瀬尾「若の誕生日かぁ……」 (18)
学校
瀬尾「はーあぶねーあぶねー。 ギリギリセーフ」
瀬尾「えーっと……若どこにいるかなー」
若松「……」スタスタ
瀬尾「あ、いた!!」
瀬尾「おーいわ……」
野崎「若松、誕生日おめでとう」
瀬尾「!」
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若松「の、野崎先輩……俺の誕生日、覚えててくれてたんですか!?」
野崎「当たり前だろ、俺の後輩だからな」
若松「あ、ありがとうございます!!」
野崎「それと誕生日プレゼントだ、バスケットボール型キーホルダー」
若松「ありがとうございます!! 大切に使います!!」
野崎「じゃあ俺、もう教室に戻るから」
若松「はい!! 俺、野崎先輩の誕生日、絶対祝います!!」
瀬尾「……」
瀬尾「若の誕生日かぁ……」
瀬尾「折角の誕生日だし私も何かあげよっと」
瀬尾「流石私、いい女」
瀬尾「……!!」
若松『声楽部のローレライさんは……あの人は俺にとって……女神なんです!!』
瀬尾「あ、そうだ」
放課後
部員「若松!! パス!!」
若松「はい!!」
部員「いいぞ!! ナイスだ!!」
若松「ありがとうございます!!」
若松「……」
若松(久しぶりに瀬尾先輩がいない部活……こんなにも楽しいなんて!!)
若松(もしかして……『部活に来ない』ってのが先輩からのプレゼントなのかも)
若松(……いや、あの人のことだ。 そこまで考えてないよな)
帰り道
若松「いやー今日の部活は思いっきり身体を動かせたなー」
タッタッタッ……
若松「……ん? 後ろから誰か……」
瀬尾「若ーーーーーーー!!!」
若松「げえっ!? 瀬尾先輩!!?」
瀬尾「『げえっ』ってなんだよ『げえっ』って」
若松「だって……久しぶりに先輩が部活に来なかったから1日がいい気分で終わるって所で来るから……」
瀬尾「まーたそうやって照れ隠ししてー。 素直じゃないやつだなー」
若松「照れ隠しじゃないですよ!!」
若松「そういえば……なんで今日は部活に来なかったんですか?」
瀬尾「そんなん用意する為に決まってんじゃん」
若松「『用意』……?」
瀬尾「誕生日おめでとう若」
若松「!!! 俺の誕生日……知ってたんですか!?」
瀬尾「朝、野崎がお前祝ってるの見て知った」
瀬尾「折角だからお前に会った時にプレゼントとお祝いのメッセージ言おうと思って」
瀬尾「『うっわー、瀬尾先輩に祝ってもらいたいのにどこにもいねぇよ』って思ったでしょ」
若松「思ってないですよ……」
若松「でも……先輩に祝ってもらえるなんて考えてもなかった……ありがとうございます」
若松「それで……プレゼントというのは?」
瀬尾「これ」
若松「……このUSBですか?」
瀬尾「そ。 このUSBね、歌が入ってるの」
瀬尾「歌録る為に今日はバスケ部に来なかったんだ」
若松「!!!!!!!?」
瀬尾「お、その顔は感動してるな?」
若松「逆ですよ逆!! 真逆です!!」
瀬尾「えっ」
若松「なんで俺が瀬尾先輩の下手くそな歌声を聴かなきゃいけないんですか!!」
若松「申し訳ないですけどこれは貰えないです!! それに俺、先輩からはもう誕生日プレゼントもらってるし……」
瀬尾「私、何か渡したっけ?」
若松「『瀬尾先輩がいない部活』ですよ!!」ダッ
瀬尾「あっ、行っちゃった……」
若松「……」タッタッタッ
若松(流石に瀬尾先輩も自分が音痴なのは自覚してる筈……)
若松(なのにあんなのを渡そうとするなんて……嫌がらせにも程がある!!)
瀬尾「ちぇっ、折角あげようと思ったのに」
次の日
瀬尾「このUSBどうしよっかなー」
佐倉「結月ーー!!」
瀬尾「あ、千代」
佐倉「ねぇねぇ!! 新曲ある!?」
瀬尾「!」
瀬尾(若ももらわないって言うし千代にあげちゃお)
瀬尾「あるよー。 いる?」
佐倉「うん!! ありがとう!!」
野崎「若松、ローレライの新曲いるか?」
若松「はい!! 勿論です!!!」
若松(今回はどんな曲なんだろうな……)
~♪
若松「zzz……」バタッ
若松「凄いんですよ!! 本当に!! 今までのローレライさんの曲の中で一番です!!」
若松「あの歌は芸術そのものです!!」
野崎「そ、そうか……なら良かった」
若松「しかもですよ!! 歌の最後に……」
若松「『ハッピーバースデー』って言ってくれたんですよ!!」
野崎「た、誕生日プレゼントが歌とはオシャレだな……」
若松(それにしてもどうしてローレライさんは俺の誕生日を知ってたんだろう……)
若松(……あっ!!!)
若松(もしかして……瀬尾先輩に教えてもらった!!?)
若松(あり得る!! 同じ声楽部だし……)
若松(俺の誕生日を知った瀬尾先輩はわざわざ俺の為にローレライさんに新曲の依頼を……)
瀬尾「あ、若じゃん」
若松「!!! 瀬尾先輩……俺の誕生日に……部活で俺の話しましたか?」
瀬尾(そういえば部活のやつに『なんで来たの?』って言われたから若の話したなー)
瀬尾「うん、した」
若松「……すみませんでした!!!」
瀬尾「えっ」
若松「俺、瀬尾先輩のおかげで最高のプレゼントをもらいました!! ありがとうございます!!」
若松「その……この間はごめんなさい……先輩のUSBを貰うのを拒否しちゃって」
若松「あの……この間のUSBってまだ持ってますか? 俺、ちゃんと聴きます!!」
若松「俺、瀬尾先輩の聴いて欲しいって意志を無視してました……」
若松「下手くそなのに……俺の為に祝ってくれてる思いを踏みにじってました……」
若松「先輩の気持ちを無駄にしちゃいけないって気付いたんです!!」
瀬尾「あのUSBもうないよ」
若松「えっ」
瀬尾「うーん……」
若松『どんなに下手くそでもいいです!! 聴きますから!!』
瀬尾「つっても誕生日もう過ぎてるのに誕生日用のやつ録ってもなー」
ガラガラ
鹿島「先生!!」
瀬尾「あ、鹿島」
鹿島「今日も歌のレッスンに来たよ!!」
瀬尾「……」
鹿島「……先生?」
瀬尾「いいこと思いついた」ニヤッ
その後
野崎「それが瀬尾の歌声が入ってるUSBか……」
若松「はい……すいません、野崎先輩にも聴いてもらうことになって」
若松「やっぱり一人だと聴くのが怖くて……」
野崎「いや、俺は別に気にしてないが……」
若松「じゃあ……流しますよ」
野崎「ああ」
『はーーーーーーーーーあーーーーるーーーーーーーのーーーーーーーおーーーーーがーーーーーーわーーーーーわーーーー!!!!!』
若松「ああああああああああああああ!!!!」
野崎「くっ……なんという歌声……」
野崎「……!!」
野崎(この歌声……鹿島か?)
その後
若松「瀬尾先輩!!!! 見てくださいよこの本!! 歌が上手くなるコツが書いてありますよ!!」
若松「瀬尾先輩!! なんで遅刻したんですか!? 先輩のクラス、一限目は音楽でしょう!?」
瀬尾「だーかーらー。 この間のは鹿島の歌声なんだってば」
若松「俺は騙されないですよ!! ほら、この本も読んで!!」
瀬尾「私歌下手じゃないって。 なんならカラオケ行く?」
若松「先輩の歌声は上手くなってからじゃないと聴きたくありません!!」
~終わり~
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