野崎「ファンレターをもらった」御子柴「お前これ……腐女子じゃねえか!!」 (31)

『夢野先生!! いつも『恋しよっ』、見てます!! 私は鈴木×尾瀬のペアが好きなのでこの二人がキスしたりイチャイチャする展開が見たいです!! 』

野崎・御子柴「……」

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佐倉「野崎くん!! お邪魔しまーす!!」

野崎「佐倉……」

佐倉「ど、どうしたの!? そんな深刻な顔して……」

野崎「ああ、実はこんなファンレターをもらったんだ」

佐倉「どれどれ……」

佐倉「……!!」

佐倉「こ、これは……反応に困るね……」

野崎「ああ、なんと言えばいいのかよく分からない……不思議な気持ちだ」

野崎「ところで御子柴……今、お前が言っていた腐女子とはなんだ?」

佐倉「えっ? ふ……なんて?」

御子柴「? なんだよ、お前のことだから知ってると思ったけど……知らねえのか」

野崎「なるほど……男性同士の恋愛を好む女子を腐女子と言うのか」

御子柴「まぁ男が二人以上いれば大抵は湧くぜ」

佐倉「みこりん!! 言い方がひどいよ!!」

野崎「まさか俺の漫画で同性愛好きの読者がいるとは知らなかった」

野崎「しかし鈴木と尾瀬は全く絡みがないのだが……まさか好きだとはな」

御子柴「絡みなくてもあいつら妄想できるからな。 凄いぜ?」

佐倉「みこりん!! だから言い方!!」

野崎「うーん……」

佐倉「野崎くん……?」

野崎「鈴木×尾瀬か……」

野崎「……ありかもしれない」

佐倉「!!!?」

御子柴「野崎……お前、マジで言ってるのか?」

野崎「いや……実はここ最近アンケートの順位が良くなくてな」

野崎「だからここで斬新な展開をすれば打ち切りを回避できるかもしれないと思ってな」

佐倉「野崎くん……」

御子柴「腐女子に媚びるってのは……俺的にはあまりいいイメージじゃねえな」

野崎「やはり……やめた方がいいだろうか」

佐倉「け、剣さんと相談したらどうかな?」

野崎「……ああ、そうしよう」

御子柴(ぜってーオッケーもらえねぇと思うけどな)

後日

野崎「夢野です。 剣さん、次の展開なんですけど」

宮前『はい』

野崎「鈴木がうっかり転んで尾瀬とキスしちゃうという展開で一話使おうと思います」

野崎「場合によっては二人のうちどっちかが目覚めるという展開も考えてます」

宮前『は?』

野崎「い、いや……実は腐女子の読者からファンレターをもらいまして……鈴木×尾瀬な展開が見たいと……」

宮前『……夢野さん、掲載誌は少女誌ですよ?』

宮前『やるんだったらそういう雑誌でお願いします』

野崎「す、すいません……」

野崎(剣さんに嫌われてしまっただろうか……)

編集部

宮前(あの人は何考えてるんだ……)

前野「みっやまっえくーん!! それ夢野先生の原稿?」

宮前「はい、ボツのやつですけど」

前野「……へー。 男同士がキスかぁ~」

宮前「……」

前野「面白そうな展開だね!!」

宮前「!?」

前野「これボツなの!? 僕はいいと思うけどなー」

宮前「いや……『恋しよっ』は悪魔でマミコと鈴木の物語なんで……」

前野「でもさ!! 『恋しよっ』って今、打ち切り候補なんでしょ?」

宮前「!!」

前野「だったらこれぐらいぶっ飛んだ方が僕はいいと思うよ!!」

宮前「……」

前野「……あっ!! あとはタヌキを登場させるとか!!」

宮前「お前が担当の漫画だけでやれ」

宮前『夢野さん、この間の展開の案ですけど』

野崎「は、はい……なんでしょう」

宮前『あれでいいと思います』

野崎「!!」

宮前『この際腐女子に思いっきり媚びちゃいましょう』

宮前『そうでもしないと『恋しよっ』は続かないかもしれませんから』

野崎「剣さん……」

野崎(まさか剣さんがこんな事を言ってくれるなんて……ここは期待に応えるしかない!!)

野崎「……ありがとうございます。 頑張ります!!」

佐倉「ええっ!? 剣さん、オーケーしてくれたの!?」

野崎「ああ。 剣さん曰く、露骨に狙ってもいいそうだ」

御子柴「マジかよ……」

野崎「というわけで早速だが御子柴……」

御子柴「なんだよ?」

野崎「この男二人がくっついてるシーンに花を添えてくれ」

御子柴「お、おう……」

野崎「佐倉はこのシーンにベタを」

佐倉「わ、分かった……」

御子柴「……」スラスラ

佐倉「……」ベタベタ

御子柴(なんだこの気持ち……)

佐倉(いつもと同じ作業をしてる筈なのに……)

御子柴(男同士のシーンってだけで物凄い罪悪感があるな……)

佐倉(漫画の方向性が変わっただけで違う仕事をしてるみたい……)

後日

野崎「アンケートの結果が出たぞ」

佐倉「ど、どうだったの!?」

野崎「結果は……」

御子柴「結果は……?」

野崎「一位だ」

御子柴「!!!!」

佐倉「やったね野崎くん!」

野崎「ああ、正直驚いてる」

御子柴「へっ……感謝しろよ。 これも二人の関係を美しく彩った俺の花のお陰だろ?」

佐倉「これで打ち切り回避だね!!」

野崎「ああ」

御子柴「無視すんなよ!!」

帰り道

御子柴「しっかし世の中分かんねえな……あんなんで人気が回復するなんてよ」

佐倉「……」

御子柴「……佐倉?」

佐倉「アンケート一位って……凄いことだよね?」

御子柴「? まぁな……」

佐倉「凄いことのはずなのに……私……」

佐倉「……何故かあまり嬉しくないの」

御子柴「??」

野崎「……」

野崎「結局尾瀬がホモ化してしまった……」

野崎「しかしこれも『恋しよっ』存続の為……許してくれ」

野崎「……」

野崎「ここは……資料と題してBLの本を買うしかないな」

野崎「……嫌だけど」

その後……

野崎「御子柴、このギャルゲーはホモENDはないのか?」

御子柴「ねーよ!!」










堀「おい野崎、なんだこの台本。 ホモが出てきてるじゃねえか」

野崎「す、すいません……」











若松(野崎先輩がまたマネージャーとして来てくれたけど……)

野崎「そこ!! もっとくっつけ!! 密着しろ!!」

若松(くっつくことに拘ってるのはなんでなんだろう……)

野崎「手を繋げ!!」

若松「!!?」

野崎「見てくれ佐倉、今回もこんなに腐女子の読者からファンレターをもらったぞ」

佐倉「ほ、本当だ!……よ、よかったね……」

野崎「……佐倉? なんだが元気がないように見えるが……何かあったのか?」

佐倉「な、何もないよ!! 気にしないで!!」

野崎「……そうなのか? だったらいいんだが……」

佐倉「……」

野崎「……!!」

佐倉「野崎くん……?」

野崎「困惑している読者もいるな……『内容が今までと違って変な感じです』『鈴木が全然恋してない』……」

佐倉「そ、そりゃそうだよね……」

野崎「うーむ……どうやって読者を腐らせるか」

佐倉「!!!?」

野崎「所で佐倉、次はどんな展開がいいと思う?」

佐倉「う、うーんと……マミコと鈴木くんが……どこかに出かける話とか?」

野崎「うーん……どうやって鈴木とほかの男を絡ませるか」

佐倉「!?」

野崎「いや……腐要素を少しでも入れとかないといけないと思ってな」

野崎「うーん……マミコには申し訳ないが……マミコは邪魔だなぁ」

佐倉「……」

野崎「……佐倉?」

佐倉「……違うよ」

野崎「……?」

佐倉「私の知ってる『恋しよっ』は……こんなんじゃないよ……」

野崎「佐倉……どういうことだ?」

佐倉「『恋しよっ』は鈴木くんとマミコの恋物語でしょ?」

佐倉「なのにBLBLって……まるで違う漫画を描いてるみたいで……」

佐倉「こんな漫画……『恋しよっ』なんて言えないよ!!」

野崎「!!!」

佐倉「私……今までベタをしてる時……いつも楽しかったけど……」

佐倉「今は……全然楽しくないよ……」

野崎「……」

佐倉「……あっ!!」

野崎「?」

佐倉「ご、ごめん野崎くん!! 私、カッとなってつい……」

野崎「いや……大丈夫だ、気にしてない」

佐倉「わ、私……もう帰るね。 夜遅いし……」

野崎「ああ……気をつけて」

佐倉「うん……ありがとう」

バタン!!

野崎「……」

野崎(……『恋しよっ』じゃない、か……)

野崎「……」

野崎(……佐倉の言う通りだ)

野崎(俺は漫画の打ち切りを回避することだけを考えてた)

野崎(一番大切なのは……自分はこの漫画で何を伝えたいか、何を描きたいかなんだ)

野崎(俺が描きたいのは男性同士の恋愛なんかじゃない……)

野崎(恋の素晴らしさを……そして鈴木とマミコの物語を……俺は描きたい)

野崎「……」

次の日

佐倉(どうしよう……アシスタント行き辛いなぁ)

佐倉(昨日の私、野崎くんにあんな酷いこと言っちゃった……)

佐倉(漫画は担当さんと一緒に描くものだから……剣さんがいいって言ったらそうするしかないよね)

佐倉(ましてやアシスタントの私がとやかく言う筋合いはなかったよね……)

佐倉(私……そんなことも考えないで野崎くんにあんなこと言っちゃった……)

佐倉(……兎に角、まずは野崎くん家に行ったら謝ろう)

佐倉(……許してもらえるかは別として)

ピンポーン

野崎「はい」ガチャ

佐倉「の、野崎くん! おはよう」

野崎「ああ、おはよう」

佐倉「き、昨日はごめんね!! 私……何も考えないであんなこと……」

野崎「……いや、その事はもう気にしてない。 平気だ」

佐倉「の、野崎くん……」

野崎「俺の方こそすまなかった。 俺こそ自分のことしか考えてなくて……」

佐倉「ううん!! 悪いのは私!! 私だよ!!」

野崎「いや、俺が……」

佐倉「いやいや! 私が……」

野崎「俺が……」

佐倉「私が……」

野崎「俺が俺が俺が俺が」

佐倉「私が私が私が私が」

佐倉「はぁ……はぁ……」

野崎「はぁ……はぁ……」

佐倉「……」

野崎「……」

佐倉「……ふふふ」

野崎「……はは」

佐倉「……なんか今の私達、可笑しかったね」

野崎「そうだな……ずっと言い合ってたからな」

佐倉「……話してるだけで疲れちゃったね」

野崎「ああ……そうだな」

佐倉「……」

佐倉(楽しい……野崎くんと話してて凄く楽しい)

佐倉(昨日のことが嘘みたいに楽しいなぁ……)

野崎「……ありがとう」

佐倉「!」

佐倉「野崎くん……?」

野崎「佐倉が昨日……俺に何も言ってくれなかったら……俺はあのまま描き続けてかもしれない」

野崎「あれから剣さんに相談したんだが、従来の鈴木とマミコを中心とした話でいいと許可をもらった」

佐倉「!! そうなの!?」

野崎「ああ」

佐倉「い、いいのかな……私の一言で変わっちゃって……それにまた人気が下がっちゃったら……」

野崎「大丈夫だ、『恋しよっ』は最初の頃は人気があったんだ」

野崎「初心に帰れば訳無いさ」

佐倉「野崎くん……」

野崎「……佐倉、今日の作業が終わったらどこか出かけないか?」

佐倉「!!!!」

佐倉(野崎くんが私を誘ってる……? もしかして……)

野崎「ネタ探しをしたいんだ」

佐倉(ですよね……)

佐倉「うん!! 行こう!!」












野崎「見ろ、カップルだ」

佐倉「ほんとだ!!」

野崎「BLに執着してた時のネタ探しは全く楽しくなかったが……今はとても楽しいな」

佐倉「私もだよ!!」

野崎「……佐倉」

佐倉「……?」

野崎「これからも……俺は時々道を外してしまう時があるかもしれない」

野崎「その時に……今回のように助けてくれないだろうか。 逆にお前が困った時は俺が助ける」

佐倉「勿論だよ!!」

野崎「だから……一緒にいてくれないか?」

佐倉「!!!!!?」

佐倉(ちょ、ちょっと待って……一緒にいてって……)

佐倉(もしかして……もしかして!!?)

野崎「だから俺のアシスタントをこれからも続けてほしい」

佐倉「……へ?」

野崎「だから変な展開にならないように剣さんのように指摘し続けてほしいんだ」

佐倉「……」ポカーン

野崎「……佐倉?」

佐倉「わ、分かった!!」

都「そう……じゃあいつもの『恋しよっ』に戻ったのね」

野崎「はい」

都「それにしても……最初はびっくりしたわ。 男同士のキスシーンなんて」

野崎「都さんも見てくれたんですか?」

都「ええ」

都「……はぁ」

野崎「……都さん?」

都「……結構良かったと思ったのに」

野崎「!!?」

~終わり~

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