依田芳乃「趣味は石川集めでしてー」 (28)
P「そうか、石集めとはまた古風というか……」
P「え? 石川?」
芳乃「石川集めなのでしてー」
P「石川集めってなに」
芳乃「石川集めは、石川集めなのでしてー」
P「それがわからないんだが」
芳乃「では、今からお見せするのでしてー」
芳乃「ぶおおー」
??「車で来ました」
P「うわっ! 芳乃の隣に突然野球ユニフォーム姿のチャラいお兄さんが!」
芳乃「一番近くにいた石川選手をお呼びしたのでしてー」
夕美「おはようございま……あっ! 静岡県生まれ、横浜高校出身、2004年ドラフト6位、横浜DeNAベイスターズ初代キャプテンの二塁手(遊撃手外野手三塁手)、石川雄洋選手だ!」
石川雄洋「ドモッス」
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P「なんか興奮してるぞ」
芳乃「夕美殿は神奈川県民ゆえー、ベイスターズに愛着があるのではないかとー」
芳乃「わたくしもー、お茶の名産地静岡の出身と聞いてー、てんしょんあがっていましてー」
夕美「サインもらえますかっ」
タケヒロ「イイっすよ」
夕美「わあ、ありがとうございます! あの、昨日のタイムリースリーベース素敵でした!応援してますから頑張ってください!」
タケヒロ「とてもうれしいです。久しぶりに打点あげられたんで、これからもっと打っていきます」
夕美「8月は石川選手の季節ですよね! どんどん打率あげちゃってください」
タケヒロ「優等生になります」
P「ちなみに芳乃。石川選手の打率ってどのくらいなんだ」
芳乃「2割1分6厘でしてー」
P「……コメントに困る低さだ」
芳乃「ここ数年は成績が低迷しているゆえー、本人もファンの皆様もやきもきしていることでしょうー」
芳乃「しかし、まだ諦めるには早いのでしてー」
拓海「石川さん! 根性入れて、もっと打って走って守ってくれよ!」
拓海「盗塁王争った時くらいのを期待してるぜ!」
里奈「あとあと、納豆みたいにネバネバ粘る泥臭い感じ? マジ好きだから、そっちもよろしくっす☆」
タケヒロ「頑張ります!」
芳乃「彼を信じ、応援してくれるファンがいる限り……その熱き血潮が冷めることはないのでしょうー」
芳乃「栄冠をつかむ、その日まで」
P「……ファンが力をくれる、か」
P「そういう意味では、野球選手もアイドルと似ているのかもな」
P「球場というステージで、観客を魅了するプレー……パフォーマンスを披露する」
芳乃「その時のために、幾度となく鍛錬を繰り返す……確かに、同じなのでして」
友紀「わかる」
P「どっから出てきたんだお前」
友紀「あたしあるところに野球あり、野球ある所にあたしありだよ!」
友紀「残念ながら、今のキャッツに石川っていう選手はいないけどね」
友紀「3年前、ロッテ石川のくじをあててればなー。でもでも、小林がいないキャッツっていうのも想像すると恐ろしいしー」
P「友紀のキャッツトークが始まってしまった」
芳乃「ふむふむ。ほうほうー」
P「芳乃、話の内容わかるのか?」
芳乃「まずは、話を聴いてあげること。それが一番大事なのでしてー」
P「……さすが」
拓海「また燃える走塁見せてくれよな!」
里奈「守備はもうちょい丁寧によろー☆」
夕美「12年目の意地を!」
タケヒロ「そうっすね。守備は丁寧にやらなきゃいけないっす」
タケヒロ「僕が活躍できれば、チームは必ずクライマックスシリーズに行けると思うので」
タケヒロ「一生懸命頑張ろうと思うので、頑張ります!」
卯月「私も頑張ります!」
夕美「卯月ちゃんいつの間に!?」
タケヒロ「とても、声援が、僕の、活力になるので。ハマスタを満員にしてください」
タケヒロ「順位争いの瀬戸際なので、よろしくお願いします」
タケヒロ「あと、横浜高校が甲子園に出場するので。そっちも応援お願いします」
P「石川さん、車で帰っていったな」
芳乃「もうすぐ試合前の練習なのでしてー」
P「というか、なぜ芳乃がほら貝を吹いただけで石川さんが出てきたんだ」
芳乃「趣味は石川集めなのでしてー」
P「深く考えてはいけないのか」
友紀「ちなみに、石川集めを始めたきっかけってあるの?」
芳乃「あれは、わたくしがまだ小さかった頃の話でしてー」
芳乃「ばばさまのお手伝いで、山菜を取りに出かけた時……わたくしはばばさまとはぐれてしまいまして」
芳乃「心細く、途方に暮れていたときー、ふと見つけたのがー」
ペンギンの着ぐるみ『かつおくん まいご』
かつお『お、本当だ。君、大丈夫?』
芳乃「ペンギン殿と、カツオ殿だったのですー」
P「ペンギン? カツオ?」
友紀「多分ペンギンじゃなくてつばめだよね。つば九郎だよね」
友紀「カツオっていうのは、ヤクルトスワローズの石川マサノリ投手のあだ名だね」
友紀「身長は170センチより低くて小柄なんだけど、テクニックで抑える小さなベテランエース! あたしも好きだよー」
芳乃「あれが、わたくしと石川の初めての出会いだったのでしてー」
P「なぜ山奥にその二人がいたのかが気になる」
芳乃「まあまあーヤクルトどうぞー」
芳乃「つばくろう殿とマサノリ殿、おふたりと話しているうちにー、わたくしの心も落ち着いてきましてー」
芳乃「そうしているうちに、ばばさまがわたくしを見つけてくださったのです」
芳乃「マサノリ殿を見たばばさまは、興奮のあまり10枚ほどツーショットを撮ってもらったのです」
友紀「つばくろうが『ぱちり』って撮ってくれたの?」
芳乃「はい」
芳乃「ばばさまは言いました。『石川の声に耳を傾けなさい。きっと芳乃を導いてくれる』と」
P「ばばさま、興奮しすぎて意味わからないこと言ってないか?」
芳乃「それからわたくしは、石川を集めるようになった次第でしてー」
芳乃「はじめは、プロ野球チップスのカード集めから始めました」
友紀「あ、芳乃ちゃんプロ野球チップス集めてるんだ! なら余ってるカードあたしと交換しない?」
芳乃「喜んでー」ニコッ
芳乃「ばばさまと暮らしていた頃は、近くにコンビニがありませんでしたゆえー、プロ野球チップスを買うのにも一苦労でした」
芳乃「東京は、その点では便利でして」
P「いたるところにコンビニやスーパーがあるからな」
芳乃「そうして、少しずつ石川集めをしているうちに」
芳乃「いつの間にやら、ご本人を呼び出すことができるようになったのでしてー」
友紀「なるほど!」
P「待て。なるほどってなる要素がひとつもなかったが」
友紀「信念岩貞をも通すってことだよね」
芳乃「でしてー♪」
P「わからない……」
友紀「ねえねえ芳乃ちゃん! 他にも石川を呼び出せないの?」
芳乃「お安い御用でしてー」
芳乃「ぶおおー」
石川アユム「ゴエモンです」
友紀「おおー! ロッテの先発2枚看板のひとり、石川アユムだ!」
友紀「芳乃ちゃん、もっともっと!!」
芳乃「ぶおおー」
石川シンゴ「鎌ヶ谷から来ました」
友紀「日本ハムの石川シンゴ外野手! 頑張って一軍に上がろう!」
芳乃「ぶおおー」
石川マサノリ「久しぶり、芳乃ちゃん」
友紀「カツオきたーー!!」
芳乃「ぶおおー」
タケヒロ「車で来ました」
P「2回目!?」
芳乃「ぶおおー」
石川リヨウ「怪我はもう大丈夫です」
友紀「リヨウ君だ!」
P「ゴルフに飛び火してる!」
芳乃「なんだかノッてきたのでしてー」
芳乃「ぶおおー、ぶおおー!」
芳乃「ぶおおおおおおおおおおおおお」
ぞろぞろぞろぞろ
P「うわ! なんだこのユニフォーム集団!」
友紀「あれは……独立リーグ・BCリーグの石川ミリオンスターズの選手たち!」
P「まさか全員呼び出したのか!? おい芳乃、これ以上は部屋に入らな――」
芳乃「過去現在未来、すべての石川集めを敢行するのでしてー!」
友紀「うわあ、なんかよくわかんないけどすごい人数!?」
友紀「あ、あたしあの人教科書で見たことある! 一握の砂の作者だ!」
P「もうなにがなんだか――」
石川五ェ門「またつまらぬものを斬ってしまった……」
P「ついに次元の壁すら突破してるぞ!」
芳乃「ぶおおおおおおおおお」
友紀「い、石川の波に押しつぶされちゃう~~~」
P「も、もうダメだ。世界は石川に包まれて終わってしまう……」
………
……
…
P「はっ!?」
P「ここは……俺の家?」
P「布団の上……眠っていた?」
P「夢、だったのか……」
P「そうだよな。いくら芳乃が神秘的だからって、さすがにあそこまで無茶苦茶できるわけないし」
P「安心した。今日も一日頑張ろう」
事務所
P「おはようございます」
芳乃「おはようございますー」
P「っ……よ、芳乃」
芳乃「? そなたー、どうかしましてー?」
P「芳乃。ちょっと聞きたいんだけど、君の趣味はなんだっけ」
芳乃「趣味は石集めでしてー」
P「石川集めじゃなくて?」
芳乃「ほう?」
P「いや、いいんだ。忘れてくれ」
P「ふう……ほっとした」
ガチャ
雪美「P……おはよう……」
P「ああ、雪美。おはよう」
雪美「ペロも……Pにあいさつ……」
ロペス「オハヨゴザイマス」
P「………」
P「あの、誰。この色黒のマッチョな外国人」
雪美「……? ペロ……だよ……?」
雪美「ホセ……ペロス……背番号……2」
ロペス「ベイスターズノファースト、マカセテクダサイ」
雪美「かわいい……」
雪美「勝負がかかる……しびれる瞬間……流れを我らに……」
芳乃「アニモペロスでしてー」
P「………」
P「う、うわあああああああ!!」
おしマイケル中村
よしのんの声が聞こえた影響で頭がおかしくなったので書きました。お付き合いいただきありがとうございます
過去作
P「ストイックな元隣人」
佐藤心「夜の事務所でふたりきり」
などもよろしくお願いします
タケヒロがんばって
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