「……………」
「どこだここは」
「寒いな、風が吹いてくる」
「通路か……それも、地下通路だ」
「地下街かもしれない」
「私は……」
「男、なのか分からない……女かもしれない」
「股間を触ってみたいが」
「何故か恥ずかしくて触れられない」
「髪は肩に触れる程度」
「眼前にチラつく限りでは黒髪、だろうな」
「胸は…やはり触れられない」
「何故か恥ずかしい」
「そうこうしていると、何処かからか水の音がした」
「見渡すが、水道管から漏れてそうな箇所は今いる場所からは見えない」
「殆どがシャッターが閉まっている通路だが、二つほどシャッターの閉じた店の横は閉まっていない」
「近づこうか、迷う」
「それを素通りすれば、私が立っている後方と目の前に、地上へと続く階段がある」
「しかし、目の前にある階段の三段目、よく見るとびっしりと天道虫が蠢いている」
「それらは何故か飛ばない」
「蠢き、ただただ三段目の段を埋め尽くしている」
「いま、私に取れる選択肢は幾つかある」
「舌を噛み切る事も、もしかしたら出来るかもしれない」
「しかし何故か恥ずかしい」
「見られている」
「二次元化され、更には文字化され、私の言葉を見ている者がいる」
「若いな」
「では適当に聞きたい」
「私はどうすればいい?」
「1、前方の階段に進む」
「2、後方の階段に進む」
「3、後方の階段より手前の店に近付く」
「4、衣服を詳しく探る」
「5、これは君に任せよう、私の運命は君に委ねたいと思う」
↓2
「……ああ、私の気まぐれでその前の人にも後の人にもなるかもしれない」
「自由に選択肢なり、願望を言ってくれて構わない」
「店に入るか、衣服の中を探る」
「とりあえずは探ってみる」
「履いているのは黒の革靴、黒の靴下、そして……黒のスカートだ」
「下着を見たいが、恥ずかしい」
「シャツは黒の無地、黒のパーカーだろうか」
「アクセサリーは無い……が」
「ポケットから、四角い木箱で手の中に納まる程度のサイズが出てきた」
「軽いが、蓋は開かない」
「鍵穴は無さそうだ」
「押し込んでも引いても、蓋は開かない」
「ポケットにしまうと、パーカーの中を探る」
「肩まで小さなポケットに入ってしまった」
「指先が、何かに触れる」
「引き抜くと私の手にはべっとりと白い濁った粘液がかけられていた」
「生臭い」
「何か拭くものが欲しいが、服しかない」?
「文字通り、ふくしかないのだろうか」?
「仕方ないので私は前方の階段を進もうとする」
「そこで、地下通路の奥から声が漏れ聞こえてくるのが分かった」
「若い少女の声」
「振り向いた先にあるのは、後方の階段手前にある唯一シャッターの閉じていない店だ」
「視線を向け、ゆっくりと爪先からそちらへ近づこうとする」
「私はこのままどうすればいいだろうか?」
「1、構わず前方の階段を上がる」
「2、店に近寄ってみる」
「3、声のした店に入る」
「4、構わず後方の階段へ進む」
「5、これは君に任せよう、私の運命は君に委ねたいと思う」
↓2
「通路に嫌な感じが、ねっとりと絡みつくような風が吹いている」
「音のした路地へ入ってみる」
「薄暗さは表の通りよりも濃く、冷んやりとした空気が流れている」
「裏路地、というものだろうか」
「女か男かは知らないが、私はか弱い」
「きっと暴漢に襲われでもしたらひとたまりもない」
「多分な」
「裏路地の奥まで行かないと、何の音かはわからない様だ」
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