善子「女王たちに玉座なし」 (569)

前作 梨子「警備員の深夜アルバイト?」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1471604195



今作はラブライブ!シリーズとフロムソフトウェアのアクションRPG「DARK SOULS 3」のクロスです。
堕天使ヨハネと従者リトルデーモン下魔、そして時々仲間達の火を求める旅



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1473441531


はじめに

以下を許容できる方のみお読みくださいm(._.)m

・DARK SOULS 3 に登場する一部のNPC、ボスをラブライブ!およびラブライブ!サンシャインのキャラクターに演じてもらう形で進行していきます。
(リトルデーモン下魔ことゲマのみ「デ・ジ・キャラット」のキャラクターです)


・原作のストーリーが不明確な部分が多いため、作者の推測や妄想をかなり含みます。

・進行上登場させないNPCが多くいます

・進行ルートなど原作のゲームには準拠しない部分が多くあります


・原作では存在しない性能を武器に付与することがあります
例、原作では不可能な、武器「ダークハンド」で展開した盾でのパリィなど

・キャラ崩壊のオンパレード





ー善子の部屋ー


善子「さて夜も更けたわね、明日も早いしそろそろ寝なきゃ……」



善子「ふぅ~………」ゴロン



善子「それにしてもこのリトルデーモンのぬいぐるみ、抱いて寝るのにちょうどいい大きさなのよね~」ダキッ




善子「おやすみなさい、リトルデーモン……」




善子「………」




善子(なんかこうして寝る前とかってついつい頭の中で物語とかを考えちゃうのよね……)



善子(自分を主人公にしちゃったりとかしてね)



善子(ヨハネは過去に倒れた戦士の1人……でも世界が危機に陥ったとき、再び下界に堕天するの……)




善子(はぁ~……どんどんイメージが湧いてくる)




善子(そして甦えったヨハネの使命とは……ふふふ)



………………

遥か古の時代、世界は闇に飲み込まれていた

やがて闇の世界の中で「はじまりの火」を手にした者たちがいた


火によりもたらされた熱によって生と死、光と闇といった概念が生まれ、その力で太陽の光の女王ホノカは当時世界を支配していた古代の(・8・)を駆逐し世界を繁栄させていった


火の時代のはじまりである


しかし、やがて「はじまりの火」は陰りを見せ始める…


女王であるホノカは火が消え、再び闇の世界が戻らぬよう自身が火の薪となることで世界を永らえさせた


それからは火が消えかける度に新たな王の資格を持つ者が自身を薪とすることで世界を延命させていく


彼女達ははやがて「薪の女王」と呼ばれることになる


そして時が流れ、また火が消えかけようとしていた……



ここはルビリック、かつて火を継いだ薪の女王たちの故郷が流れ着く場所


そこで北へと向かう巡礼者たちは予言の意味を知る……


「火は陰り、女王たちに玉座なし」






ゴ-ン…… ゴ-ン……


継ぎ火が絶え、鐘の音が響き渡る時


歴代の薪の女王たちが甦り、棺から呼び起こされるだろう……


深みの医者ニシキノマッキ……

ゴゴゴゴゴゴゴ……



ニシキノマッキ「ヴェエ……なんで私が生き返らなきゃいけないのよ………」




ニシキノマッキ「………」グゥ~




ニシキノマッキ「お腹すいた……トマトが食べたいわね」ドロドロドロドロ………





アライズの不死隊、深淵の監視者たち………



アンジュ「…………」ムクリ



エレナ「時が来たというわけか……」




そして海の都の孤独な女王、巨人のヨウム……


ドシ-ン ドシ-ン



ヨウム「ヨーソロオオオオオオオ!!!」



だが彼女たちは玉座には戻らないだろう



そして代わりに火のない灰たちがやってくる……


かつて薪となれなかった呪われし不死の存在



しかし、だからこそ



灰は火を求めるのだ



ー灰の墓所ー


鐘の音と時を同じくしてこの火のない灰たちの墓場から今、1人の灰が甦えった


ヨハネ「………」ムクリ



ヨハネ「また堕天してしまったのね……」



ヨハネ「まさか再び生を受けることになるなんて、ヨハネはなんて罪深いのかしら……」ウットリ



このちょっと痛い彼女はヌーマーズのヨシコ、またの名を堕天使ヨハネという…


かつて火継ぎの使命の半ばで散った彼女もまた、火の陰りにより再び甦えった「灰」の不死者である

火の陰りは生死の境界をも曖昧にしてしまうのだ……



ヨハネ「さてと……これからどうしようかしら?」



はたして彼女は新たに火を継ぐ女王なのであろうか、それとも……

とりあえず今日はここまでにします。
毎日更新することが厳しく、数日空けることもあると思いますので完結までにかなりの長丁場になるかもしれませんがご了承くださいm(._.)m


ヨハネ「ヨハネが倒れてからどれだけの年月が経っているのかしら……なんだか記憶が曖昧だわ」



ヨハネ「………」キョロキョロ



亡者「…………」ウロウロ



ヨハネ「見たところこのあたりにはリトルデーモンたちがうろついているようね………でもこのヨハネの剣の錆となり……って」




ヨハネ「ない!ヨハネの愛剣が!刀が!呪われた左手の力も……」




ヨハネ「さすがに下級のリトルデーモン相手でも丸腰じゃ……」



亡者、ひどくやつれ生気を失ったそれは不死の者のなれの果ての姿である
不死者は文字通り不死の存在であるものの精神や自我はその肉体とは異なり永遠ではない

繰り返す死、長い年月の経過と共にその身に宿した魂、ソウルは枯れ果て自我は崩壊していく

そしてソウルを渇望し、ソウルを狩りとるために生者に襲いかかる狂人と化すのだ。


???「ヨハネ様~!!」



ヨハネ「?」



亡者「!」クルッ



ヨハネ「ちょっとぉ!誰だかわからないけど大声出すからリトルデーモンに気づかれちゃったじゃない!」



亡者「アアアア!」タッタッタッタッ



ヨハネ「くっ……!」



???「ヨハネ様これを使うゲマ!」


ヒュ-ン


ガシッ


ヨハネ「これは…!」


突如遠くからヨハネに向けて投げられたそれは一振りの直剣であった



ヨハネ「せやぁっ!」


ザシュッ



亡者「ギヤアアアアアア!」ドサッ


ヨハネ「ふふふ……ヨハネの腕もまだ衰えていなかったわね!」



ヨハネ「この剣……間違いない、かつてヨハネが使っていたモーリオンブレードだわ……」




???「さすがはヨハネ様!以前と変わらない素晴らしい剣さばきでございますゲマね~」パチパチ



ヨハネ「!?」



声の主は賞賛の拍手を送りながら現れた

しかしそれは人ではない……
その手だけが生えた黄色い球体は紫の角を生やし宙に浮いていた

まさに異形の者である



ヨハネ「あなたはまさか、魔界からの刺客……!」ジャキッ



???「ひいっ!剣を向けないでくださいグマ、ヨハネ様の味方ゲマよ!」


ヨハネ「ほんとに…?」



リトルデーモン下魔「お忘れですかヨハネ様!?わたくしはリトルデーモン下魔、ヨハネ様の忠実なるしもべ、リトルデーモンの筆頭ゲマよ?」



ヨハネ「誰?」



下魔「ゲマのことを忘れるなんてあんまりゲマ……さっきもいきなり剣を向けてきたし……」



下魔「は!まさかヨハネ様ももう亡者に!?ゲマはソウルを持ってないゲマ!中身はあんこが詰まってるだけだから見逃してくださいゲマ~!」ガクブル




ヨハネ「はぁ?ヨハネは亡者じゃないわよ?リトルデーモンの王たるヨハネがリトルデーモン化してしまったら元も子もないじゃない」



下魔「亡者だろうがなんだろうが自分のしもべにしようとするところは相変わらずゲマね……」



ヨハネ「不気味なやつねぇ……昔からヨハネを知ってるような口ぶりだし」




下魔「ゲマはヨハネ様がある店の看板娘をしていた時からしもべとしてご一緒させていただいてたゲマ、知ってて当然ゲマよ?」



ヨハネ「看板娘?そういえばそんな前世もあったかもしれないわね……たしかにあの時あなたみたいな丸いのがいたようないなかったような……」




下魔「ほんとに忘れてしまってるみたいゲマね……」シュン



ヨハネ「ごめんなさいね……長い間眠っていたせいで記憶が曖昧なの、実際わたしが今なぜこうして甦えったのかだってよくわからない」




下魔「ヨハネ様……」



ヨハネ「あなた、ヨハネのしもべなのよね?そもそもここに何をしに来たの?」


下魔「よくぞ聞いてくださいましたゲマ!」



善子「?」



下魔「ゲマはあの時ヨハネ様が倒れてから悠久とも思える時間をひたすら待ち続けたゲマ」




下魔「そしてあの時と同じ、再び火が陰りはじめた今!ヨハネ様再臨の気配を感じ、はるばるデジキャラットせ…ゲフンゲフン!地獄の底から這い出して来たゲマ」




ヨハネ「ストーカー?」



下魔「ストーカーじゃないゲマ!ゲマの使命はただひとつ、ヨハネ様が使命を果たすお手伝いをすることゲマ」




ヨハネ「ヨハネの使命……?」




下魔「そうゲマ、ヨハネ様を含めた不死の者にははじまりの火の薪となる使命があるゲマ」



ヨハネ「少しずつ思い出してきたかも……ヨハネは昔、その旅路の途中で力尽きたんだわ……」


下魔「ヨハネ様は以前薪となれずに燃え尽きた、しかし今こうしてあの時と同じ状況が再現されたことにより灰の不死者としてまた復活したんだゲマ!」



ヨハネ「ということはヨハネの使命はあの時と同じ、はじまりの火を継ぐこと……」




下魔「理解していただけましたゲマか?」



ヨハネ「つまり世界がヨハネを求めている!ヨハネという薪の女王の誕生を!」



下魔「ま、まあまとめるとそういうことゲマ……」




下魔(きっと今は知らないほうがいいゲマ……)



ヨハネ「薪の女王に~…わたしはなる!」グッ



下魔(ヨハネ様の張り切りようを見たら今は言えないゲマ……きっといずれすべてを知る時がくるゲマ……)



ヨハネ「ところであなた」



下魔「どうしましたゲマ?」



ヨハネ「なんでさっきから逆さまになって話してるのよ、頭に血がのぼるわよ?あなたの場合あんこか……」




下魔「勘違いしないでいただきたいゲマ!ゲマはこれが正しい体の位置ゲマ」




善子「えぇ……ならいいけど」



下魔「そんなことより!さっきの剣の他にもヨハネ様愛用の装備一式を持ってきているゲマ」



ヨハネ「ほんとに!?わたしの呪われた左手は?」




下魔「もちろんあるゲマよ!」



ヨハネ「ふふふ……ついにヨハネの元に帰ってきてくれたのね」



ヨハネはかつての装備を手に入れた


~ヨハネの所持武器~

右手武器
モーリオンブレード(直剣)

黒教会の尖塔を模した異形の剣
8つの枝刃と無数の棘をもち、相手に出血を強いる。
黒教会の祝福は使用者の危機を喜ぶという。
異形の姿に相応しい呪われた剣といえるだろう


ヨハネの手記
この剣のことはよく覚えているわ、たしか前の旅の時に怪しい老婆の行商人から譲ってもらったのよね、
あまりにもヨハネ好みの悪魔的なデザインだからついつい一目惚れしちゃって……
でもとても買えない値段だったからず~っと眺めてたらなんとタダでくれたのよ!
なんかダークリングがどうとか人間性の闇がとかよくわからないことを話してたけどなんだったのかしらね?
我らの王の素質をもつあなたにふさわしいですって、お婆さんなかなか見る目あると思わない?


右手武器(サブ)

闇朧(刀)

この刀のもう1人の持ち主は黒教会の指導者の1人である
その者は卓越した剣士でもありこの一振りで百の騎士を葬ったという
見えぬ刀身をもつ魔剣


ヨハネの手記
ヨハネはいつもこれを腰に差しているわ、ヨハネのお気に入りよ!

しかもこの刀、刀身がほとんど透明だから不思議よね、だからいざという時の秘密兵器。
相手に間合いや剣筋を読ませない攻めができるわ

モーリオンブレードと同じ国で作られた武器らしいけどどうもこの国のの武器はヨハネの心をくすぐるのよね~、困っちゃうわ


左手武器

ダークハンド(拳)

某国独特の業、世界蛇の遺産とも言われている
赤く禍々しい光を放つその手はおぞましい吸精を行い、相手(人限定)から生命力を奪うことができる
また特殊な盾を作り出すことが可能だ


ヨハネの手記
呪われた左手……亡者と勘違いするくらいやつれたお爺さんにソウルを分けてあげたらこの業を教えてくれたの

ふふふ……馴染む、実に馴染むわ…

ヨハネの左手は今日も獲物を求めて疼いているのよ……



その他
妖木の枝(魔術触媒)
呪術の火(呪術触媒)


~ヨハネのステータス~
※あくまでキャラクターのイメージをしやすくするためのものでありSS内ではあまり関わりはないものとします

下魔「ヨハネ様は生命力、筋力は平均的、集中力と持久力が高めゲマ」



ヨハネ「あなたそんなことがわかるの?」



下魔「ゲマの分析力を甘く見ていただいては困りますゲマ」



ヨハネ「実際結構あってるかも……」



下魔「そして体力と筋力は低めになっているゲマね……」



ヨハネ「心配はいらないわ、ヨハネは重い武器とか重い鎧とかは好きじゃないの、ヨハネに大事なのは技量と理力よ!」



下魔「たしかに他と比べて技量と理力は圧倒的に高いゲマ」



ヨハネ「でしょ?ヨハネは手数とテクニックで攻めるタイプよ、それにやはり堕天使、魔術と呪術は必須!」


下魔「ただ非常に申し上げにくいことが……」



ヨハネ「ん?」



下魔「ヨハネ様……信仰と運が恐ろしく低いというか、数字で言うなら1しかないゲマ……」



ヨハネ「ヨハネは堕天使……崇めるのはサタンのみ、神の祝福の奇跡など不要よ」



ヨハネ「不幸体質は生まれつきだからどうしようもないわね……わたしのそばにいるだけで不幸がうつるかもしれないから気をつけなさいリトルデーモン」



下魔「どう気をつけたらいいかわからないけど努力してみますゲマ……」



ヨハネ「さてと、これでとりあえず武器は揃ったし準備はできたわね、感謝するわリトルデーモン」



下魔「当然のことをしたまでゲマよ、ゲマは戦闘ができないぶん精一杯ヨハネ様のサポートをさせてもらうゲマ!」



ヨハネ「よし、それじゃあ早速旅を始めましょう、これからよろしくねリトルデーモン!」




下魔「任せるゲマ!」


ヨハネ「じゃあ出発!………といいたいところだけど……」



下魔「?」



ヨハネ「その……恥ずかしながらどこに行けばいいのかわからなくて……」



下魔「この墓地を抜けた近くに灰の不死者たちが拠点とする祭祀場があるはずゲマ、まずはそこを目指しましょうヨハネ様!きっとそこに他の不死者たちも集まっているゲマ!」



ヨハネ「じゃあまずは墓場を抜ける必要があるわね!」



棺が転がる一帯を抜けるとそこは雲より遥かに高く、荒れた岩場の崖の上だった



ヨハネ「うわっ……雲で覆われて下が全く見えない、どれだけ高いのよ……」



下魔「周りの景色を見る限りここはかなりの僻地にあるみたいゲマ……」



ヨハネ「あ、リトルデーモンあそこにある火は!」



下魔「篝火ゲマ!ヨハネ様も覚えているゲマか?」



ヨハネ「そうね……たしかに昔あなた篝火にあたって休んでいたような気がする」



ヨハネ「こうやって手をかざすのよね……」


ボウッ


BONFIRE LIT

ヨハネは下魔と共に篝火の前に座り込み休息をとる


ヨハネ「不思議ね、こうして火のそばにいると力が湧いてくる感じ」



下魔「灰の不死者のヨハネ様には火そのものが生命力と直結しているゲマ」


ヨハネ「これからもこうして篝火を見つけたら休んで回復をしたほうがよさそうね」




下魔「そうだ、ヨハネ様にエスト瓶を渡すのを忘れていたゲマ」スッ




エスト瓶、それは篝火からエストを補給しそれを飲むことで傷を癒し、生命力を回復させる効果がある瓶である

エストが一体なんなのか、それは遥か昔の不死者と深い関わりがあること以外わかっていない
だがこれが不死にとっての命の源であることは違いないだろう



ヨハネ「エスト瓶も補給したしそろそろ行こうかしら、ちょっと休むには早すぎたみたいだし」スクッ

…………

………


亡者「アアア!」シュッ


ヨハネ「おっと!」ヒョイ




ヨハネ「槍はリーチが長いけど攻撃が直線的……ね!」ブンッ



ガキイン!


ヨハネ「盾で防ぐのは構わないけどずっと盾を構えてばかりじゃいいカモよ……」ゲシッ



亡者「!?」グラッ



亡者は不意に盾を蹴り上げられてよろめき懐を晒した


ヨハネ「はっ!」


ドシュッ


亡者「ギャアアアア」ドサッ



下魔「あ!ヨハネ様矢がきてるゲマ……!」



ヨハネ「ふう………え!?」


ピシュッ!


ヨハネ「つっ……!」



下魔「ヨハネ様ぁ!」


ヨハネ「大丈夫……頬をかすめただけ……」


弓亡者「………」ゴソゴソ



ヨハネ「隙だらけよ……ヨハネに傷をつけるとは生意気なリトルデーモンね!」

ザシュッ


ヨハネは素早く駆け寄ると次の矢を準備する亡者を斬り伏せた



下魔「はあ……無事で良かったゲマ……」



ヨハネ「うかつだったわ……目の前の敵ばかりに気が向いて遠くの弓に気づかないなんて」



ヨハネ(敵は1人とは限らないってこと、ちゃんと意識しなきゃいけないわね)



さらに岩場を進むと大きな門が現れた。恐らくこの門の先が灰の墓所の出口なのだろう


ヨハネ「開けるわよ……」



下魔「扉の向こうからただならぬ気配を感じるゲマ……」



ヨハネ「んしょ………」グググッ



ギギギギイイ………



ヨハネ「あれは………」ゴクリ…



門の先は円形の広場となっている
その中央には鎧を身に纏い、巨大な槍を携えた騎士が佇んでいた



下魔「気をつけてくださいヨハネ様!あれは間違いなく強敵ゲマ…!」



ヨハネ「死んでいるの……?座ったまま動く気配がないけれど……」



下魔「胸に剣が刺さっているゲマね……」


ヨハネ「これって篝火に刺さってる剣と同じじゃない?」



ズズズズッ……



下魔「ヨハネ様……勝手に剣を引き抜いたらまずいゲマ……!」



ヨハネ「?」



灰の審判者グンダ「…………」スクッ



下魔「動きだしてしまったゲマ!」



ヨハネ「やるしかないってわけね……!」




BOSS
灰の審判者グンダ

灰の墓所で火の無い灰にその資格があるかを試す存在である
彼はずっと己の前に灰が現れるのを待ち続けていた
選ばれし者にのみ与えられる祭祀場の螺旋の剣に己の身を鞘としながら……



とりあえず一旦ここまで、遅筆ですみませんm(._.)m
続きは明日中には更新できると思います

一体このペースじゃ完結までに何レスかかることやら……


グンダ「グア!」ブン!



ヨハネ「うわっ!」



ドゴオオ!


グンダがヨハネに向けて振り下ろした槍が、標的を外し地面に叩きつけられると同時に地を砕いて土煙を上げる



ヨハネ(とんでもないパワーね……あんなのヨハネの力じゃ剣でも盾でも受け止めきれない……)




グンダ「ヴォオオ!」


ブゥン! プゥン!


グンダはただでさえ大きい自身の身の丈よりも長い槍を片手で軽々と振り回す



駄目だ……リーチが違いすぎてなかなか迂闊に近づけないわ




下魔「ヨハネ様落ち着いてください、必ず突破口があるはずゲマ!」


グンダ「……!」


ブン!



ヨハネ「ぐはっ…!」



ドガア!



グンダが不意に繰り出した突進にヨハネは防御の姿勢がとれず吹き飛ばされた



ズザアアア……



ヨハネ「はあ…はあ…」



力が違い過ぎる……このままじゃまずい



下魔「ヨハネ様!危ないと思ったらエスト瓶を飲むゲマ!」



ヨハネ「ええ……!」ゴクゴク


グンダ「………」



ヨハネ「………」



これが火の無い灰の最初の試練……
資格を持たぬ者はグンダに敗れ続け、始まりであるこの場所で既に亡者と化すだろう

ここまでの道中で斬り伏せてきた亡者たちもそんな資格を持たずに敗れた者たちのなれの果てかもしれない



ヨハネはあのリトルデーモンたちのようにはいかないわ……!



グンダ「ヴァア!」



ブン!




あいつの攻撃は大振り……
ならうまくタイミングを合わせられれば!


グンダ「………」ググッ



グンダは大きく身を捻り槍を構える

ここから繰り出される横薙ぎをまともに受ければヨハネの体は容易く両断されてしまうだろう




ヨハネ(ヨハネに力が無いのなら相手の力を利用して相手を崩す……これで決める!)



ヨハネの左手のダークハンドが纏う赤黒い妖気が盾を形どる



グンダ「ウゥ!」


ブン!


ヨハネ(ここだ!)


バキィ!


グンダ「!?」ガクッ




グンダの薙ぎ払った槍をヨハネはダークハンドの盾で受けるのではなく受け流した

グンダは勢いあまってよろめき、地に片膝を着く




ヨハネ「これで終わり……!」




ヨハネは態勢を崩したグンダの胸をモーリオンブレードで貫くと一気に引き抜いた


ズシャア!!


グンダ「グア…ア……」ドサッ



ヨハネ「はぁ……はぁ……やったわ!」




下魔「ヨ、ヨハネ様……まだみたいゲマ!」




ヨハネ「?」



グンダ「………」スクッ



ヨハネ「まだ立ち上がれるというの!?」


グンダ「………」ゴボゴボゴボ



ヨハネ「!?」


人の膿「キシャアアアアアア!!」



下魔「あわわわ……」


ヨハネ「嘘……」


長い年月を過ごすうち、グンダの体内には人の膿と呼ばれるものが宿っていた

そしてそれは剣で貫かれた体内から溢れ出し、暗く蠢めく巨大な怪物としてヨハネと下魔の前に立ち塞がった……



ヨハネ(さっきの数倍は大きい……
鎧の肩口から飛び出した黒く短い蛇みたいな頭に不釣り合いなほど大きな片手
あんな化け物見たことない……)



下魔「無闇に接近するのは危険ゲマ!あんな大きな口なら丸呑みにされてしまうかもしれないゲマ……」




ヨハネ「そうね……少し距離をとって呪術で攻めるわ」


人の膿「シャアアアア!」



ヨハネ「危ない!」



ヨハネは大きな怪物の口の?みつきをかわして距離をとる


そして剣を納めると右手に呪術の火を灯し火球を放つ





ヨハネ「はっ!」ボウッ


人の膿「グアアアア!」バタバタ




ゲマ「怪物が苦しんでる!かなり効いているゲマ!」



ヨハネ「どうやら火に弱いみたいね…!」



ドゴオオン


ヨハネ「くっ……!」



怪物は苦しみながらも自身の頭を叩きつけ、ヨハネを潰そうとしてくる



ヨハネ「とどめよ……!」



ヨハネは地面に打ち付けられた怪物の頭に飛び乗るとその頭頂に腰から抜いた闇朧を突き刺した


グサッ!


人の膿「シャアアアア………」


ゴボゴボゴボゴボ……



下魔「黒い怪物が吸い込まれていくゲマ!」



黒い膿の怪物がグンダの体に吸い込まれる

グンダは元の体に戻り、そのまま天を仰いで倒れると露散して消滅した



HEIR OF FIRE DESTROYED


螺旋の剣を手に入れた



ヨハネ「勝った……!やったわよリトルデーモン!」ピョンピョン



下魔「凄いゲマ!最初の試練を打ち倒すとはさすがはヨハネ様ゲマ!」



ヨハネ「あ、篝火が現れたわ!」


下魔「死闘を繰り広げたヨハネ様には少し休息が必要ゲマ、火を焚いて休むことをおすすめしますゲマ」



ヨハネ「そうね……今の戦いはさすがに厳しかった……少し休ませてもらうわ」


ヨハネは座りこんで火にあたり、先ほどの疲れを癒すことにした




下魔「そういえば、ここの篝火には既に螺旋の剣が刺さっているゲマね~」




ヨハネ「ということはヨハネがでかいのから引き抜いた螺旋の剣はいったいどこの篝火のものなのかしら?」




下魔「もしかしたらこの螺旋の剣はヨハネ様が今から向かおうとしてる祭祀場の篝火のものかもしれないゲマよ」


ヨハネ「でも篝火って螺旋の剣が無いと力を発揮しないものなんでしょ?だとしたら祭祀場の人たちは今どうしてるかしら……」



下魔「祭祀場の篝火は全ての篝火の中枢となる存在ゲマ」



下魔「篝火が使えなければ祭祀場の人たちは休息も各地へ移動する転送も使えないはずゲマから……」




ヨハネ「それは一大事ね……休息をとったら祭祀場へ急ぎましょう、他の不死者たちも篝火がなくて困っているかもしれないし」



下魔「了解ゲマ!」



……………………………
……………………
……………
………
……


……………………………
……………………
……………
………
……


ー理事長室ー


善子「っていうところまで今物語が進んでるのよ、まだ最序盤だけど」



鞠莉「グレート♪いかにもヨハネちゃんが好きそうなダークなストーリーね!」



鞠莉「でもなんでマリーにそのお話を聞かせてくれたの?」



善子「だってこんなヨハネが寝る前にベッドに入りながら空想で描いた物語なんてまともに聞いてくれる人いないじゃない……」




鞠莉「ふふふ♪それでマリーなら聞いてくれると思ったのね」




善子「そういうわけ……」


鞠莉「う~ん、せっかくだからもっと色んな人に聞いてもらいましょうよ♪マリーは結構楽しめたし」




善子「い、嫌よ恥ずかしい///こういうのは本来なら心の中の深淵にしまいこんでおくものなの!」




鞠莉「え~?でも我慢できなくなってついマリーに話しちゃったくせに~」ニヤニヤ




善子「ぎくっ……」




鞠莉「だったらマリーにお任せ♪グッドなアイディアを思いついたの!」




善子「な、なによ……」




鞠莉「ヨハネちゃんの物語を形にしてもっとたくさんの人に見てもらうのデース!」


善子「え!?形にするってまさか本でも書けっていうの?」



善子「嫌よ!またヨハネの黒歴史ノートに新たな1冊が誕生しちゃうじゃない……」




鞠莉「ノーノーノー♪もっと素晴らしい物を作る手配をマリーがしてあげるわ」




善子「なにする気なの……」




鞠莉「それはズバリ!映画を撮影しまショウ!」



善子「はぁ!?そんなの無理よ!大体そんなお金どこに……」




鞠莉「目の前にそれを可能にする人間がいるじゃない」グッ



善子「そうだった……」


善子「で……でも!人数だって足りないし、ほら、それに怪物とか竜とか出てくるからほら……」



鞠莉「そこは今の技術なら主人公以外景色もぜんぶCGのものもあるしノープロブレム!」




善子「うっ……」




鞠莉「せっかくだからわたしたち以外にもスペシャルなキャストを用意しなきゃね♪」



善子「ちょっと!そんな勝手な……」


鞠莉「思い立ったがラッキーデイ!早速μ's とA-RISEの方達にオファーの電話をかけるわ♪」



善子「えぇ~!!」


善子(た、大変なことになった……)


…………


にこ「にっこにっこにー♪お電話代わりました笑顔届ける音ノ木坂学院アイドル研究部部長の矢澤にこでーっす☆」


にこ「はい、はい……ええ」


にこ「なるほど……以前ラブライブで優勝したわたしたちに是非と……」



にこ「いや~、さすがに文化祭とかで放映するような映画にはちょっと……」


にこ「え!?全国公開の映画?」


………


善子「ちょっとぉ!?勝手に全国公開にしないでよぉ!」



鞠莉「てへぺろ☆」


…………



にこ「剣とか魔法とかが出てくるファンタジーですかぁ……」



にこ(ファンタジーならまず間違いなくこのにこにーがお姫様役以外ありえない……)



にこ(これは全国に更ににこにーのかわいさをアピールするチャンスにこ!)



にこ(しかもA-RISEまでもが出演……)



にこ(これはひょっとしたらツバサさん演じる王子様と結ばれる展開も……)ムフフフ



にこ「決めました!この矢澤にこ、μ's を代表して喜んでその仕事お受けするにこ!」



………


鞠莉「オッケーだって!」



善子「嘘でしょ……」ズ-ン



音ノ木坂学院

ーアイドル研究部部室ー


バアン!


にこ「あんたたち大ニュースよ!」



メンバー「!?」



海未「部長のにこが1番来るのが遅いなんて珍しいですね、みんな心配していたのですよ」



希「先生に補習で捕まってたんやない?」ニシシ



にこ「μ's で映画に出演することになったわよ!」



花陽「ピャア!?」


凛「テンション上がるにゃ~!」


絵里「ちょっと……何で私達に相談してくれないのよ」




真姫「どうせどっかの大学の映研の作品とかでしょ?大げさ過ぎよ」




にこ「全国で公開される映画よ?」



真姫「ヴェエ………」



ことり「真姫ちゃんが失神した……」



穂乃果「凄い!穂乃果たち映画デビューだよ!」



にこ(これはにこにーが大女優としてレッドカーペットを歩く日も遠くないにこ……)フフフ


希「にこっち、凄い悪いこと企んでる顔してるやん?」



にこ「な、なんのことかわからないにこぉ~」アセアセ


後日


海未「にこ?台本が届いてますからしっかり読み込んでおいてくださいね」スッ



にこ「サンキュー海未」



にこ(ああ……みんなにこにーのために争わないで!にこにーはみんなのも・の……にこはそんな悲劇のプリンセ……)

ペラッ



不屈のニッコ(墓荒らし) 矢澤にこ




にこ「ぬぁんでよ!!」





ー善子の部屋ー


善子「まさか明日から映画を撮ることになるとは……」



善子「最初はただのヨハネの空想だったのに…」



善子(でもみんなが映画を見てくれればきっとヨハネの活躍でたくさんのリトルデーモンが誕生するはず……!)


善子「フフフ……これはヨハネの下界征服の足掛かりとなるのよ!」



善子「さて、今日も下魔を抱いて寝ましょうか……」ダキッ




善子「サメのハンモックもいいけどさすがに自分の部屋じゃ使えないわね……」ゴロン



善子「おやすみなさい、リトルデーモン……」




善子「zzz」


………………

オープニング~灰の墓所までの撮影終了後


ー楽屋ー

善子「第1回幕間お疲れ様会~!!」


曜「ヨーソロー!」ビシッ



真姫「い、いえ~い///」パチパチパチ



あんじゅ「うふふ、賑やかね♪」パチパチパチ



英玲奈「こういう雰囲気も悪くない」パチパチバチ



善子「今回はまだ登場人物が少ないのでオープニングに登場した薪の女王役の皆さんに来ていただきました~!」


曜真姫あん英玲「よろしく~!」


善子「同じグループの曜さんはまだしも、まさかμ's とA-RISEの皆さんに出演して頂けるとは……」フカブカ



曜「私からも……」フカブカ



真姫「別に私はオッケーしてないわよ?……にこちゃんが勝手に決めただけだし///」カミノケクルクル



英玲奈「新しい世界を開拓することは大事だからな、私達A-RISEは快く引き受けさせてもらったぞ」



あんじゅ「まだツバサは出てないけどね」



曜「私は巨人って聞いたから野球のユニフォームが着れると思ってワクワクして撮影に来たら全然違ったよ……」



善子「いや、普通野球のほうとは思わないでしょ……」


真姫「みんなはまだちゃんと人の形してるだけいいじゃない、私の役なんて上半身は普通だけど下半身はトマトピューレなのよ?イミワカンナイ!」



善子「あはは……」



真姫「あ、あとにこちゃんがなんで自分がプリンセスじゃないのかってご機嫌斜めだったということを伝えておくわ」



善子「すみません……印象には残るキャラなのでとそこをなんとか……」



あんじゅ「女王っていうから1人なのかと思ったら、私達はチーム全体で女王という扱いなのね」



英玲奈「ツバサがいないのにもきっと何か意味があるのだろう…」



善子「ちゃんとツバサさんにも出演して頂きますのでご安心を!」


曜「ファンタジーっていうからもっとメルへンかと思ったらかなり暗いお話だよね?」



真姫「ダークファンタジーってやつね」



あんじゅ「私も渡辺さんや西木野さんと同じでもっとふわふわしたものだと……」



善子「ヨハネの心には常に暗闇が渦巻いているの……そこから紡がれるは救いのない物語なの…」


曜「善子ちゃんは初対面の人相手でもブレないね」


英玲奈「ふふ♪面白いやつだ」


善子「さあ、というわけでこれからヨハネと下魔は火継の祭祀場へと向かいます!」




真姫「なんだかんだでまだ最初の拠点にも到達してないのよね」



曜「それでは!続きを全速前進~ヨーソロー!」



あんじゅ「またね♪」フリフリ


今回はここまでです!


続きは火曜日になると思います
読んでくださった方々ありがとうございましたm(._.)m


…………………………
…………………
………………
…………
……


ヨハネ「そろそろ行きましょうか、祭祀場の篝火を灯しに行かないと」スクッ



下魔「おそらく祭祀場はこの近くにあるはずゲマ」



グンダと死闘を繰り広げた広場の奥にもう1つの門がある




ヨハネ「開けるわよ………」


ギギギィ…



ヨハネ「あ、見て!小高い丘の上に建物が見えるわ!」




下魔「あれは祭祀場に違いないゲマ!早く向かいましょうヨハネ様!」


ー火継ぎの祭祀場ー


祭祀場には中央の篝火を中心に5つの玉座がそれを見下ろすように並んでいた
各所に置かれた蝋燭の灯りが建物の中をぼんやりと照らしている


ヨハネ「ちょっと薄暗いけどなんだか神秘的な空間ね」



下魔「ヨハネ様、やっぱり中央の篝火が消えてしまっているゲマ」



ヨハネ「予想通りこの螺旋の剣は祭祀場のものだったみたいね」




ヨハネ「剣をさして火を取り戻しましょう……」スタスタ




火防女アリサ(演 絢瀬亜里沙)「ハラショー!灰のお方、戻られたのですね」


消えた篝火の近くの階段に座っていた少女がこちらに気づいて歩み寄ってきた。

ローブのような服に美しい金髪をなびかせる少女、だが頭冠で目を隠しており、その瞳を伺うことはできない


ヨハネ「あなたは?」



火防女アリサ「わたくしは火防女のアリサと申します。この祭祀場の火を保ち、あなた様が使命を果たすためにお仕えさせて頂く者です」




ヨハネ「ほほう……自らすすんで忠誠を誓うとは物分りのいいリトルデーモンね」



火防女アリサ「リトルデーモン…?というものはよくわかりませんが、わたしはあなたにお仕えする身、なんなりとお使いください」ペコリ





下魔「なぬ!?ライバル登場ゲマ……!」



火防女アリサ「?」


下魔「言わせておけば~!ゲマのほうが遥か昔からヨハネ様にお仕えしていたんだゲマ!」



火防女アリサ「え…?」



下魔「これからは先輩としてビシビシ指導していくから覚悟するゲマよ?」



火防女アリサ「は、はぁ……」




ヨハネ「それはさておきこの螺旋の剣、祭祀場のものでしょ?堕天使ヨハネが持ってきてあげたわ!」



火防女アリサ「その剣を授かるのは選ばれし灰のお方のみ……どうぞ剣を示し、篝火を灯してください……」




ヨハネ「フフフ……ヨハネに力を!」



ボウッ



BONFIRE LIT




火防女アリサ「ハラショー……火の温もりを感じます……これで火を守るわたしの役目を取り戻すことができました」



ヨハネ「ヨハネにかかればこの程度造作もないことよ…」フフフ




火防女アリサ「そしてこれでこの篝火があなた様を女王たちの地、ルビリックへと導いてくれます」




ヨハネ「ヨハネは火を継ぐことが使命……それはわかるんだけど、ルビリックに行って何をすればいいの?」



火防女アリサ「あなた様にはこの篝火を見下ろす玉座が見えますか?」



ヨハネ「ええ、見えるわ」


火防女アリサ「あなた様は玉座を捨てた女王たちを探し、この玉座へと連れ戻すのです」



ヨハネ「女王たちを連れ戻す……か」


火防人アリサ「5つの玉座に5人の王が戻った時、あなたは新たな女王となるでしょう」



下魔「だって」



ヨハネ「………」ジ-…


???「はぁ……」


カンカン!カンカン!

???「ふぅ……そろそろ一休みしようかな」フキフキ



ヨハネ「もう出発しようかと思ったけどあなた以外にも人がいるみたいだし、もう少し情報収集をしていくわ」




火防女アリサ「まだ人は少ないですがこの祭祀場には多くの人が訪れます」



火防女アリサ「彼女たちと親交を深めることもあなた様の旅の助けとなることでしょう」


……………



ヨハネ(あの人どうしたのかしら……なんかしょぼくれちゃってるけど)



???「………」ズ-ン…



ヨハネ「ねえ、あなたこんなとこでへたり込んじゃってどうしたの?」



心折れた騎士・脱走者ツバサウッド(演 綺羅ツバサ)「あら、あなたも死に損ない?」



ツバサウッド「私はツバサウッド………あなたと同じ火の無い灰、何にもなれず死ぬこともできなかった半端者よ」



ヨハネ「えらいネガティヴね……でもあなたにだって同じ灰同士、使命があるでしょ?」




ツバサウッド「笑わせるわね、何が使命よ……薪の女王を玉座に連れ戻せですって?あいつらはかつて火を継いだ英雄なのよ?」


ツバサウッド「そんな英雄様相手に死に損ないの私たちが何ができるっていうの……あなたもそう思わない?」




ヨハネ「あんたねぇ……その立派な鎧と大剣はお飾りなの?ヨハネはこれから女王を連れ戻しに行くつもり!あなたには賛同しかねるわ」




ヨハネ「神をも恐れぬこの堕天使ヨハネ、女王ごときに狼狽えるほどヤワじゃないわ」





ツバサウッド「なにが堕天使よ……めでたい人ね、悪いけど私はもうこの無謀な挑戦から降りさせてもらうわ」




ヨハネ「ふん!あんたみたいな意気地なしはずっとそこに座ってるといいわ、それじゃ」スタスタ




ツバサウッド「言われなくてもそうするわよ……あなたもせいぜい足掻き続けるがいいわ……ふふふ」




ヨハネ(情けないやつ……)


………………


カンカンカン!


ヨハネ「向こうから鉄を打つ音が聞こえるわね」



???「ねえねえ君!あたしの店で何が買ってかない?」ズイッ


死角から飛び出してきたのは目深にフードを被った女だ


ヨハネ「わあ!びっくりした…どこから湧いたのよ!」




祭祀場の侍女ミト(演 高海美渡)「湧いたとは失礼な奴だなぁ!さっきからそこの椅子に座ってたよ?誰も客がいないからうとうとしてたけど」




ヨハネ「あなたは商人か何か?」


ミト「あたし本当は侍女なんだけどさ~、実際はこの祭祀場で灰の人達に色んな物売ってんの、もちろんソウルと引き換えでね」



ヨハネ「いや、今ヨハネはソウル全然ないから……」



ミト「ちぇ~…まあ貯まったらまた声かけてよ、武器とか以外にも祭祀場の裏の塔の鍵とか……ちょっと珍しいものも置いてるからさ!」




ヨハネ「えぇ、ヨハネはここを拠点にするつもりだからきっとこれからお世話になると思うわ」



ミト「よろしく~」


カンカン!


音のほうに向かっていくと、そこには釜で燃える鉄を金槌で打つ女がいた

後ろで1つに束ねた青い髪、熱さのせいで薄着の体からは汗が滴っている



???「お?あなた新顔だね~」



鍛冶屋カナンドレイ(演 松浦果南)「私はカナンドレイ、見ての通り鍛冶屋だよ、ハグする?」



ヨハネ「なるほど鍛冶屋ね……ってハグ!?」




カナンドレイ「えいっ!」ダキッ



ヨハネ「あっ!ちょっとあんた汗まみれじゃないの!ヨハネの黒衣がぁ……」




カナンドレイ「あはは……ごめんごめんついクセで」


ヨハネ「もう……」



カナンドレイ「そういえばあなた、薪の女王を探すんだって?」




ヨハネ「それがヨハネの使命なのよ」



カナンドレイ「それは楽な旅じゃないね……だからきっと強い武器が必要なはず!」




カナンドレイ「ちなみに今あなたはどんな武器を使ってるの?」




ヨハネ「ヨハネ?ヨハネの愛剣はこの2つよ」スッ



カナンドレイ「モーリオンブレードに闇朧……実物は初めて見たよ」


ヨハネ「そんなに珍しいものなの?」



カナンドレイ「この闇朧だって刀身が透明な刀……普通にはまず作れないよね」


カナンドレイ「こっちのモーリオンブレードなんて亡者の国ロンドールの秘宝って言われてるんだよ?」



ヨハネ「亡者の国の!?じゃあヨハネにこれをくれたお婆さんは……」




カナンドレイ「ま、まあともかく、もし良かったらあなたの武器を私に鍛えさせてくれないかな?」




ヨハネ「もちろんよ、武器だって旅を共にする仲間ですもの、是非あなたにお願いするわ!」




カナンドレイ「良かった~!今まで暇で暇で仕方なかったんだよ」


カナンドレイ「あなたの前に来た人は戦う前から心が折れちゃったみたいだし……武器を鍛えてあげようと思ったけど断られちゃった、あれじゃ武器が泣いてるよ」




ヨハネ(さっきのツバサウッドとかいうやつのことね…)




カナンドレイ「よし!じゃあさっそくだけど楔石もってる?」




ヨハネ「楔石?」




カナンドレイ「あ、もしかして持ってない?楔石がないと武器を鍛えられないんだ…ごめんね?」




ヨハネ「そっか……じゃあ楔石が手に入ったらまたお願いするわね」




カナンドレイ「楔石は結構いろいろな場所で手に入るから、きっと旅の途中でたくさん集まるはずだよ」




ヨハネ「了解したわ!」


カナンドレイ「武器を鍛えるのが私の生きがいだからさ、よろしくね!」


………………


ヨハネ「さて……火防女に鍛冶屋、侍女に動かないニート女……今祭祀場にいるのはみたところこれで全員かしら」




???「お~い!」



ヨハネ「え?どこ?」




???「上やん上!玉座に座ってるよ~」



てっきり空いていると思っていた女王の5つの玉座。

そのうちの1つに紫のおさげ髪の女が座っていた



ヨハネ「どこの誰かは知らないけどそこはヨハネがこれから連れ戻す女王たちの玉座、関係ないやつが無闇に座るものじゃないわよ?」



タロットラントのノゾレス(演 東條希)「やっぱり君が火のなき灰、王の探求者か~、ウチはタロットラントのノゾレスや」




ヨハネ「そんなところに座っちゃって、どういうつもりなのよ」



ノゾレス「信じてくれへんかもしれないけど、これでもウチはかつて火を継いだ薪の女王の1人なんよ?」




ヨハネ「え?あなたが薪の女王!?」




ノゾレス「まだ疑ってるな~?それじゃあ証拠にほら、ウチの体を近くでよ~く見てみて」




ヨハネ「ん?」ジ-…


ノゾレスに近寄ってよく見ると、身体のいたるところで火が燻っていた




ヨハネ「身体が燃えてる!?」



ノゾレス「せやで?ウチの身体はいまだに自分に宿した火に焼かれてるんよ……世界を照らし、繋ぐためにね」




ヨハネ「さっきは失礼な態度をとって悪かったわね、お詫びするわ……」




ノゾレス「気にせんでええよ♪ウチが女王っぽく見えないのは自覚してるし」



ヨハネ「ねえ、ところでどうしてあなただけが玉座に戻ってきているの?」



ノゾレス「なんでかってね~、君は自分の使命の意味、ちゃんと理解してるかな?」




ヨハネ「使命の意味?」



ノゾレス「火が陰っても新しく火を継ぐ者が現れない……だからウチら女王が甦えったんよ」



ノゾレス「ようは新しい薪の王が誕生するまでの予備みたいな扱いやね」



ヨハネ「………」




ノゾレス「甦えった女王たちはいわば火を燃やすための燃料のようなもの、新しい女王を生み出す為の贄となるんよ」



ヨハネ「つまり灰であるヨハネが女王を連れ戻すのは、自分にかつての女王たちが宿した火を移すためということ?」


ノゾレス「そのとおり!しかし見てみれば甦えった女王たちはウチ以外誰も玉座には戻って来ない……」



ノゾレス「どうやらみんな大人しく火継ぎのための贄になる気はないみたいやね」




ヨハネ「でもヨハネは新しい王になることを目指しているの、なんとか説得して連れ戻してみせるわ!」




ノゾレス「さっき火防女とも話してたみたいやけど……王を連れ戻すと言うと聞こえはいいけど実際はそんなもんやない」



ヨハネ「?」



ノゾレス「女王が玉座に戻らぬなら女王を殺し、その薪を玉座に戻すんや……」



ヨハネ「!?」


ノゾレス「つまりこれから君は女王たちを探し、そして殺す旅をするんよ」




ヨハネ「女王を……殺す!?」




ノゾレス「女王たちを殺して新たな女王として火を継ぐ資格を得る……これは選王の儀、最古の火継ぎの再現なんよ」




ヨハネ「一番最初の火継ぎでも女王殺しによって火継ぎの資格を得ていたのね……」




ノゾレス「あ、ちなみに心配しなくてもウチはここを離れたりはしないから安心してね」




ヨハネ「あなたはそれでいいの?」


ノゾレス「だってウチはそのために甦えったんやもん、覚悟はできてる……だからここで君が火を継ぐのを見届けさせてもらおうかな♪」




ノゾレス「それにウチは争い事は嫌いやし、元々戦うような力はほとんど持ってないしね」




ヨハネ「なるほど……ヨハネが想像していたより遥かに過酷な旅になりそうだわ……」



ノゾレス「ウチはいつでもここにいる……だからまた何かあったらいつでも話しかけてね?応援してるで♪」




ヨハネ「ええ……貴重な情報をありがとう」




ヨハネ(女王を殺す旅か……)



…………………



ヨハネ(かつての英雄である女王たちに戦いを挑む……でもこれは避けられない戦いなのね)




ヨハネ(ヨハネが新たな女王となるために……!)




下魔「お帰りなさいませヨハネ様!はい!」



火防女アリサ「お、お帰りなさいませヨハネ様!」ペコリ



下魔「ダメゲマ!角度が足りないゲマ!やり直し!あと3セット追加ゲマよ」プンスコ



火防女アリサ「ひ……ひえ~」



ヨハネ「あんた、見ないと思ったらこんなところで何やってんの?」




下魔「おぉ~!これはこれはヨハネ様!この新人めに先輩である下魔が直々に指導をと思いまして」



ヨハネ「なにやってんだか……そんなことよりそろそろルビリックに出発するわよ?」




火防女アリサ「灰のお方、旅の準備ができたのですね」



ヨハネ「ええ、いつまでもここに居座ってはいられないもの」



火防女アリサ「では最後にわたくしからあなた様にこちらの飲み物を」スッ




ヨハネ「これは?」



火防女アリサ「エストのおでん缶です、魔術を使う力が尽きた時、篝火で休む時間がない時にとっさに召し上がることで魔術の力を回復することができます……」




ヨハネ「いやいや……戦いながらエスト瓶は飲めてもおでんは食べられないわよ……っていうかそもそも飲み物じゃないし!」



下魔「いたらぬ後輩ですみませんゲマ……」



火防女アリサ「?」


ヨハネ「ま、まあくれるというなら貰っていくわ……さあ下魔!篝火からルビリックに向かうわよ」



下魔「了解ゲマ!」



火防女アリサ「気をつけていってらっしゃいませ灰のお方、あなたに火の導きがあらんことを……」



篝火の側に座り込むとあたりは霧のようなものに包まれ、ヨハネと下魔はルビリックの高壁へと転送された


今回はここまでです!
更新遅れてすみませんでしたm(._.)m
出発するまでにかなりかかってしまいましたが次回からしっかり進めていけたらと思います

明日は更新厳しいので続きは木曜日以降にしますm(._.)m


……………

シュウウウウウウ………


ヨハネ「着いた……のかしらね?」



下魔「石造りの部屋に転送さされたゲマ」




ヨハネ「とりあえずこの部屋には何もなさそう……扉を開けて先に進むわよ」



ギギギギイ……


ールビリックの高壁ー

ヒュウウウウ……

ヨハネ「また随分と高い場所ね……」



下魔「凄い景色ゲマ……」



ヨハネ「この高さならルビリックの国中を一望できそうね……景色を楽しむ暇はないけど。あの正面に見えるのはルビリック城かしら?」



下魔「そのようゲマ、城には大きな橋も架かってるみたいゲマね」


ヨハネと下魔が転送されたのは、どうやら巨大なルビリック城を取り囲む城壁と砦が一体となった高壁の最上部のようだ



ヨハネ「とりあえずあの城を目指して進みましょう、薪の女王たちがそこにいるのかもしれない……!」



下魔「あ、ヨハネ様、目の前に篝火がありりますゲマ」



ヨハネ「とりあえず灯しておくわね!」



ボウッ


BONFIRE LIT


不死の者が死んだ時、その肉体は再び篝火から甦る。不死といえどなるべく死は避けなければならないが……



下魔「あちらの階段から下に降りられそうゲマ」


ヨハネ「城に向かうにはまずは地上を目指さなければならないみたいね」


高壁は階段のように幾重にも壁が重なっており、階段や梯子で連絡されている。
それらを使って少しずつ下を目指すほかなさそうだ


スタスタ


ヨハネ「あ、ちょっと待って……」



ヨハネは階段で後ろからついてくる下魔を手で制止する



下魔「どうしましたゲマ……?」




ヨハネ「何かがいる気配がする……ちょっと先を覗いてみるわね……」



ヨハネ「………」ソロ-……



祈ら亡者たち「………」

亡者兵士「………」



ヨハネ「結局ここもリトルデーモン祭りね………まともな下界の人間はいないのかしら」



下魔「ルビリックの兵士たちまで亡者になってしまっているとは……困ったものゲマ」



階下の道は祈りを捧げる人間を象った石像が無数に並び、それに混じって何かに向けて祈りを捧げる亡者たちと武器を片手に座り込む亡者兵が入り乱れる異様な光景であった




ヨハネ「奥に城壁の内部に入れる階段が見える……突破するわよ!」


タタタッ


亡者兵士「………」スクッ



ヨハネ「……!」


亡者兵「アアアアア!」ブン!



ヨハネ「知能もなくなってしまってるのかしら……力任せの大振り、戦術も何もあったものじゃないわ!」



ヨハネはひらりと亡者兵の背後に回ると背部に剣を突き立てる


グサッ



亡者兵「ギエエエ……」ドサッ



ヨハネ「いっちょあがりね……」



ヨハネ「さて後は周りのリトルデーモンたちを……ん?」



祈る亡者たち「………」



ヨハネ「もしも~し?」


下魔「ヨハネ様には目もくれない様子ゲマね……」


ヨハネ「むぅ~」ムス-


祈る亡者たちはヨハネと亡者兵の戦いを間近にしてもまったく動じず、虚空に向けて祈りを捧げ続けていた



下魔「襲ってくる様子もないみたいゲマ、先に進みましょう!」


下魔「ヨハネ様…?」



ヨハネ「さあリトルデーモンたち、堕天使ヨハネの降臨よ!もっとヨハネを崇め、奉りなさい?」ビシッ



祈る亡者たち「………」



下魔「あの~……ヨハネ様……何してるゲマ?」



ヨハネ「ふふふ……こうして祈りを捧げる者たちの前に立つと、まるで自分が崇められてるみたいで気分がいいわね」



祈る亡者「………ジャマ」ボソッ



ヨハネ「あ……ごめん」スッ



ヨハネ(怒られた……)シュン…


亡者兵「イエアアアアアア!」



ヨハ下魔「!?」


騒ぎを聞きつけたのだろうか、奥から現れたこの辺りの亡者兵のリーダーであろうランタンを持った亡者兵が大声を上げた



亡者兵たち「ウオオオオ!」ゾロゾロ



ヨハネ「ま、まずい!仲間を呼ばれたわ!」


下魔「行き先を塞がれてしまったゲマ……」



声を聞きつけた数人の亡者兵たちが向かおうとしていた城壁内部への階段に立ち塞がった


ヨハネ「複数人相手は得意じゃなけど……」

ボウッ


ヨハネ「狭い階段じゃ避けられないでしょ?これでも喰らいなさい!」


ボオオオウ!


亡者兵たち「キアアアアアアアア……」


狭い階段に陣取っていた亡者兵たちはたちまちヨハネの左手の呪術の火から放たれた業火に焼き払われた



下魔「やりましたゲマねヨハネ様!」



ヨハネ「ふう……今回はたまたま場所が良かったわ、ヨハネにしては珍しく運が良かったってとこかしらね」



ヨハネ「さ、城壁の中に入るわよ」


スタスタ


下魔「う~ん……城壁の中は暗くて辺りが見辛いゲマ……」



ヨハネ「梯子があるわ、ひとまずこれで一段下に降りましょう」



ヨハネ「ん?」



亡者刺客「…………」



ヨハネ「隠れているつもりかもしれないけどヨハネの魔眼はごまかせないわ!」


ザシュッ


亡者刺客「アアア……」ドサッ



下魔「まさか木箱の裏に隠れていたとは……」



亡者刺客「シュアアアッ!」


シユッ!


ヨハネ「なっ……!」


背後から現れた別の亡者刺客が振り回したダガーがヨハネの体をかすめた



ヨハネ「くっ…この程度の傷……!」


ブンッ!


亡者刺客「ギイイ……」ドサッ



ヨハネ「後ろからもう1人来てたとはね……」



下魔「連携されると厄介ゲマ……」


ヨハネ「傷を負ったわ……エスト瓶で回復するわね」ゴクゴク



ヨハネ「ふぅ………梯子を降りて下に行きまし ょう」


スルスル


下魔「また外に出たゲマ」



ヨハネ「真っ直ぐこのまま進む道と階段で上に行く道があるわ」



下魔「ただこのまま進む道はちょっと……」


ヒュン!


ヨハネ「危ないっ!」ササッ



亡者兵たち「………」スチャッ


ヨハネ「ボウガン兵たちがこっちを狙って待ち構えてる……」



下魔「このまま突っ込めば的にされてしまうゲマ……」



ヨハネ「階段の上の道に行くしかなさそうね……上にも何か建物があるみたいよ?」


スタスタ



パサッ!バサッ!



ヨハネ「何かくるわよ!?」


下魔「あれは!」

突如響いた羽音と共にヨハネ達の前方に舞い降りた影、それは丸々とした体の巨大な(・8・)であった


ヘルカイトッリ「ちゅんちゅん!」ノウトロボイス



ヨハネ「でかっ!な、何よあれ!?」



下魔「あ、あれは(・8・)ゲマ!王国ルビリックの象徴のうちの1つゲマけど、まさか生きた(・8・)が現れるとは……!」




ヨハネ「どうすんのよあれ!?」



下魔「上の道には(・8・)、下の道にはボウガンの亡者兵部隊……絶どちらも地獄ゲマ……」



ヘルカイトッリ「…………」スウッ



下魔「はっ!ヨハネ様危ないゲマ、下がるゲマ!」グイッ


ヨハネ「えっ!?」



ヘルカイトッリ「ちゅうううううううううん!!!」


ボオオオオオ!!



(・8・)の口から放たれた炎のブレスがヨハネの眼前を焼き払い火の海へと変えた



ヨハネ「あ、危なかった……あんたが引っ張ってくれなかったら丸焼きにされてたわ……」



下魔「間一髪ゲマ…」



ヘルカイトッリ「………すうっ」


下魔「また炎を吐くつもりゲマ……ヨハネ様ここは一旦退きましょう!」




ヨハネ「あんなの喰らったらひとたまりもない……とてもまともにはやりあえないわね……!」


タッタッタッ


ヘルカイトッリ「………」ズイッ



下魔「(・8・)が身を乗り出してこっちを狙ってるゲマ!」



階段を駆け下りるヨハネたちを狙って今度は(・8・)が下の道へブレスを吐いた


ヘルカイトッリ「ちゅんちゅううううううううん!!」


ボオオオオオ!!



ヨハネ「ここにいても熱風が……!」



ギヤアアアアアアア

イアアアア

アアアアアアアアアア

アッツ!


下魔「ん?亡者兵たちの悲鳴が聞こえたゲマ……」



ヨハネ「どうしたのかしら……」ソロ-リ



亡者兵たち「」プスプス…



下魔「さっきのブレスに巻き込まれたみたいゲマね……」



ヨハネ「あわれリトルデーモン……」



下魔「でもこれで幸運にも下の道のボウガン兵が一掃されたゲマ!」



ヘルカイトッリ「ふぃ~……つかれたちゅん……」



ヨハネ「(・8・)がへばってる……下魔!今なら下の道を駆け抜けて先に進めそうよ…!」



下魔「行くなら今しかないゲマ!」


ヨハネ「下魔、ところどころ地面が燃えてるから気をつけなさい…」タッタッタッタッ



下魔「下魔は浮いてるから心配無用ゲマ」フワフワ



ヨハネ「向こうに塔の入り口が見える!そこまで走るわよ!」



タッタッタッタッ


ヨハネ「はあ…さすがにここまでくれば炎も届かないでしょ」



下魔「(・8・)は恐ろしいゲマ……」



ヨハネ「それにしてもなんなのよあいつは!竜なの?鳥なの?」




下魔「なんなのと言われましても…(・8・)は(・8・)なんだよゲマなぁ…」



ヨハネ「そ……そう」



下魔「とりあえず少し休んだらそこの塔の入り口から中に入るゲマ」



カシャン カシャン



ヨハネ「誰かくる……またリトルデーモンかしら…」


塔の入り口けら現れたのは鎧に身を包んだ女騎士だった



ルビリック女騎士「………」カシャン カシャン


下魔「あの鎧の騎士は恐らくルビリック王国に仕える女騎士ゲマ」



ルビリック女騎士「……!」カシャカシャカシャ



女騎士はヨハネを見つけると鎧の無機質な音をたてながら盾を構えて駆け寄ってくる



ヨハネ「完全に戦闘態勢ね……」


ヨハネ「ふん!」


カキン!カキン!


ルビリック女騎士「………」



ヨハネ「リトルデーモンとはいえさすがは騎士ね……さっきの雑兵たちとは動きが違うわ」



ルビリック女騎士「………!」ブン!

カキン!


ヨハネ「くっ………隙がなかなか見つからないわ」



ヨハネ「ダークハンドの盾を使わないときつそうね…」

ブゥン……


ルビリック女騎士「!」シュッ!


騎士の突きがヨハネに襲いかかる


ガン!

ヨハネ(魔法や弓くらいならいいけどやっぱり剣を受けるのは厳しいわ…)


ヨハネ「戻れ左手……!」


ヨハネは盾を戻し、モーリオンブレードを鞘に収めると腰の闇朧を引き抜き、構える



ルビリック女騎士「………」スッ


盾を構える騎士……ヨハネはニヤリと笑う



ヨハネ(ヨハネの闇朧の前で盾を構えた時点で……あなたの負けよ……!)


ヨハネ「はぁ!」


大きく踏み込むと狙いを定め強烈な突きを繰り出す


ズン!



ヨハネの見えない刃の突きは正面から盾にぶつかりあっさりと防がれた……


…かに見えた


ルビリック女騎士「!?」ガクッ



ヨハネ「闇朧を防ぐものなし……」


ルビリック女騎士「……」ドサッ


女騎士は倒れ、そのまま立ち上がることはなかった


下魔「ヨハネ様……今のは!」



ヨハネ「闇朧の魔力を込めた突きは盾をも貫通する……」


ヨハネ「ただこっちの隙もかなり大きいからここぞという時しか使えないけどね」



下魔「何が起きたか一瞬わからなかったゲマ……」



ヨハネ「ふぅ……さすがに騎士は強いわね……こんなのにこれからたくさん出てこられたら参っちゃうわよ」



下魔「とりあえず強敵は退けたゲマ、塔の中へ入りましょう!」


テクテク


ヨハネ「また暗いわね……」



亡者刺客「ギエエ!」ブンブン!



ヨハネ「せい!」


ザシュッ



亡者刺客「」パタリ



ヨハネ「やれやれ……暗いとこには大抵こいつらが隠れてるのね……」




下魔「あ、こっちに塔の上に登る階段があるゲマ!」



ヨハネ「下に降りる梯子もあるけど、まずは上に行ってみようかしら」


………

高壁の塔の上

ヨハネ「あ、篝火発見!ここで一休みするわよ!」


ボウッ


BONFIRE LIT

ヨハネ「よいしょっと……」チョコン


下魔「いや~、(・8・)に襲われたり騎士と戦ったり大変な道のりだったゲマね…」


ヨハネ「どこもかしこもリトルデーモンだらけね……他の場所もこうなっちゃってるのかしら」



下魔「そういえばいつのまにかルビリック城に近づいている気がするゲマ」



ヨハネ「ほんとね、ずっと城の外壁を回ってるだけだと思ってたけどしっかり中心部に近づいていたみたい」



下魔「この調子でルビリック城を目指すゲマ!」

今日はここまでです。毎度遅筆だすみませんm(._.)m

それにしても戦闘描写があるSSは今回が初めてでなかなか慣れないです……


明日には続きを更新して高壁編は終われると思います!

………………


しばしの休息の後、再び塔の中に戻るヨハネとゲマ、螺旋階段で塔の中ほどに降りると外へと繋がる出口を見つける



ヨハネ「ここから隣の建物の屋根に飛び移れそうよ」


下魔「屋根伝いに建物の上を進めば城に一気に近づけそうゲマね」


ヨハネ「よっと…」ピョン


テクテク



祈る亡者たち「…………」



下魔「屋根の上でもまた祈ってる亡者たちがいるゲマ」



ヨハネ「熱心なことね……まあ無害みたいだし横を通り抜けるわ、この屋根の上を通る以外道はないし」



ヨハネ(邪魔したらまた怒られるもんね)


スタスタ


祈る亡者たち「………」



ヨハネ「………」



祈る亡者「……」ゴボゴボゴボ



ヨハネ「え!?」



下魔「なんだか様子がおかしいゲマ……!」


人の膿「シャアアアアアア!」


ヨハネ「なんで……!」


グンダの中から現れた人の膿、あの黒く蠢く巨大な化け物が再び亡者の中から飛び出した



下魔「ヨハネ様!こいつは確か火に弱いゲマ!」



ヨハネ「そうだったわね……!なら火を」


人の膿「ショワアアアア!」グルン!


ドガアッ!

ヨハネ「きゃああ!!」


祈る亡者たち「ギヤアアアア……」


化け物は巨大で長い頭で周囲を薙ぎ払い、火球を放とうとしたヨハネを周りの亡者たちもろとも跳ね飛ばした


下魔「ああ……!ヨハネ様!」



人の膿「ギイイ!」ノッシノッシ


化け物は倒れるヨハネに追い打ちをかけようと迫る


ヨハネ「げほっ……げほっ!」


ヨハネ(駄目だ……さっきの衝撃で意識が……動けない)



人の膿「……!」ブン!

ドシャア!!


ヨハネ「あ゛…!」


倒れるヨハネに無慈悲に化け物の頭が叩きつけられる


ヨハネ「そん………な…」


ヨハネ「」


下魔「ヨハネ様ああぁぁぁ!」


YOU DIED


…………………
……………
………



高壁の塔の篝火


シュウウウウウ………


ヨハネ「やってしまったぁ……」ズ-ン…


下魔「ヨハネ様……!」


ヨハネ「こうしてみんな心が折れていくのよ……死ぬことができないからなおさらね……」


下魔「ヨハネ様、諦めてはいけません!あなたはあの祭祀場にいた女騎士のようになりたいゲマか?」



ヨハネ「うぅ………そんなの嫌!」スクッ


ヨハネ「今度は負けない……!」グッ
 


再び屋根の上


祈る亡者たち「………」


下魔「さっきのやつらも元に戻ってるゲマ」



ヨハネ「前にグンダとかいうでかい騎士から出てきた化け物よりもはるかに獰猛で攻撃的だったわ……」


祈る亡者たち「…………」



ヨハネ「さすがに宿主が倒されれば化け物も死ぬはずよ…」


タッタッタッタッ



ヨハネ「だから化け物が体から出てくる前に倒す…!」


ザシュッ


祈る亡者「」ドサッ


下魔「これで安心して先に進めるゲマ!」


テクテク


下魔「屋根はここで行き止まりゲマね」



ヨハネ「梯子がかかってるからこのまま一気に下の地上まで下りられそうよ!」



下魔「下の広場を抜ければルビリック城はもう目の前ゲマ!」


スルスル


ヨハネ「よいしょ……」


下魔「……」キョロキョロ


梯子を降りた先の広場には荒れ果て、主を失った中身のない鎧がそこかしこに転がっていた


ヨハネ「気味がが悪い…早く抜けるわよ…」


カシャ………


下魔「また騎士が現れたゲマ……!」



羽騎士「………」


ヨハネ「背中に天使の羽を模した飾りがついてるわね……堕天使ヨハネへの冒涜と受けとったわ!」ダダダッ



下魔「あ、ヨハネ様!」



羽騎士は巨大な斧槍を持った大柄な騎士、背中に羽を生やしているあたり天使信仰と深く関わりがあるようだ


羽騎士「……!」ピカァ


下魔「体が光ったゲマ!」



ヨハネ「?」


次の瞬間、羽騎士を中心として無数の光の柱が発生しヨハネに襲いかかる



ヨハネ「ああああ!」


ヨハネは光の柱に打ち上げられ錐揉み状に吹き飛んだ


ズザザア



ヨハネ「くっ……エスト瓶で回復を……」ゴクゴク



下魔「奇跡まで使ってくる騎士がいるとは……」


羽騎士「………」グルングルングルン!


続けざまに羽騎士は回転しながら斧槍を振り回しヨハネを切り刻まんとする


ヨハネ「デカブツの癖になんて早い動きなの…!?」


羽騎士「……!」ブン!


ヨハネ「っ!」



ヨハネは羽騎士の回転力を加えた横薙ぎを伏せでかわし、背後から剣を突き立てた


グサッ


羽騎士「」バタッ



ヨハネ「はあ……はあ……天使風情がヨハネ様に挑むからこうなるのよ」



下魔「もうこの広場には敵はいないみたいゲマ」



羽騎士を倒して広場を後にしたヨハネ
広場の先ははルビリック城へと続く階段の中腹に繋がっていた


ヨハネ「長い階段………ここはちょうど真ん中くらいかしらね」



下魔「この階段を登ればいよいよルビリック城ゲマ!」



ヨハネ「待って……人影が見える……!」



ルビリック女騎士たち「………」カシャンカシャンカシャン


下魔「騎士たちがたくさんいるゲマ……」



ヨハネ「ここからでも数人は確認できるわ……あんなの一度に相手なんて無理よ……」



ヨハネ「ここは久しぶりに魔樹を使うわ……」


ヨハネは懐から妖木の枝を取り出すと呪文を詠唱し、自身と下魔にかざした


下魔「からだが半透明になったゲマ!」


ヨハネ「これは『見えない体』よ、体を半透明にすることで敵の目を欺くことができるわ」



ヨハネ「さあ、階段を登って城の入り口まで一気に行くわよ!くれぐれも静かにね?」



下魔「……りょ、了解ゲマ」


スタスタ


ルビリック女騎士「………」


下魔(すぐ横を騎士たちが歩いてるゲマ……!)


ヨハネ(焦らず……慎重にいくのよ)ソロ-リ



……………


ヨハネ「入り口に着いたわ!もう魔術を解除してもいいわね」シュワアア


下魔「体が元に戻っていくゲマ……」シュワアア



わずかに開いている扉から中の様子を除き込む

まるで聖堂のような室内には大きな部屋の奥の椅子に女性がひとり座っているだけだった



ヨハネ「おかしいわね……ここから直接城内に入れると思ったんだけど」


下魔「それにあの女の人が薪の女王……というわけでもなさそうゲマね」



ヨハネ「とりあえず話を聞いてみましょうか、久しぶりにちゃんとした下界の人間を見た気がするわ……」


スタスタ



ヨハネ「あの~……?」


???「ああ、お待ちしていました、火の無い灰よ」



ヨハネ「ヨハネのことはもうわかっているのね……あなたは?」



祭儀長シマ(演 高海志摩)「私はシマ、この城…ルビリックの祭儀長を務めるものです」


下魔(やっぱりこの人は薪の女王じゃなかったゲマ)


ヨハネ「その祭儀長のあなたがなぜここに?」



シマ「実はあなたにお伝えしたいことがありまして……その……この城に薪の女王たちはいないのです」



ヨハネ「え……いない?」


シマ「はい……女王たちは皆、帰っていったのです、この城の麓に流れ着いた女王たちそれぞれの故郷へ…」



ヨハネ「故郷が流れ着いたって……物理的にルビリック城の麓に繋がってるってことなの?」



シマ「その通りです、火の陰りによって甦えった女王たちがここルビリックに集うため、彼女たちの故郷は今ルビリックに集結しているのですよ」



ヨハネ「ならヨハネは各地へ向かって女王を探さなくちゃいけないのね……」


シマ「そうなのです………あなたにこの小環旗を託しましょう」



ヨハネ「小さな旗……」


シマ「この高壁の下に向かい、大城門の先でこの旗を掲げなさい……この小環旗があなたを導いてくれることでしょう」



ヨハネ「わかったわ……」




シマ「ただし、大城門にはその……冷えてる谷の忌々しい番犬……いや番猫とでもいいましょうか……とにかくくれぐれもお気をつけを」



ヨハネ「番猫……?今度はどんな化け物のお出ましかしらね……」



シマ「さあ火の無い灰よ、薪の女王たちを追うのです。古くから決められたあなたの使命のために」




ヨハネ「それじゃ……とりあえずありがとう、この旗はもらってくわね」



シマ「…………」



……………………

シマから小環旗を受け取ったヨハネとゲマは騎士たちをかわしつつ城前の階段をひたすら下り続ける

そしてヨハネたちの前に巨大な城門が現れた


大城門前


下魔「本当に名前の通りの巨大な城門ゲマ……」



ヨハネ「この大きさなら巨人でも容易に出入りできそうね」



2人は城門へと歩み寄る



ヨハネ「さっきのシマとかいう人間が気をつけろとか言ってたけど何もいないじゃない……ヨハネたちをからかってたのかしら?」



下魔「そんなことする人には見えなかったゲマけどねぇ…」


ヨハネが城門に手をかけようとしたその時だった



ヨハネ「ねえ……なんか急に寒くなった気がしない」ガクガク


下魔「たしかに……これは気のせいなんかじゃないゲマ……!」


ズズズズズ………


ヨハネ(……背後から気配が!)


ヨハ下魔「!?」



ヨハネたちが振り向いた視線の先……

そこには巨大な空間の歪みが発生していた。

この異常な冷気もこの空間の歪みから発せられているようだ


ヨハネ「なに……あれ」


ズズズズズズズ……




そして遂にその元凶が歪みから這い出てきた

それは体に凄まじい冷気を纏った巨大な四つ這いの騎士だった

片手には大きなマラカス型の大槌を持ち、何やら楽しげな表情を浮かべている


???「ちょっと寒くないかにゃ?」



BOSS 冷えてる谷のリンチャン
(演 星空 凛)

リンチャンは冷えてる谷のウミシールの外征騎士であり、その姿は常に白米好きの米王の側にあったという


リンチャンが米王から授かった指輪「米王の左眼」は見つめるものを昂らせ、やがてその姿を凶暴なHJNNへと変えてしまうという


今のリンチャンのぬいぐるみのような姿も、この指輪の呪いなのだ
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira118257.jpg





リンチャン「にゃあ!」


ズドン!!


ヨハネ「わっ!」


リンチャンは巨大なマラカスを振り回しヨハネに迫る



ヨハネ「体がでかいやつってのはねえ……意外と懐に入られると弱いのよ


リンチャン「つぶれてしまえにゃ!」

ブン!


ヨハネ「もらったわ!」ダダダッ


マラカスの空振りの隙にヨハネは一気に懐に入り込み剣の連撃を浴びせる

ザシュッ!ザシュッ!



リンチャン「にゃっ!?」



リンチャン「痛い!何するにゃ!」


ドン!


ヨハネ「いやっ……!」ドガッ



ヨハネはリンチャンのもう一方の腕ではたかれ石の床に転がる



ヨハネ「……あれだけ切ったのに……その程度の傷しか負わないの…!?」



普通の人間ならとっくに倒れるところだがリンチャンの巨体にとっては致命傷にまでは至らないのだ


ヨハネ「ただマラカスの一撃の隙は大きい……致命傷にはならなくても確実に効いてるはず!」



リンチャン「えい!」


ヨハネ「……!」サッ

ズドン!!

パラパラ……


振り下ろしたマラカスが床の石畳を砕く


ヨハネ「あんなのに当たったら一発で天界行き確定だわ……」ササッ



ザシュッ!ザシュッ!


リンチャンの股のあいだをすり抜け後方から斬りつける



リンチャン「もう!痛いよ!」



下魔「ヨハネ様……やつの冷気に注意するゲマ!」



ヨハネ「う………そういえばさっきから体が……」



リンチャンの体が発している強烈な冷気はヨハネの体力を奪い、体を着実に蝕んでいた

あまりに長く冷気に包まれれば凍傷を引き起こしてしまうだろう



下魔「ヨハネ様……動きが鈍ってしまっているゲマ……」



ヨハネ「なんで……?うまく力が入らない……」ガタガタ




リンチャン「ん~?そろそろ限界かにゃ?」



ヨハネ「そんなことないわよ!」


ザシュッ!


リンチャン「っ……!」



ヨハネ(力が入りづらいけどまだ剣は振れる…!)


リンチャン「にゃああああああああ!!!」ゴゴゴゴゴオ



ヨハネ「!?」


リンチャンは地面が振動するほどの咆哮をあげるとヨハネのほうに向き直った



リンチャン「リンもう怒ったよ!さっきからちょこまか鬱陶しいにゃ!」


冷気がより一層強力になると共にリンチャンはヨハネ目掛けて突進を繰り出した



リンチャン「にゃああああ!」ダダダダッ



ヨハネ「はっ……!」ゴロン



力を振り絞りなんとか前転でかわす


リンチャン「まだまだいくにゃ!」ダダダッ


ヨハネ「!」



地面から火花を散らすほどの猛突進を受けヨハネはバウンドしながら地面に叩きつけられる


ドガアァン!



ヨハネ「あ゛あ゛あ゛っ……」



ヨハネ(まずい……回復……)プルブル



ヨハネ「あ……!」スルッ


パリイン!


下魔「ヨハネ様エスト瓶が!」


ヨハネ(手がかじかんで回復すらまともにできない……)




リンチャン「にゃっはっは~、リンが凍らせてから粉々にしてあげるよ!」



リンチャン「すぅ……」

リンチャンの口に冷気が集結し氷のブレスを吐こうとしている



ヨハネ(はあ……はあ……考えるのよヨハネ……なんとかして体を!)



ヨハネ(でないと待っているのは確実な死……)



下魔「ヨハネ様!呪術を使うゲマ!」


ヨハネ(そうだ呪術の火!)


リンチャン「?」



ヨハネ(体に温かさが戻ってくる……)



ヨハネ「………」ムクッ



リンチャン「なんでたちあがれるにゃ!?」



ヨハネ「………」ダダダッ



リンチャン「!?」



ヨハネ「今まで散々からかってくれたお返しよ!」ボオオ



ヨハネの手から放たれた火球は勢いよくリンチャンの顔面に直撃した



リンチャン「にゃっ!熱いぃ!」



下魔「やつが怯んでます!今ゲマ!」


ヨハネ「堕天の一撃を喰らいなさい………!」



リンチャン「にゃ……にゃあああ!」



ヨハネ「うおおおおお!」ダダダダッ



ズドオン!!


闇朧による渾身の突きがリンチャンを貫く



リンチャン「にゃ………にゃ……」



ヨハネ「あなたのその猫ちゃんみたいな喋り方は気に入ったわ……」




ヨハネ「もしまた下界に堕天する日が来たらヨハネのしもべになりなさい……猫のデーモンとしてヨハネの乗り物になることを許可してあげる」



リンチャン「ごめんね……リン負けちゃったよ……」



リンチャン「カヨチーン様………」シュワアアアアアアア



HEIR OF FIRE DESTROYED

冷えてる谷のリンチャンのソウルを手に入れた


ヨハネ「か……勝った……!」ヘタッ


下魔「我らがヨハネ様が死闘を制したゲマ!」


下魔(それにしてもさっきのリンチャン……とても親近感を覚える語尾だったゲマね)


ヨハネ「はあ………篝火が出た、ひとまず一旦休むわよ……さすがに体がもたないわ」


ボウッ


BONFIRE LIT


とりあえず最初のエリアということで寄り道以外ほぼノーカットで書いてみましたがこれだとかなりグダりそうですね( ;´Д`)


次のエリアからは道中かなりカットしていくかもしれませんm(._.)m

あ、志満姉の名前誤字ってましたね…
続きは月曜日辺りに更新します!



下魔「結局薪の女王たちはいなかったゲマ」


ヨハネ「これからはこのルビリックから繋がる女王たちの故郷を巡らなきゃいけないのね……」



下魔「長い旅路になりそうゲマ…」



ヨハネ「とりあえず一旦祭祀場に戻りましょうか、ノゾレスに報告もしたいし祭祀場にいる人間からまた情報を集められるかもしれないわ」


下魔「篝火はそれぞれ各所の篝火と連絡機能をもっているゲマ、ここから祭祀場の篝火に直接移動が可能ゲマ」


シュウウウウウウ………


ヨハネたちは拠点とする祭祀場にひとまず戻ることにした


ー火継ぎの祭祀場ー


シュウウウウ………

下魔「到着ゲマ!」


ヨハネ「自分の家じゃないけれど、帰ってきたらなんだかんだで落ち着く場所ね」



ヨハネ「ん?」



ツバサウッド「まったく……エレナたちも憐れなものね、女王だ英雄だと……あんなものはただの呪いだというのに………」ブツブツ



ヨハネ「ずいぶん大きな独り言ねニート女、まだそこに座ってたの?」



ツバサウッド「ニート女とは失礼ね!わたしはもう諦めたの、放っておいてよ……」



ヨハネ(だからニートなのよ……)


ツバサウッド「ところであなた、随分と足掻いてるみたいじなゃない、結構なことね」



ヨハネ「いちいちしゃくに障る言い方ね……」



ツバサウッド「ねえ……あなたは知ってる?英雄様と呼ばれる薪の女王……その正体を……」



ヨハネ「正体?」



ツバサウッド「そう……例えば深みの医者ニシキノマッキ、彼女はトマトが大好きでね?毎日毎日トマトばかりを食べ続けていたのよ……」




ヨハネ「なによそのプチ情報!?そんなのただベジタリアンな女子ってだけじゃない……大げさね」




ツバサウッド「そのトマト、ただのトマトじゃないの……」



ヨハネ「高級品とかいうオチだったら怒るわよ?」



ツバサウッド「違うわ…最初はただ普通にトマトを食べてるだけだった、でも自分だけではトマトをまかないきれなくなった。そして深みの病院の院長であり優秀な魔法医だった彼女はやがて……」




ヨハネ「…………」ゴクリ



ツバサウッド「病院に訪れた患者や生贄と称して連れてこさせた人間をトマトに変えた……自身の医療技術と魔法の力で」



ヨハネ「え……それってつまり」ゾワッ



ツバサウッド「人喰いよ……反吐がでるわ」



ヨハネ「なんでそんなやつが女王に……」



ツバサウッド「トマトとはいえ元は人間……それを喰らい続けた彼女の体には食べた人間たちのソウルや人間性が蓄積していった」



ツバサウッド「やがてそれは彼女の肉体の許容量を超えて体から溢れ出し、彼女自身の下半身をトマトピューレに変貌させてしまったそうよ……」



ヨハネ「そんな危険なやつをずっと野放しにしてたわけ!?」



ツバサウッド「いいえ……その後彼女はその人道を外れた行為から深みの病院に幽閉されたわ」


ツバサウッド「でもやがて彼女は薪の女王となった、己の内に溜め込み増幅した何百何千もの犠牲者の力、その強力すぎる力ゆえに……」



ヨハネ「なによそれ……」



ツバサウッド「人品なんて関係ない、女王とはそういうものなのよ……それでもあなたは彼女に挑むつもりかしら?」




ヨハネ「今の話を聞いたらますます放っておけなくなったわ、そんなやつがまた甦えったなんて…早くなんとかしないと…!」



ツバサウッド「ならルビリック城の城下、不死街にある塔の先に今でも道が続いているそうよ、深みの病院に犠牲者を運ぶ生贄の道がね」



ヨハネ「その病院にニシキノマッキが…」



ツバサウッド「その道を辿ってみるといいわ、あなたが心折れることを恐れぬならば………ふふふ」




ヨハネ「そこまでいろいろ知ってて何もしないなんて……あんたのことさらに見損なったわよ!」




ツバサウッド「なんとでも言うがいいわ、わたしは心折れた騎士……ここから動くつもりはさらさらないのよ……」


ヨハネ「もう……!好きにしなさい!」
スタスタ



ヨハネ(見たところ祭祀場にいる面子は変わってないわね……)



火防女アリサ「あっ!」



ヨハネ「?」




火防女アリサ「お……お帰りなさいませ!あなた様のリトルデーモン2号アリサです……!」



下魔「ほうほう……だんだんしもべとしての自覚がでてきたみたいゲマね~」



ヨハネ「はぁ……こいつに吹き込まれたのね、嬉しいけど別に無理してやってくれなくてもいいのよ?」



火防女アリサ「そうですか……」




火防女アリサ「ところで灰のお方、旅のほうは順調でございますか?」



ヨハネ「そうね、順調に厄介なほうに向かっていってるわ」



火防女アリサ「それはそれは……ですがあなた様に何があろうとわたしはあなたに仕え続けさせていただきます。それがわたくしの使命ですので!」



ヨハネ(この子はこの子でヨハネ達とは違う使命に囚われているのね……)


火防女アリサ「そうだ!わたしにも是非あなたのお手伝いをさせてください」


ヨハネ「手伝い?」



火防女「はい、あなたはこれまでに倒してきた者たちの主なきソウルをお持ちのようですね」




ヨハネ「まあ、さっきまでルビリックで戦ってきたからね」



火防女「その主なきソウルをあなたの力といたしましょう」




ヨハネ「どゆこと?」




火防女アリサ「あなたは灰のお方……ソウルの器となることができます。故にあなた様は他者のソウルを己の力とすることができるのです」




ヨハネ「当たり前よ……この体は所詮下界で過ごす為の器にすぎないの、そこを見抜くとはあなたなかなかね!」



下魔(ヨハネ様、たぶんそういうことじゃないと思うゲマ……)



ヨハネ「で?で?どうすればいいの?」ワクワク


火防女アリサ「それではわたしの中の暗闇に触れてください」



ヨハネ「え?あ、あ~暗闇ね、そうそう暗闇!ヨハネだってそのくらいできるわよ……ええ」アセアセ



ヨハネ(どうすればいいのよ!?)



火防女アリサ「わたしに手を差し伸べていただければ後はわたしが……」



ヨハネ「そ…そう」スッ


ヨハネ(この子……なかなかレベル高いわ……)



下魔(あ、あのヨハネ様が押されている……!)


火防女アリサ「では…」ギュッ


ヨハネ「な……なに手握ってるのよ///」


スウウウウウウ………


ヨハネ(すごい……力が満ちるのを感じる!)


下魔(キマシタワー!)


火防女アリサ「はい終わりです!これであなた様は力を得ることができました」



火防女アリサ「また主なきソウルをお持ちくださればその時はいつでも」



ヨハネ「これでヨハネはまた強くなってしまった……なんて罪深いの!」



ツバサウッド「そんなの所詮プラシーボ効果よ」



ヨハネ「あんたは口挟まないでちょうだい!」



ツバサウッド「はいはい、ちょっとからかっただけよ♪」



ヨハネ「むむむ……」


………………………


ノゾレス「あ、おかえり~♪どやった?」



ヨハネ「結局ルビリックに女王たちはいなかったわ……祭儀長が言うにはみんなそれぞれ自分の故郷に帰ったみたい」




ノゾレス「そっか……それにしても無事で良かったね」



ヨハネ「大変だったわよ……(・8・)は出るわ、まともな人間は祭儀長しかいないわ……挙句の果てに冷えてる谷の騎士にまで襲撃されたし……」



ノゾレス「冷えてる谷……?ウミシールの連中がなんでルビリックに……」



ヨハネ「さあね……いずれにせよ敵ならヨハネにとっては所属なんてどうでもいいわ」



ノゾレス「うーん……今はまだなんともいえないけどこれはウチらが思ってるよりもかなりややこしいことになってるかもしれないね…」


ヨハネ「ひとまず女王たちが帰ってしまったし、ヨハネは女王たちの故郷を巡ることにしたわ。まずはニシキノマッキがいるであろう深みの病院を目指す…!」


ノゾレス「ニシキノマッキかぁ……あの子はかなりの厄介者、くれぐれも気をつけてね」


ヨハネ「わかったわ……」



ノゾレス「そうだ、言ってなかったんやけどウチの趣味は占いと錬成なんよ」



ヨハネ「占いと錬成……なかなかヨハネと気が合いそうね」



ノゾレス「興味ある?」



ヨハネ「あるある!なんかヨハネのこと占ってみてちょうだい!」



ノゾレス「ふむふむ……それでは君の秘密を……」



ヨハネ「……」ゴクリ



ノゾレス「こ……これは!」



ヨハネ「!?」


ノゾレス「君………」



ヨハネ「なに………?」



ノゾレス「堕天使ヨハネって偽名やんなぁ、本名はヌーマーズのヨシ……」



ヨハネ「ストーーーップ!!それ以上は禁忌よ!」



ノゾレス「わかったわかった……まぁウチと君だけの秘密ってことで、ね?」



ヨハネ「まさか弱みを握られるとは……」



ノゾレス「とりあえずウチの占いの凄さを理解してもらったとこで……次は錬成なんやけど」



ヨハネ「錬成……聞いたことはあるけど実際に見たことはないわ、見せてくるるの?」



ノゾレス「見せてあげたいとこなんだけど錬成に使う錬成炉がないんよ……」


ヨハネ「錬成炉……お鍋みたいなやつかしら」



ノゾレス「それのこと!もう現存する錬成炉はほぼないはずなんやけど、ここルビリックは色んな呪いや魔術が氾濫するスピリチュアルな場所やからまだどこかにあるかもしれないんよ」



ヨハネ「ヨハネにそれを探して欲しいというわけね…」



ノゾレス「旅のついででいいからもしよかったら……ここじゃ何もやる事がなくて暇なんよ……」



ヨハネ「しかたないわねぇ……このヨハネに任せておきなさい!」



ノゾレス「ありがとう♪もし錬成炉と異形のソウルを持ってきたら面白いものを見せてあげるよ」



ヨハネ「楽しみにしておくわ」


ノゾレス「それじゃあ待ってるで!ほなね~♪」フリフリ



ヨハネ「ええ、行ってくるわ!楽しみに待ってなさい」フリフリ



…………………


下魔「ヨハネ様、準備はできましたゲマか?」



ヨハネ「ばっちりよ、力を得ることもできたしこれからの目的も明確になった」



ヨハネ「薪の女王の1人、ニシキノマッキを倒しに深みの病院を目指すわよ!」



下魔「じゃあまずは篝火の転送でルビリックの大城門に戻るゲマ」



こうしてヨハネたちは再び大城門前へと向かった


………………


大城門前

ヨハネ「さて、この大きな門を開けましょうか……」



下魔「手伝うゲマ!」



ヨハネ「ふぬぬ………!」ギギギ


下魔「ゲマ~……!」ギギギ


ゴゴゴオン!



ヨハネ「はあ……門重すぎ!……って」



ヨハ下魔「断崖絶壁じゃない!(ゲマ!)」


巨大な門を開けたその先に道などはなく、そこは断崖絶壁であった


ヨハネ「これじゃ先に進めないわ……」



下魔「そういえば祭儀長から旗をもらってたはずゲマ」



ヨハネ「この小さい旗?これが何になるのよ……」



下魔「とりあえず掲げてみるゲマ!何か起こるかもしれないゲマよ?」



ヨハネ「わかったわ……やってみる」スッ


ヨハネ「………」


下魔「……」



ヨハネ「これ、かなりシュールな光景よ?」


下魔「何も起きないゲマ……」



ヨハネ「もしかしてヨハネたち騙されたんじゃないの……?きっと今頃祭儀長が向こうで笑ってるわ」


しびれを切らしたヨハネが旗を降ろそうとしたその時だった



ゴソゴソ……


ヨハネ「?」


下魔「何かがくるゲマ!」



ヨハネ「な………なに!?」



ヨハネの足元の崖を下から這い登り現れた者

それは背中に翼を生やした茶色と白の2匹のアルパカだった



白パカ・茶パカ「フェ~」



ヨハネ「アルパカ!?」



下魔「羽が生えてるグマ!」


白パカ「………」ガシッ


ヨハネ「え……ちょっと!何するのよ!?」



茶パカ「………」ガシッ



下魔「離すゲマ~!」



白パカ・茶パカ「フェ~!」


パタパタパタパタ!


ヨハネ「こ、怖すぎる~!」


下魔「下を見れないゲマ……!」



アルパカ2匹はヨハネと下魔をおもむろに掴むとそのまま飛翔し、2人を崖の向こうへと運んでいった


ー不死街ー


アルパカたち「フェ~」


ドサッ!



ヨハネ「いたっ!もうちょっと丁寧に扱いなさいよぉ!」



アルパカたち「フェ~」フリフリ


パサッ!バサッ!



下魔「行ってしまったゲマ…」



ヨハネ「まったく……あんなぞんざいに扱わなくてもいいじゃない…」



下魔「でもアルパカのおかげで崖の向こう側にこれたゲマ」



長い橋から続くこの石造りの道は不死街の入り口の門へと繋がっていた



ヨハネ「道中に祈ってるリトルデーモンたちがいるけど、まあこの子たちは危害はないでしょう……」



ヨハネたちが門へと歩みを進めようとした時、門の反対側にいた亡者がおもむろに門を開いた


ヨハネ「ん?ヨハネたちを出迎えてくれるってことかしら?」



飢えた犬たち「ワン!ワン!」タッタッタッ



下魔「ひいっ!犬の亡者をけしかけてきたゲマ!」




ヨハネ「ずいぶん手荒な歓迎じゃない……!」




しかし門から飛び出してきた犬たちはヨハネたちではなく近くにいた祈りを捧げる亡者たちに襲いかかった



飢えた犬「ガウッ!」ガブガブ



亡者「ギヤアアアアア!」



ヨハネ「まるで地獄絵図ね…」



下魔「幸いまだ犬たちはこっちに気づいてないゲマ、一旦後ろに下がって様子をみましょう!」



ヨハネ「さすがに突っ込んで行って犬の囲まれたら危険だわ……」



ヨハネ「ちょうど反対側に少し気になるものがあるのよ…そっちをまず見に行きましょう」


ヨハネの視線の先は今から向かおうとしてしていた門とは逆の自分たちの後方、反対に進んだ先にはたくさんの何かがころがっているように見えた


テクテク



ヨハネ「え……これって人間!?」



近くまできて判明したその正体、地面にころがっているように見えたのは力尽きて倒れた大勢の巡礼者たちの遺体だった



ヨハネ「どうしてこんなところで……」



下魔「ヨハネ様……道の先を見てみるゲマ」



ヨハネ「え…」



巡礼者たちが倒れている先にある橋は崩れ、深い谷底が口を開けていた



ヨハネ「橋が崩れて先に進めずにここで力尽きてしまったのね……かわいそうに……」


???「ああ………あなたは……灰の英雄様ですね…お目にかかれて光栄です」ムクリ



ヨハネ「?」



倒れている巡礼者のうちの1人がこちらに声をかてきた



ロンドールのヨシミ(演 よしみ)「わたしはロンドールのヨシミ……見てのとおり巡礼者なのですが、どうやらわたしだけ生き残ってしまったようです」



ヨハネ(ロンドール……たしか亡者の国よね…)



ヨシミ「こうして生き残り、あなたに出会えたのも運命なのかもしれません……灰の方、わたしを従者にする気はありませんか?」



ヨハネ「ちょ、ちょっと考えさせて!」

クルッ


ヨハネ「どうする?」ヒソヒソ


下魔「ロンドールは亡者の国、なんか怪しいゲマ…」ヒソヒソ


ヨハネ「でも普通に会話もできるしなんかいい人そうよ?ここで見捨てるのはかわいそう……」ヒソヒソ



下魔「ヨハネ様に任せるゲマ…」



ヨハネ「わかったわ……!」

クルッ


ヨハネ「いいわ!これからあなたもヨハネ直属のリトルデーモン……よろしく頼むわね」



ヨシミ「ありがとうございます…!死に損ないのわたしに役目を与えてくださった!わたしも元は魔術師、きっとあなたのお役に立ちましょう」


下魔「大丈夫ゲマかねぇ……」


ヨシミ(あの剣……間違いない、きっとこの方はいすれ必ず…!)


ヨハネ「どうしたの?ヨハネの顔になんかついてる?」


ヨシミ「いえいえ!ではわたしは先に祭祀場でお待ちしております、では!」

シュウウウウウ……


ヨハネ「消えた………」


下魔「たぶん祭祀場にワープしたんだゲマ」



ヨハネ「こっちはもう行き止まりだし不死街のほうに戻るわよ、街のどこかにある塔を目指さなきゃ」



飢えた犬「………」ムシャムシャ



犬たちは食事に夢中でヨハネたちには気づいていないようだ


ヨハネ「…………」ソロ-リ


音を立てないようゆっくり犬たちのそばをすり抜け門に向かう


下魔「このレバーを引けば門が開きそうゲマ」


ヨハネ「よいしょ……!」ガコン


ゴゴゴゴゴ


ヨハネ「入るわよ………」



不死街の中は街とはいうもののさながら廃村のようであった

朽ちた木造の家屋が建ち並び、草木も枯れ果てている


ヨハネ「まあなんとなく予想はしてたけど、ここもやっぱりリトルデーモンたちがいるのね…」


もとはこの街の住人であったのだろう、農具を持った作業着姿の亡者たちの姿も遠目に確認できる


下魔「道が見当たらないゲマ……恐らくそこの建物の中を抜けて街の奥に進むしかないかと思うゲマ」



ヨハネ「そうするしかなさそうね」


廃屋

下魔「暗いゲマ……」


ヨハネ「ねえ……これなに?」


ブラ-…ンブラ-ン…


廃屋の中には天井から長い袋がいくつも吊り下げられている

ヨハネ「これ……人の形に見えない?」


下魔「じゃあ袋の中はもしかして……」



ヨハネ「考えるのはやめましょう……」


スタスタ


ヨハネ「もうやだ……早く出たい」


下魔「ここで一体なにがあったんだゲマ……」



下魔の視線の先には椅子に座った人…

いや人だったものというべきだろうか、椅子に座った姿勢のままその体は完全に樹木と化していた



ヨハネ「ひっ……!」



亡者の死体がたくさん詰められた籠を見つけヨハネが思わず小さな悲鳴をあげる



ヨハネ「うぅ……ヨハネのSAN値がもたないわよぉ……」



下男亡者「………」タタタッ



下魔「あ!ヨハネ様後ろ!」



ヨハネ「…!」


ヨハネが振り返ると、先の尖った頭巾を被った子供くらいの背丈の亡者が鎌を振りかざして飛びかかるところだった


ヨハネ「はあ!」


振り向きざまのヨハネの剣撃が亡者を斬る


下男亡者「」ドサッ



ヨハネ「……きっとヨハネたちをずっと背後から狙ってたんだわ、油断できないわね……」



下魔「ここに長居する理由はないゲマ!早く外に出ましょうヨハネ様!」



ヨハネ「そうね……!」



廃屋の裏口を抜けるとそこは広場になっていた


下魔「げ……たくさんいるゲマ」



ヨハネ「あんなに大勢の相手ヨハネには無理よ」



広場では大勢の亡者たちが集まり何かを燃やしてできた大きな火の周りを囲んでいた



下魔「あそこで燃やしてるの……さっきぶら下がってた袋のやつゲマ……」



ヨハネ「いったいどうなってんのよこの街は…」


亡者「ギエエエエ!」


亡者たち「!?」



ヨハネ「!」



ヨハネたちが様子を伺っていると、どうやら亡者の1人がこちらに気づいてしまったらしい

つられて周りの他の亡者たちもこちらに気づいたようだ




ヨハネ「まずい!逃げるわよ下魔…!」



下魔「向こうに橋が見えるゲマ、とりあえずそっちに!」


教導師「ンフフフ………アッハハハ!」


ヨハネ「なんかめんどくさそうなやつもいるわよ……!」


不気味な笑い声を上げているのは聖職者のような服を着た太った女

棘のついた長いメイスを携え、片手に教典を持った彼女はなにやら呪文を唱えている


教導師「フン……!」


ブ-ン……



ヨハネ「!?」


教導師が呪文を唱え終わると大量の黒い蟲が召喚され、蟲の大群がうねりながら高速でこちらに向かってくる



下魔「ヨハネ様はやく!」


ヨハネ「わかってる……!」ダダダッ



ヨハネたちは鉈や鋸を振り回しながら向かってくる亡者たちと蟲の大群を尻目にひたすら走った

朽ちた木の橋を渡り、途中にいた亡者をかわし、街の奥へ奥へと進んでいく



………………


ヨハネ「………さすがに……ここまでは……もう追ってこないようね…」ゼエゼエ


下魔「かなり街の中心まで来てしまったゲマ…」


ヨハネ「見て、向こうに見える細長い建物……あれがツバサウッドが言ってと塔じゃない?」



下魔「街を見渡してもあれが恐らく一番高い建物……きっとあれで間違いないゲマ!」



籠背負い亡者「………」ウロウロ



ヨハネ「ようやくあいつらを振り切ったと思ったのに……なんかでかいのがいるわよ…」



下魔「空っぽの籠を背負ってるゲマ」



ヨハネたちの視線の先には赤いフードを被った大柄な亡者

背中には空っぽの大きな籠を背負い、何かを探しているのか同じところをいったりきたりしている



ヨハネ「手強そうね……気をつけていかないと」


剣を構えて少しづつ距離を詰める


ヨハネ「?」


籠背負い亡者「………」ウロウロ


視界にヨハネが入っているのは間違いないが、不思議なことに亡者はまったく襲ってくる気配がない


ヨハネ「なんで?」


目の前に立っても亡者は顔色一つ変える様子もない


ヨハネ「はは~ん、さてはヨハネの魅力のと・り・こになって戦意も喪失してしまったのね!」



下魔「いやいや……」


ヨハネ「ちょっとあなた!さっきからウロウロしてるけど何か探してるの?」



籠背負い亡者「イケニエ………」クルッ



ヨハネ「生贄…?」



亡者は呟くとヨハネに背を向け背中の籠の蓋を開いた



ヨハネ「入れってこと?」



籠背負い亡者「………」コクコク


下魔「でも今生贄って言ってたゲマよ?」



ヨハネ「謎が解けたわ……」


下魔「?」


ヨハネ「きっとこのリトルデーモンは生贄をニシキノマッキのいる病院に運ぶ役割を任されてるんだわ」



ヨハネ「そして生贄が見つからないから困っている所に現れた堕天使ヨハネ………これはチャンスよ!」



下魔「チャンスってどういうことゲマ?」



ヨハネ「生贄のふりをしてこの籠に乗せてもらえばそのまま病院まで連れて行ってもらえるはずよ!」



下魔「なるほど!」


ヨハネ「さあ、早く!」



下魔「え?」



ヨハネ「何ボサっとしてるのよ!あんたが先に籠に入りなさい」



下魔「わかりましたゲマ……ちゃんと後からヨハネ様も入るゲマよ?」



ヨハネ「当たり前じゃない」



下魔「では失礼して……」スッ


下魔「さあヨハネ様もはや……」


ガシャン!


ヨハネ「あら?勝手に籠が閉まっちゃったわ!まさか定員1名とか!?」



籠背負い亡者「………」スクッ


ダダダダダッ

籠に下魔を入れると亡者は一目散に走り出した


ヨハネ「あっ!ちょっと待ちなさ~い!まだヨハネが乗ってないわよ~!」ダダダ



下魔「ヨハネ様~!」



ヨハネ「足……早すぎ……」ゼエゼエ


ヨハネサマ-……


みるみるうちに亡者は遠ざかりやがて見えなくなった



ヨハネ「どうしよう、1人になってしまった……」シュン…



…………………


籠背負い亡者「………」ダダダッ



下魔「あの~、聞いてるゲマか?まだ乗ってない人がいるゲマ!引き返して欲しいゲマ!」



籠背負い亡者「?」(ん?)クルッ


下魔「亡者さん!もしもーし?無視しないで欲しいゲマ」



籠背負い亡者「!」(は?なんだこいつ!?)



下魔「ゲマ?」



籠背負い亡者「………」(てっきり人間のほうが乗ったと思ったのに、これはあかんわ……)



下魔「やっと話を聞いてくれる気になったゲマね」ニッコリ



籠背負い亡者「………」(捨ててこよ……あーあ……また探し直しか)トボトボ



下魔「あれ?来た道はこっちじゃないゲマよ?どこにいくつもりゲマ?」

………………

亡者の穴倉


下魔「あの~、ここ絶対病院じゃないゲマよね?」


籠背負い亡者「………」スッ



下魔「え?ちょっと!なに籠下ろしてるゲマか?ここで降ろされても困るゲマ!」


下魔「ん?何振りかぶってるゲマ!?ここ高いゲマよ?まさかここから……」



籠背負い亡者「……」(わけわかんない黄色い球はポイ-で)ポ-イ



下魔「ぎゃああああああああ!!」


ヒュ-


ドガシャアアアン!


下魔は地中に掘られた大きな穴へと籠ごと投げ入れられた



下魔「いたた……ここは一体どこなんだゲマ………」



あたりは暗く、大量の籠や亡者の死体が捨てられている



下魔「ヨハネ様~!助けてくださいゲマ~!」



下魔の叫びはこの穴倉に虚しく響くだけであった


………………


地上

ヨハネ「ダメだ………全然見つからない」



ヨハネ「さっきからでかい壺投げらろたり、火炎壺投げられたり……見つかるのはリトルデーモンばかりよ……」



ヨハネ「ひとまず塔を目指さないと……いずれにせよ下魔もそっちに向かっているはずだわ」



ヨハネ「………」キョロキョロ



ヨハネ「うーん……ここからだと塔は崖の向こう側なのね、これは少し回り道をしなきゃいけないわ……」

テクテク



ヨハネ「こっちから行けば塔がある方面に回れそう……」




ヨハネ「なにかしらここは?」



ヨハネが進もうとしている道にはたくさんの白い樹木が生え、他の場所とは違う雰囲気をもっていた


ヨハネ「なんか地面にいっぱい刺さってるんだけど……」


そして何よりも不思議なのは白い樹木以外に棒状のなにかが大量に地面に突き刺さっていることだ

あたりにちらほらと亡者の死体が転がっていることも不安を煽る



ヨハネ「進んで行っても大丈夫かしら……」ソロリ



ヨハネ「誰がこんなことを……」


ヒュオオオオ……!


ヨハネ「え?」


音の方に視線を向けたヨハネの目の前に轟音を響かせながら巨大な矢が突き刺さる



ドゴオオン!!


ヨハネ「あ………あんなところに巨人が!あいつがこの矢を放ってるのね……」



ヨハネが今まさに目指している塔の最上部、そこにこの大矢の主がいた

巨人が塔の上からヨハネに向かって矢を放っていたのだった



ヨハネ「こうしちゃいられないわ……早くここを抜けないと!」


ダダダダッ


ドゴオオン!


ドゴオオン!



ヨハネは矢の雨の中を駆け抜けてなんとかその先の石造りの建物に避難した


ヨハネ「ここなら矢は当たらないわね……不死街、ほんとにとんでもない場所だわ…」」

テクテク


ヨハネ「分かれ道ね、右に行くべきく左に行くべきか……」


ヨハネ「きっとこの左の扉を開ければ塔に辿りつける……」



ヨハネ「でも右にある花が咲いた大きな広場も気になるのよね……」


右に位置する大きな広場では街の住人である亡者たちが巨大な樹木に向けて祈りを捧げていた



ヨハネ「木になにか特別なごとでもあるのかしら?気になるわね」



ヨハネ「ちょっと寄り道になるかもしれないけど少し広場を調べてから塔に行くことにするわ」


テクテク


広場の隅に植わる一際目立つ巨大な木に亡者たちは皆一心に祈りを捧げる



ヨハネ「それにしても大きな木ね~、樹齢何百年になればここまで大きくなるのかしらね」



そんなことを考えながら木に近づいていくとその大木が突然




動き出した

多忙により更新ペースがかなり遅くなってしまってすみませんm(._.)m
ゆっくりですが少しずつ進めていきたいと思います。
読んでくださっている方ありがとうございます!


BOSS 呪腹の大樹(まじないばらのたいじゅ)

古き時代より不死街にはあらゆる呪いが流れ着き、そのなかでも特に酷いものは神樹の中に納められた

やがてあらゆる呪いが蓄積していくうちに、神樹は自らの意思をもち動く怪物へ変貌していったという


ヨハネ「木が動いた……!?」



呪腹の大樹「………」クルッ

ドガッ!

ギャアアアア


大樹は今までこちらに背を向けていたようだ
周りで祈っていた亡者を枝で弾き飛ばしながらこちらに振り向いた



ヨハネ「あの子たちいつも巻き添えで吹っ飛ばされててかわいそうね……ってそれどころじゃないわ!」


大樹は人のような形をしており、長く伸びる4本の枝が手足のようになっている


呪腹の大樹「………」ズリズリ


立ち上がることはできないのだろうか、座ったまま尻を引きずりこちらに近づいてくる


ヨハネ「ん?あれは……鍋?」


ヨハネ(木のかなり上のほう……何か鍋みたいなのが体に埋め込まれてる!)


ヨハネ(もしあれがノゾレスの言ってた錬成炉なら持って帰ってあげたいとこだけど……)



呪腹の大樹「………」ブン!


ヨハネ「うわぁっ!」


ズズ-ン!


大樹はヨハネを潰そうと枝の腕を振り下ろす


ヨハネ「えい!」


ガキィン!


攻撃を外し地面に叩きつけられた枝に剣を振るうが固い樹皮には傷一つつけられないようだ



ヨハネ「そりゃそうよね……こんな木相手に切りかかったって全然歯が立たない……」


呪腹の大樹「………」ズズズズ



ヨハネ「こんなやつどうやって倒せっていうのよ…...!」



ヨハネ「火を使ったって呪術程度の火力じゃあれだけの巨木を燃やすなんて無理……」


呪腹の大樹「………」フリフリ


ボトッ.! ボトッ!


ヨハネ「!」


大樹が体を揺らすと枝に実っている果実が落ち、地面に降り注ぐ


ヨハネ「……っ!」


ベチャッ!

実は地面に落ちると衝撃で破裂し、周囲に液体を撒き散らす


ジュワッ……


ヨハネ「え…?マントの端が溶けてる!」


ヨハネ(あの実から飛び散る液体、きっと強い酸だわ)



ヨハネ「あんなの頭から浴びたら最期ね……」ゾクッ



呪腹の大樹「……」ブン!ブン!


ドゴオオン!ドゴオオン!


ヨハネ「はぁ……はぁ…このままじゃらちがあかないわ、どんどん追い詰められるだけ……!」



ヨハネ(剣でも傷つけられそうな柔らかい部分はないのかしら……)



呪腹の大樹「………」ズリズリ


ヨハネは落ち着いて改めて大樹の体を見回す


ヨハネ「あれはなんだろう……?」


人間でいうと下腹部の部分にあたるだろうか
座った姿勢のため地面に近いそこに、まるで卵のような丸い物体がまとまって付いていることに気づいた


ヨハネ「あんなもの明らかに普通の木にあるものじゃない……もしかしてあれが弱点?」


ヨハネ(わからないけど賭けてみるしかない…!)


呪腹の大樹「………」ズリズリ


ヨハネ「ただあれは思い切り敵の真正面……迂闊には近づけないわ」



ヨハネ(あいつの腕をかわして隙ができたら一気に行く!)



呪腹の大樹「………」ブン!


ヨハネ「よっと……!」ヒョイ


ズズウウン!



ヨハネ(今だ!)


ダダダダッ


ヨハネ「いっけええええ!」

ヨハネは全速力で大樹に駆け寄ると正面の卵のような物体に剣を突き刺す

グサッ!


固い樹皮とは違う、確かな手ごたえがあった


パアアン!!


ヨハネ「!?」


剣を刺された卵は破裂して弾けてしまった
痛みのためか大樹が苦しみだす



ヨハネ「効いてる!あの卵みたいな部分もしっかり体の一部だったのね」


呪腹の大樹「……」グググッ


大樹は立ち上がろうとしたのか尻を浮かせる


ヨハネ「弱点見つけちゃったわよ!さあ、あとはその体の卵一個ずつ破壊してやるわ!」


大樹の体には先程と同様の卵が足や肘、背中などにも付いていることにヨハネは気づく


ズシイイイン!!



ヨハネ「!?」



ヨハネが勝機を感じた刹那、立ち上がろうとした大樹は力が足りず勢いよく尻餅をついた

凄まじい衝撃に地面が揺れる


ピキピキピキ……



ヨハネ「あ…………地面が!!」



ヨハネ「崩れるぅ!」



ガラガラガラガラ!


地面に亀裂が走ったかと思うとそのまま床が崩れ、ヨハネと大樹は地下深くへと共に落下していった



ヨハネ「いやああああ!」


………………


亡者の穴倉


下魔「出口がどこにもない……暗いゲマ………怖いゲマ……」



下魔「そもそもここがどこかもわからないゲマ」



下魔「きっとヨハネ様はゲマが病院に運ばれていると思ってるゲマよね……」



下魔「この場所に来るわけないゲマ……もう助けなんて…」


ゴゴゴゴゴゴゴ!!



下魔「?」



下魔「凄い音ゲマ……地震ゲマか?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!



ヨハネ「いやああああああああ!!」


下魔「ってヨハネ様!?」



下魔「凄いゲマ!ヨハネ様がまさに文字通り天より堕天してきたゲマ!」


呪腹の大樹「………」ヒュウウウ


下魔「と思ったらなんか凄いのが一緒に降ってきたああ!」


ヨハネと大樹が戦っていたその真下、
そこは下魔が捨てられた亡者の穴倉だったのだ


ヨハネ「いやあああああ!死んじゃううううう!!!」ヒュウウウン



下魔「ヨハネ様!ゲマがしっかり受け止めるゲマ!」



ヨハネ「きゃあああ!」

ガシッ


下魔「ヨハネ様……助けに来てくれて嬉しいゲマ!!」


ヨハネ「リトルデーモン!なんであんたがここに!?」


下魔「え?助けに来たわけじゃないゲマか?」


ヨハネ「え……?そ、そそそそうよ!た、助けに来てあげたに決まってるでしょ!」


下魔「それにしてもなんで上から……」


ヨハネ「それはあれよ……あんたが下にいるのがわかったから敵を利用してこう……」


下魔「?」



ヨハネ「何より!登場は派手なほうがいいでしょ?ヨハネの貴重な堕天シーンが見れたことを一生の誇りにしなさい!」ビシッ



下魔「ゲマ~!」パアァ!


ヨハネ「でもあんたが受け止めてくれなかったら地獄まで堕ちていたかも……本当に感謝してるわ」



下魔「ところであれは一体……」


呪腹の大樹「………」ムクリ



ヨハネ「あの巨体じゃこの高さから落ちても大したことないわよね……」



ヨハネ「悪いけど今再会を喜んでいる暇はないわ、あいつに引導を渡してやるのが先よ!」


呪腹の大樹「………」メキメキメキ……


下魔「あの木……なんか様子が」


バリッ!!


ヨハ下魔「!?」


大樹が起きあがったその時
大樹の腹の部分を突き破り中から青白く、血の気のない巨大な腕が飛び出した


下魔「どうなってるゲマ!?」



ヨハネ「木の中にまた別の化物が棲んでるってこと!?」



呪腹の大樹「………」スクッ


ヨハネ「立ち上がった!?」


腕が3本となった大樹は新しい腕を支えに加え遂に立ち上がった


下魔「天に届きそうな大きさゲマ……!」


呪腹の大樹「………」ヨロヨロ


しかし大樹の足取りはまるで赤子のようにおぼつかない


呪腹の大樹「……」グラッ


下魔「こっちに倒れてくるゲマ!」


ヨハネ「………っ!」ダダタッ



ズシイイイン!!!


ヨハネ「はぁ……危なかった…」


ヨハネ「こいつは体が大き過ぎて動きの一つ一つが立派な攻撃になるわ……潰されないように注意しないと!」


呪腹の大樹「………」グググッ


ヨハネ「起き上がるのに苦戦してる!自分から隙をつくるとは…今がチャンスよ!」ダダダッ


グサッ!


パアアン!


ヨハネは大樹が倒れている隙に肘の卵を破壊する



呪腹の大樹「………!」



ヨハネ「ついでに手の甲も…!」


グサッ

パアアン!


呪腹の大樹「!!」



下魔「ヨハネ様、そろそろ離れたほうが!」


ヨハネ「ええ!」


呪腹の大樹「………」ムクリ


ヨハネ「あと卵はどこかしら……」


大樹の後ろに回ろうとしたヨハネだったが大樹が座り直した瞬間
大樹の体から酸が溢れ出し周囲に酸の水溜まりをつくってしまった


ヨハネ「くっ……これじゃ近寄れないわ!」


下魔「ヨハネ様危ない!」



ガシッ!


ヨハネ「あ………!」


酸に気を取られていたヨハネは伸びてきた白い腕に捕まってしまい、剣を手から落としてしまった


ギユウウウウウ!


ヨハネ「がはっ…!……ああ」


白い腕はヨハネの体を握ったまま力を込め、締め上げる



下魔「ヨハネ様!剣を!」


下魔は落ちた剣を拾い上げ、ヨハネへと投げる


パシッ



ヨハネ(今回は本当にあなたに助けられてばっかりね、リトルデーモン……)



ヨハネ「てやあああ!」


グサッ


下魔から受け取った剣をありったけの力を込めて白い手に突き刺す



呪腹の大樹「………!」パッ


白い腕は痛みでヨハネを手から取り落とす


トサッ


ヨハネ(あの白い腕……どうやら木の本体と考えてよさそうね……)



ヨハネ「ならこの刀で終わりにしてあげるわ!」ダダダッ



腰の闇朧を抜きながら怯む大樹の腕に駆け寄ると、ヨハネはそのまま飛び上がった



ヨハネ「この一太刀で決める!」

スウッ

ヨハネ「せやあああああああ!」


白い腕の肘を目掛け刀を振り下ろす

バシュッ!


ドサッ!


下魔「腕のが落ちたゲマ!」


シュタッ


ヨハネ「ふぅ………もし次にこの下界に堕天してくる時があれば大木のデーモンとしてあなたを……」



ヨハネ「と思ったけどさすがに体が大きすぎね、それに植物はさすがに不死とはいかないかしら……残念だけど」


呪腹の大樹「」ズズ-ン!


腕を切り落とされた大樹は仰向けに転がると霧となって消えていった



HEIR OF FIRE DESTROYED

呪腹の大樹のソウル
錬成炉
を手にいれた


ヨハネ「大樹の体に埋め込まれていた………これがノゾレスの言ってた錬成炉ね」



下魔「探し物だったゲマか?早く見つかってよかったゲマね!


ボッ


ヨハネ「お決まりの篝火出現ね……ひとまず灯して休憩しましょう」


ボウッ

BONFIRE LIT



…………………

亡者の穴倉の篝火

下魔「これからどうするゲマ?篝火から祭祀場に戻って錬成炉を渡すこともできるゲマけど」


ヨハネ「そうね~……でもひとまずまずはヨハネ達の目標の塔まではいきましょうよ」


ヨハネ「渡すのはそれからでも遅くないわ」



ヨハネ「あんたを探して走り回ってる内に一つ篝火を見つけておいたからそこに移動して塔を目指すわ!」


下魔「了解ゲマ!」


………………


廃教会の塔


ヨハネ「さて、到着ね!」


下魔「あの巨人……なんで矢を射ってくるゲマ…」



ヨハネ「ヨハネなんてあの大矢の雨を2回も駆け抜けてるのよ……」



下魔「目指すのは塔の下ゲマよね?」



ヨハネ「でも塔の上にはあの憎っくき巨人が……下に行く前に一旦上に登ってあいつにガツンと言ってやらないと気が収まらないわ!」



下魔「乗り込むゲマ!」


ギギギギイ……



入り口の扉を開けるとそこは蝋燭の明かりに照らされた大きな細長い部屋
一番奥には階を移動するためのリフト備わっている


カラカラカ.カラ

ヨハネ「なんかリフト動いてない?」


下魔「誰かが乗ってるみたいゲマ……」



ヨハネ「まさか敵……?」


そして地下から音を立てて上がッてきたリフトはヨハネ達のいる目の前で止まる

リフトから降りてきたのは………

みかんだった



下魔「!?」


ヨハネ「出たな……みかんのデーモン!」ジャキッ


???「う~ん……う~ん………むむむぅ…」



ヨハネ「ちょっと?」ジャキッ


???「あ、、ごめんごめん!ちょっと考え事してて……えへへ」


リフトから降りてきたみかん……
もといみかんを模した鎧に身を包んだ騎士は剣を向けられているにも関わらず呑気な返事だ


ヨハネ「みかんの怪物……会話でこっちを油断させるつもりね!その手には乗らないわよ」



???「へ?……って……ひゃあっ!剣を向けないでよ!」


ウチウラのチーカバルド(演 高海千歌)「わたしはチーカバルド、海とみかんの国ウチウラ出身のみかん剣士だよ!」


下魔「みかん剣士?」


ヨハネ「?」


チーカ「………」カボッ


ヨハネ「あ…」


チーカ「ほら、ちゃんと鎧の中は人間だよ!これで信じてくるるかな?」


みかん剣士はヘルムを外すと素顔をヨハネたちに見せる
鎧の中の素顔はまだあどけなさを残した少女であった



ヨハネ「あまりにも変わった見た目だから新手の化物かと思ったわよ……ずいぶん丸っこいというか、動き辛そうな鎧ね」


チーカ「そうかなぁ……ウチウラの騎士はみんなこのみかんをモデルにした鎧を着たみかん騎士!もう慣れちゃったからなんとも思ってなかったんだけどなあ」


チーカは自分の着るオレンジ色の鎧や頭に葉っぱの飾りのついたヘルムを見ながら納得いかない様子だ


チーカ「ところであなたは?わたしも教えたんだからあなたも名前を教えて欲しいな!」



ヨハネ「紹介が遅れたわね……わたしはヨハネ、あまりの美しさに嫉妬した神々に天界を追放された天界出身の堕天使よ!」



チーカ「へ~面白~い♪」ケラケラ



ヨハネ「あんた絶対馬鹿にしてるでしょ……」シュン…


下魔「そして何を隠そうわたしはヨハネ様の忠実なるしもべ、ゲマというゲマ!」



チーカ「みかんみたいで真ん丸だね~!」



ヨハネ「まあ自己紹介はそのへんにしてくとして、あなたさっき周りが見えなくなるくらい考え込んでたけどなにがあったの?」



チーカ「そうそう!それなんだけど、あなたは白い木の道でおっきな矢に狙われたことある?」



ヨハネ「ああ、それならさっきもその道を走り抜けて来たわよ……死ぬかと思ったわ」


チーカ「うん……わたしもさっき狙われてね?だからこの塔の上の巨人さんに矢を射るのやめてってお願いしようと思ってるんだ」



ヨハネ「あんた、ずいぶん平和な思考回路ね……矢で狙ってくるようなやつがお願いしたくらいでやめてくれるわけないわよ?」



チーカ「そうかなぁ……」



ヨハネ「そうよ、だからヨハネは本当は塔の下に行きたいけどまずは上の巨人を断罪してやろうと思ったわけ、そうしたらあなたに出会ったのよ」



チーカ「そんな!喧嘩はダメだよ……きっと巨人さんは話せばわかってくれる!」


ヨハネ「はぁ……だったらあなた1人で行ってくれば?襲われてもヨハネは知らないからね!」


チーカ「行きたいけど上に行けないから困ってるの!」



ヨハネ「いやいやそのリフト使いなさいよ……」



チーカ「そんなのわかってるよ~!このリフトどういうわけか何回乗っても下にしか行かないの……」


ヨハネ「ほんとに?じゃあ試しに一回乗ってみてくれる?」



チーカ「いいよ、見ててね?」



リフトは床のスイッチを踏むと稼働する仕組みのようだ
チーカバルドはリフトに乗って足元のスイッチを踏む


カラカラカラ


チーカ「やっぱり降りていく~」


チーカバルドはリフトとともに階下へ下がっていった


ヨハネ「あら?」


下魔「別のリフトが上から降りてきたゲマ」


ヨハネ「はは~ん、ようは下に行くリフトが下に行ってる時に入れ違いで上に行くリフトが来るってことね」


カラカラカラカラ


チーカバルドが困りきった顔で下からリフトで上がってくる



チーカ「ほら、言った通りでしょ?この謎は迷宮入りだね……」



ヨハネ「仕組みがわかったわよ」


チーカ「え?ほんと!?」



下魔「チーカバルドさんが下に行ってる間に上に行くリフトが降りてきてたゲマ」


チーカ「なんじゃそりゃ?」


ヨハネ「だからこのリフトに乗っても永遠に上にはいけないわ、見てなさい?」


ヨハネはリフトのスイッチを踏むと急いでリフトから降りた

カラカラカラカラ


スイッチに反応してリフトは無人のまま下に降り、代わりに上に行くリフトが降りてくる


チーカ「すごい……奇跡だよ!」



ヨハネ「ね?だいたい上のほうを見ればもう1個リフトが存在してることくらいわかりそうなものだけど……」



チーカ「全然気づかなかったよ……」



ヨハネ「というわけでこっちのリフトに乗れば……」カチッ


カラカラカラカラ



ヨハネ「上に行けるってわけ!お先に失礼~!」


チーカ「あ~!巨人さんにひどいことしないでよ?仕組みもわかったしすぐ追いつくからね!」



カラカラカラカラ


ガシャン!



ヨハネ「上についたわけだけど…この螺旋階段で最上部に行けそうね」


スタスタ


階段で最上部にたどり着くと、そこには巨大な弓を携えた巨人がいた


ヨハネ「さ~て、どうしてくれようかしら…」


巨人「………」



ヨハネ「でかっ!」



ヨハネ(いや、そりゃ巨人だからでかいのは覚悟してたわよ……でもいざ近くにくるとことまででかいとは)




巨人「………?」



ヨハネ(正直勝てる気がしない…)


巨人「あんただれ?」



ヨハネ「え……わ、わたし?」



ヨハネ(どうするヨハネ!なんて言えばいい?堕天使とか言ったら無言でぶん殴られそう……)



ヨハネ「え、え~っとそう!ヨハネは友達よ!あなたと友達になりたいな~って」アセアセ



巨人「おれとおまえ………ともだち」スッ



ヨハネ「え?これは……」



巨人「ゆうじょうのあかし」



ヨハネ(白い木の枝ね……)



巨人「これもってれば……だいじょうぶ」



ヨハネ「そうね……!これを持ってるヨハネはあなたの友達!だから矢で狙わないでね」


巨人「ともだちは……なるべくうたない」



ヨハネ「いやなるべくじゃなくて絶対射って欲しくないんだけど!」




巨人「てへべろ」




ヨハネ「はぁ……ほんとに大丈夫かな…」



巨人「いつでもばんぜん……このやがとどくところならおまえ……まもる」



ヨハネ「約束よ!」



下魔「とりあえず解決……したゲマかね?」


ヨハネ「多分……」


下魔「ところでチーカさん来ないゲマね……」



ヨハネ「すぐ来るって言ってたのに何やってるのかしら?とりあえず下に降りましょうか」


カチッ

カラカラカラカラ


ヨハネ「………」


ウ-ン……コマッタナ-……



下魔「今聞き覚えのある声がしたような……」


ヨハネ「あのみかんじゃない……」


ガシャン


下魔「どういうことゲマ?」



ヨハネ「なんかリフトの途中で声が聞こえたわよね?」



下魔「たしかに階ではないけど途中に木の足場が組んであるところがあったゲマ」


ヨハネ「なんでそんなとこで降りたのよ……リフトに上がる途中で飛び移らなきゃ行けないような場所よ?」



下魔「リフトよりあの女の子の行動のほうが謎ゲマ……」



ヨハネ「とりあえず会いにいきましょうか……」カチッ


カラカラカラ


下魔「そろそろゲマ!」


最上部と一階部分の中ほどに木の足場があり、そこからベランダのような場所に出られるようだ
塔の建設中に作りかけで終わりにしてしまったのだろうか



ヨハネ「ここで飛び移る!」ピョン


ドスッ


ヨハネ「うっ!ちょっとタイミングを見誤ったかしら……膝が…」




下魔「あ、あんなとこにいるゲマ!」


見ると塔のふちに座ってまた何やら考え込んでいるチーカバルドがいた



ヨハネ「来ないと思えばこんなところで何してるの?」



チーカ「あ!君はさっきの!姿が見えないから心配してたんだよ」



ヨハネ「いやそれはこっちのセリフよ!あと隣、座るわよ」チョコン



チーカ「ヨハネちゃんのマネをして塔の上に向かったはずが気づいたらこんなとこにいた……不思議だよね」



下魔「方向音痴とかいう次元じゃないゲマね……」



チーカ「それより巨人さんは?まさか変なことしてないよね……?」



ヨハネ「なんだかんだで友達?になれたみたい……一応」


チーカ「よかった~!わたしも巨人のお友達がいるからね、ヨハネちゃんだってきっと巨人と仲良くなれるって信じてたんだ」


チーカはヨハネの報告を受けて嬉しそうだ
まるで太陽のような笑顔である



ヨハネ「とりあえず巨人の件は解決ね!」



チーカ「平和に解決できてよかったね!」



ヨハネ「ところであんた、またさっきも考え込んでなかった?」


チーカ「ああ……それなんだけど」


ヨハネ「?」


チーカ「ヨハネちゃんはあのでっかいやつ見えるよね?」


ヨハネ「え?」キョロキョロ


下魔「あわわわ……!」


ヨハネ「!」


屋根を降りた先は教会の裏庭だろうか、そこを赤い大きな影がうろついていた


炎のはぐれデーモン「……」ノッシノッシ


チーカ「話せばわかってくれるかな?無理かなあ…すっごい燃えてるし」


ヨハネ「あれは……リトルじゃないほうのデーモン……!」


下魔「ガチのデーモンゲマ…!」

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira120582.jpg



今回はここまでです!なんか画像が横になってしまった……
あと誤字脱字多くてすみませんm(._.)m
感想ありがとうございます、すごく励みになります!
続きは月曜日くらいに更新できればと思います


チーカ「わ、わたしも一応騎士だからね、びびビビってるわけじゃないんだけど……あれには気安く手を出しちゃダメだよね…」



ヨハネ「めちゃくちゃビビってるじゃないのよ……」



チーカ「なるべく戦いたくないな~……話し合って仲良くなれればそれが一番いいけど、どう見ても話を聞いてくれそうじゃないし」




ヨハネ「ならヨハネが行くわ…!」



チーカ「ほぇ?」


下魔「ヨハネ様、無茶はいけないゲマ!」


ヨハネ「さっきヨハネは巨人とも仲良くなれた……だったら堕天使たるものデーモンと友達になれなくてどうするのよ!」


下魔「さすがに巨人のようにはいかないと思うゲマよ……」




ヨハネ「まあ見てなさいよ……堕天使のコミュ力ってやつを見せてあげるから!」



チーカ「やめたほうがいいよ~……」


ヨハネは制止を無視して屋根から飛び降り、デーモンに歩み寄る

歩きまわっているデーモンは全身に炎を纏い、その手には大斧が握られている



ヨハネ「ハァーイ♪堕天使ヨハネよ!あなたもヨハネと契約してリトルデーモンになってみない?」


炎のはぐれデーモン「?」クルッ


ヨハネ「………?」



炎のはぐれデーモン「グオオオ!」ダダダッ


デーモンはヨハネを見つけると咆哮をあげながら全速力で走ってきた
かなりお怒りのようだ


ヨハネ「きゃあああ!やっぱりダメだった~!」ダダダダッ


デーモンの様子を見て一目散に引き返そうとしたヨハネだったが、先ほど飛び降りた屋根はかなり高くもう自力では登れない
もう逃げ場などなかった


ヨハネ「終わった……」ヘナッ



下魔「まずいゲマ~!」



チーカ「もう!やめなって言ったのに~!」


チーカは立ち上がると傍に置いてあったみかん型ヘルムを被り、愛用の大剣ツヴァイヘンダーとトゲ付きの盾ピアスシールドを手に取る


チーカ「こうなったらやるしかない!戦いで輝くウチウラ騎士チーカバルド、助太刀するよ!」

シュタッ

チーカバルド「うおおおおおお!!」


チーカは大剣を振りかざし、ヨハネを襲わんとするデーモンに正面から突っ込んでいった


ズドン!


炎のはぐれデーモン「!?」


大剣の一撃は斬撃というよりもはや打撃に等しいだろう

さすがの巨体のデーモンも不意に突っ込んできた少女の全霊の一撃をまともに受ければ怯むほかない


チーカ「大丈夫?」



ヨハネ「あ、ありがとう!」


チーカ「お礼は後だよ!ヨハネちゃんも手伝って…!デーモンをなんとかしないと……」



ヨハネ「そうね……!」


ヨハネも剣を構え、デーモンに向き直る


炎のはぐれデーモン「グオオ!」

ボオオオオ!


ヨハネ「っ……!」


チーカ「気をつけて!」


デーモンの炎のブレスが目の前を通過する
とっさに距離を離したため当たりはしなかったが、デーモンの怖さを思い知るには充分だろう


チーカ「今度はこっちの番だ!」


ガン!ガン!


炎のはぐれデーモン「………!」


ヨハネとチーカがデーモンを挟んで前後から剣で攻撃する

体の大きいデーモンには小さな相手2人に足元をちょこまか動き回られながらの挟み討ちはかなり厄介だろう


炎のはぐれデーモン「………」ピョン


ヨハネ「飛んだ!?」


チーカ「下がって!」


チーカの警告で慌てて離れる

ズシイイイン!

ボオオオオッ!


デーモンが空中から勢いよく大斧を突き刺すと、そこから衝撃とともに炎が広がった


ヨハネ「近づきすぎるのも考えものね……」


炎のはぐれデーモン「………!」

ゴゴゴゴゴゴ


デーモンの纏う炎が更に勢いを増す



ヨハネ「めちゃくちゃ怒ってるわよ……」


炎のはぐれデーモン「!」ブン!ブン!


デーモンは斧を振り回して暴れまわる



チーカ「落ち着いていこう…!必ず隙はある!ヒットアンドアウェイで攻めるよ!」


ガシン!ガシン!


炎のはぐれデーモン「………」フラフラ



ヨハネとチーカは隙を見て攻撃しては距離を取り、攻撃しては距離を取りを繰り返してデーモンを翻弄する



チーカ「だんだん動きも鈍ってきたね……!」



ヨハネ「勝利は近いわよ!」



デーモンの斧の振りにも段々力無いものとなってきた


チーカ「ねぇヨハネちゃん?」



ヨハネ「なに?」



チーカ「わたし、このデーモンさんを殺したくない……もともと戦う理由なんて無かったはずなのに!」




ヨハネ「今さらなに綺麗事ぬかしてんのよ!向こうだってこっちを殺す気できてるんだから……!」



チーカ「でも……!」


チーカは剣を下ろすとデーモンにゆっくりと歩み寄った



炎のはぐれデーモン「?」



ヨハネ「ちょっと!あなた死ぬ気!?」


デーモンの背後にまわっていたヨハネが叫ぶ


チーカ「デーモンさんお願い!わたしの話を聞いて……!」


炎のはぐれデーモン「………」


デーモンも突然目の前で武器を置いた少女に動揺したのか攻撃の手を止める


チーカ「デーモンさんがどうしてこんなとこにいたのかはわからないけど……ヨハネちゃんもわたしも別に戦いたかったわけじゃないんだよ」


炎のはぐれデーモン「………」


ヨハネ「………」ゴクリ



この距離なら無防備な少女を斧で叩き切ることなど容易だろう
ヨハネに緊張が走る



チーカ「ヨハネちゃんを助けたかったからわたしも攻撃して、それで喧嘩になっちゃった……ごめんなさい!」


炎のはぐれデーモン「………」



チーカ「でもヨハネちゃんだってただあなたと友達になりたいだけだった……それなのにこんな結末はあんまりだよ」



ヨハネ「よってたかって2人で攻撃したのはヨハネも謝るわ……」



チーカ「ここで殺しあったって何も産まれない……だからみんなで仲直りして友達になろう!生きていればきっとまたどこかで会えるよ!」



炎のはぐれデーモン「………」スッ



炎のはぐれデーモン「………」ノッシノッシ


理解したのかしばしの沈黙の後、デーモンはチーカの前の地面に変わった石を置くと、そのままのそのそとどこかへ去って行った



下魔「すごいゲマ……!」


ヨハネ「あのデーモン、命拾いしたわね…」



チーカ「はぁ~……怖かったぁ!」チョコン



チーカは緊張の糸が切れてその場に座り込む


ヨハネ「まったく~!ヒヤヒヤしたじゃない!」



チーカ「こうなったのも元はといえばヨハネちゃんが私達の警告を無視したからだよ?」




ヨハネ「うっ……」



チーカ「でもデーモンさんが話を聞いてくれて良かったよ♪」



ヨハネ「あんたねぇ……今回は助かったけど敵に情けをかけるなんて、いつか必ず痛い目に遭うわよ?」


チーカ「その時はその時だよ」ニコニコ



ヨハネ「あんたの呑気さはもはや才能ね」ハア…


チーカ「ヨハネちゃんこそあんまり無茶しちゃダメだよ?ヨハネちゃんだって灰の使命があるんだろうから」



ヨハネ「そうね……気をつけるわ」


そんな話をしているうちに、ふと目の前に置いてある珍しい石の存在を思い出す



ヨハネ「そうだ、このデーモンが置いていった石は何?」



チーカ「なんだか不思議な石だね、デーモンさんとの友情の印かな?」


ヨハネ「綺麗な赤ね……きっとこれはヨハネとの血の契約を意味する………うんぬんかんぬん(以下略〕」



チーカ「?」


ヨハネ「ねえ、この石ヨハネがもらっちゃダメかしら?」



チーカ「いいよ~、わたしには使い道がよくわからないし、ヨハネちゃんが気に入ってるみたいだから!」



ヨハネ「ありがとう、じゃあ石はいただくわね♪」



チーカ「あ、そうだヨハネちゃん!」



ヨハネ「どうしたの今度は?」



チーカ「今日ヨハネちゃんと出会って…リフトの謎を解いて、デーモンさんと仲直りして……2人で困難を乗り越えられたお祝いをしよう!」



ヨハネ「お祝い?」



チーカ「祝杯をあげよう!はい、これどうぞ」スッ



ヨハネ「お酒?ヨハネはほら……人間界の年齢に換算するとまだ未成年だからちょっと……」



チーカ「ほぇ?これみかんジュースだよ?」



ヨハネ「祝杯なんてややこしい言い方するからてっきりお酒かと……」


チーカ「はい、杯を持って!」



ヨハネ「あ、あの凄く言い辛いんだけどヨハネはみかん嫌いなのよ……」



チーカ「そんな……」



ヨハネ「……?」



チーカ「わたしの存在を否定された……」ズ-ン…



ヨハネ「ちょ、そんな露骨に落ち込まないでよ!別にあんたのことが嫌いなわけじゃないし!」



チーカ「ほんとに!?」パアァ



ヨハネ「えぇい!もうジュースなら我慢して飲むから早くその杯よこしなさい!」パシッ



チーカ「あ、ゲマちゃんもあげるよ!」スッ



下魔「は!完璧に存在を忘れられていると思ってたゲマ…」



チーカ「よーしそれじゃいくよ~!」

ヨハネ「……」スッ


下魔「……」スッ


チーカ「ヨハネちゃんの勇気と、わたしの剣、そしてわたし達の素敵な出会いに!」


チーカ「ロングメイザサンシャイン!(太陽あれ!)」カンパ-イ


ヨハ下魔「ロングメイザサンシャイン!(太陽あれ!)」カンパ-イ



ヨハネ(太陽あれ!って堕天使的にはしっくりこないけど……まあいっか♪)


ゴクゴク



チーカ「ぷはぁ~、疲れちゃったしわたしはここで少し眠っていこうかな!祝杯のあとは寝るに限るよ♪」



ヨハネ「え?こんなとこで寝るつもり!?」



チーカ「そうだよ?あ、ヨハネちゃんにこれあげるね!」スッ


ヨハネ「何これ……骨?」



チーカ「これは帰還の骨片、使い捨てだけどこれを使えば帰るべき場所に一瞬で戻ることができるよ!篝火まで戻るのが大変な時とかに使ってみてね」



ヨハネ「ふ~ん……ありがたくいただくわ」



チーカ「それじゃあまたどこかで会えることを楽しみにしてるよ!おやすみ~」



ヨハネ「ちょっと!せめて隠れて寝たら?敵が来るかもしれないわよ!?」



チーカ「すぅ…すぅ……」


ヨハネ「寝るの早っ!?」


ヨハネ「ちょっと~」ユサユサ



チーカ「ぐぅ……すぴぃ~……」



下魔「ダメみたいゲマね……」



ヨハネ「まあ見たところ周りに敵はいないみたいだから大丈夫とは思うけど…」


下魔「この子なら不思議と大丈夫そうな気がするゲマ」


ヨハネ「さてと、塔に戻ってリフトで下に行きたいとこなんだけど……」



下魔「屋根が高くて登れないから戻れないゲマねぇ……」



ヨハネ「そうね、もらったばっかりだけど帰還の骨片使っちゃおうかしら……」



下魔「仕方ないと思うゲマ」



シュウウウウウウ………


ー火継ぎの祭祀場ー


ヨハネ「おぉっ……ほんとに一瞬で帰ってこれた!」



下魔「ゲマはきっといなかった間にたるんでるであろうリトルデーモン2号に指導をしてくるゲマ~」フワフワ



ヨハネ「じゃあヨハネは……」



ヨハネ「そうだ、ノゾレスに錬成炉を渡さないと」


……………………

祭祀場をぐるりと囲む階段を登り、ノゾレスの座る玉座へと向かう


ヨハネ「ん?」


ノゾレス「………zzz」



ヨハネ「そりゃここで座ってるだけじゃ誰だって寝ちゃうわよね……」



ヨハネ「また後でこようかし……」



ノゾレス「………あああ!体が……!」


ヨハネ「!?」ビクッ


ノゾレス「……zzz」



ヨハネ「寝言?悪夢でも見てるのかしら……びっくりした…」



ノゾレス「熱い……熱いよぉ……」


ヨハネ「………」



ノゾレス「誰か助けて…この苦しみから…ウチを」



ヨハネ「大丈夫!?起きて!」ユサユサ


ノゾレス「はっ!誰かと思ったらヨハネちゃんやん……帰ってきたんやね♪」


ヨハネ「無理に明るく振るまわなくていいわよ……何かさっき悪夢にうなされてたみたいだから見てられなくて……」



ノゾレス「ああ……聞かれてしまったんやね…」



ヨハネ「なんだか普通じゃなかったわよ……どうしたの?」



ノゾレス「これから女王を目指すヨハネちゃんは知らないほうがいいよ……」


ヨハネ「?」


ノゾレス「覚悟があるなら話してもいいけど……」



ヨハネ「聞かせて?」



ノゾレス「ウチの体……前にも見てもらったとおりよく見ると燃えてるやろ?」



ヨハネ「あ……」


ノゾレス「最初はいいんよ……自分の中にあるソウルを燃料として世界を照らすために体を燃やしている…」



ノゾレス「でもそれが尽きたらどうなると思う……?」



ヨハネ「え?」


ノゾレス「答えは単純……自分の体そのものが燃料になる」



ヨハネ「じゃあノゾレスの体はほんとに燃えてるの!?」



ノゾレス「せやで?ウチが普通にしてるからわからなかったかもしれないけど……ウチは体を焼かれる苦しみをずっと受け続けてるんよ」



ヨハネ「そんな……ならなんでそんな普通にしていられるのよ…」



ノゾレス「う~ん……変な話やけどもう慣れてしまってるのかな…ずっと焼かれ続けて何も感じなくなったのかもね」



ノゾレス「でも寝てる間は無意識やから……そこを見られてしまったってこと」


ヨハネ「じゃあ女王たちは皆その苦しみを味わうの…?」



ノゾレス「いずれはね……ウチは立場的にあんまり好き勝手は言えんけど…」


ノゾレス「見方を変えれば女王なんて世界を永らえさせるためのただの生贄なんよ……世界のため、自分が苦しむことになる……」



ヨハネ(ヨハネは今まで何も知らなかった……ただ栄光のために、自分の使命のために女王になろうと…)



ノゾレス「もうウチの体は壊れかけや……ウチは別に戦士でもないし、きっと体の中に宿したソウルも少なかったんやろうね…」


ノゾレス「ほら……」ピラッ


ヨハネ「!?」


ノゾレスは長いスカートを少しだけまくって見せた
長いスカートで目立たず今までは気がつかなかった
既に燃え尽きたのであろう、スカートの下にノゾレスの左脚はなかった


ノゾレス「でもなんかスッキリしたわ……今までこんなこと話す相手がいなかったし」



ノゾレス「ごめんな……嫌な話ばかり聞かせて」ペコッ


ヨハネ「そんなことないわよ?いろいろ考えるきっかけになりそうだし」


ヨハネ「それにノゾレスの気分が晴れたなら良かったわよ♪」



ノゾレス「こんなウチやけどこれからもよろしく♪」



ヨハネ「もちろんよ!」



ヨハネ(世界のために自分が犠牲に……)


ヨハネ(こんなのヨハネが望んだ道じゃない……!)



ノゾレス「ごめんごめん、ウチばっかり話してしまったけどヨハネちゃんも何かウチに用があったんと違う?」



ヨハネ「あ、そうそう!危うく忘れるところだったわ…!」ガサゴソ



ノゾレス「お?それはもしかして…」


ヨハネ「錬成炉、ちゃんと見つけてきたわよ!」ゴトッ



ノゾレス「まさかほんとに見つけてきてくれるなんて……!」



ヨハネ「当然でしょ?ヨハネを誰だと思っているのかしら」


ノゾレス「もっと近くに来てよ、これはお礼をしないと♪」


ヨハネ「なにかくれるの?」ズイッ


ノゾレス「………」ニヤリ


ヨハネ「?」



ノゾレス「かかったな!!わしわしMAX~!」ワシワシワシワシワシワシ!


ヨハネ「ぎぃやああああああ!!」ジタバタ


ノゾレス「ほう……これは小ぶりながらなかなか、今後に期待やね♪」



ヨハネ「余計なお世話…!いきなりなにすんのよもう///」



ノゾレス「ウチなりの愛情表現やん?スキンシップは大事だからね♪」


ヨハネ「はあ……あんたはほんとに掴めない性格ね…」



カナンドレイ「なんか面白そうなことやってるね~、わたしも混ぜてよ!」



ヨハネ「なんかきた…」



カナンドレイ「お邪魔だったかな?」ポタポタッ…



ヨハネ「なんであんた毎回濡れてんのよ!?」



カナンドレイ「ん?ハグしたいの?いいよ、おいで♪」スッ



ヨハネ「一言も言った覚えないんだけど!?会話の流れ無視か!!」


ノゾレス「ウチはハグしたいなぁ…///」


善子「そこは乗るな!さっきからヨハネの中であんたのイメージが変わりまくりよ…」



カナンドレイ「そっちが来ないならこっちからいくよ~!」ギュウウウウ



善子「ああああああ!またヨハネの服があああ!」


カナンドレイ「しょうがないじゃん……数千℃の釜で鉄打ってるんだからさ」グツショリ



善子「なんで拭くという発想に至らないのよこの人は……」



善子「なんか凄い疲れた……この祭祀場まともな人いないのかしら」ハァ…



カナンドレイ「ねぇ、さっき何しようとしてたの?何か錬成炉がどうとかって」



善子「ノゾレスが錬成炉を使いたいって言ってたから探して持ってきてあげたとこよ」


ノゾレス「ではお2人にウチの力をお見せしよう…」



ヨハカナン「………」ゴクリ



ノゾレス「ヨハネちゃん……異形のソウルは持ってるかな?」


ヨハネ「ヨハネが今持ってる中で特別なソウルは冷えてる谷のリンチャンのソウルと呪腹の大樹のソウルね……」スッ



ノゾレス「じゃあそれを拝借して…この炉の中に入れる」



ノゾレスはヨハネからリンチャンのソウルを受け取ると炉の中に入れ、聴いたことのない言語の呪文を唱え始めた


カナンドレイ「なにが起こるんだろ」ワクワク



すると突然錬成炉から閃光が走ったかと思うと、続けて煙が溢れ出した



ヨハネ「凄い煙……なんなの!?」



煙が晴れると錬成炉の中には大きなマラカスが一つ入っていた


カナンドレイ「武器が出てきた!」

ヨハネ「これはルビリックで闘ったリンチャンの武器……!」


ノゾレス「そう!ウチのソウル錬成はソウルから力を引き出し、その者にまつわる武器などを作れるのだ!」


カナンドレイ「冷気を纏ったマラカス型の大槌だね、この重量感はいいね!」ブンブン


カナンドレイは巨大なマラカスを拾い上げると片手で軽々と振り回す



ヨハネ「ちょっと!ヨハネにも一応触らせなさいよ~!」プンスコ



カナンドレイ「はいどうぞ」スッ



ヨハネ「ふぬぬ……重くて持ち上げられない、あんたなんでこれを片手で!?」


カナンドレイ「鍛えてるからねー、鍛冶屋をバカにしてもらっちゃ困るよ~」



ノゾレス「この調子で呪腹の大樹のソウルもいくで~」


リンチャンのソウルに続いて大樹のソウルを錬成炉に放り込む


ノゾレス「どうやらこのソウルからは2種類武器が作れそうやけど、手に入れられるのは2つのうち1つだけ」


ノゾレス「アルスターの槍と亡者狩りの大剣……どっちがいい?」



ヨハネ「槍!」


カナンドレイ「大剣!」


ヨハネ「ちょっと!そこは槍でしょ?アルスターって言ったら串刺し公と呼ばれたアルスター卿の呪いの槍よ?堕天使的にこっち一択なんだけど?」



カナンドレイ「よくわかんないけど、そんなチクチク攻めるみみっちい槍より大剣のほうがかっこいいと思う!」


ヨハネ「槍なの!」


カナンドレイ「大剣だよ!」



ノゾレス「あはは……それじゃあ公平にじゃんけんで決めとき?」



カナンドレイ「恨みっこなしだよ?」


ヨハネ「当然よ!今ここに全ての力を解放する!そして愚かな鍛冶屋の少女に裁きを……!」


「「じゃん!けん!」」


「「ぽん!」」


ヨハネ「!?」ヨハネチョキ


カナンドレイ「!」グ-



ヨハネ「……バカな……このヨハネが……なぜ……!」ドサッ


カナンドレイ「やりぃ!」



ノゾレス「じゃんけんひとつで大げさやなぁ」



………………


カナンドレイ「この重厚感が大剣の魅力だよね~」ナデナデ



ヨハネ「作ってもらったけど結局両方とも重くてヨハネには扱えないわ…」


ヨハネ「結局ヨハネにはこのモーリオンブレードと闇朧が一番なのよ!」



ノゾレス「まあ、実際に使わなくてもこの武器たちは紛れもなくヨハネちゃんが強敵を倒したという証やね」


ノゾレス「だから勲章みたいなものだと思って持っておけばいいんやない?」



ヨハネ「それもそうね……」



ノゾレス「だからこれからも異形のソウルを持って来ればじゃんじゃん錬成するで~!ソウルを手に入れられたらまたおいで♪」



ヨハネ「その時はよろしく!あと…また話をいろいろ聞かせてね?」



ノゾレス「ええよ……旅の中でヨハネちゃんもきっといろいろなことに気づくと思う、時が来ればウチからもいろいろと話さなきゃならんと思うし…」



ノゾレス「とにかくいつでも待ってる……!」


ヨハネ「ええ!」

………………

カンカン!カンカン!

ヨハネ「さっきまで亡者狩りの大剣を触ってたと思ったらもう作業に戻ったの?」


カナンドレイ「あんなふうに見たことない武器に出会うとそれに刺激されるっていうか、モチベーションが上がるっていうかさ、もういてもたってもいられなくて!」

カンカン!


ヨハネ「そうだ、この前どっかで楔石を拾ったんだけどこれでヨハネのモーリオンブレードを鍛えてもらえるの?」



カナンドレイ「あ……それがね…」



ヨハネ「?」


カナンドレイ「あなたのモーリオンブレード、ロンドールの秘宝っていうくらいだからその辺の武器とは色々違うんだよね~……」



ヨハネ「この石じゃダメなの?」



カナンドレイ「うん……もっと貴重な石、光るラブカストーンが必要なんだ」



ヨハネ「光るラブカストーン!?」



カナンドレイ「光るラブカストーンはかなり貴重な石でそうそう見つかるものじゃない……わたしもいくつかは持ってるんだけどね」



ヨハネ「え~!じゃああなたが持ってる光るラブカストーンでヨハネの剣を鍛えてよぉ」


カナンドレイ「そんな~……凄く貴重な石なんだよ?相応の何かがないと……」



ヨハネ「じゃあさっき錬成で作った大槌と大剣をあげるわ!ヨハネには使い道がないし……きっと武器が好きなあなたが持っていたほうがいいと思うし」


カナンドレイ「え?あの2つをくれるの?」


ヨハネ「いいわ、あなたは大きい武器が好きみたいだしね。あの時凄く欲しそうな顔してたもの」


カナンドレイ「ばれちゃってたか……しょうがない!じゃあその武器と交換で光るラブカストーンで一回分強化してあげるよ!」



ヨハネ「ふふふ……交渉成立ね!」


カナンドレイ「じゃあわたしにモーリオンブレードを一旦預けてもらってもいいかな?」



ヨハネ「じゃあこれ、任せたわよ」スッ



カナンドレイ「それじゃあ少し時間が経ったらまた顔出してよ、それまでにばっちり鍛えておくからさ!」



ヨハネ「頼むわね!」



ヨハネ「あ、そういえばニート女が見当たらないんだけどどこにいるかしらない?」



カナンドレイ「ニート女?」



ヨハネ「ほら、あのデコ出しヘアーで吊り目の」



カナンドレイ「ああ、あの人か!あの人ならあなたが帰ってくる少し前に外に出て行ったよ?」



カナンドレイ「篝火から行ったわけじゃないからその辺にいると思うけど」




ヨハネ「ありがとう、探してみるわね!」


…………………

ヨハネ(とりあえず祭祀場の中を巡ってからツバサウッドを探そうかしら…)


ヨハネ(そういえばヨシミとかいう巡礼者はどこにいるの?)


祭祀場は篝火のある広場から細い通路がいくつか繋がっている

ヨハネが歩き回って探していると、ようやく通路の途中に佇むヨシミを発見した



ヨハネ「あ、あなたここにいたのね!ここの居心地はどう?」



ヨシミ「戻られたのですね、灰の英雄様!」



ヨハネ「英雄様って照れるからやめなさいよ…//」




ヨシミ「ここはとても素晴らしい場所でございます、あなた様に出会わなければあの広場にある神秘の火も見ることができなかったでしょう」



ヨシミ「ほんとうに感謝しておりま…」フカブカ




ヨハネ「まあまあ、そんなにかしこまらなくていいわよ?なんかやりづらいから」




ヨハネ「せっかく従者として迎えられた身、わたしもヨハネ様のお役に立とうと魔術を教えてさしあげようと思ったのですが……」


ヨシミ「ヨハネ様は既に魔術の心得がおありになる……これではわたしの出る幕はありませんね」




ヨハネ「ふふっ……魔術は堕天使界の一般教養……ヨハネは既にある程度魔術をマスターしているわ」



ヨハネ「あんまり使ってないけど…」ボソッ




ヨシミ「そういうことでしたらわたしにはもう1つ、あなた様のお役に立てることがございます…」




ヨハネ「?」



ヨシミ「あなた様は本当の力……今よりもさらに強大な力を得たいとは思いませんか?」



ヨハネ「本当の力……?」


ヨシミ「確かにあなた様は今のままでもそれはそれは充分にお強い……ですがロンドールの巡礼であるわたしは知っています」



ヨシミ「ダークリングを刻む者は、誰しも力を秘めていると…!」



ヨハネ(ダークリング……たまに聞くけどなんのことなのかしら…)



ヨハネ「あなたがヨハネをもっと強くしてくれるの?」



ヨシミ「左様でございます……わたしがあなた様の本当の力を引き出してさしあげましょう……」



ヨハネ〔女王たちを探す旅……これからどんな困難が待ち受けているかもわからない…)



ヨハネ〔それを乗り越える為には力が必要よ……ヨハネは力が欲しい…!)


ヨハネ「お願いするわ…!」


ヨシミ「あなた様ならそう言ってくださると思っていました…」


ヨハネ「力を得るにはヨハネに溜まっているソウルを使うのかしら?」



ヨシミ「いえいえ、この方法は特殊でございまして、貴重なソウルを消費することはありませんのでご安心を……」



ヨシミ「この世界ではソウルは通貨にもなる貴重なものですからね…有意義にお使いくださいませ…」


ヨハネ〔ソウルの消費なし…タダってこと?火防女とは方法が違うのね…)



ヨシミ「それでは始めましょう……ダークリングを刻む者よ、あなた様の本当の力を今……引き出さん!」


シュオオオオ…


ヨハネ「!?」


ヨシミが呪文を唱えながら祈りを捧げると、ヨハネの体にどす黒い霧のようなものが纏わりついた

やがてその黒い霧はヨハネの背中の一点に収束すると、そのまま体内へと入っていった

背中にぽっかりと小さな暗い穴を穿って……


ヨハネ「終わったの?」



ヨシミ「はい……ですがこれではまだ完全ではありません」


ヨシミ「今回引き出せた力はまだほんの一部なのです…なので時を置いてまたいらしてください、その時にまた続きをいたしましょう」



ヨハネ「ヨハネの中に封印されし暗黒のエネルギーが解き放たれていくのね!時間が必要なら、旅が一段落してからまた来ることにするわね」



ヨシミ「ではいってらっしゃいませ、灰の英雄様……またお待ちしています」フリフリ



ヨハネは暗い穴を1つ手に入れた


暗い穴
不死人の証にも似た小さな暗い穴がヨハネの背中に1つぽっかりとあいている
その穴に底は無く、人間性の闇が徐々に漏れ出し、引き換えに呪いが溜まっていくだろう

この穴は決して消えぬ呪いの印…

ヨハネは力と引き換えに呪われてしまったのだ


ヨハネ「~♪」


しかしらヨハネは自らが呪いを受けてしまっていることなど知る由もなく……


ヨシミ〔やりましたよマリア様………そしていずれあの方を必ずや我ら亡者の女王に……!)



ヨシミ「ふふふふ……」



……………………

祭祀場の外

ヨハネ「あ、いたいた」


ツバサウッドは祭祀場を出てすぐにある墓の前に座っていた


ツバサウッド「…………」



ヨハネ「知り合いのお墓なの?」



ツバサウッド「そうよ……わたしのかつての大切な仲間のね」


その者は勇猛な戦士だったのだろう、
墓に立てかけられている剣がそれを語っている


ツバサウッド「でもこの墓は私が勝手に作っただけ…」



ツバサウッド「ここが本当の墓ではないし、もちろんここに遺体が埋葬されてるわけでもないわ」



ヨハネ「本当の墓には行ってあげないの?」



ツバサウッド「墓にはもう彼女たちはいないわ……鐘の音と共に甦えったもの」



ヨハネ「ヨハネたちと同じように甦えったってわけね」


ヨハネ「でも今は甦えって生きてるならわざわざ墓なんて作らなくても……」



ツバサウッド「こんなの生きているって言えるのかしらね……」



ヨハネ「?」



ツバサウッド「こんなの……所詮は火継ぎの使命に囚われて死なせてもらえないだけじゃない…」


ツバサウッド「前に言ったわよね?こんなのは呪いだと」


ツバサウッド「不死なんて呪いよ……そして薪の女王たちもまた、火継ぎという呪いに囚われているのよ」



ヨハネ(ノゾレスは苦しんでいた…世界のために自分の身体を犠牲にする、確かに呪いと言えるのかもしれないわね)


ツバサウッド「ぞもそも何が使命よ…!私の生きる理由を勝手に決めて!勝手に生き返らせて!私の仲間たちまで犠牲にして!」


ヨハネ「ちょ、ちょっと…少し落ち着いてよ…!」



ツバサウッド「はぁ……はぁ……ごめんなさい、少し感情的になってしまったわ」



ツバサウッド「とにかく私はこの墓標に刻んだ人間にもう会うこともないわ……死んだということにしておきたいのよ」



墓標には親愛なるエレナ、アンジュと刻まれていた


ヨハネ「色々あったのね……ヨハネも火継ぎに関しては少し考えを改めようかと思っていたところよ」




ツバサ「意外ね、ただ盲目的に使命に向かって突き進んでるだけだと思ったのに」




ヨハネ「少し考えるきっかけがあってね……」


ヨハネ「でも考えてたって何も変わらない……とにかくヨハネは女王たちを倒して火継ぎの資格を得る…!その道中で答えを見つけるつもりよ」



ツバサウッド「どうやらあなたは本気のようね……ほんとに、身の程知らずの馬鹿女よ」



ヨハネ「何もしないあなたよりはマシだと思うけど?」



ツバサウッド「そうよね……私は逃げ出してしまった……」



ヨハネ「……」



ツバサウッド「ほらもう行きなさい、私に構っている時間がもったいないでしょ?」



ヨハネ「あんたもあんたなりに色々考えてるってことはよくわかった……またね」スタスタ



ツバサウッド「………」



ツバサウッド(彼女が女王を探し続けるなら、いずれあの子たちとも……)



…………………


火防女アリサ「………」ギュッ


ヨハネ(やっばり手を握られるの慣れないわ…//)


火防女アリサ「はい、主なきソウルがあなたの力となりましたよ!」



ヨハネ「あ、ありがとう//」



ヨハネ(ヨシミにも火防女にも力をもらって準備は万全ね)



下魔「準備ができたら出発するゲマ!」



ヨハネ「もう準備は万全よ、塔に着いたら今度はリフトから下に進むわよ」



カナンドレイ「お~い、忘れ物だよ!」ポタポタ


ヨハネ「あ、ヨハネの剣!」



カナンドレイ「そそっかしいな~、大切な相棒なんだから忘れないように気をつけないとね?」スッ



ヨハネ「おぉ……これは!」



カナンドレイ「気合いいれて鍛えたからね、切れ味もバッチリなはずだよ」


カナンドレイが鍛え直したモーリオンブレードは以前より一層黒く妖しい光を放っていた


ヨハネ「最後にこの剣を鍛えたのは、もう遥か昔のだもんね……この子には寂しい思いをさせたわ」



カナンドレイ「これで武器もバッチリだね!さあ、張り切って行ってきな!」パシン



火防女アリサ「どうかご無事で…」



ヨハネ「よし、目指すは深みの病院!出発よ!」


シュウウウウウ



こうしてヨハネたちは一路、深みの病院を目指して再び不死街の塔へと向かった


………………………
…………………
…………
……


楽屋

善子「第2回幕間お疲れ様回~!」


凛「イエーイ!」パチパチパチ


美渡「ヒュ-ヒュ-!」クラッカ-パ-ン!!


千歌「………」ミカンモグモグ


志満「千歌?もう始まってるよ?」


千歌「………?…あっ!ごめん!」ピシッ


善子(千歌さん自由だな……)


善子「というわけで今回は星空凛さんと高海家3姉妹に来て頂きました~!」


凛「じゃあいつものやつやるから善子ちゃんよろしくね!」



善子「え、いつもの!?」



凛「凛ちゃんといえば~?」



善子「?」キョトン



凛「凛ちゃんといえば~?」ズイッ



善子「ダークマター……」



凛「イロダヨ、イロ…」コゴエ



凛「凛ちゃんといえば~!?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



善子「鮮血の赤……!」ビシッ



千歌「イエローだよ~!!」


凛「千歌ちゃんありがと~!善子ちゃん残念すぎだにゃ~…」」



千歌「ライブの映像とかたくさん見たから知ってます!」フンス



善子「勉強不足ですみません……」



凛「ねえねえ凛の出番ってもう無いの?」



善子「倒されてしまぃしたからね……」



凛「え~!凛はCGだったけどあのいろんな機械体につけるやつまたやりたかったのにな~」



千歌「機械?」



志満「モーションキャプチャーのことかな?」



凛「あ、多分それです!」


善子「凛さんのキャラクターは見た目が大きなぬいぐるみだったのでモーションキャプチャーで演じてもらったんです!」



美渡「本人は出てないけど声と動きはちゃんと凛ちゃんがやってたってことか~」



美渡「そういえばあたしと志満姉もキャラ的に絶対出番少ないよね?」



善子「え?それは…」



志満「まあまあ、ぞもそも私達はアイドルじゃないものね、出させてもらっただけでも嬉しいわ♪」



美渡「監督権限でアイテム屋さんにもう少し出番を……」



善子「美渡さんはぃまのところ喋ったのはワンシーンでしたけど、祭祀場のシーンでは背景としてかなり映ってますから地味に出番は多いですよ?」



美渡「背景じゃつまんないよ~、あ!そうだ、なら今度うちの犬連れてきてもいい?」



善子「しいたけですか?」


美渡「そうそう!背景でもさ、犬と一緒にいれば多少目立つじゃん?」



善子「いいですけど……メンバーの1人が猛烈に嫌がる以外れは」



志満「千歌のキャラクターはなんか抜けてそうなとこがそのままね♪」



千歌「ほぇ?そうかな~///」



美渡「褒められてないぞ~」



千歌「私あのみかんの鎧、凄く気に入ってるんだよね♪」



凛「凛はラーメンの鎧が着たいな~」



善子「ラーメンの鎧っていったい……」



千歌「あの鎧持って帰っちゃダメ?かわいいから普段着として使いたいんだけど……」



凛「職務質問待ったなしだにゃ」



善子「あ……」



志満「どうしたの善子ちゃん?」


善子「いや、こうして凛さんをいれて4人並んでると4姉妹に見えなくもないかな~と」



凛「凛は千歌ちゃんとは髪の色一緒だよね~、でも美渡さんはどっちかというとかよちんのお姉さんぽいにゃ」



美渡「凛ちゃんも高海家の娘にいれちゃうぞ~!」ワシャワシャ



凛「にゃ~!くすぐったいよ///」




志満「美渡はなんとなく凛ちゃんと気が合いそうね♪」



善子「と、まあなんだかカオスな感じになってしまいましたが……これからヨハネはニシキノマッキを倒すため、深みの病院へと続く生贄の道を進むわ!」


凛「人をトマトにするなんて真姫ちゃん怖いにゃ~……」


カンペ「……」スッ


千歌「ん?生贄の道では梨子ちゃんと、あるメンバーのお父さんが登場!?」


凛「それじゃあ続きを行っくにや~!」


美渡志満「お楽しみに~♪」

今回はここまでです
全部で18個あるステージの次でようやく4つ目という事実…
後半はボス戦ばかりで展開早いですがもしかしたらこのスレ内だけでは終わらないかもしれません(>_<)


読んでくださった方ありがとうございました!



………………………
…………………
……………
………


ー不死街ー
廃教会の塔

ヨハネ「巨人とも友達?になったしチーカのリフトの謎も解いたし、ようやく先に進めるわね!」


下魔「今度はちゃんとリフトで下に向かうゲマ」

カチッ

カラカラカラカラ

ヨハネと下魔を乗せたリフトは無機質な鎖が擦れる音を立てながら下へと進む


ガシャン



ヨハネ「結構暗いのね……」

階下はところどころに蝋燭の灯りがあるだけだ

ヨハネ「なんか出てきたりしないわよね……」


下魔「怖いゲマ……」


テクテク


薄暗い通路を進んでいくと少し広い場所に出た

ヨハネ「あの大きな扉を開ければ建物の外かしら?」



ヨハネ「……!」


冷えてる谷の外征騎士「!」


大きな柱に隠れて気づかなかったが扉の前には外征騎士がいた

冷気を纏ったハイパージャンボ寝そべりぬいぐるみ、以前闘ったリンチャンほど巨大ではないがヨハネの背丈のゆうに2倍はある


リンチャンをテラジャンボ寝そべりぬいぐるみとするなら外征騎士はメガジャンボ寝そべりぬいぐるみといったところだろう


冷えてる谷の外征騎士「……!」シュッ!


ヨハネ「!」


外征騎士はヨハネを視界に捉えると飛びかかって一瞬で間合いを詰め、
氷の剣でヨハネに襲いかかった


ザシュッ!ザシュッ!

!FROST BITE !


ヨハネ「!」


ヨハネはあまりに一瞬の出来事に剣を振ることもできないまま氷の剣の直撃を受けた


ヨハネ「……」ドサッ


さらに凍傷のダメージにより一気に生命力を奪われ、エスト瓶を飲む暇もないまま床に倒れ伏す



下魔「ヨハネ様~!!」


ヨハネ(なによあの速さ……)



ヨハネ(体が冷たくなっていく……まだ……始まったばかりなのに…こんなところで…)



冷えてる谷の外征騎士「……」ヒュオオオオオ!


下魔「!」カチカチカチ


外征騎士は近くにいた下魔に氷のブレスを吐き、一瞬で下魔を氷漬けにしてしまう


下魔「」


ヨハネ(下魔が……!助けたいけどもう、体が……動かない…)


ギギギギィ……


冷えてる谷の外征騎士「……」タッタッタッタッ


外征騎士は氷漬けのゲマを抱えると、目の前の扉を開けて外へと駆けていった


ヨハネは薄れていく意識の中で、下魔がさらわれていくのをただ見ていることしかできなかった



ヨハネ「」


YOU DIED


………………………

ー火継ぎの祭祀場ー

シュウウウウウウウ


ヨハネ「………」


ツバサウッド「あら?随分と早いお帰りじゃない」クスクス



ヨハネ「完全に油断していたわ……」



ツバサウッド「ふふ♪前途多難ね、もう旅は辞める?」



ヨハネ「やめない…!」ダダダッ



ヨハネ「ヨシミ!」



ヨシミ「おや……どうされましたか英雄様、先ほど出発なされたのでは?」



ヨハネ「ヨハネにはまだまだ力が足りないわ!あなたの力でまたヨハネの力を引き出して……!」



ヨシミ「少しお待ちくださいね……」



ヨシミ(着実に呪いが溜まり始めている……どうやら強敵に敗れて死んでしまったようですね……)



ヨハネ「はやく……!」



ヨシミ「いいでしょう、今のあなたならもう一度力を引き出せましょう……始めてめよろしいですか?」



ヨハネ「お願いするわ……」


ヨシミ「では始めましょう……ダークリングを刻む者よ、あなたの真の力を!」


シュウウウウ

ヨシミが呪文を唱えると再び黒い霧がヨハネを包み、
収束して体内へと入っていった
また新たに暗い穴を穿って


暗い穴を手に入れた(2つ目)


ヨハネ「ありがとう……また出発するわ……次もまたよろしく……」


タッタッタッタッタッ


ヨシミ(これで穴も2つ目……これであの方にはさらに効率よく呪いが溜まっていく)



ヨシミ(ふふふ……もう後には退けなくなりましたね……)



……………………

ー不死街ー

廃教会の塔 地下


ヨハネ(はぁ……ヨハネが弱いからこんなことに……)



ヨハネ(下魔も守れなかった……こんなんじゃ使命はもちろん誰かを助けることさえできない……)



ヨハネ(下魔……お願いだからどうか無事でいて…!)



ギギギギィ…


ヨハネ「ここは……」

大きな扉を開けて外にでるとそこには木が生い茂った広大な森がひろがっていた


ー生贄の道ー


ヨハネ「見渡す限り木ばっかりね…」


ヨハネは木が生い茂る道をひたすら進む



ヨハネ「この森を抜けた先に深みの病院があるはず……」


テクテク


ヨハネ「?」



森を進んでいくと木々の少ない開けた場所に出た

そこには無人の馬車が転がり、その周りには体の黒い死体が転がっていた



ヨハネ「死んでる……?」ソロ-リ



鴉人「キエエエエエエエエ!」メキメキ



ヨハネ「!?」



ヨハネが通り過ぎようとすると、その死体と思っていたものの背中から突然黒い翼が生え、奇声と共に起き上がった




ヨハネ「やっぱり死んでないじゃない……!」


鴉人「キエエエエ!」メキメキ


鴉人「キエエエ!」メキメキ



周りにいた者たちも次々と起き上がる


ヨハネ「厄介なことになったわね……」

ボウッ

ヨハネは左手に呪術の火を灯し、起き上がり始めた遠くの鴉人に火球を投げる


ヨハネ「……!」ヒュン

ボオオン


鴉人「ギアアアア……」ドサッ


鴉人「キエエ……」ドサッ


鴉人「キエエ!」ブン!


近くにいた鴉人が空中から鎌をふりかざしてヨハネに襲いかかる



ヨハネ「はあ!」

ザシュ


鴉人「」ドサッ


ヨハネは鎌をかわして鴉人を斬り捨てた
不意の戦闘を終えて一息つく


ヨハネ「飛んで空中から襲ってくるとはまた厄介な敵が現れたわね……」



ヨハネ「背中に黒い翼を持つもの同士、分かり合えればいいのに…」



ヨハネは倒れた鴉人にそう呟くと、再び深い森を進む

………………



ヨハネ「橋発見!」


ヨハネ「敵もいるけど……」



目の前に細い石造りの橋が現れた
しかし案の定橋の上には倒れている鴉人がいた


ヨハネ「ん?あれは……」


よく見ると奥にすでに起き上がっている鴉人がいた
木でできた杖を持っているのを見るに魔術師だろうか



鴉人「キアアアアア!」


こちらに気づいた魔術師が叫ぶ


鴉人「……」メキメキ

鴉人「……」メキメキ


ヨハネ「声に反応して起き上がるのね……!」


ヨハネ「なら先手必勝!動き出す前に片付けるわ!」ダダダッ



鴉人は翼が完全に生えるまでは行動を開始せない
それまでにかなりの隙があるとみたヨハネは鴉人たちの中に一気に突撃した



ヨハネ「やあ!」


ザシュッ! ザシュッ!



鴉人たち「」



ヨハネ「ヨハネひわざわざ待ってはあげないわよ?特撮物の怪人たちにも是非見習ってもらいたいわね」



鴉人「………」フシュウウウウウ


一番奥にいた魔術師が紫の霧を杖から吹き出させた



ヨハネ「あれは毒霧……ヨハネを近づかせないつもりね……」


バサッ バサッ



ヨハネ「?」



背後の森の奥から無数の羽音がこちらに近づいてくる
この森で羽音といえば、その主は鴉人にほかならない



ヨハネ「さっきの声で呼び出されたのね……!森中の奴らが反応するとは…」



ヨハネ「このままここにいたら大勢の敵がくるわ…」



鴉人「………」



ヨハネ「毒霧が消えた瞬間に一気に畳み掛ける……また霧で道を塞がれたら後から来る敵に追いつかれる!」




ヨハネ「今ね…!」ダダダッ


ヨハネ「せやぁ!」


ザシュッ


鴉人「」ドサッ



ヨハネは霧が薄れた時に魔術師に一気に近づいて斬り伏せると一目散に橋を渡り森の奥へと走った


ヨハネ「あいつらを振り切らないと……!」



姿は見えないが後ろではまだ羽音が聞こえる
ヨハネは振り返らずにひたすらに走り続けた


……………………


ヨハネ「はぁ……はぁ……もう音もしなくなった……さすがに奴らをまけたかしら……」


ヨハネ「向こうに広場が見えるわね……あそこで休憩しよ……」


ヨハネの向かう先には小さな広場があった
崩れた石柱が転がり、石畳がまだ残っている
今は朽ちているが以前はここに砦があったのだろう



道半ばの砦


ヨハネ「よかった……篝火もある!これでゆっくり休めるわ」



ヨハネ「ん?」


篝火にばかり集中していて気づいていなかったが広場の隅に2人の人間がいた

1人は少女、腰巻きのついた銀の鎧を身につけ、背中には盾を背負っている

崩れて積み上がった石の上に座り、なにやら熱心に本を読んでいるようだ



もう1人は男性、白い上下の服に白い帽子、下駄を履き、腕を組んで佇むその姿はまるで職人のようだ

腰には雷の祝福を受けオレンジ色に輝く6本の短刀を左右の腰に3本ずつ差している


ヨハネは話をしようとおもむろに2人に歩み寄る

そして頬を赤らめながら興奮気味に読書をする少女の本を上から覗きこんだ



ヨハネ「壁クイ……?随分とアグレッシブな趣味をもってのね……」



???「きゃああああ!こ、これは違うの!これはただ戦術の参考にしようと……!別に私の趣味じゃないの!」


少女は早口で弁解するととっさに本を背中に隠してしまう



ヨハネ「はぁ……別に誤魔化さなくても、自分の好きなものに誇りを持ちなさいよ!」



???「自分の好きなものに誇り……素敵だね///ってあなたは誰なの?」


ヨハネ「わたしはヨハネ、堕天使ヨハネよ!あまりの美しさに天界を追放された悲しく、そして罪深き存在……それがヨハネよ」



???「凄い……!そんな痛々しい設定を当然のようにすらすらと……あなたは自分の好きな堕天使に誇りをもってるんだね!」



ヨハネ「ヨハネ自身自覚はしてるけど、初対面の相手に痛々しいとか言われると流石にへこむんですけど……」


???「ご、ごめんね!別に落ち込ませるつもりじゃ……」


ヨハネ「ところで後ろの渋いおじ様はあなたの仲間?」


ヨハネは後ろに無言で立っている男性に目を向けながら問う


沈黙の職人ホノパパ(演 穂乃果の父)「………」



???「この人はホノパパさん、私の旅の同行者でとても頼もしい人だよ。無口だけどすごく優しい人だから怖がらないであげてね」



ヨハネ「同行者とか言っちゃって実は恋人同士だったりして」ニヨニヨ



ホノパパ「………///」


???「ち、違うよ!私がこんな素敵なおじ様となんて恐れ多い……!」




???「それにあり得ないから……私レズだし……」



ヨハネ(今この子さらっととんでもないこと言った気がする……)



ヨハネ「で、あなたの名前は?」


オトノギのアン・リリー(演 桜内梨子)「あ、紹介が遅れちゃったね、私はアン・リリー、今は亡国になってしまったオトノギ出身の騎士だよ」



ヨハネ(げっ……オトノギ出身ってことはガチレズじゃない!!あの国はレズの巣窟だと本で読んだことがあるわ…)



ヨハネ(オトノギ出身ならさっきの唐突なカミングアウトも納得ね……)


ヨハネ(果たしてヨハネはこの子と関わって大丈夫なのかしら……)


リリー「どうしたの?初対面だけど別に緊張しなくていいよ?」


ヨハネ「な、なんでもないわよ!堕天使であるヨハネが下界の人間相手に緊張するわけないでしょ?」アセアセ



リリー「ほんとかな?」ジ-…



ヨハネ(なんかもうこの子の発言とか仕草がいちいち意味深なそれに感じる……!)



リリー「顔も赤いし熱でもあるのかな?ほら、おでこ貸して?」



ヨハネ「えっ?ね、熱なんてな…むごっ」ガシッ



リリー「じっとしてて…」ボソッ



ヨハネ(か、顔が……顔が近づいてくる!!まずい……まずいわよこれは!)



リリー「ん~………」ジリジリ


ヨハネ(ああああ!)


ピトッ


ヨハネ「………!」



リリー「おでこ、熱いよ?私も旅で疲れてるし、少し向こうの木の陰で一緒に休憩しない?(意味深)」




ヨハネ「きゅ、休憩なんてしないわよ!ヨハネはピンピンしてるわほらこの通り…!」ブンブン



リリー「ふふふ、変な人♪」



リリーの身につけている白銀の鎧
それはオトノギにおいて彼女が上級レズであることを意味する

彼女が腰に差しているリリーの直剣もまた、レズの国オトノギの祝福を受けた特殊な剣
持ち主のレズ力が高ければ高いほど攻撃力が上昇するまさにオトノギの真髄ともいえる武器だ



リリー「さっき名前はヨハネって言ってたよね?じゃあこれからはよっちゃんって呼ぶね?」




ヨハネ「あ……はい」



ヨハネ(めっちゃグイグイ来てる…!これは完全にヨハネがロックオンされてしまっているわ…)


ヨハネひオトノギの上級レズの恐ろしさをまざまと実感させられたのであった


………………


リリー「どう?少し落ち着いた?」



ヨハネ「もう大丈夫よ……まったく!あんたが変なことするから……」



リリー「ところで、こんな危険なところにわざわざ来てるってことはあなたも女王を探す火の無い灰なの?」



ヨハネ「その通りよ、ヨハネはニシキノマッキを倒したくて深みの病院を目指してるの」



リリー「じゃあ私と同じだね♪」



ヨハネ「あなたもなの?」



リリー「私もあなたと同じ火の無い灰、そしてニシキノマッキを倒そうとしてるんだよ」


ヨハネ「道中で同じ目的を持った人間に会うのはあなたが初めてだわ」


リリー「実はね、私もホノパパさんも生贄の生き残りなの……」



ヨハネ「生き残り?」



リリー「そう……ニシキノマッキが当時の薪の女王であった時、私とホノパパさんは生贄として病院に連れていかれた…」



リリー「でもあんなところでトマトにされて食べられるなんて絶対嫌だって思って、その時たまたま一緒に連れてこられていたホノパパさんと協力して命からがら病院を逃げ出したの……」



ヨハネ「あんたにそんな過去があったとはね………」



ホノパパ「………」コクリ



リリー「でも今までにニシキノマッキに連れていかれて生きて帰れる人間なんていなかった、私とホノパパさんが唯一の生き残りなんだ……」



ヨハネ「じゃああなた達はニシキノマッキに復讐を…?」



リリー「うん……復讐って言えるのかはわからなちいけど、ニシキノマッキが生き返った今、彼女がまた同じことをするんじゃないかって」



リリー「だからニシキノマッキを止めるのは私たち生き残りの役目だと思う……ニシキノマッキを倒して、彼女に新たな犠牲を出させるわけにはいかないの…!」



ヨハネ「それがあなたの旅の目的なのね……」



リリー「あなたも深みの病院にこれから行くんだよね?」



ヨハネ「もちろんよ」



リリー「ならここは丁度生贄の道の中間地点、ここを降りていけば磔の森というところに出られる」



ヨハネ「磔の森……不気味な名前ね」


リリー「そこにある水に浸かった森の先はアライズの不死隊の故郷であるユーティーエックスの城塞……」


リリー「水に浸かった森を通らず道をそのまま進めば深みの病院に着くはずだよ」



ヨハネ「せっかくこんなところで会ったんだし、一緒に病院を目指さない?」



リリー「嬉しいけど、私たちはもう少し休んでから出発する、だからよっちゃんは先に行ってて?」



ヨハネ「そう……でもヨハネだけでニシキノマッキを倒したらあなたの旅の意味が無くなるわ……だから必ず追いついて来るのよ?」




リリー「そうだね、同じ道を目指す者同士また必ず会える、その時はお互いに助け合おうね♪」



ヨハネ「ええ、じゃあヨハネはもう行くわね!」



リリー「うん!よっちゃんの旅にも火の導きがあらんことを♪」



ヨハネ「またね、リリー♪」フリフリ

スタスタ


ホノパパ「……」フリフリ


リリー「………」



リリー「最後に前で呼んでくれた///」


リリー「はぁ~///あの子かわいかったな~///」



ホノパパ「………」ヤレヤレ…


http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira121146.jpg


今回はここまでです!相変わらず画像は横になったり逆さになったりなんなんだ……
続きは近日中にと思っています
カナンドレイ……背徳感(笑)元のキャラの名前はアンドレイなので特に深い意味はないですが言われてみればたしかに(^^;;

読んでくださった方ありがとうございます!

前のも含めて挿絵の向き修正版
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira121148.jpg

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira121147.jpg

>>298
リリー「最後に前で呼んでくれた///」

訂正 …リリー「最後に名前で呼んでくれた///」
誤字脱字他にも山ほどありますがとりあえず一番手前にあったのでm(._.)m


磔の森

ヨハネは朽ちた砦の篝火で出会ったリリーとホノパパに別れを告げ、ひたすら森の奥へと進む


ヨハネ「いたるところに十字架がたてられてる……ここがリリーの言っていた磔の森ね」

スタスタ


ここでは今までの森とは違い、木々に混じってたくさんの十字架がたてられている


ヨハネ「誰がやったかは知らないけど、あんまりいい趣味とはいえないわね……」



ガサガサ


ヨハネ「?」


ヨハネ(何かいる……それもたくさん…)


耳を澄ますと地面に散らばった落ち葉を踏みしめる大勢の足音が聞こえる


ヨハネ(何者かしら……)


木の陰に隠れ、そっと音のするほうを伺う


\ミンナ-、マルタハモッタカ-!/



ヨハネ「!?」



丸太亡者「………」ゾロゾロ



ヨハネの視界の先
そこには丸太を抱えた大勢の亡者たちが列をなして歩いた



ヨハネ(なんかあの光景、昔に魔界の図書館で読んだ彼◯島で見たことあるわ……)



ヨハネ(ただこいつらの丸太は先が尖ってて凶悪……いやむしろこっちのほうが普通かもね…)



ヨハネ(いずれにせよあの本の世界では丸太は最強武器といっても過言ではない……それがあんなにたくさん)



ヨハネの目には、丸太を抱えて行進する亡者たちがまるで伝説の聖剣を持った勇者たち一行のように見えた



ヨハネ(あんなのに勝てるわけない……見つからないようにやり過ごすわ)



ヨハネ「………」ソロ-リ



ヨハネは彼らに近づかないように森の道を大回りに進むことにした

いくら広い森とはいえ今は道なりに進むだけ、迷うことはないだろう



ヨハネ「あら?キノコ……?」


突然目の前に大量の紫の大きなキノコが現れた


毒角蟲「……」モゾモゾ



ヨハネ「動いてる……!これ、キノコじゃない!」


毒角蟲「…………」モゾモゾ

毒角蟲「…………」モゾモゾ

毒角蟲「…………」モゾモゾ



ヨハネ「いつの間にこんなに周りに……まさか囲まれた!?」


紫のそれはキノコではなく蟲だった
どうやらヨハネは毒角蟲たちの群れに飛び込んでしまったようだ


ヨハネ「うぅ……なんなのよこいつら……」



毒角蟲「……」フシャフシャフシャ……


不意に毒角蟲が体を揺すり、背中のキノコのかさに似た部分から紫の粉が舞う


ヨハネ「!」


フワァ……



ヨハネ「恐らく………これは毒の粉…!」


ヨハネ(囲まれてみんなが粉を撒き始めたら逃げ場がなくなる…)


ヨハネ「邪魔よ……!」



ザシュ!


毒角蟲「」コテン


ヨハネ(こいつらを倒して道を開けないと!)



毒角蟲「…………」フシャフシャ

毒角蟲「………」フシャフシャ



ヨハネの予想通り、他の毒角蟲たちも次々と毒の粉を撒き始めていた


ヨハネ(このままじゃ毒に侵される…!)


ザシュ!ザシュ!


毒角蟲「」



ヨハネ「脱出!」ダダダダッ



ヨハネは毒角蟲たちを倒して道を切りひらき、なんとか群れの真ん中きら逃げ延びた



ヨハネ「ふぅ……あいつら自身がそこまで攻撃的じゃなくてよかった……」


ヨハネ「………」キョロキョロ


ヨハネ「道からは逸れてないわね、このまま進むわ!」


テクテク


ひたすらに森の道を進んでいく
磔の森を進んでいる間、横目にずっと見えていた水辺をヨハネは見渡す


ヨハネ「これが水に浸かった森なのよね……」



森の一角は湿地帯のようになっており、まるでマングローブのような大きな水溜りができていた



ヨハネ(たしかリリーはあの森の先はアライズの不死隊の故郷って言ったわ………ニシキノマッキ以外にも薪の女王が近くにいたとはね……)




ヨハネ(今はニシキノマッキが優先だけど、彼女と決着を着けたらいずれは刃を交えることになる……)



ヨハネ(でも不死隊……?隊ってことは1人じゃないのよね)



ヨハネ(ニシキノマッキのこともやたら詳しかったツバサウッドなら知ってるかしら?今度聞いてみよ……)


スタスタ


ヨハネ「あ、こんなところに篝火が!ちょっと休憩…」



ボウッ


BONFIRE LIT


ヨハネ「は~……もう結構奥まで進んだわね」チョコン



ヨハネ「それにしてもこんな森の真ん中で火なんて焚いて大丈夫かしら?火事にならないわよね……?」



ヨハネ「ふ~……」



ヨハネは遠くの水辺を眺めながら思い耽っていた

自分の使命のこと、薪の女王になることの意味……
そしてさらわれてしまったゲマのこと……


ヨハネ(下魔……記憶は曖昧だけどヨハネの大事な最初のリトルデーモン)


ヨハネ(冷えてる谷のぬいぐるみにさらわれちゃった……ヨハネのせいで……)



ヨハネ(今はどうしてるのかな……ヨハネが助けに来るのを待ってるのかしら…)



ヨハネ(それともしもべを守れなかった愚かな主人を恨んでいるのかしら……)



子蟹「………」パシャパシャ



水辺では子蟹たちが戯れている
子蟹といえどかなりの大きさではあるが



ヨハネ(和むわ……蟹は呑気でいいわね……ヨハネも転生したら使命にも何も囚われない自由な蟹になろうかな)



ヨハネ(なんてね……)



大蟹「………」



ヨハネ「………」


ヨハネ「………!」


遠くでまるで象のような大きさの蟹がじっとこちらを見ていた



ヨハネ(思わず2度見してしまったわ……あれは見なかったことにしましょう)



ヨハネ「さて……なんか蟹に見られて落ち着かないしそろそろ行かなきゃ…」スクッ



道の先に崩れかけの砦が見える
リリーとホノパパがいたところとは違い、しっかりと外壁が残っている


ヨハネ「あの砦を超えた先がきっと深みの病院ね……先を急ぎましょう」


……………………

ヨハネ「あれ?砦に着いたはいいけど入り口は……?」


ウロウロ


ヨハネ「この道は何かしら?」


砦の入り口を探すヨハネは砦の横に脇道を見つけた

霧が深いその道の先には十字架が並び、ぼんやりと焚き火が見える




ヨハネ「ん?」


霧の向こうをぼんやりと見ていると奥で十字架が動いたように見えた



ジヤラジヤラ……


鎖を揺らす音が近づいてくる



ヨハネ「何か来る……!」ジャキッ



ダダダダダッ


磔亡者「ギイアアアアア!!」ブン


ズバッ!



ヨハネ「ぐっ……!」



霧の中から飛び出したのは、鎖で十字架を背中に括り付けた巨体の亡者だった



ヨハネ「久しぶりのエスト瓶……」ゴクゴク



ヨハネが瓶の中身を飲むと磔亡者の引っ掻きによってできた深い傷が消えていく



磔亡者「アアアア!」ヒュン!ヒュン!



ヨハネ「は、早い…!」



磔亡者は凄まじい速さで移動しながら鋭い爪でヨハネに襲いかかる


磔亡者「………!」ブン


ガキン!


ヨハネ「!」


ダークハンドの盾で爪を防ぐが磔亡者は攻撃の手を休めない

次第にヨハネは追い詰められ、体力を削られていく



ヨハネ(盾で防ぐのももう限界……)



ヨハネ(この速さじゃ逃げるのも無理ね……)



磔亡者「ウオオオオオ!!」ダダダッ


正面から磔亡者が突撃してくる



ヨハネ「………!」スッ



ヨハネはダークハンドの盾を閉じ、モーリオンブレードを両手で構えた





ヨハネ「くらえええぇっ!」



磔亡者「!?」



ズガアァン!!



ヨハネは大きく踏みこむと、正面から向かってきた磔亡者の顎を剣で下からかち上げた



磔亡者「アア……」


本来は相手の盾受けを崩すためのこの技で、ヨハネは亡者の顎を打ち抜いた



磔亡者「」ドサッ



ヨハネ「十字架の中にあんなやつが紛れてたとは……」



周囲を警戒しながらヨハネは脇道を進む


ヨハネ「これは……」


そして揺らめく焚き火の火の中にある物を見つけた



ヨハネ「残り火…!」



残り火……
それは英雄たちの内にある残り火
それは火の無い灰が終いに得られず、それ故に惹かれるもの

死ぬまで火の力を得、自身の生命力を上昇させる

また火の力を得た者にはサインが見え、火の力に惹かれた協力者を召喚できる

だが、同時にその火を奪おうとする者の影も付き纏うだろう


ヨハネ「………!」

ボウッ

ENBER RESTORED



ヨハネが残り火を握りしめると、その手か火の粉が溢れて体に降り注いだ

衣服や体に火の粉が移り、燻りはじめる
ヨハネは火の力を得たのだ



ヨハネ「すごい……力が満ちるのを感じるわ…!」


ヨハネ「これが火の力……灰の者たちが求めるのも納得だわ」


力を得たヨハネは脇道を引き返し、再び砦の入り口を探す



ヨハネ「あ!こんなのさっきまでは見えなかったのに!」


先ほど通った時は見えなかった文字が地面に書かれていた
火の力を得た者にのみ見えるサイン
このサインに応えることによって別の世界から霊体として協力者を召喚できる
それが協力者とは限らないが……


ヨハネ「本では読んだことがあったけど、まさかヨハネがサインで仲間を召喚できる日がくるとは……」



ヨハネ「紫のサイン…よくわからないけどヨハネ好みな堕天使的カラーリングね!」



ヨハネ「さっそく呼ぶわよ!」



ヨハネがサインに手をかざすと文字が輝いて浮かび上がり、そして消えた


ヨハネ「誰が来てくれるのかしら?」ワクワク



ヨハネ「サタンでもルシファーでもハーデスでも誰でもいらっしゃい!ヨハネと共に行きましょう!」


ザワザワ

森の木々たちがざわめきはじめる…



ヨハネ「感じる……聖霊結界の崩壊と世界の調和の揺らぎを…!」


ヨハネの口上にも気合いが入る



♪レッツゴ-! ドゥ-! アイ・ドゥ-・アイラブイエスドゥ- アイ!



ヨハネ「な、なに?この魔界にそぐわぬ底ぬけに明るい旋律は?」



『狂った闇霊 聖騎士ホノリックが召喚されました』



ヨハネ「狂った闇霊!?」



ヨハネが応えてしまった紫色のサイン

それは闘いに飢えた狂える闇霊を召喚する印であった

ヨハネは闘いを求める者と見なされ、それに呼応した狂った闇霊がヨハネのもとへと召喚されるのだ


丸太亡者「ギャアアアアアア!!」カン!カン!


ヨハネ「!?」


森の奥から亡者の叫び声と剣を振るう音が聞こえる


ヒュ-ン


ドガッ!!」


ヨハネ「ひぃっ!」


丸太亡者「」


遠くから飛んできた亡者の死体がヨハネの足元に転がる



ヨハネ(やばい………やばいややばいやばい!!)


ヨハネの召喚した闇霊によって磔の森は惨劇の舞台と化したようだ


ガサガサ


そして木々をかき分けついに彼女はヨハネの元へやって来た
古びた鎧をボロ布で包んだ姿のその少女は剣をかざし高らかに名乗りをあげた


♪レッツゴ- レッツゴ- ハァ-イ!!


聖騎士ホノリック(演 高坂穂乃果)「これが私、聖騎士ホノリック!誓約『積む者』を結んでるよ!」



ヨハネ「つ、つつつ積む者ってなによ!?」



ホノリック「『積む者』って何を積むのかって?ツムツムみたいにぬいぐるみじゃないよ?私が積むのは人間の背骨!」



ホノリック「だから私は倒した人間の背骨を集めてるんだ!趣味は背骨集め♪さあ、ファイトだよ!」




ヨハネ(想像よりはるかにヤバいやつがでてきた~!!)


ホノリック「いっくよ~!」

ボウッ ボウッ ボウッ ボウッ



ヨハネ「た……助けて!」




ヨハネは慌てて木の裏に隠れる


ドドドオン!


ヨハネ「あわわわ……」


ヨハネの隠れていた木に火球の雨が降り注ぎ、たちまち木は炎に包まれて焼け落ちた



ヨハネ「な、なによあの人……!聖騎士とは名ばかりのマジでヤバい人じゃない!!」



ホノリック「そんなに隠れんぼしたいなら隠れる木が無くなるまで森を焼くだけだよ!」


ボウッボウッボウッ



ヨハネ「きゃあ!」


ヨハネの周囲の草木が次々と焼けていく


ヨハネ「ヨハネが悪かったわ……!あなたの望みは何?可能なことなら叶えてあげるからお願いだから帰って!」



ホノリック「望み?」



ヨハネ「そう……あなたの言うこと聞くから!ね?」



ホノリック「じゃあ背骨ちょうだい!あなたの背骨をくれたら帰るよ!」



ヨハネ「死んじゃうわよぉ!!」



ヨハネ(ほんとに狂ってる…!)


???「そこまでです!!」



ホノリック「お?」


ヨハネ「!?」



『暗月の剣の誓約により薄暮の国のウミリスが召喚されました』


ヨハネとホノリックの間の地面が光り、鎧を身につけ頭にヴェールを被った少女が現れた


ヨハネ「え?ヨハネはあなたのこと召喚した覚えはないわよ?」


薄暮の国のウミリス(演 園田海未)「驚いたでしょう?でもこの私が来たからにはもう安心ですよ!」


ヨハネ「あなたはいったい……」



ウミリス「私はウミリス、暗月の剣の誓約者として闇霊に襲われている方々を助けているのです」



ウミリス「あなたのもとへ召喚されたのも誓約によるもので、襲われている方の元へと駆けつけるいわば警察のような役目なのです!」フンス


ヨハネ「よくわかんないけどわかったわ!だったら早くあの狂ったサイドテールをぶっ飛ばしてちょうだい!」


ウミリス「あの闇霊は何度も現れては人を見境なしに襲っていまして……私たちも手を焼いているのです、でも私にかかれば……」


ホノリック「話が長いよ!」


ボウッ


ヨハネ「あ、危ないわよ!」



ウミリス「え?」


ボオオオオ

ウミリス「熱いですううう!」



ヨハネ(大丈夫かしらこの人……)



ウミリス「………」エストビンゴクゴク



ウミリス「ぐぬぬ……よくもやりましたね!今度こそ私の槍、エストックの錆にしてやります!」



ホノリック「はああ!」ブン!


ガキイイン!


ウミリス「ああっ……!」


ヨハネ「ちょっと!?そんな細い槍で大剣を防げるわけないでしょ!?」



ウミリスのエストックはホノリックの大剣フランベルジェにいとも簡単に弾き飛ばされた


トスッ!


ヨハネ「ひぃっ!」

弾き飛ばされたエストックがヨハネの足元に刺さる


ヨハネ「ほら!ぼさっとしてないで槍を持ちなさい…!」



ヨハネは地面に刺さったエストックを抜きウミリスに渡そうとした



だが


ウミリス「………」シャララララ~


ウミリスはホノリックの目の前で丸腰でしゃがみ込み、回復の奇跡を発動していた


ヨハネ「なにやってるの!?」


ホノリック「もう!いつも私の邪魔してしつこいよ!しかもウミリスちゃん弱いし!」ブン



ドスッ!


ウミリス「いやあああ!」


無防備なウミリスをフランベルジェが貫いた


ウミリス「すみません……旅の方……勝てませんでした…」


シュウウウウウウウ……

ウミリスは霧となって消えていった

『薄暮の国のウミリスが死亡しました』


ウミリスもまた霊体
霊体は死亡すればまた元の世界の本体に帰るだけである
闇霊に誰かが襲われた時、また彼女は現れるだろう



ヨハネ「なんだったのあの子!?」


ホノリック「わ~い!勝ったよ!」


シュウウウウウウウ


ホノリックもまた霧となって消える



『聖騎士ホノリックはなにかを見つけ元の世界へ帰りました』



ヨハネ「え?帰ったの!?」



先ほどまでの喧騒が嘘のように静寂の中に1人取り残される



ヨハネ「なんだろう……悪夢を見ていた気分だわ………」



ヨハネ「あ!壁に穴があいてる!」



ヨハネの近くの砦の外壁には大きな穴が空いていた
ホノリックの火球の直撃で崩れたのだろう


ヨハネ「幸か不幸か……この穴から砦の中に入れそうね!」



ヨハネは恐る恐る砦の中へと足を踏み入れていくのであった


今回はここまでです!
誤字を訂正しようとしたら安価の使い方わからなかった( ;´Д`)
海未ちゃんが超絶弱いのは元キャラのNPCの残念過ぎるAIを元にしているためです
さすがに穂乃果ちゃんと海未ちゃんをこの1発ネタで終わらせるのは嫌なのでまた兼役で登場してもらいます(^^;;


……………

崩れかけた砦

ヨハネ「誰もいないのかしら……」


大きな石柱が並ぶ道を進む


ヨハネ「………!」


亡者たち「………」ゾロゾロ


柱の陰から亡者たちが現れヨハネの前に立ち塞がる


ヨハネ「待ち伏せされてたってことね…!」


亡者「グオオ!」ブン!


ヨハネ「ふん!」

バシュッ!

亡者「アアア……」ドサッ


ヨハネ(ヨハネも甘く見られたものね……いくら待ち伏せしようが束になろうがリトルデーモンくらいどうってことないわ!)


ズバッ! ズバッ!



亡者「ギエ……」ドサッ

亡者「アア……」ドサッ



ヨハネは鉈を振りかざし迫りくる亡者を次々と薙ぎ倒しながら道を進む


シュン!

ヨハネ「……っ!」


カキン!


ヨハネ(今のは魔法!?)


とっさにダークハンドで防ぐ

道の奥から風を切って飛んできたのはソウルを矢に変えて放つ魔法「ソウルの矢」だ


ヨハネ(リトルデーモンも魔法を使えるやつがいるようね…)


柱の陰に隠れ様子を伺う


ヨハネ「あの奥にいる帽子を被ったリトルデーモン、あいつが魔法使いね」


ヨハネ(魔法は次の詠唱までに時間がかかる……近づきさえすればこっちのものよ!)


タッタッタッタッ


亡者「……!」


ヨハネ「てやぁ!」

ザシュッ!


亡者「」バタッ



ヨハネ「ん?」


砦の奥にも壁が崩れ、そこから坂道が続いている


ヨハネ「この生贄の道もそろそろ終着点ね」

テクテク
 
壁をくぐり坂を登っていく



ヨハネ「ここも柱が残ってるし床も石畳、この場所も過去にはまたなにか建っていたんでしょうね」


昔の建物の名残りの残ったままの広場に足を踏み入れたその時だった


パリパリパリ



ヨハネ「?」クルッ


すぐ後ろで聞こえた不可解な音に思わず振り返る
それはヨハネのすぐ後ろで鉱石のような結晶が地面から無数に生え、退路を塞いでいるところだった



ヨハネ「なんなの…!?」


慌てて前に向き直ると、この広場から先に進む道もすでに結晶によって塞がれていた



ヨハネ「閉じ込められた!?」



ヨハネ「誰のしわざ!?隠れてないで出てきなさい!!」



フワッ…


ヨハネ「!?」


広場の奥の地面からまるで生えてきたかのように大きなローブを翻して現れたのは
いかにも魔法使いといった帽子を被った幼稚園児くらいの男の子だった



???「ちゅうにびょう~」


ヨハネ「な、なんですって~!?」


BOSS 結晶のコタロウ(演 矢澤虎太朗)
アライズの不死隊の同盟者である彼は不死隊に害をなすであろう火の無い灰を排除する役割を担っている

彼は幼くして極めて優れた魔法使いであり、幼い姉2人と共に結晶の魔術を編み出したという


ヨハネ「どこの子供か知らないけど、いい子だから道を開けてくれない?」



コタロウ「だめ~」



ヨハネ「な!?」



コタロウ「じゃましてきそうな灰のおねえちゃんはやっつけろってアライズのおねえちゃんたちが言ってた~」


ヨハネ「アライズ!?」



ヨハネ(病院に向かうヨハネの邪魔をしてきたからてっきりニシキノマッキの部下かと思ったわ……)


コタロウ「だからとおせんぼ~」


明らかにサイズの合っていないローブを揺らめかせながら、鼻水を垂らした男の子はヨハネに宣戦布告した


ヨハネ「まあ、でもね……いくら闇の住人であるヨハネでもこんなちびっ子に剣を振るうけど堕ちてはいないわ……」



コタロウ「ぼくをやっつけたら道をあけてあげるよ~」



ヨハネ「むむむ……なら見せてあげるわ、堕天使の恐ろしさを!」


タタタタッ


コタロウ「?」



ヨハネ「堕天使奥義・堕天龍鳳凰縛!!」

ガシッ



コタロウ「やめて~」ジタバタ


コタロウは駆け寄ってきたヨハネにあっさりと捕まってしまった



ヨハネ「ほらほら~!おとなしく負けを認めなさい!」



コタロウ「やだ~」



ヨハネ「強情な子ね…」


コタロウは自由になっている片手でローブの中からピコピコハンマーを取り出した


ヨハネ「?」



コタロウ「はなして~」ブン!


ピコン!


ヨハネ「へぶっ!」


コタロウ「にげる~」フワッ



ヨハネ「ああっ!」


ヨハネ(おもちゃとはいえいきなり顔面に直撃したから驚いて力を抜いてしまったわ……)


ヨハネ「………」キョロキョロ



ヨハネ「消えた…?」



パリパリパリ



ヨハネ「そこ!」クルッ


ヨハネが振り返った先にはただ地面から結晶が生えてきただけだった



ヨハネ「あれはダミーね……」



コタロウ「でてきた~」フワア



ヨハネ「あ!いつの間にかあんな遠くの地面から……!」


コタロウ「こっちだよ~」



ヨハネ「もう!別にヨハネは坊やと遊びたいわけじゃないのよぉ!」


タッタッタッタッ


コタロウ「え~い」ブンブン


ピコン!ピコン!


ヨハネ「ふふふ……そんなおもちゃ痛くも痒くもないのよ、残念だったわね坊や」


コタロウ「え~」



ヨハネ「でも物で人を叩く悪い子にはお仕置きが必要ね!」


ヒョイ!

コタロウ「わっ!」


ヨハネ「ほらほら!魔界のお仕置きの定番、堕天鉄扇襲臀撃(お尻ペンペン)を喰らいなさい!」


ペチ-ン!ペチ-ン!



コタロウ「いたい~」ジタバタ


ヨハネ「坊やがッ 降参するまで 叩くのをやめないッ!」


コタロウ「やだ~!」


コタロウが取り出した水晶玉が輝きを放つ

シュン!

ヨハネ「!?」


ドゴオオン


パラパラ……


結晶ソウルの矢がヨハネの顔のすぐ横を通り過ぎ、背後の岩を粉々にした


ヨハネ「あわわわ……」



コタロウ「もうおこった~」フワッ



解放されたコタロウはローブを翻すと地中に潜るようにして消えてしまう


ヨハネ(なんなのよあのピコピコハンマーとの威力のギャップは!!)



ヨハネ(子供と思って甘く見ていたわ……恐ろしい子……!)




ヨハネ「………」キョロキョロ



ヨハネ(さあ……今度はどこから出てくる…?)



コタロウ「ふえた~」

コタロウ「ふえた~」

コタロウ「ふえた~」

コタロウ「ふえた~」

コタロウ「ふえた~」

コタロウ「ふえた~」



ヨハネ「!?」


広場を囲むように何人ものコタロウの分身が現れた

そしてそれぞれの持つ水晶玉が光だす


ヨハネ「分身!?これも魔法の力…!?」


コタロウ「みんなやっちゃえ~」


ヨハネ「……!」


ヒュ-ン!ヒュ-ン!

ヒュ-ン!ヒュ-ン!


ドドドドド


ヨハネ「しまった…!」


分身それぞれが魔法を放ち、結晶ソウルの矢や結晶ソウルの槍が四方八方からヨハネに襲いかかる



ドガッ!


ヨハネ「あぁっ!」



柱の陰に避難しようとしたヨハネだったが飛んできた結晶の矢の1つが直撃してしまう



ヨハネ「………」エストビンゴクゴク



ヨハネ(うう……こんなちびっ子に負けるわけには…!)



コタロウ「はしらもぜんぶこわしちゃえ~」


ヒュンヒュン!


ドゴオオン!


ヨハネ(このままじゃあ逃げ場がなくなる……)



ヨハネ(きっと分身は本体が魔法で出しているはず…なら本体を攻撃すれば!)



コタロウ「こわせこわせ~」

コタロウ「こわせこわせ~」

コタロウ「こわせこわせ~」

コタロウ「こわせこわせ~」

コタロウ「こわせこわせ~」


ヨハネ「でもいったいどれが本物なの!?」


ヨハネは追い詰められながらもコタロウを観察する


ヨハネ「本物を見分ける方法がきっとある…!」


ヨハネ(みんな体に青い光を纏ってる……)



ヨハネ(あ!あの子だけ色が違う!)


魔法を放つコタロウの分身たち、その中の1人に他とは違う紫色の光を纏ったコタロウがいた


ヨハネ(きっとあれが本物だわ…!)


タッタッタッタッ



ヨハネ「分身の魔法見破ったり!」



ヨハネは柱の裏から飛び出し、他の柱の間を縫うように結晶魔法の弾幕の中を駆け抜ける


ヨハネ「あなだが本物ね!」


コタロウ「ば、ばれた~」アセアセ



ヨハネ「この水晶玉が魔法の触媒ね…!坊やには悪いけどこうさせてもらうわ!」

パシッ


コタロウ「あ~」



ヨハネはコタロウの手から水晶玉を奪い取ると地面に叩きつけた


パリイイイン!


勢いよくくだけ散る水晶玉
周りにいたコタロウの分身たちが消えていく


コタロウ「うわああんひどい~」



ヨハネ「さあ、これに懲りたらおとなしくおうちに帰りなさい!今度はそのピコピコハンマーも壊すわよ?」



コタロウ「う…う~」


ヨハネ「さあ、どうする?」ズイッ



コタロウ「もうやだ~おねえちゃんたちにいいつけてやる~」

フワアッ


コタロウはローブを翻すと消えていった
どうやら降参して帰ったようだ


パラパラパラ…



道を塞いでいた結晶の壁が崩れていく

HEIR OF FIRE DESTROYED

コタロウのソウルを手にいれた

ヨハネ「な、なんか凄く大人気ないことした気がするけどとりあえず勝てたわ……」



ヨハネ「篝火……灯しておきましょう」

ボウッ


BONFIRE LIT


ヨハネ「でもきっと深みの病院はもう目の前のはず……とりあえず祭祀場に帰るのは病院の存在を確かめてからにしましょう……」


テクテク



結晶の壁がなくなって開通した道を進む



ヨハネ「森から岩場に変わったわね……」



ヨハネ「おや?」


ヨハネは岩場に何か光るものを見つけた
足が生えているあたりどうやら生き物のようだ


ヨハネ(たしかあれは…)



………………………

カナンドレイ「そういえば貴重なラブカストーンは結晶ルビィが持ってることがあるんだ」



ヨハネ「結晶ルビィ?」


カナンドレイ「そう結晶ルビィ、結晶トカゲはいろんなとこに住んでるみたいなんだけど実際に見つけられるのはかなり珍しい……」


カナンドレイ「でも各地を旅してるヨハネならきっとどこかで突然出会うことがあるはず」



ヨハネ「結晶ルビィ……まだ見たことないわね…」


カナンドレイ「結晶ルビィは赤いツインテールの小さな生き物、でも背中が光ってるから遠くからでもいたらきっとすぐ見つけられるとおもうよ♪」



ヨハネ「ふ~ん……なんか変わった生き物ね」



カナンドレイ「ただ結晶ルビィは凄く臆病で、こっちに気づくとすぐに逃げちゃう……今まで私も何度逃げられたことか……」


ヨハネ「じゃあ見つけたらすぐに追いかけて倒すと……」


カナンドレイ「見た目が可愛いからちょっとかわいそうだけどね……でも武器を鍛えるためには仕方ない、心を鬼にすることも必要だよ」


ヨハネ「貴重な情報ありがとう♪見つけたら是非倒しておきたいものね」


カナンドレイ「あ、それともうひとつ……結晶ルビィの姉である結晶ダイヤが近くにいることがある、結晶ダイヤは大きくてかなり怒りっぽいから襲われたら気をつけるんだよ?」


ヨハネ「心配は無用よ、この堕天使ヨハネを誰だと思ってるの?」


……………………


結晶ルビィ「うゅ……」


ヨハネ(あの光る背中に赤いツインテール……結晶ルビィだわ…!)


ヨハネは岩場に降りてそっと忍び寄る


ヨハネ「………」ソロ-リ


結晶ルビィ「………!」



結晶ルビィ「ピギイ!」ササササッ



ヨハネ「あ!待ちなさい……!」ダダダッ



ヨハネ「てぇいっ!」ブン


ズバッ


結晶ルビィ「オネエチャ…」コテン


ヨハネ「う……なんか凄い罪悪感が…」

シュウウウ


ヨハネ「あ!これが光るラブカストーン!?」


結晶ルビィがきえた場所に光り輝くハート型の石が現れた


ヨハネ「よし、これをあのびしょ濡れの鍛冶屋のところに持っていけばまたモーリオンブレードを強化してもらえるわね!」



ヨハネ「ん?」


結晶ルビィ「ピ、ピギイ!」ササササッ



ヨハネ「もう1匹いた!」ダダダッ



……………………


ヨハネ「まさか不幸なヨハネが貴重な光るラブカストーンが2つ手に入れるとは……これは世界の崩壊の前兆かもしれないわ」



ヨハネ「実際もう世界は崩壊しかけてるけど……」


ヨハネは岩場を抜けその先の橋を渡る
すると目の前には大きな長い階段が現れた


ヨハネ「あのリトルデーモンたちはたしか不死街にいた…」

階段の上のほうを見上げると教導師に先導されて背中に亡者を詰めた籠を背負った一行が階段を上っていくところだった



ヨハネ「生贄を運んできたってことかしら……ついに深みの病院に着いてしまったようね…!」


ヨハネ「あ、ご丁寧に階段の前に篝火があるじゃない…一旦祭祀場に戻って準備してきたほうがよさそうだわ」


ボウッ

BONFIRE LIT


シュウウウウウウ

死闘の気配を感じ、ヨハネは一旦祭祀場で身支度を整えることにした


今回はここまでです!
読んでくださっている方ありがとうございます、誤字脱字だらけの駄文乱文ですがよろしければお付き合いくださいm(._.)m

丸太の亡者を初めて見た時は心の中で彼岸島かよ!とツッコんでました(笑)
次回は祭祀場での会話のあと深みの病院(深みの聖堂)の攻略です

…………………

ー火継ぎの祭祀場ー

ヨハネ「さて、やっぱりまずは鍛冶屋に………」

スタスタ


ミト「ちょっと待った~!」


ヨハネ「わっ!?何よ急に!」



ミト「急にもなにも、なんでいつもあたしの前をスルーして行くのさ!」



ヨハネ「え……だって特に用事ないし…」


ミト「冷たいな~……あたしだって商売人なんだからさ、何か買ってもらわないと暮らしていけないわけよ」



ミト「だからさ、人助けだと思ってなんか買ってかない?いろいろ揃ってるよ?」



ヨハネ「う~ん……そう言われてもね~」


しいたけ「ハッ…ハッ…ハッ」フリフリ



ヨハネ「じゃあこの地獄の番犬ケルベロスをいただくわ」ナデナデ



ミト「それはあたしのペットだから売り物じゃないって!」



ヨハネ「それは残念……じゃあどれにしようかしら……」



ヨハネ(どうしよう……なんか適当に安いの買って満足してもらお…)



ヨハネ「じゃあ…この松明を一本もらうわ」



ミト「松明一本だけ!?」



ミト「ほら!めったに見れない祭祀場の裏側が見れる塔の鍵も今ならたったの2万ソウル!お買い得だよ?」



ヨハネ「高すぎるわよ!」



ミト「ちぇ~……ケチな子だなぁ」

………………


ヨハネ「おはヨハネ~」


カン!カン!


カナンドレイ「誰かと思ったらヨハネか~、どうしたの?ハグしたくなって帰ってきちゃった?」



ヨハネ「なんでそうなるのよ……ほらこれ、自力で手に入れてきたわよ!」



カナンドレイ「光るラブカストーンを2つも?すごいじゃんおめでとう♪」ハグッ



ヨハネ「だ~!だからやめなさいって!」



カナンドレイ「じゃあ早速この2個の光るラブカストーンでヨハネのモーリオンブレードを鍛えてあげるよ」



ヨハネ「え?2個とも使っちゃうの?」



カナンドレイ「より強くするためには必要な石の数が増えていっちゃうんだよね~、次は4個くらい必要かな」



ヨハネ「4個ってことは単純に倍ね……これは当分先になりそうだわ」



カナンドレイ「まあ気長に旅してればきっとそのうち集まるよ♪」



ヨハネ「そんなものかしら…」



カナンドレイ「じゃ、鍛えてくるから剣は預かるね!楽しみに待っててよ♪」


ヨハネ「頼んだわよ♪」



………………………


ヨシミ「ああ…帰られたのですね英雄様、旅のほうは順調ですか?」



ヨハネ「そうね、遂にニシキノマッキのいる深みの病院に辿り着いたわ」



ヨシミ「それはそれは!ではヨハネ様がニシキノマッキを倒せば、女王への貴重な一歩ということになりますね」



ヨハネ「ふふふ……堕天使ヨハネの時代が始まろうとしているのね」



ヨシミ「わたくしもそれを望んでおります……わたしにできることであればなんでもお申し付けください」



ヨハネ「じゃあ……いつものアレを頼むわ」



ヨシミ「いつものといいますと?」



ヨハネ「決まってるじゃない、ヨハネの本当の力を解放するのよ…!」



ヨシミ「ふふ……ヨハネ様もお好きですね」



ヨシミ「では!」


シュウウウウウウウ……


暗い穴を1つ手に入れた(3つ目)


ヨハネ「クックック……力が解き放たれていくのを感じるわ…!」


ヨシミ(いずれすべて……おわかりになる)



……………………

火防女アリサ「主なきソウルの力があなたのものとなりました、初めてお会いした時よりもかなりお強くなられていると思います!」


ヨハネ「ヨハネは日々進化し続けているのよ…」



火防女アリサ「恐れ入りますが灰の方、いつもいらっしゃるあなたの武勇伝や素晴らしさを説いてくださる方はどこに行ってしまわれたのですか?」


ヨハネ(下魔のことね……)



火防女アリサ「いつも灰の方と一緒に帰って来ると真っ先に私のところにきて素敵なお話を聞かせてくださっていたのに……今日はきてくださいません」



ヨハネ「下魔はさらわれてしまったわ……冷えてる谷の騎士にね」



火防女アリサ「そんな……!あの人は無事なのですか?」


ヨハネ(人…!?)



ヨハネ「無事かはわからない……でもヨハネは無事だと信じてる!だから必ず助け出してみせるわ」



火防女アリサ「私もあの人のお帰りを待っています……」



ヨハネ「ええ……あなたのためにもね」グッ


火防女アリサ「………」



ヨハネ「ところであなた、さっき下魔のこと人って言ってたけど……」



火防女アリサ「はい……それがなにか?」



ヨハネ(この子……もしかして)


ヨハネ「いえ……なんでもないわ」



火防女アリサ「ふふふ……私にはあなたが今何を考えていたかわかります」


ヨハネ「え?」



火防女アリサ「あなたがお気づきになった通り……私は光を失っています」


ヨハネ「やっぱり…」



火防女アリサ「でもご心配には及びません、これは生まれ持っての火防女の宿命……私は不自由など感じていません」


ヨハネ(冠とうか仮面というか……あれで目を隠しているのはそのせいだったのね……)


火防女アリサ「どうか私のことなど気になさらず……あなた様はあなた様の使命を、玉座に女王を連れもどしてください」



ヨハネ「わかったわ……」



ヨハネ(ノゾレスは寝ちゃってるし、ツバサウッドはまた墓の前でしょう……2人にはまた後で、ヨハネが無事に帰ってこれたら話すことにするわ)



ヨハネ「じゃあ、行ってくるわね…!」


火防女「はい……あなたに火の導きがあらんことを」



カナンドレイ「はいこれ!」スッ



ヨハネ「あ、もう武器の強化終わってたのね!」


カナンドレイ「なんか火防女とお取込み中みたいだったからさ、離れたところで待機してたよ」



ヨハネ「ありがとう♪またラブカストーンを集めてくるからその時は頼むわね」



カナンドレイ「もちろん!いつでも歓迎だよ♪」



ヨハネ「じゃあニシキノマッキを倒しに行ってくる、勝者を讃える準備をして待っていなさい!」



カナンドレイ「はいはい♪」



火防女アリサ「どうかご無事で!」ペコッ



シュウウウウウ……


………………………

ー深みの病院ー

シュウウウウウウ……

ヨハネ「さて、まずは敷地内に入らないと……」


スタスタ


ヨハネ(階段長すぎ……登りきるのも一苦労ね)


長い長い階段をのぼきると林に出る

険しい階段を登っても、まだ病院には入れさせてもらえないようだ


ヨハネ「ふぅ……階段だけでもう疲れちゃった」

ヒュッ!

ヒュッ!


ヨハネ「!」


ヨハネの足元や近くの木に矢が突き刺さる

ヨハネ「ボウガン持ちのリトルデーモンね……」


ヨハネ(幸い木がたくさんあるからしのげそうだけど……)


ヨハネ「………」キョロキョロ


ヨハネ(あっちが地面……溝みたいに掘られてるわね)


林の中に塹壕のような物が掘られてる

ヨハネ(向こうの道まで繋がってそう……駆け抜ければこの林を出られるかしら)



ヨハネ「行こう…!」


タッタッタッタッ

ヒュン!


頭上を矢が飛び交う中をなるべく身を低くして駆け抜ける



ヨハネ(よかった…このままこの溝は林の向こうまで続いてる!気づかないで正面から向かってたら面倒なことになってたわね……)

タッタッタッタッタッ


飢えた犬「ワン!ワン!」ダダダッ

飢えた犬「グルルル………!」ダダダッ


ヨハネ「!?」


ヨハネ(げっ!犬どもが後ろからきてるじゃない…!)



林を抜けて小さな門くぐる、ここからは病院の敷地内のようだ



ヨハネ(あそこに建物がある!ひとまずあの中に逃げごむわ…)


タッタッタッタッ


亡者「………」フラフラ



後ろの犬を気にしつつ建物を目指していると道の端から亡者がゆらりと現れた

黒いローブに身を包み、手には火を持っている



ヨハネ「邪魔をするなら斬るまでよ…!」



亡者「………!」ボワアアアア



ヨハネ「!?」


ヨハネは目の前の亡者の行動に目を疑った
亡者は手に持っていた火で自らを炎に包んだのだ


ヨハネ「どういうつもりなの…!?」



亡者「ハグ…シヨ?」ボオオオオ



ダダダッ


火だるまのまま両手を広げこちらに全速力で駆け寄ってくる亡者


亡者「ハグ!」ガハッ


ヨハネ「ひぃっ!」シュバッ



亡者「アアア……」ズザザザ



ヨハネは飛びかかってきた亡者をなんとかかわし、建物の扉に向かって走る


ドカーン!!


ヨハネ「うわ!?」ドガッ


背後での突然の爆発
熱風で衝撃でヨハネは転んでしまう


ヨハネ「なに!?さっきのリトルデーモンが爆発した…?」



慌てて後ろを振り返るとひび割れた地面の上に亡者の着ていたローブだけが燃えている



ヨハネ(服に火薬を仕込んで自分もろともってこと…?捕まってたらそのまま一緒に木っ端微塵になってたわ…)ゾワッ


飢えた犬「ワン!ワン!」タッタッタッタッ



ヨハネ「犬がすぐそこまで…!」


ヨハネ(お願い……!扉が開かないなんてオチはやめてよ…)


ヨハネ「うぐぐぐ…」ギギギギィ



ヨハネ(開く!助かった!)


バタン!!


清拭の小教会

ヨハネは駆け込むなり急いで扉を閉め、なんとか危機を逃れられたことに安堵する


ワンワン!ワンワン!


ヨハネ(外にまだ犬がいるわね……諦めていなくなってくれるまでとりあえずここから出られないわね)



ヨハネ「ここは……教会なのかしら」



ヨハネ(真ん中の道を挟んで両側に長い椅子が幾つも……教会で間違いなさそうだけど、でもなんで病院に教会が?)


ヨハネ「あ、篝火があるじゃない!さっきの爆発で怪我もしたしちょうどよかった…」


ボウッ


BONFIRE LIT


ヨハネ「………」チョコン


ヨハネ「ふぅ……生き返るわ…」


火の温もりによりヨハネの傷が癒えていく


ヨハネ(一応エスト瓶は持ってるけどさっきみたいな緊急時には飲んでる暇がないのよね…)


ヨハネ「さて、休憩できたし先に進まないと」スクッ


ヨハネ「…………」キョロキョロ



ヨハネ「奥に扉が2つ……さっきこの教会の裏に病院が見えたから、この扉が近道だったりして…」



ヨハネ「ふぬぬ……!」



ヨハネ「開かない……反対側は?」

テクテク


ヨハネ「んしょ……!」



ヨハネ「両方開かない……結局外に出て遠回りしなきゃいけないみたいね…」


ヨハネ「………」



ヨハネ「犬の声もしなくなった……外に出ても大丈夫かしら」


ギギギギイ…


ヨハネ「敵はいないかしら……」キョロキョロ


祈る亡者たち「………」


ヨハネ「お祈りしてるやつらだけね……先に進みましょう」



???「お~い!誰か~!誰かいませんか~!」



ヨハネ(ん?聞き覚えのある声……)



ヨハネ「どこにいるの?」



???「ここだよ~!井戸の中だよ~!」


教会の入り口の脇に掘られた井戸の中に声の主はいるようだ


ヨハネ(かなり深い井戸ね…暗くて底が見えないから姿が見えないわ)


ヨハネは井戸の中に向かって声をかける


ヨハネ「大丈夫~?」


チーカ「その声はヨハネちゃん?久しぶりだね~!こんな所でまた会えるなんで奇跡だよ!」


ヨハネ「チーカ!?井戸の中に入って何してるのよ?」



チーカ「それが……」


…………………

数時間前


チーカ「あれ~?私はウミシールを目指してたんだけど……道を間違えちゃったのかな……」


チーカ「向こうに見えるのは病院かな?絶対ウミシールと方向が違うよ……引き返そう」

テクテク

チーカ「でもずっと歩いてきたからさすがに疲れてきちゃった……あの井戸の所にでも座ってちょっと休もっかな……」


チョコン


チーカ「ふわぁ~……」ウトウト


???「あれぇ~、旅の方ですかぁ?」



チーカ「ん?」パチッ


???「随分と珍しい鎧を着てるわねぇ」


???(これはなかなか高く売れそう……!)


チーカバルド「これはみかんの鎧だよ?ウチウラの騎士はみんなこの鎧を着てるんだ~、かわいくてすっごく気に入ってるんだよ♪」



???(最高にアホそうな面してるわ……これならきっと楽勝ね!)



???「す~ごっくプリティな鎧を見かけたから思わず声かけちゃった☆」



チーカ「あなたもこの鎧の素晴らしさがわかるの?変とか言われることが多いから嬉しいな~♪きっとあなたはとっても心の綺麗な人なんだね!」


???「わかる?みんなにもよく言われるから困っちゃう☆」クスクス



???「ねえお願い!その鎧、もぉ~っと近くでじっくり見たいな♪」


チーカ「近くで?いいよ!」


???(こいつには警戒心という概念はないのかしら……よくここまで生きてこられたものね)


???「うーん……」ジ-…


???「なるほど……」ジ-…



チーカ「あはは…あんまりまじまじと見られると照れちゃうな~」


???「ねぇ?もしよかったら鎧の内側の作りも見せてもらいたいな~」



チーカ「内側?でも内側を見るには鎧を脱がないと…」


???「じゃあ脱いで☆」


チーカ「ええっ!でもここ外だし……それに私この下は下着だから…///」モジモジ


???「別に女同士なんだから見られたって問題ないでしょ?」ギロッ



チーカ「で……でもぉ」



???「私たち以外に今は誰もいないわ、わかったらさっさと脱ぐ!」



チーカ「わ、わかったよ~…脱ぐからそんなに焦らないで!あと一応後ろ向いててね?やっぱり恥ずかしいから…」



???「しかたないわねぇ~」クルッ



チーカ「うぅ……なんかさっきとキャラが変わってるよ……」ヌギヌギ



???「脱げた?」



チーカ「終わったよ!」


???「………」ニヤリ


チーカ「?」



???「かかったなアホが!」ダダダッ


チーカ「え!?」


???「ウルトララブにこヒップアターック!!」


ドン!


チーカ「わあ!」フラッ


チーカ「あ…」


チーカ「ああああああ!落ちるううううううぅぅ!!!」ヒュウウウン


ドガッ!


チーカ「いたた…」


???「にっこにっこに~!井戸の中の居心地はどうかしら?」



チーカ「ひどい!なんでこんなことするの!?」



???「そんなの、あんたの鎧が欲しかったからに決まってるでしょ?無闇に人を信用するからこうなるの、いい勉強になったわね!」



チーカ「私の鎧返して!」



???「誰が返すもんですか!これはもう私の大事な店の商品よ?」


???「返して欲しければソウルを払ってもらうわ、まあその深い井戸から出られればの話だけど!」



チーカ「なんで!?そもそも私の鎧なのに~!」



???「じゃあね~!おバカな騎士さん、せいぜいそこで死ぬまで騒いでなさい!」


チーカ「あ、待ってよ!」



???「あーはっはっは!これだからバカを騙すのはやめられないにこ☆」スタスタ



シ-ン…



チーカ「わあ~ん!誰か~!」

…………………


チーカ「ということが……」


ヨハネ「はぁ……だからいつか危険な目にあうって言ったのに…」



チーカ「ねえヨハネちゃん、私の鎧見てない?」



ヨハネ「盗まれたんでしょ?残念だけど見てないわ…」



チーカ「どうしよ~!下着姿じゃ恥ずかしくて外に出れないよ……」



ヨハネ「それよりまずはこの井戸から脱出することを考えたほうがいいと思うけど」



チーカ「出るのはきっとなんとかなるよ、でも鎧が~!」



ヨハネ「あくまで下着姿の恥ずかしさを無くすほうが優先なのね…」



チーカ「自作するにしても材料なんてないしなぁ」



ヨハネ「それはさすがに無理でしょ…」


チーカ「まあいいや!果報は寝て待てっていうからね、きっと一眠りすれば素敵なアイディアが浮かぶと思う♪」



ヨハネ「また寝るの!?」



チーカ「じゃあおやすみ~」




ヨハネ「ちょっと!そんなとこで寝て大丈夫なの?」



チーカ「すぴ~……」



ヨハネ「もう寝てるし…」



ヨハネ「はぁ……とりあえずヨハネが鎧を取り返せたらまた戻ってきましょう…その時までチーカがここにいればいいけど…」


スタスタ


ヨハネは仕方なくチーカを置いて本来の目的である病院に向かうことにした

ヨハネ「ここは……墓地?」


仕方なく迂回するルートを選んだヨハネが道を進むと墓地に入った

病院はこの墓地がある谷の下にあり、病院の上層階と墓地が繋がっているようだ


ヨハネ「病院の周りが墓地ってどうかと思うけど…」


ヨハネ「病院に近づくには墓地を抜けるしかないわね……なんか嫌な予感しかしないけど…」


ヨハネは嫌々ながら墓地に足を踏み入れていった

3日ほど空けてしまいましたが今回はここまでですm(._.)m

前回結晶ルビィちゃんのことを果南ちゃんのセリフの中で原作の名前の結晶トカゲと書いてしまう痛恨のミス……
地名や人名をかなりもじってるのでついつい元の名前を書きそうになります( ;´Д`)

続きはまた火曜日に!


ヨハネ「何も出てこないのが逆に不気味ね…」

テクテク


ガシッ!

ヨハネ「!?」


突然地面から飛び出した腕に足を掴まれてしまう


ヨハネ「いや…!離しなさい!」ゲシッ


掴まれていないもう一方の足で腕を蹴り、なんとか振りほどく



甦る死体たち「アアア………」ズズズズズ……


ヨハネ「はぁ……これは最高だわ」


ヨハネ(次から次へと地面から白いゾンビみたいなやつが……!)


墓から甦った死体たちがゆっくりとヨハネに向かってくる


ヨハネ「どきなさい!」

ザシュ!ザシュ!


甦る死体「」ドサッ



ヨハネ「数が多いだけで大したことないわね……!」


ザシュ!


甦る死体「」ドサッ



ヨハネは迫りくる死体をどんどん斬り倒していく


甦る死体たち「………」ズズズズズ


ヨハネ「まだ出てくるの!?」


ザシュ!


甦る死体「」



ヨハネ(駄目だ……キリがない!)

ダダダダッ


甦る死体「アア!」ブン



ヨハネ「……!」サッ


タタタッ


ヨハネは増え続ける敵を倒すのを諦め、死体たちで溢れかえる道を駆け抜ける


ヨハネ「ここまでは追ってこないようね…」



ヨハネ(上にも道があったけどとりあえず谷を駆け下りてきちゃった……このまま病院の壁沿いに進んで入り口を見つけたいわね)


スタスタ


ヨハネ「なにかこっちに向かってくる…」



ヨハネが進む道の先から大きなトカゲのような生物がこちらに這って移動してきているのが見える


ベチャッ ベチャッ


ヨハネ「体からなにかが飛び散ってる…?」



近づいてくるにつれて徐々にその正体がわかってきた


ヨハネ「あれ……トカゲなんかじゃないわ…!」


トカゲのように見えていたのは数え切れない程のヒルの集合体だった

ヒルが集まってトカゲのような形をなし、その体から常に飛び散っているのもまたヒルだった


ヨハネ「来る…!」スチャ


ヒルの集合体はヨハネに近づくと腕を模した部位でヨハネに殴りかかってきた



ヨハネ「……!」


ズバッ


ヨハネはその腕を剣で受け止めた

剣にあたった部分が切れて飛んでいくがヨハネの体にもヒルが付着する


ヨハネ(接近戦じゃ全身ヒルだらけになっちゃう…)



ヨハネ(ここは距離をとって魔法で…!)


ボウッ



ヨハネ「ヒルは火に弱いと聞いたことがあるわ、きっとこいつだって例外じゃないはずよ!」


キシャアアアアアア…



火球が直撃するとトカゲを模したヒルたちは崩れ溶けるように消えていく


ヨハネ「ふぅ……早く入り口を見つけないと」


テクテク


ヨハネ「な……なんでかしら……体に力が入らなくなってきた…」


先程の戦闘から少しの距離を歩いただけだがヨハネの足取りはふらつき、今にも倒れてしまいそうだ



ヨハネ「どういう……こと…」フラフラ



ヨハネ「!」



ヨハネが何気なく見た腕には血を吸って大きく膨れ上がったヒルが付いていた


ヨハネ「足にもついてる…!こいつらのせいね…」


先程戦った時に体についたヒルがヨハネの血を奪っていたのだった


ヨハネ「くっ……離れなさい…」


手で引き剥がそうとするがびくともしない


ヨハネ「そうだ……松明…!」



ヨハネは松明を持っていたことを思い出し、すかさず火を灯すと腕や足についたヒルに押し付ける


ジュッ

ポトポト


ヨハネ(取れた……まさか適当に買った松明が役に立つとはね…)



ヨハネ「体力をかなり奪われたわ……回復しないと」


ヨハネ「……」エストビンゴクゴク


ヨハネ「……」チラッ



ヨハネ「ん?あれはもしや…」



結晶ルビィ「~♪」



赤いツインテール少女がトカゲの着ぐるみを着たような生き物が草むらで遊んでいる


ヨハネ(今日のヨハネは今まで不幸だったぶんを取り返すかのごとくツいてるわね!)



結晶ルビィ「!」



ヨハネ「あ」



結晶ルビィ「ピギィ!」ササササッ



ヨハネ「早く追いつかないと逃げられる!」ダダダッ



結晶ルビィを追いかけて角を曲がると、地面から結晶の生えた不思議な光景が広がっていた


ヨハネ「これは…!」


そして結晶ルビィが逃げる先には結晶に囲まれて眠る巨大な生き物がいた


結晶ダイヤ「デスワァ……zzz」



ヨハネ(あれは……でかいペンギン!?)



体長数メートルはあろうかというペンギンが気持ちよさそうに眠っている


結晶ルビィ「……」ササササッ



ヨハネ「あ、あの子まさか…!」



結晶ルビィ「……」チラッ



ヨハネ「わ、わかったわ!もうあなたのことは諦めて帰るから、ここは穏便にいきましょう……ね?」



結晶ルビィ「オネエチャオキテ!」トントン



結晶ダイヤ「ナンデスノ……?」パチッ


ヨハネ(ああああああ!)



結晶ルビィ「アノコガルビィノコトイジメユ!」ユビサシ



結晶ダイヤ「……」ギロッ



ヨハネ「ひっ…」アトズサリ


結晶ダイヤ「ブッブーデスワァ!」


ドドドドドド


巨大なペンギンは周囲に結晶を発生させながら腹で地面を猛スピードで滑って突進してきた


ヨハネ「うわああ!」


ズズーン!!


ヨハネはなんとかかわしたが、突進に直撃した岩は砕け散り、何本もの木が折れて吹き飛んだ


ヨハネ「ごめんなさいいいい!もうしないから許してぇ!!」ダダダッ


ヨハネ敗走



結晶ルビィ「オネエチャツヨイ!」


結晶ダイヤ「トウゼンデスワ!」



…………………


ヨハネ「はあ……はあ……あのペンギン……なんて恐ろしい化物なの…」



ヨハネ「そもそもなんであの小さいやつの姉がペンギンなのよ…」



ヨハネ(結局元の場所に戻ってきちゃったわね…)


ヨハネ(あのペンギンがいたところで行き止まりみたいだし、入り口もなかったから今度は上の道を進みましょう)


スタスタ



ヨハネ「あそこに入り口が見えるじゃない…最初からこっちにきてればよかった…」



上の道は墓地が橋のようになって病院の入り口まで続いている


甦る死体たち「………」ズズズズズ


ヨハネ「またこいつらね…!相手はしてられない…このまま一気に入り口まで行く!」


タッタッタッタッ



墓守亡者「……」ユラリ


病院の入り口の近くまで来たところで双刀の亡者が立ち塞がる


ヨハネ「強敵の予感がするわ…!後ろからも白いやつらが追ってきてるのに!」


ヨハネ(前には強敵……戦ってる間に後ろのやつらに追いつかれてしまうわ……どうすれば!)


ヒュウウウ!


ドゴオオン!


墓守亡者「」



ヨハネ「!?」


目の前にいた墓守亡者は突然飛んできた大矢に潰された


ヨハネ(この矢、もしかして!)


塔の上の巨人「ともだち……まもる」フリフリ


ヨハネが矢の飛来したほうを見ると、遥か遠くに見える不死街の塔の上で巨人が手を振っていた



ヨハネ「ありがとう……!恩に着るわ!」



ヨハネは再び病院の入り口に向かって走り出す


ドゴオオン!


ドゴオオン!


甦る死体たち「」


ヨハネの先にいる敵も巨人の大矢が次々と仕留めていく


ヨハネ(もつべきものは友ね…あの時の巨人にこんなところで助けられれとは…)


ヨハネ(着いた…!)


ヨハネ「ん…!」ギギギィ



ヨハネは遂に病院の巨大な扉を開け中に入ることができた


病院内

ヨハネ「ここが深みの病院……」


ヨハネ「外から見ててわかってたけどかなり広い建物ね…」


ヨハネが入ってきたのは病院の3階だ
病院の中央は大きなL字型の吹き抜けになっていて、今ヨハネのいる突き出たテラスのような場所から下の階の様子も伺える



ヨハネ「あれは……巨人……?」


最下層の泥沼のような場所で巨人が丸くなって眠っているのが見える


ヨハネ「あれは絶対起こしては駄目なやつだわ……塔の巨人のようにうまくいくとは限らないし」


ヨハネ「……」キョロキョロ


ヨハネ「この病院のどこかにニシキノマッキがいるのよね……」



ヨハネ「………」ジ-…



ヨハネ「あの奥が怪しいわ…」



ヨハネの視線は建物の2階、広場のような場所に祭壇があり、その前に手術衣をきた者たちがひれ伏している

その奥にある部屋が怪しいとヨハネは考えた


ヨハネ「病院っていうけどまるで宗教施設ね…ニシキノマッキはどれだけ崇められてるのよ…」


階下に見えた祭壇もそうだが、建物の壁などあらゆる場所にニシキノマッキの肖像画が飾られている


ヨハネ「ただ問題なのはあの祭壇の広場、巨人の後ろにある階段から上に上がった場所なのよね……」


ここから見る限りではどうやら巨人の眠る沼にある階段からしか広場には行けそうにない



ヨハネ「どうにか別の場所からあそこに行けないかしら……」


ヨハネ「まあ考えててもダメね…!とりあえず下を目指して探索するわ!」


ベチャッ!


ヨハネ「?」

ヨハネが一歩踏み出したその時、ヨハネのさっきまでいた場所に赤い何かが落ちてきた


ニシキノマッキの果肉「……」モゾモゾ


ヨハネ「血!?」


ヨハネ「……」クンクン


ヨハネ「違う…この匂い、トマトだ」


ニシキノマッキの果肉はトマトピューレ化したニシキノマッキの下半身から分裂した生命体である

スライムのような性質をもち、頭上から落下して標的に襲いかかるのだ


ヨハネ「あと一瞬歩くのが遅かったら…」ゾクッ


ニシキノマッキの果肉「……」フルフル



ヨハネ「こういうやつには剣はあまり効かなそうよね…」


ボウッ


ニシキノマッキの果肉「」ジュワアアア


ヨハネ「やっぱり火が有効ね……ちょっと焼きトマトのいい匂いがするのがなんとも…」



ヨハネ「これからは頭上にも気をつけていかなきゃ…!」

テクテク


ヨハネが3階を探索すると見覚えのあるみかんの鎧が目の前に現れた


チーカ?「………」


ヨハネ「あれ!?チーカじゃない!あなた井戸から出てこれたのね!」


チーカ?「え…?あ、ああそうだよ!なんとか自力で脱出して鎧も取り返したんだ~!」


チーカ?(こいつ……あの騎士の知り合いみたいね)


ヨハネ「あれ、あんた声変わった?」


チーカ?「井戸の中にいたから風邪引いちゃったのかも、あはは…」アセアセ


ヨハネ「あんたもやる時はやるのね~」


ヨハネ「それにしてもさっきヨハネと会ったのにもう鎧も取り返してこんな場所にいるなんて……」ジ-…



チーカ?(まさか……ばれた!?)


ヨハネ「まさかあなた空間移動術の使い手だったの!?」


チーカ?(ただのアホだった……)


ヨハネ「で、今度はこんな所に突っ立っちゃってまた悩み事?」



チーカ?「そうなんだよ~…向こう側に宝物庫があるみたいなんだけど行き方がわからなくて…」


ヨハネ「宝物庫?」


みかんの鎧が指差すのはここと同じ階の反対側、しかしそちらとこちらを繋ぐような道はなく、吹き抜けがぽっかりと空いているだけである…」


チーカ?「橋でもかかってたら向こうに渡れるのにね……」



ヨハネ「でも必ず行き方はあるはずよ、ヨハネに任せなさい!必ず見つけてみせるから」



チーカ?「ヨハネちゃんは頼もしいな~」



ヨハネ「灯台下暗しって言葉があるからね、まずは近くに何かヒントがないか探しましょうよ」


チーカ?「私は向こうに何かありそうな気がする~」シラ-


ヨハネ「しかたがないわね、じゃあヨハネはあっちを見てくるわ」スタスタ



ヨハネ「あ!レバー発見!」



チーカ?「わーヨハネちゃんすごーい(棒)」



ヨハネ「堕天使ヨハネならこの程度造作もないわ…」ビシッ



チーカ?(堕天使って……ぷぷぷ)


ヨハネ「レバー動かすわよ!」


チーカ?「オッケー!」


ガコン


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


ヨハネ「下から橋が!」


チーカ?「やったー!」


最下層の床の一部がせり上がり、こちらと向こう側を繋ぐ橋が出来上がった



ヨハネ「さあ、向こうに宝物庫があるんでしょう?一緒に行きましょ?」


チーカ?「うん!でもこうして向こうに渡れるようになったのもヨハネちゃんのお陰、だからヨハネちゃんが先に渡っていいよ」



ヨハネ「え?別に一緒に渡ってもいいじゃない」



チーカ?「ほら、この橋細いし渡るの怖いなあ……先にヨハネちゃんが渡ってお手本を…」



ヨハネ「そう……ならヨハネが先に渡るわ…」スタスタ


チーカ?「………」



ヨハネ「細いから結構怖いわ……チーカも渡る時気をつけてね!」


ヨハネ(こんな邪悪な病院よ……もしかしたら宝物庫には悪魔召喚の儀式の道具があったりして…!)ワクワク


ヨハネはゆっくりと橋の真ん中まで到達した


ヨハネ「ほら、チーカ!もうヨハネは真ん中まで来たからチーカも来れば?


チーカ?「………」ニヤリ



ヨハネ「チーカ?」


ドドオオン!!



ヨハネ「ひっ!なに!?」



突如響いた爆発音
それは仕掛けられた爆薬によって橋を操作するレバーが爆破され破壊された音だった


ゴゴゴゴゴゴゴ


ヨハネ「あれ?橋が下がっていく~!」


レバーが破壊され、橋は下へと降下していく


ヨハネ「ちょっとチーカ!どういうつもりよ!?」



チーカ?「………」カポッ


みかんの鎧の騎士は被っていたヘルムを外し正体を現した


ヨハネ「!?」


不屈のニッコ(演 矢澤にこ)「にっこにっこに~♪あんたもあの騎士と同じホームラン級のバカだわ!」



ヨハネ「な!?まさかあんたが鎧を盗んだ犯人!?」


ニッコ「それ以外考えられないでしょ!あんたはこのニッコにまんまと嵌められたのよ!」



ヨハネ「覚えてなさいよ!必ずとっ捕まえてやるわ!」


橋は最下層へと向かってどんどん下がりニッコのいる階と離れていく


ニッコ「残念だけどあんたとはもうお別れよ?ほらあれ」ユビサシ



ヨハネ「え……」


ドシ-ンドシ-ン

巨人「………」


先程の爆発音で巨人は目覚め、はヨハネの元へと向かっていた


ニッコ「せいぜい巨人と仲良くすることね!ぬぃっこぬぃっこぬぃ~!ぬぃ~ぬぃ~ぬぃ~!」



ヨハネ「むっか~!この堕天使ヨハネを敵に回したこと、絶対後悔させてやるんだからぁ~!」



ニッコ「負け犬ぬ遠吠えは耳に心地いいにこ~☆せいぜい頑張ることね!」



ヨハネ「なんでこんなことに~!」
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira121758.jpg



今回はここまでです!
今回は特に本来のゲームの方とは進行ルートを変え、かなりカットしています
続きはまた後日!



巨人「グオオ…」スウッ


巨人はゆっくりと腕を振り上げる


ヨハネ「は…!このままじゃ叩き潰される…!」


ヨハネ「……」チラッ


ヨハネ(まだ高さはあるけど……やるしかない!)


巨人「……!」ブン


ヨハネ「とうっ!」ヒュンッ


ドガアアン!


ドスッ


ヨハネ「いたた……やっぱり飛び降りるには高すぎたかしら……」



ヨハネ(でも潰されて死ぬよりはよっぽどましだわ)



巨人「オオオ!」

ドシ-ンドシ-ン


ヨハネ「とりあえずどこかに逃げ込まないと…!」

タッタッタッタッ


ヨハネは椅子が並べられた部屋を見つけそこに逃げ込んだ
さすがに体の大きい巨人では部屋まで入ってくることはできない


ヨハネ「はぁ…とりあえず巨人からは逃げ切れたけど面倒ごとが増えてしまったわ…」



ヨハネ「ニシキノマッキを倒すのはもちろんだけどあのツインテールの女…!あいつをなんとかしないと」



ヨハネ「あいつはどこに逃げたのかしらね…」


ヨハネは巨人がいなくなったことを確認すると、再び最下層のL字型の広場にでてそこから上の階の様子を眺めた


ニッコ「ふわぁ~…暇になったわね、また騙しがいのありそうなバカがこないかしら」



ヨハネ「あいつ……いつの間にあそこに…」


ヨハネ「いったいどうやって向こう側へ渡っ他のかしら…橋はもうないなに」



3階のヨハネが渡ろうとしていた先、どうやって辿り着いたのか、みかんの鎧を脱ぎ、革の鎧を着たニッコが座り込んで休んでいるのが見える



ヨハネ「うーん…さっきまでヨハネがいた場所から向こうにいけるとすると…」



ヨハネ(もしかして…あそこを使えば…)


ヨハネが見ているのはさっきまでいた3階よりも更に上、そこには天井と屋根を支える骨組みがはりめぐらされていた



ヨハネ(きっとあの骨組みを渡れば橋がなくても向こうに渡れる…むしろそれ以外考えられない…!)


ヨハネ「向こう側にはまだ行ってないし…あわよくば祭壇の広場に繋がる道もあればいいけど…」


ヨハネは病院の上層階を目指すことにした


…………………

病院3階

ヨハネ「結構入り組んでたけどなんとか元の場所まで戻ってこれたわ…」


道中ではニシキノマッキの果肉や亡者奴隷らの襲撃を受けたが、今のヨハネにはもはや敵ではない



ヨハネ「ここから骨組みに登って……」ヨジヨジ



ヨハネ「うわ……高い」ブルッ


骨組みから最下層までは数十メートルはある
落ちてしまえば死は免れない


ヨハネ「………」ソロ-リ


ヨハネ「下は見ちゃだめよ…こういう時は…」


数分後


ヨハネ(な、なんとかあいつがいる場所の真上まで来たわ…)


途中うっかり下を見てしまい、足がすくんでしばらく身動きが取れなくなってしまったのは秘密である


ニッコ「♪ぴょんぴょこぴょんぴょんか~わいい~、髪の毛が跳ねてぴょんぴょこ~♪」




ヨハネ(呑気に歌なんて歌っちゃって、今に見てなさい…!)



ニッコ「~♪」



ヨハネ「はあっ!」ピョン



にこ「!?」


シュタッ!


ヨハネ「堕天降臨…!!」



ニッコ「な!?あんたどうやって!」


ヨハネ「あんたに会うために地獄の底から這い上がってきたわよ…」


ニッコ「う…」


ヨハネ「さ~て…どうやってこらしめてやろうかしら…」ゴゴゴゴゴ



ニッコ「ひぃっ!」



ニッコ「え…え~っと、確かあんた初対面よね~……私は不屈のニッコ、にこにーと呼んでくれて構わないわ…」




ヨハネ「は!?とぼけるんじゃないわよ!」



ニッコ「な、なんのことかわからないにこ~☆ほら…そんな怖い顔しちゃせっかくのかわいい顔が台無しにこよ?」アセアセ



ヨハネ「そう……じゃあ無理やりにでも思い出させてあげましょうか?」


ヨハネは左手のダークハンドをニッコに向かって伸ばす


ニッコ「あわわっ!お、思い出した!思い出したから!暴力は反対よぉ!」



ヨハネ「このヨハネを騙すとは愚かな人間だわ、いったいどういうつもりか説明してもらおうかしら?」ズイッ



ニッコ「あれは……その…私のせいじゃなくて鎧のせいよ!」



ヨハネ「鎧のせい…?」



ニッコ「そうそう!あの鎧を着たらなんか体が操られて……だからほら!もう反省してあの鎧も脱いだわ!」



ヨハネ「じゃあ全部あのみかんの鎧のせいってこと?」



ニッコ「そう!全部あのみかんの鎧に取り憑いた呪いのせいよ…!幸いあんたも無事だったみたいだしこれはノーカウント、ノーカウントよね?」



ヨハネ「そっか……それなら…」


ヨハネ「…ってそんなわけあるか~!!大体鎧が呪われてたら持ち主のチーカはどうなっちゃうのよ!」



ニッコ「ごめんなさいにこおぉぉぉ!!」ドゲザ-



ヨハネ「な!?」



ニッコ「ニッコが全部悪かったわよ!全部私のせい!だから許してちょうだい!」ドゲザ-



ヨハネ「ちょ、ちょっと…土下座なんてやめてよ…!」



ニッコ「許してくれるにこ?」



ヨハネ「完全に許したとは言えないけど…ヨハネも忙しいしあなたにばかりに構ってられないわ、今回は見逃してあげる…」



ニッコ「ほんとに!?」


ヨハネ「今回だけだからね?ただしちゃんと鎧は返してもらうわよ」


ニッコ「ありがとう……」



ヨハネ「はぁ~…やっとニシキノマッキ探しに戻れるわ」


ニッコ「その~…あなたも見たところ火の無い灰よね?」



ヨハネ「そうだけど?」



ニッコ「実は私これでも一応行商人なのよ、だからよかったら品物を見ていかない?」



ヨハネ「いいけど…」



このニッコ、自称行商人であるがその実は墓荒らしであり
他人を罠に嵌めては金品を奪い取り、それを店の品物としている
金目の物とあらば盗みや死体からの剥ぎ取りもいとわない、なんとも欲深い少女である


ニッコ「ちょうどさっき新入荷したものがあるのよ、どう?」


ヨハネ「どれどれ?」


ニッコ「ウチウラヘルム、ウチウラアーマー、ウチウラガントレット、ウチウラレギンス……みかん騎士の装備一式よ!」



ヨハネ「それ全部あんたがチーカから盗んだやつじゃない!」



ニッコ「ふん!盗んだ物だろうとなんだろうともうこれは私のものよ!」


ヨハネ「あんたねぇ…」



ニッコ「私だって生活がかかってんのよ……それに……なんでもない…」


ニッコは何か言いかけたが黙ってしまう


ニッコ「とにかく!タダでは絶対に譲れないわ!こんなこと間違ってるのはわかってる……でも仕方ないのよ…」


ヨハネ(こいつがが盗みを働くのも、何か理由がありそうね…)



ニッコ「もし、それでもタダで持って帰りたいなら私を殺して奪いなさい……!」


ニッコは側に置いてあった愛用の槍と大盾を拾い、構える
その目は覚悟に満ちていた


ヨハネ「………」



ニッコ「私は不屈……何事にも折れない!……やれるもんならやってみなさいよ!」


ヨハネは昂ぶるニッコを制止し、語りかける


ヨハネ「待って、別にヨハネはあなたと戦いたいわけじゃないわ…」


ニッコ「買ってくれるの…?」


ヨハネ「全部でいくら?」


ニッコ「一式で15000ソウルよ…」


ヨハネ(高……でも鎧一式ならそんなものか)


ヨハネ(納得できない部分は正直あるけどチーカのため……それに何か事情がありそうだししかたないわね)


ヨハネ「はい……なけなしのソウルよ、こんな高い買い物初めてかも」


ニッコ「まいどありニコ~☆」


ニッコの顔には先程の気迫はもう消えていた


ヨハネ「ちゃんと商売がしたいなら火継ぎの祭祀場に行けば?そこならヨハネみたいな火の無い灰がよく立ち寄るだろうし……」


ニッコ「ふ~ん……面白そうね、行ってみようかしら」


ヨハネ「じゃあヨハネはもう行くわ…急がないといけないから…!」スタスタ



ニッコ「またよろしくにこ~☆」フリフリ


ニッコ(よかった…これだけあればチビ達に久しぶりに美味しい物を食べさせてあげられそうね…)



ニッコ「さて、私もそろそろ行かなきゃ…」スクッ


ニッコ(それにしてもあのヨハネとかいう女……このニッコを土下座させるとは…)


ニッコ(さっきの恩は確かにあるけど……これはまた別よ!いつか必ず痛い目に遭わせてやるわ…!)



ひとまず丸く収まったかと思いきや、自分を許し、救ってくれた恩人に復讐心を燃やす少女…
このニッコ、実に根に持つタイプである


………………………

ニッコと別れたヨハネは3階を探索していた

道中ヨハネは何者かに倒された病院の護衛騎士の姿を発見する


ヨハネ(既に誰かにやられてるわね……ヨハネの前にも誰かがここに来たってこと?)


テクテク


ヨハネ「あ、リフトがあるわ!どこに繋がってるのかしら」



カチッ


カラカラカラカラ


ヨハネ「下がっていくのね……ヨハネの予想が正しければこの下は…」



亡者たち「………」ドゲザ-



ヨハネ「ふふふ……やっぱり!祭壇の場所に来れたわ!」


リフトを降りた先はヨハネがニシキノマッキがいるだろうと考えていた部屋の前の祭壇の広場だった


ヨハネ「みんな祭壇の上のニシキノマッキの肖像画に向かって土下座してる……改めて見ても異様な光景だわ…」



「よっちゃん!」


ヨハネ「!?」


呼びかけられ、声のほうを向くとそこには記憶に新しい2人の姿があった


リリー「まさかこのタイミングでよっちゃんと再会できるなんて!」


ホノパパ「………」ニッコリ


ヨハネ「リリー!ホノパパさん!あなたたちも辿り着いてたのね!」


リリー「大変だったけどなんとかここまで来れたよ!よっちゃんも無事で良かった♪」


♪~ポロロン


ヨハネ「奥からピアノの音が…」


リリー「ニシキノマッキはこの奥のホールでよくピアノを弾いていた…だからきっと…」


ヨハネ「この先に、ニシキノマッキがいるのね…」ゴクリ…


リリー「ホノパパさん…長い旅だったけどようやくこの時が来ましたね…!」


ホノパパ「……」グッ


ヨハネ「あなたたちの宿敵だものね…ヨハネも全力で行かせてもらうわ……!」



リリー「ニシキノマッキは強敵……私たち3人の力を合わせましょう!」



ホノパパ「………」コクリ



ヨハネ「待ってなさいよニシキノマッキ!今まであなたが重ねてきた罪……償わせてやるわ!」ダダダッ



リリー「行こう!」ダダダッ



ホノパパ「……!」ダダダッ



3人は祭壇の奥のホールへと突入していった



…………………

ホール

リリー「ニシキノマッキ、覚悟!」


ホノパパ「…?」


ヨハネ「え?」


円形のホールの中央には先程の広場のものとは比べ物にならない大きな祭壇

ニシキノマッキのポスター、フィギュア、HJNNなどのあらゆるニシキノマッキグッズで彩られた祭壇の最上段には甘い音色を奏でるグランドピアノ

しかし、そのピアノに演奏者はいなかった


ヨハネ「自動演奏…?」


ホノパパ「………」


リリー「そんな……ニシキノマッキはどこ!?」



ダ-リン!ユ-ビ-ワイ!

♪ドンウォ-リ ドンウォ-リ(イマカラチョウセンシャ?)



ヨハネ「何…この曲?曲が変わったわ!」


リリー「!」


曲が変わったその時
祭壇の前で祈りを捧げていた大勢の手術衣姿の者たちが一斉に立ち上がりこちらを睨みつける

患者たち「………」ジ-…


ヨハネ「……」ゴクリ…


患者たち「まきちゃん」ゾロゾロ



リリー「こっちに来る…!」



ホノパパ「……」ジャキン


ヨハネ「どうやら歓迎されているわけではなさそうね…!」


リリー「ホールの入り口が魔樹の壁で塞がれてる!」


ホノパパ「……!」


ヨハネ「とりあえずこいつらをなんとかするわよ!リリー!ホノパパさん!」



リリー「うん!」


ホノパパ「………」グッ


患者たちは点滴台やメスなど各々の武器を手に持ち
ゆっくりとこちらに向かってきた


患者たち「まきちゃん…まきちゃん…」ゾロゾロ



BOSS 深みの患者たち

かつてニシキノマッキと共に深みの病院で医療に従事する医師たちがいた

やがて医師たちは院長であるニシキノマッキの非人道的な行いに脅威を感じ、彼女を病院に幽閉することを決断する

だが時が経つにつれ1人、また1人と医師たちはニシキノマッキに心酔していく……
皆、彼女の知性溢れる美貌の虜となってしまったのだ

やがてニシキノマッキに心奪われた者たちは患者と呼ばれ、盲目的に彼女を崇拝する狂信者と化して行く

その患者の中でも高位の存在である真っ姫患者のうちの1人は、亡者と化した患者たちを束ね、今でもこの病院を守り続けているという


短かめですが今回はここまで!
今更ですがラブライブのキャラに合わせて原作のキャラ設定をかなり改変しています
例、アンリとホレイス(今作の梨子ちゃんと穂乃父)はエルドリッチ(真姫ちゃん)の子供の生き残り(アンリは不確定)→エルドリッチ(真姫ちゃん)の生贄の生き残りに変更……など

今後も物語の大筋は変更しませんが無理のない範囲で改変はしていきますがご容赦ください
そして度重なる誤字脱字すみませんm(._.)m



患者たち「まきちゃん」ゾロゾロ


ヨハネ「相手は多勢、こっちは3人……」


リリー「囲まれないように気をつけよう…!」


患者たち「まきちゃん…!」ウオ-


ヨハネ「はあ!」

ザシュ!


患者「まき……ちゃ…」ドサッ


患者「まきちゃん」ボウッ


ヨハネ「ぐっ……火球…!?」



リリー「よっちゃん!大丈夫!?」

カキン!カキン!


ヨハネ「大丈夫よ…!目の前のやつ以外も気をつけないと、魔法で常にこっちを狙ってきてるわ…!」


リリー「お互いカバーし合わないとまずいかも…!」


患者「まきちゃん」ブン!


リリー「たあ!」

ドスッ

患者「」ドサッ


患者「まきちゃぁぁん!」グワッ


リリーの背後から別の患者が遅いかかる


ヨハネ「リリー!」



リリー「え!?」


ズシャ!


患者「ま……」パタリ


ホノパパ「……!」グッ


リリー「ホノパパさん…!」


ヨハネ「ナイスよホノパパさん!」


ホノパパは雷の力を得た短刀ラブライブレードを指に挟むことで爪のようにして闘う



ホノパパ「……!」

ズシャ!ズシャ!


患者たち「」パタッバタッ



ヨハネ(凄い……あの小さい武器でどんどん敵が倒れていく!)


リリー「ねえよっちゃん……だんだん私たち、囲まれてきてない…?」


カキン!


ヨハネ「確かに…」ブン


患者「」ドサッ


ホノパパ「………」


ヨハネ「でもおかしいわ…!さっきからかなりの数を倒しているはずなのに、全然敵が減っている気がしないのよ…」


リリー「なにかがおかしい…」


患者「」

ムクリ


患者「まきちゃん」スタスタ


ヨハネ「!?」


リリー「まさか…」


ヨハネ「そのまさかね…倒れたやつらが復活してる!」


リリー「どうしよう……これじゃキリがないよ…」


最初は奮戦していた3人も、数の減らない敵に徐々におされ、ついには祭壇の前に3人で追い詰められてしまっていた


患者たち「まきちゃん」ジリジリ


ホノパパ「………!」


リリー「どうしよう……」


ヨハネ「ちょっとまずい状況になってしまったわ…」


リリー「ぞもそも倒せないなんておかしいよ…」



ヨハネ「絶対に何か方法があるはずなんだけど……」


3人は剣を振り、なんとか患者たちを押し止めるが、この状態で一斉に襲われればまず勝ち目はないだろう



ホノパパ「!」ユビサシ


リリー「どうしたんですかホノパパさん?」


患者(赤)「まきちゃん」


ヨハネ「あいつだけ赤いオーラを纏っている…!」



ホノパパが指さす先はヨハネたちを取り囲む患者たちの少し後ろ、そこに他の患者たちと服装は同じだが赤い気のようなものに包まれた患者が1人だけいた


リリー「あからさまに怪しいね…」


ヨハネ「でもあいつを倒そうにもこの状況じゃ身動きが取れないわよ…」


リリー「そうだ……!」


リリー(私にはわかる…この人たちはもう亡者化してる。それならこれが効くはず…!)スッ


ヨハネ「リリー?なにする気?」


リリー「えい!」ヒュ-ン…


リリーは何かを取り出すと自分たちを取り囲む患者たちの後方めがけて投げつけた


ヨハネ「あれは…?」


リリー「あれは誘い頭蓋っていう道具……砕けるとソウルが撒かれて少しの間だけ対象の注意を引くことができるの……でもこれが効くのは亡者だけなんだけどね」


グシャ!

誘い頭蓋は勢いよく床にぶつかり砕け散った


ヨハネ「………」スタッ


リリー「よっちゃん!?」


ヨハネ「あ………ちょ、ちょっとふらついただけよ!」


ヨハネ(あれ?なんで今足が勝手に動いたの!)


患者たち「まきちゃん…まきちゃん」ジリシリ


ヨハネ「……ってそんなことより全然効いてないみたいなんだけど!?」


リリー「なんで!?みんな亡者のはずなのに!」


ホノパパ「………」


患者たちは一瞬反応したものの、すぐにこちらに向き直ってしまった


ヨハネ「そもそも本当にこいつら亡者なの?なんでリリーにはわかるわけ?」


リリー「そ……それは…」


ホノパパ「……!」


患者たち「まきちゃん……」スウッ


ヨハネ「あ…!」


3人を取り囲む患者たちが一斉に武器を振り上げる


リリー「もう……終わりなの…?」


ヨハネ(考えるのよヨハネ!考えるの!)


患者「まきちゃん」


ヨハネ(こいつらがずっと言ってるまきちゃんってきっとニシキノマッキのことよね……)


ヨハネ「……」ガシッ


リリー「よっちゃん!?」


ヨハネは自分の真後ろにあった祭壇から適当に一番近くにあったフィギュア、アルター製1/7スケール西木野真姫 水着verを手に取った


ヨハネ(なんで誘い頭蓋が効かないのかはわからないけど、さっきのはヒントになったわ!)


ヨハネ「あんたらが神のように崇めるニシキノマッキ……その御神体ともいえるこれならどうかしら!!」

ビュン!

患者たち「!?」


ヨハネはそのフィギュアを思い切り高く遠くへ投げたのだ


患者たち「まきちゃん!まきちゃああぁぁぁん!!」ダダダダダッ


投げられたフィギュアを落とすまいと我先にフィギュアの元へ走りだす患者たち


リリー「みんなフィギュアのほうに気をとられてる!」


グシャ!


患者たち「まきちゃん……」ガクッ…


無残にもフィギュアは床に叩きつけられ破壊された
壊れたフィギュアを取り囲み患者たちは悲しみに暮れている


ヨハネ「今よ!」ダダダダダッ


リリー「うん!」ダダダダッ


ホノパパ「………」グッ


3人は悲しみで行動不能に陥っている患者たちに紛れている赤オーラの患者に狙いを定めた


患者(赤)「ま!まきちゃん!?」


ヨハネ「せやあああ!!」


ザクッ


患者(赤)「まき…ちゃ…」ドサッ


患者「」シュウウウウ…


リリー「赤いオーラが離れた?」


患者たち「まきちゃぁぁぁん!」ジタバタ


ヨハネ「他のやつらが苦しんでる!効いてるみたいよ!」


シュウウウ…


患者「まきちゃん……」


リリー「さっき離れたオーラがまた別の人に…?」


患者(赤)「まきちゃん」


先ほどの患者が倒れ、体を離れた赤いオーラはまるで次の宿主を探すかのように移動し他の患者に纏わりついた


ヨハネ「あの赤いやつだけ攻撃するわよ!他は無視!」


患者たち「まきちゃん…」シュン…


御神体であるフィギュアの破壊により患者たちの戦意もかなり削がれているようだ


ヨハネ「偶像の破壊がかなり精神的に効いてるわ…!」


リリー「えいやぁ!」ブン


患者(赤)「」ドサッ


患者「」シュウウウウ


患者(赤)「まきちゃん」


ホノパパ「……!」

ザクッ

患者(赤)「まきちゃ…」パタッ


患者「」


赤いオーラが移動してはそれが宿った患者を倒すことを何度か繰り返した時だった

祭壇の前の床からまるで生えてきたかのように新たな患者たちが現れたのだ


リリー「よっちゃん!あの人を見て…!」


ヨハネ「?」


真っ姫患者「まきちゃん」


ヨハネ「なによあいつ!?」


新たに現れた患者たちの中でもひときわ目立つその外見

身につけている手術着はニシキノマッキの描かれた缶バッジで埋め尽くされている


リリー「あの人がみんなをまとめてるみたいだね」


シュウウウウ……


そして赤いオーラが真っ姫患者に宿る


患者たち「まきちゃん…」スッ…

一斉に患者たちが魔法を詠唱し始めた
すると患者たちから黒い霧のようなものが溢れ出し、それが徐々にホールの天井を覆い始める


ホノパパ「!?」


ヨハネ「なんか空気が重くなった…?うっ…それになんか息苦しい…!」


リリー「これは深みの呪い……早く術者を倒さないとみんな呪死させられる…!」


ヨハネ「でも術者も何もこんなに大勢いたら呪いが止めらろないわよ…!」


リリー「だったら…呪いが私たちを殺す前に戦いを終わらせるしかないよ!」


魔法を詠唱していない患者たちは皆真っ姫患者を守るかのように真っ姫患者の周りに集まり始めた


ヨハネ「くっ…!あいつら呪いの時間を稼ぐつもりね…」


リリー「ホノパパさん、よっちゃん…私に作戦があるんだけど、協力してくれる?」


ホノパパ「……」コクリ


ヨハネ「もちろん…!」


リリー「時間がないから説明はできないけど私は今から魔法発動のために力を溜める……だからそれまで私を守って欲しいの!」


ヨハネ「その魔法であいつらを倒せるのね…?」


リリー「うん…もうあの取り巻きの人たちの相手をしていたら時間が無くなっちゃう…だから魔法でまとめて倒せればと思って…」


リリー「普段は使わない魔法だけど、私の全力をぶつける…!だからホノパパさん、よっちゃん、私を信じてほしいの!」


ヨハネ「わかったわ…ホノパパさん!準備ができるまでリリーを守り抜きましょう!」


ホノパパ「……」グッ


ヨハネ「うおぉぉ~!」

ホノパパ「……!」


患者「まきちゃん!」ブン


ヨハネ「たあ!」


ホノパパ「!」


ザシュッ ドスッ

患者「」


ヨハネとホノパパはリリーに迫り来る患者たちを次々と薙ぎ倒していく


ヨハネ「リリーには指一本触れさせないんだから…!」

カキン!カキン!


リリー(よっちゃん…///)


リリー(私が女の子、ううん…今はよっちゃんを想う気持ち…それが力に変わる…!)


リリー「よっちゃん!ホノパパさん!私の前から離れて…!」


ホノパパ「………」グッ


ヨハネ「……!」コクリ


ササッ


リリー「これが私の全力……!」スゥ…


リリーは2人を自分の前から遠ざけると真っ姫患者を含めた患者の一団に向かって愛剣である直剣を突き出した


リリー「想いよとどけえぇぇ!」



ズドドドドドドドド!!


ヨハネ&ホノパパ「!?」


リリーの直剣がまばゆい光を纏い、やがてその光が巨大な奔流となって剣先から放たれた

膨大なレズ力を奔流として放つ最大のレズ魔法「レズの奔流」である


ズドーン!!


奔流は真っ姫患者の一団を貫き、その後ろの祭壇をも巻き込んで吹き飛ばした


真っ姫患者「まき…ちゃん……」ドサッ


真っ姫患者「」


患者たち「」バタバタッ


患者たち「」


ヨハネ「………終わったの?」

ホノパパ「……」ムクッ


凄まじい衝撃にとっさに伏せていたヨハネとホノパパが身体を起こす

そして2人が目にしたのは霧散し、消えていく患者たち

そして床に倒れたリリーの姿だった


HEIR OF FIRE DESTROYED

患者のソウルを手に入れた



ヨハネ「リリー!」ダダダッ

ホノパパ「……!」ダダダッ


倒れたリリーにとっさに駆け寄る2人

ヨハネがリリーの体を起こし、体を揺する


ヨハネ「リリー!リリー!」ユサユサ


リリー「よっちゃん……」


ヨハネ「リリー!しっかりしてリリー!」


ホノパパは心配そうに2人を見つめる


リリー「ちょっと…力を使い過ぎちゃったみたい…」


ヨハネ「ほらリリー…!向こうに篝火があるからそこまで頑張って!」


リリー「心配かけてごめんねよっちゃん…」


ヨハネ「無理しちゃだめよ…ほら肩貸してあげるから」


ヨハネはリリーの肩を支え立ち上がらせる



ホノパパ「………」ボウッ

BONFIRE LIT

ホノパパが新たにホールに現れた篝火に2人に先回りして火を焚く


リリー「大丈夫…自分で歩けるから」フラフラ


ヨハネ「あ!ちょっと…!」


リリーは迷惑をかけまいとヨハネの肩を離れ歩き出す
力の消耗により満身創痍であるその足取りはおぼつかない



リリー「あ…!」クラッ


リリー「きゃ!」ドサッ

ヨハネ「もう!だから無理しちゃダメだっていったじゃない」


コロコロ

リリーが転んだのと同時に何かが地面に落ちて転がった


ヨハネ(指輪…?転んだ拍子にリリーが落としたのかしら…)


リリーはヨハネの目の前に転がった指輪を四つ這いで這って取りに来た

だが、まるで見られたくないかのように不自然に顔をヨハネから背けたまま向かってくる


ヨハネ「どうしたの?」


そしてリリーが目の前で指輪を拾い上げた時、ヨハネはふとその顔を除き込んだ

除き込む→覗き込む
ですねすみませんm(._.)m


メノ^ノ。^リ「……」



ヨハネ「ひっ!?」


驚くヨハネに構わず指輪をはめるリリー


リリー「ど、どうしたの?なんか顔色悪いよ…」



ヨハネ「な、なんでもないのよなんでも!」


ヨハネ(さっきのリリーの顔はなに!?まるで化け物みたいな…)



ヨハネ(いや気のせいよ…そうに決まってる!さっきの誘い頭蓋に体が引き寄せられたのといい……きっとヨハネは疲れてるんだわ…)


リリー「ふふふ、変なよっちゃん♪」



ヨハネ「へ、変じゃないわよ!」アセアセ


……………………

ヨハネとリリーは篝火にあたり体を癒す


リリー「はぁ…ようやく辿り着いた病院にニシキノマッキがいないなんて…」


ヨハネ「まだどこかに隠れてる可能性はないの?」


リリー「私とホノパパさんで病院内の全部の場所を探したの……だからこのホールが最後だった」



ヨハネ「参ったわね……」


ホノパパ「………」スタスタ


リリー「あ、お帰りなさいホノパパさん」


ホノパパが篝火に戻ってきた
どうやら隠し扉などがないかホールの中を隅々まで調べていたらしい


ホノパパ「………」クビフリ


リリー「いませんでしたか……」


悲願を果たせなかったリリーとホノパパは落胆の色を隠せない


ホノパパ「………」スッ


しかし何も収穫がなかったわけではなかった
ホノパパは見つけてきた小さな青銅製の寝そべりぬいぐるみを2人に見せる


リリー「?」


ヨハネ「これは?」



聞くとリリーの魔法で崩れた祭壇の最上段にあったピアノの内部に隠されていたらしい


ホノパパ「………」コショコショ


リリー「え…!?」


ホノパパは小声でリリーに何かを話す


ヨハネ「?」


リリー「ホノパパさんが言うにはこの寝そべりぬいぐるみをかたどった青銅製の人形は、ウミシールの結界を通るために必要なものなんだって…」



ヨハネ「聖霊結界…!」ガタッ


リリー「冷えてる谷のウミシールは結界で守られたとても古くからある幻の都…そして」


リリー「ニシキノマッキの故郷なの…!」


ヨハネ「ウミシールがニシキノマッキの故郷!?この病院じゃなかったの?」


リリー「ここはあくまでニシキノマッキが根城としていた病院……でもニシキノマッキは生涯をこの病院で過ごしたというから私は病院にいるものだと思ってた…」



ヨハネ「でもこの病院にニシキノマッキがいなくて……そしてここにニシキノマッキの故郷ウミシールへ入る鍵がある…ってことは」



リリー「きっとニシキノマッキはウミシールにいるはず…!」


ヨハネ「なら私たちが次に目指す場所は冷えてる谷のウミシールね!」



リリー「でも…ウミシールの場所は私は知らないんだ…」


ホノパパ「……」クビフリ


ヨハネ「ヨハネも知らないわ……」


リリー「どうしよう…ニシキノマッキの居場所がわかったのに行き方がわからないなんて…」


ヨハネ(冷えてる谷のウミシール…あの高壁のでかいぬいぐるみと、そして下魔をさらったやつの国ね…)


ヨハネ(ならきっと下魔もウミシールに…)


ヨハネ「そうだ!」


リリー「?」


ヨハネ「あてもないのに闇雲に探すのは無理があるわ、ここは情報を集めるのが得策…」


ヨハネ「リリーもホノパパさんも一緒に私が拠点にしてる祭祀場にこない?そこなら色んな人がいるからウミシールの場所を知ってる人もいるかもしれないわ」


リリー「ニシキノマッキを倒せるのならどんな小さな情報だってほしい…私たちもよっちゃんについていくよ♪」



ホノパパ「……」コクリ


ヨハネ「じゃあ決まり!一緒に祭祀場に行きましょう!」


リリー「うん♪」


こうしてヨハネはリリー、ホノパパの2人を引き連れ火継ぎの祭祀場へと戻ることにした

今回はここまで!
ちなみに原作のボス、「深みの主教たち」にはちゃんと誘い頭蓋は効果があります

読んでくださっている方ありがとうございます!
次回の更新まで3日くらい空けることになるかもしれませんm(._.)m

………………

一方その頃…

ー冷えてる谷のウミシールー


ここは幻の都ウミシール
昼夜を問わず常に三日月の光で照らされた永遠の白夜の地

雪が降り積もり空をオーロラが彩る幻想的な街並みはまさに幻の都

だがこの地は今、1人の人間の手によりかつての面影をなくしていた


王城前広場

ザワザワ

住民1「なんということでしょう……」


住民2「いったい誰なんだろう……米王の怒りに触れるようなことをしたのは……」


住民3「わたしたち、これからどうなっちゃうの…」


ザワザワ


広場に集められた大勢の住民たちから不安や怒りの声があがる

ウミシール市街のある区画の住民たちが王直々の伝令により広場に招集されたのだ


住民2「王が直接わたしたちを集めるなんてこれはただ事じゃないよ…」


住民1「ああ……なんでわたしたちはいつも米王に怯えながら暮らさなければならないのでしょうか…昔はこんなことはありませんでした…」



ギギギィ……


住民たち「!?」


皆が不安に包まれるなか、王城の扉が開いた
そして城の中から護衛の騎士数人を引き連れた少女が現れた



法王カヨチーン(演 小泉花陽)「こんにちは愚か者共、よくもまあのこのこと集まってくれやがりましたね!」



住民1「かなり怒ってますね…」


住民2「いつもなら言葉遣いは丁寧なのに……あれは相当お怒りだよ…!」


住民3「ふぇぇん…怖いよぉ」




白い法衣と金の冠を身につけた彼女こそ、このウミシールの現統治者である法王カヨチーンである


彼女は米王と称されるほど異常な白米への執着を持ち、それを民にまで強要する独裁的な支配を行うことからウミシールの民に喪怖の対象とされている



カヨチーン「さて、第3居住区のみなさんに集まって頂いたのは他でもありません、これを見てください」


第3居住区から招集された住民たち数100人を見下ろしながら手袋をはめ、何かを取り出して見せた


住民1「ランチパック…!!」


住民2(やば…あれわたしのやつだ…)


ダレダ!アンナノモチコンダヤツハ

ソウダ!ソウダ!

ウラギリモノメ!


突然見せられたランチパックに広場は騒然となった


カヨチーン「今日の昼過ぎ、あなたたちの住む第3居住区の公園にこれが落ちているのを巡回している騎士さんが見つけました…」


ザワザワ


カヨチーン「これは私への反逆以外の何物でもありませんよね…」ギロッ



住民3「あのいちご&ホイップ……たしかお昼にハノケチェンが…」ボソッ



住民2「……!」ビクッ


住民1「まさかあの時……」



……………

昼過ぎ

住民2「今日もパンがうまい!」モグモグ


住民3「こら!あんまり大声を出さないでください見つかったら粛清されてしまいます!」


住民3「あはは…少しは気をつけないとほんとにまずいことになるよぉ…」



住民1「まったく…見つからないのをいいことにパンばかり食べて!私はおにぎりで我慢しているのですよ?」


住民3「私は今日はオムライス♪」


住民2「みんな真面目だな~…バレなきゃ大丈夫だよ!」


住民1「そもそも毎日どこでパンを手に入れているんですか?ウミシールには持ち込むことさえ禁忌とされているのに…」



住民2「よく来る行商人の人がこっそり持って来てくれるんだよ!」



住民1「そうですか…行商人の人も法を犯してまで商売をしなきゃいけないなんで大変ですね…」



住民3「自分でパンを作るのもダメだもんね……小麦粉も使用・持ち込み・栽培全て禁止だし」



住民2「まったく、新しい王様はダメだな~!お米からだってパンは作れるのにパンの時点で認めてくれないみたいだし」



住民1「可能性は根絶やしにすると言ってましたからね」


住民3「あ、そろそろお昼休み終わっちゃうよ?そろそろ片づけて戻らないと!」


住民1「そうですね!」ガサゴソ


住民2「みんなと話しながら食べてたら1個残っちゃった…後で家に帰ってから食べよーっと!」


住民1「どこかで落としたりしないでくださいよ?ただでさえあなたは昔からおっちょこちょいなんですから…」


住民2「ひどいな~、さすがにそんなドジは踏まないよ!」


住民3「じゃあみんなで一緒に戻ろ?」



住民1「はい♪」



住民2「あ、今カバンに入れるから待ってて~」


住民1「早くしないと置いていきますよ?」


住民2「よし、準備完了!いくよ~!」ダダダダダッ



ポロッ


ガサッ


ランチパック(いちご&ホイップ)「………」

……………………


住民2(あわわわどうしよう!あの時落としたんだ…!)



住民1「どうするつもりですかあなた…」


住民3「ぴぃ……」



カヨチーン「あなたたちの中の誰かがパンを口にするという重罪を犯したのはまぎれもない事実です…!」



下魔「カヨチーン様、こいつら調子に乗ってるゲマよ?処すゲマ?処すゲマ?」



カヨチーン「さて、どうしてくれましょうか…」



タッタッタッタッ


カヨチーン「?」


突然群衆の中から1人の少女が飛び出した


住民2「ごめんなさい法王様!パンを食べたのは私です!他の人は関係ないので家に帰してあげてください!」ペコッ


住民1「!?」



住民3「ハノケチェン…」


カヨチーン「ほほう…愚か者はあなたでしたか…この状況で自ら名乗り出たのは褒めてあげます!」


住民2(私これからどうなっちゃうんだろう…殺されちゃうのかな…)


カヨチーン「ですがいくら正直に名乗り出ても私は許しません!そしてこの罪は第3居住区に住む皆さんの連帯責任です!」


住民2「そんな!?待ってください王様!悪いのは私だけなんです!」


しかしそんな言葉は聞き入れずカヨチーンはこう続けた



カヨチーン「罰としてあなたたちの住む第3居住区はパンの痕跡を消すことも含め厳重な滅菌消毒のあと焼却処分して田んぼに変えてやります!」



住民3「街1つを丸ごと焼却処分なんて…!」チュンチュン!



住民1「待ってください法王様!それでは私たちの住む家が無くなってしまいます!」



カヨチーン「安心してください皆さん、ちゃんとあなた達の新しい家は用意してありますよ?『ウミシールの地下牢』に」



住民1「ち、地下牢!?」



住民3「やだよぉ、地下牢なんて行きたくないよぉ~…」



住民2「ごめん……私のせいでこんなことに…」



カヨチーン「さあ騎士さんたち!早くこの愚か者共を捕まえて地下牢にぶち込んじゃってください!」


法王騎士たち「ウオオオ!」タタタタッ


ガシッ


住民1「くっ!」


どこからともなく数百人の法王騎士が現れ、広場に集められた住人はあっという間に取り押さえられてしまった


カヨチーン「………」ジ-…


下魔「ん?なんでカヨチーン様、こっちをそんなに見てるゲマ?」


カヨチーン「あなたのその丸い体…だんだん忌々しいパンに見えてきました…」


下魔「!?」


カヨチーン「外征騎士さんが珍しい生き物を捕まえてきたのでノリで側近にしてあげていましたが……」



カヨチーン「もしかしてあなた…パン派からの刺客ですね?」


下魔「ちょっと言ってることがよくわからないゲマ…」



カヨチーン「その丸い体を見せつけることで私を潜在意識からパン派に変えようとしてるんですね!そうはいきませんよ!」



下魔「え?え?」


カヨチーン「騎士さんたち!このステマ野郎、サブリミナル野郎をひっ捕らえて下さい!こいつはパン派からのまわし者です!」


下魔「本気で言ってるゲマか!?」


カヨチーン「こいつも罪人共と同じ地下牢行きです!」


下魔「い、イかれてるゲマ…」


法王騎士「……」スッ


ガシッ



下魔「は、離してくださいゲマ!」

グイッ

下魔「ああああ!引っ張らないでほしいゲマ~!」ズルズル


下魔「こんなのおかしいゲマよ~!」


住民2「ごめん………みんな…」



住民1「私たちの力ではどうすることもできません……今はただ待ちましょう、救世主が現れるのを…!」


住民3「うん…」



ワ-ワ- ワ-ワ-


こうして第3居住区の住民たちと下魔は地下牢へと連行されていったのだった


自室へと戻った法王カヨチーンのもとへ法王騎士が慌てた様子で飛び込んでくる


法王の間


バタ-ン!


法王騎士「……!」アセアセ


カヨチーン「そんなに慌ててどうしたんですか騎士さん……今から楽しみだったおにぎりを食べるところなので手短にお願いしますよ?」



法王騎士「……!」


カヨチーン「え!?赤い津波がこっちに向かってきてる?」


法王騎士「!」コクコク!


カヨチーン「おにぎり食ってる場合じゃねぇ…!」ガタッ


ダダダダッ


慌てて部屋を飛び出したカヨチーンは部屋の裏にあるウミシールの街を一望できる高台から街を眺める



カヨチーン「うっ……なんかすごくトマトの匂いがします…」



カヨチーン「ってそんなことより米は!?田んぼは無事なのか!?」



高台から街を眺めると、確かに向こうから赤い一筋の激流がこちらに一直線に向かってきていた


真っ姫患者「まきちゃん」

患者たち「まきちゃん…まきちゃん…」


激流の上にはニシキノマッキをあしらった痛ボートに乗った患者たちもいるようだ


そんな混沌とした一団が王城の裏に広がる広大な水田の一部を破壊しながら突き進んでくる


カヨチーン「ピャア!?私の田んぼが!」


そしてトマトの激流はやがて水柱となって噴き上がるとカヨチーンの目の前に集まり始め、徐々に形を成していく


愕然とそれを見ていることしかできないカヨチーンの前に現れたのは下半身がトマトピューレのワームと化した少女だった


カヨチーン「よくも私の田んぼを…!戦争じゃ!!」



深みの医者ニシキノマッキ(演 西木野真姫)「可愛い顔をしてるわりには随分と荒々しいお出迎えね」



患者たち「まきちゃああああん!」


ズズーン!!


水柱に噴きあげられていた患者たちの痛ボートも遅れて着地する


カヨチーン「あ、あなたたち…いったい何者なんですか!?この法王カヨチーンの田んぼを荒らすなんて極刑に値します!」



ニシキノマッキ「まあそう怒らないで?挨拶が遅れたけど私は深みの医者ニシキノマッキ、かつての薪の女王よ」



カヨチーン「ピャア!?薪の女王!?」



患者たち「まきちゃん!」ゾロゾロ


ニシキノマッキ「そしてこの人たちが私の部下、誰1人まともに喋れないけどそこはご愛嬌よ」


カヨチーン(ニシキノマッキといえば、数え切れない程の人間をトマトにして喰らったというあの伝説の…!)


ニシキノマッキ「?」


カヨチーン(薪の女王たちが甦ったというのは聞いてましたけど、まさかあのニシキノマッキ様がこのタイミングでここウミシールにお帰りになるとは…)


カヨチーン(これはラッキーかもしれません♪)



ニシキノマッキ「ねえ、私だけに自己紹介させる気?」



カヨチーン「も、申し訳ありません!私はカヨチーン、このウミシールの現統治者であり米と恐怖で国を治める法王です!」



ニシキノマッキ「米で支配ねぇ…ウミシールも私がいた頃とは変わってしまったのね…」トオイメ


ニシキノマッキ「ここに来るあいだにもかなりの数の水田を見たけど、そもそもこんな極寒の地でお米が育つの?」



カヨチーン「それならご心配なく、この私が独自に改良を重ねた高級ブランド米『はなよ』は寒さに強く、月の光だけでも成長することができるんです!」フンス


ニシキノマッキ「そ、そう…」


カヨチーン「ところでニシキノマッキ様はなぜ今ウミシールに戻られたのですか?」


ニシキノマッキ「まあ多くは説明できないけれど…次に訪れるであろう時代に備えるため、とだけ言っておくわ」


カヨチーン「次の時代…!?」


ニシキノマッキ「無駄話はこの辺にして本題に入らせてもらってもいい?」


カヨチーン「は、はあ…」


ニシキノマッキ「今ウミシールを支配しているあなたへの用事は2つだけ…」


ニシキノマッキ「1つ目、このクールで冷静沈着な知性溢れるマッキーにふさわしい城を用意しなさい」


カヨチーン「はい?」



ニシキノマッキ「2つ目、かつてこのウミシールの一帯を治めていた暗月の女神、陰の太陽ユキンドリンの居場所を教えなさい」


カヨチーン「お、お城なんていきなり用意できませんよ!?」アセアセ


ニシキノマッキ「あら、今私たちがいる場所はとっても素敵な場所だと思うけど?」


カヨチーン「いや、ここは私の城なのであげるわけには…」


ニシキノマッキ「別にここであなた達を始末することだって私には簡単なのよ?ここは平和的に解決したほうがいいと思うわ、あなたのためにもね」


カヨチーン(平和的にと言いつつただの脅しじゃないですか…めちゃくちゃです…)


カヨチーン「むむむむ…」


カヨチーン「あ!」


ニシキノマッキ「なに?おとなしく城をあけ渡す気になった?」


カヨチーン「いえ…城の話より先にまずユキンドリンの居場所をと…」


ニシキノマッキ「ハナシヲソラサナイデ!」


カヨチーン「そ、そうではなくて!今ユキンドリンは病に倒れ、ウミシールの向こう側にある古い王たちの都ホムーラロンドの城に幽閉しています…」


ニシキノマッキ「ふ~ん…そもそもなんで王族でないあなたがウミシールを統治してるのか疑問だったけど…」


ニシキノマッキ「あなた、王族を追放してウミシールをのっとったということかしら」


カヨチーン「あ、あはは…まあそんな感じです…」



ニシキノマッキ「自分が実権を握るために神々を追放するとは…あなたも欲に溺れた俗物ね」



カヨチーン「俗物!?」


ニシキノマッキ「で、城はどうするの?」



カヨチーン「先ほどもお話しましたが暗月の女神ユキンドリンは今病に倒れ、力が衰えています…」



カヨチーン「なのでニシキノマッキ様なら今の彼女を倒すことも容易かと存じます」



ニシキノマッキ「つまり何がいいたいの?」



カヨチーン「もし、ニシキノマッキ様がユキンドリンを始末してくだされば、王の都を、そして主のいなくなった聖堂を城としてさしあげます!」



ニシキノマッキ「ふふふ…それならユキンドリンの力、そして城と都が私のものに、いいじゃない!その話乗ったわ!」



カヨチーン「ご理解いただけましたでしょうか…」


ニシキノマッキ「では早速私たちはホムーラロンドを攻め落としに行ってくる」


ニシキノマッキ「もうあなたに用は無いわ、俗物はとこかに消えてちょうだい」


カヨチーン「そんな…せっかくの薪の女王の帰還です!腕によりをかけた米料理でおもてなしをと!」



ニシキノマッキ「私は忙しいのよ、そんなにもてなしたいなら後でホムーラロンドの聖堂にケチャップたっぷりのオムライスでも持ってきてちょうだい、それで十分」


カヨチーン「は、はい!後でお持ち致します!」ペコペコ


ズズズズズ…


再びニシキノマッキの体は赤い液状に変わり、一筋の流れとなって患者たちと共にホムーラロンドを目指し進んでいく


カヨチーン「………」ニヤリ



カヨチーン(これなら邪魔だったユキンドリンも始末できて、ついでに城として聖堂を献上することでニシキノマッキ様からの好感度も爆上げです…!)


カヨチーン(きっと我々ウミシールが薪の女王ニシキノマッキ様を擁しているとなれば、他国に対してかなりの抑止力になるに違いありません)


カヨチーン「全ては私の野望のため……いつか必ず」



カヨチーン「世界中を田んぼにして『お米の谷のパナシール』を建国してみせます!」



カヨチーン「……」



カヨチーン「それにしてもリンチャン遅いな~ルビリックに行ったっきり帰ってこないけど何やってるんだろう…」

……………………

ーホムーラロンドー

ここはウミシールの裏手
小さな街と巨大な聖堂からなる王たちの都

かつて火の力によってこの世界を作り上げた旧王家の神の1人、太陽の光の王ホノカが拠点としていたこの聖堂にはもう当時の栄華は残されていない


豪華絢爛な宝飾品や、絵画などの芸術品、ホノカたち旧王家の遺産は全てカヨチーンにより没収され彼女の城へと運ばれていった

そんな廃聖堂の最奥に、1人の女神が幽閉されている


暗月の女神・陰の太陽ユキンドリン(演 高坂雪穂)「ごほっ……ごほっ…」


ユキンドリン「はあ……私が病気にさえかからなければこんなことにはならなったのに…」


ホノカの妹である彼女は今となっては旧王家の神々では唯一の生き残りとされている

ホノカ亡き後、ここホムーラロンドとウミシールを治めていた彼女

彼女は自らが病に伏した隙に頭角を現した魔術士カヨチーンによって、旧王家の関係者もろとも追放され、この廃聖堂に幽閉されるに至った


ユキンドリン「でも弱音を吐いてちゃダメだよね…!お姉ちゃんが残してくれたこのホムーラロンド、私たちで守り抜いていかなきゃ…!」


ユキンドリン「けほっ…けほっ…」


このホムーラロンドを守るのは女神ユキンドリンと旧王家に仕えた銀騎士たち数人である

力が衰え、戦力もほぼ失った彼女ではカヨチーンに対抗することも叶わなかった


ワ-ワ-

ガキン!ガキン!


ユキンドリン「!?」


ユキンドリン「外が騒がしい…!まさかカヨチーンが攻めてきたの!?」


聖堂前

ニシキノマッキ「どれだけの兵隊がお出迎えしてくれるかと思えば騎士数人だけとは…旧王家も完全に廃れてしまったわね」


患者「まきちゃん!」ブン

ガキン!

銀騎士「……!」ギリギリ


ワ-ワ-

ガキン!ガキン!


ユキンドリン「!?」


ユキンドリン「外が騒がしい…!まさかカヨチーンが攻めてきたの!?」


聖堂前

ニシキノマッキ「どれだけの兵隊がお出迎えしてくれるかと思えば騎士数人だけとは…旧王家も完全に廃れてしまったわね」


患者「まきちゃん!」ブン

ガキン!

銀騎士「……!」ギリギリ

重複してしまいましたすみませんm(._.)m


ニシキノマッキ「あ、騎士は殺しては駄目よ?痛めつけるだけにしておいて、後でまたまだ働いてもらわないといけないから」


聖堂前ではわずかな兵力の銀騎士たちがニシキノマッキたちの侵攻を阻むべく奮戦していた


患者たち「まきちゃあああん!」ドドド


銀騎士「……」ドサッ



しかし多勢に無勢、銀騎士たちはニシキノマッキが直接手を下すまでもなく圧倒され、防御網は簡単に突破された


ニシキノマッキ「私の目的はユキンドリン、はやくカタをつけちゃうわよ!」


患者たち「まきちゃあああん!」ウオオオオ


聖堂内にニシキノマッキたちがなだれ込む



ニシキノマッキ「きっとユキンドリンは聖堂の最奥よ!逃げられては面倒…!急がないと…」


もはやこの聖堂を守る者はなく、ニシキノマッキはあっさりとユキンドリンのもとへたどり着いてしまった


バタ-ン!

患者「まきちゃん!」ゾロゾロ


ユキンドリン「!?」


ニシキノマッキ「ふふふ……ついに見つけたわ、暗月の女神ユキンドリン!」


ユキンドリン「あなたたちはいったい!?」


ユキンドリン「!」


ユキンドリン「銀騎士さんたちは…?銀騎士さんたちをどうしたの!?」


ニシキノマッキ「大丈夫、騎士たちは痛めつけただけで殺してはいないから」


ニシキノマッキ「そして私は深みの医者ニシキノマッキ、さすがにご存知よね?」


ユキンドリン「薪の女王…!なぜあなたがここに?玉座を捨てるなど許されることじゃない…!」


ニシキノマッキ「ふん、誰が大人しく玉座に戻るとでも?もう女王も玉座もごめんよ」


ユキンドリン「なんでそんなことを…」


ニシキノマッキ「もう私はあなた達の都合に振り回されるのは嫌なのよ…」


ニシキノマッキ「たまたま女王の資格を得てしまったから女王になってみたものの……ロクなことがなかったわ」


ユキンドリン「くっ……」


ニシキノマッキ「知性溢れる私は気づいてしまったの…私たち女王も、人間たちも、ただあなたたち神々の掌で踊らされていただけだとね!」


ユキンドリン「………」


ニシキノマッキ「言い返す言葉もないようね…」


ユキンドリン「と、とにかく玉座へ戻るのニシキノマッキ!今あなたがどれだけ愚かなことをしているかかわかっているの!?」



ニシキノマッキ「全部わかっているわ、これは神への反逆……それはそれは重い罪でしょうね」


ニシキノマッキ「でもその神がいなくなったら?」


ユキンドリン「!?」


ニシキノマッキ「はたまたその神が私自身だったら…?」ジリジリ



ユキンドリン「こ、こないで…!なにをする気!?」


ニシキノマッキ「いずれ必ず訪れるであろう火のない時代…闇より暗い深みが支配する深海の時代よ…」ズイッ


ユキンドリン「ひっ…」


ニシキノマッキ「私はその時代を導く新時代の神となるのよ!だから私は
あなたの神の力がほしい!」


シュウウツウウン!


ニシキノマッキ「はたまたその神が私自身だったら…?」ジリジリ



ユキンドリン「こ、こないで…!なにをする気!?」


ニシキノマッキ「いずれ必ず訪れるであろう火のない時代…闇より暗い深みが支配する深海の時代よ…」ズイッ


ユキンドリン「ひっ…」


ニシキノマッキ「私はその時代を導く新時代の神となるのよ!だから私は
あなたの神の力がほしい!」


シュウウツウウン!


ユキンドリン「い……」


ユキンドリン「いやあああああああ!!!」


ニシキノマッキの両手から放たれた魔法がユキンドリンの体を包み込み、
そして…


ユキンドリン(トマト)「」コロン…


ニシキノマッキ「あはははは!女神様もあっけないものね!」


ニシキノマッキは床に転がった1つのトマトを拾い上げる


ニシキノマッキ「ふふふ、神のトマトはさぞ美味でしょうね♪」


患者たち「まきちゃん」



ニシキノマッキ「これで神の力を手に入れることができた、そして新たな拠点も!」



ニシキノマッキ「旧王家はこれで途絶えた…!ここはもう古い王の都なんかじゃない」



ニシキノマッキ「新時代の神であるこの私!マッキーの整地よ!」


患者たち「まきちゃああああん」ドゲザ-


神々の地、王の都ホムーラロンド 陥 落

今回はここまでです!
3日ほどのつもりがssを書く暇がなく1週間近くあけてしまいましたm(._.)m
更新ペースは今までより遅くなってしまいますが細々とやっていくつもりです

今回はサイドストーリー的な話になってしまいましたが次回からはまたヨハネの旅に戻ります、今度は生贄の道からユーティーエックスの城塞(ファランの城塞)へ…

読んでくださっている方ありがとうございます!

整地→聖地
でしたね( ;´Д`)
誤字すみません


ー火継ぎの祭祀場ー


深みの病院から帰還したヨハネ、リリー、ホノパパの3人

ニシキノマッキが本当の故郷「冷えてる谷のウミシール」にいるという手がかりを掴んだ3人は、ウミシールに向かうべく情報を集めることにした



リリー「ウミシールの場所がわからないから目指しようがないね…」



ヨハネ「まあこの祭祀場には色んな人がいるから1人くらいはウミシールの場所を知ってるかもしれないわ」


リリー「だといいんだけど…」


ヨハネ「リリーたちはここは初めてでしょ?ヨハネのほうが顔が利くから聞いて回ってきてあげる!」


リリー「いいの?」


ヨハネ「任せておきなさい、ちょっと待っててね!」タッタッタッ


ホノパパ「………」コクリ



リリー「あはは…私たちよっちゃんに頼りっきりですね…」



ヨシミ「……」ジ-…


ヨシミ(あの方は確かマリア様の話していた……)


ヨシミ(ふふふ…我々が謀らずとも自分から歩み寄ってくれていたとは…やはりこれは運命!)



ヨハネ「あ、帰って来たわよヨシミ!相変わらずいつも同じ場所にいるのね~、たまには出かけたりしてみたら?」



ヨシミ「いえいえとんでもない…!私はヨハネ様に仕えると誓った身、いつでもあなた様をお出迎えできるようにしていなくては!」



ヨハネ「嬉しいけど、いくら従者になったからって別にそこまであなたを縛るつもりはないわよ?」



ヨシミ「ヨハネ様は優しいお方ですね…ですがご心配なく」



ヨシミ「私はこの祭祀場がとても気に入っています、何よりもあの美しい火が私を癒してくれるのですから……ここから離れる気にはなれないのです」


ヨハネ「まあいいけど…それじゃあとりあえずいつものお願い!」


ヨシミ「ふふふ…やはり忘れてはいませんでしたか」


ヨハネ「当たり前でしょ!ソウルを使わずに強くなれりなんてお得に越したことはないし、それに本当の力という存在が私の心をくすぐるのよ」



ヨシミ「喜んでいただけているようでなによりです…」


ヨシミ(呪いの蓄積がかなり進んでいる……これなら2つ同時に穴を穿つことも可能か…)


ヨハネ「早く早く~」ワクワク


ヨシミ「ではダークリングを刻む者よ、あなたの真の力を…!」


シュウウウウウウ…


ヨハネ「クックック…この闇を体にまとう感覚、癖になってしまったわ」


ヨハネの背中に新たに暗い穴が2つ穿たれた


暗い穴を2つ手に入れた(4個目、5個目)


ヨシミ「気に入っていただいているところ申し上げづらいのですが…」


ヨハネ「ん?」


ヨシミ「もうあなた様は十分に力を得ておいでです…もう私の手であなたの力を引き出すのは今回で最後となります」


ヨハネ「え?そうなの!?」


ヨシミ「はい…ですがまだあなた様の力は完全に引き出し切れたとはいたいえません、あくまで私ができるのはという話です」


ヨハネ「え~っと…じゃあまた誰か別の人が続きをやってくれるのかしら?」


ヨシミ「ええ…あなたを導いてくださる方がいずれこちらにおいでになります」


ヨシミ「その方の導きに従えば、あなたは完全に力を解放されることでしょう」


ヨハネ「完全な力の解放…楽しみね…!」



ヨハネ「……っと、でも別にあなたはいなくなったりしないわよね?せっかく従者になってくれたんだもの、別に何もできなくてもまだヨハネの従者でいてちょうだいよ?」


ヨシミ「ははは…なんと優しいお言葉」


ヨシミ「おっと、そういえばあなた様は薪の女王のいる病院に行かれていたとか…薪を得ることはできたのですか?」



ヨハネ「あ、そうそう!そのことであなたに聞きたいことがあったんだった」



ヨシミ「?……私にわかることでしたらお答えしましょう…」



ヨハネ「実は深みの病院の中はくまなく探したんだけどニシキノマッキが見つからなくて…」



ヨシミ「それはそれは…残念なことですね」



ヨハネ「どうやらニシキノマッキは冷えてる谷のウミシールに向かったみたいなの…でもヨハネはウミシールの場所を知らなくて…」


ヨハネ「だから巡礼者のあなたならウミシールの場所を知らないかなって!」


ヨシミ「ウミシールですか……私も以前巡礼の道の中で訪れたことがあります」


ヨハネ「ほんとに!?」


ヨシミ「はい…私の記憶ではウミシールは生贄の道の先、ユーティーエックスの城塞の地下深く…深淵に呑まれた亡国ズーラスの地下墓を抜けた先にあるはずです…」



ヨハネ「ユーティーエックスの城塞…」


ヨシミ「はい…かの薪の女王、アライズの不死隊の故郷でございます」


ヨハネ「どうやらニシキノマッキより先にアライズの不死隊と戦わなければならないみたいね…」



ヨシミ「アライズの不死隊は深淵の監視者と呼ばれております、恐らく深淵に近しいズーラスの地下墓の入り口を守っていることでしょう…」



ヨハネ「ウミシールを目指すなら戦いは避けられないようね…」



ヨシミ「ですがあなた様は女王を目指す身、いずれは戦わなければならななかった相手でございましょう」



ヨハネ「そうよね…!場所を教えてくれてありがとう、貴重な情報助かるわ」


ヨシミ「お役に立てて光栄です」フカブカ


ヨハネ「いよいよ本当に薪の女王との戦い…力を解放してくれたあなたの為にも必ず勝利して帰ってくるわ」


ヨシミ「私もあなた様の勝利を祈っております」


ヨハネ「それじゃあまた、良い報告を待っててね!」スタスタ


ヨハネ「気をつけて行ってらっしゃいませ…」ペコリ




ヨシミ「我らの女王よ……」




ヨハネ「リリー!ウミシールの場所がわかったわよ!」タッタッタッ



リリー「え?ほんとなの!?」


キャッキャッ


ヨシミ「………」ジ-


ヨシミ(あちらの方も既にこちら側のようですね…)


ヨシミ(それにしても私が呪いを授け切る前にヨハネ様の体に異変が起こらなかったのはなんたる幸運…)



ヨハネ(きっとあれ以降あまり死を経験しなかったのでしょうね、誰かに呪いが気づかれていたら面倒なことになっていた…)


ヨシミ「………!」フラッ


ヨシミ「うっ………体が…」




ヨシミ(人を呪わば穴二つ…私の場合は五つか……と冗談も言ってられませんね…)


ヨシミ「………」ヨロヨロ


ヨシミ(私ももう限界か…だが私はもう役目を果たした、思い残すことなどない…)


ヨシミ(あとはマリア様がヨハネ様を導いてくださる…)


ヨシミ「どうか火を…我々亡者の手に…!」


ドサッ……


ヨシミ「」


……………………


ニッコ「あらあんた久しぶりね~、横の人達はお友達?」


ニッコ(あの上級騎士装備…きっとかなりの金持ちだわ…!)


リリー「あの子、よっちゃんのお友達?」


ヨハネ「まあお友達というか何というか…」



リリーたちにウミシールの場所を伝え、談笑していると祭祀場の女王の玉座の段よりさらに上の階からニッコが声をかけてきた


ヨハネ「結局あなたも祭祀場に来てたのね、まさかここでも何か悪さしてんじゃないでしょうね?」


ニッコ「してないわよぉ!」



ニッコ「そもそも私はここに商売しに来たの、ここでなんかやらかしたら店の信用が無くなっちゃうでしょ?」


ノゾレス「なんやニッコっち、友達が欲しくてここに来たって素直に言えばいいやん?」


中段の玉座からノゾレスも話に横入りする


ニッコ「違うわよ!別に友達なんか欲しくないんだから…商売の邪魔になるだけだし…」


ヨハネ「ニッコっちって…あんた違いつの間に仲良くなったのよ…」


ノゾレス「いや~、ヨハネちゃんもいないし暇過ぎてな?新しい子がいたから話し相手になってもらってたんよ♪」



ニッコ「ふん!こいつのつまんない話につきあってやってただけよ」


ノゾレス「まったく…素直やないな~、まあそこがかわいいとこなんやけどね」



ニッコ「うっさい!」


リリー「あはは…皆さん仲良しなんですね」


ニッコ「…ってそんなことよりそこの立派な鎧のあんた!」ユビサシ


リリー「え?わたし?」


ニッコ「ニッコのお店でなんか買っていきませんかぁ?今ならちょ~っとだけ、安くしちゃおうかな☆」キュルン


リリー「じゃあ、少し見ていこうかな…」


ニッコ「あんたは?」ギロッ


ヨハネ(なによこの露骨な態度の差は…)


ヨハネ「ヨハネはパス、あんたの店のものどこで盗ってきたのかわかんないようなものばっかりだし…」


リリー「?」


ニッコ「今のご時世そんなの気にしてられないでしょ?ケチな奴は商売人の敵よ、帰った帰った!」



ヨハネ「ケチとは何よ!この前鎧買ってあげたじゃないの!」


ヨハネ「あ、鎧…」


ヨハネ(チーカに返すの忘れてた~!!)


ニッコ「さあさ、騎士さんこちらへどうぞにこ☆」


リリー「ふふふ、どんな物が売られてるのか楽しみです♪」


リリーはニッコに導かれ、彼女が店を開いている上層階へと案内される


ニッコ(しめしめ…騎士の癖に随分気弱そうだしこいつは絶対押しに弱いわ)


ニッコ(高値で売りまくってぼったくるにこ!)


リリー「ねえニッコさん?」


ニッコ「は~いなんでしょう?」


リリー「私と2人きりになるのがどういう意味かわかってるんですよね?」ジリジリ


ニッコ「へ?」


ニッコ(え、なになに怖い怖い)


ニッコ「え~、やだぁ、なんですかぁ?」アトズサリ


ドン!

ニッコ(げ、後ろが壁…逃げられないじゃない…!)


リリー「覚悟はできてるんですよね…?」ジリジリ


ニッコ「もぉ~、だめですよぉ~」アセアセ


ニッコ(え、ちょっと待ってほんとに!)


リリー「……」スッ


壁ドン!


ニッコ「ひぃ!」


リリー「あなたから誘ってきたんですよ?」ズイッ


ニッコ「に…に…」


ニッコ「にごおおおおぉぉ!!」


…………………


ノゾレス「いやぁ~この前はごめんねヨハネちゃん、うたた寝してしまったみたいで…」


ヨハネ「大丈夫よ、気にしないで!それより例の儀式を始めましょう…」


ノゾレス「そうこなくっちゃ♪」


カナンドレイ「あ、またあれ始めるの?」ポタポタ


ヨハネ「やっぱり来たわね…」


カナンドレイ「もちろん!珍しい武器が見れるからいつも楽しみにしてるんだ♪」


ノゾレス「さ、今回力を取り出す異形のソウルはどれかな?」


ヨハネ「クックック……今回の供物はこれよ…!」スッ


ノゾレス「コタロウのソウルに患者のソウルか…よし、ウチに任しとき!」


ニゴオオオオオオオオオォォォォ!


カナンドレイ「な、なんか上の階から悲鳴が…」


ノゾレス「ま、まあ気のせいやろ…」


ヨハネ「気をとり直していきましょう」アセアセ


ノゾレス「ほいな!じゃあまずはコタロウのソウルからやね」


ノゾレスはコタロウのソウルをヨハネから受け取ると錬成炉の中へと放り込んだ


ピカア!モクモク…


ノゾレス「さ~て、何が出るかな~?」


ヨハネ&カナンドレイ「……」ゴクリ



まばゆい光に続いて立ち昇る煙

そして徐々に煙が消え現れたのは…



ピコピコハンマー「」コトン…


カナンドレイ「は?」


結晶コタロウのピコハン

コタロウが護身に用いたピコハン
何か特殊な素材で作られている…というわけでもなく
結晶の魔力により魔力攻撃力を持つ…なんてこともない

このピコハンはコタロウが生涯モグラ叩きが好きだった証であろう


ノゾレス「だって」


カナンドレイ「ちょっと貸して?」


ヨハネ「はい」スッ


カナンドレイ「う~ん…」シゲシゲ


カナンドレイ「えい!」


ピコン!


ヨハネ「いたっ!何すんのよ!」


ヨハネ「まったく……意外とヤバいやつだったらどう責任とるつもりよ…」


ノゾレス「つ、次いこか…」


ノゾレスは患者のソウルを錬成炉に放り込む

ピカア!モクモク…


ヨハネ「次はまともなやつ頼むわよ…!」


そして現れたのは……


点滴台「」ガシャン


ノゾヨハカナ「」


患者の点滴台

深みの患者たちの点滴台
それは槍であるとともに魔術の杖となる

患者たちはニシキノマッキの教えにより患者でありながら魔術師になったという


ヨハネ「一応槍として使えるのね…確かにあいつらこれで襲ってきたけど」

ヒョイ


カナンドレイ「結婚重いね~」


ノゾレス「魔術もこの1本で使えるらしいで、ヨハネちゃん使えば?」


ヨハネ「嫌よこんなでかいの持ち歩くの……それに見た目がね…」


カナンドレイ「なんか今回は不作だったね~…」


ノゾレス「せやね…」


ノゾレス「ま、まあまた異形のソウルが手に入ったら持ってきてね♪次はきっとまともな物が出るはず…多分」


ヨハネ「気にしないで!ノゾレスのせいじゃないもの」


カナンドレイ「さ~て、じゃ私は作業に戻るかな♪」


リリー「お待たせよっちゃん!」ツヤツヤ


ヨハネ「戻ってきたと思ったらなんか随分ご機嫌ね、あいつに変なことされなかった?」


リリー「別に何も?消耗品をたくさん買ったんだけど安くしてくれてとってもお得に買い物できたよ♪」



ヨハネ「おかしいわねぇ…」


ヨハネ「ところであいつは?」


リリー「なんか疲れちゃったみたいで上で少し寝るって」


ヨハネ「そう…」


上の階


ニッコ「」ピクピク


ニッコ(なんなのよあの子!気弱なやつかと思ってたら壁ドンされて……あんなことやこんなことを…)


ニッコ(もうお嫁に行けないにこぉ…)


ニッコ(それに品物も原価割れすれすれの値段まで値切られて……あの子には勝てない…私の本能がそう囁いてる)


ニッコ「………」スクッ


ニッコ(でもヨハネ……あいつにだけは負けたくないわ…!)


ワイワイ キャッキャッ


ニッコ(今は仲間がたくさん周りにいて無理ね…今は我慢の時)


ニッコ(でも必ずそのうち復讐のチャンスは訪れるはずよ…!)

…………………

ツバサウッド「随分ここも賑やかになってきたわね」スタスタ


ヨハネ「ツバサウッド、丁度いいところにきたわね」


ツバサウッド「なにかしら?」


ヨハネ「ヨハネはこれからユーティーエックスの城塞でアライズの不死隊と戦うことになるの…」


ツバサウッド「!」


ヨハネ「もしアライズの不死隊について何か知っていることがあれば教えてくれない?あなたはニシキノマッキのこともかなり詳しかったし」


ツバサウッド「そうね…」


ツバサウッド「アライズの不死隊は不死人の旅団、そして彼女達はアイドルのような存在でもあったの…」


ツバサウッド「アイドルの血に誓い深淵を監視し…深淵の兆しがあれば一国ですら葬り去る……彼女達はそんな連中よ」



ヨハネ「凄いやつらと戦うことになりそうね…」


ツバサウッド「きっと何も知らずに城塞に行っても彼女達には会えないでしょうから教えてあげるわ」


ヨハネ「?」


ツバサウッド「不死隊には特別な入団の試練があるの」


ツバサウッド「城塞の各所にある祭壇の火を3つ消す…これでアイドルの血の扉が開き、彼女達のいる霊廟への道が開けるわ」


ヨハネ「でも別にヨハネは入団したいわけじゃ…」


ツバサウッド「目的は違えど、残念ながら彼女達に会うならその方法しかないわ…」


ツバサウッド「面倒な仕掛けを作ったものよ、呪われた不死人でありながら自分達を特別な存在だと思いいたいのよ…憐れな人達よね」


ヨハネ「やたらと詳しいのね」


ツバサウッド「詳しくて悪い?」


ヨハネ「そんなこと言ってないわよ?仕掛けのことも教えてくれたし助かるわ」



ツバサウッド「じゃあ最後にひとつだけ忠告しておくわね」


ツバサウッド「彼女達は今まできっとあなたが戦ってきた者達とは比にならない程の実力者よ、小細工も一切通用しない」


ヨハネ「小細工なんてしないわ、正々堂々ぶつかってやるわよ…!」


ツバサウッド「中途半端な覚悟では勝てない相手ということだけは覚えておいて」


ヨハネ「わかったわ、でもいくら不死隊が強敵だろうとヨハネは必ず不死隊の薪を持ってここに戻ってくるから!」


ツバサウッド「……」


ヨハネ「どうしたの?」


ツバサウッド「なんでもないわ……用が済んだならもう行きなさい」


ヨハネ「そう…じゃあまたね」スタスタ



ツバサウッド(とうとうこの時が来てしまったのね…)


ツバサウッド(エレナ…アンジュ…そして仲間達…)


ツバサウッド(最初はただの自惚れた小娘だと思ってたけど…風は今あの子に味方しているようね…)


ツバサウッド(もしかしたら今のあの子ならエレナ達でも…)


ツバサウッド(……ってなんで私はこんなことを考えているのかしら…)


ツバサウッド(あの子がどうなろうと、エレナ達がどうなろうともう私には関係ないはずよ…)


ツバサウッド(関係……ない…はずよ)



ツバサウッド「ふふふ……あははは…」

……………………………

火防女アリサ「女王の探索は進んでおりますか?灰のお方」


ヨハネ「あ、アリサじゃない」


リリー(か、かわいい///)


ヨハネ「ニシキノマッキには会えなかったけどこれからユーティーエックスの城塞へ行ってくる、必ずアライズの不死隊を玉座に戻して見せるわ」


火防女アリサ「くれぐれもお気をつけて」ペコリ


リリー「……」ジ-


火防女アリサ「ん?誰かお隣にいらっしゃいますね?なにやら邪な気配を感じます!」


ヨハネ「リリー……見透かされてるわよ」



リリー「え?わ、私はなにも…」アセアセ


火防女アリサ「最近はかなりこちらの祭祀場に足を運ばれる方が増えてきましたね、とても嬉しいです♪」



ヨハネ「あなたもずっと祭祀場に篭りきりだもん…賑やかなほうが嬉しいわよね」



火防女アリサ「はい、ですがあくまで火を守るのが私の役目です。あなた様のお帰りを他の方々と共にいつでもお待ちしています」


ホノパパ「……」スタスタ


リリー「あ、ホノパパさんも買い物が終わったんですね!」


ホノパパ「………」コクリ


リリー「じゃあそろそろ出発しようよっちやん♪」


ヨハネ「あ、あのね…ヨハネはちょっと寄っていかなきゃいけないところがあるの!」


リリー「?」


ヨハネ「だから悪いんだけどリリー達は先にウミシールを目指して先に行ってて!」


リリー「そっか……残念だけど私たちは急がなきゃいけないものね」



リリー「でもまた必ずどこかで会えるよね?」


ヨハネ「もちろん、必ず追いつくわ!」


リリー「わかった♪じゃあ行きましょうホノパパさん」


ホノパパ「……」コクリ


シュウウウウウウウ


リリーとホノパパはヨハネに手を振ると、篝火から転送されて行った


ノゾレス「……」

ノゾレス(さっきの子がはめていた指輪…あれは確か…)


ノゾレス(まあでも悪い子じゃなさそうやし……大丈夫かな)



ヨハネ「さて、ヨハネはチーカに鎧を渡しにいかないと…」



ヨハネ「じゃあみんな~、行ってくるわね!」



ノゾレス「頑張ってな~♪」フリフリ


火防女アリサ「……」ペコリ


シュウウウウウウウ


ヨハネはチーカに鎧を渡すべく再び深みの病院内の清拭の小教会へと向かった

…………………………

ー深みの病院ー

清拭の小教会

シュウウウウウウ

ヨハネ「たしか井戸は教会の入り口の脇だったわよね…」


ギギギギィ


ヨハネが扉を開けるとすぐ横にある井戸が目に入る

その井戸からはこもった声が外に漏れていた


チーカ「うーん……どうしようどうしよう困ったよ~」


ヨハネ(よかった、まだ井戸の中にいたのね)


ヨハネは井戸の中に向かって声をかける


ヨハネ「チーカ!?聞こえる~?」


チーカ「あ!ヨハネちゃん?一眠りしたんだけど全然いいアイディアが浮かばないよ、助けて~」


ヨハネ「ふふん!安心しなさいチーカ、堕天使ヨハネがあなたの鎧を取り返してきてあげたわよ!」



チーカ「すごい!さすがヨハネちゃんだね~、じゃあ鎧を井戸に投げ入れて!」


ヨハネ「了解、じゃあ落とすわよ?」


ヨハネはニッコから取り戻したチーカのみかん鎧一式を井戸に投げ入れた


チーカ「わ~!私の大事な鎧が返ってきた~♪これでやっと外に出ても恥ずかしくないよ!」


チーカ「ヨハネちゃん本当にありがとう!感謝してもしきれないや」



ヨハネ「ふふふ……もっとヨハネを褒め讃えなさい…」


ヨハネ「あ、鎧が戻ったのはいいとしてこんな深い井戸から出られるの?」



チーカ「大丈夫、心配無用だよ!この鎧さえあれば後はなんとか自力で脱出してみせから!」


ヨハネ「ほんとに大丈夫かしら…」


チーカ「また会おうヨハネちゃん♪」フリフリ


ヨハネ「じゃ、じゃあ頑張るのよ?」

スタスタ


ヨハネ「本人がああ言ってるし大丈夫よね…?」


ヨハネ「じゃあいよいよヨハネが行くべきはユーティーエックスの城塞…」


ヨハネ「といっても生贄の道から向かうんだったわよね、じゃあ篝火の転送を使って近道していこうかしら」


シュウウウウウ

ヨハネはユーティーエックスの城塞を目指し再び生贄の道へ


……………………

ー生贄の道ー

磔の森

ヨハネ「また森の中に戻ってきたわけだけど…」


ヨハネ「……」キョロキョロ


ヨハネ(ユーティーエックスの城塞は水に浸かった森の向こう…)


ヨハネ(ここから水場に下りて向こう岸まで歩いていくしかないわね)


ヨハネ「よいしょ…」チャポン


ザバッ ザバッ


ヨハネ「うぅ…歩きづらいわ…それにヨハネの大事な服がぁ…」


水はヨハネの膝ほどまでの深さであるが、ヨハネの歩みを遅らせるのには十分だ


子蟹「…」パシャパシャ


ヨハネ「はぁ…蟹か…びっくりさせないでよ」



ヨハネ(蟹!?)


ヨハネの記憶が蘇る
その記憶の中で見たものは、以前磔の森を訪れた時に見た巨大な蟹の姿だった


ヨハネ「……」キョロキョロ


大蟹「……」


ヨハネ(いたー!!)


ヨハネ(こちらには気づいてないようね……刺激しないように大回りになるべく遠くを渡らないと…)


ヨハネ「………」パシャッ パシャッ


ヨハネ「どうしても水音は消せないわね…でもこのくらいなら平気でしょ」


ゴッ!

ヨハネ「あだっ!」

水中の様子が見えないまま進むなか
ヨハネは水中にあった大きな石に躓いてしまった


ヨハネ「あ…」フラッ


ヨハネ「あああああ!」

ザッパーン!


激しい水音、そして水しぶき


ヨハネ「ぷはぁっ…冷たい…」


大蟹「………」ジ-



ヨハネ「あ…どうも」


大蟹「………!」ドドドドドドド


ヨハネ「ぎゃあああああああ!」

バッシャバッシャ


大蟹は猛烈な勢いの横歩きでヨハネを追う


ヨハネ「殺される…!殺されるぅ!」

バッシャバッシャ


ヨハネは全速力で水場を渡りきり、そのまま陸地を走り抜けて崖に面した砦に辿り着いた


ヨハネ「はあ…はあ…さすがにここまでは追ってこないようね…」


ヨハネが後ろを振り返ると大蟹がのそのそと水場へ戻っていくところだった


ヨハネ「あんなありえないデカさの蟹がいるなんて…この森の生態系はどうなってんのよ…」


ヨハネ「ん?」


砦の入り口にはここの番をしていた者達だろうか
大鉈を持った騎士と棍棒を持った騎士の2人が地面に倒れている


ヨハネ「きっとリリーたちが先にここへ来て番人を倒したのね…感謝しないと」


スタスタ

砦に入るとそこにはただひとつだけ、下へと降りるための梯子がかけられていた


ヨハネ「この下がこれからヨハネが向かうべき場所…」


梯子を下りれば砦の1階部分、崖の下へと辿り着けそうだ


ヨハネ「まずはちょっと上から様子を見てみましょうか…」


ヨハネは砦から身を乗り出して崖下の様子を眺める


ヨハネ「ほとんどなんにも見えないわね…」


ヨハネ(崖の下は霧が濃すぎてよくわからないわ…ところどころ樹木みたいな物が見えるから森みたいにも見えるけど…)


ヨハネ「でも遠くに巨大な壁が見える…きっとあれが城塞なんだわ」


ヨハネ「この崖の下がユーティーエックスの城塞で間違いなさそう…とりあえず下に降りないと…」


ヨハネ「よっと…」


ヨハネ「うわ…どんだけ高いのよ…」

カタカタ


ヨハネは長い長い梯子を降り、砦の1階に辿り着く



ヨハネ「あ、篝火があるわ…とりあえずここを灯していつでも帰れるようにしておかないと…」


ボウッ


BONFIRE LIT


ヨハネ「待ってなさい、薪の女王・アライズの不死隊…あなた達を必ず玉座に連れ戻す…!」


ヨハネは意気込むと砦から外に出た


ヨハネ「これは…」


ヨハネの目の前に広がっていたのは木々は枯れ、辺り一面が毒沼と化した朽ち果てた森であった

今回はここまでです!

かなり前ですがウミリス(薄暮の国のシーリス)の武器であるエストックを何故か槍と表記してました…正しくは刺剣です

今回あまりストーリー自体は進展しておらずすみませんm(._.)m
次回からは城塞を突き進みます

今作のヨハネは隠しエンド的なものに進んでいますがソウルシリーズは毎回どのエンディングが正史なのか…

読んでくださった方、反応くださった方ありがとうございます!


ーユーティーエックスの城塞ー


ヨハネ「これは…どうやって探索したらいいのかしら…」



目の前に広がる毒沼を前にヨハネは頭を抱えていた

毒沼にはところどころに小さな島のような陸地が点々としているが、この沼を超えなければ辿り着くことはできない



ヨハネ「毒沼に突っ込んで行かなきゃいけないの?そんなの無理よ…」


ヨハネ「……」キョロキョロ



ヨハネ「木があるわね……なんとかなるかしら…」


しばらくして…


ヨハネ「ふっふっふ…完成よ…!」


ヨハネ「この方舟がヨハネを導いてくれるわ」


ヨハネは近くの木を切り倒し、それから簡易的ないかだを組み上げた


ヨハネ「よっと…!」ヒョイ


ザブン


ヨハネ「オールなんて立派なものは無いから丈夫そうな木の枝で代用しましょう…」


ヨハネ「んしょ……んしょ…」


ズズズズ…


ヨハネ「とりあえず少し先の陸地まではたどり着きたいわ…」


ズズズズ…


ヨハネ「………」



ズズズズ…


ヨハネ「おっそ」


毒沼の泥の上ではいかだなどスムーズに進むわけもなかった


ヨハネ「はあ……進んでんだか進んでないんだか」


ヨハネ「この毒沼の中を突っ切っていけたらどれだけ早いかしら…」


ヨハネ「でもそんなバカな真似はできないわ、毒を中和するものも持ってないし…」


ヨハネ「あ~あ、祭祀場で買ってくればよかった」


ズズズ


ヨハネ「リリーたちは見当たらないわね…きっとあの2人ならさぞ賢くこの沼を超えたと思うわ」



ヨハネ「一緒に行ければよかたとんだけど…」


その頃
城塞某所

!POISONED!


ホノパパ「………」グッタリ


リリー「おぇっ……」


リリー「やっと毒沼地帯を抜けましたね……げほっげほっ」


ゴクリ

リリー「はあ…はあ…ホノパパさんも早く毒紫の花苔玉で中和を…!」スッ


ホノパパ「……」ゴクリ…



リリー「いくら急いでるからって毒沼に直接突っ込むなんてやっぱり大変でしたね…苔玉をたくさん買っておいて助かりました…」


ホノパパ「……」コクリ


リリー「もう…こんな無茶なことしてたなんてよっちゃんに知られたら笑われちゃいます…!」

………………………

ズズズズ…


ヨハネ「このペースじゃ日が暮れちゃう~!」


モニョモニョ


ヨハネ「ん?沼地の水面が動いて…」



腐れナメクジ「………」モニョモニョ



ヨハネ「うげっ!沼の泥に紛れてて気づかなかったけど馬鹿でかいナメクジじゃない気持ち悪っ…!」


腐れナメクジ「……」モニョモニョ

腐れナメクジ「……」モニョモニョ

腐れナメクジ「……」モニョモニョ


ヨハネ「うわいっぱいいる…」


ヨハネ「いかだの上からじゃ剣が届かないわ…ここは魔法で!」ボウッ


ヨハネ「地獄の業火に焼かれなさい!」

ボオオオッ

腐れナメクジ「」シュワアアアアア


ヨハネ「ふん、あっけないわね…」


プシャアアアアア!


ヨハネ「うわ!なにこれ毒液!?なんで背後から…」


腐れナメクジ「……」モニョモニョ

腐れナメクジ「……」モニョモニョ


ヨハネ(いつの間にか囲まれてるぅ!)


ヨハネ「これは絶対絶命…!いくら単体は弱いとはいえ囲まれて毒液プシャアアされたらひとたまりもないわ…」


ヨハネ(でもここは毒沼に浮くいかだの上、逃げ場なんて…)


ヨハネ「……いや!」ブンブン


ヨハネ「ちょうどいかだが進まなすぎてイライラしてたところよ!」


ヨハネ「ええい!毒沼がなんぼのもんじゃああ!」ピョ-ン

ザバッ

グッチャグッチャ


ヨハネ「うおおおおお!」


グッチャグッチャ


ヨハネは半ばやけくそになりながら毒沼に飛び込むとそのまま陸地目指して突き進んだ



ヨハネ(ぬかるんでてうまく進めないけどなんとか陸地に…!)


ザバッ


ヨハネ「着いた…!」

!POISONED!

ヨハネ「うへぇ…毒が…」


ヨハネ「とりあえずエスト瓶を」ゴクゴク


ヨハネ「はあ…消耗した生命力は回復できても体内にまわった毒は消せないわ…」


ヨハネ「これじゃあえんえんと生命力を消耗し続けることになる…エスト瓶だって限りがあるし…」


ヨハネ「早く篝火を見つけないと…篝火ならばこの毒も癒してくれるはず…!」


フラフラ


ヨハネ「うぅ…毒のせいで体中が痛い…」


ヨハネ「塔があるわね…あの中に篝火あったりしないかしら」



沼の上の陸地は小さく、塔にはすぐにたどり着いた


ヨハネ「なんだ…塔っていっても飾りじゃない、入り口もどこにもないわね」


ヨハネ「ん?あれはもしかして…」


ヨハネ「祭壇だわ、小さな火が揺らめいてる」


頂上に大きな炎が燃え盛る塔の下には、小さな火の灯った祭壇が設けられていた


ヨハネ「これがツバサウッドが言っていた祭壇の火ね…これを消せば…」


フッ


ヨハネが火に手をかざすと火は静かに消えていった


ヨハネ「これでいいの…?」


ヨハネ「あ…」


祭壇の火を消すと、塔の頂上で燃え盛っていた炎が消えた

頂上の炎は祭壇の火に対応しているようだ


ヨハネ「………」キョロキョロ


ヨハネ(周りにも同じような塔が2つ.…今と同じようにそれぞれの塔に行って祭壇の火を消せばいいのね)



ヨハネ「はあ……また次の島に行くには毒の沼を超えなきゃ…」


ヨハネ「………」

ザバッ


ヨハネ「もう既に毒にかかってるんだから毒なんて関係ないわよ…!」


グチャグチャ


ヨハネ「毒をもって毒を制す…!」


ヨハネ「おぇっ………実際全然制せてないけどね」


………………


ザバッ


ヨハネ「2つ目もさっさと消しましょう…」


ヨハネ「あわよくば篝火もありますように……さすがにそろそろ体が限界だわ」


ヨハネ「……!」


グルー「………」スタスタ


ヨハネ「なんかいる…」


ヨハネ(角のたくさん生えた二足歩行のヤギみたいに見えるわね…デーモン系の生き物かしら…)



グルー「イアアアアアア!」ダダダダッ



ヨハネ「ああ……やっぱり敵よね」


ヨハネ「てやあ!」


ザシュッ!


ヨハネはグルーの毒の爪の引っ掻きをひらりとかわし一閃した



グルー「」ドサッ



ヨハネ「やれやれだわ…」


ヨハネ「さて、ここで2つ目ね」


フッ


ヨハネは先ほどと同様に塔の下にある祭壇の火を消した

また同じように塔の炎も消える


ヨハネ「あと1つ…!」

フラフラ

ヨハネ「あ、ここの陸地には橋がかかってるじゃない、これを渡れば毒沼に入らなくても隣の陸地に行けるわ!」


そしてその橋を渡った先の小さな建物の中には…


ヨハネ「篝火…!目指さずにはいられないッ!」


ヨハネ「ああ…でも…」


グルー「……」

グルー「……」

グルー「……」


篝火へ向かうための橋の上には槍と盾で武装したグルーたちが陣取っていた」


ヨハネ「やるしかないわね…呪術で先制攻撃よ…!」


ボウッ ボウッ ボウッ


グルー「ギヤアアアア!」ボオオオ


グルー「…!」


グルー「!?」



ヨハネが放った火球は先頭にいたグルーに直撃し
それに気づいた他のグルーにも襲いかかった


グルー「…!」ボオオオ

グルー「…!」ボオオオオ


火球はグルーが構えた盾を焼き払った
突然の奇襲にグルーたちもかなり狼狽えているようだ


ヨハネ「行くわよ…!」

ダダダッ


動揺するグルーたちに剣を構えて突撃する


グルー「……」プシュウウウウウウ


グルーは突っ込んでくるヨハネを牽制し毒霧を噴射した


ヨハネ「ふん…!今さら毒霧なんて、もうヨハネの体は毒にやられてるから関係ないわよ!」


ヨハネ「はぁ!」


ザシュ!ザシュッ!


グルー「アアアアア!」ドサッ

グルー「イエアア…」パタリ


ヨハネ「はあ…はあ…早く篝火を…!」


2体のグルーを倒して橋を渡りきり、ヨハネはようやく篝火にたどり着いた


ヨハネ「……」スッ

ボウッ

BONFIRE LIT


ヨハネ「ふう……毒が癒えていく、篝火さまさまね」


ヨハネ「あ、火にあたっていたらヨハネの泥だらけの服まで綺麗になってる!ありがたいわ…」


建物からは更に橋が架けられ、その先には固く閉ざされた城塞の巨大な扉が見える


ヨハネ「あと1つ火を消せば、きっとあの扉が開くのね…」


ヨハネ「さて、最後の1つの火を消しに行かないと…!」スクッ


ヨハネ「って最後の場所には橋も何も架かってないわね…」


ヨハネ「ああ…また毒沼にはいるのかぁ」ガクッ


ヨハネ「とりあえず篝火は確保したし、火を消したら急いでここに戻ってこよ…」


ザブン


ヨハネ「うげ…また毒の苦しみを味わうことになるとは…」


グチャグチャ


ぬかるんだ毒沼を最後の火を目指しひたすらに毒沼を突き進む

短いですが今回はここまで!

久しぶりの更新になってしまいすみませんm(._.)m
次回はいよいよアライズ戦です

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom