………叶いませんでした………」

え?

武内P「……シンデレラプロジェクトは…本日をもって…………解散となります。」

絶望した。

武内P「…先ほど美城常務直々に通達がありました…シンデレラプロジェクトは本日をもって解散、みなさんは明日通達される部署に再配属になります。」

淡々と述べる姿に先ほどの涙はなかった。プロデューサーの隣でちひろさんも顔を俯かせている。

武内P「…1年にも満たない期間でしたが、プロデューサーとしてみなさんをプロデュースしていく中で、みなさんが日々成長し、それぞれの夢に向かっていく姿に感動を受けていました。そしてそれが私の宝となり私自身もみなさんと一緒に成長していけたと思います。」

卯月には状況が理解できていた。
いや、完全に理解してはいなかった。
プロデューサーはみんなに感謝をしているのだ。
冬のライブまでにみんなで頑張っていたことはプロデューサーにしっかり伝わっていたのだ。
ただ、CPが解散するということだけがわからなかった。
夢であったアイドルになれた。
トップアイドルを目指す多くの人達に出会った。
休日に時間を共にする大切な友達もできた。
苦しい時も助け合い常に成長を共にしてきた仲間にも出会った。
それを得られたのは全てCPである。

卯月にとってCPの解散は一つの家を奪われることであり、そのことはみんなも同じであった。
武内Pは続ける。

武内P「そんなみなさんに出会えて、私はとても幸せなプロデューサーでした。」

卯月はその言葉に違和感を覚えた。

武内P「CPは解散となりますが、みなさんのアイドル生活は始まったばかりです。ここでの経験を生かして、アイドルの階段を1歩ずつ確かに登って行ってください。」

アイドル全員の顔を名残惜しそうに見渡す。
卯月と目が合った。武内Pは一瞬不安そうな顔をしたがすぐに軽い微笑みを作った。
なんて悲しい笑顔なんだろう。
次に凛の方を向いた卯月もちらっと凛の顔を見てみるとすごい形相をしていた。
莉嘉とみりあもあまりのショックに言葉を失っており、プロジェクトルームで言葉を発するものは誰もいなかった。
武内Pは静かに目線を戻すとアイドルたちに別れを告げた。

武内P「それではみなさん、これからも頑張ってください。」
そう告げるとプロジェクトルームから去っていった。
ちひろさんは引き続き全力でサポートさせていただきます、と言い残すと慌ててその後を追いかけていった。
プロジェクトルームは静寂に包まれた。が、みりあの一言でみんなが事態を把握した。

みりあ「みんなともう会えなくなっちゃうの?」

その瞬間プロジェクトルームに降り積もっていた感情が溶けだした。
もうこのメンバーで集まる事はない。
その事実が突きつけられた。泣く者、怒る者、うまく状況を理解出来ていない者、そして受け入れる者。仲間達と涙を流す卯月はふと思った。

卯月(プロデューサーさんはどこに配属されるのだろう…)

今日の天気は晴れ。冬晴れの気持ちのいい穏やかな日だった。

CPの解散が発表された翌日、346プロアイドル部門の各部署はにわかに慌ただしくなっていた。
急遽CPのアイドルが配属された各部署のP達はスケジュールの再調整に追われていた。
騒がせた理由はそれだけではない。CPは美城常務に最後まで抵抗していたプロジェクトだった。
プロダクション内に少なからず存在していた美城常務のやり方に賛同できないP達からの期待は大きく、また最後の希望でもあった。
それの突然の解散はP達のみならずアイドル達にも大きな動揺を与えた。
クローネの対抗馬として活躍をしていたCPの解散はただの一つのプロジェクトの消失とは影響力が違ったのだった。
CPのアイドルたちは振り分けが行われた。
振り分けについてはそれぞれの活動の都合上、各部署にユニット毎の配属となった。
しかし、NGsだけは例外であった。
凛がプロジェクトクローネ(以下PK)に参加しているためTPを一つの部署にまとめ、未央と卯月は別の部署に配属された。
これについては凛をはじめ、TPの2人からも不満は出たが美城常務はこれに取り合わなかった。
卯月は珍しく憤慨したが、なにもできなかった。
だだ、また頑張ればいいと思っていた。配属先が変わってもCPの仲間はいる。NGsの2人もいる。ここからトップアイドルだって目指せる。そう思っていた。
ところでプロデューサーはどこにいるのだろう。プロダクションに来てから見かけていない。CPの後処理で忙しいのだろうか?
いずれ挨拶にも来るはずだ。今後についてもそこで話をしよう。

未央「よし!しまむー!しぶりんはいないけど、気持ちも新たに新生NGsの初レッスンをしようじゃないか!」

いつも通り元気な未央の声に卯月も声を大きくする。

卯月「はい!新生島村卯月がんばりまふ!ぶいっ!」

2人は意気揚々とレッスンルームへ足を踏み入れていった。

その日を境にNGsの仕事は減っていった。その主な理由が凛のTPの仕事と時間が重なるため、もしくは仕事が増えたTPの数少ないオフとNGsの仕事が被るため、である。
PKのメンバーとして美城常務直々の寵愛を受けているTPの仕事がNGsより優先されることは明白だった。
未央はこれを受けソロ活動の範囲を広げるつもりらしい。
一方卯月はピンクチェックスクールに主な活動を移す…ことはできなかった。
休養期間中に代わりを務めていた三村かな子がそのまま正式メンバーとなり、そこに五十嵐響子を加え、小日向美穂との3人ユニットとなったのだ。
卯月にとってこれは致命的だった。CPの解体から一ヶ月が経ち、ユニットの再編成もほぼ終了し、新ユニットの結成の可能性は何か新プロジェクトが始動しない限り無い。それに卯月はソロ活動はできなかった。
それは能力の問題ではなく、新たな担当プロデューサーが渋ったためである。
このことは美城常務の差し金ではないかと未央にも言われたが、3人ユニットの内1人は別のユニットで活動、残りの2人もそれぞれがソロデビューとなると具合が悪いのである。それは未央にも分かっていた。
卯月はレッスンの日々を送ることを強いられた。


>>14
誤:新生島村卯月頑張りまふ!

正:新生島村卯月頑張ります!

卯月「ただいまー」

自分が置かれている状況にもやもやしながら帰宅する。
おかえなさい、と迎えてくれる母と一言二言話し、お風呂に入って、夕飯を食べて、宿題をして、寝る。養成所時代を思い出す。

卯月(なんでこうなっちゃったんだろう)

冬のライブ前を思い出す。

卯月(なんだかあの時と一緒だな…)

卯月は正統派アイドルである。CPには個性的な娘が多くまた、その個性故、なにかしら足りないものがあった。
彼女達はそれを克服、また個性を更に伸ばすことで己のレベルアップをしてきた。
が、卯月は良くも悪くも普通の子であった。何かしら尖ったものを持つ周りと自分を比較して不安を覚え、精神的に参ってしまったことがあったのだった。

卯月(凛ちゃん元気にしてるかなぁ…)

凛とはしばしば連絡を取り合っているが、予定が合わず最近はほとんど顔を合わせていない。
昔はいつもNGsの2人がいた。卯月が立ち直ったのも2人の存在が大いに関係していた。

卯月(またみんなでこの状況を打ち破ろう!まずはとりあえず寝て明日また頑張ろう!)

卯月は異常なほどの頑張り屋さんだ。
いくつもの試練を乗り越えてきた。だが、今回だけは違った。相手は歌でもレッスンでも己でもなく、所属事務所だった。
世の中どんなに頑張っても乗り越えられないものは、ある。

そのころ346プロでは今後の流れを変える出来事が起きていた。

コンコン、常務室にノックの音が響く。

美城常務「入れ。」

姿を見せたのは千川ちひろであった。

ちひろ「明朝の会議の資料をお持ちしました。」

美城常務「ご苦労。今日はもう遅い。早めに帰りたまえ。」

ちひろ「お気遣いありがとうございます。実は少しお話があるのですが…」

パソコンからちひろに目を移す。

美城常務「ほう、話か。言ってみろ。」

ちひろ「NGsのことについてなのですが…」

そんなことか、と冷めた顔をする美城常務を見つめながら続ける。


ちひろ「特に島村卯月ちゃん、ですが…ここのところお仕事も無く、レッスンばかりの日々です。
個人的なお仕事をとは言いませんが、せめてNGsとしてのお仕事を少しだけやらせてあげてはいかがでしょうか?」

美城常務「たかがアシスタントが個人的に意見するなど君は何様のつもりだね?」

ちひろ「いえ…そういうつもりでは…」

美城常務「まぁ、いい。…そういえば君は以前からCPをかなり気にかけていたそうじゃないか。彼女達に母性でも芽生えたか?」

ちひろはここで少しムッとした。だが顔には出さない。

ちひろ「そうですね。娘達を継母に預けるのはとても不安なものですので、このような提案をさせていただきました。」

美城常務「……ところで島村卯月、だったな?せっかくの機会だ、彼女の今後について母親と進路相談でもしようか。」

ちひろは黙っている。

美城常務「簡潔に言おう。美城に灰かぶりは必要ない。」

ちひろ「……はい?」

美城常務「もう一度言おうか?我がプロダクションは島村卯月を必要としてない。」

ちひろ「そんな……」

美城常務「私からは以上だ。…もう遅い、早く帰るといい。」

美城常務はちらっと腕時計に見やった目を会議資料に向けるともうちひろを見ることはなかった。
失礼しました、と言葉を残しちひろは常務室から出ていった。
そんなことがあるのだろうか。
美城常務の言葉を反芻していると、後ろから声をかけられた。

今西部長「やぁ千川くん。遅くまでご苦労さん。」

ちひろ「今西部長…」

頼れるのはこの人だけだと思った

CP解散後の日々は武内にとって何の輝きもないものだった。
プロデューサー職を外され、今は事務員として働いていた。
しかもアイドル部門の事務員ではなく他部門の事務員としてだ。
さらに彼には厳しい制約が付けられていた。『346プロ所属のアイドルとの接触を禁ず』だ。
彼はアイドル部門のトップに楯突いた危険分子であり、今後の動きを抑制するためである。
CP解散の日以来彼女達に一度も会えないことも心に引っかかっていた。
あの日以来たった一言さえ言葉も彼女達にかけられなかった自分に不甲斐なさを感じていた。
彼女達のいない日々に彼は心を沈ませていた。
彼の曇った心に星は光っていなかった。
事務員として働き始めたばかりの頃はテレビや雑誌、同僚からの話などでCPのアイドル達の近況を調べてはいたが、とときら学園が打ち切りになったころからその気力すら無くなっていた。
むしろ、アイドルと距離を置くようになっていた。

同僚A「お前さ、アイドル部門の噂知ってる?」

武内「いえ…存じ上げません。」

無粋な方だ、と武内は思った。ここに飛ばされた理由もどんな気持ちなのかも分かっているだろう。

同僚A「美城のおばさん、けっこうアイドルをクビにしてるんだってよ。」

武内「…は?」

まさかそこまでするとは。
理想に囚われて大事なことを見失ってるのだろうか。
彼はどうすることもできない憤りをぐっと堪えた。

彼の心身は蝕まれていた。
この日も自宅で少し遅い夕食の準備をしていた。

ラジオ『乙女よ大志を抱っけ♪』

ラジオから小気味よい音楽が流れてくる。最近流行りのアイドルをプロデュースするといったゲームの曲らしい。
憔悴していたがそのキラキラした歌詞とメロディには不思議と嫌悪感を覚えなかった。
食品の棚を漁っていると、プロデューサー時代に特別な日にだけ飲んでいた缶ビールが出てきた。
特別な日というのは大きなライブが大成功した時や、新たなシンデレラの卵を見つけたりした時だ。
こんなもの取っておいても仕方がない、と
蓋を開けると1本の電話がかかってきた。

ラジオ『立ち上がれ女諸君!』

大志はどんな苦境立たされても持ち続けることに意味がある。

卯月は嬉しそうにスマホを弄っていた。
未央と凛のオフが重なったので久々に3人で遊びに行くことになったのだ。

未央《いやーみんなで遊ぶのも久しぶりだね!》

凛《ここんとこTPばっかりで2人には悪いことしちゃってるね》

卯月《そんなこといいんですよ!凛ちゃんが頑張ってて私達も嬉しいです!》

未央 《そうだぞ渋谷くん。君は今とっても輝いているのだぞ。》

凛《ところで明日どうする?》

未央《無視は良くないな〜渋谷くん?》

卯月《いつものところでいいんじゃないですか?》

未央《しまむーまで~ひどいよぉ〜》

凛《はいはい、明日かまってあげるから》

卯月はふふっと笑った。未央はとても嬉しいのだ。それにしても3人で集まるのも久しぶりだなぁと思う。顔を合わせるのは一ヶ月以来ということもあって2人とも積もる話もあるだろう。

卯月(なに着ていこうかな〜♪)

卯月は御機嫌に服を選ぶ。未央はまだしも凛に会えるのが楽しみで仕方がなかった。そして当然のようにその日の夜はなかなか寝付けなかった。

未央「あっはは!しまむー私達よりお姉さんでしょ!」

未央がからかう。

卯月「だって本当に楽しみだったんですから~」

卯月は顔を赤くして必死に弁明した。

凛「ふふっ大丈夫だよ卯月。未央だって夜中に《明日楽しみで寝つけない!》って私にメールしてきたから」

未央「うわっ!しぶりんなんでそんなことばらすの?」

卯月「未央ちゃんだって子どもじゃないですか~」

未央「うぐぐ…しまむーだけには言われたくなかった…」

卯月「私の方がお姉ちゃんだってさっき自分で言ってたじゃないですか!」



未央「ぐぬぬ…あっ、でも私のメール見たって事はしぶりんも寝つけなかったってことじゃないの?」

凛「私は誰かさんのせいで夜中に起こされたんだけど?」

未央「それは失礼致しました。」

凛「未〜央〜?」

卯月「ふふふっ」

3人はいつものファミレスにいた。こんな楽しい時間を過ごせたのはいつぶりだろうか。
他の子達といるのがつまらないとは言わないがやっぱりこの2人との時間は特別だ。

凛「ところでさ」

凛が話題を振る。

凛「2人は最近流れてる噂、知ってる?」

未央「おっしぶりんがそんな話をしたがるなんて珍しい。噂話なら346の情報通こと、この本田未央ちゃんに任せなさい!」

卯月「凛ちゃん、それってどんな噂なんですか?」

2人はぱっと食いついた。女の子は噂話が好きだと相場が決まっているのだ。

凛「えーと、美城常務のお眼鏡にかなわなかったアイドルが346から追い出されてるって話。」

すると未央がすかさず反応した。

未央「あー、ところでしぶりん!我らがポジパの良心ことあーちゃんの可愛いエピソードを教えてあげよう!」

凛はちょっとむっとしたようだ。だが、すぐ表情を和らげる。

凛「はぁ…まぁ未央らしいっていうかさ…突然どうしたのさ、聞きたいって言ったのは未央じゃん。」

未央に振り回される感じが久しぶりだからだろうか、凛はどこかほっとしている感じが見受けられる。

未央「いやそうだけどさ…我らが美城常務の悪口なんて良くないじゃん?」

卯月「凛ちゃん、続けてください。」

未央はばっと卯月を見返った。

未央「いや、でもさしまむー、こういうところで私達が常務の変な噂をしてたって知られたらまずくない?誰が聞いてるかわかないよ?」

卯月「じゃあ場所を変えるのはどうですか?」

凛「それもそうだね。じゃあどこか場所を移そうか。どこかいいとこない?」

卯月「個室があるところがいいです。」

未央「そんな政治家じゃないんだからさぁ…それよりおニューのお洋服でも見に行かない?」

未央の反応はさすがに異常だと思った。

凛「いや、そんなに嫌なら別に話さないけど…」

未央「うんうん、噂話なんかやめてショピングに行こう!ね、しまむー?」

卯月「行きません。」

卯月ははっきりと断った。

卯月「凛ちゃんが今ここでその話をしてくれるまで私はお買い物には行きません。」

未央「しまむー…」

凛「…卯月、そんなにこの話が気になるの?」

卯月「はい。」

凛と未央は顔を見わせた。凛は困ったようにしていたが未央はなぜか不安を覗かせていた。

凛「まぁ…卯月がそんなに聞きたいなら話すけど…」

未央「しまむー…いいの?」

卯月「はい。凛ちゃん話してください。」

凛「まぁ、大した話じゃないんだけど…」

未央はもう何も言わなかった。
凛は周りに聞こえないよう声を小さくして話し出した。

凛「加蓮から聞いたんだけど、さっきも言ったとおり美城常務はお気に召さないアイドルは…言い方は悪いけど、切り捨てるっていうのかな、
つまり346をクビになってるんだって。」

未央は下を向いている。

凛「すでに何人かは346から他のプロダクションに移ったらしいけど、その辞めさせ方がけっこう陰湿でさ。」

卯月は凛から目を離さない。

凛「仕事をさせてくれないんだって。他の活動をしようとしても何か理由をつけてやらせてもらえないし、
それで辞めさせられた子は最終的にはレッスンすらスケジュールに入ってなかったらしいよ。」

凛「辞めろとは言われなくて結局辞める時は自分で辞表書いて自主退社だってさ。それって酷いと思わない?」

卯月「そうですね…」

凛「まぁ2人のことだから心配はしてないけどさ。アイドルを見る目はあるのにそういうところがあるから私はあまり好きじゃないんだよね、常務のことはさ」


凛は不思議そうに訪ねた。からかってきそうな未央は下を向きっぱなしだし、卯月にいたっては今まで見たことのない険しい顔をしていた。

未央「しぶりん…あのね…」

卯月「凛ちゃん。」

未央の言葉を遮る卯月なんて初めてじゃないだろうか。

卯月「お話してくれてありがとうございます。じゃあ未央ちゃん?お洋服を見に行きましょうか?」

未央を見てにっこり笑って見せると席を立った。

凛「卯月ちょっと待ってよ!」

未央「し、しまむー置いてかないでよ〜」

2人も慌てて立ち上がるとファミレスから外に出た。
私、気になってたお洋服があったんですよ~などと楽しそうに話す卯月を見た凛はまた楽しそうな顔になった。
一方未央はまだなにか吹っ切れないような顔をしていた。それを見て卯月は思う。

卯月(未央ちゃん、舞台のお仕事してるのに大丈夫でしょうか…)

未央ちゃんはまだまだ子どもだなぁ。

卯月(ビジュアルレッスンはちゃんと取り組んでおくべきですよ?)

卯月は今にも崩れそうな心の中でそう呟くと2人とまた笑顔で話しを始めた。

卯月は頑張り屋だ。
そのため頑張ることを諦める、ということに非常に敏感だった。
養成所時代も次々と辞めていく同期の独特な雰囲気も嗅ぎとることができた。
そしてここ最近卯月には周りにそういう雰囲気が漂っていることを感じ取れていた。
それが自分から発せられていることは凛から話を聞いたとき気づいたのだ。
卯月は気合を入れ直す。

卯月(大丈夫。私はまだ頑張れる。)

部屋に充満する嫌な空気を胸に吸い込み、部屋の電気を消した。

翌日、卯月は今日もレッスンのため事務所に来た。

卯月「おはようございます。」

おはよう、とPから個別のスケジュール表を受け取る。
Pはスケジュール表を渡すのに抵抗を示していたが卯月はそれを気にもせず受け取り、察した。

卯月「それじゃあ私、今から自主レッスンに行ってきますね。」

そう告げるとPからの返事も聞かず部屋を後にした。

今西部長「こんなところでどうしたんだね?」

よっこらせと卯月の隣に腰を降ろした。

卯月「いえ…特になにも…」

卯月の顔を見やりながら話す。

今西部長「CPはとてもいいチームだったね。」

卯月はうなずく。

今西部長「みんないい子でいつも笑顔で、たまには喧嘩することはあったけれど、お互いに高め合い、そしてキラキラと輝いていた…」

昔を懐かしむように話す。

今西部長「CPの解散が決定した時はさすがの私もショックを受けてしまったよ。あんなにキラキラした子達を離れ離れにさせるなんてね。」

煙草を取り出そうと胸ポケットに手を伸ばしたが、はっとその手を下ろした。

今西部長「君はCPにどんな思い出があるんだい?」

卯月「CPは…私にとってもう一つのおうちでした。みんないつも笑顔で、優しくて…
私なんかのことも卯月ちゃん、卯月ちゃんって呼んでとっても良くしてくれて…」

今西部長は目を細めながら卯月の話を聞いている。

卯月「そこに…プロデューサーさんもそんな私たちを微笑んで見守ってくれてて…ちひろさんももちろん部長さんもそんな私たちのことを気にかけてくださってて…」

卯月「私たちは家族だったんです。それなのに突然離れ離れになっちゃって…」

視界が揺らんできた。

卯月「凛ちゃんと未央ちゃんと一緒にニュージェネレーションズを結成して、一緒に歌って、躍って、ご飯食べたり、お買い物に行ったりして…私のせいで迷惑をかけちゃったこともあったけど、2人と一緒の時間はかけがえがなくて大切で…でも…」

スカートに雫が吸い込まれていく。

卯月「でも…それはもう叶わなくて…私ももうアイドルを続けられなくて…結局お伽噺で終わっちゃうんだって思うと悲しくて…」

今西部長はうなずきながら卯月の肩を叩く。

今西部長「うんうん、卯月ちゃんの気持ちはよくわかった。だがね、魔法は解けても君が履いたガラスの靴は消える事は無いのだよ?」

え?と顔をあげる。


今西部長「いま君を必要としている王子様がいるんだ。彼ともう1度シンデレラへの階段を登ってみないかい?」

卯月には今西部長の言っていることが分からなかった。
ただ、彼女にかかった346の魔法は解けても約束のガラスの靴はまだしっかりと履いているのだ。

武内Pはとある雑居ビルの入口に立っていた。

武内P(本当にここで合っているのでしょうか…)

手には地図と手帳が握られていた。
一週間前に突然今西部長から電話を受け取り半ば強引に会う予定を決められてしまった。
その集合場所がなぜか目の前の雑居ビルの中であり、武内Pは困惑していた。
立ち尽くしていても仕方ないとビルの中に足を踏み入れ二階の部屋のドアを開けた。

新章は近々始めますが、それにあたって作者からお願いがあります。といっても、単に「作品の連載中、読んでる人は随時コメントをして欲しい」という、それだけです。連載が終わってから纏めて、とかではなくて、“連載中に”コメントが欲しいのです。

ここでもmixiのコミュニティでも再三言ってることですが、私はSSの作者として、「SSとは読者とのインタラクションの中で作っていくものである」というポリシーを持っています。
つまり、読者からの声がなく、作者が淡々と書いて投下しているだけという状況では、全く意味がないということです。それなら「書かない方がマシ」といっても大袈裟ではありません。
特にこの都道府県SSは、本来3年前に終わっている作品を、需要があると言われて新たに書き続けているものです。投下しても1件2件しかコメントが付かないのでは、その「需要」があるのか否かさえ曖昧になります。
全ての読者にレスを求めるのは酷な事だと思いますが、出来る限り「ROM専」というのはやめて下さい。少なくとも、一夜投下する度に10~20件くらいのレスは付いてほしいです。この数字は、私の考える、SSが正常に連載の体裁を保てる最低限度のレス数です。
連載を続けるにあたり、そのことだけは、皆さんにお願いします。

ちひろ「あら!プロデューサーさん!お久しぶりです。少し早かったですね。」

武内P「せ、千川さん!?なぜここに…」

ちひろ「今西部長からお聞きになっていないんですか?」

武内P「は、はい…ただここに来いと言われまして…」

ちひろ「そうだったんですか!ふふ、今西部長らしいですね。」

理解できない点はいろいろあった。
まず、ちひろのこと。この時間はまだ346で仕事のはずだ。
次に部屋のこと。少し埃っぽいが並べられた事務机、書類棚、ソファそしてホワイトボードまるで移転後のCPのプロジェクトルームだった。

ちひろ「ではとりあえず私から今西部長から言われたことをお伝えしますね。」

ちひろが片付けの手を止めて話をする。

ちひろ「要点を話しますとプロデューサーさんには明日からプロデューサー業に復帰していただきます。」

武内P「は!?!?」

あ、詳しい手続きはこちらでら全て行いますね、と笑顔で話すちひろに武内Pは混乱を隠せない。

ちひろ「それと明日からここを事務所として新しいプロダクションを立ち上げます。」

武内P「……」

武内Pはもう何も言えなくなっていた。

ちひろ「あ、私も昨日346を辞めて明日からここの社長になりますのでよろしくおねがいします。」

武内P「あの…」

ちひろ「はい!プロデューサーさん、なんでしょう?」

社長が誰か、の前に気になることがあった。おずおずと手を挙げて質問する。

武内P「…先ほど私がプロデュース活動を行うと仰られましたが所属されているアイドルの方はいらっしゃるのでしょうか?」

オーディションをしたとしても人が集まるとも思えない。
そうするとやはり街中でのスカウト活動をすることになるだろう。
そのことの確認をしたかった。

ちひろ「はい!いい質問ですね。現在1名、このプロダクション所属の子がいます。」

これには驚いた。こんな突然設立されたプロダクションにすでに所属しているアイドルがいるとは。
ちひろの手腕に感心した。

ちひろ「ふふふっ、驚いてるようですね?この分じゃ失神されそうで怖いですけど。」

武内P「は?」

ちひろ「そろそろ所属の子が来る時間なんですけども…ちょっと遅いですね。」

するとタン、タン、と階段を登る音が聞こえてきた。
その足音は扉の前で止まり少しするとノックの音が聞こえてきた。コン、コン

卯月「失礼します!遅れちゃってごめんなさい!こっちの方に来たのは初めてで道に迷ってしまって!」


武内Pは眩暈がして近くのソファに座り込んでしまった。

卯月「わっ!プロデューサーさん!お久しぶりです!なんで会いに来てくれなかったんですかぁ~」

武内P「し、島村さん…ど、どうしてここに…?」

卯月「どうしてって…私はここのアイドルですからね!」

ふんっと鼻を鳴らしてドヤ顔を決めて見せた。

ちひろ「ではプロデューサーさんにご紹介しますね。こちらがうち所属のアイドル、島村卯月ちゃんです!」

卯月「島村卯月、頑張ります!ぶいっ!」

お得意のダブルピースも決めたところでやっと武内Pは落ち着きを取り戻してきた。

武内P「あの…1つ質問を…」

卯月「はいっ!なんでしょうか?」

武内P「島村さんは346はどうされたんですか?」

卯月「退職しました!」

あっけからんと言うものだ。

武内P「し、しかし!NGsはどうなされたんですか!?」

少し間を置いて卯月は話し出した。

卯月「…NGsは解散することにしました…」

武内P「それは…!」

卯月「凛ちゃんと未央ちゃんとも話し合った結果です。後悔はしてません。」

武内P「しかしそれでは!」

ちひろ「プロデューサーさん?」

ちひろが話しかける。

ちひろ「プロデューサーさんがいなくなってから色々なことがあったんですよ?」

卯月を見る。

ちひろ「わたしからお話しましょうか?」

卯月「いえ、私からプロデューサーさんにお話しします。」

卯月は凛と答えた。
そしてこの決断をするまでの自分の身の回りに起こったことを話し始めた。

武内P「そんなことが島村さんに…」

卯月「それに346をやめたことはそれだけじゃありません。」

武内P「他にもなにか理由が?」

卯月「はい。実は今西部長に『情けない男がいるから君星になってが行く道を示してくれないか』って。」

ちひろがクスリと笑う。

卯月「私はプロデューサーさんに見つけてもらって、それで星になれたんです。だけどそんな私の大事な人が暗闇に沈んでると知って…まだまだ一等星には程遠い暗い光ですけど、それでもプロデューサーさんに行くべき道を照らしてあげられたなって!」

卯月が笑う。

卯月「今度は私がプロデューサーさんを輝かせる番です!私の恩人をこのまま放っておけません!だって私はプロデューサーさんのアイドルなんですから!」

武内Pはありがとうございます、とかこれから頑張りましょう、などぐちゃぐちゃな顔で繰り返していた。
卯月もちひろも泣き笑いしながらその肩を抱いた。
まだまだ寒空が続く。しかし、公園の桜にはすでに1つの蕾ができていた。
それは花を開かせる時を今か今かと待ちわびるようにその身を希望で膨らませていた。

〜to be next stairs〜

小学生の時に眠れなくて一晩中ずっと起きてた時、

ふと気がつくと新聞配達の時間になっていたので

軽い気持ちで新聞配達のおじさん(知り合い)を脅かそうと思った
おじさんの車の独特なエンジン音が聞こえてきたので

窓を半開きにしてスタンバイ

おじさんが車のドアをしめて家の前にくるのを

見計らって唸り声をあげつつ勢いよく窓から頭を突き出した
でも開けたのは窓だけでうっかり編み戸を開け忘れていたらしく、

私の頭に押された編み戸は外れて落下

それにびっくりして「グォフビャアアァァァ!!」と悲鳴を上げる私
落下した編み戸&奇声&窓から突き出た髪の長い頭に

びっくりしたおじさんもすげぇ悲鳴を上げながら

変な格好で飛び上がり家の前に止まってる父の車に頭を強打
二階と家の前から聞こえた悲鳴に驚いて飛び起きる両親

窓から身を乗り出してわたわたしてる私を母が、

頭撃って伸びてるおじさんを父が発見
混乱しながら「押し入れから雪男が出てきて私を飛ばしたの!」

と意味不明な言い訳をしたけどすぐにばれて

両親と一緒におじさんに土下座した

なんか、今日の朝っぱらに自転車こいでたら酔っぱらいの爺が

「ぎぃんぎらぎぃんにさりげなくぅぅぅぅっ!!!」

って言いながら前から自転車乗ってやってきて
すれ違ったあとに

なんやあいつと思った途端にUターンしてきて

「そいつがおぉれのやりかたぁぁぁぁ!!!」

って言いながら追いかけられて泣きそうになったの
思い出した

会社行く時、毎朝同じとこで会う猫がいて、

いつもニャーって言ってくるから、ニャーって言い返して通り過ぎてたんだけど、

休みの日に夕方そこ通ったら、その猫が塀から飛び降りてきて、

ちょっと歩いてはこっち向いてニャーって言うんだよ

もしかして付いてこいって言ってんのかな?と思って、そのまま後を付いてったら、

半分空き地で半分駐車場みたいなとこに連れてかれたんだ
んで、猫が駐車場の隅っこの方に座ったから、その隣にしゃがんだら、

なんだか知らないけど続々と猫集まってくるんだよ

これが噂の猫集会か!って思って、感動しつつ5匹の猫に囲まれてしゃがんでたら、

いきなり俺の真後ろの建物の戸が、ガラッ!ってすごい音立てて開いてさ
超驚いて振り返ったら、猫缶と皿持ったごついおっちゃんが驚いた顔して立ってて、

なんかもうびっくりしたのと慌てたのとで頭真っ白になってしまって、

おっちゃんに向かって「あ、俺のはいいです」とか言ってしまった
おっちゃんも「おう…そうか」とかなってたけど、

お互いに何言ってんだかわかんないし、立ち去るタイミング逃して、

恥ずかしくて死ぬかと思った

超ハマってたゲームなのに、友人と奥さんにゲーム機ごと売られてしまいました。
私の同僚(男)の話です。

先日、彼の結婚式(披露宴)に招かれました。
会場は都内のすばらしい式場で、新婦も美人。
新郎の幼いころからの友人もたくさん駆けつけ、感動的な披露宴でした。

ただ、仲の良すぎる悪友(?)たちが「ちょっとぶっちゃけ気味かな?」という感じでした。
大変な盛り上がりの中で披露宴はお開きになり、参加者は二次会へ流れ、アトラクションが始まりました。

「あるものを売った値段を当ててください」というクイズです。

そして、会場のスクリーンには、悪友が彼の家からプレステ3とソフトをこっそり持ち出して、
「ブッ○オフ」で売りさばく映像が……。

彼はウイニングイレブンというサッカーゲームにハマっていて、
アジアNo.1に輝くほどの腕前だと披露宴でも紹介されていました。

しかし、そんな栄冠をあざ笑うかのように、映像では淡々と買取査定が行われ、
ゲーム機は店の奥に消えていきます。
当然のことですが、買い取られたゲーム機のデータは、
日本一だろうが世界一だろうが「完全消去」されます。

大爆笑が渦巻く会場の中で、一人言葉を失ったままスポットライトを浴びている新郎……。

どうやら新婦は彼の“ゲーム漬け生活”を快く思っていなかったらしく、
そこへ悪友がこの“サプライズ企画”を持ちかけたようです。

企画の決行は奇しくも昨日、彼が今日という

俺も3年前に自宅前から単車を盗まれたことがあるが、半年位経ってから警察から電話があり
「見つかったから来て欲しい」と言われて、早速行ってみると、単車がボロボロに壊れていたので
警官に聞いたら、このバイクを盗んだ少年が事故を起こしましてお亡くなりになりました。と言われた。

その瞬間怒りは消えて「あははっざまぁ~みろ!」と言ったら警官にすごく怒られた。
でも俺は「他人の財物を盗んで盗んだ物で命を絶ったのだから自業自得でしょ」と
言ったらそれ以上は何も言って来なかった。

盗んだ奴の遺族に単車を弁償してもらうので住所を教えて欲しいと言ったら、
最初は「親御さんの事を考えて損害賠償を請求する事は控えて欲しい」と言われたが、
「私は泣き寝入りしろという事ですか?」と強く粘ったら、盗んだ奴の住所を教えてくれた。

俺はその親に内容証明郵便で単車代を請求したら、あっさり満額支払われた。
オマケに盗難保険も入っていたので二重取りでウマー 
俺の単車を盗んでくれた××君どうもありがとう。あの世でいつまでもツーリングを楽しんで下さい。お気に入り詳細を見る

上にコレクションについての話がありましたけど
私は夫のコレクションを捨ててしまって後悔した立場でした
鉄道模型でしたけど

かなり古い模型がまさに大量(線路も敷いてて一部屋使っていた)という感じでした
結婚2年目ぐらいから「こんなにあるんだから売り払ってよ」と夫に言い続けたのですが
毎回全然行動してくれずに言葉を濁す夫にキレてしまい
留守中に業者を呼んで引き取ってもらえるものは引き取ってもらいました

帰ってきた夫は「売り払ったお金は好きにしていい」「今まで迷惑かけててごめん」と謝ってくれました
残っていた模型も全部処分してくれたのですごく嬉しかったです

でもその後夫は蔵書をはじめ自分のもの全てを捨て始めてしまいました
会社で着るスーツとワイシャツや下着以外は服すらまともに持たなくなり
今では夫のものは全部含めても衣装ケース二つに納まるだけになってしまって

あまりにも行きすぎていて心配になり色々なものを買っていいと言うのですが
夫は服などの消耗品以外絶対に買わなくなってしまい
かえって私が苦しくなってしまいました

これだけ夫のものがないと夫がふらっといなくなってしまいそうですごく恐いのです
こういう場合ってどうしたらいいんでしょう

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