悟空「……ん？誰かこっちに来るぞ」

トン「なに？……なんだ、誰も見えねぇじゃねぇか。下手な嘘で逃げようたってそうはいかねぇぞ」

悟空「すげぇ速さだ……ホラ来た」

フェルト「どいたどいたどいたー！」

カン「ほんとに来やがった……って、ガキじゃねぇか」

チン「邪魔するなら一緒にやっちまおうぜ！」

悟空「乱暴な奴らだなぁ」

フェルト「ん？なんか揉め事の最中みたいだけど……悪いな兄ちゃん！あたし急いでるんで！それに兄ちゃん強そうだし多分大丈夫だろ！」ﾋﾟｮﾝ

トン「うわっ？」

カン「オレ達の上を飛び越えた！？」

悟空「ちっこい割に良い動きだぞ」

フェルト「じゃあな兄ちゃん！強く生きてくれ！」

チン「……なんだったんだ今の」

悟空「あいつ鍛えてやれば良いセン行くかもしれねぇな」

トン「ちっ、白けちまった。けど兄ちゃん、身包みは剥がせてもらうぜ。さぁ持ちもん全部置いてきな」

悟空「まだそんなこと言ってんのかオメェ達……ん？また誰か来るぞ。今度は二人来る」

カン「ほんとだ、また誰か来やがるぞ！」

エミリア「そこまでよ、悪党！」

チン「……？一人しかいねぇじゃねぇか」

悟空「いや、二人分の気を感じるぞ。」

エミリア「……？なんの話？それより、盗んだものを返しなさい！」

悟空「盗んだもの？……オメェ達、こんな子供からもドロボーしてたんか？」

トン「し、知らねぇよこんな奴！」

エミリア「あれ……良く見ると見た目が全然違う……」

悟空「もしかしてさっき来たヤツか？あいつならもう行っちまったぞ」

エミリア「ほんと？なら追わなきゃ！……って言っても」

トンチンカン「？」

エミリア「見過ごせる状況じゃ、ないみたいね」ﾄﾞｰﾝｶﾞｰﾝﾁｰﾝ

トンチンカン「ぐわー！雑にやられた！」

悟空「なんだ今の？気に似てるけどちょっと違うぞ」

エミリア「あとは役人を呼べばなんとかしてくれる筈だから。じゃあ私はこれで……」

グゥゥゥ～～

悟空「ハ、ハラ減ったぁ～～！なぁ、ヤクニンってヤツって飯も食わせてくれるもんか？」

エミリア「え、えーっと……ご飯は多分食べさせてはくれないかな」

悟空「めぇったなぁ……オラ金も持ってねぇし、このままだとハラ減って死んじまうぞ」

エミリア「……良かったら、少しだけならご馳走するけど」

悟空「ほんとかぁ！？でもおめぇ急いでるんじゃ無かったのか？」

エミリア「考えてみれば情報を貰っておいて何もお返ししないんじゃ変だもの。だからこれは別にあなたが飢えているのが見てられないからじゃなく、行いに対する正当な対価なの。」

悟空「……良くわかんねぇけど、おめぇ良いヤツなんだな。それじゃあ甘えさせてもらうぞ」

・

・

・

・

悟空「ふぅ～食った食ったぁ～！エミリアはあんまり食べてなかったけど少食なんか？」

エミリア「わ、私は朝ごはん食べてきたから……ゴクウは凄く良く食べるのね」（ラムに貰ったもしもの時用のお金全部無くなっちゃった……）」

悟空「お陰でハラいっぺぇだぞ。メシも美味かったしな！」

エミリア「な、なら良かったわ。それじゃあ悪いけど私もう行くわね」

悟空「さっきのヤツを探すんか？」

エミリア「ええ。あの子に盗まれた徽章はどうしても取り返さないといけないの。」

悟空「それならオラも手伝うぞ」

エミリア「ありがとう。でも大丈夫よ。一人で探せる」

悟空「居所に心当たりがあるんか？」

エミリア「それは……が、頑張って聞き込みするわ」

悟空「なんだ、ならやっぱりオラも付いていくぞ。さっきのヤツの気はちっさかったけど、妙な雰囲気だったから覚えてっからな。直ぐ見つかると思うぞ」

エミリア「キ……？良く分からないけどあの子の居場所知ってるの？」

悟空「ああ。えーっと……あっちの方だな」

エミリア（……パック、どう思う？）

パック（ううーん、確証は無いけど多分ゴクウは悪い人じゃないと僕も思うよ。……まぁリアがしたいようにすれば良いよ。君は僕が守るから）

エミリア「……うん、それじゃお願いしようかな。どうせ探す当てもないし」

悟空「任せとけ。でもその前に……あそこのリンガってやつ食べさせて貰えねぇかな？」

エミリア「……………さっきのお釣りで二つぐらいなら買えるかも」

・

・

・

・
エミリア「ここに私の徽章を盗んだ犯人が居るの？貧民街は盗人の隠れ蓑になりやすいとは聞いたことがあるけど……」

悟空「ああ、このでっけぇ家の中にさっきのヤツが居るみてぇだぞ。入ってみれば分かる」

エミリア「分かった。それじゃ、ゴクウはここで待ってて。」

悟空「？どうしてだ？」

エミリア「……揉め事になるかもしれないし。これ以上は迷惑掛けられないわ」

悟空「あはは、なーんだそんなことか。でぇじょうぶだ。オラ鍛えてるし」

エミリア「それは見れば分かるけど……分かったわ。でも危なくなったら直ぐに逃げること。良い？」

悟空「分かった分かった、さぁ入るぞ」

ロム爺「ノックも無しに何の用じゃお前さん方」

フェルト「客か？……って、ゲッあんたは」

エミリア「やっと見つけた！盗んだものを返して！」

ロム爺「なんじゃフェルト、下手を打ったのか」

フェルト「ちゃんと撒いたと思ったんだけどなぁ……って、横に居る兄ちゃんはなんか見覚えがあるな。もしかして兄ちゃんがなんか言ったのか？」

悟空「へへ、アタリだ。おめぇ独特の気してっから遠くからでも良く分かるぞ」

フェルト「キ……？なんかよくわかんねぇけどまぁ良いや。ねぇちゃんこれを取り返しに来たんだよな？」

エミリア「当たり前でしょ！さぁ返して！」

フェルト「分かった。んじゃ、幾ら払う？あたしは金貨10枚でこの仕事を受けたからそれ以上のカネを払って貰わねぇとな」

エミリア「な、何を言ってるの？どうして私のものを取り返すのにお金を払わないといけないの！」

フェルト「あんたのもの？今はあたしが持ってんだからこれはあたしのもんだぜ。盗まれたあんたが悪いんだよ」

エミリア「な、なんですって！この……悪党！悪もの！悪人！」

フェルト「全部同じ意味じゃんか……」

悟空「オラ難しい話はわかんねぇけど、さっきからドアの前に居るヤツは誰だ？おめぇたちの仲間か？」

フェルト「え？」

ロム爺「そういえばそろそろフェルトの取引相手が来る頃じゃな」

エルザ「……あらあら、ちゃんと気配は消していたつもりだったのだけれども」

悟空「そんだけ血の臭いさせてたら嫌でも気付くぞ。おめぇあんまり良いヤツじゃねぇみたいだな」

フェルト「なんだ、あたしの依頼人じゃねぇか。……カモと依頼人がかち合っちまうなんて最悪だな」

エルザ「ええそうよ貧民街のドブネズミさん。まったく、あなたのような貧相な子供に依頼なんてするものじゃないわね」

フェルト「……あ？喧嘩売ってんなら買ってやるぜ？」

エルザ「ええ、なら買って貰おうかしら。代金はあなたの命ではいかが？」

ロム爺「フェルト！」

フェルト「え……？」

ガッキィィィイン！

エミリア「下がって！」

フェルト「ナ、ナイフ！？あんたいきなり正気か！？」

悟空「今のを防ぐなんてすげぇなエミリア！」

エミリア「ありがと。ゴクウも下がって。」

エルザ「あらあら、少しは楽しめそうね。そっちのお兄さんも戦ってくれるのかしら？」

パック「その必要は無いよ、お嬢さん」

エルザ「ーーー！！」ｷｨｨｨﾝ!

パック「あら、今のを防がれるとは思わなかったな。不意打ち失敗しちゃった」

悟空「おめぇどっから出てきたんだ？」

パック「やぁゴクウ。エミリアをここまで案内してくれてありがとうね。ビックリさせちゃいけないと思って挨拶しなかったんだけど……」

悟空「もしかしてさっきからエミリアと一緒に居たキの正体はおめぇか？」

パック「キ？良く分からないけど僕の存在に気付いてたなんて凄いね。僕はパック、エミリアに付き従う精霊さ」

悟空「セイレイ……？まぁいいや。オラは悟空だ。よろしくな」

エルザ「あらあらあらあら、ハーフエルフに屈強なお兄さんにこの上精霊だなんて、今日はなんて良い日なのかしら。あなた達の腸を見るのが楽しみ」

エミリア「ーーー！」

フェルト「ハーフエルフ？ハーフエルフって言ったか？言われてみればねぇちゃんの耳……銀髪のハーフエルフってまさか！」

エミリア「ひ、人違いよ！私だって迷惑してるんだから！」

悟空「はーふえるふってなんだ？」

エミリア「え？えーっと、エルフと人間のハーフのことだけど……ゴクウは気にしないの？」

悟空「何を気にするんだ？オラの息子も地球人とサイヤ人のハーフだけど別に何も思わねぇぞ」

エミリア「……そっか、ありがと」

悟空「？」

エルザ「……そろそろ良いかしら？私、早くあなた達のお腹を裂いてみたくてウズウズしているのだけれど」

エミリア「ええ。早いところあなたを倒して徽章を返して貰わないとね」

エルザ「うふふ……生意気な子、嫌いじゃないわよ。」

悟空「オラは暫く見物させて貰おうかなーーーっと、なんかこっちに飛んでくるぞ？」

フェルト「え？」

悟空「……来る！でっけぇ気だ！」

？「そこまでだ！」

ドォォォーン！

ロム爺「わ、ワシの盗品蔵が！」

エルザ「あなたは……」

ラインハルト「ラインハルト・ヴァン・アストレア、ここに参上させて貰ったよ。乱暴な入り方ですまない。この付近で腸狩りの目撃情報が有ったんだけど……来て正解だったね」

フェルト「腸狩り！？腸狩りって、腸狩りのエルザか！？や、ヤバいぞ兄ちゃんねぇちゃん！まともな人間に敵う相手じゃねぇ！」

ラインハルト「心配しないで良い。この場は僕が収めて見せる」

フェルト「飛んで来た兄ちゃんは何もんだ……って、ラインハルト・ヴァン・アストレア！？それってーーー！」

ロム爺「剣聖の家系、それも歴代最強と言われるあのラインハルトか！」

悟空「なんの話だ？」

エミリア「え、えっーと……物凄い強い悪者が目の前に居るけど、とんでもなく強い英雄がそれを助けに来てくれたって感じかな？」

ラインハルト「そんな風に言われてしまうと恐縮ですが、可能な限りご期待に沿えるように奮闘させて貰いますよ。そっちの屈強そうなお兄さんもーーーー！！！！！！？？？？？？？」

ラインハルト「な、なんだあなたはーーーに、人間なのか！？」

悟空「？オラのことか？」

エミリア「騎士様？その言い方はちょっと失礼じゃ……？」

ラインハルト「あ、あなたは―――――あなたは異常だ！な、何が…何がどうなればそれほどの力を持つことになるんだ！？あまりにも……あまりにも規格外過ぎる！」

悟空「良くわかんねぇけど、オラのしてきたことと言えば修行ぐらいだぞ。途中で超神水なんかの力に頼ったことも有ったけど……」

ラインハルト「修行！？バカな！鍛錬だけでそこまでの境地に達することの出来る人間が……いや、そもそもあなたは人間なのか！？」

エルザ「剣聖が何をそこまで驚いているのか気にはなるのだけれど、そろそろあなた達の腸を見せて貰っても良いかしら？この上剣聖まで加わったとなれば私もう辛抱堪らないのだけれど」

ラインハルト「…………君の名前は？」

悟空「オラか？オラは悟空だ。よろしくな。」

ラインハルト「ゴクウ……分かった、あなたのその埒外の強さは放置する訳には行かないが、幸い悪意は感じない。ひとまずこの場はエルザの相手を……僕はこの場に必要なのかな？」

悟空「オラはおめぇの戦ってる所見てぇぞ。おめぇ相当強そうだからな」

ラインハルト「……あなた程の方にそう言われても素直に喜べませんね。ですがありがとう。ではーーーお望み通り、剣聖の力をお見せしましょう。僕の剣も鞘から顔を出している。

エルザ「それは確か使うべき時以外は抜けないようになっているという、アストレア家に代々伝わる聖剣よね？そんな剣に認めて貰えるだなんて、光栄だわ。」

ラインハルト「……おそらく細かな点では違いますが、とはいえ使えるものは全て使って相手をするのが道理でしょうね。あなたもかなりの強者なようだ」

エルザ「―――腸狩り、エルザ・グランヒルデ。」

ラインハルト「―――――剣聖の家系、ラインハルト・ヴァン・アストレア」

ｶｯ!

フェルト「…………えっ？」

エミリア「眩し……あれ、エルザが倒れてる」

ロム爺「……目にも止まらぬ剣劇とは、正にこのことじゃな」

悟空「うっひゃぁ～！おめぇやっぱすげぇぞ！あれを二発目まで受け止めたエルザっちゅうんもすげぇけど、おめぇはもっとすげぇ！やるなぁ！」

ラインハルト「やはりあなたには全て見えていましたか。……この程度の技ではきっと、あなたには掠り傷一つ負わせられないでしょうね」

悟空「……うん、でもおめぇはまだまだ強くなれると思うぞ。そしたらわかんねぇかもな」

ラインハルト「ははは……精神面ならともかく、剣の技量が足りないと言われたのなんて数年ぶりですよ。……で、あなたは何者です？」

悟空「オラは悟空っちゅう地球人だけど……」

ラインハルト「チキュウ……？」

悟空「そうだ、ここは何処なんだ？もしかしてオラ地球の外にまで来ちまったのか？」

ラインハルト「……ここはルグニカ、親竜王国ルグニカ。竜と契りを交わした国です。チキュウという国は聞いたことがありませんね」

エミリア「えっと……お話の最中悪いんだけど、とりあえず私の徽章返して貰いたいんだけど……」

フェルト「……ああ、分かったよ。依頼人がこうなった以上、こいつはあたしにとってなんの価値もねぇ。騎士サマが居たんじゃ逃げようもないしな」

ラインハルト「別に僕は君をどうこうするつもりはないよ。盗んだものを返さないと言うのなら別だけどね」

フェルト「え？」

ラインハルト「今僕は騎士としてではなく、１個人としてここに居るに過ぎない。生憎今日は非番でね。流石に腸狩りは放っておけなかったが、子供を叱るのはそっちのお爺さんに任せるよ。」

フェルト「あたしをガキ扱いすんな！……まぁいいや。ほら、返すよ。……悪かったな」

エミリア「良かった、これで……」

ラインハルト「――――これは！」

フェルト「いてっ、何すんだよ騎士サマ！」

ラインハルト「これは――――君、名前は？」

フェルト「いてて……フェルトだよフェルト！ただのフェルトだ！なんだってんだよ一体！そんなに強く握られたら手首がいてぇよ！」

ラインハルト「これは……今日はなんて日なんだ。国を滅ぼすほどの力を持った存在に出逢っただけでも大事なのに、この上……君、悪いけど一緒に来て貰うよ。」

フェルト「はぁ？何勝手なこと言って……うっ」ｶｸﾘ

ラインハルト「すまない。少し眠っていてくれ」

ロム爺「貴様、何をするんじゃ！」

ラインハルト「……すまないが、あなたも。悪いようにはしない」

ロム爺「ふざけ……うっ」ﾊﾞﾀﾘ

エミリア「騎士様らしくないやり方」

悟空「おめぇ不思議な術も使えるんだなぁ」

ラインハルト「事が事なのでね。さて、ゴクウ、あなたは……」

エミリア「あっゴクウはうちに招待しようかと思うの。助けてもらったお礼もしないといけないし」

悟空「お礼？オラなんかしたか？」

エミリア「ここまで案内してくれたじゃない。それにゴクウは今行くところがないんでしょ？寝食は提供するわ」

悟空「ほんとか？そういうことなら暫く世話になろうかなぁ」

ラインハルト「……あなたのことは放っておけないが、かといって僕にあなたをどうこうする力がある訳ではない。僕はこれからしなければいけないことが沢山増えてしまったことだし……分かりました、ゴクウの身柄はあなたに預けます、エミリア様」

エミリア「ええ、それじゃ……もう、夕月が出てきたわね」

ラインハルト「……こんな風に黄昏時を穏やかに見られるのも、今日が最後かもしれないな……」

悟空「良くわかんねぇけど、行くなら早く行こうぜエミリア！オラ腹減っちまった！」

エミリア「……さっきあれだけ食べてたのに……」


第一章 完

パック「あれ？もしかして僕空気？まだ居るんだけど」

とりあえず終わりです。悟空全然活躍してねぇ。
二章以降は気が向けば書きます。とりあえず少しの間このスレッドは残しておきます。読んで下さった方ありがとうございました。

レス下さった方ありがとうございます。暫く時間が取れそうにないので一旦過去ログ化申請出してきました。また今度続きをやるかもしれないので、その時はよろしくお願いします

レスくださった方、ありがとうございます。
二章が書き上がったので、ひっそりと投稿します。

なお、本編には若干ですがリゼロWEB版のネタバレが含まれていますのでご注意ください。それから、話の都合の為色々時系列やらなんやらを都合よく解釈している点が多々あります。その他粗がかなりあると思われますが、それでも良いと言って下さる方はどうぞご覧ください。

～ラインハルトと別れた後～
エミリア「さてと、それじゃまずラムと合流しないとね」

悟空「ラムって誰だ？」

エミリア「私がお世話になってるところの使用人さんよ。今日は途中ではぐれちゃって、その後徽章を盗まれて……だから今頃凄く心配してると思う。悟空って、ラムの居場所も分かっちゃったりしない？　あの不思議な力で」

悟空「流石にしらねぇ奴の気は探せねぇかなぁ」

エミリア「うん、そうよね。ごめんなさい、無茶なこと言っちゃって。それじゃ、地道に街を歩いて探さないと。暗くなる前に見つけたいかな」

悟空「いや、でぇじょうぶだ。気はわかんねぇけど、この街ぐれぇの広さなら、武空術で飛びまわって探せば直ぐ見つかると思うぞ。そのラムっちゅうんは、どんな見た目なんだ？」

エミリア（ブクウジュツ……？　また不思議な魔法かしら？）

エミリア「ラムは小さくて可愛い女の子よ。短い桃色の髪で、目尻が少し高い……「おおーい！　待ってくれ！　……テラ！　待ってくれって！」

悟空「なんか向こうから走ってくる奴が居るぞ」

エミリア「……今、なんて」

？？？「や、やっと見つけた！　急に居なくなるから探したんだぜ！　無事だったんだな、」

？？？「―――サテラ！」

エミリア「…………！！！」

……ざわざわ……

「おい、サテラって」「ま、魔女教徒でも出たのかい？」「そういえばあの髪」「それに見ろよ、あの耳！」

……ざわざわ……

？？？「な、なんだ？」

エミリア「…………何処の誰だか知らないけど、一体どういうつもり」

？？？「へ？　な、何を言ってるんだ？　俺だよ、スバルだよ！　ずっと君を探してたんだ！」

エミリア「……そんな名前、知らない。そんなことより、答えて。一体何が目的なの」

スバル「も、目的？」

エミリア「だから－－－人を『嫉妬の魔女』の名前で呼ぶなんて、どういうつもりなのって聞いてるの」

悟空「お、おいエミリア……なんだか良くわかんねぇけど、落ち着けよ。多分こいつには悪気は……」

エミリア「ゴクウは黙ってて！　さぁ、答えて！」

スバル「ちょ、ちょっと待ってくれ！　嫉妬の魔女？　ってのがなんの事なのかわかんねぇけど、俺はただ君の名前を呼んだだけで」

エミリア「……そう。そういう手合いね。良いわ、好きに言うと良い。……ゴクウ、行きましょう」

スバル「ちょ、ちょっと待ってくれ！」ｶﾞｼｯ

エミリア「……！　離して！　悪口を言うだけなら、好きにすれば良いわ。でも、それ以上の嫌がらせをするつもりなら……！」

悟空「ふ、二人とも落ち着けって！　スバルとか言うおめぇも、一回離れ……って、おい。もしかしてエミリアが言ってた桃色の女って」

スバル「一体どうしたんだよサテラ！　盗品蔵で、あの後なにが有ったのか教えてくれ！　俺はただ話が聞きたいだブェッ！？」

エミリア「きゃっ……！　……ラ、ラム！？」

悟空「おお、良い飛び膝蹴りだぞ。見事に吹っ飛んだな……って、でぇじょうぶか兄ちゃん！」

ラム「エミリア様、真にご無事で何よりです。……申し訳ございません。ラムの不注意でエミリア様と離れ離れになってしまい、今まで発見することが出来ませんでした。この罰は、なんなりと」

エミリア「い、いや、そんなのは良いわ。はぐれたのだって私の責任だし……ラムも無事で良かった」

ラム「……しかし、見れば暴漢に襲われていた御様子。そんな時に傍に居なかったのは、お目付け役として失格です」

ラム「ですからどうか、この場で挽回させて下さい。さっきの目つきの悪い男はもう立てないでしょう。あとはこの筋肉ダルマを細切れ肉に変えてみせます」

エミリア「ラ、ラムちょっと待って！　この人は違うの！　ゴクウって言って、さっき私を助けてくれたのよ！」

ラム「……この男が、ですか？」

悟空「二人とも、話してないでちょっとはこっちの兄ちゃんのことも心配してやれよ……こりゃなかなかの重傷だぞ」

スバル「げほっ、こ、腰が、腰が」

ラム「自業自得よ。そんな間抜けな顔でエミリア様の肌に触れようだなんて、分不相応にも程があるわ」

スバル「か、顔は関係ねぇだろ……いってぇぇ」

エミリア「……水のマナよ、この者に癒しを」ﾊﾟｧｧ

スバル「いてて……ちくしょう、クソ痛……くない？　怪我が、治っていく……？」

ラム「エミリア様！」

エミリア「ラム、今のはやり過ぎよ。この人に謝って」

ラム「…………見知らぬ低俗なお方、申し訳ありませんでした」

スバル「謝る気ゼロかよ……けど、さっきは俺も興奮して乱暴な真似しちまってたから、謝るこたぁねぇよ。むしろ俺の方こそ、なんかごめん」

エミリア「……はい、これで殆ど完治したはずよ。汚れた服までは元には戻せないけど、それはお相子ってことにして頂戴。……それじゃ、行きましょう、ラム、ゴクウ」

ラム「はい、エミリア様」

スバル「ちょ、待ってくれよ！　サテ……じゃなくて、エミリア、か？　ともかく話を聞いてくれ！」

悟空「なぁエミリア、ちょっとぐれぇこいつの話聞いてやってもいいんじゃねぇか？」

エミリア「……ゴクウがそう言うなら。けど、聞いても無駄だと思うわよ。大方、私みたいなのをからかうのが好きな、嫌な人種でしょう」

スバル「ち、違うって！　俺と君は、さっき会ってるだろ！　その後はぐれたっぽかったから探してたんだ！」

ラム「……エミリア様、もしかしてこの男、単なる物狂いの類では」

スバル「人を妄想と現実の区別が付かない人間扱いするんじゃねぇ！　……そうだ、パック！　パックなら俺のこと覚えてるんじゃねぇか！」

エミリア「……！　どうして、パックのことを……？　もしかして、パックの知り合い？　でも、それなら私が知らない訳はないし……」

スバル「ああいや、パックはもう退勤時間か。もう夕暮れだし……夕暮れ？」

スバル「……ちょっと待て、俺とサテ……じゃなく、エミリアがはぐれたのは夜だった。なのに気が付いた時には昼間で、今は夕暮れ……それに、あの直前の記憶」

スバル「……まさか、俺は、死に戻－－－っぐっ！！？？？」

悟空「………！！」ｿｿﾞｿﾞﾞｯ

エミリア「なに？　どうしたの？　急にうずくまって……」

悟空「な、なんだ今のきっしょくわりぃ気は？　一瞬で現れて、一瞬で消えた……？」

スバル「……くはっ！　はぁ、はぁ……」

スバル「……まさか、そういうことなのか？　なら……」

ラム「エミリア様、ここまでです。この男、何かおかしい。これ以上は関わり合いにならない方がいいかと。もう十分そこの筋肉ダルマへの義理は果たしました。屋敷に戻りましょう。じきに日も落ちます」

エミリア「……そうね」

スバル「ま、待ってくれ！　俺は死……ぐうぅっ！？」

悟空「……！　まただ。なんなんだ、この気持ちわりぃ気は……？　……なぁエミリア、わりぃんだけど、こいつも一緒に連れていく訳にはいかねぇかな？」

ラム「は？」

エミリア「ええ！？　……そりゃ、ゴクウの頼みなら断れないけど、でも、どうして……？」

悟空「頼むよ。こいつはなんちゅうか……ちょっと面白い奴だと思うんだ。こいつのことは全部オラが責任取るからさ。頼むよ」

スバル「げほっ、ごほっ、あ、あんたなんでそんなこと」

悟空「まぁまぁ。おめぇもそうしたいんだろ？」

ラム「ちょっと待ちなさい。そもそも何故、あなたが私達に同行することになっているの」

エミリア「ま、待ってラム。詳しくは後で話すけど、私はゴクウに本当に沢山助けられたの。だからゴクウは元々、屋敷に招待するつもりだったんだけど……」

ラム「……それは分かりました。ですが、何故そっちの男まで」

悟空「エミリア、頼む！　な？」

エミリア「……仕方ないわ。ゴクウのお願いなら、聞けない訳はないもの。……ただし、その人が何かおかしな真似をしたら、その時は王都まで強制的に送り返させて貰う。その後の面倒も見ない。それで良いわね？」

悟空「ああ！　サンキューなエミリア！」

エミリア「さん、きゅう……？　えっと、ありがとう的な意味合いかな？」

スバル「……！　ちょ、ちょっと待った！　悟空さん、あんたもしかして」

ラム「話は後よ。そろそろ本当に日が暮れてしまう。エミリア様、今から竜車を飛ばせば、夜までには御屋敷に戻れます。宿賃を無駄遣いするよりは、その方が良いとラムは具申します」

エミリア「そう、ね。そうしましょう」

悟空「よっしゃ、そうと決まればちゃっちゃと行こうぜ！　オラもう腹ぺこでさぁ」

ラム（……この男、一体なにものなの。身のこなしが明らかに常人のものじゃない。ひょっとすると、鬼化したラムでもこの男には……）

エミリア「ラム？」

ラム「……いえ、なんでもありません。それでは行きましょう」

スバル「なんだか良くわかんねぇが、とりあえず首の皮一枚繋がった、のか……？」



.

.

.

～数時間後、ロズワール邸食卓の間～

悟空「うっひゃぁぁぁ～！　上手そうなご馳走が山盛りだぞ！　これ全部食ってええんか！？」

ロズワール「どぉーうぞどうぞ。なんと言ったってあなたはエミリア様の危機を救ってくれた恩人だぁーからね。当然これぐらいのお礼はしないと罰が当たるってもんだぁーよ」

悟空「んじゃ、遠慮なく……いただきまーす！」ｶﾞﾂｶﾞﾂﾑｼｬﾑｼｬﾓｸﾞﾓｸﾞ

エミリア「レ、レム？　悪いんだけど、追加でもう五人前ほど料理を作ってきてくれないかしら？　多分これじゃ足りないから……」

レム「かしこまりました、エミリア様。ですがその前に、お客様にご挨拶を」

ロズワール「おお、その通りだぁーねレム。ゴクウ君、食べながらで良いから聞いてくれるかな？　うちの使用人たちをご紹介したい。ついでにぼぉーくの自己紹介も如何かな？」

悟空「もほ、ひひてぇふぉ」（おお、聞きてぇぞ）

レム（……はしたないです）

ロズワール「ありがとう。それではまぁーず、こっちの桃色の娘がラムだぁーよ。と言っても、彼女のことはもう知っているかな？」

ラム「改めましてゴクウ様、ラムと申します。この度は我が主人、エミリア様の危機をお救い頂いたこと、心より感謝申し上げます」

悟空「んぐ……ごくん。いやぁ、あんなこたぁどうってことねぇさ。ぶっちゃけオラなんもしてねぇしな。それに、オラにはそんなかしこまった話し方しなくていいぞ」

ラム「ありがとうございます」ﾍﾟｺﾘ

ロズワール「それじゃ次に、こっちの青い子がレムだぁーよ。当屋敷の家事の殆どを取り仕切ってくれている、とぉーっても働き者な子でね。良くしてあげてくれると嬉しいかぁーな」

レム「レムです。どうぞお見知りおきを」ﾍﾟｺﾘ

悟空「ひょろひぃくな！」（よろしくな！）

レム（……どうやったらあの量が一度に口に入るのでしょうか）

ロズワール「では最後に、私はロズワール・J・メイザース。一応貴族なんてやらせて貰っているよ。と言っても、放蕩貴族の辺境伯だけどぉーね。エミリア様との関係については、また後程ご説明しよう」

悟空「ごくっ……ヘンキョウハク？　ってのがなんなのかわかんねぇけど、とにかくよろしく頼むぞ！」

悟空「それじゃ、今度はオラ達の番だな」

悟空「オラの名前は孫悟空だ！　地球ってところから来たんだけど、おめぇたちその場所の事しらねぇか？」

ロズワール「チキュウ……ふぅーむ、僕も見識は広い方だと自負しているんだけど、ちょぉーっと心当たりが無いかな。申し訳ないね」

悟空「そっか……ならしょうがねぇな！　んじゃ次は、おめえの番だぞ、スバル！」

スバル「……あの、俺って口開いて良いんですかね？　屋敷陣の挨拶の時もナチュラルに無視されてたし、俺の皿には何故か蒸かし芋しか乗ってないし……飲み物も俺だけお茶じゃなく純度一○○パーセントのいろはす的真水だし……」

ラム「ふん、出されたものに文句を言うなんて良いご身分ね。泥水と汚泥を出さなかっただけ感謝して欲しいものだわ」

スバル「……こういうのを針のムシロって言うんだろうなぁ……あれ、ムシロって一体なんなんだろ」

レム「それでは、レムは追加のお料理を用意してきますね。一旦失礼します」

スバル「そしてナチュラルに退席する青メイドさんというね」

ロズワール「ふぅむ、たしか君は、スバル君、だったかい？　エミリア様にイチャモンを付けた後、竜車にまで引っ付いてきたって聞いているよ」

スバル「一言一句間違ってないのがつれぇ……けど、俺はあえてここで開き直るぜ！」

スバル「聞かれちゃいねぇが勝手に自己紹介させて貰う！　俺の名前はナツキ・スバル！　天地無用の一文無しだ！」

ラム「ふん、バルスの癖に家名持ちなんて生意気なことね」

スバル「何そのジャイアン理論！　あとバルスじゃなくてスバルな！」

ロズワール「きぃーみは何処出身なのかぁーな？」

スバル「出身……は、悟空さんと同じ地球……の、日本ってところ、です」

悟空「ニッポン？　オラその国しらねぇなぁ」

スバル「……！？　日本を知らない……？　まさか、俺から見た、異世界に迷い込んだ異世界人ってことか……？」

ロズワール「……ふむ、君達にも色々と事情があるみたいだぁーね。まぁ、今日は細かいことは良いさ。まずはたらふく食べて、その後ゆっくり屋敷のベッドで休みなぁーよ。悟空君へのお礼については、明日の朝に話し合おうじゃないか」

スバル「……俺は蒸かし芋をたらふく食えばいいんですかね？」

ラム「その後馬小屋で寝れば完璧ね」

スバル「……マジで？」

ラム「冗談よ。バルスにはこのお屋敷で一番状態の悪い部屋を貸してあげる」

スバル「この状況だとそれすら優しく思えるからやべぇ……」

悟空「良いからスバルも食えよ！　うめぇぞこの料理！　オラの皿から取っていいから！」

スバル「悟空さん！　一生付いていきます！」

ﾔｲﾉﾔｲﾉ……

ロズワール（さぁーて、福音書には無い現象だが……これがどう転ぶことになるのかぁーな）

エミリア（ど、どうしよう。私知らない人が一人以上居ると全然喋れない……）

ラム（ゴクウ……要注意だわ）

ﾔｲﾉﾔｲﾉ……

.

.

.

翌日

悟空「うーん、良く寝たぞ。……ハラ減ったな。朝飯朝飯っと」

悟空「っと、ようスバル、おはよう！　おめぇも飯か？」

スバル「どうも悟空さん、おはようございます。因みに、飯はあと一時間ぐらいは待たないと出来ないですよ」

悟空「ええー、めぇったなぁ。オラ腹ペコなのに……って、なんでスバルがそんなこと知ってるんだ？　おめぇも今起きて部屋から出てきたところだったよな？」

スバル「……はは、俺にはちょっとだけ先のことが分かるんですよ。……厨房に行けば、レムりんが昨日の残りを簡単に調理してくれるはずです」

悟空「おお、サンキュー！　……スバル、おめぇなんか、顔付き変わったか？」

スバル「顔付き、ですか？」

悟空「ああ。なんちゅうか……ちょっとだけ、男らしい顔になったな」

スバル「……へっ、男児三日会わざれば括目して見よ、ってね。まぁ色々有ったんですよ」

悟空「三日……？」

スバル「これ以上言うと俺の持病の不整脈が出ちゃうんで、すいません。ただ……頼りにしてます、悟空さん」

悟空「？？？？　お、おう？」

スバル「んじゃ、俺はメインヒロインの誤解を解いて、ついでにドリルロリと仲良くなってこないといけないんで、これで！」

悟空「なんか良くわかんねぇけど、頑張れよー！　……行っちまった。なんだったんだ？」

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一時間後、ロズワール邸食卓

（諸々省略）

ロズワール「君にはどんな褒美も思いのままだぁーよ！　さぁ、何が欲しい？」

悟空「褒美かぁ……それなら、美味い飯を「悟空さん！」

スバル「悟空さん、どうせなら暫く食客としてここに招いて貰った方が良いですよ！　それなら暫く活動の拠点にも困りませんし！」

悟空「ショッキャクってなんだ？」

スバル「自由に食っちゃ寝出来る身分の事です」

悟空「良いなそれ！　なら、それで頼むぞ！」

ラム「……バルス、何を勝手な入れ知恵を」

エミリア「ちょ、ちょっと待ってラム。あのね、スバルはそんなに悪い人じゃなかったみたいなの」

ラム「……どういうことですか？」

エミリア「今朝スバルが私の部屋にきて、色々ちゃんと謝ってから説明してくれたの。なんでも街の嫌な人に、私の嘘の名前を吹き込まれてたらしくて……」

エミリア「スバルは偶然私が徽章を盗まれる場面を見てて、その犯人を街の外れで見かけたから、わざわざそれを教えようと私を探してくれてたんだって。だからスバルは何も悪くないの」

スバル「いや、俺も勘違いしてて悪かったから、そのことについてはお互い様だよ、エミリアたん」

ラム「……少し話が出来過ぎな気がしますが、エミリア様がそれを信じるというのなら、私は何も言えません」

エミリア「だから、ね？　ロズワール、お願いが有るんだけど、スバルを暫くこの屋敷で雇ってあげて欲しいの。行くところが無くて困ってるんだって」

レム「……（あまりにも話が怪しすぎる。ゴクウさんが屋敷に留まるよう仕向けただけじゃなく、エミリア様をたぶらかして自分までここに居座るつもり……スバル君は間者でほぼ確定ですね）」

ロズワール「ふぅむ、私は別に構わないけれど、それにはベアトリスの許可も取らないといけないかぁーな。一応彼女もこの屋敷の住人な訳だし」

ベアトリス「……ふん、こんな無礼なニンゲンが屋敷に残るなんて、最悪かしら」

パック「あれ？　ベティーはこのスバルって子と知り合いなのかい？」

ベアトリス「さっき禁書庫に押し入ってきたから、軽くしばいてやっただけの関係よ、にーちゃ」

スバル「そこをなんとか頼むよベア子！　この通り！」

ベアトリス「……ふん、別にベティーは禁書庫の外のことなんか知ったこっちゃないのよ」

スバル「つまりオッケーってことですねありがとうございます！」

ロズワール「なら別にかまわないよぉーお。そろそろレムにばかり負担を掛けるのも良くないと思っていたところだったからね。使用人を増やすのはそう悪いことじゃない」

スバル「ｯｼｬｧ!（とりあえずは最低条件クリア！　スタートラインに立つだけで大変とかマジクソゲーだぜ！）」

悟空「よし、ならとりあえず解散で良いか？　飯も食ったし、修行がしてぇ」

スバル「……っと、悟空さん？　悟空さんは俺に稽古を付けてくれるのでは……？」

悟空「へ？　そんな約束したか？　……別に稽古を付けてやんのはかまわねぇけど、おめぇは仕事があんじゃねぇのか？　この屋敷で働くんだろ？」

ラム「いきなりサボりとは良い度胸ね、バルス」

スバル「……ああ！　そうか！　屋敷に残る方法が変わったから、ルートもかわっ……かはっ！？」

レム・悟空「……！」ｿﾞｿﾞｯ

スバル「……けほっ、今のでアウト判定とか、キツ過ぎだろ……！」

悟空「……やっぱおめぇには色々聞きたいことが有んなぁ。でも、とりあえずは仕事覚えてこいよ。夜になったらまた話そうぜ。その時で良かったら、稽古も付けてやっからさ」

スバル「……はい、分かりました（前回と違う展開、把握し切れるか……？）」

レム「…………………」

悟空「じゃ、また後でな、スバル！　エミリア！」ﾌﾜｯ

悟空とスバル以外の全員「…………！！！？」

エミリア「と、飛んだ？　たしか飛行魔法は、一流の魔法使いじゃないと難しいんじゃ……」

悟空「んじゃなー」

ロズワール「……これは、面白いことになりそうだぁーね」

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～夜、魔獣の森～

悟空「……ふぅ、割と良い汗かいたぞ。そろそろ屋敷に戻って……っと、なんだ？　犬か？」

ジャ○ーノート「ｸﾞﾙﾙﾙﾙ……」

悟空「な、なんか目つきがやべぇな……ほーれほれ、怖くねぇぞーこっちゃ来いー」

ウルガルム「ｳｶﾞｳ!」

悟空「っとと、いきなり噛むなよ」

ウルガルム「ｸﾞﾙﾙﾙ……ｶﾞ？」

悟空「あんまり強く噛むと歯が砕けるぞ。やめとけって」

ウルガルム達「ｳｳｳｳｳｳ!!」

悟空「ちょ、集団で噛んでも何もかわんねぇって！　……しょうがねぇ、ほりゃっと」ﾊﾞｷｯ！

ウルガルム達「ｷｬｲﾝ！」

悟空「よっと、これに懲りたらもう人を噛むんじゃねぇぞー」ｷｨｰﾝ

ウルガルム「ｸﾞﾙﾙ……」

悟空「さて、飯だ飯。ただいま！」

ラム「……窓から直接食堂に入って来るのは無礼よ。次からちゃんと屋敷の入り口から入ってきなさい」

悟空「おお、すまねぇラム」

スバル「飯がテーブルに並んだ瞬間に帰ってくるとか、流石っすね悟空さん」

悟空「へへへ、そう褒めるなよ。もう全員揃ってるみたいだし、早く食べようぜ！」

ベアトリス「……おい、そこのお前」

悟空「うん？　オラか？　なんだ？」

ベアトリス「お前、その”噛み傷”……魔獣の森に行ったのかしら」

スバル「噛み傷？　ゴクウさんの身体に、傷なんて何処にも」

エミリア「魔獣の森？　……！！　まさか……！？」

ロズワール「これは……しくじったね。ゴクウ君に注意を促すのを忘れていた」

悟空「なんの話だ？」

エミリア「ベアトリス！　呪いの解除を！」

ベアトリス「……もう、これはどうにもならないのよ。ここまで何重にもなった呪いは……」

スバル「ちょちょちょい、一体どういうことなんだ？　呪いって？」

ラム「……このお屋敷の裏手にある森は、別名”魔獣の森”と呼ばれているの。ウルガルムという、凶悪な魔獣の群生地帯よ。……その魔獣に噛まれた者は、マナを死ぬまで吸い取る呪いをその身に植え込まれる」

ベアトリス「噛まれた傷はどうにかして治しても、呪いは残るのよ。……魔獣が術を発動させたら最後、こいつはあっという間に干からびて、死ぬかしら」

スバル「マナを吸い取る呪い……？　……魔獣、呪い、マナを吸い取る……まさか、あの犬っころが……！？　そうか！　そういうことだったのか！」

スバル「こうしちゃいられねぇ！　村だ！　村にもその魔獣が紛れ込んでる！」

エミリア「な、何を言ってるのスバル？　そんなことより、今はゴクウが！」

スバル「……っと、そうだった！　……ど、どうする？　いっそまた、アイキャンフライで……」

悟空「お？　なんか身体から煙みたいなのが出始めたぞ」

ベアトリス「……！　始まったのよ」

エミリア「え、う、うそ！　と、止めなきゃ！　ベアトリス、ロズワール！　どうしたらいいの！？」

ロズワール「……残念ですが、一度起動した呪いを止める術はありません」

ベアトリス「呪いの発動までに術を植え込んだ魔獣を消すことが出来れば、まだ望みはあったけれど……もう、どうにもならないのよ」

悟空「おー、なんかちゅーちゅー吸われてる感覚が有るぞ」

レム（……どういうこと？　ゴクウ君は、間者じゃなかった？　なら、スバル君も……？）

ラム（……ゴクウには悪いけど、正直この薄気味悪い超人がこれで除かれるなら、ラムとしては……）

エミリア「あ、あ、ああ！　うそ、うそ、うそ！　やめて！　ベ、ベアトリス！　ロズワール！　パック！　だ、誰か、誰かゴクウを助けて……！！」

スバル（……もう、どうにもならねぇ。しょうがねぇ、また覚悟を決めて「ふんっ」

ﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟｰﾝ!　

エミリア「……？　な、何？　今の音？」

スバル「森の方から、爆発みたいな音が……？」

悟空「あ、やっぱりヤコンと同じで、向こうにもキャパがあるんだな」

ロズワール「……自分からマナを送り込んで、術者を破裂させた……」

ベアトリス「……お前、一体何者かしら。いや、お前は－－－ナニ？」

エミリア「ど、どういうことなの？」

ベアトリス「……こいつの呪いは、消えたのよ。とんでもない力技で」

悟空「説明はあとだ。スバル、さっきなんか言ってたよな？　村が危ないとかなんとか」

スバル「あっ……そ、そうだ！　村でそのウルなんとかに似た魔獣を見たんだよ！　村があぶねぇ！」

ラム「何故名前も知らない魔獣を、そうだと見分けられたの？」

スバル「こまけぇ説明は後だ！　頼むから、俺を信じてくれ！」

悟空「心配すんな。そのウルガルムっちゅう奴の気はなんとなく分かるから、オラが探して退治してくる。……オラの分の飯は、ちゃんと残しておいてくれよ？」ﾊﾞﾋｭｰﾝ

ロズワール「……私も行ってくる。ラム、留守を頼んだよ」

ラム「はい、ロズワール様」

エミリア「え、なに？　私、状況に全然付いていけてないんだけど……」

ベアトリス「付いていけてる奴なんて誰も居ないから心配ないかしら。……あの男、一体……」

ロズワール（おかしい、あまりにも福音書の記述とズレ過ぎている。……スバル君に、”やらせる”か？　……いや、ゴクウ君の存在はあまりに未知数だ。ここはまだ様子を見よう）

スバル「……もしかして、解決、したのか？　……はぁぁぁぁ～～～、なんつう、拍子抜け……」

ラム（……ゴクウ、あなたは一体……）

レム（姉さまかわいい）




第二章　完




パック「あれ、今回僕一行ぐらいしか喋ってなくない？」