=休憩室=
飛鳥「うん……」
ありす「はい……」
テクテク…
文香(……あれ。飛鳥ちゃんとありすちゃん……楽しそうな顔して……女子会……でしょうか……?)
文香「……お二人揃って、何のお話ですか?」
飛鳥「やあ文香さん。いや、ね」
飛鳥「文香さんいいよね……」
ありす「いい……」
飛鳥「って話を」
文香「えっ…………えっ……?」
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ありす「文香さんは綺麗で知的で落ち着いていて……理想の女性像です」
飛鳥「ゆったりとした服の着こなし、儚げな表情……いいよね」
ありす「いい……」ウンウン
文香「えっ…………そ、そんな。そのようなこと……私には不相応です……」
飛鳥「謙虚なところもいい……」
ありす「はい……」
文香「う、うぅ……」///
ありす「ベタ褒めするとほんのり頬を赤らめて小さく俯くのも可愛らしくてギャップがあって……」
飛鳥「いいよね……」
ありす「いい……」
文香「…………」///
飛鳥「まあ、座りなよ。折角だから本人にも聴いてもらおう」
ありす「はい。何か飲みますか? 買って来ましょうか?」ガタッ
飛鳥「ありす、キミは座っていなよ。ボクが取ってくる」ガタッ
ありす「いえ、一番年少である私が行くのが筋です」
飛鳥「そんな年功序列は前時代的だね。キミはくつろいでいるといい」
ありす「そんなこと言ってポイント稼ぎたいだけなんじゃないですか?」
飛鳥「うっ……それを言うならキミもそうだろう。人のことを言う前に自分の身を顧みることだね」
ありす「むむむ……」
飛鳥「ぐぐぐ……」
文香「あ……あの……。じ、自分で行ってきますので……お二人は待っていてください……」オズオズ
飛鳥「! 自らの苦労を厭わずに……流石文香さん……」
文香「い、いえ……そんな……これは当然というか……」
ありす「女神ですね……」
飛鳥「女神だ……」
文香「え、えぇ……??」///
文香(何だか……妙なことになりました……)
ありす「…………」ジーーーー…
文香(……)ゴクゴク
飛鳥「…………」ジーーーー…
文香「……あの……どうして私がお茶を飲むのをそんなに凝視するんでしょう……」
飛鳥「ただお茶を飲むというだけのことなのに、一挙一動に気品が感じられて……」
ありす「いいですよね……」
飛鳥「いい……」
文香(さ、さっきから……これは二人の暗号みたいなもの……なんでしょうか……??)///
文香「あ……あの……気品などと言われましても……私は別に……」
ありす「つまり無意識でやっているということですか」
飛鳥「流石だね……やはり高い教養がそうさせているのだろう」
文香「そ、そんなこと……。世間のことはよく知りませんし……教養なんて……」
飛鳥「そんなに卑屈になることはないさ。それを補って余りあるほどの知識が頭脳に収まっているだろう?」
ありす「どんなことを訊いてもすぐ答えてくれるのも文香さんの魅力のひとつですよね」
飛鳥「ありす、『咲いてJewel』の時のユニット名を決めたことを憶えているかい」
ありす「はい。あのとき飛鳥さんは『CAERULA』という名前を提案して……」
飛鳥「文香さん、キミは言ってくれたね。『CAERULA』とはラテン語で『青』を意味する単語だと」
文香「ぐ、偶然読んだ本の中にあっただけ……ですから……」
ありす「それがさらりと出てくるのがやっぱり凄いですよ」フフン♪
飛鳥「何故キミが得意気なんだい、ありす」
ありす「うっ……でも飛鳥さんだって文香さんの話をするときはそういう顔をしてますよ」
飛鳥「……フフッ。仕方ないことだよ、それは。だって文香さんが魅力的すぎるんだから」
ありす「はい」ウンウン
文香「う、うぅ……」///
飛鳥「しかし……あのときボクはとても嬉しかったんだ。この人とボクは通じ合える、そんな気がしたから……」
文香(……あの時から飛鳥ちゃんが仲良くし始めてくれたのは……そういう理由からだったんでしょうか……)
文香「あ……あの」
飛鳥「? どうかしたかい?」
文香「私は……その、今まで……臆病で……人付き合いもあまりなく……他人に頼られることがない人間でした……」
文香「ですので……どういう形であれ……飛鳥ちゃんに年上として慕っていただけるのは……とても嬉しいことです」
文香「ふ、不束者ですが……これからも仲良くしていただけたら……」///
飛鳥「……可愛い……」
文香「えっ?」///
ありす「かわいいですね……」
飛鳥「可愛い……」
文香「えっ……えっ……?」///
ありす「で、でも文香さん。忘れないでくださいね。私も飛鳥さんと……いや、それ以上に文香さんのことが好きですからね!」
文香「あ……ありがとうございます。ありすちゃんとも、これからもずっと仲良くしていきたいです……」ニコ
飛鳥「フフッ……まさしく天使の微笑み、だね」
ありす「はい……」ウンウン
文香「そ、そんな……大袈裟すぎです……」///
飛鳥「ならば言葉を変えよう。女神の艶笑……これならどうかな?」
ありす「文香さんは天使であり女神です」ウンウン
文香「…………」///
飛鳥「実際問題、文香さんは綺麗すぎるね。道ですれ違えば異性も同性も振り返らずにはいられない秀麗な顔立ちだと思うよ」
ありす「大人っぽい輪郭、雪のように白い肌、ぱっちりとした二重瞼……」
飛鳥「そして何より、長い睫毛に秘められし瞳の美しさたるや、だね」
ありす「はい……まるで宝石のような……」
飛鳥「キミの修辞はおざなりすぎるよ。正しくはこうさ。『サファイアのような深淵の輝きを宿した瞳』……」
飛鳥「文香さんの瞳はこれくらい言わないと美しさが伝わらない」ドヤァ
ありす「む……いいえ、飛鳥さんもまだまだです。『ブルーアパタイトのような癒しの力を蓄えた蒼』……」
ありす「文香さんの眼差しの力も表さなきゃダメですからね」フンス
飛鳥「ならば……『ラピスラズリのような叡智の光を秘めた蒼』!」
ありす「『夜明けを導く暁闇を染める蒼』!」
飛鳥「『月光を照り返す海洋の揺曳を魅せる蒼』!」
ありす「『モルフォ蝶のような妖しさと美しさの境界に揺らめく蒼』!」
飛鳥・ありす「「むむむむむむ…………!」」
文香「……………………」カァァ…
飛鳥「……フッ、ボクとしたことが少し大人気なかったね」
ありす「私も少し熱くなりすぎました。すみません」
飛鳥「ありす、冷静になった頭で考えてみるとキミの修辞も素晴らしいものだったよ。どうだろう、ボクたち三人に関連するあの言葉を最終の解にするというのは」
ありす「賛成です。やはりあの言葉しかありませんね」
文香「あ……あの言葉……?」
飛鳥・ありす「「『Jewel of eyes』……」」ドヤァ…
文香「あぁ……『咲いてJewel』の歌詞の……」
文香「で……でも……お気持ちはありがたいのですが、それほど綺麗な目では……」///
飛鳥「何を言っているんだい。普段は前髪によって目立たないだけで、キミの瞳は万人を魅了する魔力があるんだよ」
ありす「そうですね。逆に前髪のおかげでその力がセーブされてるのかもしれません」
文香「……? ……??」///
飛鳥「……何だかそういう話になると、桜井京介が連想されてしまうね」
ありす「ふふっ。気が合いますね、私も同じことを考えていました」
文香「桜井京介……篠田真由美さんの建築探偵シリーズ……でしたか」
ありす「流石ですね。本に関しては文香さんの右に出る人はいません」フフン♪
飛鳥「まさに人間図書館だね。歩く知識庫、生きる叡智の結晶……」
文香「お、大袈裟です……」///
飛鳥「それはともかく……成程、“探偵・鷺沢文香”というのもまたそそられるね」
ありす「あー……いいですね。ミス・マープルみたいなのが似合います」
アームチェア・ディテクティヴ
飛鳥「 安 楽 椅 子 探 偵、か……。お目が高いね、ありす」
ありす「暖炉近くの安楽椅子にもたれて本を読むおっとりとした女性でありながら、冴え冴えとした推理を披露する……いいですね……」
飛鳥「いい……」
文香「わ、忘れた頃に、やって来ますね……それ……」///
ありす「文香さんが探偵なら、私は助手にしてもらいます♪」
飛鳥「フフッ、文香さんが桜井京介なら、さながら『蒼』だねキミは」
ありす「私が蒼なら……飛鳥さんは深春……!?」
飛鳥「……それはプロデューサーあたりに任せよう。ボクはそうだね、工藤迅巡査部長かな」
ありす「え、ええ……? 捻くれてますね……」
飛鳥「14歳なんてそんなものだよ。……とにかく、何かしらの関わりを持ちたくなるものさ」
ありす「それくらい、魅力的ってことですね」
飛鳥「うん。ちょっとプロデューサーに進言してこようかな。この類の仕事があったら是非文香さんをと」
ありす「いいですね。私も一緒に行きますよ」
文香「お、お芝居なんて……できるでしょうか……私に……」
飛鳥「大丈夫だよ。普段の情調がとても安楽椅子探偵然としているんだ。もし決まったとしても、いつものキミを魅せればそれでいいんだ」
文香「そ、そうでしょうか……」
ありす「文香さんはそのままで十分すぎるほど魅力的ですからね」
飛鳥「真理だね」
文香「…………」///
飛鳥「よし。――さあ、往こうありす。ボクらの夢幻を具象化させるためにね」ガタッ
ありす「はい。それじゃあ文香さん、また――」ガタッ
テクテク…
奏「あら? 三人揃って何か密談かしら?」
文香「あ……奏さん。お疲れ様です」
飛鳥「密談なんてものじゃないよ。公然とした事実を語り合っていただけさ。思いのままに、ね」
奏「へえ。どんな話?」
飛鳥「文香さんいいよね……」
ありす「いい……」
奏「いいわよね……」
文香「!?」
おわり
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