Fate/GrandOrderの水着イベント第二部、『カルデアヒートオデッセイ』の終節の内容を含みます。ストーリーの読了を先にお願いします
主人公達が出発した後の話です
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一週目
魔猪により苦しめられていた我らうりぼう族を救済した偉大なる“九人の女神”……いや、うりぼう達を主食とする暴虐の魔王と伝えられてきた女神様を含め、改められた“十人の女神”の方達は、それらを指揮する最高神様と洞窟に眠られていた雷電の大魔術師様と一緒にこの島を出発なされました。僕を含めたすべてのうりぼう達は、惜別と感謝の気持ちで胸溢れさせながらその姿が見えなくなるまでお見送りしました。
次の日、残ったうりぼう達から構成された議会では、女神様達がこの島に御出でなさった日と御発ちになった日を祝日とすることが満場一致で決定されました。
また新たな女神像の建設も決定され、すぐさま作業が開始されました。
当然に長の仕事も大量となり、長は目が回るような忙しさとなりました。しかし長はそれらの仕事に辛い様子も見せず、むしろ心の底から嬉しそうに仕事をこなしていました。
「わしが幼き頃から聞かされてきた伝説の女神様にお会いすることができ、このような記念事業にも立ち会うことが出来るとは、わしはなんと幸福なうりぼうなんじゃろうなあ。」
元々細い目を更に細めながら、長は事あるごとにそう言うのでした。
ああ、尊き我らが女神様。我らうりぼう族はすべて、貴方達に感謝しております!
二週目
女神像建設は急ピッチで、かつ順調に進められています。今まで崇められていた“九人の女神”。それぞれ守護の女神、知識と呪印の女神、慈愛の女神、飽食の女神、鉄腕の女神、熱情の女神、屈折の女神、比翼の女神と連理の女神に、邪知暴虐の魔王とされていた女神を加え合わせて十柱の女神様達。
最高神様の像も作ろうと考えていましたが「結構です!」と、直々に偶像崇拝を禁止なされたので、その分よりいっそうの力が女神像建設に注がれます。
それぞれの特徴をダイナミックに表し、かつ細部にこだわりながらも女神達の神聖さを損なわず表現し切るため、うりぼう族の持てる総力が費やされています。
デザイン班は3DCGデータによりポーズから表情まで完璧に再現したデザインを作成。建設班は像の素材となる合金の準備を。設計班は3DCADによる作業工程の制作などを各自順調に進めています。3Dプリンターによる作成なので早ければ来週には女神像建設が完了するとか。まったくもって喜ばしいことであります。
そういえば最近、長の様子が少しおかしいとの噂がありました。何でも少し前に話したことでもすぐに忘れてしまうのだとか。長ももうかなりのご高翌齢。魔猪との対立から解放され気が緩んでしまったのかもしれませんね。
ああ、尊き我らが女神様。どうか長の調子が良くなりますように……。
三週目
女神像がついに完成しました!美しく、気高く、神々しく、女神たちの魅力すべてを余すところなく表現した力作です。落成式は盛大に行われ、島はまたもお祭り騒ぎです。島中すべてのうりぼうは女神に感謝の祈りを捧げ崇め奉りました。
この所調子の悪かった長も落成式では女神像完成を祝い、喜びに打ち震えていました。
「女神の祝福は我らのもとへ、いつまでも降り注ぐであろう」
この長の言葉を疑うものは誰一匹としていませんでした。
ああ、尊き我らが女神様。どうか長の言うように、うりぼう族に絶えぬ祝福のあらんことを……。
四週目
祭りが終わった後、長の状態はさらに悪化していきました。段々と言葉や道具の意味やその使い方を忘れていったのです。また元々の老齢もあってか体調も優れず、横になっていることが多くなりました。しかしそれでも、日課としている女神像への献花だけは続けています。
ただ問題は長一匹に収まるものではありませんでした。長の症状と同じ物忘れが、今度は島の中心近くに住む若いうりぼうたちにも出始めたらしいのです。ここに来て議会はこの症状の原因を探るべく調査団を結成し、日夜原因の究明に努めています。
ああ、尊き我らが女神様。どうか原因の究明と解決が早期にもたらされますように……。
五週目
うりぼう族を襲う未知の忘却の病。調査団はこれを“アムネジアシンドローム”と呼ぶことを正式決定しました。アムネジアシンドロームの被害はさらに広がっていき、約半分のうりぼう族が、程度の差はあれ罹患していると発表されました。
しかし調査の結果分かったこともありました。それは患者達の共通点です。まず一つは思考能力が高くないものから罹患していくということ。そのためまだ幼い子どもや長のような高翌齢の者達に症状が出やすいということでした。
もう一つは地理的要因。患者のほとんどは島の中心部に住んでいたうりぼう達でした。即ちそれは、この病の原因が島の中心部にあるのではないかという推測に繋がります。調査団は有志を募り、島の中心部の探索班を結成するようです。この探索で、アムネジアシンドロームの治療法が見つかればいいのですが……。
ああ、尊き我らが女神様。探索班にどうか祝福を……。
六週目
何故……何故女神様はこのようなことをしたのでしょうか……。
有志による探索が行われました。探索の様子は中継され、島中のうりぼう達はその様子を固唾を呑んで見守りました。そしてある程度時間が経った時に、“ソレ”を見つけてしまいました。
それは島の中心にあるトネリコの大樹に刻まれた呪印でした。その呪印は、我々うりぼう族の文化の発展に特に寄与したとされる、知識と呪印の女神のものによく似ていました。探索班のうりぼう達は女神のものとされる呪印に礼を捧げ、その呪印の調査に取り掛かろうとしたその時でした。
呪印に触れたうりぼうに、まるで雷が落ちたかのような衝撃が襲いました。すぐさま他の探索班が駆け寄ります。ですが、手遅れでした。
そのうりぼうは、失っていました。探索班に志願した熱意も、仲間と築いてきた絆も、想いを表すための言葉も。うりぼう族を発展させてきた、知性すべてを失っていたのです。
阿鼻叫喚。探索班も、中継を見ていたうりぼう達も。すべてのうりぼう族がそのような状態だったようです。僕ももちろんそうでした。
だって当然です。呪印に触れて知性を失ったうりぼうを見れば理解できてしまうことでしたから。アムネジアシンドロームの原因はまず間違いなくあの呪印。そしてあの呪印はおそらくは女神様によるもの。
つまりこの病を引き起こしたのは、他ならぬ我らが信仰していた女神様だということになるのですから。
ああ、貴き我らが女神様。一体何故このような仕打ちをなさるのでしょうか……。
七週目
アムネジアシンドロームを引き起こしたのは女神様だった。これを受けて議会は大荒れとなりました。議員達が女神肯定派と女神否定派に分裂したのです。
女神肯定派は、我々に知性をもたらした女神がその知性を失うことを望むのなら、それを受け入れようと述べました。
女神否定派は、如何に我々に知性を与えた女神だとしてもその知性を奪う権利など持つはずがないとして、アムネジアシンドロームの打破を掲げました。
議員達もこの時多くが罹患していたためか、議会は口汚ない罵り合いに終始し建設的な話し合いは中々進みませんでした。
そんな中でようやく決まったまともな提案が、うりぼう族全体の方針を決める国民投票でした。公開投票の強制投票。要するにうりぼう一匹一匹がどう考えているか、明らかにしようということでした。
それを受けて今、多くのうりぼうが深く悩んでいます。
ああ、貴き我らが女神様。僕は……僕はどうすればいいのでしょうか……。
八週目
投票の結果が出ました。結果は僅か数票差で僕を含めた女神肯定派が多数となり、うりぼう族は知性の喪失を受け入れることになりました。
これを受けて、女神否定派の議員は議会を脱退。賛同するうりぼうを引き連れての「新天地計画」を発案しました。新天地計画とは、この島を離れ、別の島へ生活拠点を移しそこで新たに文明を築くという計画です。
一度罹患したうりぼうでも、島の中心部から離れれば症状の進行は緩やかになるということが明らかになっていました。この日記を書く僕がアムネジアシンドロームに侵されていないのは、当初から島のはじの方に住んでいたからなのでしょう。
対して女神肯定派は、島の不要な設備解体と緑化運動、合わせて「自然回帰運動」に力を入れていくようです。我々が知性を失い野生のうりぼうへと還った後も、最高神が望んだように生きていくための活動でした。
「自然との調和を」
アムネジアシンドロームは、この最高神の言葉を忘れ驕り高ぶった我らへの罰なのだという見方が肯定派の主流でした。
我らの長は、投票時にはすでに知性がかなり喪失しかけていましたが、それでも女神への献花を止めなかったことから女神肯定派となりました。もう自力で身体を動かすことも叶わない状態ですが、それでも女神像の前へ連れていくと、以前のような目を細くした笑顔を見せてくれるのでした。
医者が言うには、もって数日だろうとのことでした。
ああ、貴き我らが女神様。どうか……長にお慈悲を!祝福を!
九週目
長が亡くなりました。死因は老衰とのことでした。
我々は知性を持つが故に、例え年老いて身体が動かなくとも出来ることがあります。しかし知性を失い野生へと還った時、身体が動かないというのは即ち死なのです。機能の終わりが生命の終わり。長の死は野生の摂理そのものを表しているような気がしました。
「女神様に……花を……」
消えかけの知性で、長が最後に言い残した言葉でした。
女神像はこれまで何度も存亡の危機に瀕していました。原因は女神否定派。女神に失望し、絶望した彼らは、その矛先を信仰の象徴である女神像に向けました。しかしその度に女神肯定派の面々が身体を張って、その破壊を防いできたのです。
魔猪に襲われた時も武器を取らなかった我々が、女神のために、互いに同じうりぼう族へ向けて武器を取る。皮肉としか言いようのないことでした。
それでも我々は女神像を守るために戦いました。女神像に花を捧げ続けるために……。
ああ、貴き我らが女神様。どうか……仲間を手に掛けた僕をお許しください……。
十週目
多くの女神否定派をのせた船が島を出ました。「新天地計画」です。結局肯定派と否定派は最後までわかりあうことができずに袂をわかつことになりました。悲しいことです……。
肯定派による「自然回帰運動」は順調にすすみ、6割の建造物は解体、3割の建造物が改築され、ひらけた空間には木や花や野菜などが育てられ、我々が野生に還ったあとの環境が整えられています。
野生化したうりぼうもついに出始めました。探索班に参加したうりぼう達は全員が野生化したとか。やはり呪印に近づけば近づくほどに影響が出る仕組みのようです。
こんな仕打ちをした女神様に思うところがないわけではありません。しかしそれよりもなお感謝の気持ちが勝るのです。だからぼくは、女神像に花と祈りを捧げます。
ああ、貴きわれらが女神様。あなたを否定しそうになる、弱いぼくをお許しください……。
十一週目
ついにぼくにも呪印の影響が出てきました。不安です。怖いです。
島に残ったうりぼうが一つ発見をしたようです。
それは、呪印の影響はどんなに離れてもゼロにはならないことです。つまり「新天地計画」で海に出たうりぼうたちも忘れ続けるということです。船の上で野生に戻れば、船を操ることはできません。死にます。どこか島をみつけていてほしいです。
「自然回帰運動」もほぼ完了しました。最後に残ったうりぼうがスイッチを押すことで、残った建物は女神像を除いて安全に崩壊し自然に還るらしいです。
最後に残ったうりぼうには、なりたくないなあ。
ああ、貴きわれらが女神様。どうか、どうか……ぼくが最後になりませんように……。
十二週目
なかまはだいぶ減りました。ほとんどが野生に戻ってます。テレビで様子がみれます。みんな幸せそうです。残ったなかまとは毎日れんらくをとってます。連絡がとれなくなるのはさみしいです。
ああ、とうときわれらが女神様。どうかもうすこしだけ仲間とれんらくがとれますように……。
十三週目(ロクオンヲカイシシマス)
れんらくできるうりぼうすくなくなりました。さみしいです。
やせいのなかまみてきづきました。みんなめがみさまにはなあげてました。
なんだかうれしいです。みんながめがみさまをわすれてないことが。
ああ、とうときわれらがめがみさま。どうかぼくも、めがみさまをわすれないでいられますように……。
十四週目(ロクオンヲカイシシマス)
れんらくとれない。ぼくさいご。なにか……。なにかあった……。
ああ、とうときめがみさま……。めがみさまって、なんだっけ。わからない。だけどなんだかあったかい。
そうだ。おさなきゃ。なにを?あの、まるいのを。だって……。そう、だってぼくがさいごだから。
おさなきゃ、おさなきゃ。
ポチッ
ケンチクブツノカイタイヲカイシシマス。アヤマッテオシタバアイハモウイチドボタンヲオシテクダイ。ケンチクブツノカイタイヲカイシシマス。アヤマッテオシタバアイハモウイチドボタンヲオシテクダイ。
ああ、やっとおわったんだ。これでぼくも、いっしょになれるんだ……。
ああ、とうときめがみさま。どうか……。どうか……おげんきで………。
ロクオンヲシュウリョウシマス
ここは影の国、“スカイ島”。
人理焼却より逃れた奇跡の島。
ここに住むのは小さな小さなうりぼう達。
彼らはごく普通のうりぼう達。
ただ野生に生き、子を産み、死んでいく、ごく普通のうりぼう達。
ただ一つだけ特徴が。
ここのうりぼう達は島にある何かの像に花を捧げる。
高度な文明が建てた10体の何かの像。
うりぼう達は今日も花を捧げている。
忘れえぬ感謝を示すかのように……
終わりです。
色々と話題になったうりぼう達のその後を想像して書きました。
ハッピーエンド、かなあ……?
A「今日も娯楽施設で遊ぶのは楽しいでありますなー」
B「女神様達のお陰ですなー」
C「ぴぎー」
A「どうしたでありますかー?」
B「ぴぎー」
C「ぴぎー」
A「ぴぎー」
B「ぴぎー」
C「ぴぎー」
かなしいなあ
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