津田タカトシ「…10年前に行けるアプリ?」 (158)
コトミ「うん ほら」つ
スズ「…」
タカトシ「…」
コトミ「コレで10年前に行けるんだよー」ニコニコ
スズ「…」
タカトシ「…」
スズ「じゃあ 私は先に生徒会室行ってるから」スタス…
タカトシ「待って萩村 俺ひとりにしないで」ガシッ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1470172856
スズ(妹でしょ キチンと面倒見なさいよ)ヒソヒソ
タカトシ(無理無理 俺ひとりじゃとても無理ッ)ヒソヒソ
スズ「ハァ…」
「それはアレでしょ
10年前の出来事とか写真とかを
いろいろ閲覧できるってアプリ…よね?」
タカトシ「あーそうやって懐かしい気分になろうって感じのかな」
スズ「そうそう」
タカトシ「でもオレ 10年前の出来事なんてあまり覚えてないな」
スズ「私も そのころ海外いたしね」
タカトシ「そっかー じゃ 生徒会室行くかー」
スズ「そうねー」
スタスタス…
コトミ「ちょっと待ったーッ」
コトミ「もう ふたりとも全然信じてないー」
タカトシ「そんなのを信じろって言われてもな…」
スズ「行けるわけないでしょ 10年前になんて
時間をさかのぼる理論なんてまだどこも発見してないし」
「もし発見されてたとしても
たかだかスマホのアプリで過去に行けるなんて…ね」
コトミ「でも本当にいけるんですよ コレで」
タカトシ「まだ言うか」
コトミ「だってもう行ってきたんだからッ」
タカトシ「ええッ?」
コトミ「証拠だってあるよ」
タカトシ「証拠?」
コトミ「いろいろ写真撮って来たから ほら」つ
タカトシ「…」
スズ「…」
コトミ「コレが10年前の桜才で コレがウチの近所」
タカトシ「イヤ 今との違いが…よくわからない」
スズ「10年ぐらいじゃほとんど変わらない場所ってあるしね…」
コトミ「じゃあ これはどうですか」ツー
タカトシ「アッ…エ?」
スズ「…これって?」
コトミ「10年前の私とタカ兄だよ」
スズ「確かに…似てるわね」
タカトシ「イヤでも…ただ単に似てる子の写真撮っただけかも
それか ウチにあった昔の写真をスマホに入れただけ…」
コトミ「もー 疑り深いなあ タカ兄は」
タカトシ「だって こういうタイムマシンモノって
過去の自分と接触しちゃいけないってよく言うだろ
自分が消えちゃうとか」
コトミ「そうだったの? 怖ッ」
スズ「確かに言うかもしれないけど それも単にSF的な空想よね
誰かが試したわけでもないし…試せないことだし」
コトミ「じゃあ大丈夫だったんだし大丈夫だね
スゴイ発見だぁ」
スズ「自分だけが消えるのは空想でも…
同一の時空に同じものがふたつ存在してしまうと
物理法則に矛盾が生じてしまって…最悪宇宙の消滅ね」
タカトシ「あーそういうのもよく言うなあ」
スズ「…でも粒子レベルで見てみれば今の自分と十年前の自分はまったく別のモノ?…だけど今の自分を構成してる粒子は十年前にも存在していたはず…だから結局矛盾が?…」ブツブツブツ
タカトシ「萩村 戻って来いッ」
コトミ「まあまあそんな難しい話はしなくていいじゃないですか
そうだ 会長の写真も撮ってきたよ」
タカトシ「行ったのか わざわざ会長に会いに」
コトミ「ウン ほら」つ
タカトシ「んー?」
スズ「…誰?」
コトミ「誰って会長ですよ 10年前の」
タカトシ「これが?」
スズ「似てないわね 別人でしょ」
コトミ「えー そうかなあ? まんまじゃないですか」
タカトシ「そうは見えないな」
スズ「…」コクン
コトミ「おかしいなあ…ちゃんと名前も聞いたのに」
タカトシ「…じゃあもういいだろこの話はこのへんで」
スズ「そうねー じゃあ行きましょ」スタス…
コトミ「だから待ってーッ」
コトミ「もーっ やっぱり全然信じないんだから」
タカトシ「うーん…」
スズ「証拠がイマイチ信憑性に欠けるわね
まあ写真ぐらいしか持って帰れるものも無いだろうケド
…ほかには何か撮ってないの?」
コトミ「もうコレくらいかなぁ
スズ先輩はおウチ行ってもいなかったし」
スズ「そのころ海外だったから…」
コトミ「アリア先輩は おウチは行けても中には入れなかったなあ」
タカトシ「10年前はまだ知り合ってないしなあ…」
コトミ「うーーん じゃあもう行こうか三人で」
タカトシ「え?」
スズ「…」
コトミ「行こ 10年前に」
スズ「嫌よ」
コトミ「えー」
コトミ「どうしてー?」
スズ「ウソだったらそれはそれでいいんだけど
万が一本当だったら…どう反応していいかわからないわね
これまでの価値観が一気に崩れそう」
「そもそも 十年前と今とじゃ宇宙の中における地球の位置がまったく違うんだからそういう座標の計算もしないと仮に十年前に行けたとして宇宙空間に放り出されるだけで…」ブツブツブツ
タカトシ「萩村 こっち戻れッ」
コトミ「だから そんな難しい話はいいんですよー
すぐすむから行きましょうよぉ」
「こうやって三人でなるべくくっついて」グイッ グイッ
スズ「ヒャッ///」
タカトシ「おいッ まだ行くなんて…」
コトミ「えい」Pi
コトミ「ほら」
タカトシ「は?」
スズ「え?」
コトミ「来れたよー 10年前」
タカトシ「ここが? もう?」
コトミ「うん」
タカトシ「イヤ…なにかそれっぽいエフェクトとか音とか」
コトミ「そういうのとくに無いみたい」
タカトシ「そうなのか…というかホントに10年前か?」
スズ「全然変わりないわね…」
タカトシ「…」モゾモソ
「…」ジッ
スズ「自分のスマホの時計とカレンダー見ても 意味無いわよ」
タカトシ「そうだな…何かわかりやすい違いがあればいいけど」
コトミ「いろいろ雰囲気違うよ ちょっと見てみよ」スタスタ
スタスタ
キョロキョロ
タカトシ「別に…」
スズ「普通よね」
ジロジロ
ヒソヒソ
タカトシ「でもなんか…やけに気にされてるような」
スズ「普段見かけない連中だってわかるのかしら
私たちが」
ヒソヒソ…ジロジロ…ヒソヒソ
スズ「私たちというか…」
コトミ「みんなタカ兄を見てるね…」
タカトシ「…」
ザワザワ…ザワ
スズ「ねえ そういえば10年前って…」
タカトシ「うん なに?」
スズ「ココ(桜才) まだ女子高だったはずよね」
タカトシ「え」
コトミ「あ」
ザワザワザワザワ!!
.
続く
「生徒会役員共」のSSです
エロやボケ、SF要素はほとんどないですが
突っ込みどころは多くなると思います
よろしくお願いします
ザワザワ
オトコノコダ…
ザワザワ
タカトシ「」アセアセ
スズ「津田がいるのはかなりマズいんじゃ…」
ダンシダ…
ナンデ?…
ザワザワ
ケッコウカワイイ…
オイシソウ…
タカトシ「ヒッ」
コトミ「タカ兄 モテモテだなあ」
スズ「ンなこと言ってる場合じゃないでしょ」
ザワザワザワ
タカトシ「」ガクガクブルブル
スズ「」ギュッ
タカトシ「萩村?」
スズ「喋らないで」
タカトシ「…」
スズ「ひとまず逃げましょ」
タカトシ「」コクン
コトミ「そっか 女子高だから雰囲気違うんだ」
スズ「なに言ってんの 一緒に逃げるわよ」ギュッ
ダダダダッ
ア ニゲタッ!
ツカマエテッ!
.
…ダダダダッ
ドコ?
ニガスナッ
アッチサガシテ!
ゼッタイニトラエロ!
ダダダダダッ…
タカトシ「」ブルブルブルブル…
コトミ「行ったか?」
スズ「…」
「…みたいね」
「もう大丈夫よ」
タカトシ「ああ…ウン…」ブルブル…
「フゥッ…」
コトミ「ね? 10年前だったでしょ」
タカトシ「…お前の言うとおりだったヨ…だから戻ろう すぐ戻ろう」
スズ「そうね」
コトミ「えー もうちょっと見たくない?」
タカトシ「…もうヤダ」
スズ「すぐ戻って」
コトミ「はーい」Pi
コトミ「戻ったよ」
タカトシ「本当か? 確かか?」
スズ「ちょっと様子見てくるから ここでじっとしてて」
タタタッ…
…タタタッ
スズ「大丈夫…みたい 普通に男子いたし」
タカトシ「そっかぁ」ホッ
「…」
「…オマエ 何やってんだよ」
コトミ「え? 私?」
タカトシ「10年前はまだ女子高だって知らなかったか?」
コトミ「…忘れてた ゴメンなさい」
タカトシ「ハァァァ…」
「もういいか 生徒会いくか」
スズ「そうね…でもなんでそんなスマホのアプリで過去に行けちゃうの?」
コトミ「さあ?」
スズ「そもそも 宇宙にあるすべてのエネルギーを足しても質量あるものは光速を超えられないっていうのにたかだかスマホに使う電力程度で過去に行けるなんておかしいでしょどういう理屈なの」ブツブツブツ
タカトシ「萩村も戻れー」
カキーン
.
スズ「ハァ…行きましょ」
タカトシ「そうだな」
スタスタ
ガヤガヤ
ワイワイ
タカトシ「なんだか急に」
スズ「騒がしくなってるわね…」
カキーン
コトミ「なにか行事でもあったっけ?」
スズ「別になにも無いはずよ」
タカトシ「…」ウンウン
ガヤガヤ
コトミ「騒いでるのって男の子ばかりだね」キョロキョロ
スズ「もうちょっと静かにできないのかしら」
タカトシ「いいんじゃないかなあ 元気で」
スズ「なんだかそれ 年配のひとの意見みたい」
ワイワイ
スタスタ…
カキーン
.
スタスタッ
スズ「さっきから気になってるんだケド」
タカトシ「うん」
カキーン
スズ「あれは何の音?」
タカトシ「グラウンドからだな」チラッ
コトミ「ソフトボール部じゃないですか」
スズ「にしては」
カキーン
スズ「微妙に違うのよね いつもと」
コトミ「そうかなあ?」
タカトシ「うん 違うな」ジーッ
スズ「でしょ」
タカトシ「あれ 野球だ」
コトミ「へえ」
スズ「ソフト部が気分転換に野球でもしてるの?」
タカトシ「いや 野球部だ アレ」ジーーッ
コトミ「ウチ野球部なんてあった?」
スズ「ないわよ」
タカトシ「うん 男子の野球部なんて無かったはず…なのにある」
カキーン
.
スズ「なに言ってんの? ウチにそんなのないでしょ」
タカトシ「萩村も見てみろって…野球してるから 男子が」
スズ「…野球して遊んでるだけじゃないの」ヌッ
コトミ「ホントだー 野球してる」
スズ「ねえ…グラウンドのあっち側…」
タカトシ「サッカーしてるな…男子が」
スズ「うん」
コトミ「男子のサッカー部なんてあった?」
タカトシ「無い…」
コトミ「いつできたの?」
スズ「できてないわよ」
タカトシ「なにかおかしいな なにかが」
スズ「ウン…」
コトミ「そういえば」
タカトシ「なんだ?」
コトミ「男子増えてない? 急に」
スズ「そうなのよね…さっきから目に入ってくる半分以上が…」
タカトシ「男子生徒だなあ」
スズ「しかも見覚えのない生徒がたくさん…」
タカトシ「今日は他校の生徒がウチに見学に来る日とか?」
スズ「そんなの私たち生徒会が聞いてないはずないでしょ」
コトミ「あ もしかして…10年前から戻ってきたと思ったら
実は何年か先の未来に来ちゃってたとか?
それで男子が増えてる」
スズ「なに言ってんのよ」
タカトシ「でも いつの間にか男子の野球部やサッカー部があったり
男子生徒が増えてるのは コトミの言ったことでも説明がつくような?」
スズ「んー…まさか本当に未来?」
畑「あら?」ヌッ
続く
以前と違って、この板で露骨にエロいコトを書くのはダメになったようなので
エロい展開は無いです
畑「萩村さん こんなところでどうしましたか」
スズ「あ 畑さん?」
畑「生徒会には行かなくていいの?
会長も七条さんも気にしてましたよ」
スズ「いえッ いまから行こうかと…」
タカトシ(畑さんがいるってことは)ヒソヒソ
スズ(ちゃんと元の時間に戻って来れたのよね)ヒソヒソ
コトミ(よかったぁ)
畑「?」
「ココで何してるの?」
スズ「いえあの グラウンドを見ていたところです」
畑「グラウンドですか?」ススッ
「…野球部ですね」
スズ「…」
畑「去年は創部2年目にして地区予選の準決勝まで行きましたから
今年はさらにその上を目指して気合入ってますよ」
タカトシ「そ…そうなんですか」
(創部2年目ってどういうこと?)ヒソヒソ
スズ(聞かないでよ まだ頭がまとまってない)ヒソヒソ
畑「…」ジーッ
畑「…萩村さん?」
スズ「はいッ」
畑「萩村さんが男子生徒と仲良くしているなんて珍しいですね」
スズ「は? 津田とはいつも…」
畑「あぁ そうでしたね 津田タカトシくん
思い出しました 萩村さんとはクラスが同じですね
そちらは妹のコトミさん」
タカトシ「はぁ?」
コトミ「へ?」
畑「役職柄 生徒の顔と名前はできるだけ覚えるようにしてますが
なかなか大変です」
スズ「…そうなんですか」
畑「それにしても
萩村さんと津田くんがそんな親密な関係だとは知りませんでした
さっそく一枚撮りますね」
パシャッ
タカトシ「」
スズ「…」
畑「では私はこのへんでー
あとはごゆっくりどーぞ」ソソクサッ
タタタタッ
.
コトミ「なんか変だったね?」
タカトシ「うん…」
スズ「…」
タカトシ「また冷やかされたかな?」
スズ「…」
タカトシ「俺のことよく知らない…ようなこと言って」
スズ「本当によく知らなかったのかも…ふたりのこと」
コトミ「え? それって…?」
タカトシ「どういうこと…?」
スズ「ココの畑さんはあまり知らないのよ
津田のことも コトミのことも」
コトミ「ココ?」
タカトシ「…」
スズ「ココの津田は生徒会には入ってないんでしょね
だから畑さんの印象に深く残ってない…」
コトミ「さっきからなに言ってんですか?
中二が目覚めちゃった?」
スズ「違うッ」ビシッ
タカトシ「もしかして俺たち…」
スズ「…」
タカトシ「違う世界に来ちゃった?」
スズ「…」コクン
コトミ「えッ それってパラレルワールド?」
タカトシ「だな…」
コトミ「すごい! ホントにあったんだ!」
タカトシ「なにを能天気に…」ハァ
スズ「パラレルワールドというか
世界が改変された…と言ったほうが正しいかもだけど」
コトミ「それってどう違うの?」
スズ「…簡単に言えばもうひとつの世界が生まれてしまったか
ひとつだけの世界が変わってしまったか ってこと」
コトミ「そっかぁ」
タカトシ「どうしよっか コレ ホントに」
スズ「どうしよ」
スズ「とりあえずはココがどんな世界か知っておく必要があるわね
そしてなぜこの世界になったか考えましょう」
「そうしたら元の世界に戻す方法もわかるかもしれない」
タカトシ「戻せるの?」
スズ「こうなった原因を突き止められれば もしかするとね
そのためにはまた10年前にいく必要があるんだろうケド」
タカトシ「ウッ…」
コトミ「やっぱり私たちが行ったから?」
スズ「でしょうね」
コトミ「でも私ひとりで行ったときは特に何もなかったよ?」
スズ「アナタが気付いてないだけで
どこか変わってたのかもしれないでしょ」
コトミ「そうなのかなあ」
タカトシ「…ココってどんな世界なんだろ?」
スズ「まず言えるのは」
スズ「男子生徒の数が多くて 男子の部活もある」
タカトシ「うん…それから?」
スズ「少なくとも畑さんと七条先輩と私たち三人はウチ(桜才)の生徒で
津田と私は同じクラス」
タカトシ「会長は?」
スズ「畑さんは『会長』と言っただけで名前までは言ってないから
それが誰かはまだわからないわ」
タカトシ「あっ そっか~」
スズ「そして私は生徒会 畑さんはあの様子だと新聞部で間違いないわね
津田とコトミが部活や委員をやってるかはわからない」
タカトシ「そうか…オレ生徒会じゃないのか」
コトミ「タカ兄は生徒会入らなかったら
なにか部活やってそうなイメージだね」
タカトシ「そうかも…アレ?
ということはオレ今サボってるってこと?」
スズ「部活に入ってるとしたらそうなるわね」
タカトシ「うわ~~~元戻りてー」
タカトシ「…って 萩村も生徒会サボりだよな」
スズ「…うん」
コトミ「行かなくていいんですかあ」
スズ「こんな状況で行きたくない…
もし七条先輩以外が知らないひとだったら…私ひとりだけ気まずくて」
タカトシ「そっか」
「じゃあやっぱり 戻す方法を考えないと」
スズ「そうね そのためにはこうなった原因を…」
コトミ「だからそれは 私たちが行ったからだよねえ?」
スズ「行って 私たちなにをしたっけ」
コトミ「三人で歩いたねー」
スズ「それで?」
コトミ「みんなに見られて」
スズ「…」
コトミ「逃げた」
スズ「なぜ逃げなきゃいけなかったのかしら」
コトミ「タカ兄がいたから」
スズ「そうね おそらく津田が原因」
タカトシ「え? オレ?」
コトミ「やっぱタカ兄か~」
タカトシ「オレ? 俺が悪いの?」
スズ「悪くは無いわよ 巻き込まれただけなんだから」
「でも 津田が女子高だった桜才に現れて
騒ぎになったのは間違いないでしょ」
タカトシ「うん…」
スズ「その騒ぎがきっかけで共学化が何年か早くなった…
と私は考えてるけど」
タカトシ「…なんで?」
スズ「さっき畑さんが言ってたでしょ 野球部は去年が創部二年目…って」
タカトシ「ああ そうか
ということは今年で三年目」
コトミ「元の世界じゃ 三年前ってまだ共学になってないはずだよね」
スズ「うん 私たちの知ってる桜才は共学化二年目にはまだ男子の部活が無いから
こっちでは野球部が創部されたさらに何年か前に共学化されてると思うの」
タカトシ「そうかー」
スズ「なぜ共学化が早まったのか
その騒ぎの後さらに何かがあったからよ
具体的に何があったか 知る方法はないかしら」
タカトシ「じゃあやっぱり戻らなきゃいけない?」
スズ「なんの策も無しに戻りたくないし
戻ってすぐにソノ何かが起こるとは思えないわね
ココに居たままなにか情報が手に入れば…」
タカトシ「学校のことに詳しい人といえば…」
コトミ「学園長?」
スズ「いろいろと忙しいだろうし
いきなり行って話し相手をしてくれるかどうか…」
タカトシ「それじゃあ…」
タカトシ「失礼しまーす」ガチャ
畑「おや 萩村さんと先ほどの津田タカトシくん…と?」
コトミ「津田コトミです!」
スズ「…」
畑「生徒会には行かないの?」
スズ「大事な用事があるんです」
畑「生徒会よりもですか」
スズ「はい」
畑「うかがいます」
スズ「えっとまずは…生徒名簿ってありますか?」
畑「生徒名簿ですか?」
スズ「はい」
畑「ありますが」
スズ「…」
畑「わかりました」
ガソゴソ
畑「こちらです」つ
スズ「ありがとうございますッ」つつ
パラパラ
タカトシ(ウーン やっぱり)ヒソヒソ
スズ(知らない人多いわね 男子に)ヒソヒソ
タカトシ(見た感じ 男女比がほとんど半々だな)
コトミ(男子多いのってちょっと嬉しいかも)
タカトシ(ナニ言ってんだ)
コトミ(ア…)
スズ(どうしたの)
コトミ(仲良しの子が何人かいない…)
タカトシ(…)
コトミ(えっ…どうして?)
タカトシ(増えた男子の分
うちに来るはずだった女子が減ってるんだな)
スズ(共学化が早くなって環境や校風が変わったから
ウチを選ぶのやめた って子がいてもおかしくないわ)
コトミ(そんなぁ…
行くんじゃなかった…10年前なんて…)シュン
スズ(いまさら事の重大さに気付いたの?)
コトミ(…はい)
スズ(アナタも元に戻す方法を考えて)
コトミ(うん)
畑「あのー」
スズ「はいッ」
畑「大事な用事って名簿を見ることなの?
萩村さんは生徒会室で好きなだけ見られるのでは?」
スズ「いえ あのッ」
「…」
「10年前に 桜才学園で何があったか 畑さんは知りませんか?」
畑「10年前ですか…私も八つか七つのころですし
学園史に書かれてる以上のことはさすがに何も」
スズ「そうですか…」
畑「10年前なら 私より学園長や先生に聞けばいいのでは?」
タカトシ「先生…ああそっか 横島先生だ!」
スズ「そうねッ 横島先生はココ出身だっていうし
ちょうど10年前は生徒だったはず」
コトミ「やったー」
畑「横島先生ですか?」
スズ「はい いまは職員室でしょうか」
畑「停職中ですよ?」
スズ「」
タカトシ「」
続く
時間モノはどうしてもややこしくなって突っ込みどころが増えそうです
畑「またやらかしてしまいまして
おそらく今年度中は自宅謹慎でしょうね
忘れてました?」
スズ「はい…」
タカトシ(横島先生の家ってどこだっけ)ヒソヒソ
スズ(知らないし…行く余裕なんてたぶん無いわ)
タカトシ(そっか…)
スズ「…」
「じゃあ…桜才が共学化したのは何年前ですか」
畑「4年前ですよ 今年で5年目」
タカトシ(ということは 共学化が3年早いってことかな)
スズ(うん 10年前に行ったその6年後に共学化したわけね)
タカトシ(ややこしいな…)
スズ「それで…」
畑「はい」
スズ「なぜ桜才の共学化が早まったのか…
いえッ 桜才が共学化したそのわけを知ってますか」
畑「少子化の影響による生徒数の減少を解消するため
あるいは 伝統を進化させ 新たな価値観を生み出すため…
と一般的には言われていますが」
スズ「あ…それはそうなんですけど他にナニか
もっと直接な理由を畑さんは知らないでしょうか」
畑「…難しいことを聞きますねえ」
スズ「スミマセン」
畑「ちょっと小耳に挟んだことがあるのですが」
スズ「はい」
タカトシ「…」
畑「共学化の話は学校側からではなく
生徒のほうから希望する声が出てきた…
と聞いたことがあります」
スズ「それは何年前の生徒から…」
畑「そこまでは知りませんよ」
スズ「そうですか…」
「…」
「…」
タカトシ(…萩村?)
スズ(コレぐらいね 私が聞けることって)
タカトシ(そうか…)
スズ「いろいろと ありがとうございます」
畑「はい どういたしまして」
スズ「ではそろそろ この辺で…」
畑「ではそろそろ 私のほうからもお聞きしますね」
スズ「は?」
スズ「あの 私たちにいったいナニを?」
畑「そうですねえ なぜ10年前のことや
桜才の共学化についてそんなにこだわってるのか
知りたいです」
スズ「…」アセアセ
畑「そして おふたりの仲についても いろいろ聞きたいですね」
スズ「…答えなきゃダメですか」
畑「皆さまの疑問にいろいろと答えましたから
わたしも当然その見返りは求めますよ?」
タカトシ「」
スズ「…」グヌヌ
畑「まあ 他に何か面白い話があるのならそちらでもかまいませんが」
スズ「そんな話」
タカトシ「別に何も…」
コトミ「私ありまーす」ノシ
畑「ほお なんでしょう」
コトミ「私は 12才までタカ兄と一緒にお風呂入ってました!」
畑「…」
タカトシ「」
スズ「」
畑「興味深いです」b
コトミ「」b
コトミ「――――――――」ペラペラ
畑「――――――」メモメモ
コトミ「――――――――――――――――」ペラペラペラペラペラッ
畑「――――――――――――――」メモメモメモメモメモッ
タカトシ「クッ…///」
スズ「別に いままで聞いたことある話ばかりよ」
タカトシ「そーかもしれないけど…
でもやっぱりココの畑さんにとっては知らない話なんだな」
スズ「みたいねー」
畑「――なるほど タカ兄さんは右乳首のほうが感度がいい…と」
コトミ「はいっ」
畑「ということで 貴重なお話ありがとうございます」ペコリ
コトミ「どういたしましてー」ペコリ
タカトシ「失礼しましたー」ガチャ
スタスタ
タカトシ「で どうするの」
スズ「どうしよ」
スズ「気になるのは 生徒から共学化の声が出たってところね」
タカトシ「う~~ん」
「オレが10年前に現れたことがきっかけで
共学化の声が出てきたのかな」
スズ「情報は少ないけど
そう判断していいと思う」
タカトシ「たった何分間か居ただけでかあ」
スズ「津田を見た生徒だって何十人といたわけでもないし…」
タカトシ「それだけでこうまでなるなんて…」
スズ「…」
コトミ「ウチの女子って ずっと同じなんだねえ」
スズ「そんなの一部だけよ」
タカトシ「…と信じたい」
コトミ「でも男子と仲良くしたいと思って
学校変えちゃうのはすごいと思うよ?」
タカトシ「確かにすごいと言えばすごいか…何年もかかったけど」
スズ「…」
コトミ「それでねえタカ兄 思ったんだけど」
タカトシ「ん なんだ?」
コトミ「私たちがこのアプリを使うちょっと前に戻って
私たちで私たちが10年前に行くのをやめさせるってどうだろ」
タカトシ「ややこしいな…」
コトミ「それか さっき行った10年前と同じぐらいの時間に戻って
誰かに見つかる前に帰らせるってのは?」
スズ「宇宙が崩壊しそうなアイデアね…でもそのアプリって
ぴったり10年前だけじゃなくて時間を細かく調節して戻れるの?」
コトミ「ええっと…」モゾモゾ
「…」ジーッ
「…ちょっとわかんない」
スズ「そぉ…戻れてやめさせたところで
またいろいろと矛盾を生んでしまって…どうなっちゃうか」
タカトシ「じゃあやっぱり10年前のあの続きに行くしかないんだな」
スズ「…」コクン
タカトシ「行ってどうしたらいいんだ? オレたちは」
スズ「思ったんだけど…」
スズ「あの時逃げ出したのが間違いだったのかも」
タカトシ「…」
スズ「デマカセでもハッタリでもいいからなにか…
他の学校から見学に来た…とでも弁明してたら
こうはならなかったかもしれない」
コトミ「間違いは誰にでもありますよ スズ先輩
これから取り戻しましょうよ」
スズ「…そうね」
タカトシ「そもそもオマエがおおもとの間違いを起こしたんだけどな…」
「…でもどうしよっか
10年前の桜才にオレが現れた って事実は変えられないし」
スズ「そーね 津田が…男子が現れちゃったコトはどうしようもないわ」
コトミ「…」
タカトシ「そこからどうすればいいんだ?
どうすれば共学化を遅らせる…じゃなくてもとの世界通りに…」
スズ「うーーん…」
コトミ「私わかっちゃったかも」
タカトシ「えッ?」
スズ「わかったって何が?」
コトミ「もとに戻す方法」
タカトシ「どうやって?」
コトミ「タカ兄 女の子になって」
タカトシ「は?」
続く
津田はもう男の娘として生きるしかないのかどうか
タカトシ「女の子?」
コトミ「うん 女の子」
タカトシ「女の子に…?」
コトミ「なるの タカ兄が」
タカトシ「…どゆこと?」
スズ「女装するってこと?」
コトミ「そうだよー」
タカトシ「絶対ヤダ」
スズ「どうして女装なの?」
コトミ「男の子がいたからこういうことになったんなら
じゃあ男の子じゃなくなればいいんじゃないのかなって」
タカトシ「…」
スズ「…」
コトミ「だからー タカ兄は実は女の子だってみんなに説明すれば
その後で共学化にしたいとか思わないんじゃないの?」
タカトシ「いやそんなバカな」
スズ「…」
タカトシ「だよな? 萩村」
スズ「アリね」
タカトシ「えッ」
コトミ「でしょ?」
スズ「少々無理があるけど うまくいけば」
タカトシ「その無理をするのは俺だよ?」
スズ「でも 女装のための衣装はどうするの?」
コトミ「うーん 誰かに借りる?」
スズ「誰に?」
コトミ「アリア先輩?」
スズ「なんて言って貸してもらうの?
この世界では津田のことよく知らないんじゃないの」
コトミ「あー そーなのかなー」
スズ「無関係なひとに何かを借りるのは避けましょ
また世界が変わったときにややこしいことになりそうよ」
タカトシ「世界が変わると 貸した本人が貸したこと自体を忘れちゃうかな?」
スズ「忘れるというか 貸した事実が無かったことになるかもしれなくて…
それなのにこちらには借りたものが手元にあるかもしれなくて…
ということでまた宇宙が崩壊ね」
コトミ「…なんかまた怖ッ」
コトミ「難しいなあ…私の制服は?」
スズ「サイズ合わないでしょ
津田に着せてる間なに着るの」
コトミ「別に着てなくていーよ」
スズ「却下」
コトミ「じゃあ…なに着て女装しよっか」
タカトシ「イヤイヤ…だから女装がヤダって!」
コトミ「わがままだなあ タカ兄は」
タカトシ「オレがかよッ」
スズ「じゃあ女装はやめて…」
タカトシ「」ホッ
スズ「男装してる女子って設定にしましょう」
タカトシ「」
コトミ「さすがスズ先輩 そういう手もありますね」
「タカ兄は私に似てかわいい顔してるから
そのままでもけっこういけると思いますよー」
タカトシ「いや…なんかそれも…ヤダ」
スズ「そのままなのはさすがにちょっと不安ね」
コトミ「マスクならありまーす あと香水も」
スズ「なにも無いよりはマシかな」
コトミ「じゃコレ着けてみて タカ兄」つ
タカトシ「だから…ヤダッ そんな設定」
コトミ「もぉ 覚悟決めたほうがいいよ この辺で」
スズ「うん もう黙ってていいから ただ立ってればいいから
あとは私たちでなんとかするから
だから妥協して」
タカトシ「クッ わかった」つ
ゴソゴソ
タカトシ「…」
スズ「…」
コトミ「…」
スズ「…何か足りないわね」
コトミ「うーん 胸かな」
スズ「それ」
タカトシ「」
コトミ「じゃあ この包帯をサラシがわりにして」
「…」ゴソゴソ
「パッドも」
スズ「…なんでアナタがつけてるの」
コトミ「私でも盛りたいときがあるんですッ」
スズ「…そう」
「じゃあ コレつけて」
タカトシ「ンなあっさり言われても…」
スズ「…」ジロッ
タカトシ「…」
「どうやってつけるの? コレ」
スズ「…」
コトミ「私手伝うね」ヌガセヌガセ
タカトシ「オイっ ココでかよッ」
スズ「///」
コトミ「出来たよー」
タカトシ「…」
スズ「…なかなかね」
タカトシ「クッ こんなとこ他の誰かに見られたら…」
スズ「じゅあ次 こっち入って」スタスタ
タカトシ「え 女子トイレに?」
スズ「ココから移動しましょう」
タカトシ「ちょっと緊張する…
いま使った男子トイレじゃダメなの?」
スズ「そっちは10年前どんな状態だったかわからないでしょ」
タカトシ「あ そうか」
スズ「壁の中ってこともないだろけど 念には念を入れましょう
ここはいつも人が少ないし 10年前もたぶん同じ…と思うから」
タカトシ「そこはちょっと適当なんだな」
コトミ「じゃさっそく行く?」
スズ「ちょっと待って」
タカトシ「まだ何かある?」
スズ「さっきも言ったけど
向こうに着いて誰かと会っても津田は一切しゃべらないで
声で怪しまれるから」
タカトシ「うん」
スズ「何があっても 怖がったり動揺したりしないで」
タカトシ「わかった」
コトミ「じゃ行くね」Pi
コトミ「10年前の生徒たちよ 私は帰ってきた!」
タカトシ「声が大きいッ」ビシッ
スズ「津田も黙って」
タカトシ「ハイ」
スズ「まだ言いたいこともあったのに いきなりなんだから」
コトミ「え なんでした?」
スズ「…もういいわ 行きましょ」
スタスタスタスタスタ…
スズ「さすがにもう騒ぎもおさまって…」
アッ イタ!
ダダダダダ…
スズ「…無いのね」
タカトシ「…」ゴクリ
スズ「…」
「落ち着いて…堂々としてて」
タカトシ「」コクン
コトミ「後は気合と気迫だね!」
…ダダダダッ
.
続く
コトミはいつでも明るいところがいいな
空気読まないとこも
ツカマエタ!
セ タカクテカワイイネ
ナニシテアソブ?
サイショハワタシダカラナッ
タカトシ(ヒッ)
ザワザワザワ…
スズ「皆さん!」
エ? ナニ?
ビックリシタ
スズ「お騒がせしてもうしわけありません!」
「私は隣の県の女子中からきた荻村といいます
今日は 制服が似ている学校があるということで
この三人でこちらまで見学に来ましたー」
コトミ「来ましたー」
エ?
ジョシチュウ?
ザワザワザワ…
スズ「…」
タカトシ「…」
コノコ オンナノコ ナノ?
スズ「はいッ 彼は…
いえ彼女は背も高いしこんな格好なので
男子に間違われることも多いですが普通に女子ですッ」
コトミ「いつも男の子っぽい格好をしてたい子なんです!」
タカトシ「…」
スズ「先ほどはびっくりしてつい逃げ出しちゃいました
もうしわけありませんでした」ペコリ
コトシ「でしたー」ペコリ
タカトシ「…」ペコリ
ナンデマスク?
スズ「いきなり走ってノドを痛めちゃったので…
彼女はいま何も話せませんが…とにかくそういうことですッ」
…
…
スズ「…」
タカトシ「…」
ナァーンダア
オンナノコカア…
ガッカリ
スタスタスタ…
.
タカトシ(なんとかごまかせた…?)
スズ(シッ)
タカトシ(…)
スズ(まだひとり…)
…
ジー
タカトシ「…」
ズンズン
ジーーーー
タカトシ「…」アセ
ジッ
…ホントニジョシ?
スズ「女子ですッ」
ジーッ
タカトシ「」アセアセ
クンクン スンスン
タカトシ(ンッ)
クンクン…
ウーン…
スズ「…」
タカトシ「…」
モミッ
タカトシ「…」
モミモミ
ンー?
モミモミモミ…
タカトシ「…」
コレ ホンモノ?
スズ「ホンモノです」
コトミ「サラシ巻いてるからー」
ソオ?
……
スッ
カチャッ カチャッ
タカトシ(ヒイッ)
スズ「チョッ なにするんですか!」バシッ
タカトシ「」ガクガクブルブル
コトミ「ヨシヨシヨシ」ナデナデ
ヌイデミテ
スズ「なにを言うんですか」
オンナドウシダロ
スズ「女同士だからといってなんでもしていいわけではないと思いますッ
卑猥なことはとくに強制すべきではありません」
ンーーー
ア マダココイタンダ
スタスタ
ナニ
センセーヨンデルヨー
エー ナンデ
マタ リョウニ オトコツレコンデタデショ
バレテタカ…
ハヤクイッタホウガイイヨー
ワカッタ-
タタタタッ
ゴメンネー ユックリケンガクシテネー
スタタタッ
.
コトミ「みんな行っちゃった」
スズ「…」
タカトシ「…」
スズ「行きましょ」
コトミ「どこに?」
スズ「戻るの 未来に」
コトミ「コレでもうイイの?」
スズ「わからないケド やれることはやった」
タカトシ「…」
スズ「誰かに見つかってまた変な展開になったらヤだから
さっさと戻りましょう」
コトミ「そうですねー」
スズ「目立たないように」
スタスタ
スタタタタ…
スズ「確かここよね」
コトミ「そうでしたよ」
タカトシ「…」
スズ「じゃお願い」
コトミ「はーい」Pi
コトミ「で」
タカトシ「ちゃんと元通りの世界なのかな?」
スズ「グラウンドは…」
カコーン
スズ「あれはソフト部ね 女子の
他の部も…全部女子よね」
タカトシ「ということは」
コトミ「ヤッター 戻ったー」
スズ「…」
タカトシ「どうかした?」
スズ「ちょっと様子を見て回りましょうか」
テクテクテクテ…
タカトシ「男子もいたし
とくに変わったところはなさそうだけど?」
スズ「うん もしかすると現在も女子高のままの世界…なんて思ったけど
考えすぎだったみたい」
タカトシ「うわっ それヤだな」
コトミ「よかったー 元に戻って」
タカトシ「コレで一段落かな」
スズ「うん またあとで名簿を確かめましょ
ところで津田」
タカトシ「なに?」
スズ「そのマスクと胸のと いつまで着けてるの」
タカトシ「あ」
ゴソゴソ
タカトシ「早く言ってくれよ」
ゴソゴソ
タカトシ「はい」つ
コトミ「着けててよかったのに
そのうち新しい世界に行けるかも」
タカトシ「なに言ってやがる」
スズ「それとコトミ」
コトミ「なんですー?」
スズ「そのアプリ もう消したほうがいいわ」
コトミ「えー」
タカトシ「そうだな
過去に行ってもロクなことにならないってわかっただろ」
コトミ「えーでも このアプリ作ったひとを探して
時間犯罪で世界を支配しようとする悪い組織を
そのひとと一緒にやっつけるって展開じゃないの? 今からは」
タカトシ「するかッ そんなこと」
スズ「10年前に行って 世界変えちゃって 元に戻して
なんてすごい経験できたんだから満足でしょ
もう消して」
コトミ「もったいないなあ
でもそうかなあー」モゾ…
アッ
タカトシ「ん? あ」
スタスタッ
カエデ「ここにいたんですか 探しましたよ」
カエデ「こんなところでなにしてるの
生徒会の仕事しないで」
スズ「いろいろと立て込んでまして…急な用事で」
カエデ「クラスのほうの用事ですか?」
コトミ「この世界を書き換えていました!」
カエデ「は?」
タカトシ「いえッ もう用事は終わりましたから」
カエデ「そうなの?」
スズ「はい すぐに生徒会へ行きます」
カエデ「ならいいんだケド…」
「じゃあ 今日もいろいろと仕事が多いので
しっかりとお願いします」
タカトシ「はーい がんばります」
「会長」
コトミ「…え?」
つづく
自分の書いたSSでカエデが出てくるのは初めてです
カエデ「…ところで津田くん?」
タカトシ「はいッ」
カエデ「そのカッコ だらしないですね」
タカトシ「え…」
カエデ「シャツの裾です きちんと中に入れてください
副会長なんだから」
タカトシ「あッ はい」ゴソゴソ
カエデ「裾だけじゃないですよ」
ツカツカ
カエデ「…」ジッ
タカトシ「…」
スズ「…」ムー
コトミ「…」
カエデ「ボタン 外れてます」
タカトシ「う…暑いんだからコレくらいよくないですか」
カエデ「その気持ちはわかりますが
生徒会は常に生徒の模範となってください」ゴソゴソ
タカトシ「わかりました…」
カエデ「それとネクタイも」スッ
タカトシ「ン」
カエデ「ゆるめないでくださいね」キュッ
コトミ「…」
タカトシ「…」
カエデ「…なにか?」
タカトシ「前もこういうことありましたよね」
カエデ「///」
タカトシ「ひどい目に会いましたけど…」
カエデ「あの時は緊張して…七条さんがそそのかすから…」
スズ「締めたところで気絶しましたねー
チカラ入っちゃったまま」シラジラ
タカトシ「死にかけました…」
カエデ「わ…悪かったと思ってますよッ
あのころは男のひと相手は…
今だって津田くん以外はまだ全然…」ギュウゥゥッ
タカトシ「いえ 別に責めてるわけじゃないので…
落ち着いて…それ以上絞めないでッ」
パシャリ
カエデ「え?」
畑「いいところを撮らせてもらいましたー」
カエデ「畑さん!?」
畑「今回もいい絵ですねえ
まるで新婚夫婦の朝 みたいじゃないですか」
カエデ「///」
畑「もしくはダンナの浮気グセをとっちめてる若奥さま」
カエデ「」
「冗談はやめてくださいッ」
コトミ「…」
畑「夫婦といえば 五十嵐会長は津田くんのおウチで
ごはんを作ったりお掃除したりいろいろ世話をしている
と聞きましたが本当なの? 通い妻のように」
カエデ「そんなこと…///」
畑「どうなの? 津田くん?
お弁当も作ってもらったと聞きましたよ」
タカトシ「はい うちは両親ともが家あけること多いですからねー
俺もコトミも家事は全然ダメですし」
カエデ「津田くんッ そういうことは答えなくていいの!」
スズ「だいたいいつも私と七条先輩も一緒なんですが」ボソッ
コトミ「…」
畑「またいい記事が書けそうです
楽しみにしてくださいね」
カエデ「え 今の話載せちゃうの?
ダメです! 写真も消してください!」
畑「では このへんでー」ノシ
ビュー タタタタッ
カエデ「あ 畑さん!?」
タカトシ「行っちゃった…」
スズ「いつもの光景ですね」
カエデ「クッ…」
「…」
「…私は畑さんに急用ができてしまったので遅れますケド
ふたりは生徒会の仕事を始めておいてくださいッ」
スタスタスタ…スタタタタタッ
タカトシ「はーい わかりましたー」
スズ「すぐ始めまーす」
コトミ「…」
ガチャ
スズ「遅くなりました」
タカトシ「ましたー」
アリア「ふたりともやっと来たねー」
スズ「すみません いろいろと急な用事ができちゃいまして」
アリア「そうなんだ コトミちゃんも?」
コトミ「…」
タカトシ「はい…そです」
アリア「三人でいったいどんな用事をしてたのかな」
スズ「…」
タカトシ「…」
アリア「そこにカエデちゃんも加わって…4Pだったんだね!」
タカトシ「なんの話ですか」
アリア「ずるいなあ 次は私も呼んでね」
スズ「じゃ仕事始めましょう」
タカトシ「おー」
アリア「コトミちゃんも手伝ってくれるの?」
コトミ「あ…」
スズ「じゃあこのファイルの中身 日付け順に並べて」つ
コトミ「…」
アリア「なんだか今日はおとなしいね」
タカトシ「いろいろあってさすがに疲れたかな」
アリア「いろいろヤって?」
スズ「七条先輩はコチラをお願いしまーす」
アリア「はーい」
モクモクモク…
ガチャ
カエデ「ただいま…」
アリア「おかえり」
カエデ「ハァ…」トボトボ
タカトシ「畑さんとは どうなりました?」
カエデ「見失っちゃいました…」ストン
タカトシ「そうですかー」
カエデ「あれ? 手伝ってくれてるの?
ありがとー」
コトミ「…いえー」
アリア「そういえばさっきから気になってたんだけど…」
カエデ「なんです?」
アリア「津田くん 今日はなにかいい香りがするね」
タカトシ「え?
…あ」
アリア「ほら」スンスン
タカトシ「ゥッ 近いですよ///」
アリア「いい香りしてくるよ 香水つけた?」
タカトシ「コレはさっき…
クラスでふざけてかけられちゃいまして…」
コトミ「…」
スズ「…」
アリア「カエデちゃんも嗅いでみたら?」
カエデ「私はそういうことは…」
アリア「そういわないで だったら独り占めしちゃうよ?」スンスン
カエデ「わかりましたよッ」
「…」
アリア「近くでね」
カエデ「ウッ」
「…」ソー
「…」クンクン スンスン
タカトシ「///」
カエデ「///」スンスン
パシャ
カエデ「え?」
タカトシ「ウヮ」
畑「またまたいいところを撮っちゃいましたー」
カエデ「いつのまに!?」
タカトシ「オレもビックリしましたよ もー」
畑「はい 実はずっと皆さんの足元に」
カエデ「え?」
畑「この机の下に隠れてました」
タカトシ「なるほど」
スズ「飽きもせずよくやりますね」
カエデ「七条さん…知ってましたよね」
アリア「ゴメンね 面白そうだったから」
カエデ「」グヌヌ
畑「またいい絵が撮れましたよ
津田くんのフェロモンに惹かれてうっとりとする五十嵐会長
という記事にしましょうか」
カエデ「いい加減にしてくださいッ」バッ
畑「あら」
カエデ「この写真もさっきの写真も消去させてもらいます」Pi
畑「そんなー」
アリア「さっきの写真ってコレ?」つ
カエデ「」
カエデ「どうして七条さんが持ってるんですか!」
アリア「えっとー…」
畑「こうやって消されてしまってもいいように
いい写真は信頼できる方々に自動で送信しているんです」
カエデ「なっ…」
スズ「なかなかいい手ですねー」
カエデ「誰に…何人に送ったんですか」
畑「それはコチラにも守秘義務がありますから…
…ということでこれから大切な打ち合わせなので
この辺でー」ノシ
ビューー
カエデ「あ…」
バタン
アリア「いっちゃった」
カエデ「ハァ…」ストン
「まったく畑さんは…」
「ごめんね 津田くん
いつも迷惑かけて」
タカトシ「いいですよ 俺は気にしませんから」
カエデ「…そぉ」
スズ「ちょっとは気にしたら?」
コトミ「…あのー」
スズ「なに?」
コトミ「出来ましたー」
アリア「ありがとー」
スズ「じゃあ次 こっちしてくれる? 同じように」
コトミ「うん ところでー」
タカトシ「なんだ?」
コトミ「今日って会長休みなんですか?」
スズ「は?」
アリア「え?」
タカトシ「なに言ってんだ?」
カエデ「私ならずっといますけど」
コトミ「いやだからー」
「シノ会長ですよ」
アリア「…」
スズ「…」
タカトシ「…誰?」
コトミ「だからー」
続く
最初は『天草シノの消失』というタイトルにしようかと考えたけど
あまりにネタバレすぎるので無難にしました
コトミ「シノ会長です
天草シノ会長!」
カエデ「アマクサ? 七条さん 知ってます?」
アリア「ううん 知らないなあ」
コトミ「え」
スズ「…」パラパラパラ
タカトシ「何年生? なんの会長してるひと?」
アリア「なにかの委員会…の会長のひと?」
カエデ「そういうのは『会長』より『委員長』って呼ばれますね」
アリア「あ そうだったね
じゃあ なんの会長?」
コトミ「生徒会長です!」
カエデ「だから私ですって」
コトミ「イヤだからー」
スズ「…いま名簿を見てみたけど
アマクサって生徒はいないみたい」
コトミ「えーッ
じゃあ…ココってまだ元通りの世界じゃないのかな」
カエデ「なんの話です?」
スズ「…」
スズ「会長…ちょっと出てもいいでしょうか
急なヤボ用です」
カエデ「そう? すぐ戻りますよね」
スズ「はい」スクッ
「津田と」ガシッ
タカトシ「んおッ」
スズ「コトミも」ガシッ
コトミ「ぐえッ」
スズ「一緒にですが」
カエデ「え 連れてっちゃうの?」
アリア「ずるいなー」
ズルズル…
スズ「では失礼します」バタン
タカトシ「いやもう…全部元に戻したんじゃないの?」
スズ「…」
コトミ「だから シノ会長がいないんだって
タカ兄本当に知らないの」
タカトシ「知らないなー」
コトミ「ひどいなー」
スズ「ねぇ」
コトミ「はい?」
スズ「さっき…10年前の会長だって見せてくれた写真があったケド
それがアマクサさんって子?」
コトミ「そうです! さすがスズ先輩」
「ちゃんと覚えてますよね シノ会長のこと」
スズ「いえ知らないけど」
コトミ「そんなー」
コトミ「このひとがシノ会長です」つ
スズ「10年前のでしょ」
タカトシ「やっぱり全然心当たりないな」
スズ「私も覚えないケド
コトミの知ってる世界ではこの子が生徒会長だった
って言いたいわけね」
コトミ「はいっ」
スズ「この子は桜才にいないから私たちは誰も知らない…
でもこの子が桜才で生徒会長をしてる世界を
コトミだけが覚えてる…ということ?」
コトミ「そうだと思います!」
タカトシ「でもイマイチ…信じきれない…かも」
コトミ「えー」
タカトシ「かといって疑いきれないんだよな」
スズ「そうね」
タカトシ「このひとがウチの会長の世界…と言われても実感無いけど
でも自分自身が別の世界を見てきたばかりだしなあ」
スズ「それもあるし いまさらこんなウソ熱心についても
コトミもそんなに面白くないと思うのよね」
コトミ「だから本当ですよー」
スズ「最近撮った画像は無いの?
そのアマクサさんと私たちが一緒に写ってるものでもあれば
一気に信じられるかな コトミのスマホなら残ってるんじゃ」
コトミ「あー…スマホは買ってもらったばかりで
そういう写真はまだ全然」
タカトシ「ゲームばかりしてたしな」
スズ「そんなことだと思った」
コトミ「グヌヌ」
「でも本当にシノ会長がホンモノの会長なんです」
タカトシ「それじゃあ会長がニセモノみたいだろ」
スズ「コッチの世界だと五十嵐会長がホンモノの会長だから
そこは認めてね」
コトミ「ん~~~~」
コトミ「どうして会長が消えちゃったのかなあ…
やっぱりタカ兄がキチンと女装しないとダメだった?」
タカトシ「俺もいろいろワケわからないけど
それじゃないのはわかるぞ」
スズ「…コトミ ひとつ勘違いしてない?」
コトミ「え? なんですか」
スズ「さっき私たちが世界を変えたり戻したりしたのと
その子が消えちゃったのとは
なんの関係も無いんじゃないの」
コトミ「え どういうこと?」
スズ「そのアプリを私たちに見せに来る前に
コトミは一度ひとりで10年前に行って その子に会ったんでしょ?」
コトミ「うん」
スズ「それがきっかけで今私たちがいる世界に変わったんだと思う」
コトミ「え?」
スズ「だから コトミがアマクサさんに会ったことがきっかけで
世界が書き換わっちゃったの」
「それに気がつかないまま私たちにアプリを見せにきて
さらに世界を書き換えたり戻したりしたの
もともとアナタが居た世界じゃないのよ ココは」
コトミ「えー!」
「ということは…コレ…実は異世界モノ!?」
スズ「…」
タカトシ「異世界はちょっと違うと思うなあ
魔法とか無いし」
スズ「どうでもいいッ」ビシッ
コトミ「ああぁ…私が会長に会ったからなのかあ
会うんじゃなかったなあ」
スズ「10年前のこの子に会って何かした? 変なこと」
コトミ「変なことはしてません!
写真とったり お話したり 遊んだり」
スズ「なにを話したの 桜才には来るな とか?」
コトミ「言わないですよ!
普通のこと 学校のこととか なにして遊んでるとか」
タカトシ「たったそれだけで未来が変わるのか…
まあさっきのこともあるし」
スズ「うーん…」
コトミ「また10年前に行って戻さないとですね」
スズ「…」
タカトシ「…」
スズ「どうしても戻したいって言うなら
そのアマクサさんの現状を知っておいたほうが
何かヒントになるかも」
コトミ「はーい」
コトミ「桜才にいないとしたらどこの学校行ったんだろ」
スズ「英稜か聖光あたりかしらね」
コトミ「あ 英稜ならお姉ちゃんが知ってるかもしれないね タカ兄」
タカトシ「…お姉ちゃん…って?」
コトミ「え? ア…なんでもない!」
タカトシ「ウチにもそのひとのこと知ってる生徒がいるんじゃないかな
小学校や中学校が同じで」
スズ「うん そうよね」
コトミ「…」
スズ「知らない?
同級生だったって生徒」
コトミ「全然…」
スズ「ひとりも?」
コトミ「ウ…聞いたことないです…同級生の話なんて」
スズ「んー 情報少ないのね」
タカトシ「というか…10年前に会えたんなら今だって会えるんじゃないの?
そんな遠くに住んでたわけじゃないんだろ?」
コトミ「あ そうだよ 直接行けばいいんだ!」
スズ「それもどーかしら」
コトミ「え どーしてですか」
スズ「いきなり身も知らない三人組に訪ねられても
反応に困るんじゃないの」
タカトシ「…確かに」
コトミ「えーーでも 私は顔見知りだよ
10年前に行って会ったから」
スズ「子供の頃にちょっとだけ会ったひとのことなんて普通覚えてないわね」
タカトシ「うん オレはオマエに会ったことぜんぜん覚えてない」
コトミ「でもシノ会長なら…」
スズ「覚えてたとしても容姿が10年前とまったく同じなんて怪しすぎ」
コトミ「クッ」
スズ「…どうしても会いに行きたいなら その前に連絡でもしてみる?
コトミなら連絡先知ってるんでしょ」
コトミ「あ そうか 私のスマホに登録してる…」モゾモゾ…Pi
「…」
「…出ない」
タカトシ「電源切ってるとか?」
コトミ「使われてない番号だって…」
スズ「うまくいかないものねー」
コトミ「」ショボン
タカトシ「じゃあ…校内放送で呼びかける?」
スズ「あまり私的な目的で使うのも…」
タカトシ「掲示板に何か貼っとくぐらいなら今すぐできそうだけど」
スズ「何日も時間かけて探すしかないかしら」
コトミ「えーでも…」
スズ「本当になにも聞いてないの?
アマクサさんと同じ学校だった子」
コトミ「うーん…」
スズ「10年前には居たのが確かなら
小学校で会ってたひとがウチにいてもいいはずよ」
タカトシ「本当に心当たりないのか?」
コトミ「ウーーン…」
「…」
「…あ」
「小学校?」
小山「天草シノさん? はい 知ってますよ」
コトミ「よかったー」
スズ(ホントにいたんだ)ヒソヒソ
タカトシ(うん…)ヒソヒソ
小山「実習先の小学校で児童会長をしてましたよ
そのあともいろいろと連絡をとりあってます」
コトミ「この写真のひとで間違いないですよねッ」つ
小山「エエ だいぶ幼いころのですねー
こんな写真持ってるって 幼なじみなの?」
スズ「そういうわけでもないんですが…」
コトミ「シノ会長は今どこにいるんですか?
どこの学校に行ったんですか?」
小山「天草さんは今 海外にいますよ」
タカトシ「海外?」
小山「はい 留学して
飛び級で大学に進んで
起業して 6120万ドルの出資を集めたって」
スズ「なにそれすごい」
つづく
50レスぐらいで終わると思ってたけど倍いきました
コトミ「すごいの?」
タカトシ「すごいの?」
スズ「…けっこうすごいわよ」
タカトシ「そうなんだ…」
コトミ「へ~」
小山「起業したといっても
天草さんは起業メンバーの中のひとりってことなんだケド」
「向こうの技術系ニュースの記事にもなったみたいです
英語だけどね」Pi
「ほら これ」つ
コトミ「あ コレ会長だ」
タカトシ「まんま大きくなった感じだなあ」
スズ「そんなに優秀な方なんですか
アマクサさんって」
小山「はい 優秀でしたね
単に勉強ができるだけじゃなくて
礼儀正しくて 面倒見がよくて リーダーシップもあって」
「気になることはとりあえずなんでもやってみようっていう子ですね
誰よりも好奇心旺盛な子 イロイロな意味で」
「特にパソコンのプログラムなんかは得意ですね
スマホのアプリやゲームをひとりで作ってて
すごいと思いましたよ」
タカトシ「小学生でソレって…完璧すぎるひとですね」
コトミ「…」
スズ「アマクサさんがいるのは物理学と計算機学で
世界的に有名な大学なのね」
タカトシ「計算機?」
コトミ「電卓?」
スズ「違うッ」ビシッ ビシッ
「コンピューターを使って何をするか 何が出来るか…を
普通のひとじゃ想像できないぐらい懸命に学んでるってこと」
コトミ「へー」
タカトシ「なるほどー」
スズ「そこの学生中心で集まって起業したということね…
まったく新しい発想の次世代携帯通信デバイスを開発するって」
タカトシ「…」
コトミ「…」
スズ「だからッ 新型のスマホか
スマートフォンに変わる新しいものを作るってことじゃないの
詳しくはわからないけど」
コトミ「すごいねー」
タカトシ「だなあー」
スズ「わかってないでしょ」
タカトシ「そんなすごいひとが会長で…
コトミの言う世界でのウチってどんな学校だったんだ?」
コトミ「別に普通だったよー
タカ兄もスズ先輩もアリア先輩も全然同じ」
スズ「まあ…大きく違ってたのならすぐ気付いただろうし…」
コトミ「でも 私の知ってるシノ会長は
機械とかパソコンとかがすごく苦手だったけどなあ…」
スズ「そうなの?」
コトミ「うん ゲームは好きだったけど」
タカトシ「どうしてコトミと会ってああまで変わっちゃったんだろう」
スズ「うーん…」
コトミ「ハッ…もしかして
私の潜在能力をシノ会長が奪った!?」
スズ「どうしてかしらー?」
タカトシ「わかんないなー」
スズ「というかホントに…何を言ったの?」
コトミ「ナニって?」
スズ「小1か小2の子に何を言ったら
10年後には世界の最先端で活躍できるような
生き方を選ぶようになるの?」
コトミ「なんだろー?」
スズ「…アナタが変えた世界のことなんだから
もっと真面目に考えたほうがいいと思うけど」
コトミ「…はい ゴメンなさい」
「何も変なことなんて言ってないです…」
スズ「じゃあ 会って何をしたの?」
コトミ「会って…お話したり写真とったりお菓子あげたり…」
タカトシ「誘拐犯かよっ」
コトミ「…遊んだり」
スズ「遊んだって何をして?」
コトミ「ゲームで スマホの」
タカトシ「スマホの?」
コトミ「うん 写真とったとき珍しそうに見てたから…
貸してあげたらすごく楽しそうにしてたよ」
スズ「…」
「それじゃないの?」
コトミ「え?」
スズ「10年前にはスマホなんてまだ無かったんだから
珍しがるの当たりまえでしょ」
タカトシ「10年前には無かったの?」
スズ「まったく無かったわけじゃないけど
広く普及しだしたのはその何年か後よ」
タカトシ「そうなんだ…
そんなまったく見たことないものを子供が触ったら
そりゃ楽しいかもなあ」
スズ「その楽しさの影響でそういう道を選んじゃった…
なんて考えられるわね」
コトミ「そっかぁ…」
「またやらかしちゃいましたぁ…」
スズ「こっちのほうが先だったんだけどね」
コトミ「じゃあ 今度はどうやって戻せばいいんだろ」
スズ「…」
コトミ「どうやって戻したらいいですか?」
スズ「…戻すの?」
コトミ「あれ」
コトミ「え 戻さないんですか? スズ先輩」
スズ「…」
タカトシ「戻しちゃうのか?」
コトミ「タカ兄?」
タカトシ「俺たちと変わらないような年齢で
すごい場所ですごいことしてるひとなのに…
たかだか生徒会長に戻しちゃうなんて…もったいないよなあ?」
スズ「そうよね
世界の最先端でがんばってるひとをね…」
コトミ「え…でも…ここはホントは違う世界なんですよ?」
スズ「コトミにはそう見えても私たちはこっちの世界が本物だから
さっきと違って 積極的に元に戻したいとは思えないの」
タカトシ「だなあー」
コトミ「そんなぁ…」
スズ「でも…コトミがひとりだけで戻しに行くつもりなら
私たちには止められないわね」
タカトシ「…」コクン
コトミ「…」
コトミ「え…え じゃあ…一緒に行かないの?」
スズ「行かないわよ というか行けない」
コトミ「…」
スズ「アマクサさんのいる世界に一緒に行っても
私たちは気まずいだけだもんね」
タカトシ「全然知らないひとが会長ってことになるからなあ」
スズ「そうそう」
コトミ「じゃあ私ひとりで…」
タカトシ「そうなるなあ」
スズ「がんばってね」
コトミ「えー…」
「…私が行っちゃったらもうそれで
タカ兄とスズ先輩とはお別れってことなの?」
タカトシ「は?」
スズ「なんでそうなるの」
コトミ「だって…別の世界になったら
そこにいるタカ兄とスズ先輩は別のひとなんでしょ?」
タカトシ「…別のひとってことはないだろ
こっちで起こったいろんなことを知らないだけで」
スズ「それをいうならコトミがもともといた世界の私たちと
今いる私たちは別人ってなっちゃうけど」
コトミ「あれ? そうなの」
スズ「なにか違ってるところあったの?」
コトミ「うーん…」
「タカ兄は…」
タカトシ「俺は?」
コトミ「左乳首のほうが感度よさそうだった」
タカトシ「いつ試したんだよッ」ビシッ
スズ「別に何もなかったんでしょ 違うところなんて」
コトミ「うん ま そうです」
スズ「じゃあいいじゃない」
コトミ「うーん でもひとりでやらなきゃいけないのかあ…」
「…」
「…だけど なんだかコレって」
スズ「…」
タカトシ「…」
コトミ「私が主人公みたいだね!」
スズ「」
タカトシ「」
コトミ「世界の命運を任された孤高の戦士みたい…クーッ」
スズ「命運って程もないと思うし…」
タカトシ「…何と戦うんだ」
コトミ「すごいなあ コレが私の真の姿だったんだー」
スズ「自分に酔ってるわね」
タカトシ「変な気起こさなきゃいいけど」
コトミ「そうとわかれば…さっそく行こ タカ兄 スズ先輩!」
スズ「だから行かないって」
コトミ「えー」
タカトシ「勢いつけて言えば素直に着いてくると思ったか」
コトミ「やっぱりひとりで行くの心細いですー」
スズ「そうは言ってもねえ」
コトミ「だってどうやって戻せばいいんですかあ」
タカトシ「うーん 好きなもので釣るとか?
あるんだろ? そのひとにもそういうモノ」
コトミ「うーん 甘いものとかゲームとか」
タカトシ「ホントに誘拐犯だな」
コトミ「あとはお祭とかイベントとか 楽しいこと」
スズ「なんだか子供っぽいひと」
タカトシ「桜才に来たらどれだけ楽しいか…を説明するとか」
スズ「子供にそれを理解させるのは難しいかもだけど」
コトミ「役に立たないなー タカ兄は」
タカトシ「オマエには言われたくないよッ」ビシ
スズ「低レベルな争いはやめなさい」
「だいたい急いで元に戻す必要あるの?
ゆっくり考えてからまた10年前に行けばいいじゃない」
コトミ「でもこのアプリ 無料なのは最初の3日間だけで
あとは課金なんです 無料なの明日まで」
スズ「やっぱりそーゆーモノなのね
いくらなの?」
コトミ「えーっと…一回一往復で500円だって」
スズ「それくらい払え」
コトミ「えーでも お小遣いそんなに多くないです」
タカトシ「いつもムダ使いするからだ」
スズ「どうでもいい」ボソッ
「一回500円って ふざけた値段ね」
コトミ「高いですよね?」
スズ「逆! 安すぎ!
一回500円で採算取れるタイムマシンなんて
どんな技術使ってんのよ」
タカトシ「すごいモノつくるひとがいるんだなー」
スズ「感心しないの」ビシッ
コトミ「じゃあやっぱり探しに行きましょうよ」
スズ「誰を?」
コトミ「このアプリ作ったひと」
スズ「絶対行かない」
スズ「世界を元通りにしても
その世界の私にそのアプリの話題は振ってこないでね
面倒なことに関わらせたくないから」
コトミ「ノリ悪いなあ スズ先輩は」
スズ「面白半分で行動したくないだけ 私は」
コトミ「はぁ…じゃあもう ひとりで行ってこようかな」
スズ「ゆっくり考えればいいでしょ せめて明日までは」
コトミ「そのほうがいいかもだけど
私は早くシノ会長に戻ってほしいからなあ」
スズ「そう…じゃ好きにして」
コトミ「はーい」
スズ「上履きのまま行っちゃだめよ
10年前はあなたのクツが無いからね」
コトミ「わかってますよー」
タカトシ「気をつけてな」
コトミ「うん ありがと」
スズ「私たちももう生徒会室行くから
最後にひとつ いい?」
コトミ「はい なんですか」
スズ「コトミの納得のいく世界に戻ったら そのアプリは消すこと」
コトミ「はい!」
スズ「うん じゃあこれでね」クルッ
タカトシ「また後でなー」クルッ
スタスタ
コトミ「私も行ってきまーす」クルッ
ダダダダダッ
.
Pi
コトミ「…ってことでやって来たけど」
テクテク
コトミ「どーしたらいいのかなぁ
なーんにもわかんないまま来ちゃった」
トボトボ
コトミ「やっぱり明日にしたほうが…」
トボトボ
コトミ「はあ…会長が居たのは確かこの辺…」
テクテク
シノ「あ…」バッタリ
コトミ「ア…会長」
シノ「…」
コトミ「会長?」
シノ「昨日の誘拐ミスイ犯!」
コトミ「だから違いますよー」
続きます
次で終わるかな
シノ「お菓子をくれたりゲームで遊ばせたりする
見しらぬあやしいヤツが
誘拐犯でなければなんなんだ」
コトミ「別に怪しくないでしょー 普通のJKですよ 私は」
シノ「…JK?」
コトミ「女子高生」
シノ「ん…なるほど」
「…そんなわけのわからない言葉をつかうのはやっぱりあやしい
私をどーするつもりだ」
コトミ「どうもしないですよー お話したいだけです」
シノ「見しらぬやつと話すことなんてない!」
コトミ「あ 会長 お菓子食べます?」つ
シノ「」っ
「」モグモグ
シノ「」モグモグ
「」モグ…
「クッ…また知らないひとにお菓子をもらってしまった…」
コトミ「もう知ってる同士ですよ シノ会長
私の名前も教えましたよねえ?」
シノ「たしか コトミか」
コトミ「はい!」
シノ「で コトミよ 私となにを話すんだ」
コトミ「えっとー…将来のこと?」
シノ「将来?」
コトミ「未来のことです
会長は10年後にはどうしてたいかなーって」
シノ「…そんなことはあまり考えたことないが
りっぱな人間になりたいとは思ってる」
コトミ「そんなことが言えるって 会長はもう十分立派だよ」
シノ「…どうして昨日から 私のことを会長と言うんだ?」
コトミ「どうしてって…シノ会長は会長になるから
児童会長とか生徒会長とか」
シノ「なぜそんなことがわかるんだ」
コトミ「それはー 昨日も言いましたけど
私は10年後から来たからです」
シノ「10年後から来れるわけがない
子どもだからっていいカゲンなことを言うんじゃないぞ」
コトミ「だって本当ですよー」
シノ「ならばショウコを見せるんだ」
コトミ「証拠って…やっぱりコレしかないんだけど」つ
シノ「おおっ…」っっ
シノ「たしかに こんなゲーム機は見たことがないな」
コトミ「…ゲーム機じゃないですけどね
でもスズ先輩の話じゃ今もないわけでもないって」
シノ「だれだそれは」
コトミ「えーっと…未来で仲良くなるひとです」
シノ「そうなのか…」
コトミ「はい」
シノ 「…」
コトミ「…」
シノ「…」
コトミ「そのゲーム そんなに面白いですか?」
シノ「…ゲームはたいしておもしろくないし
遊べないゲームもあるぞ」
コトミ「あー ネットが通じてないからかなあ」
シノ「よくわからない説明だな
でも コレをさわってるのはなんかおもしろい」
コトミ「そうなんだ…」
「未来はそういうものを作るお仕事がいいとか?」
シノ「む…それはいいかもしれないな」
コトミ「あ」
(しまった…)
コトミ「そ そういう仕事もいいですけど
会長には会長が似合ってると思いますよ?」
シノ「うーんしかし 会長は大変そうだな
私は大変なことよりもっとたのしいことをしたい」
コトミ「楽しいんです! 生徒会長も」
シノ「…そうなのか」
コトミ「それにカッコイイです! 会長は」
シノ「どうカッコイイんだ 会長は?」
コトミ「うーん…権力があるところ?」
シノ「ケンリョクか…」
「そうか…いいかもしれないな」
「…」
「…」
「ん この写真はどこの学校なんだ?」
コトミ「え これは桜才学園ですよ
私が行ってる高校です…会長も」
シノ「コトミは高校生には見えないな」
コトミ「こう見えても本当に16才JKなんですっ」
シノ「…コレは?」
コトミ「それは私の住んでる近くです」
シノ「ちょっと見おぼえあるトコだな…お コレは私だな」
コトミ「はい 昨日撮りましたよね」
シノ「いろいろできておもしろいな」ツ-
「…ん?」
「…」
コトミ「どうかしました?」
シノ「これは…だれだ?」
コトミ「私とタカ兄です 10年前の…というか今の」
シノ「タカにい…」
シノ「…」
コトミ「タカ兄も未来で会長と仲良くなるひとですよ」
シノ「未来か…今すぐなかよくなれないのか?」
コトミ「え? 今?」
シノ「うん どこで会えるんだ? 何才だ?」
コトミ「シノ会長のひとつ下です
会うなら私んち…まで来ないと」
シノ「コトミの家はどこだ」
コトミ「え? 今から来るの?」
シノ「ダメか」
コトミ「えー こういうのってどうなんだろ…」
シノ「たしかに…いきなり行くのは失礼か…」
「どんな男の子なんだ? タカにいは」
コトミ「えーと 背高くて たくさん仕事して
勉強苦手で ハーレム作って 突っ込むのが得意」
シノ「はーれむ?」
コトミ「えぇーっと たくさんの女の子と仲良くなって
いつも一緒にいるってこと」
シノ「たくさんの女子につっこむだと!
なんだそのハレンチな男は! ゆるせん!」
コトミ「会長 むずかしい言葉知ってるねえ」
シノ「会ったときには私がセイバイしてくれるッ …ん?」
コトミ「どうかした?」
シノ「なんか出てきた…」
「バッテリー?」っ
コトミ「あッ ヤバ」
シノ「どうした?」
コトミ「バッテリーが減ってきたんです…充電しないと…」ゴソゴソ
「あ…充電器もってきてなかった」
シノ「だいじょうぶなのか?」
コトミ「早く帰らないとマズイかも」
シノ「そうか あまりおそくなるとおウチのひとに怒られるしな」
コトミ「うん ゴメンなさい」
シノ「暗くなるから気をつけて帰るんだぞ」
コトミ「はい ありがとうございます
じゃ もう行きますね」
シノ「わかった」
コトミ「さよならー」ノシ
ダダダダッ
.
Pi
コトミ「ハァー」トボトボ
「結局 なーんにも出来なかったような」
トボトボ
コトミ「また明日も行かなきゃかなあ」
トボトボ
コトミ「あ…カバン学校に置いたまま…
ああもう…真っ暗になっちゃう…」
トボトボトボ……
カエデ「あら」
コトミ「あ」
カエデ「どうかしましたか? 忘れ物?」
コトミ「あー ハイ」
カエデ「もう下校時間過ぎてるから
先生に許可をもらってから取りに行ってくださいね」
コトミ「わかりましたー…あ えーと…
会長…はココで何を?」
カエデ「会長なら まだ校舎内を見回り中ですよ」
コトミ「え?」
カエデ「え?」
コトミ「会長…ですよ?」
カエデ「はい 見回り中です
生徒会の皆さんと」
コトミ「会長が」
カエデ「はい 会長が」
コトミ「会長って…誰ですか?」
カエデ「なに言ってるんですか?」
コトミ「じゃあ…タカ兄とスズ先輩は」
カエデ「一緒に見回り中だと思いますケド」
ダダダッ
カエデ「コラッ いきなり走らないの!」
コトミ「すみませーん」
…タタタタッ
コトミ「タカ兄ぃー!」キョロ
「スズせんぱーい」キョロ
コトミ
コトミ「」キョロ
スタスタスタ…
シノ「そんな大声を出して どうした」
コトミ「会長ーッ」
ダダダッ
コトミ「戻ってきたんですね!」ダキッ
シノ「お おい コトミッ///」
コトミ「会長ーー」スリスリ
アリア「あらぁー」
コトミ「タカ兄! スズ先輩!
私 できたよ!」
スズ「…なんの話?」
タカトシ「寝ぼけてるのか?」
コトミ「戻ってきてよかったです 会長が」
シノ「私は別にどこにも出かけてないんだが…
いいから離れろッ」バッ
シノ「まったく…
もう下校時間は過ぎてる さっさと出るぞ」
コトミ「はーい」
タカトシ「コトミ これ」つ
コトミ「あ 私のカバン」
アリア「置きっぱなしだったよー」
スズ「何ごとがあったら自分のカバン置いて帰っちゃうの?」
コトミ「それはー…ちょっとドジっ子のステータスを強めようかと」
タカトシ「はいはい」
ゾロゾロゾロ…
ガラゴロゴロ…
シノ「校門もきちんと閉めた ではみんな また明日な」
タカトシ「はーい」
コトミ「えー もう帰っちゃうんですか」
スズ「そりゃ帰るでしょ」
コトミ「せっかくだからもっと一緒にいませんか」
シノ「なにがせっかくなんだ」
アリア「いいよ 私は」
タカトシ「どこか行くとか?」
カエデ「寄り道して遊びに行くなんてダメですよ」
シノ「いたのか 五十嵐」
カエデ「はい」
コトミ「じゃあ 今日はみんなウチに来ませんか」
シノ「ふむ」
アリア「いいの?」
コトミ「いいよね? タカ兄」
タカトシ「いいと思うけど 一応連絡しとこうかな
魚見の姉さん来る日だし」Pi
シノ「ウオミーもいるのか…」
スズ「私もお母さんに連絡しとこ」Pi
タカトシ「…人数分の食材無いかもだって」
シノ「ならばまず買い物だな」
スズ「そうですね」
シノ「五十嵐 コレも寄り道か?」
カエデ「おつかいという意味なら いいと思います」
タカトシ「みなさん何を食べたいですか」
スズ「津田の家なんだし
津田が決めていいんじゃないの」
タカトシ「それじゃあ
人数が多いときは鍋なんていいかもしれませんね」
アリア「そうだねえ 季節的にちょっと暑いかもだけど」
シノ「我々が暑さで汗ばんだ姿を見たいわけなんだな 津田は」
タカトシ「やっぱりそうめんとかざるそばとか 冷たいものにしましょう」
アリア「それも麺をゆでてる間はけっこう暑いよ」
シノ「やはり津田は我々の…」
カエデ「そんなふしだらは許せません!」
カエデ「そもそも うら若き乙女が男性の家に集まるだなんて
感心できたことじゃないですよ」
タカトシ「男性の家 と言われても…コトミもいるし」
スズ「私たちが行くと男子は津田ひとりだしね」
シノ「別に疑われるようなことなんてしないぞ
やましいことなぞなにもない」
アリア「意外となにも起きないよね」
カエデ「だけど…」
コトミ「だったら…」
「一緒に来たらいいんですよ」
カエデ「え 私が? 津田くんのおウチに?」
コトミ「はい 変なことが起こらないよう見張っててください」
カエデ「…」
コトミ「構わないですよね? 会長」
シノ「…私に聞くことじゃない
コトミがいいと思ったらいいんじゃないか」
カエデ「でも…」
コトミ「いいから」ガシッ
「行きましょう」
カエデ「…わかりました」
コトミ「決まりですね」
コトミ「タカ兄も いいよね」
タカトシ「うんいいよ 別に」
スズ「別に…は無いでしょ」ボソ
畑「ほお」ヌッ
「またひとり 津田くんハーレム入りとなったわけですか」
シノ「やっぱりいたのか 畑」
畑「はい」
「今夜の密会もなかなか楽しいことになりそうですねえ」
タカトシ「密会って…」
シノ「さっきも言ったが やましいことなぞ何も起きないぞ」
畑「会長はそう仰るでしょうが
しかし 今日こそは何かが起こるかも…と期待してしまうわけです
私は」
アリア「だよねえ 何か起こってほしいよね」
スズ「話をややこしくしないでくださいね」
コトミ「じゃあ一緒に来ませんか」
畑「私もですか」
コトミ「はい!」
畑「…断る空気じゃありませんね」
タカトシ「ひとりで外で張り込んでるよりはいいんじゃないですか」
畑「そうするのが私の生き様なのですが…
しかしこれでは ミイラ取りがミイラになるかもです」
タカトシ「え なんのことですそれ」
畑「いえ別にー」
シノ「まったく…」
「…コトミよ」
コトミ「はい?」
シノ「おまえの言ったとおりだな」
コトミ「え なんのことですかそれ」
シノ「…はて」
「…なんのことだっただろう?」
「コトミに何か言われてたようなそうでもないような…」
コトミ「会長に何か言ったかなあ」
シノ「そうか…ならいい」
テクテクテクテク…
コトミ(…あ そういえば
元の世界に戻ったらアプリを消すって…)モゾモゾ
Pi
コトミ(これでよし…っと)
Pi―――
コトミ(あ…ちょうどバッテリー切れちゃった)
シノ「こらコトミ」
コトミ「はいッ」
シノ「そういうものを歩きながらしてはいけないと
散々言われてるだろう」
コトミ「はーい ごめんなさい会長」
シノ「…それとだ
ココはもう学園の外だ
会長 ではなくプライベートの呼び方でいいぞ」
コトミ「…へ?」
シノ「津田もな」
タカトシ「はいはい わかってます
でも正直言って 人前では恥ずかしいんですが」
スズ「聞かされるほうもね」
シノ「さっきウオミーには言ってたじゃないか」
タカトシ「ウッ…じゃあ…そういうタイミングのときに」
シノ「うむ」
畑「…前々から気になっていたのですが」
シノ「なんだ」
畑「住んでいる地域も通っていた学校もまったく違う
天草会長と津田くん兄妹がなぜ幼なじみ同士なのですか?」
コトミ「え」
アリア「それ私も気になってたな」
タカトシ「幼なじみといっても
オレが小1か小2からの知り合いですよ」
シノ「そうだな 私が3年生のときからの縁だ
児童会長として企画した学校交流会で出会った」
コトミ「え」
スズ「小3で児童会長なんて…普通ないですよ」
タカトシ「あの時 初対面でいきなり怒られたんだけど…
なんだったんですかアレって」
シノ「さあて…津田を叱らなければいけない…
という思いがなぜかあった
なぜあったのかはよく覚えてないのだが」
畑「なにやら運命的なものを感じますねえ」
コトミ「…」
コトミ(コレってたぶん…)テクテク
(また違う世界かなあ…)ピタ
畑「やはりいろいろと期待しながらお邪魔することにします」
シノ「何度も言うが やましいことなど何も起きないぞ」
アリア「シノちゃんが起こす気ないなら
別の子とかな」チラッ
カエデ「なぜ私を見るんです」
畑「いい機会じゃないですか
今夜は泊まってもいいんですよ
なんなら津田くんと同室でも」
カエデ「泊まったりはしません!」
「どうでもいいことを言いあってないで
さっさと買い物に行きましょう」
アリア「どうでもいいことかなあ
誰が津田くんと同衾するかは重要なことだよ?」
カエデ「話すり替えないで!」
コトミ(どうしよ)モゾモゾ
(もうアプリ消しちゃったし…)ジー
スズ「津田ももっと強く否定しなさいよ」
タカトシ「いやでも いつものことだし…」
カエデ「え…津田くんはいつも同衾を…」アワワワ
スズ「先輩も話をとんでもない方向に捻じ曲げるヒトですね」
畑「会長は津田くんと同衾のご経験は?」
シノ「…子供の頃にだな」
畑「まあありがちな 無難なお答えですね
…お風呂も子供の頃は一緒に入ってたりして」
シノ「ああ 入ってたぞ」
カエデ「ヒッ」
畑「ほお 何才までご一緒に?」
シノ「うーん いくつまでだっただろう?」
タカトシ「そうですね…オレが中一のときまでかな」
カエデ「ヒィィィッ」
アリア「へー 初耳だなあ」
スズ「中一と中二…ではさすがに成長しすぎじゃない?」
畑「いいことを聞いた気がします」メモメモ
カエデ「ホ…ホントなんですか」ガクガクブルブル
シノ「そうだな 以前はコトミと三人でよく入ったものだ」
「なあコトミ?」
コトミ「はい?」
シノ「聞いてなかったのか…というか立ち止まってどうした?
またスマホか?」
コトミ「ア…いえ してないですよ?
バッテリー切れちゃったのでー」
シノ「ん そうか」
タカトシ「早く来いよ 置いてくぞ」
コトミ「ハーイ」
スタタタッ
コトミ(まあいいかな ココも…)
シノ「まあこの話ももういいだろ
それより今日は何を食べたいんだコトミは」
コトミ「えー会長の好きなものでいいですよ」
シノ「だから会長と呼ぶんじゃない」
コトミ「はーい シノ姉」
(ココもなんだか楽しそう!)
終わり
こんな話なのでもうちょっときつく突っ込まれるかと思いましたが
そうでもなくて書きやすかったです
大人組をもうちょっと出したかった気もします
10年前の七条邸に行ってみればなぜかもう出島さんがいる…とか
今後もなにか書くことがあればよろしくお願いします
ウオミーの記憶も消えてたのは?
シノが会長じゃないと交流ないのか
>>154
元の世界どおり遠い親戚同士にはなっています
交流は無かったのかもしれませんし、あったのかもしれません
交流があったとしても、コトミに「お姉ちゃん」と言われただけでは
タカトシはそれが誰のことか思い当たらないぐらいの関係です
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