村娘「魔物に攫われました」(243)
村娘「な、なんなんですか。アナタは……」
魔物「こんな真夜中に森を歩くたぁ、おマヌケな人間だ」
魔物「ヒヒ…簡潔に言うなら、今からお前を攫う…かなァ?」
村娘「攫ってどうするつもりですか!」
魔物「そりゃぁ…俺達の奴隷になる以外無いだろぅ?」
村娘「ど、奴隷ですって!?」
魔物「まっ、一先ずは魔王様に報告はするがな」
村娘「魔王城に行くんですか?」
魔物「当たり前だろ、魔王様は城に居るんだしな」
村娘「……」
魔物「ハッ、恐怖で声も出なくなったか?」
村娘「いえ、荷物どうしようかなと」
魔物「…へ?」
村娘「泊まり込みとなると、服は何着か必要ですね」
村娘「洗濯出来る環境はあるのかな……」
村娘「着回せるように無難なの持っていきますか。そうだ、生活用品も準備しなくては……」
魔物「アの……」
村娘「あ、魔王城って部屋はどんな感じなんですか?」
魔物「え、その、普通な感じです」
村娘「普通な感じぃ?何とも漠然とした答えですね」
村娘「ま、良いでしょう。荷物まとめるので少しお待ち頂いても?」
魔物「あ、ハイ……」
―
村娘「お待たせしました」
魔物「いえいえ…では、行きますか」グイッ
村娘「きゃっ…性欲を抑えきれないからってここで私を犯すつもりですか!?」
魔物「手を引いただけだろ!」
村娘「そうやって油断させておいて……」
村娘「私…処女なので、優しく……お願いしますね…?」
魔物「もうヤダこの人間……」
―
魔物「ほら、乗れよ」
村娘「ま、まさか…青姦!?」
村娘「ドラゴンの上でなんて…そんな……」
村娘「でも…空なら誰にも見られませんよね……」ポッ
魔物「ポッ、じゃないから。早く乗ってよ……」
村娘「乗る…騎乗位ですか!」
魔物「もう置いていこうかな……」
―
―魔王城―
魔物「魔王様、お待たせ致しました」
魔物「丁度手頃な人間の娘が手に……いや、うーん……」
魔王「どうした?」
魔物「大変、大っっ変申し難い事なのですが……」
魔王「構わん、言ってみろ」
魔物「連れて来たのですが…やはりこの人間は、魔王様にあまり相応しく無いかと……」
魔王「それは我が決める事だ。連れて来い」
魔物「畏まりました」
魔物「おい、あの人間を…頼む……」
「…本当に、大丈夫なんでしょうか?」ヒソヒソ
魔物「まぁ、お気に召さなければ、その場で殺されるだろ」ヒソヒソ
「わかりました、少しお待ちください」
―
「早く歩け!」グイッ
村娘「痛た…私はM気質は無くてですね……」
村娘「拘束プレイは少しゾクゾクしますが」
魔物「魔王様…この者です……」
スタスタスタ
村娘「こんにちは。あら、意外と小さいのですね?」ギュム
魔王「……」
魔物「(ヤバイ俺含めて死んだ)」
魔王「そ、その…別に、今は完全体じゃないし……本当はもっと大きいし!」カァァ
魔物「カアアじゃねぇよ!しまった、つい魔王様に突っ込んでしまった」
村娘「突っ込むなら私の―――
魔物「クソ、いい加減その口を閉じろ!」ガシッ
村娘「ひゃっ……私、今から犯されるんですね……アナタのソレで口を強引に閉じられ……」
村娘「『へへっ…口では嫌がってても下の口はコレが欲しいみたいだなァ?』」
村娘「そして、私の純血が……」
魔王「…何なのだこの人間は」
魔物「すみません!本当に申し訳ごさいません!色々と!」
魔王「まぁよい。人族の弱点等を聞き出そうと思っていたが……」
魔王「他に使い道が見つかるまで、地下牢に閉じ込めておけ」
魔物「はっ!」
村娘「ちょ、ちょっと!地下牢ってどう言うことですか!?」
魔物「どういう事って……」
村娘「逃げ場を無くし、輪姦!?」
村娘「流石に初めては一対一でお願いしますよ!」
魔王「あー、地下牢じゃなくて適当な部屋に放り込んでおけ」
村娘「その部屋で私は何をすれば…?」
魔王「何を言っている。貴様は自分の身がどうなるか怯え震えながら時を過ごすのだ」
村娘「そんな……会いたくて、会いたくて」ガクガク
魔物「違う、それじゃない」
村娘「私は放置プレイなんて嫌です、まだ開花してません」
魔王「頭痛がする、とっとと連れて行け……」
魔物「は、はい!」
村娘「ちょ、まだ話は終わって―――
―
―部屋―
村娘「わぷっ!」ドサッ
魔物「お前はここで大人しくしてろ」
魔物「イイか?間違っても逃げようなんて思うなよ?」
村娘「それはフリですか?」
魔物「ちげーよ!まぁいい。どうせこの城からは逃げれないしな」
魔物「部屋の前には見張り、通路やその他諸々の場所にも見張りを配置している」
魔物「おっと、俺は捕まった後の事は保証しないぜ?」
魔物「アイツら、無理矢理するのが好きみたいだからよォ」
村娘「……」
魔物「流石に今回は怖くなったか?ようやくお前が置かれている状況を理解し―――
村娘「…私、輪姦されるくらいなら…アナタに奪って欲しいな……」
魔物「えっ」
村娘「私だって、一人の女の子だよ…?初めてが怖く無いわけないもん……」グス
村娘「でも、アナタは魔族なのに優しくて……」
村娘「運命の出会いかしら……ううん、きっと必然的な出会いだったのよ……」
村娘「…お願い、私のを奪って…?」ギュッ
魔物「お、わわわ……俺は……」
村娘「はい、貰った」チャリ
魔物「え?」
村娘「あばよぅとっつぁん!」ダッ
魔物「なに、を―――あぁ!鍵が!!」
ドア「バンッ」
村娘「あれ、開いてた」
「な、なんだ!?」
村娘「どうも、こんにちは」
「あ、どうもどうも。こんにちは」
村娘「出口はどちらに?」
「出口でしたら、このまま突き当りまで廊下を進み、階段を降りた先を左折したらありますよ」
村娘「ありがとです」ペコ
「いえいえ」
魔物「お、おい!あの人間はどこ行った!?」
「それでしたら、先程出口に……」
魔物「何で逃がすんだ!捕まえろよ!」
「え、脱走してたんですか?」
魔物「あの状況で脱走以外ないだろ!!」
「し、失礼しました!!」
ウー ウー
―
―食堂―
村娘「おや、警報が鳴り始めました」
村娘「料理長、このスープ美味しいですね。星……三つです!」
料理長「ほほ…ありがとねぇ」
料理長「朝食の残りのパンもあるけど、食べるかい?」
村娘「是非!」
料理長「それにしても、なんだか騒がしいねぇ」
村娘「私が逃げたからでしょうね」
料理長「あぁそうなのかい。お嬢ちゃん、人間?」
村娘「はい。先程ここに連れて来られたばかりの出来立てホヤホヤです」
料理長「それは冷める前に食べないとね」
村娘「料理長は若い娘が好みですか」
料理長「ほほっ…するなら若い娘の方が誰だっていいさ」
村娘「料理長…なんだか歴戦の雰囲気を感じます」
料理長「昔は、それはそれはもう……今は料理を作る方が楽しいがね」
村娘「また後日、どんなプレイをしたか聞かせてくださいね」
料理長「いつでもおいで」
村娘「それでは、私はこれで」
―
―図書室―
村娘「迷ってしまいました」
村娘「図書室…ですか」
村娘「食後の読書、何とも乙なものですね」
ドア「ガチャ」
村娘「失礼しまーす」
「はいよ、こんにち―――人間!?」
村娘「あ、どうも」
「どうもどうも。って、この警報キミのせいだよね?」
村娘「らしいですね」
「(堂々と姿を晒けだすとは……相当力に自信が…?)」
村娘「本を借りてもいいですか?流石に部屋だと暇で」
「借りる場合は、このカードに記入してくださいね」スッ
村娘「わかりました」
本棚「ズラー」
村娘「どれ借りようかな…うん?『人間でもわかる魔術書』?」
村娘「これでいいや」スッ
カード「カキカキ」
村娘「この記入したカードは?」
「こちらで預かりますよ。返却する際、再度申し出てください」
村娘「わかりました、お願いします」
―
魔物「く、クソ…あの人間、どこに行きやがった」
魔物「たかだか人間の小娘を逃がしたとなれば、魔王様に殺されちゃうよ……」
村娘「安心してください、殺されませんよ」
魔物「そんなこと言ったってさぁ……って、どわっ!?」
村娘「オーバーリアクションありがとうございます」
魔物「いや…もういいよ。とにかく部屋に戻ってくれないか?」
村娘「そのつもりです」
魔物「ん…?何持ってるんだ?」
村娘「えっちな本です」
魔物「ぶほっ…げほ、げほ……」
村娘「冗談ですよ、これ返しておきますね」スッ
魔物「あっ…鍵……」
村娘「では私は部屋に戻りますので」
魔物「ま、待て!俺もついていく」
村娘「私は、個人の趣味趣向を否定する気はありませんが……」
村娘「ストーカーって魔族ではどう罰せられるんですかね?」
魔物「違うっつの!」
村娘「おや…猥談をしようと思っていましたが、部屋についちゃいましたね」
魔物「はぁ……」
村娘「ふふっ、お付き合いありがとうございました」
村娘「それでは。……またね」ニコッ
ドア「パタン……」
―――
――
―
こんな感じでゆるゆるいきます
村娘「……」ペラ
村娘「……」ペラ
村娘「……流石に勘では読めない部分がありますね。これどういう読むんですか?」
魔物「あのねぇ、なにナチュラルに脱走してんのさ」
村娘「脱走の件はこの際置いておきましょう」
魔物「いやいや、脱走の件が最優先事項だからね?」
村娘「いちいち細かい事を気にしていると、モテませんよ?」
魔物「それとこれとは話が別だろ!」
村娘「で、ここの意味を教えて下さい」トントン
魔物「俺は魔術に関しちゃ、そんなに詳しくないからなぁ」
魔物「魔導師の所にでも行ってみたらどう―――って、ダメだっつの!部屋に戻って!」
村娘「ちっ」
魔物「舌打ち本人の前でしないでね」
―
―部屋―
村娘「わぷっ!」ドサッ
村娘「痛い、痛すぎるなぁ。こんな酷い扱い……少し興奮しますね」
魔物「投げ込まれたみたい言わないでよ、城内で俺のイメージが落ちるから」
魔物「はい、扉に鍵かけました。観念してくださいね」
村娘「…密室に男と女……何も起こらないはずも無く……」
魔物「何も起こりません」
魔物「後さ、キミのせいで俺なんて言われてるか知ってる?」
村娘「いたいけな人間の少女を無理矢理監禁、好き放題にしている、と」
魔物「知ってるならなんで止めてくれないのかなぁ」
村娘「…私は…好きにされても、構いませんよ…?アナタなら……」ウワメ
村娘「公の場では恥ずかしいですが……それが良いと言うのでしたら、私は……」モジモジ
魔物「え、あの…えっと……」
魔物「お、俺は…まだ責任取れるほど器はデカく無いし……」
魔物「で、でも…お前がそこまで言うなら―――
村娘「じゃ、魔導師さんとやらの所へ行ってきますね」
ドア「カチッ」
魔物「…へ?」
魔物「あれ!?鍵かけたのに!」
村娘「一応、鍵開けの呪文っぽいのは読めたんで」
魔物「おい嘘だろ……」
―
―廊下―
村娘「こんにちは」
「うぃーっす。脱走?」
村娘「脱走……いえ、歩いているので脱歩ですかね」
「うぃうぃ、ちゃんと戻るんだよね?」
村娘「夕食までには」
「んじゃ、ダルいし警報は鳴らさんでおくよ」
村娘「鳴らしても構いませんよ。皆さんに追われる……なんだか私を取り合っているみたいで楽しいですから」
「君も図太いなー」
村娘「アナタのも結構太そうですね。あ、魔導師さんってどこに居ます?」
「今の時間帯だと……図書室に居るんじゃないかな」
村娘「ありがとうございます」
―
―図書室―
村娘「こんにちは、お邪魔します」
「邪魔するんなら帰ってやー」
村娘「ザキ」
「うおおおぁっ!?っぶねー!耐性無かったら死んでたぞ!」
村娘「殺すつもりで唱えました」
「尚更ダメだろ!」
村娘「魔導師さんってどこに居ます?」
「即死呪文を唱えた相手に、随分とまぁ」
村娘「早くしてください、内容が気になるんです。バシルーラ」
「え…?―――ほげっ!?」ゴンッ
村娘「あれ、彼方へ消滅させる呪文だったはず……」
魔導師「はは……これはなかなか面白い人間が居たものだ」
「魔導師サン…この人間をどうにかしてください……」
村娘「ザキ」
魔導師「残念、私は当然耐性があるよ」
村娘「そうでしたか、ザラキ」
魔導師「いや、だから耐性が……」
村娘「ザキ、ザキ、ザラキ、バシルーラ」
魔導師「ふごっ!?」ゴンッ
「魔導師サン!!」
村娘「なんだ、バシルーラは効くんですね」
魔導師「な、何故だ…ある程度のものは効かない筈……」
村娘「そうなんですか?バシルーラ」
魔導師「ぬごっ!?」ゴンッ
魔導師「そ、そうか……君の魔術はものによっては不完全だから私の耐性をすり抜けるのか……」
村娘「それ、結構マズいのでは?」
魔導師「あぁ…もう少し研究を―――
村娘「ニフラム」
魔導師「何唱えてんの!?」
村娘「いえ、効くのかなと」
魔導師「君ね、それ効いてたらどうするつもりだったの?」
村娘「どうもしませんが。強いて言うなら魔族側の戦力が減少するくらいですかね」
魔導師「はぁ……私じゃなければ殺されてるよ?」
村娘「ザオリクで……あ、私が死ぬと無理ですね」
魔導師「そもそも、なんで使えてんの?」
村娘「コレ読みました」スッ
魔導師「『人間でもわかる魔術書』…?」
魔導師「誰だよこんなもの置いたの!ていうか人間が使えるってなんだよ!」
「それ、魔導師サンが執筆した本では……」
魔導師「あ、私か」
村娘「あの。魔術と呪文って何が違うんですか?」
魔導師「ん?あぁ、魔術っていうのはさっき君が使った様な力の総称」
魔導師「呪文って言うのは、魔術を使う時の…まぁ、文句かな」
村娘「なるほど、バシルーラ」
魔導師「痛い。お礼代わりに使わないでよ」
村娘「バシルーラ」ペコ
魔導師「謝罪の代わりにもならないからね?」
村娘「あの、これなんて読むんですか?」トントン
魔導師「スルーしおった。なんて子なの」
魔導師「んー、これは……マダンテだね」
「ちょ、魔導師サン!!」
村娘「ほぅ……マダンテ」シュゥゥ
魔導師「やばい」
カッ!!
「ひぃぃ……あれ?」
魔導師「おえっぷ……流石に魔力を全部吸収するのはキツイ……」
魔導師「この娘の魔力が少なくて良かったよ……」
魔導師「乱発して消費してたのかもしれないけど」
「た、助かった……」
村娘「」
魔導師「魔力を使い切って気絶したか……」
魔導師「さて、と……この娘、どこから来たの?」
「えーと、確か魔物が連れて来た人間とかなんとか」
魔導師「とりあえず、後始末は任せるかぁ」
―部屋―
村娘「う…ん……」パチ
魔物「よぅ、起きたか」
村娘「はっ…睡姦!?」
魔物「そんな趣味は無い」
村娘「あったらしてたんですね」
魔物「…目を覚ましたみたいだし、俺はもう行くぞ」
村娘「バシルーラで飛ばしてあげましょうか?」
魔物「物騒だなオイ」
村娘「ザキで地獄にも行けますよ」
魔物「天国じゃないってのがキミらしいね」
村娘「魔族が天国に行こうだなんて図々しいにも程があります」
魔物「今のキミよりは幾分かマシだからね?」
村娘「……そうですね」
魔物「ちょ、そんな感じで返されると困る」
村娘「私はこれから寝ますので、睡姦したいならどうぞ」
魔物「いや、出ていくよ。じゃあな」
村娘「待って」
魔物「なんだ?」
村娘「側にいてくれてありがとうございました。お優しいんですね」
魔物「お、おぅ…大した事じゃねぇよ」テレ
村娘「ふふっ……またね」ニコッ
ドア「パタン……」
―――
――
―
レスありがとうございます
呪文はわかり易い様に某ゲームのを使わせて頂いております
勘違いだと思うけど>>1さんよく俺にお兄ちゃんって呼ばれてる人じゃない?
村娘「……」ペラ
村娘「……」ペラ
村娘「あの。伝説の装備ってなんですか?」
魔物「キミね、一応囚われてるんだよ?」
村娘「ほうへふへ」モグモグ
魔物「何食べてるの」
村娘「青いゼリーです」
魔物「お、おい…まさか……」
村娘「部屋の前に落ちてました」スッ
魔物「スライムーー!!」
魔物「それ落ちてねぇから!」
魔物「出せ!はやく!生き返らせるから!」
村娘「んぺっ……味は大変ゲロマズですね」
魔物「当たり前だろ!食いもんじゃねぇよ!」
魔物「怪しい物拾って食べちゃダメって教わらなかったのか!?」
魔物「俺は今から神官の所へ行くから、そこ!動くなよ!」
村娘「はぁい」
村娘「(フリですね。またまた下手なんだから)」
村娘「えーと、アバカム」
ドア「カチッ」
村娘「さて、腹ごしらえでもしますか」
――
―食堂―
料理長「ふぉっふぉっ…いらっしゃい」
村娘「へい料理長、いつものお願いします」
料理長「はて、朝食は……」
村娘「食べましたよ。ですが育ち盛りなので」
料理長「そうかそうか。少し待ってくれるかのぅ?」
村娘「わかりました。ピオラかけてあげますね」
料理長「こりゃ助かるわい」
―
村娘「ごちそうさまでした。お代は魔物さんにツケといて下さい」
料理長「ほいほい」
村娘「料理長、魔王の部屋ってどこにあるんですか?」
料理長「こ、これ…様をつけなさい」
村娘「魔様王の部屋はどこにあるんですか?」
料理長「魔王、様 じゃよ」
村娘「魔王様」
料理長「よろしい。よく出来たのぅ」ナデナデ
村娘「ザキ」
料理長「ふぉっふぉっ、わしには効かんよ」
村娘「ザラキーマなら効きますか?」
料理長「はて、どうじゃろうな」
村娘「ふぅむ……ま。周りが巻き添えになるので使いませんけど」
村娘「(この料理長、只者じゃありませんね。少なくとも魔物さんよりは何倍も強そう)」
料理長「(ほほっ…伊達に歳を重ねた訳では無いからのぅ)」
村娘「(こいつ直接脳内に…!)」
料理長「はてさて、そろそろここも混む時間……」
村娘「では、お暇させて頂きます」
料理長「またいつでもおいで」ニコ
村娘「えぇ、遠慮無く。ザキっ」ニコッ
―研究棟―
魔導師「うーーむ」
魔導師「どうすれば……もうやり尽くした感はあるなぁ」
村娘「どうしたんですか?」
魔導師「あぁ、暑さ対策が出来る道具を作ろうかと思ってるんだが―――っていつから居たの!?」
村娘「爆発してる所からですかね」
魔導師「超最初じゃん!」
村娘「こんにちは、バシルーラ」
魔導師「痛いから、挨拶代わりに吹き飛ばすの止めてくれない!?バシルーラが名前みたいになっちゃってるから!」
村娘「魔物さんよりも突っ込みが激しいですね」
村娘「交わる時も激しいのですか?」
魔導師「私は、ゆっくり時間をかけた方が……て、そうじゃなくてだね」
村娘「暑さ対策ならフバーハは?」
魔導師「それだと毎回魔術が使える者が必要だろう?」
魔導師「というか君、相当使いこなしてるね」
村娘「魔導師さんの本が凄くわかり易いおかげです」
魔導師「や、そんなぁ、照れるなぁ!」テレ
村娘「気持ち悪いです、バシルーラ」
魔導師「い"だっ……君、効くとわかったや否や容赦無いよね」
村娘「そう思うなら早く対策してくださいよ」
魔導師「そう言われてもなぁ……君、イレギュラー過ぎるんだよね」
魔導師「ここまでポンポン魔術を上手く扱える人間は初めてだよ」
村娘「良かったですね、私一応奴隷らしいですよ」
魔導師「え、ほんと?なら人体実験……」
村娘「バシルーラ」
魔導師「……一先ず実験は対策してからにするよ」
村娘「それが懸命ですよ」
村娘「それより、ドラゴンってどこで借りられますか?」
―――
―兵舎―
村娘「ちわっす」
「うぃー、珍しい。ちわっす」
「あん?なんだこの人間は。お前の知り合い?」
「そうそう。よく廊下で会うんだよ」
村娘「毎度ザキ唱えてすみません」
「この人間が、噂の……つーか、会う度に殺してくるって怖いな」
「まあその場で生き返らせてくれるから良いんだけどさ。ザキって即死だから痛みとかは無いし」
「おまっ、すげぇメンタルだな。俺だったら病んでるぞ」
村娘「ザラキ使えるので、まとめてお相手出来ますよ」
「い、いや…遠慮しとくよ」
村娘「そうですか、ザキ」
「問答無用で唱えてくるの怖いよ、なんなのこの娘」
「運が良かったな、俺なんて連続で唱えられるから確実に死ぬんだよ」
「それで、何かここに用か?」
村娘「そうでした、ドラゴンを貸してくれませんかね」
「ドラゴンにまで手を出して一体何をする気なのこの娘は」
「まぁまぁ、話くらい聞いて―――
村娘「ザキ。話なんてありませんよ、貸して頂けるかどうか。それだけでいいです」
「おいおい、死んだ奴を連れて行く身にもなってくれよ」
村娘「ドラゴンを貸して頂けるなら、生き返らせますよ」
「……結構扱うの難しいぞ?落ちても知らんからな」
村娘「そこは自己責任ですので、ご心配無く」
「わーったよ。先に生き返らせてやってくれないか?」
村娘「わかりました。ザオラル」
シーン…
村娘「……」
「……」
村娘「ザオラル、ザオラル、ザオラル、ザキ、ザオラル、ザオリク」
「ちょっと待て、色々とおかしい」
「途中、怪しいもん混ざってたよな!?てかザオリク使えるなら最初から使えよ!」
村娘「ザオラルの方が、なんだか疲れにくいんですよね。失敗が多いですけど」
「あんなに連発したら変わんねーって!」
村娘「黙らっしゃい」
「ん……あれ?俺、生き返った…?」
「おぉ、おかえり。なかなか酷い目にあってたぞ」
「そうか…意識戻った瞬間、また飛んだよ……」
「後で美味いもんでも食いに行こうな」
「ドラゴンなら、その先の竜庫に居るぞ」
村娘「ありがとうございます、ベホイミ」
―竜庫―
村娘「こんにちは」
ドラゴン「こんにち―――お、おおぅ…人間かよ」
村娘「乗りますね」
ドラゴン「せめてどんな用事なのか教えて欲しいな」
村娘「とある洞窟に行きたいのですが……」
ドラゴン「洞窟?またなんで?」
村娘「伝説の装備があるかもしれませんから」
ドラゴン「え、えぇ?伝説の…装備?」
村娘「早く早く!もしかしたら勇者に取られちゃいますよ!」
ドラゴン「そ、そうだな。勇者の手に渡るとマズイしな」
ドラゴン「おっしゃ!いっちょひとっ飛び行くか!」
村娘「ちょろいですね」
――
―とある洞窟―
村娘「ドラゴンさんはそこでお待ちください」
ドラゴン「おうよ、危なくなったらいつでも叫べ。担いで逃げてやんよ」
村娘「わかりました」
コツ コツ コツ…
村娘「だいぶ奥まで来ましたね……」
村娘「ザキ系で対処しつつピオラで逃げ回ってましたが、限界が近いです」
村娘「本当にあるのでしょうか、こんなイカ臭い所に」
村娘「む…?何やら話し声が……」
魔法使い「だから言ったでしょ?デマだって」
勇者「行ってみないことにはわからないだろ」
武闘家「いやー…話してる時点で胡散臭かったしな」
僧侶「ですです」
勇者「ちぇっ…悪かったよぅ」
魔法使い「ま、まぁ?経験値も稼げたし、丁度良かったけど?」
武闘家「そうだな。最近歩いてばかりで体が鈍っていた所だ」
僧侶「私も、もっと強くならなきゃ…ですっ」
勇者「はは…ありがとな」
村娘「…何ですか、このリア充パーティは。イオ」
村娘「…?おかしいな。イオ、イオ……あれ、使えない」
村娘「バシルーラ」
バチーンッ
>小石が弾け飛ぶ
勇者「っ!何者だ!」
武闘家「魔法使い、僧侶、下がれ!」
魔法使い「何が来ようと消し飛ばしてやるわ!」
僧侶「回復はお任せ下さい!」
村娘「…もしや……えっと、他の攻撃系は……」ペラペラ
村娘「メラ、ヒャド、ギラ……」
村娘「なんで攻撃系はザキしか使えないの……」
村娘「でもマダンテは使える……」
勇者「おい!そこに居るのは誰だ!」
村娘「人間です、ザキ」
勇者「くっ…ぉ……」バタ
僧侶「ザオラル!」
村娘「…ザオラルを使える方が居ましたか」
武闘家「お前、人間なのか?」
村娘「そうですよ」
武闘家「にしては、オレらに即死魔法を使うとはやってくれるな」
村娘「魔法…?魔術では」
村娘「後で聞いておかなければ……」
村娘「とりあえず邪魔です、ザキ」
武闘家「ぬあっ…!?」バタ
村娘「一発で効くんですね」
僧侶「ザオラル…!」
村娘「…ちっ。そこの女から始末しますか。ザキ」
僧侶「ふふん、残念でしたね!私は耐性のある指輪を装備してるんですよぅ!」
村娘「」イラッ
勇者「武闘家!突っ込むぞ!」
武闘家「おうよ!」
>勇者と武闘家が数メートルもある距離を一気に詰めてくる
村娘「バシルーラ、バシルーラ、バシルーラ、バシルーラ」
バチンッ ズドンッ ゴゴゴッ
>辺りの小石や岩が乱雑に弾け飛び、まるで壁の様に道を塞ぐ
武闘家「うおおっ、なんじゃこりゃ!?」
勇者「クソ、迂闊に近づけない…!」
魔法使い「な、なんなのよ、これ……」
魔法使い「バシルーラってこんな魔法だった!?」
僧侶「わ、私の記憶では…遠くへ吹き飛ばし、効かなかった場合は何も起こらないはず……」
魔法使い「アタシも全く同じ記憶よ!でも全然違うんだけど!?」
僧侶「ですが確かにギリギリ、バシルーラと聞き取れますよね」
魔法使い「洞窟内だから、こんな効果なのかしら……」
勇者「くっ、出口はあの後ろなのに!」
武闘家「俺と勇者で強引に道をこじ開けるか?」
勇者「それしかない―――ん?」
村娘「バシルーラ、バシルーラ、バシルーラ、バシりゅっ―――――
村娘「痛っ…噛んでしまいましたぁ……」グス
勇者「今だ!!」
武闘家「おう!!」
村娘「うぅ…舌にホイミぃ…それとピオラ―――
勇者「遅い!」
村娘「わわっ……」
ガシィッ
>勇者が村娘の胸ぐらを掴む
勇者「さぁ答えてもらうぞ、お前が何者なのか。そして何故ここに居るのか―――
村娘「マダンテ」
勇者「まじかよ」
武闘家「ゆ、勇者ッ!!」
魔法使い「なっ!?」
僧侶「う、そ……」
カッ!!
ドゴンッッ
魔法使い「げほ…けほ……みんな、生きてる…?」
武闘家「なん、とか……」
僧侶「全く躊躇わず使うなんて……」
魔法使い「ゆ、勇者は!?」
モクモクモク…
村娘「」
勇者「ぅ……ぁ……」
武闘家「生きてるぞ!僧侶!」
僧侶「わかってます、ベホイミ!もういっちょベホイミ!」
勇者「う…はぁ……死ななくて良かった……」
武闘家「だな。あの感覚は何度も味わいたくは無い」
魔法使い「それより、この子どうする?」
勇者「一先ず、連れて帰ろう」
武闘家「外見は人間と変わりないが……」
魔法使い「もしかしたら、魔物が人間に化けてるのかも」
勇者「よし、それじゃ―――
「ソイツは置いていって貰おうか」
武闘家「だれ――― ゾォッ
魔法使い「な、に…この気配……」
「我に世話を焼かせるとは、なかなか肝が据わる小娘よ」
勇者「お前……何者だ!!」
「目障りだ、消えろ。イオグランデ」
>洞窟を埋め尽くす程の爆発が勇者達を襲う
「小娘にも当たったか……まぁよい。頭が残っていれば問題無いか」
「我も暇では無いのでな。ここは見逃してやろう」
「ククッ…この小娘は実に興味深い……」
――
―部屋―
村娘「…ぅ…ん……むにゃ……」
村娘「(なんだかフカフカしてる……)」
村娘「ここは…部屋?」
魔物「おっ、起きたか」
村娘「私、洞窟に……」
魔物「ドラゴンが慌てて連れ帰ってきたんだ」
村娘「ドラゴンさんが…?」
魔物「あぁ。それはもうボロボロだったぞ」
村娘「(…昔の古傷が消えてる……)」チラ
村娘「…後でお礼を言わなければなりませんね」
魔物「なぁ、洞窟に向かった時…キミとドラゴンの二人だけだったのか?」
村娘「はい。私とドラゴンさんだけでしたよ」
魔物「そう、か……」
魔物「(報告にあった洞窟…凄まじい爆発があったらしいんだよなー……)」
魔物「(まさか、この人間が…?いやいやそんなまさか)」
魔物「(そんなもの使えるなら、とっとと城を爆破させて逃げれば良いし……)」
魔物「(それとも、何か企みが…?)」
魔物「うーん、わからん……」
村娘「私の下着の色ですか?」
魔物「無いなぁ、キミ…使えたら絶対使うよね」
村娘「流石にアナタの下着を使ったりはしませんよ……」
―――
――
―
>>42
申し訳無いですが、人違いだと思います
少なくとも呼ばれた事はありません……
―休憩室―
村娘「……」ボー
魔物「どうした、本は読まないのか?」
村娘「私って鬱陶しく無いんですか?」
魔物「おぅ、また唐突だな」
村娘「人間が、しかも魔族の本拠地で好き放題しているんですよ?」
魔物「さぁな。俺にはわからん」
魔物「今のキミは魔王様のモノだ。だから俺らがどうこう出来たりはしない」
魔物「まぁ、魔王様が殺せと言うなら殺すけどね」
村娘「そう、ですか」
村娘「…早く殺してくださいよ」ボソ
――
村娘「はぁ……暇ですけど動きたくないです」
村娘「私の代わりにトイレ行ってきてくれませんか?」
魔物「俺が代わりに行っても、キミの尿意は消えないと思うけどな」
村娘「そういう魔術って無いんですかねー、魔導師さんに聞きに行ってみましょうか」
魔物「…もう出るなって言っても無理だなこれは」
村娘「それこそ、鎖にでも繋いでおけば良いでしょうに」
魔物「それ言ったんだけどさ、魔王様はそのままにしておけって……」
村娘「ふーん……」
魔物「まっ、キミもなんだかここに来る前より顔色も良くなったし」
村娘「……」
魔物「もしかして、内心ここの生活を楽しんでたり?」
村娘「…っ」ギリ
村娘「知った風な口を利かないでください。バシルーラ!」
魔物「おわっ!?」
ドア「バタンッ」
魔物「お、俺…何か悪いこと言ったのかな……」
――
―部屋―
村娘「『よくわかる魔術 禁忌編 著者魔導師』を、何だか厳重そうな場所から持ってきました」ペラ
村娘「流石、禁忌と言うだけあって物騒なモノばかりですね」ペラ
村娘「メガンテ……マダンテも載ってますね。何故あっちに載ってたのかわかりましせんが」ペラ
村娘「こういう本は最後に近づくほど強いのが乗ってるはずです。馬鹿な魔導師さんならそう載せるでしょう」パラララ
村娘「ここら辺ですかね。…能力可視化の魔術……」
村娘「ほぅ、見ただけでその対象の強さがわかるんですか」
村娘「えぇと……ステータス」ピコンッ
村娘「…?何も変わりませんね」キョロキョロ
ドア「コンコンッ」
村娘「入ってます」
ドア「ガチャ」
魔物「そりゃ入ってるでしょ。昼食持ってきたよ」
村娘「ありがとうございま―――えっ」ピコンッ
魔物「どうした?」
村娘「あ、いえ。今日も美味しそうですね」
魔物「あったりまえよ!料理長の飯はどれも絶品だぜ」
魔物「ほいじゃ、終わったら食器は食堂に頼むな」
村娘「仕方ないですねぇ」
ドア「パタン」
村娘「…魔物さん、Lv.58って出てましたね……」
村娘「えるぶい…?なんて読むんでしょうか」
村娘「ともかく、あの数値が強さの数値なんでしょうね」
村娘「おや?左上にもありますね」
村娘「Lv.5……低っ、え…私?」キョロキョロ
村娘「やばい私だ。視線を動かしても表示が着いてくる」
村娘「魔物さんがLv.58、対して私はLv.5……」
村娘「…無視無視、こんなのただの飾りですよ」
村娘「片づけに食堂に行きますか―――ん?」ピコンッ
ドア「……」
村娘「ドア Lv.15……そんな、馬鹿な……」
――
―廊下―
村娘「こんにちは」チラッ
「うぃー、こんちは」
村娘「(…Lv.30…高い)」
村娘「すみません、ザキ」
「え?お―――」バタ
村娘「効きましたね。Lv差は関係無いのでしょうか…?」
村娘「ん…?私のLv表示の下に、何か横棒が……」
村娘「ザオリク」
「……ん……あ、死んでたか俺」
村娘「すみません、もう一度。ザキ」
村娘「(…やはり伸びてますね。十等分したうちの、四つが増えました)」
村娘「ザオリク」
「…ん…おぉう、せめてやる前に言ってくれよな」
村娘「すみません、ベホイミ」
―食堂―
村娘「料理長、今日も美味しく頂きました。星三つです」
料理長「ほほっ…星三つ、皆勤を目指そうかのぅ?」
村娘「料理長の腕ならそれも可能で―――!?」ピコンッ
村娘「(Lv.76!?どういうこと!?)」
料理長「どうかしたかの?」
村娘「い、いいいえ……ごちそうさまでした」
料理長「ほほっ…お粗末様じゃ」
――
―研究棟―
村娘「やはり料理長は只者じゃありませんでしたね」
村娘「もう少し詳しく見ておくべきでした……」
村娘「ね、魔導師さん」
魔導師「私に同意求められても……」
村娘「すみません、正確にはLv.63の魔導師さん」
魔導師「何言ってんの!?君、もしかして…禁忌の書、見たの…?」
村娘「近畿の書…?確かに『き』の段にありましたが……」
魔導師「ちがう、き ん き」
村娘「近畿」
魔導師「禁忌」
村娘「禁忌」
魔導師「近畿―――って違う、合ってるじゃん!」
村娘「ノリ突っ込みなんて、今日もキレッキレですね」
村娘「ノリが良い……騎乗位が得意なんですか?」
魔導師「どちらかと言うと、私は対面―――こほん。そうじゃなくてだね…!」
村娘「私はどの体位も興味ありますよ。まぁする機会は無いと思いますが」
魔導師「君、体なんとも無いの?あの書は読むだけで気分悪くなったり、魔力が少ない者は気絶までするのに」
村娘「いえ、普通に読めましたよ」
魔導師「ホントに君は何者なの?」
村娘「ただの人間……いえ、ただの物ですよ」
魔導師「あんまり読んじゃダメよ?特に最後の方は色々とマズイのを載せてるから」
村娘「そう思って最後の方を読みました」
魔導師「何してんの!?」
村娘「現在も能力可視化の魔術とやらを使用してます」
魔導師「あちゃー…それすんごいヤバイやつだぁ……」
村娘「ただLvとやらが見えるだけですよ?」
魔導師「だからなんだよね。自分との力の差がわかっちゃうと、面倒な事になるのよ」
魔導師「例えば、自分が相手より上で差が凄くあるとしよう。君はどうする?」
村娘「……さぁ。どうするんでしょうね」
魔導師「あ、あれ?君なら即答で殺すって言うと思ってたんだけど……」
魔導師「相手の力量がわかっちゃうと、どうしても支配したくなる訳よ」
魔導師「まぁそんなわけで、Lvは本来見えちゃダメなんだよ。ちなみに私達はレベルって言ってる」
村娘「レベルですか、なるほど」
魔導師「後ね、その魔術は相当魔力使うよ。だからさっさと閉じときな」
村娘「どうやって止めるんですかね?」
魔導師「閉じる時はクローズだ」
村娘「わかりました。クローズ」ピピッ
魔導師「あの書を読んで大丈夫みたいだから、良い事を教えてあげるよ」
魔導師「ステータスを使った時、右上を見てみな」
村娘「ステータス」ピコンッ
魔導師「ちょ、もう使うのね」
魔導師「右上にHPとMPってのが見えない?」
村娘「あります」
魔導師「HPはヒットポイント。つまり君の命だ」
魔導師「MPはマジックポイント。簡単に言えば、所有してる魔力の多さだ」
村娘「HPは…30/30って表示されてます」
魔導師「君、Lvいくつ?」
村娘「えっと…5です」
魔導師「なら、まぁ人間だし妥当なんじゃないかな」
村娘「そうなんですね。MPは桁違いに多いみたいですが……」
魔導師「そうなの?って言っても40とかそのくらいでしょ?」
村娘「いえ、266/514って表示されてます」
魔導師「514!?え、ホントに!?」
村娘「はい」
魔導師「(MP514って…この城でもぶっちぎりの多さじゃ……)」
魔導師「嘘とかじゃ、無いよね?」
村娘「魔導師さんに嘘をつくメリットを感じないのですが」
魔導師「だ、だよね」
村娘「多いと不味いんですか?」
魔導師「マズくは…無いよ」
村娘「…なんか釈然としませんね」
魔導師「私もちょっと困惑してる」
村娘「一先ず、今日は帰ります。経験値をためながら」
魔導師「それはやめようね」
――
―部屋―
魔物「よぅ、帰ったか」
村娘「私の下着、堪能出来ましたか?」
魔物「キミの下着、一枚も無いじゃないか」
村娘「あったら堪能するつもりなんですね……」
魔物「大きな鞄を持ってたみたいだけど、何も入ってないの?」
村娘「あぁ、アレですか。間違えて違う鞄を持ち出したみたいで」
村娘「咄嗟に掴んだものですから、似たような鞄を持ってきちゃったんですかねー」
魔物「だから服とか着替えてなかったのか」
村娘「アナタだって着替えて無いじゃないですか」
魔物「俺達は個々で違うよ。着替えるものも居れば、そのままの奴も居る」
魔物「人間は頻繁に服を替えると聞いていたからな。てっきりそうだと思っていただけだ」
村娘「そうですか。…臭いますか?」スンスン
魔物「んー、そこまでは」
村娘「少しは臭いますか。やはり水だけじゃ無理ですかね」
魔物「え、もしかしてそのまんま水を…?」
村娘「えぇ、まぁ。大丈夫ですよ、慣れてますし」
魔物「だからたまに、びしょ濡れの時があったのか……」
魔物「…明日、裁縫師の所に連れて行ってやるよ」
村娘「遠慮しておきます」
魔物「なんで!?」
村娘「服はこれで良いです」
魔物「ソレ、大事なのか?」
村娘「そうですね、大事です」
魔物「だったら、ちゃんと手入れをしないと長く持たないぞ」
魔物「その為にも、替えの服を何着か持っておいた方が良い」
村娘「……わかりました。では明日、お願いします」ペコ
魔物「おう、任せな」
―――
――
―
不快にさせてしまった方、すみません
もう少し続きますのでお付き合い頂けると嬉しいです
―部屋―
ドア「バンバンッ!」
村娘「留守です」
ドア「ガチャッ」
魔物「はぁ…ハァ……」
魔物「居留守使わないでよ……」
村娘「何か御用ですか?」
魔物「…えぇと、キミ、何かした!?」
魔物「いや、しまくってるけど、それとは別に…こう……」
村娘「私は何も」
魔物「うーん、魔王様に何かした?それか、怒らせる様な事とか……」
村娘「わかりません」
魔物「そっか。そんな訳で、魔王様がお呼びだ」
村娘「わかりました。案内お願いします」
魔物「あんまり、余計な事するなよ?」
村娘「どうしてですか?」
魔物「そりゃぁ…キミは人間だけどさ、もう俺達の中ではただの人間では無くなってきてるし……」
魔物「キミが来てから、結構賑やかになったしな」
村娘「…そう、ですか」
魔物「ま。余計な事しなけりゃ、魔王様もそんなに酷い事はしないだろう」
村娘「酷い事なら慣れてますから、ご心配無く」
魔物「う、ん?おう」
――
―謁見の間―
魔物「魔王様、連れて参りました」
魔王「下がれ」
魔物「はっ!」
魔王「久しいな、小娘よ」
村娘「何の御用ですか?」
魔王「ドラゴンを勝手に使い、洞窟に行ったそうじゃないか」
村娘「えぇ、行きましたよ。その罰ですか?」
魔王「いいや。我はそんなくだらん事で処罰したりはしない」
村娘「……」
魔王「ここの生活はどうだ」
村娘「…普通ですね。アナタは何がしたいんですか」
村娘「いつまでここに居させるつもりですか」
魔王「永遠に、と言ったらどうする?」
村娘「…知りませんよ、そんなこと」
魔王「我はな、貴様のその全てを知った様な態度が気に食わんのだ」
村娘「じゃあ殺せば良いじゃないですか」
魔王「いいや、我は貴様を殺したりはしない」
村娘「意味がわかりませんね。気に食わないなら好きにすればいいじゃないですか、力を持ってるんでしょう?」
魔王「力、か」
魔王「小娘、貴様は何故容易く魔術が使えると思う?」
村娘「さぁ。私が天才だからですかね」
魔王「その天才とやらは、随分とつまらん人生を送っていた様だが?」
村娘「…どこまで知ってるんですか」
魔王「さぁ…どうだろうな」
村娘「私もアナタの、その全てを知った様な態度は気に食わないです」
魔王「貴様は力を得て、何をして来た」
村娘「即死させまくりましたよ」
魔王「あぁ、魔術を使える様になってから、行動が大きく派手になったな」
魔王「その小さな体に自信でもついたか?」
村娘「自信は元からあります」
魔王「その自信と魔術で報復をしようとは考えないのか?」
村娘「……何の事やら、わかりませんね」
魔王「今更くだらん嘘を吐くな。元奴隷よ」
村娘「…っ」ピクッ
魔王「貴様の行動は、全てにおいて諦めが見て取れる」
魔王「自分を殺してくれと言わんばかりのな」
魔王「この城に貴様が来た初日、我はある事をした」
村娘「ある事…?あんな情けない痴態を晒したアナタが?」
魔王「あの者は我の代わりだ。わざわざ人間を攫って来た程度で、何故我が出なければならない?」
村娘「どこまでも腹が立つ方ですね」
魔王「我は貴様に、自身の力を少し分け与えた」
村娘「力…?」
魔王「不思議に思わなかったか?唐突に魔術がいとも容易く扱え、呪文を唱えれば思い通りに使える」
村娘「アナタの力だから、即死も効いたって事ですか」
魔王「理解が早いな。そうだ、元の貴様程度では即死は疎か、魔術さえ扱えん」
村娘「このMP514もアナタのですか」
魔王「ほぅ…驚いた。可視化の魔術まで辿り着いているとは」
村娘「魔導師さんの書物を読みました」
魔王「そうか。あの者はなかなかの腕利きだからな」
魔王「しかし読んだだけではそう簡単に使える物でも無い。ともすれば、貴様にもある程度の才はあるのかもしれん」
村娘「…ちっ。Lv.??……表示されませんね」チラッ
魔王「隠してるからな。良いだろう、特別に解いてやる」スッ
村娘「Lv.99……流石魔王っと言ったところですか」
魔王「初日、我の魔力500分を貴様に分け与えた」
魔王「魔力だけではつまらん、そうして補助や特殊な物を扱える様に適正も分け与えた」
村娘「だから攻撃系は使えなかったんですね……」
魔王「貴様は見事、我の思い通りに動いき、可視化の魔術まで扱える様になった」
魔王「現時点での貴様をどうこう出来る輩は、そうは居ない」
村娘「…それが?」
魔王「何故貴様を生かしているか、知りたいか?」
村娘「勿論」
魔王「貴様が死を望んでいるからだ」
魔王「我は他者の望みと真逆の事をするのが好きでな」
村娘「悪趣味ですね」
魔王「故に、我は―――
村娘「そろそろ鬱陶しい口を閉じてください」ギリッ
村娘「魔王の癖に…とっとと人間の女ぐらい殺せば良いじゃないですか」
村娘「それとも性奴隷とやらにでもするつもりですか?」
村娘「なんなんですか、何が目的なんですか」
村娘「ずっと、もう決めてた事なのに……」
村娘「私に、温かい場所を…与えて、何がしたいんですか…!」グス
村娘「私が、何をしたって言うんですか…!」
村娘「ようやく、死ねると思ったのに……」
村娘「こんな甘っちょろい配下、そしてそこでふんぞり返っているアナタも」
村娘「…好き放題、殺しても殺しても、私を殺してくれない」
村娘「魔族に癖に…理解できません」
村娘「こんなの、人間の方が……魔族よりよっぽど酷いじゃないですか……」
村娘「……良いです、もう」
村娘「アナタ達にもう期待しません」
村娘「…私が自分で終わらせます」
タッタッタッ…
魔王「……」
――
―竜庫―
村娘「ドラゴンさん、――国まで乗せて行ってください」グス
ドラゴン「お、おおぅ…どうした」
村娘「はやく!」
ドラゴン「わ、わかったわかった。ほら、乗りな」
――
――
―謁見の間―
「ま、魔王様…!ハァ…ハァ……」
魔王「あの小娘がドラゴンに乗って出て行ったか」
「ど、どうしてそれを……」
魔王「小娘…我らが死を与えないのであれば同族に、か……」
魔王「(しかし小娘よ。自らの手で断たないと言うのは、貴様が生を乞うているからだとまだわからんのか)」
魔王「大方、魔術を駆使し人族の国にでも攻め込むつもりだろう」
「ど、どうしますか」
魔王「城内の守りを最低限残し、全てドラゴンと共に待機しろと通達せよ」
「はっ!」
魔王「ククッ……家出した娘を連れ帰るとするか」
――
―部屋―
魔物「アイツ…どこに行ったんだ」
魔物「そんなに魔王様と話す事でもあんのか…?」
魔物「今日は裁縫師の所に行くって言ったのに」
魔物「…ん?鞄が空きっぱなし……」
魔物「ったく、下着がどうのこうの言うならちゃんと閉めとけよなぁ」ゴソゴソ
パサッ……
魔物「なんだ…?この薄汚い紙の束は……」スッ
―月 ―日
たまたま こやのまえで てちょうとぺん をひろったので
きょうからにっきをつけることにしました
まだわたしは ひらがな しかかけません
きょう からだがおおきなひとにわたしはかわれたらしいです
おかあさんはどこにいったのかな
―月 ―日
きょうもいっぱいたたかれました
わたしは どれいっていうんだって
わたしとおなじくらいのこは、あんなにわらってるのに
どうしてわたしはみんなとちがうのかな
それをきいたら またたたかれました
―月 ―日
わたしと同じ どれいの子にかんじを教えてもらってます
夜だけはなにもされないので、おはなししたりできて たのしい
すこしさむいけど、よりそえばあたたかいです
―月 ―日
今日はおしごとをしました
まどをふいたり ゆかをみがいたり おへやのそうじをしたり
でも ちゃんとできてないと たたかれます
おかあさん あいたいな
―月 ―日
おともだちが きずだらけでかえってきました
わたしたちのねるばしょは はなれの小さな小屋です
なにがあったの? ときくと、なんでもないよって
あしたは なにがあったのか きいてみよう
―月 ―日
またおともだちが、きずだらけでかえってきました
昨日とおなじで、なにも話してくれません
だいじょうぶだよって わらってました
昨日よりきずがひどいです
―月 ―日
わたしは大きなひとに なんでそんなことするのってききました
大きな人は どれいだからだよって
どれいってそんなにわるいことなのかな?
その日 わたしはふくをぬがされ はだかでおしごとをしました
―月 ―日
おともだちに ごめんね と言われました
わたしは きにしないで と言いました
今日はいつもより長く 漢字を教えてくれました
―月 ―日
おしごとをしてる時、おともだちが、かびんをわってしまいました
わたしはいっしょにあやまりました
でも おともだちはつれていかれました
―月 ―日
すうじつたって ようやくかえってきました
かおのいろんなところが むらさきいろになってました
ちがでていたので ふいてあげました
なんでこんなにひどいことするの
―月 ―日
おともだちが 大切にしている 宝物の本をくれました
なにやら、いっぱい漢字がかかれています
ぜったいだいじにしようと 今日は ぎゅって して寝ました
その日から おともだちは帰ってきませんでした
―月 ―日
日記を書く気力が出なかったので
放置していましたが一年ぶりに また書き始めようと思います
それとなく使用人に あの日、友人がどうなったか聞いてみると
亡くなったと言われました
―月 ―日
私は運が良いのか 鞭で打たれ 叩かれたり裸にされたりするだけで、死に至るまでの罰は未だに受けた事がありません
いや…いっその事 死んだ方がまだ楽かもしれませんね
生き地獄とはこの事を言うのでしょう
―月 ―日
最近 入れ替わりに奴隷が入っては出てを繰り返しています
出ると言うのは、即ち 死ですけど
やはり 悲鳴は何度聞いても慣れませんね
―月 ―日
私の一日は早朝から始まります
使用人に起こされ 主人に、たまに裸にされながら掃除をし 失敗をすれば頭を地に着け
主人のお遊び……まぁ性的なものですね
動物用の首輪をつけさせられ 裸になり 四つん這いで屋敷の中を歩いたり ご飯を這いつくばって口だけで食べろ とか
後は叩かれたりでしょうか よく飽きないなと思います
そして 夜に小さなパンと水を渡され 小屋に戻ります
私は この屋敷に来る友人から色んな宝物を 託されました
渡す時 皆、わかるんでしょうね 明日 自分は死ぬと
形見みたいで、嫌だな……
―月 ―日
やっちまいました バケツの水を主人にぶっかけちゃいました
これは終わったなと思いましたね むしろ終わらせてくれた方が 楽だったかも
雑巾を洗った水に頭を押しこまれ 危うく死にかけました
怒りが収まらないのか 慣れ親し……んでは無いですけど 懲罰房に数日閉じ込められました
―月 ―日
最近 裸になる事に全く羞恥心を感じません
叩かれると なんだか気持ち良くて変な気分になります
体が、無理矢理そう感じようとしてるのかもしれませんね
あ、私はまだ処女ですよ 奇跡的に。
主人は私みたいな奴隷を抱くことはしないらしいです ラッキーですね
でも… 夜 横になると傷が疼き やっぱり、なみだがでます
お母さん
―月 ―日
明後日、母に会わせてくれると主人から言われました
久しぶりに会えるんだ 楽しみだな
お母さんの笑った顔、また見たいな
今日の仕事は いつもより張り切りました
―月 ―日
主人が服を買ってくれました
…この服は 戒めとして着ることにしますか
今日の主人は 何もしてきませんでした
いつもの水と小さなパンとは変わって、豪華なご飯を食べさせてもらいました
初めて食べるものばかりで あまりよく味がわかりませんでした
明日はお母さんに会える…楽しみだな
―月 ―日
屋敷にはいつも立ち入る事を禁止している部屋があります
今日、主人にそこへ連れられました
入ると、血の臭いと尿や便の臭い、それと混じって男性が出すアレのイカ臭い そんな臭いが漂っていました
ふと下を見ると 女性が転がっていました
主人が お前の母親だ と言い直ぐに認める事ができませんでした
かけよると 微かに意識が有り 母は私を見ると涙を流し 『生きて』と
生きて、なんて そんなの わたしには むりだよ…
なんで こんなことできるの おなじ ひとなのに
おかあさん おか///さん おかあさ///
おかあさん //かあさん……
―月 ―日
なにをするにも きりょくがでません
たたかれても みずにあたまをいれられても
はだかにされても ごはんをぬかれても
しにたい
―月 ―日
どうやったら 死ぬのかな
窓から飛び降りたら? 水にずっとつかっていたら? ご飯を食べなかったら?
そんなことしか考えられません
お母さん 会いたいよ
―月 ―日
しに たい しにたい もういやだ
なんでわたしなの わたし なにかしたの?
うまれてきちゃだめだったの? わたし わたしもう
しにます
―月 ―日
寝静まった後、予め用意しておいた紐を 小屋の天井に伸びる木材に結びつけ 首吊りを試みました
自然と、飛び降りる前は穏やかな気持ちになれました ようやく終われるんだ と
でも 体重に耐えられなかったのか それとも 紐が脆かったのか 結び目から千切れ 私は生きてしまいました
どうして 邪魔するの はやく終わらせたい
―月 ―日
数日ぶりに書きます 私、決めました
きっとあの時 紐が切れたのは お母さんに 生きてって そう言われた気がしました
ここ数日間、見張りや行動範囲を頭にぶち込みました
明日 決行しようと思います
―月 ―日
ふぅ 簡潔に言うと 捕まっちゃいました
一応逃げれらたのですが 数日後、主人に居場所がバレました
捕まるまでの数日間をここ記しておこうかなと思います
決行日 私は見張りの目をかいくぐり きたえ上げた腕力で門をよじ登り 脱走に成功しました
しかし、完全に浮かれてました やっちまいましたよ。
筋肉トレーニングをしていた成果が実ったものですから
ひゃっほーって言いながら走っている所を通行人に目撃されたみたいです
後々、そのせいで捕まったのですが……
ともかく 飛び出した私は国内を これまたきたえ上げた腕力と脚力によって 自分でもおどろくほど色んな所を登り 飛び はいずり 走りました
更に浮かれていた私は 国の出入り口である門の 門番に見つかっちゃいました
何とか嘘をつき あばよとっつぁん なんて言いながら門を出ました
そんなこと言ってる場合じゃなかったですね本当に。
国を出たものの どうすればいいのかわからなかったので
とりあえず 森に入りました
後々、これも今になって思い返すと とりあえずなんかで森に入っちゃいけませんね
森で一夜を明かそうと思い 私は寝床を探しました
本で 木の幹が良いと読んだので ひたすら木の幹に体当たりをかまして 虫が居ないか確認してました。
私は虫が嫌いです、小屋はなるべく綺麗にしてます
しかし、この行為は暗かったので これも思い返すと無駄だったなと…
ようやく丁度良い木の幹を見つけ、そこで寝ました
翌日、小屋以外の場所で朝を迎えるのは本当に久しぶりで 気づいたら涙が出てました
お腹が ぐーすか鳴るので食べ物を探しました
が、都合良くあるわけありません
夜まで何とか無心で過ごし 考えないようにしてましたが 無理です
仕方なく よくわからない雑草を食べて紛らわせました
しかし ここで更にヤバイことに気がつきました
水が無い、と……
水が無いって何だよって思うかもしれませんが、本当に無いんです
葉っぱに着いた雨の雫だけじゃ足りません
なので泥水を飲みました。
日頃、雑巾を洗った水をかけられたり頭を突っこまれたりしていたので あまり抵抗はありませんでした
これも お母さんが言ってくれた 生きるためです
数日間 そうして過ごしてるうちに だんだんと意識が途切れかけてきました
気づくと夕方になっていたり 朝になっていたり
そんなある日 ガヤガヤと森が騒がしい…
コッソリ覗いてみると なんとあの主人が何人かの使用人と一緒に森に来てました
私は考えました ここであのブタを始末できれば 助かるんじゃないかと
側に落ちてあった手の平より大きな石を 腕力全開 両手で持ち上げ 音を立てず ブタ野郎の背後から
しのび寄りました
私にためらいはありません 石を持ち上げ 上から振り下ろします
見事命中 鈍い音がした後 ヨロヨロと無様によろめきつつ尻餅を着きました
私が。
ようやく やってやったぜ なんて心の中でニヤニヤしてると なんと主人が起き上がりました くそがぁ! と言いつつ私を掴んできました
くそがぁって こっちのセリフですよ 何で死なないんですか
流石にブタと言えど大人の男性 諦めてツバ吐いときました
屋敷に連れ戻され 一ヶ月でしょうか? 懲罰房に入れられ 心が折れかけました
いつもされてる事を毎日、一通りされ
首輪をつけられ 裸になり 主人の目の前で自慰行為をさせられたり 犬のマネまでしました
気が済んだのか いつもの小屋に放り込まれ 私は力尽き その日はすぐに眠りました
脱走劇は一先ず、ここで終わりにします
―月 ―日
警備が厳重になりました
調子に乗って あのクソブタめ……
屋敷と小屋を移動するわずかな時間でルートを再確認
コッソリ盗み出した鞄を手に 今度は水とパンも入れてます この手帳もね
使用人達から 主人が居ない時に それとなく警備の時間帯 場所 色んなことを聞き出し 時には主人の部屋にしのび込んだりして 必死に情報を頭に入れました
私は諦めません 絶対に逃げてやります お母さんと約束しました 生きると
でも…… もし、 もし 次 失敗したら……
私は もう 諦めようかなって 思ってます
私は 奴隷として いきる うんめい なんでしょうね
―月 ―日
魔王城に居ます
もう一度書きます 魔王城に居ます
書いてる本人が全く飲み込めていません
フカフカしてます ベッドです
私なんかが 使っても良いんですかね…?
自然と笑いが出ます 温かいな
落ち着いたので ここまでの経緯を書いておきます
二度目の決行日 なんと警備の配置が変わってました
先読み…?あのブタめ、なかなかやるな なんて思いつつ 警備の方に背後から忍び寄り 石でごっつん
大丈夫 軽めの石を選びました ブタが死なないんですから大丈夫
そう言い聞かせ 一度目の脱走経路を思い出し 私は深夜の国内を駆ける
同じ失敗を繰り返さないように 今回は門番が視線を外した隙に走って駆け抜けます
あばよとっつぁん これが最後です
国を抜け出し 高揚感がこみ上げ
そして
とりあえず 森に入りました
やっちまいました 暗くて迷い ウロウロとしていたら
魔族に出くわしました
―月 ―日
私を攫った魔族のお方が (魔物さんと言うらしい) 起こしに来てくださいました
優しく私の体を撫で 朝だぞ、起きろーって
私は飛び起き いつもの癖で屋敷に向かおうとし 攫われたんだと思い出しました
魔物さんは 何をそんなに慌ててるんだ それより飯食いに行こうぜ って
言われるがまま 食堂と言うところに ついて行きました
そこには魔族の方が一杯いました 外見はブサイクなのも居ますが みんな楽しそうに笑ってました
魔物さんが 好きなもの頼めよー と言ってくれましたが 私は毎日パンと水しか食べてないので パンと水くださいって言いました
魔物さんが それだけ?遠慮すんなよ って なので私は魔物さんと同じものを頼みました
少し待つと 湯気が立ち 美味しそうな食べ物が出てきました
温かいご飯は一度しか食べたことが無かったので 驚きました
パンと水も出てきました いただきます と言って パンを一口食べると 口の中に温かく芳ばしい匂いが広がり 今まで食べていた 冷たく パサパサしたパンとは大違い なんて思い
目から涙がこぼれました 頑張って隠しましたが 魔物さんにはバレてるかもしれません
水も透き通ってて スープも お肉も 本で読んだ食べ物が 本当に食べれるなんて 思いもしませんでした
屋敷でも一度 豪華なご飯を食べましたが なんだかあちらは 美味しく感じませんでした
部屋に戻ると魔物さんに 明日、魔王様に会うからなー と言われました
―月 ―日
魔王とやらに会いました 何とも胡散臭いお方です
フカフカなベッドで眠り 優しく朝は起こされ 寝ていたければいつまでも寝て良いと言われ 温かく美味しいご飯を食べ 温かい場所で夜は眠り
私は 夢でも見ているのでしょうか?
それとも 殺す前に良い思いをさせているのでしょうか?
私は 生きて良いのかな
―月 ―日
あの頃を思い出し たまに 夜中に目が覚めます
魔物さんは 私を奴隷にすると言っていました
でも 今の私は 奴隷とは言えないと思います
それとも、魔族の方が言う 奴隷とは 人間のと違うのでしょうか
正直に言うと 二度目の脱走した日
あの日 私は命を断とうと思っていました
脱走したものの やはり生きるには無理があると
ですが、あのブタ野郎の所で死ぬのは嫌です
なので 人知れず 静かで見つからない所で 死のうと そう思ってました
―月 ―日
あれから数日が経ち…
死ぬ覚悟をしていたからか 吹っ切れました
魔族の方と色んなお話をし 本を読み 魔術とやらも使える様になりました
でも 私は ここに居ちゃいけないんだと思います
だから はやく殺してほしい
ザキという即死呪文を唱え 魔族の方をいくらか葬りました
これだけやれば きっと 私をすぐに……
しかし 神官さんが言うには 体が残っていれば 蘇生させるのは簡単だと
魔族の方達も 体が残っていれば気にしないと言いました
魔導師さんは 君、体弱そうだし早く経験値ためてレベル上げなよ きっと丈夫になるよ ザキ程度なら簡単に蘇生できるしさ と言っていました
それから
私は図書室に こもったり
食堂でお話をしたり
城内を歩き回り探検をしたり
ルーラで天井に思い切り頭をぶつけたのは良い思い出です
――
魔物「……」
魔物「なんだよ、殺してくれって 嘘ついてんじゃねぇよ」
魔物「あんな小さな子供なのに……」
ドア「バンバンッ」
魔物「おう、居るぞ」
「良かった…!魔王様が、ドラゴンと共に出る準備をしろって!」
魔物「…わかった。先に行っててくれ」
「了解!」
ドア「パタン…」
魔物「……村娘、安心しろ。お前も お前の居場所も 温かい日常も 俺達が守ってやるよ」
―――
――
―
Lv表示は生物のみです なのでドアは一応生きてます
ドア自身が コンコンとかガチャとか言ってます
― ―国 ―
「な、なんだお前は―――
「一体何が起こって―――
村娘「静かにしてください。ザラキ」
>私は次々と兵士を斃していく
村娘「面倒な門ですね、アバカム」
カチャッ
村娘「んん…重いですね。バイキルト」
ゴゴゴ…
村娘「おやおや 盛大なお出迎えですね」
「ど、どうする…?」
「話には聞いていたが こんな子供が……」
村娘「どうしたんですか?殺さないならこちらから行きますよ。ザキ」
「なっ――― バタッ
「き、貴様!何をした!?」
村娘「何をしたって 殺したんですよ」
「ぐっ…捉えよ!!」
村娘「そう 早く捉えて そして殺してくださいよ」
村娘「ザキ、ザキ、ザキ、ザラキ、ザラキーマ」
村娘「一発で死ぬんですね 耐性も無いんだ」
「く、くそ……勇者さん達を呼んできてくれ!今ならまだ宿屋にいるはずだ!」
「わ、わかりました!」
村娘「勇者…?なんですかそれ その人が助けてくれるんですか?」
「そ、そうだ!お前なんぞすぐに―――
村娘「なんで 私は助けてくれないんですか」
村娘「なんで 私と同じ子を助けてくれないんですか」
村娘「いつもいつも 助けって 私は言ってたのに」
コツ コツ コツ…
「く、来るなぁ!」
村娘「煩い、ザキ」
村娘「どうせ死ぬんだし せめて私と同じ奴隷の子達を 助けなきゃ……」
村娘「…確か、あっちだったかな」
――
タッタッタッタッ…
勇者「どこだ!」
魔法使い「広場に向かったって聞いたわ!」
武闘家「女の子が、次々と言葉だけで兵士を殺してるらしいな」
僧侶「言葉だけ…もしや、私達が使う魔法?」
魔法使い「だと思うわ」
勇者「ん…?あれは……」
村娘「こっちじゃない、か……」
村娘「夜にしか出た事ないから、道が分かんない―――
勇者「よぅ、また会ったな」
村娘「おや、アナタは洞窟で……」
武闘家「俺達も居るぜ」
魔法使い「まさか…コレ、アンタが?」
村娘「そうですよ、そこら辺に転がってる兵士は私がやりました」
勇者「お前…同じ人間じゃないのか!」
魔法使い「僧侶、倒れてる兵士達をお願い!」
僧侶「わかりました!」
村娘「私は 物ですよ」
武闘家「物…?なにを言ってるんだ」
村娘「アナタ達は、英雄と呼ばれてるそうですね」
勇者「…そう呼ばれても、あまり嬉しくは無いがな」
村娘「魔族を斃しに行くんですか?」
勇者「そうだ。俺達はその為に旅を続けてきた」
村娘「魔族は…魔物さん達は 良い方ですよ」
村娘「アナタ達 人間と違って 温かいです」
勇者「そんな訳無いだろ。どんな魔族だろうと悪だ」
勇者「俺達の村を…大切な人達を……」グッ
勇者「アイツらを根絶やしにする為に、俺達は必死に力をつけてここまで来た」
村娘「魔族は悪で 人間は善と言うんですか」
勇者「当たり前だ」
村娘「知ってますか?魔王城では温かいご飯が出てくるんです」
村娘「この国では冷たいご飯しか出てきません」
勇者「なにを―――
村娘「魔王城では温かいフカフカなベッドで眠れるんです」
村娘「この国では冷たく硬い所でしか眠れません」
魔法使い「アンタ……もしかして……」
村娘「魔王城に居る方は、みんな楽しく笑ってます」
村娘「この国の人間は、みんな嘲笑ってます」
武闘家「お前……」
村娘「魔族の方は、他種族の人間である私を受け入れてくれました」
村娘「人間は、同族でさえ受け入れてくれません」
村娘「魔族の方は、私が転んだり 怪我をしたら 大丈夫? って言ってくれます」
村娘「人間は 私を見て見ぬふりをします」
僧侶「……」
村娘「確かに、魔族の方の中には 卑劣で残虐な方も居ると思います」
村娘「でも…でも 今の人間が善 魔族が悪と言うのなら それは魔族の方に対しての侮辱です」
村娘「今更、奴隷がどうこう 言いません」
村娘「ですが、魔族の方 全てを悪と言うのであれば 私は絶対に許しません」
勇者「俺は…俺達は それでも…… 曲げる訳には…いかない!!」チャキ
村娘「そうですか。…ザキ!」ギリッ
>黒い霧が勇者を包む
勇者「この前の俺達と思わない事だな」
村娘「学習したんですね、なら―――
村娘「ルカニ ルカニ ピオラ ピオラ… バイキルト」
勇者「んなっ!?」
村娘「どうです、アナタの防御を下げ こちらの力は二倍 オマケに素早さも二倍に上げました」
勇者「ふんっ…オラァ!」ダッ
村娘「っ……」バッ
>一秒前に立っていた場所を勇者の剣が切り裂く
勇者「防御を下げられようが、当たらなければ良いだけだ」
村娘「流石、勇者ですね」
村娘「ステータス……Lv.49ですか」
勇者「お、お前…見えるのか!?」
村娘「舐めないでください。アナタの後ろの男はLv.50。そこのキンキン煩い女はLv.48。兵士を手当している ふえぇ…とか言ってる女もLv.48です」
魔法使い「まさか、アタシ達のレベルが見られるなんて……そんな人間 初めて……」
武闘家「だったら俺達も見てやろうぜ。あの女の子を」
魔法使い「え、えぇ。ステータス」
魔法使い「えっ…ウソ……」
武闘家「どうした?」
魔法使い「あの女の子…Lv.10よ」
武闘家「はぁ!?」
勇者「おいおい、どういうことだよ」
魔法使い「人間でLv10は、少し珍しくもあるけど、鍛えてる人ならそこそこ居るわ」
魔法使い「だけど、Lv10のMPであんなに魔法を使えるはずが……」
村娘「そんなことは、どうだって良いじゃないですか」
村娘「早く殺さないと 手遅れになりますよ?」
勇者「(クソ…どうする。女の子を…手にかけるなんて……)」
勇者「(やっぱり、さっきと同じく峰打ちを狙うか)」
勇者「武闘家!!」
武闘家「っ!おぅ!」
>勇者の声と共に武闘家が駆け出してくる
>慣れてるんでしょうね、良いなぁ 親しい友人が居て
>私の友人は 親しくなる前に居なくなると言うのに
村娘「メダパニ」
>私はあの脳筋の方に混乱の魔術を放つ
>ザキ対策はあれど、混乱の魔術はまだ一度も見せていないからだ
武闘家「ぐっうぉ……」ヨロ
勇者「武闘家…!大丈夫か!?」
村娘「他人の心配をしてる暇なんてありませんよ」タッ
>ピオラを二回かけた 通常ではありえない程の早さで勇者の懐に入る
勇者「しまっ―――
村娘「そこら辺の女の子だとは思わないことですね」ブンッ
>同年代の少女より鍛え上げ 更にバイキルトで二倍になった力で勇者の腹部を殴り飛ばす
勇者「ぐあっっ…!」ズザザザッ
>ルカニで防御力を下げられたのもあってか 想像以上に勇者が吹き飛ぶ
魔法使い「ヒャダルコ!」パキキ
村娘「わわっ……」
>勇者に気を取られている隙に 横からヒャダルコなる氷の魔術が唱えられ 足が地に着き凍る
村娘「ぐむむ……スカラ スカラ」
>動けないと判断し スカラを二度唱え、防御を上げる
>そうこうしてるうちに 武闘家が混乱状態から回復したみたいだ
魔法使い「武闘家!レベル低いから、手加減しなさいよぉ!」
武闘家「わーってるよ!」ダッ
村娘「……とっておきを見せてあげますよ」ゴソゴソ
ジャララララッ
>私は魔王城で事前に盗んでおいた……いや、貰い物だが 手の平サイズの針を何本も足元にばら撒く
武闘家「そんなもの、踏むわけが―――
村娘「バシルーラ」
バチーンッ
>勢い良く高い音を発しながら武闘家を目がけて針が飛ぶ
武闘家「ぐおっ!?痛え!!」ブスッ
村娘「バシルーラ バシルーラ バシルーラ バシルーラ バシルーラ―――
>辺りに撒いた針が視界から全て消えるまで唱え続ける
バチチチチチチッ
勇者「痛たっ…痛い痛い!」
武闘家「顔を隠せ!やばい目に当たる!」
魔法使い「ちょっとぉ!アンタら男でしょ!しっかりしなさいよ!」
勇者「これは無理だろ!」
村娘「ただの針だとは思わないことですね」
武闘家「ぐ…なんか 体が……」
勇者「げほ…げほ……あぁ…これは、麻痺と毒だ……」ガク
>しかしタイミングを図ったかのように僧侶が兵士の手当を終える
僧侶「皆さんっ遅れてすみませぇん!」ハァハァ
魔法使い「僧侶ちゃんナイス!勇者と武闘家を治療してあげて!」
村娘「ちっ、バシルーラ」
>勇者と武闘家に当てつつ 標的に僧侶も加える
僧侶「痛たっ…でも、その程度で止められませんよ!」
僧侶「キアリー!キアリク!」
勇者「よし……一旦下がるぞ!」バッ
武闘家「おう!」バッ
>これまた息の合った動きで、後ろに勇者と武闘家が飛び退く
>私の足も氷が溶け始める
村娘「よっ…と」パキッ
村娘「(時間稼ぎはしましたが……)」
>後方を見ると兵士達がこちらへ向かって来ているのが見える
>そろそろ、なんですね……
勇者「ライデイン!」
カッ!
>兵士に気を取られている隙に 目の前が光に包まれる
ガシッ
勇者「ふぅ、なかなかやるな」
村娘「この状況、洞窟の時と同じですね」
勇者「そうだな。…俺達はお前を殺したくない」
勇者「そりゃ、生き返らせることだって出来るが、それは元の状態が良ければの話だしな」
村娘「…そんな情けは必要無いです そして―――
村娘「いつ死ぬかは 私が決めることです。メガン―――むぐ!?」
勇者「クッソォ!!あぶねぇ!」グイッ
シュゥゥゥ
>口を抑え 唱えさせない気ですか
>しかしもう遅いです 力が 魔力が体の一点に集まるのを感じる…
>この呪文は自らの命を犠牲に 大爆発を起こす
>生き返ることの無いよう 私自身 諸共、消そうと最初から決めていたことだ
>最後の呪文を発せば 終わりです…!
勇者「魔法使い!マホトラだ!!」
魔法使い「っ!わかったわ!――マホトラ!」
>体から魔力が吸われるのを遠のく意識の中 微かに感じる
勇者「(ザキ系にルカニ、ピオラにバイキルト そしてバシルーラを何十発も撃ち続けた……)」
勇者「(メガンテの消費MPは1……でも、もしかしたら もしかしたら間に合うかもしれない…!)」
武闘家「勇者!離れろ!」
勇者「ダメだ!今離すと唱えられるッ!!」
勇者「魔法使い、早く!!何度も唱えるんだ!!」
魔法使い「あぁもう!マホトラ!マホトラ!!」
>体から更に抜けていくのを感じる…
村娘「んぐー!」バタバタ
武闘家「チッ!勇者、こいつスカラかけてたよな!?」
勇者「あ、あぁ!」
武闘家「ちょいと手加減するが…やるしかねぇ」
武闘家「合図したら、少し宙に浮かせつつ離れてくれ!」
勇者「わかった!」
武闘家「行くぞ……今だ!」ヒュッ
勇者「っ!」バッ
村娘「んぐーっ……?あれ―――――むごっ!?」
ズドムッ…
>なっ……少女相手に やりおった……
武闘家「すまん、少し眠っててくれ。せいけんづきだ」
>いや 死ぬつもりでしたけど… 腑に落ちませ んね ……
ドサッ…
魔法使い「終わったの…?」
僧侶「どう、なんでしょう…?」
勇者「一応、気絶してる」
勇者「俺達が戦ってきた中で一番強敵だったな」
魔法使い「アタシ達四人がかりでコレだもんね」
武闘家「こんな若い女の子殴るのは、後味悪いなぁ……」
勇者「でも助かった。この子、メガンテ使おうとしてたからな」
魔法使い「ちょ、死ぬ気だったってワケ!?」
勇者「あぁ、でも……この子にもそれなりの事情があったんだろう」
武闘家「…あの話を聞いてりゃ、誰でもわかるな……」
魔法使い「奴隷の事ね」
僧侶「私達が旅してきた国の殆どが、奴隷制度ありますもんね……」
勇者「この子の言う通り、ちっと考えないとだなぁ」
武闘家「今までは魔王を斃すことのみ、考えてきたしな」
僧侶「そうですね……何かできる事があれば、私達も―――
「ふむ、気絶させたか。礼を言うぞ、人間よ」
勇者「なん―――おいおいおい!なんだよこれ!?」
武闘家「この子との戦いのせいで気付かなかったな……」
魔法使い「なによ、アレ……ドラゴン…?」
僧侶「それも、一体や二体だけじゃないですよぉ!」
勇者「空が…ドラゴンで埋め尽くされてる……」
ストンッ…
>上空から降りてきたのにもかかわらず、軽い音を立てながら静かに立つ
魔王「我の思惑通りだ。この小娘なら、死なんとな」
魔王「魔物よ、お前の言っていた要件 済ませてくると良い」
魔物「ありがとうございます」スッ
魔導師「でー、魔王ちゃん 私達はここを壊せばいいのん?」
魔王「まぁそう焦るな」
魔法使い「なん、なんの…アイツら……」
勇者「どうした…?」
魔法使い「さっき消えた魔族っぽいの Lv.58だった」
武闘家「それは、本当か?」
魔法使い「えぇ。そこの横のはLv.63 あの真ん中に立ってるのに至っては、Lvが見えないわ」
勇者「…あの数では、俺達に勝ち目は無いな」
武闘家「諦めるのかよ!?」
僧侶「…どうにかして、退いてもらうしか……」
魔法使い「捨て身で戦っても、間違いなく負けるわ」
勇者「どうす――――
魔王「そこの人族よ」
勇者「え…俺ら…?」
魔王「そうだ。貴様達は、希望の勇者一行と呼ばれているそうだな」
勇者「…そう呼ぶ人達も居る」
魔王「貴様達の目的は、なんだ?」
勇者「……魔王を斃す事だ」
魔王「魔王、か。ククッ…ではやってみると良い」
勇者「なに…?」
魔王「貴様達の目前に立っている我こそ 魔王だ」
武闘家「んなっ!?」
魔法使い「そんな……」
僧侶「あれが、魔王……」
勇者「…アイツ…見たことあると思ったら 俺達、一度洞窟で会ってるぞ」
武闘家「洞窟…まさか、あの時のか…?」
勇者「あぁ。俺は一番近かったから、ちらっとだけ見えただけだが」
魔法使い「どうすんのよ!無理じゃない!」
勇者「だからそう言ってるだろ!」
魔王「どうした?貴様らの宿敵はここに居るぞ?」
勇者「……みんな、下がっててくれ」
勇者「俺は、交渉を持ちかけてみる」
勇者「だが…もし、アイツが何かしようと動いたら……国の人達を逃がしつつ、全力で逃げてくれ」
魔法使い「アンタはどうすんのよ」
勇者「俺が囮になる。流石に魔法使いと僧侶を二人きりには出来ない」
勇者「武闘家は魔法が使えない。だとすれば、一番この場で囮に向いてるのは俺だ」
魔法使い「そんなの…私は許さないから!」
魔法使い「私だって戦う!ずっと一緒って約束したでしょ!」
勇者「ダメだ!アイツは危険すぎる」
勇者「だから…生き残ることだけを―――
魔王「勇者とやらよ、貴様は何か勘違いをしていないか?」
勇者「どういうことだ」
魔王「我に剣を向けたければ向けろ とは言ったが……我が貴様らをどうこうする気は無い」
勇者「それは…退くということか…?」
魔王「さよう。我の目的はこの小娘だ」
勇者「その子は、なんなんだ。何故そこまで魔法を使える?」
魔王「我の力を少しやった。それだけだ」
魔法使い「なる、ほどね……それなら納得だわ」
勇者「魔王…お前は、人間を滅ぼすのか?」
魔王「…人族の知恵は使える。故に、今はその様な事をするつもりは無い」
勇者「…その言葉に嘘は無いな?」
魔王「あったとして、貴様にどうこう出来るか?」
勇者「無理だ」
魔王「ククッ…潔いな」
魔王「条件次第では、協定を結んでやらん事も無いぞ?」
勇者「協定…?」
魔王「あぁ。貴様達は人族の奴隷を何とかしろ」
勇者「なんとかって、どうするんだよ」
魔王「手段は問わん。制度とやらをこの世から消せ」
魔王「同族を奴隷などと図に乗った人族は気に食わん」
勇者「…それをした場合、俺達に何の得があるんだ?」
魔王「そうだな……貴様らが死ぬか 又は貴様らの子孫が存在しない この二つの条件を満たした時以外は 人族の国を攻める事はせぬ」
武闘家「つまり 俺らの誰かか 俺らの子供が生きてさえいれば、手を出さないんだな?」
魔王「あぁ。貴様達の子孫が更に子孫を作り と続く限りもな」
僧侶「そ、それって……」カァァ
魔法使い「え、どういうこと?」
勇者「…非常に対応に困るな、これは」
武闘家「うーむ……しかし、やらないと攻めるんだろ?」
魔王「ククッ…貴様ら、満更でもないのではないか?」
勇者「う、うるせーなっ!」
魔王「それと、もう二つ条件だ」
魔王「一つ この小娘に手を出した場合 先程言った条件の適用はしない」
勇者「その子がそんなに大事か」
魔王「あぁ、貴様らよりはずっとな」
武闘家「二つ目はなんだ?」
魔法使い「実質、三つ目じゃん」
魔王「人族も我ら魔族に手を出すな」
魔法使い「なによ、それじゃあ魔族は好き放題できるじゃない」
魔王「無論、魔族が人族に手を出した場合に限っては 貴様らが処理しても構わん」
武闘家「つまり、無害な奴らには手を出すなってか」
勇者「まぁ、それなら……」
魔物「魔王様、お待たせ致しました」スッ
魔王「戻ったか。どうだ?」
魔物「大丈夫です、跡形も無く」
魔王「そうか。小娘が寝ているうちに、戻るぞ」
魔導師「結局、みんなを連れて来ただけなのね」
魔王「この戦力を目前にして、勝とうという馬鹿な考えは起こさんだろうからな」
魔王「さて、我らは戻る。貴様らは依頼をこなせる様な集まりでも作っておけ」
勇者「は、はぁ……」
魔王「ではな」タンッ
>上空に滞空しているドラゴンに飛び乗る
魔導師「ちょちょー 待ってよ!私頭脳タイプなんだからぁ」ヨジヨジ
魔物「早く乗れよ、置いていくぞ」
魔導師「うるっさいわねぇ、消し飛ばすよ?」
魔物「なるべくお早くお乗りください」
魔導師「よっこいしょ」
バササッ バササッ……
>空を覆い尽くしていたドラゴン達が遠ざかって行く
勇者「助かった、のか…?」
武闘家「魔王も、案外良い奴なのかもな」
魔法使い「攻められなくて良かったわね」
僧侶「腰が抜けちゃいました……」ヘナヘナ
勇者「最後に言ってた、集まりってどうする?」
武闘家「うーん、酒場みたいなのじゃ無理そうだよな」
魔法使い「そうねぇ、奴隷のこともおいおい考えていきましょ」
僧侶「旅は…どうします?」
勇者「うーん、魔王があんな感じだった以上なぁ」
武闘家「魔族に手を出すこともできんしな」
僧侶「じゃ、じゃあ…どこかにみんなで住みませんか?」
魔法使い「良いわねそれ。家でも買うか、それとも 一から建てるか……」
勇者「えー、買おうぜ。建てるっても俺と武闘家だろ?」
魔法使い「当たり前じゃない」
武闘家「一先ず、この国を拠点にするか」
勇者「俺達も…よくやく落ち着けるんだな」
魔法使い「そうね……」
武闘家「まぁ、悪い魔族が居たら 俺達でまたぶっ飛ばしに行こうぜ」
僧侶「ですね!」
―――
――
―
皆さんレスありがとうございます
まだ書いてませんが、後日談ぽいのを多分二回ほど投下したら終わるかと思います
勇者「じゃあ……」スッ
武闘家「ほいよ」スッ
魔法使い「ん」スッ
僧侶「はいっ」スッ
勇者「みんな お疲れさん 乾杯!」
武闘家「乾杯!」
魔法使い「かんぱーい!」
僧侶「乾杯っですっ」
カンッ
勇者「いやー、うん ホント……お疲れさん」
武闘家「あぁ……」
魔法使い「主にあの娘で、ね」
僧侶「あはは……」
勇者「一ヶ月ぶり、だよな」
魔法使い「そうねぇ、最近忙しかったから」
武闘家「みんな元気そうで良かったよ」
僧侶「ですっ」
勇者「それじゃぁ…報告会といきますか」
勇者「まず、魔法使いからどうぞ!」
魔法使い「アタシは西の国へ行ってきたわよ」
勇者「西の国か、少し暖かいところだよな」
魔法使い「そうそう、私は寒い方が好きなんだけどね」
武闘家「どんな事してきたんだ?」
魔法使い「簡潔に言うと、とりあえず制度は無くなる方針になったわ」
僧侶「一悶着どころか三悶着くらいありそうですねぇ」
魔法使い「最初は勇者に任せるべきだったわー 本気で」
勇者「お前が、面倒だから最初が良いって言ったんじゃないか」
魔法使い「そうなのよねぇ……」
勇者「まぁ話してくれよ、気になる」
魔法使い「はいはい。私とあの娘は――――
―――――
魔法使い「ちょ、待ってよ!」
村娘「遅いです 早く歩いてください」
魔法使い「アタシは、か弱い女の子よ!それにアンタが早すぎるのよ!」
村娘「文句ばかりキンキンと煩いですねぇ」
魔法使い「腹立つわー アンタ、本当に腹立つわー」
魔法使い「そうよ、あのドラゴンに乗れないの?」
村娘「ドラゴンさんはなるべく呼びたくないです」
魔法使い「ったく、肝心な時に使えないわねぇ」
村娘「ザキ」イラッ
魔法使い「ほわっ!?っぶな!何してんのよ!」
村娘「少し口を閉じてください」
魔法使い「永遠に閉じることになるわよ!」
村娘「はぁ……」ピーッ
魔法使い「なによ、その笛」
村娘「ドラゴンさんを呼びました」
魔法使い「呼べるなら最初からそうしなさいよ!」
村娘「何言ってるんですか アナタは歩いてきてください」
魔法使い「はぁ?」
村娘「悪いですけど ドラゴンさんは一人乗り用なんです」
魔法使い「なにガキ大将みたいなこと言ってんのよ」
魔法使い「あんな大きなドラゴン、三人くらい乗れるでしょ」
村娘「乗れませーん」
魔法使い「ウザい、何なのこの子」
村娘「冗談ですよ 詰めたら五人くらい乗れます」
魔法使い「全く、面倒なこと引き受けちゃったなぁ」
村娘「……すみません」
魔法使い「アンタが謝る事じゃないわよ」
魔法使い「というか、アンタが居なかったらヤバかったわ」
魔法使い「魔王のレベル…結局わからず終いだったし」
村娘「魔王さんのレベル、今は150ですよ」
魔法使い「はえ…?マジで?」
村娘「上限が99までらしかったんですけど なんだか限界突破したらしく」
村娘「『ククッ…我に限界など無いのだ』 とか言ってて」
村娘「Lv.99で止まってた時点で、限界感じてましたよねって言っときました」
魔法使い「この前はレベル99……」
魔法使い「結局、勝てなかったのねぇ」
村娘「魔王さんは、自分が強くないと面倒な事になるとも言っていました」
魔法使い「魔王も苦労してんのねぇ」
村娘「ふふっ…力をつけるのは大変そうだけど、楽しそうでしたよ」
魔法使い「そっ。ま、アンタも元気になったみたいで良かったわ」
魔法使い「アンタの笑った顔、初めて見るし」
村娘「……こほん。そろそろドラゴンさんが来ますかね」
魔法使い「なに照れてんのよ」
村娘「照れてません」プイッ
魔法使い「どうだか……ん、もしかして、アレ?」
村娘「あ、来ましたね」フリフリ
「むーちゃんお待たー そっちのネーチャンも?」
村娘「お願いします」
「はいよっと 適当に乗ってくれぃ」
魔法使い「失礼するわ」
魔法使い「(ドラゴンって、みんなチャラいのかしら)」
―――
―西の国―
魔法使い「やーっぱ、居るわねぇ」
村娘「…早速向かいましょうか」
魔法使い「ちょい待ちんさい、国王に会うためには色々と手続きが―――
村娘「面倒です、正面突破しましょう」
魔法使い「王城に攻め込むんじゃないから!」
村娘「大丈夫ですよ 全兵眠らせます」
魔法使い「全然大丈夫じゃないわよ!…まぁ、ザキ使わないだけマシになったけど」
村娘「すみません、何分不慣れなもので……」
魔法使い「ったく、ここはオネーサンに任しときなさい」
―――
「君達、何用だ?」
魔法使い「ここの国王様に話があって来たわ」
「話…?それは何だ。一度内容を―――
魔法使い「うっさいわね!早く通しなさいよ!」
「怪しい者め…ここを通す訳にはいかん!」
魔法使い「なにをぉ!メ―――
村娘「バシルーラ」
魔法使い「いったぁ……なにすんのよ!」
村娘「少し落ち着いてください。放火はマズイです」
魔法使い「あぁもう!どうすればいいのよ!」
村娘「先程の オネーサンに任せてとは一体……」
魔法使い「門兵さぁん…通してくれない?」ウィンク
村娘「うわ……」
「うっわ……」
魔法使い「なによ」
村娘「流石に、無理があるんじゃないですかね?」
「俺もそう思う」
魔法使い「メラゾーマぶっ放すわよ?」
「なぁ、君達この国のもんじゃないだろ?真面目に、何の用があって来たんだ?」
魔法使い「奴隷制についてよ」
「…ふぅむ…。もう少し詳しく話してくれないか?通せるかもしれん」
魔法使い「面倒臭いわね。奴隷制度無くさないと、魔族に攻め込まれるわよ」
「おいおい、冗談も―――
魔法使い「冗談を言いに、わざわざ異国の者がここまで来るかしら?」
「っ……」
「わかった。少し待っててくれ」
―――
「よし、通って良いぞ」
魔法使い「ありがとね、オニーサンっ」ウィンク
村娘「うわ……」
「お、おぅ………」
魔法使い「だから、なによ」
村娘「はやく行きましょう」ススッ
―――
村娘「なんだか個室に連れて来られましたね」
魔法使い「まだアタシ達は信用されてないって事よ」
村娘「なるほど」
「こんにちは、お前さん達か」
魔法使い「アンタ誰よ」
村娘「私が言うのも何ですが、もう少し愛想良くしては……」
魔法使い「初対面にはとりあえず無愛想を貫くスタイルよ」
「ははっ…うーん、私は 兵士の中で一番偉い人、かな?」
魔法使い「ふーん、まぁいいわ」
「あぁ、で。お前さん達が言った事は本当か?」
魔法使い「だーかーらー、わざわざそんな冗談をこんな所まで言いに来るかって言ってんのよ!」
「す、すまない。もう一度だけ確認しておきたかったんだ」
魔法使い「ったく、次聞いたらメラゾーマだから」
「メラ…?君、まさか勇者一行の魔法使いさんか…?」
魔法使い「そうよ。それが何か?」
「なるほど、な。信憑性が増してきた」
「ええと、奴隷制についてだよな」
魔法使い「そうよ」
「…この国の奴隷……元は身寄りの無い人達なんだよ」
「だが、子供を含めて それら全てをここで養うのは無理だ」
「だから奴隷として他国や街から来た人に買い取ってもらう」
「野垂れ死ぬよりは、マシだと思っているが……」
魔法使い「何よそれ、奴隷がどんな扱い受けてるか知ってんの?」
「あ、あぁ。それは勿論。だが…私達にはどうすることも出来ないのだよ」
「せめて、せめて…大人数が寝泊まりできる場所さえあれば……」
村娘「なんだ、家があれば良いんですね?」
「え、あ…はい。食料とかは大丈夫なんだが、いかんせん 場所と資材がな……」
村娘「ちょっとお待ちを」スッ
「一体、何をする気なんだ…?」
魔法使い「さぁね。それで、寝泊まりできる場所と資材さえあれば、奴隷制は無くしてくれるのよね?」
「それは約束する。私から国王に進言しよう」
「国王も、以前からこの事は気にかけていてな」
村娘「お待たせしました」
魔法使い「何してきたの?」
村娘「助っ人を呼びました」
「助っ人…?」
魔法使い「なんだか 外がうるさいわね」チラッ
魔法使い「っ!?げほっげほ……驚きのあまり むせたわ……」
魔法使い「なによあのキモい連中は」
村娘「何故か私の言う事を聞いてくれるお方達です」
「外に、行ってみるか」
―――
魔族A「おっ、村娘ちゃん来たよー」
魔族B「うひょー、今日も一段と可愛いな」
魔族C「村娘ちゃんの為なら何だってするぜ!」
魔法使い「なんなの、この多さは。一体何匹いるの……」
魔法使い「しかも、アンタの顔がプリントされてある装飾品とか着けてるんだけど」
村娘「なんででしょうね?」
魔族E「村娘さん、この木材はここに?」
村娘「あ。ありがとうございます」ペコ
「まさか 一から作るのか?」
村娘「えぇ。何か問題がありますか?」
「い、いや、全く無い。しかし大丈夫なのか?」
村娘「何がです?」
「その、こう言っちゃなんだが……」
村娘「魔族だからですか?」
「えっと、そうだ……」
村娘「心配いりませんよ。ねぇ、皆さん」
魔族A「おうよ!魔王様にも手を出すなって言われるしな」
魔族B「つーか、魔王様よりザキが飛んでくるのが怖い」
魔族C「村娘ちゃんに殺されるなら本望だけどな」
村娘「皆さんこう言ってますよ」
「そ、そうか…。なら…良いか」
「場所、こちらで決めさせてもらっても…?」
村娘「そのつもりです」
「じゃあ…この国のすぐ近くに空き地があるんだ」
「今はまだ外壁で囲まれていないが、そこに建てていただけるなら 直ぐにでも外壁で囲む準備に取り掛かろうと思う」
村娘「では皆さん、お願いします」ペコ
魔族C「了解だ!」
魔族A「でもその前に…ちょっと俺達にも元気が欲しいよなぁ。なぁみんな!」
魔族B「ああ…俺も全然元気が無くて……」
魔族D「村娘ちゃん いつものお願いできないかな」
村娘「えーと、あまり慣れてないのですが」
村娘「皆さん…… よろしくお願いします」ニコッ
魔族A「オオオオオオオ!!!」
魔族B「みなぎってきたァァ!!」
魔法使い「なんなのコレ」ポカン
魔法使い「……」
魔法使い「アタシからも お ね が いっ」ウィンク
魔族A「あ、はい」
魔族D「むしろ元気が吸い取られるって言うか……」ヒソヒソ
魔族C「あれはいらないよな」ヒソヒソ
魔族B「ばっ、お前あのオバさんに失礼だろ!」ヒソヒソ
魔法使い「あ"ぁん!?」
「あの、えーと……美しいレディよ。お取り込み中のところ悪いんだが」
魔法使い「あら、アナタはわかってるじゃない」
「そこの女の子か、魔法使いさんのどちらかが残ってはくれないだろうか?」
「見た感じ、大丈夫なのはわかるが やはり国民や国王様を安心させる為には保険が必要だ」
魔法使い「あぁハイハイ、じゃあアタシが残るわよ」
村娘「良いんですか?」
魔法使い「良いわよ。アンタはとっとと次の所に行って来なさい」
村娘「ありがとうございます」ペコ
―――
魔法使い「ってなワケで、そろそろ完成するんじゃないかな」
武闘家「それ帰ってきても良かったのか?」
魔法使い「今日の事を話したら気を遣ってくれたみたい」
勇者「そうか。…嬉しいよ、魔法使いと 会えて」
魔法使い「あ、アタシも アンタの顔見れて…その、嬉しくなくも無いわ」
武闘家「おいおい 惚気は帰ってからしてくれないか」
勇者「家に帰ったってお前ら居るだろ……」
僧侶「惚気られてるのは否定しないんですねぇ」
魔法使い「うっ、うっさいわね!ほらっ次!」
武闘家「次は俺だな」
武闘家「俺は南の国へ行ってきたぜ」
魔法使い「南の国って、あの暑いところかぁ」
僧侶「魔法使いさんは苦手そうです」
武闘家「はは……だろうな。魔法使いと同じく、簡潔に言うと… 一応なんとかなった」
僧侶「なんだか、微妙に濁してますね」
武闘家「まぁ、なぁ……」
―――
武闘家「うっす、今日はよろしくな」
村娘「よろしくお願いします」ペコ
村娘「歩いて行きますか? 徒歩で行きますか? それとも 早 歩 き?」
武闘家「歩く以外選択肢無いんだな……」
武闘家「良いぜ、トレーニングも兼ねて歩いて行くか」
村娘「冗談です 流石男性の方ですね」
村娘「魔法使いさんはキンキン文句ばかりでしたのに」
武闘家「あー、アイツは出会った時からあんな感じだったから もう治らんだろう」
村娘「そうなんですね……」ピーッ
武闘家「その笛はなんだ?」
村娘「ドラゴンさんを呼ぶ笛です」
武闘家「へぇ、便利だな」
村娘「…皆さんは、昔からの友人なんですか?」
武闘家「ん?あぁ、俺達四人か?」
村娘「はい」
武闘家「勇者と魔法使いは幼馴染、俺と僧侶は旅の途中で加わった感じだな」
武闘家「でも…勇者と魔法使いは 村が魔物に襲撃されるまでは疎遠だったんだ」
武闘家「でまぁ、成り行きで旅してる間に親密になった感じかな」
武闘家「あ、そうだ。僧侶には気をつけた方がいいぞ?」
武闘家「アイツ お前みたいな小さくて可愛い子が異常なまでに好きだからな」
村娘「か、 可愛い……」カァァ
村娘「…良いですね、親しい友人が居て」
武闘家「そうか?つっても、俺とお前は もう友達だと思ってたんだが」
村娘「っ…… ありがとう ございます…
…」モジモジ
武闘家「はははっ ま、そう気張らずに気楽に行こうぜ」
バササッ バサッ……
「おいーっす お待たせっす」
村娘「ドラゴンさん わざわざすみません」ペコ
「良いよ良いよ 気にすんなって」
「そっちのニーチャンもか?」
武闘家「あ、あぁ。よろしく頼む」
「おっけー!適当に乗ってくれぃ」
武闘家「失礼する」タンッ
武闘家「(ドラゴンってのは こうチャラいもんなのか…?)」
―――
―南の国―
武闘家「あちぃ……聞いていただけの事はあるな」
村娘「フバーハかけときます」
武闘家「おぉ、助かるぜ。これでちっとはマシになった ありがとな」ポンポン
村娘「いえ……」テレ
武闘家「さて、この国王の所に行くか」
村娘「あの、何か手続きが必要だと 魔法使いさんは言っていたのですが……」
武闘家「あぁ、それはもう済ませてあるぜ」
村娘「えっ…?どういう……」
武闘家「魔法使いのヤツ、やっぱ何も考えずに行ったんだな」
武闘家「こういうのは、事前に送って 許可証をちゃんと貰ってから行くもんなんだぜ」
村娘「つまり 魔法使いさんがアホだった、と」
武闘家「まっ、そういうこったな」
―――
武闘家「中央国のギルドから来たぜ、王様に会わせてくんねぇかな」スッ
「これは……どうぞ、お通りください」ザッ
村娘「わぁ、スムーズ……」
――
武闘家「よぅおっさん、久しぶりだな」
王「おぉ、やはりお前さんだったか」
村娘「お知り合い…?」
武闘家「まぁ、ちょっとな」ニッ
王「どうだ、ここにはどれくらい滞在する?」
武闘家「そこら辺は、ちっとばかし依頼の件と相談だな」
王「やはり、受けてくれるのか?」
武闘家「あぁ。手っ取り早いしな」
王「すまんな…。して、そこの少女は…?」
武闘家「こいつは… オレの友達だ」ポンッ
村娘「こんにちは」ペコ
王「ほほっ…何とも礼儀正しい子だな」
武闘家「さて、早速だが本題に入ろう」
王「そうだの。 おい 騎士長を呼んでくれぬか」
「はっ!」
騎士長「お待たせしました」
武闘家「うっす、元気そうだな」
騎士長「武闘家さんもお元気そうで何よりです」
武闘家「で、依頼にあった件なんだが」
騎士長「はい。近々、奴隷商人が集まる 集会があるらしいのです」
村娘「……」ピクッ
武闘家「そういや、一度とっ捕まえようとしたんだっけか?」
騎士長「そうです。しかし、やはりアチラも手練の者達を雇っていまして」
武闘家「返り討ちにあったってか」
騎士長「お恥ずかしながら……」
武闘家「場所は?」
騎士長「この国の近くに森があるのですが、そこに大きな小屋…というより、家が一つあるのです」
騎士長「そこに 定期的に集まっていると情報を掴んでいます」
武闘家「ふむ…なるほどな」
武闘家「んで、それは今日か?」
騎士長「前回集まった日から考えると……多分明日だと思います」
武闘家「わかった。そろそろ日が落ちるだろうし、今日は泊まって明日向かう」
武闘家「当然、夜だよな?」
騎士長「これまでからすると、そうだと思います」
騎士長「地図を渡しておきます」スッ
武闘家「あいよ、任せな。失敗した時はすまんな」ハハッ
騎士長「いつも助けて頂いてばかりですみません」ペコ
武闘家「気にすんな。やれる奴がやる。それだけだよ」
―――
武闘家「ふぃー、やっぱああいう所は疲れる―――
武闘家「ん…?」バッ
村娘「どうかしました?」
武闘家「…後ろから視線を感じた」
武闘家「……」
武闘家「悪い、ちっと走るぞ」ガシッ
村娘「わわっ……」
タッタッタッッ……
>武闘家が私を横抱きに抱えつつ路地裏に滑り込む
武闘家「…追っては、来てないな」チラッ
武闘家「これは、もしかしたら 明日はメンドクセェ事になるかもな」
村娘「面倒なこと…?」
武闘家「ま。一先ず宿屋に行こうぜ。色々と聞きたいだろ?」
村娘「はい」コク
―――
武闘家「悪いな、一部屋しか借りれなくて」
村娘「お気になさらず。空き部屋が一つしか無かったのですから」
武闘家「お前、本当に子供かぁ?」
村娘「子供ですよ」
武闘家「にしちゃぁ…出来過ぎな気もするがなぁ」
武闘家「もっとこう、ガキらしくしても良いんだぜ?」
村娘「子供らしく…ですか」
村娘「すみません、そういうのはよくわからなくて……」ウツムキ
武闘家「あー、すまん。そうだったな」
武闘家「……明日、日が落ちるまで時間がある。この国を案内してやるよ」
村娘「ですが……」
武闘家「そこは素直に甘えときゃいいんだよ。それが子供って奴だ」ワシワシ
村娘「ありがとうございます」ペコ
武闘家「おっと、そういや話さなきゃならんことがあったな」
村娘「依頼がなんとか 言っていた……」
武闘家「邪魔にならないように口を挟まないでくれてたんだろ?ありがとな」
村娘「いえ。割って入らない方が良いと判断したまでです」
武闘家「そっか。んで、依頼っつーのがな」
武闘家「この国は、奴隷の売買を禁止してる数少ない国なのよ」
武闘家「今は 奴隷制もようやく廃止しかけてるって時なんだけどな」
武闘家「ここの国は結構大きい。だから色んな奴らが集まる」
武闘家「ソイツらに奴隷を売る為に、奴隷商人が偽装して紛れ込んでるわけだ」
武闘家「だがアイツら、悪知恵だけは回るのか、なかなかウマイことやって捕まらない様に他の奴隷商人と連携してやがる」
武闘家「が、遂にこちらもその拠点を見つけたワケだ」
武闘家「その商人共を一網打尽にしてほしいってのが今回の依頼だ」
武闘家「ちなみに、お前の所の魔王に言われた通り、依頼をこなす集まり―――ギルドを作ったぞ」
武闘家「話を戻すが、奴隷を無くすには大元を絶たなきゃならん」
村娘「それで、今回の依頼を……」
武闘家「あぁ。元々この話は前から出てたんだが、ギルドが出来て真っ先に来たんでな」
武闘家「奴隷を無くすと約束しちまったし、丁度良いだろ?」
村娘「一石二鳥というやつですね」
武闘家「おう」
武闘家「んじゃ、そろそろ寝るか。お前はそこのベッド使ってくれ」
村娘「嫌です」
武闘家「なんでだ!?」
村娘「武闘家さんには明日、戦ってもらわなければなりません」
村娘「それに私は今日 全くお役に立ってはいませんし」
武闘家「う、うーん…そういうのは気にしなくて良いんだが」
村娘「私は気にします」
武闘家「んじゃ、一緒に寝るか」
村娘「私は構いませんが 二人で寝ると狭いのでは…?」
武闘家「ははっ やっぱりいくら子供でも男と寝るのは嫌―――って良いのかよ!」
村娘「慣れてますので」
武闘家「(困ったな…嫌だって言ったらそのままベッドを押し付けて俺は下で寝るつもりだったんだが……)」
村娘「私の事より ご自分の事を考えては…?」
武闘家「はぁ…わかった 俺の負けだ」
村娘「では、私が下と言う事で―――
武闘家「何言ってるんだ お前も一緒に寝るんだぜ?」ニヤ
村娘「…?」
モゾモゾ
村娘「あの…やはり狭いのでは……」
武闘家「あぁ狭いな。なんせ一人用のベッドだしな」
村娘「こうも狭いと 疲れが取れませんよ?」
武闘家「ここに来るのはドラゴンに乗って来たし、疲れてねぇよ」
村娘「そうですか……」
武闘家「……嫌な思い出は、楽しい思い出で一杯上書きすりゃ そのうち忘れる」
武闘家「誰かは知らんが 男と寝た過去は 俺と寝た思い出で上書きしとけ」
村娘「…っ」
武闘家「俺なんてまだ二十ちょいのガキだが それでも辛い事や悲しい事はあった」
武闘家「だけど それと同じく……いや、それ以上に楽しい事や嬉しい事もあった」
武闘家「だから俺は 今の生活を楽しんでるよ」
武闘家「それに 目標があれば、もっと楽しくなるぜ」
武闘家「お前と同じ様な子達を助けてあげたいんだろ?」
村娘「……はい」
武闘家「なら これからも頑張らねぇとな」ポン
村娘「ありがとう…ございます」
武闘家「なんか説教臭くなっちまったな。さっ 明日の為にそろそろ寝るか」
村娘「はい」コクッ
―――
武闘家「ん…ぉ……朝、か…?」パチッ
村娘「おはようございます」
武闘家「おう、おはようさん。早いな」
村娘「早起きが癖でして」
武闘家「そうか。たまにはガッツリ寝た方が気持ち良いぞ」
村娘「…今度試してみます」
武闘家「さて、外に出るか」
――
武闘家「忘れ物無いか?」
村娘「大丈夫です」コクッ
武闘家「うし。市場にでも行くか」
村娘「わかりました」
――
武闘家「おぉ、変わってないなー」
村娘「一杯人が居ます」
武闘家「こっちだ」
―
武闘家「あったあった。同じ場所で良かった」
村娘「これは…?」
武闘家「菓子だよ。食ってみな」スッ
村娘「…? あむっ……」
村娘「甘い、ですね」
武闘家「だろ。俺、これ好きなんだよ」
村娘「初めて食べました」
武闘家「そっか。この世にはもっと美味いもんが沢山あるから これから知っていけば良いよ」
村娘「…うん」コクッ
武闘家「よし、次行くか」
村娘「大丈夫なんですか…?」
武闘家「夜までまだ時間はある。まぁ、嫌なら宿に戻って時間を潰すのも―――
村娘「い、行きます…!」
武闘家「んじゃ、行くか!」
―――
―
― 夜 ―
武闘家「すっかり夜になっちまったな」
村娘「今日はありがとうございました」
武闘家「お礼は依頼が終わった後で良いぜ」
村娘「はい」コクッ
村娘「…あの、これ どうぞ」スッ
武闘家「何だ?これは」
村娘「…ただの指輪ですけど 今日のお礼です」
武闘家「気にしなくて良いのに…ありがとな 遠慮なくつけさせてもらうぜ」スッ
武闘家「それじゃ、そろそろ行ってみるか」
村娘「……はい」コクッ
――
― 森 ―
武闘家「たいまつ持ってくるんだったな……」
村娘「レミーラ」ポゥ
武闘家「お前、そういうのも使えるのか」
村娘「あまり広くは照らせませんが」
武闘家「いや これだけ明るければ十分だ」
ザッ ザッ ザッ……
武闘家「っと…ここら辺だったよな」キョロキョロ
村娘「もしや アレでは?」
武闘家「おおっ あった」
村娘「確かに 一軒家程の大きさはありますね」
武闘家「明かりを消してくれ、中の様子を伺ってみる」
村娘「わかりました」スッ
――
武闘家「…声が聞こえない」
武闘家「…しかし 明かりは点いている」
村娘「どうします?」
武闘家「……村娘、俺が逃げろって言ったら直ぐに逃げるんだぞ」
村娘「えっ…?」
武闘家「思い切って中に飛び込もうと思う……が、どれくらい居るかわからん」
武闘家「一人や二人程度なら何とかなるが 十数人居ると流石の俺でも護りきれるか怪しい」
村娘「私も戦え―――
武闘家「ダメだ。お前はあくまで距離を取りつつ攻撃する 魔法使いの様な戦闘スタイルだ」
武闘家「だがここは視界が悪く 更に狭い」
武闘家「俺は近接戦の方が向いてるから大丈夫だ」
村娘「…わかりました。従います」
武闘家「おぅ」ポン
武闘家「んじゃ、そこで待っててくれ」
村娘「はい」
バンッ
武闘家「しっ…!」
武闘家「…誰も、居ない」
武闘家「二階に行ってみるか」
ギシ ギシ ギシ…
武闘家「…やっぱ誰も居ねぇな……」
武闘家「集会とやらは、今日じゃ無かったのか…?」
バタンッ…
武闘家「(…?入り口の扉が閉まる音……)」
武闘家「(そういや昨日、何者かにつけられて―――
武闘家「っ!やべぇ、罠か…!」ダッ
ダン
ダン
ダンッ
「おっと ここから先は通さねぇぜ?」
武闘家「ちっ…数は五人か」
武闘家「すうぅぅ……村娘ー!!!逃げろぉぉッ!!!」
「ハッ 無駄無駄、今頃は捉えられて―――
武闘家「っるせぇ!」ブンッ
>武闘家がまわしげりで一人を入り口の扉ごと外に蹴り飛ばす
ザッ…
武闘家「外に出られたと思ったら……なんだこれは……」
村娘「武闘家さん……」
武闘家「おぉ、無事だったか」
村娘「バシルーラでぶっ飛ばしました」
武闘家「ははっ 頼りになるな」
武闘家「数は…最悪だな 十数人居るぞ……」
武闘家「村娘、隙を作るからお前は逃げろ」
村娘「でも、やはり武闘家さんだけでは……」
武闘家「大丈夫だ 心配するな」
村娘「……嫌です 私、助けてもらうばかりでは……」
武闘家「…わかった 俺から離れんなよ?」
村娘「はい…!」
タンッ
武闘家「っらァ!」ブンッ
ドドドドッ
>武闘家が数人固まっている所へまわしげりを放つ
村娘「レミーラ」ポゥ
>私は明かりを灯す 暗闇で明かりを点けるのは居場所を教えている様なものだが 相手もたいまつを持っているので気にしない
村娘「よっ」ヒュッ
ブスッ
>麻痺付きの針を たいまつを所持している者に向けて投げる
村娘「(この暗闇では 針をばらまく訳にはいけませんね)」
「後ろがお留守だぜ、お嬢ちゃん」ブンッ
村娘「ピオラっ」
>背後からの不意打ちに 咄嗟にピオラをかけてギリギリで避ける
武闘家「(クソ、やっぱ数が多いな……)」
「俺らを相手してて良いのかい?兄ちゃん」
武闘家「どう言う意味だ」
「一緒に居た嬢ちゃん 囲まれてるぜぇ?」ニヤッ
武闘家「ちっ…!邪魔だ!」ブンッ
ピシッ
「ひひっ そんなもん効かねぇぜ?」
村娘「(やはり、針程度じゃ無理ですかね……)」
村娘「面倒なお方達です……」
村娘「(いっその事、一先ず殺してしましょうか……)」
村娘「……ザ――――
バチンッ
村娘「…っ」ビクッ
「嬢ちゃん お前、奴隷だろ」
「髪で隠してるみてぇだが 顔の傷を見てピンと来たぜ」
「どうだ?思い出したか 鞭の音は―――
「よくわからねぇ不思議な事が出来るみてぇだが……」
「奴隷が調子に乗ってんじゃねぇッ!」バチンッ
「てめぇらの様な汚ぇ奴隷の分際で 俺らに歯向かおうってのか?」
村娘「っ……」
「あぁん?奴隷が謝る時はどうするのか また体に覚えさせてやろうか?」バチンッ
村娘「ひっ……」ビクッ
>一言 ザキと唱えれば 殺せる筈なのに―――
>口が 声が 出ない……
「てめぇら奴隷は 一生死ぬまで俺らに服従してりゃ良いんだよッ!」
「無能な奴隷が生きていけるんだ むしろ感謝しろ!」
「そして せいぜい俺らを楽しませる玩具になってくれよなァ!」バチンッ
村娘「…わ、私 は……」ポロ
武闘家「村娘…!ソイツの言葉に耳を貸すな!!」
武闘家「お前にはもう 魔王や俺達が居るッ!!」
武闘家「縛るもんなんて 何も無ぇ!!」
武闘家「お前はもう 奴隷じゃない!! 一人の女の子だッ!!」
村娘「武闘家 さん……」グス
「ハッ! 一人の女だと?笑わせる」
「その傷がついた体 物の様に扱われる奴のどこが女に見えるって言うんだ」
「てめぇはもう 人間になんてなれ無え
んだよッ」
武闘家「るっせぇ!! 村娘!こっちに来い!」
村娘「私は… 私の様な子達を 助けるって決めたんです…!」
村娘「…ルーラ!」フワッ
>気を抜けば閉じそうな口を何とか開き ルーラを唱える
>通常 ルーラは一度立ち寄った事のある街や村等の場所に飛んで行ける呪文だ
>この場合、ここから最も近い場所は南の国しか無いが―――
>しかし 私は武闘家に念の為、ある物を渡しておいた
>それは魔導師さん特製の指輪だ
>この指輪は つけている者を街や村として認識する
村娘「(つまり…武闘家さんの元へ ルーラで飛べると言う事です…!)」スタッ
>はぐれた時や用事の際に 直ぐに会える様にと渡したのだが まさかこんな用途で使うとは思いもしなかった
武闘家「村娘、無事か?」
村娘「…はい」コクッ
武闘家「こっちは片付いた 残るはアイツらだけか……」
武闘家「お前は俺の側を離れるな」
村娘「……」コクッ
「チッ、まさかそんな事まで出来るなんてな」
武闘家「凄ぇだろ?村娘はお前らなんかよりも ずっと凄い奴だ」
「はあ?そんなことが出来ても 奴隷は奴隷だ!」
武闘家「黙れ。随分と舐めた事を言ってくれたな」
武闘家「俺は今 お前を殺しそうなくらい怒ってるぞ」
「ひひっ やれるもんならやってみろよ」
「たかだか奴隷をどうこう言おうが 構わねぇじゃねぇか」
「お前だって心の中では 奴隷を蔑んでいる そうだろ?」
武闘家「奴隷がどうのこうの くだらねぇ」
武闘家「悔しいが 俺らはお前みたいなクソ野郎と同じ人間だ」
武闘家「恥ずかしいよ お前らの様な奴らが同族だなんてな」
武闘家「元奴隷だったからどうした 奴隷だからってどうしたッ!」ギリッ
武闘家「俺達はな… 村娘は必死に生きようとしてるんだッ!」
武闘家「それを邪魔する奴は… 侮辱する奴は 誰であろうと俺が許さんッ!!」ダンッ
>武闘家がかつて無い速さで飛び込み まわしげりを放つ
ズドドドドッッッ
「ちぃ!全員でかかれ!!」
武闘家「遅ぇよ!」ヒュッ
スパンッ
>武闘家が一人に あしばらいをし、倒れたところを蹴り飛ばす
>更に四人をばくれつけんで殴り蹴散らす
「ば、化物め……」
武闘家「化物だと? 俺からしたら お前らの方がよっぽど醜い化物だと思うがな」タンッ
>最後の一人に武闘家がとびひざげりを相手の腹部にめり込ませる
「ぐっぉ……」
武闘家「まだ終わってねぇぞ?」ガシッ
>倒れ込もうとしている相手を掴み 更にともえなげで地に叩きつける
ドシャァッ
「おぇっ……ぁ……」
武闘家「こんなもんじゃ、村娘が受けた痛みに比べたら まだまだだが……」
武闘家「村娘が手を汚すまでも無え」
武闘家「お前は俺の拳で十分だ」ブンッ
ズドムッッ
>会心の一撃 せいけんづきが凄まじい音を立て 相手に突き刺さる
>勢いを殺せず 相手は数十メートルの距離を飛び 転がった
武闘家「おっと 飛ばしすぎたか」
武闘家「さてと。こいつらを縛りあげて連れて行くとするかな」
武闘家「村娘、お前は城に行ってこの事を知らせてきてくれるか?」
村娘「…はい」
村娘「あの…武闘家さん」
武闘家「どうした?」
村娘「ありがとう ございました」ギュッ
武闘家「…おう」ポン
―――
――
―
すみません二回で終わりそうに無いです……
村娘はパーティを組んでいないので呪文は単体のを使っています
このSSまとめへのコメント
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