穂乃果「忘れさせないよ」 (19)


ことり誕生日遅刻SS

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「ごめん……」

「」

「ごめんなさい……」

「」

「私……、穂乃果ちゃんのこと、そういう目で見れない……」

「」

そっか。
なんだ、そうなんだ。
私の想いは、届かないんだ。

でも。
この想いは、絶対。
………………。




「今日はことりの誕生日ですし、練習はありません。しかし、明日からはみっちりやっていきますからね」

「えぇ~」

「海未ちゃんの鬼~」

「なんですかそんなに練習が好きなんですか。それなら希と凛の練習メニューは二倍にしましょうか」

「「ごめんなさい!」」

「分かればいいのです。……穂乃果?」

「……ぇっ、な、なに海未ちゃん」

「今ぼーっとしていませんでしたか? どこか体調でも……」

「あ、うん、大丈夫。大丈夫だから」

「……? そうですか?」

「……穂乃果ちゃん」




「よーし、じゃあラーメン食べに行くにゃー!」

「り、凛ちゃん」

「食べ過ぎじゃない?」

「食べた分、きっちり運動して燃焼するなら、いいですよ」

「珍しい。海未が優しい」

「完璧に交換条件じゃない」

「じゃあ、ウチはこれからバイトやし、この辺で」

「ええ。また明日」

「また明日ー」


「……」

「穂乃果? やはり体調が……」

「だいじょーぶだよ。あっ、ちょっと私、買いたいものあるから、行くね」

「は、はぁ……」

「……穂乃果ちゃん」

「今日の穂乃果、なんか暗かったわね」

「海未、穂乃果になにかあったの?」

「……分かりません」

「そう……」

「ただ……、変わったのは、昼休みが終わってからです」

「へぇ……」

「5限目には遅れてきて……少し暗かったかと思います」

「遅れてきた?」

「はい。5分程ですが……」

「じゃあ、昼休みに」

「なにかあったってことよね」

「そう考えるのが自然ですね」

「……穂乃果ちゃん、私……」




暗くなりかけた道を歩む。
一歩一歩、踏みしめて。

思ったより時間かかっちゃったな。
でも、好都合。
後はメールを書いて……。

体を前に出すだけ。

そして、送った。
何かがぶつかる音を聞きながら。





「……はい、園田です」

「……………………」

「…………え」

「穂乃果が……?」


目の前が真っ白になった。




「穂乃果ちゃん……」

「穂乃果……」

穂乃果が交通事故に遭って緊急搬送されてきた。
赤信号を飛び出したという。
そんなバカな。いくら穂乃果でもそんなことはやらない筈だ。
しかし現に、穂乃果は緊急手術中。
いったいどうしたっていうの……。


「あ!」

ランプが消える。
手術が終わった…………?

中から医者が出てくる。

「手術は無事成功しました。直に目を覚ますでしょう」

その言葉に安堵した。
ただひとりを除いては。


「安心したら喉渇いちゃった」

「まったく、凛ったら」

「ごめんなさい、私も……」

「一階に自販機あるわよ」

「じゃあ、買いに行かへん?」

「んー、行きましょうか」

「ことりは、穂乃果についていてください」

「あっ……うん」


「……」

「……穂乃果ちゃん」

穏やかな顔で眠っているようで、事故に遭っただなんてとても考えられない。

「何時間ぶりだろ」

こうして穂乃果ちゃんの顔をしっかり見ることができるのは。
そんな風に考えていたとき、

「……あれ?」

ふと携帯が光っていることに気がついた。
慌ててたから、見えてなかったのかも。

「メールだ……」


「!」

「穂乃果ちゃんから……?」

穂乃果ちゃんが事故に遭ったという時間と同じ?

その文面は……。


『忘れさせないよ。』


「っ!」

ぞくっと嫌な寒気を感じた。
忘れさせない? 何を?


「あれ……まだ下に何か……」

スクロールしていくと、URL? が出てきて、それで終わっていた。
何の気なしに開く。
『空白のページ』
というブログが表示された。
穂乃果ちゃんはなんでこれを……?
そう思いながら、最新のページを開いた。
そこには、

『忘れさせないよ。』

とあった。
その瞬間、穂乃果ちゃんの顔がページに映し出された。
そして、穂乃果ちゃんが暴れだした。
すぐにナースコールをしたけど、間に合わなかった。
穂乃果ちゃんは、私の前で、



穂乃果ちゃん……。
どうして……?


おわり

ちょっと予定かわりました

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