輿水幸子「ライブサバイヴ」 (55)
『――全員そのまま動くな。当機は我々、カレン民族解放同盟が掌握した』
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世界一カワイイアイドルこと輿水幸子ちゃんのSSです
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前作
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今までで一番ブッ飛んだ話になります
親愛なるデュンヌへ捧ぐ。
― = ― ≡ ― = ―
「うーん、残念。見つかりませんでしたねぇ」
「いーや、アレは絶対イリオモテヤマネコだったにゃ」
「しっぽだけ映っててもなー。野生の雑種じゃないの?」
沖縄でのロケを終え、ボク達は久しぶりの事務所へ帰って来ました。
やっぱり冷房は最高ですねぇ……。
「何にしてもお疲れ様。しばらくオフの後にまた撮影があるから」
「Pチャーン……そろそろライブしたいにゃ……」
「ああ、そう遠くない内にやるよ」
「え、ホントですか?」
「ホントホント。今までに俺がウソついた事あった?」
「みくさん牛乳に氷浮かべます?」
「麦茶でいいにゃ」
「ハッハッハ」
ボクは世界一カワイイアイドルです。
みくさんもまぁ、多分ボクの次くらいにはカワイイ筈です。
ところがボク達のプロデューサーときたら全くその点を活かせていません。
仕事自体は馬鹿みたいに取っては来ますが、どれもこれもTVタレント紛いのものばかり。
半眼を向けられそうになる頃にようやくライブを入れてくるぐらいで。
まぁ、たぶん意図的にやってるんでしょう。
「今度は国外だよ。ミャンマーで遺跡レポートの予定」
「このペースだとボク、一年のうち二ヶ月ぐらい国外滞在なんですが」
「ウチの事務所、何故か資金力はあるよね。不思議」
「楽しいでしょ?」
「そこは否定しないけど……みく達アイドルだからね?」
「ライブなら本当に演るから安心してよ」
と、そんなこんなで打ち合わせを終えて一週間後。
スタッフさんとボク達はミャンマーへ下り立ちました。
「スケジュールだと夕方から撮影だったよね?」
「うん。このままバスで目的地へ向かうから」
「遺跡ですか。今日は下見ってところですかね」
「ハッハッハ」
現地で買い込んだ謎のお菓子を二人とつつき合います。
どうも海外のお菓子は砂糖の味が強過ぎるんですよねぇ。
しばらく走る内に、周りがジャングルの様相を呈してきました。
おお、いかにも遺跡のありそうな場所じゃないですか。
でも、どうしてでしょうか。あまり人の気配を感じないような。
「あ、見えてきたよ」
「…………い」
プロデューサーが指差した先。
門の傍にはかっちりとした制服姿の男性が居て、スケッチブックを掲げていました。
そこには、下手っぴなカタカナでこう書かれています――
「イヤにゃあぁぁ! みくもう降りるぅぅぅっ!!」
「うん。もう降りるんだよ。ほら待たせちゃ悪いしほら」
――”ゲリラライブ!”
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レンジャーライブ。
『アイドルたる者、いつでもどこでも、どんな状態でもライブ出来ないとね』
そう宣うプロデューサーさん発案の、誠に遺憾ながら大人気の企画です。
世界各国軍のレンジャー課程に相当する訓練を受け、その後に慰安ライブを行うというもので。
時々、世界がおかしいのかボクがおかしいのか、よく分からなくなります。
「イヤにゃあ……みく、おうち帰るぅ……」
「諦めましょう。どうせ逃がしてはくれませんよ」
ボクはかれこれ六回目なので慣れたものですが、みくさんはまだ二度目でしたね。
確かにボクも最初の頃は吐きかけました。あ、いえ一回吐きました。
アイドルって何なんでしょうね?
『我が軍へようこそ! 日本人が参加するのは初めてだよ』
「こちら、今回の教官を務めてくださるミャンマー陸軍の歩兵連隊長さんね」
『フフーン、どうぞお手柔らかにお願いしますよ!』
「あ、えーと……『頑張ります』……にゃ……」
ビルマ語はまだ習熟していませんでしたから、英語なのは助かります。
フフン。この機会にマスターするとしましょう。
『結団式は今夜だから、それまでゆっくりしててね』
『あ、あはは……ありがとう、にゃ』
『明日からはそんな時間一切無いからね』
『…………あ、ははははは……』
そして、レンジャーライブが幕を開けました。
― = ― ≡ ― = ―
「――うぇえぇん……シャワー浴びたいぃ……」
「雨季らしいですし今夜にでもきっと降りますよ」
「雨はシャワーじゃないにゃあ……」
『おっ、見てみろミク! 虎だ! 好きなんだろう?』
「いや別にネコ科なら何でもって訳じゃ……ねぇ、あのコこっち見てない?」
『――繰り返すが、火器はおろか刃物の一つもだ。さぁ、どうだ?』
『通信手段を探す、ですか?』
『惜しいな。まずは自身の安全確保と戦力分析。通信はその後になる』
『なるほど、優先順位というのも難しいものですね』
『何がなるほどなの幸子チャン』
『やっぱりレンジャー課程と言えばヘビですよねぇ』
『塩は無いがね。血や汗から作る訓練でも取り入れてみるか』
『むぐ、もぐ……アルゼンチンのやつよりちょっと大味にゃ――』
――こうしてボク達は五日間の訓練を終え、無事最終ライブへと漕ぎ着けたのでした。
― = ― ≡ ― = ―
『受け取ってくれ、サチコ』
明けて翌朝。
首を傾げながらも手を差し出すと、大隊長さんが笑顔で何かを渡してくれました。
そこにあったのは、鈍く輝く、翼と剣があしらわれた――
「それ、バッジじゃないかにゃ?」
『レンジャー徽章……いいんですか?』
『勿論だ。君にはその資格がある……ああ、国内では着けないでくれよ?』
『みくの分は無いの?』
『ハハハ。また来た時のお楽しみさ。今度は正規の装備を担いでもらってね』
「う……い、いやー、遠慮しておくにゃあ……」
『フフーン! 大隊長さんもなかなか見所のある男じゃないですか!』
『こっちこそ色々と教わったよ。また来てくれ、二人とも!』
共に訓練を潜り抜けた戦友たちからの盛大な声援を受けて、バスが出発します。
綺麗に整列した皆さんへ窓から手を振ると、彼らも元気に手を振り返してくれました。
「いやー、徽章もこれで二個目ですか。いっそ集めてみますかね」
「良い趣味してるよ」
「それ程でも」
「褒めてないにゃ」
みくさんと気力の抜けきった会話を交わす内、バスはヤンゴン国際空港へと到着しました。
筋肉痛確定の脚を叱咤してバスから降りると、みくさんの目が下手人の姿を捉えます。
うーん、全身の毛が逆立ってますね。いえ、毛というかオーラですか。
「あーー! Pチャン!! コイツー……何食べてるにゃあ!!」
「幸子もみくもお疲れ様ー。ソフトクリーム」
「見りゃ分かるにゃあ!! そういう事じゃなくて!」
「みくは元気だなー。この調子で早速もういっこいってみよう」
「…………えっ」
「冗談だよ。さ、帰ろ」
「幸子チャン、コイツ引っぱたいてもいい?」
「お願いなので日本着くまでは大人しくしててください」
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