『試しに1回やってみる?』
『一緒にいるだけでぜんぜん話もしないでのーんびり……あ、それただの昼寝になるコースだ』
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――まえがき――
レンアイカフェテラスシリーズ第28.5話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
~中略~
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「虹を見に行きましょう!」
・高森藍子「加蓮ちゃんの」北条加蓮「膝の上に」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「夏景色のカフェテラスで」
たまにはこんなひとときを。
――おしゃれなカフェ――
高森藍子「~~~♪」クルクル
北条加蓮「…………」ジー
ニコニコと笑いながら、抹茶ラテをくるくるとかき混ぜてる。
何してるの? と聞いたら、何にも、と。
藍子「~~~♪」クルクル
加蓮「…………」ジー
分からないままで悔しいって思いが生まれたから、じっと眺めてみることにした。
いつの間にか、悔しさはなくなっていた。
藍子「~~~♪」クルクル
加蓮「…………」ジー
何しているの?
何にも。
藍子「~~~♪」ゴク
加蓮「…………」ボー
子供みたいな無邪気な笑顔を、頬杖をついて眺める。
楽しそうだね、藍子。
藍子「~~~ふふっ♪」
加蓮「…………」
何も言っていないのに、何かが伝わったのかな。
藍子が、またちょっと嬉しそうに笑った。
藍子「~~~♪」ゴク
加蓮「…………」ボー
夏の日のカフェテラスは思ったよりも暑くはない。気温が高いことに変わりはなくても、快適だ。
たまに風が吹いてくれるのが、たまらなく気持ちいい。
藍子「~~~♪ ……?」
加蓮「…………」
ずっと見ていたら、小首を傾げられた。
2回、3回、まばたきをする姿が少しだけ間抜けに見えて、からかい気味に笑ったらますます不思議な顔をされた。
藍子「~~~♪」
加蓮「…………たはは」
かさり、と葉が揺れる。
頬の汗がくすぐったくて、ハンカチを出すのが少し億劫で、服の袖で拭く。
藍子「あっ……気持ちいい風……♪」
加蓮「風鈴とか欲しくなるよね。ほら、テレビでやっててさ――」
遠くで何かを書き留める音がした。あぁ、目を遣らなくても分かる。いつもの店員だ。何かハラハラしてたみたいだけど、ケンカはしてないよ?
ああ、それより。また次に来る楽しみが増えちゃった。バレないように口元を隠してみたら。
藍子「加蓮ちゃん、今わらった!」
加蓮「そお?」
隠すとか隠さないとか関係なくて、そしてつられて笑顔が1つ増える。
本当に、笑うことが大好きなんだから。
加蓮「私、何もないのに思い出し笑いとかしないよ? 藍子じゃないんだから」
藍子「それってどういう意味ですか~」
次の言葉はなんとなく分かる。
何かあったって気付いて、それから教えてほしいって言う。
藍子「ってことは、何かあったってこと……? 教えてくださいよ、加蓮ちゃんっ」
加蓮「藍子風に言うなら、小さな幸せ? こういうのはほら、自分で見つけてこそでしょ」
小さな幸せを独占していたわたしの頃の癖が、まだもうちょっとだけ続いている。
でも藍子は何も言わないで、ゆるやかに目を細めてから、唇に指を置いた。
藍子「何か、見つけたんですね。……うーん、何だろ? 気になっちゃいますよ」
加蓮「ふふっ」
頬を膨らませながら、またカップへ手を伸ばした隙に。
口角をちょっとだけ上げたのは、見咎められなかった。
加蓮「店員がね、あっちでメモってた。私が風鈴って言った時に」
藍子「へ? ……あ、店員さんがばれちゃったって顔をしてる。ふふ……♪」
ほらもう、また私の思ったことをそのまま言う。
幸せをわけあったらまた自分に戻ってくる。思えばちっぽけなことかもしれない、けど。
加蓮「…………」
藍子「~~~♪」クルクル
あ、また抹茶ラテをかき混ぜだした。
飲むんじゃなくて、かき混ぜる。……面白いのかな? 聞いてみたいような、見ていたいような。
加蓮「…………」
藍子「~~~♪」クルクル
私だけ手持ち無沙汰だ。何かしてみようか。
コーヒーはもう飲み終えたし、スマフォはちょっと嫌かなぁ。
加蓮「…………」
藍子「~~~♪」クルクル
うん、と背伸びをしたら、夏の空気がいっぱいに入ってきた。
蝉はやっぱり煩くて、風はやっぱり気持ちいい。
加蓮「…………」
藍子「~~~♪」クルクル
……。
…………。
藍子「…………♪」ゴク
加蓮「…………」
あ、飲み始めた。いっぱいかき混ぜた後には、どんな味になってるんだろう。
気になったけど、美味しそうに飲んでいる藍子の姿を見たら、ちょうだい、という言葉が引っ込んだ。
加蓮「…………」
藍子「~~~♪」ゴク
さあ、どうしよっかな。
外を見てもいいし、藍子を見てもいいし。
藍子「ごちそうさまでした」コトン
加蓮「んー」
お粗末さまでした。
……それはちょっと違うかな?
藍子「…………?」
加蓮「んー……」
訝る目を向けられたら、つい意地悪なことを言いたくなる。
頬を膨らませてわーわー言われて、じゃれついて。そういうのが、最近、とてもとても楽しい。
加蓮「見てただけー」
藍子「見てただけ?」
少しだけ身を乗り出してきた。何か話したい。そんな雰囲気が生まれた。
私はただ見ているだけにした。今日はこうして、ゆっくりしたい気分。
藍子「じゃあ、私も見てるだけです」
加蓮「どうぞ」
藍子の目は不思議だ。
ふにゃりとしているようで意外と鋭くて、眩しいけれどどこか気高い。
藍子「…………」ジー
加蓮「…………」ジー
かちゃん、と表の方でドアの音がする。
視線を少し、移してみた。舌の先ほどの冷気が伝わってくる。
藍子「…………♪」ニコニコ
加蓮「…………」ボー
涼しいカフェテラスなのに、少し暑くなった気がした。
外とか、暑いし。歩くだけでしんどくなるし。事務所に戻った時とか、すぐにクーラーの温度を下げて怒られる。
藍子「…………♪」ニコニコ
加蓮「…………」
じゃあ、私達も中の席に移動する?
違うんだよね、そういうことじゃない。
藍子「…………♪」ニコニコ
加蓮「…………」ジー
藍子はさっきより楽しそうにしている。
何も喋っていないし、何もしていないけど。
藍子「……♪」
加蓮「ふぁ……」
さっきのお客さんは……室内の席から出てくることはないみたい。
ここは暑そうに見える? そんなことないよ。もしかしたら一緒にいる人によるかもしれないけど。
藍子「あ、メールだ……」ポチポチ
加蓮「…………」パラパラ
話したいこと、何かあったっけ。
メニューをぱらぱらめくりながら、のんびりと記憶を辿ってみた。
藍子「ふんふん……」
加蓮「…………」パラパラ
ああ、まぁ、あったような気もするし、なかったような気もする。
いいや、ゆっくりしよ。
藍子「送信っ♪ ……あっ、ごめんなさい加蓮ちゃんっ」
加蓮「いーよいーよ。なんにもしてなかったし」
申し訳無さそうな顔は、すぐにへにゃりとした笑顔に変わる。
次第に覗きこむ目になって、私をずっと見ている。
藍子「…………♪」ニコニコ
加蓮「…………」ボー
一瞬だけ違う方向から視線を感じた。
店員かなぁ。それとも、店の中のお客さん?
藍子「…………♪」
加蓮「…………」ウーン
ここには私と藍子の世界があります。どう見えますか? なんて。
私達、なんにも喋ってないけどね。
藍子「…………♪」ニコニコ
加蓮「…………」ボー
今日、カフェに来て、あれこれおしゃべりしていたのは10分くらい。
どちらからともなく何も言わなくなって、何もしなくなって、そんな時間が只々続く。
藍子「…………♪」ニコニコ
加蓮「……ふぁ」
話したいことがあって、ここでしか話せないことがるなら、とっても勿体無い時間。
でも、こうして藍子とゆっくり過ごすのも、今だけの時間。
……。
…………。
「昼寝にはならなかったね」
「わ、もうこんな時間……!? 加蓮ちゃん大変っ、もう7時です!」
「ホントだ、いつの間にこんな時間。ふふっ、私もびっくりした」
「……でも加蓮ちゃん、すごく落ち着いているような?」
「じゃ藍子。晩ご飯を食べて帰ろっか」
「私は……軽めに済ませちゃいますっ」
これは、続いていくなかの、たったそれだけのワンシーン。
――あとがき――
おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。
たまにはちょっとだけ後書きを。
いつもお付き合い頂きありがとうございます。コメントを頂いた時なんて気持ち悪いくらいニヤニヤしてます。本当に感謝です。
膝枕編第3話(シリーズ第19話)を書いた時、もうまったく会話なんてしなくていいって関係を描きたくなって。
いつもの雰囲気と文量ではまずできそうにないので、今回、0.5話扱いということでこのような形にしてみました。
私には私の世界がありますけれど、皆さんにもちょっとだけ想像してほしいなって思います。
加蓮と藍子が、一緒にいるところを。楽しそうにしていてもいいし、喧嘩していてもいいし。
そんな想いも込めた、0.5話でした。
では改めて。ここまで読んでいただきありがとうございました。
いつも楽しませてもらってます。
ちょっと気になったのだけど、前スレ(28話)のタイトルって、
> 高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「夏景色のカフェで」
だと思うんだけど、正しい?
それとは別に、
> 北条加蓮「藍子と」高森藍子「夏景色のカフェテラスで」
このスレタイのスレがあるのかしら?
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