シャム「なんだで?これ」 (70)

シャム(…)

シャム(大物YouTuber目指して今までいろんな事やってきたけど)

シャム(どれもこれもながずとばずだったで)

シャム(ネット世論は俺の失態を大げさに取り上げるばかりで)

シャム(肝心の動画の内容には触れてもくれないんだで)

シャム「…」

シャム「俺の人生、どこで間違ったんだろう」



コンコン


シャム「…誰?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1467570546

シャム(妹か?いや、妹はこの時間にはまだ帰ってこないはずだで)

シャム(そもそも自分の家なのにノックするのはおかしいで)

シャム「…ぁ…はぃ…」ガチャッ

「あー!良かったー!いらしたんですね!」

シャム「ぁの…その…」

「浜崎順平さんあてにお荷物届いてるんですよ!」

シャム「お、俺…?」

シャム(俺に贈り物してくれる奴なんて…あ…!)

シャム(もしかして俺の女性ファンじゃないか!?)ニチィ

「何でも本人以外には渡すなって事で」

シャム「…?」

シャム「なんだで?これ」

「んじゃ、そう言うことで!」

シャム「ぁっ…ちょ…」

シャム(…?印鑑とか押さなくても良いの?)

シャム「…それにしても、なんだで、この不気味な段ボールは」

シャム「どう考えても俺宛ってのはおかしいで」ベリベリ

シャム「…」

おめでとうございます!

あなたは我が社の開発途中のゲームハードの被験者に選ばれました!

シャム「開発途中の、ゲーム…?」

シャム「やっぱこれ俺宛じゃないで」ベリベリ

このゲームハードは、頭部に装着する事によって起動する世界初のフルダイブゲーム機なのです!

シャム「何言ってるかわからんで」

頭部に装着したヘッドギアはあなたの脳波を操り、あなたに夢を見せます!

その夢こそ、我が社のゲームの世界なのです!

シャム「日本語がおかしい気がするで」

ただし、ご注意を!

このヘッドギアを装着すると夢と現実の区別がつきにくくなります!

従ってあなたは現実世界へいつでも戻れるようなキーワードを設定する必要があるでしょう!

設定しなくても起動できますが、その場合の保証は出来ません!

夢の世界へずっと漂うことになるかもしれません!

シャム「…夢」

さあ、覚悟を決めたなら、いざ我が社のゲームの世界へ!

シャム「ソードアートオンラインみたいなこと?」

シャム「何にしても興味ないで」

シャム「…!」

シャム「…もしかして、このゲームを実況できれば…!」

シャム「被験者ってことはきっと運営側も動画を撮ってるはずだで」

シャム「その動画を俺のゲーム実況動画としてあげれば」

シャム「YouTubeドリームもまだあるで!」

シャム(やったで!こんなのに選ばれるなんて!やっぱり俺はすごいやつなんだで!)

シャム「早速…!」

キーワードを設定する必要があるでしょう

シャム「…」

シャム「現実世界へ引き戻すためのキーワード…」

シャム「ふふ、アッアッアッアッ」

シャム「そんなもの、どこにもないで」

シャム「だからこそ俺は、YouTuberになるしかなかったんだで!!」ガシッ!

ポチッ!!!







シャム「…ん…」

シャム「どこだで…ここ…。」

ザワザワガヤガヤ
アナタハユウメイナゲームジッキョウシャノ…
ヤァッテヤロウジャネェノジュウイチノヤイバ

シャム「そうか…。ここが」

シャム「…俺以外にもたくさん居るで」

シャム「い、いや!怖じ気着いたらダメだで!ここから俺の人生は始まるんだで!」



男「ようこそ、みなさん」

シャム「…誰だで、あいつ」

男「私は、このゲームの開発者、男と申します」

男「今回は我々のゲームハードの実験にご協力いただきまことに感謝してきます」

シャム「年は同じくらいだで、だけど喋り方がよかぶって面白くないで」

男「さて、今回貴方たちに何を実験していただくか」

男「その内容はこちらになります」

パッ

シャム「…え?」

シャム「ば、バトルロワイヤル?」

男「そう、この世界で貴方たちは殺し合うことになります」

シャム「…」

男「と言っても、この世界で死んだからと言って別に現実の世界に影響があるわけではありません」

男「ゲームのキャラクターを、指先から脈動に至るまで、貴方たち自身が動かすことが出来る、それだけです」

「そんな話聞いてないぞ!」

「そうだ!そうだ!」

男「…」

男「被験者は、我が社の独断と偏見で決めさせていただきましたが」

男「…貴方たちは個人差はあれど、つまらない人生を送ってきたのでは無いですか」

シャム「…!」

男「あの世界では生きられない、あの世界では認められない」

男「現実世界から、逃げたい」

シャム「…」

男「生きていく上で大なり小なり悩みは存在するでしょう」

男「でも、少なくともこの世界では、努力をすればするほど結果が出やすいのです」

男「あちらよりは、ね」

シャム「…」

男「おわかりいただけましたか?」

男「それでは皆さんの無病息災と、健闘を祈って」 

ポチッ!!!

シャム「!?なんだで!?」フワッ

男「この世界に、散らばってもらいます」

シャム「おいいいぃぃぃぃっす!!!」ギュオオオオ



シャム「…ん」

シャム「…はっ…」

シャム「…後ろっ!」

シャム「…誰も居ない」

シャム(…どうやら地面と激突して気絶してしまったようだで)

シャム「…ここが、ゲームの世界…」

シャム(…綺麗だで)

つまらない人生を送ってきたのでは無いですか

シャム「…」



シャム「…そんなの、俺にも分からないで」

シャム「どうしてこうなってしまったのか」

シャム「…ほならね、私の人生歩んでみろって話ですよ、私はそう…」

ガサガサ

シャム「っ!!」

シャム「ややややや、やばいで…!」

シャム「ひ、独り言が大きかったで!」

シャム(取り敢えず茂みに隠れるで!)



「…」

シャム(…だれだであいつ…薄暗くてよく見えんで)

シャム(…ん?)

シャム(あいつの頭の上に出てるあれ…なんだで?)

シャム(ステータス?)

シャム(そ、そうだで…ここはゲームの世界なんだで!俺にもステータス画面が…!)





浜崎順平 レベル1

HP 3/3
MP 7/7
筋力 2
知力 0
運  0


スキル
選定眼(相手のステータスを盗み見れる)

被虐(常に挑発状態になり、相手の筋力を上げ、代わりに運を奪う)




シャム「0多くないか?」

シャム「こんなのじゃ勝てるわけがないで」

シャム「ここはひとまずやり過ごすで…」

「きゃああああ!」

シャム「おほぉ~!?」

「助けて!助けてっ!」

シャム「な、何があったんだで?」ソロー



おっさん「ぐへへ、大人しくしろよ」

女「いやぁぁぁぁぁ!!」



シャム「…」

シャム「…止めて欲しいで…こんなの」



おっさん  レベル3

HP 60/60
MP 28/28
筋力 50
知力 3
運 5
スキル無し

シャム「勝てるわけ無いだろ!ふざけるなだで!」

おっさん「あん?」

シャム「あ…」

おっさん「何だ、お前?」

シャム「…イヤソノデスネェ…」

おっさん「誰だお前は!!」

シャム「…」

シャム「おいいいいいいいいいいっす!!!どうも、シャムでーす!」

おっさん「ふざけてんのか?」

シャム「…あ、いや…その…」

おっさん「お前むかつくな、何だその顔」

シャム「…いや、これは…生まれつき…」

おっさん「いいや、この女やる前にライバルでも減らしとくか…」

シャム(は!?何言ってんだでこいつ!?)

おっさん「オラァッ!」

ドゴォン!!

シャム「おいいっす!?」

シャム(じ、地面に穴があいたで!)

シャム(や、やばいで、これ…!)

おっさん「ちっ、よけてんじゃねぇよ!」ブオッ

シャム(や、やられるで!)

おっさん「おっ?」ツルッ

シャム「えっ?」

おっさん「うおおおおおおおお!?」

シャム「…」

シャム「足を滑らせて崖下まで転がっていったで…」


シャムは相手を挑発した
相手の攻撃翌力が上がり、運を奪った


シャム「別に挑発してるわけじゃ無かったんだで…」

シャム「で、でもこれでどうやら一安心だで」

「あ、あの…」

シャム「ひえっ!」

「助けていただきありがとうございました」

シャム「…あ、あぁ、れ、礼には及ばないで、俺でオナニーしちゃダメだで」

「は?」

シャム(…しまった!うっかり変なことを口走ってしまったで!)

シャム「ち、違うんだで!!これは…違うんだで!」

「…」

「ふふふ、面白い方ですね、あなた」

シャム「え?」

「…もう少し明るい場所に出ましょう、そこで改めてお礼をさせてください」

女「本当に助かりました」

シャム「お、俺にかかればこんなもんだで」

女「ふふ、お名前はなんて言うんですか?」

シャム「シャムだで」

女「…シャム…?それって本名ですか?」

シャム「そうだで」

女「そうですか、私は女と申します」

シャム「…女さん」

シャム(…やばいで、明るいところで見たらめちゃくちゃ可愛い子だで…)

女「シャムさんも、このゲームのプレイヤーなんですか?」

シャム「だで」

女「…そうですか」

シャム「まぁ俺はYouTubeのための動画のために来たんだけど」

女「YouTube…?って、あの?」

シャム「そうだで」

女「YouTubeにあげて、どうするんですか?」

シャム「俺は、YouTuberなんだで」

女「YouTuber?」

シャム「しらんだで!?」

女「は、はい…」

シャム「俺が投稿した動画の再生数に応じて、俺にお金が入るんだで」

女「ええ?じゃあ働いていないんですか?」

シャム「俺にとってはこれが仕事なんだで」

女「…そうですか」

女「…ねぇ、シャムさん」

シャム「ん?」

女「…私と一緒に旅をしてくださいませんか?」

シャム「ええっ!?」

女「…ひとりじゃ、不安なんです」

シャム「…ええけど、女さんはそれでいいんだで?」

女「…?シャムさんは私を無理矢理襲おうとしませんよね?だったら、私はシャムさんと一緒に行動したいです」

シャム(来た!フラグが立ったんかで!?)  

シャム「し、仕方ありませんねぇ~!この俺が一肌脱いでやるだで!」

女「わぁっ…ありがとうございます!シャムさん!」


女が仲間になった!
インベントリのものが共有できるようになった!

シャム「取り敢えずどこに向かえばいいんだで?」

女「冒険者の町に向かいましょう」

シャム「おいいいいいいいいいいっす」




シャム「そう言えば、女さんは何でこんなゲームに来たんだで?」

女「え?」

シャム「すごく美人だで、とてもゲームをするようには見えんで」

女「…」

女「何で、ですか」

シャム「お、俺何か変なこといったで?」

女「いえ」

女「…そうですね」

女「あの世界では、私は生きられなかったから、でしょうか」

シャム「んあ?」

女「病気、なんですよ、私」

シャム「…」

女「もう、どうしようも無いくらいの、末期なんです」

女「本当ならこんな風に歩いたり、お話ししたり、いえ、もちろんこれは現実では無いですけれどね」

女「…本当なら、出来ないんですよ」

シャム「…ぁ、ああ…ぅあ…」

女「そんな時、このゲームの存在を知りました」

女「ほら、あの男の人もいっていたでしょう、つまらない人生を歩んできたって」

女「私の人生はまさにそれなんです、つまらないんです、良いこと無かったんです」

シャム「そ、そんなこと…」

女「…」クスクス

女「シャムさんは、とても優しい人なんですね」

シャム「…」チラッ



女  レベル1

HP 1/1
MP 0/0/
筋力 0
知力 0
バッドステータス アイテム使用不可
スキル無し


女「どうかしましたか?」

シャム「…何でも、ないで」

シャム(…なんだこれ…)

シャム(この女の人はゲームでもこんな理不尽を強いられてるで…)

女「でも、せめてこの自由に歩ける世界では、歩いていたい」

女「だから私は、死にたくないんです」

女「頑張って、この世界で長生きしましょうね、シャムさん」

シャム「お、おうだで」




女「つ、着きましたぁ~…」

シャム「めちゃめちゃ長かったで…」

女「ここが冒険者の町ですか…」

シャム「何をするところなんだでここ」

女「ここは…そうですね…一言で言えば冒険者かけだしの人達が装備を調える町らしいです」

シャム「…それどこの情報だで?」

女「ステータス画面のチュートリアルに書いてますよぉ」

シャム「…どれどれ」ピッ

冒険者の町
ここでは冒険者が集まり、装備やスキルを整える場所だ!
この世界で唯一の娯楽都市でもあり、特にギャンブルが盛んだ!
故に冒険者の町より、一攫千金の町と呼ばれることの方が多いぞ!

シャム「ほほ~」

女「ギャンブルは、ダメですね…私達お金持っていませんもの」

シャム「…」

シャム「いや、なんとかなるかもしれないで!」

女「え?」




「はははっ!今日は着いてるなぁ!」

「どれどれ、これで今日は女でも…ん?」

シャム「ちょっといい?お兄さん」

「何だぁ?しけたつらしてるな、お前」

シャム「俺と勝負して欲しいんだで」

「は?」

「見るからにみすぼらしい格好しやがって、お前かけるものあるのか?」

シャム「金はないで」

「ふざけんな、帰れ」

シャム「だから、俺に買ったら、この女を好きにしていいで!」

女「…」

女「…えっ?」

女「えっと、あの…その…えっ?」

「ほう、お前の女か」

「釣り合ってねーな、というかお前下唇無くなってるけどそれバグ?」

シャム「そんなことはどうでもええで!やるか、やらないかだで!」

「いいぜ!のった!」

女「えぇ~…」

シャム「…」




運 58

シャム「思った通りだで…」

「ごちゃごちゃ何言ってやがる、さぁ、何で勝負するんだ?」

シャム「俺、ギャンブル分からないからあのルーレットで勝負するだで」

「は?どうやってルーレットで勝負するんだよ」

シャム「お前が赤黒選べばええで、お前が赤なら俺は黒、お前が黒を選んだら俺は赤だで」

(何考えてやがる…このキチガイ…)

シャム「さぁ、どうするんだで?」

「いいだろうっ!乗ってやる、赤だ!!」

シャム「じゃ、俺は黒だで」

女「だ、大丈夫なんですよねぇ、し、シャムさん…?」

シャム「大丈夫だで、きっと」






シャム「ところでその雑巾の臭いのする悪趣味な服は誰の死体からはぎ取ったんだで?」






女「ボコボコにされちゃいましたね…」

シャム「ま、まぁ、さ、作戦…成功だで…」

シャム「これで今晩は食べ物と宿が手に入るで」

女「…そんな…私のために…」

シャム「女さんがいなかったら成立すらしなかったギャンブルだで」

女「…」

シャム「ありがとうだで、女さん」

女「…っ」

シャム「…?」

女「…いえ、誰かからお礼を言われたのは初めてでしたから」

シャム「…」

女「…うれしいです」

シャム(女さん…健気すぎるで…)

女「…でも、今日みたいな事はもう止めてくださいね」

シャム「す、すまんかったで!もう女さんを掛け金扱いしないで!」

女「…」

シャム「さ、さぁ、ご飯でも食べるで!」

女「…」

女「…ふふ」クスクス





シャム(その日からたくさんのことがあったで)

シャム(西の洞窟に、冒険に出たり)

シャム(北の滝で、伝説の巨大魚をつったり)

シャム(王の墓のお宝を、取りに行ったり)

シャム(ずっとデートみたいな感じだったで)

シャム(でも俺は結局ほかの冒険者と戦うのが怖くて)

シャム(見かけたらすぐにげるを繰り返してたで)

シャム(そうして、二カ月がたったで)




女「ね、シャムさん」

シャム「ん?なんだで?」

女「…どうして、敵同士なのに私を連れて行ってくれるんです?」

シャム「敵同士?」

女「だって、そうじゃないですか?」

シャム「言ってることがよくわからんで…」

女「…もし、この世界の冒険者が私と貴方の二人だけになったら」

女「私達は、戦わないといけないんですよ?」

シャム「…そうなるのかだで」

女「…それなのに、どうして?」

シャム「…?」

シャム(あれ?考えてみれば本当だで)

シャム(どうして俺は、女さんとずっと行動を共にしてるんだで?)

シャム(…俺は…何で…)


ボウッ!!


女「きゃぁぁっ!?」

シャム「お、女さんっ!?」

女「はっ、離しっ…てっ…!」

シャム「だ、誰だで!お前…!その手を離すだで!!」

「…」

「こんなところに居たのか」

女「ぐ、ぐううっ…!!」

シャム「…はなせっていってるだで!」

「…ふん、浜崎くん」

シャム「…なっ…!」

「つまらない人生を歩んできた生粋の敗北者、か」

シャム「…!」

「君がこの世界でどういう動きを見せようが、そんなことはどうでも良い」

「ただ、彼女に触れるな」

シャム「誰だでっ!?お前は!」

男「このゲームの、開発者だよ」

シャム「…!」

男 レベル無し
HP 無し
MP 無し
筋力 無し
知力 無し
運 無し

スキル 
マスター(選んだ人間をこの世界から抹消できる)



ダッ

シャム「…あ、ぁ…」

シャム(…なんだで、あいつ…)

シャム(…このゲームの…開発者…?)

シャム(…女さんが…女さんが…!)

シャム(奪われてしまったで…!)





男「権利を放棄してしまったのか」

男「ここは君のために作った世界だって言うのに」

男「ずいぶん苦労したよ、ただのモブを特定するのはね」

男「さぁ、また「こちら側」へ来なさい」

女「…」パシッ

男「…」

女「あなたは…何をしてるの…?どうしてこんなことを…!」

男「全て、君のためだ」

女「…っ!」

男「先に逝ってしまいそうな恋人の為に尽力する」

男「これは、まちがっていることなのかい?」

女「…くっ…」ギリリッ

女「あなたのやろうとしていることは、犯罪よ!」

男「あちらの世界ではね、だがここでは私が法だ」

女「…くっ」

男「あの冒険者たちは実験体だ」

男「いずれは、意識だけを切り離してこの世界に定着させる」

男「普通の人間と変わらない、僕たちの理想の世界が出来るんだよ!」

女「…そんなことは、誰も許しはしない」

男「…ふふ、もしかしてあの情けない男がどうにかしてくれるとでも?」

男「あんな長い人生の中で何も得ることが出来なかった幼稚園児以下の無能に何も出来るわけが無いだろう」

女「…」

男「僕達の被験者に選ばれている時点でお察しさ」

男「クズはいつまでたってもクズのままだ」

男「何か不都合があると嘆き、自分の非力さを後悔する」

男「自己嫌悪に囚われ、それから逃げるようにまた怠惰で何の生産性も無い日々を送る」

男「この世に生きている意味が無いんだ」

女「…このっ…!」





シャム「…」

シャム「…奪われてしまったで…女さんが」

シャム「…なんて事だで…」

シャム「…でも、俺にはどうすることも…」

シャム「…どうすることも、できんだで…」

シャム「…だって俺は、クズなんだで…」

シャム「…何が大ものYouTuberだで!」

シャム「…なにがっ…シャムゲームっ…!」ガンガンッ!

ビビー
警告
それは自傷行為に当たります

シャム「…何一つ結果を残せないで…気が付けば皆のおもちゃ…!」

シャム「人と話すことも出来なくなって…家族からも見捨てられて!」ガンガンッ!

ビビービビー
それは自傷行為に当たります

シャム「うるさいだでっ!!!」

シャム「自傷行為が、なんだ…」

シャム「…俺は、もう」

シャム「死にたいだで…」

シャム「…そうだ」

シャム「…死ぬんだ、そうすれば…」

シャム「…そうすれば」ピッ

シャム「…?変なところを、押しただで」

インベントリを開きます
新規入手アイテムが一つ存在します

シャム「…?これ、は…?」


生きてください、シャムさん
貴方と共に過ごす中で時折貴方に暗い影が落ちるのを何度も見ました
私はもうすぐ死んでしまうけれど、あなたはまだ生きられるのでしょう
大丈夫、逃げて、生きて


シャム「…女さん」

シャム「…あんな状況で…手紙まで…」

シャム「…!」

シャム(…いや、書けるわけないで…あんな状況で…)

シャム(…そうだで、つまり、この手紙はあらかじめ書かれたもの…!)

シャム(…女さんは、こうなることを知っていたんだで!)

シャム(…でも、なら、どうしてだで…?)

シャム(どうして女さんは、この手紙を俺に…?)

男「…なんて、愚かなことを…」

女「ふふ、今更?」

女「シャムさんに渡したあの手紙は特別製」

女「あの文字を読み上げると、5分後に強制的に、現実世界へ引き戻される」

女「あなたの実験のために、他の脱落した冒険者達も眠っているんでしょう」

女「全て、返してもらうわよ」

男「…」

男「それは、どうかな」

女「…?」

男「あの男は、現実世界への帰還パスワードを設定してないんだよ」

女「なんっ…ですって…?」

男「よほど現実世界へ帰りたくないのだろうね」

女「それじゃ、シャムさんは…」

男「あぁ、彼はあの手紙が何なのかさえ分かっていない」

男「それに、あの男が現実世界へ戻れたとしても、この事を誰かに言うとは限らない」

男「分かるかい?つまり」

男「君の負け、ゲームオーバーだ」

女「…この…!」





「そのゲームオーバー、コンティニューは出来るんだで?」

男「なにっ!?」

女「シャムさん!?」

シャム「待たせたで、女さん」

女「どう、して…」

女「どうして…?」

女「…どうしてっ!?」

女「…ここが現実世界じゃないからって…貴方は死なないわけじゃ無いのよ!?」

女「この人は、その気になれば脳の回路を焼き切ることだって出来る!」

女「何しに来たの!?ねぇ!」

シャム「…君が、助けを求める声が聞こえたんだで」

女「っ…」

シャム「今にも死にそうで、恋人の暴挙求めることが出来なくて」

シャム「その事を、誰にも打ち明けることが出来ない辛さを、俺は感じたんだで」

女「馬鹿…!あなた、馬鹿よ…」

シャム「…というか、恋人居るなら先に行って欲しいで」

シャム「まぁでも、恋人が居るからって、好きな女の子を見捨てる理由にはならんだで!」

男「…こざかしい」

シャム「…」

男「君は今、誰にたてついてるのか分かってるのか?」

男「私はゲームマスターだ、私の指先一つで君はこの世界から消えてしまう」

男「…なんなら、本当に脳を焼き切って見ようか」

シャム「…やれるものなら、やってみろだで」

シャム「惚れた女を泣かす男には、何も出来ないんだで…!」

男「…あぁ、そうか」

男「死ね」

シャム「おおおおおおおお!!」ダッ

男(特攻か、何の芸も無い)

男(もう少しで、体の崩壊が…!?)

シャム「おいいいいいいいいっす!!!」ドゴォン!

男「…なっ…!?」

男「なぜ消えない!?」

男「お前は、どういう…ぐぅっ!?」

シャム「そんなん知らんだで!」

男(…このっ、男…普通の人間とは脳の構造が違うのか!?)

男(…なるほど、ぎりぎり健常者…か!)

バチィッ!

シャム「…この!」

男  レベル無し
HP  285635/285635
MP 42895/42895
筋力 56295695/56295695
知力 52566/52566
スキル
スキルマイスター(全スキル使用可能)

男「君に、裏技が効かないのなら、同じ土俵で戦ってやろう」

シャム「…ぐうぅっ!」

シャム「…ふっ…ちゃんちゃら、おかしいだで」

男「…何?」

シャム「いくらそんなもので固めても、今のお前は女さんに降られた哀れな男だで…!」

男「…」ブチッ

男「…きっさまぁぁぁぁぁ!!!!」

バチバチバチ

男「…んなっ…!?」

シャム「…バグ、だで」

男「な、何だと…こんな…タイミング良く…」

シャム「…あんたが同じ土俵に立ってくれたから、こうなったんだで」

男 運 2

男「…この…クソ…!」

シャム「先に戻って、頭でも冷やすんだで!!!」バキッ!!

シャム「…」

女「…シャム…さん…」

シャム「ごめんだで、女さん」

女「ううん、良いんです、助けてくれてありがとうごさまいます」

シャム「…」

シャム「…本当に、もう死んじゃうんだで?」

女「…はい」

シャム「どうして…どうして死を前に…そこまで笑えるんだで!?」

シャム「…辛くは、無いんだで?」

女「…辛いですよ、辛い、とっても」

シャム「ならっ…女さんはあの男の誘いを断る必要なんて無かったんだで!」

シャム「自分の欲望のままに…!この世界で…!!!」

女「…」スッ

シャム「…あ、ぅ…」

女「…怖がらないで?」

シャム「…何で…なんで…」

女「あっちで、生きていくことを、怖がらないで」

女「あなたは、ううん、人間は誰だって生きる道に向かう力があるのよ」

シャム「…」

女「この世界で思考を止めて、生きていくのはとても簡単」

女「…でもやっぱり、この世界は現実じゃない」    

シャム「うぅ、あぁぁ…!」

シャム「女さん…!俺、女さんが本当に好きだったんだで!」

シャム「あごがれどが…!ぞういうのじゃなぐで…!やりだいどが…ぞういうのでもなぐで…!」

シャム「ただ、女さんが…!」

女「…嬉しい、ありがとう、シャムさん」

シャム「…」

女「貴方は、少しだけ臆病なだけなのよ」

女「勇気を出して、この世界で出せたように」

女「それが出来た貴方なら、きっとあっちの世界でも」

女「勇気が出せるわ?」ニコッ

シャム「…ああああぁ…!!ぅぁあああああ…!!」

シャム「…ほならね…!!自分がやってみろって話でずよ…!」

シャム「自分が生ぎで、俺にみぜでぐれっで話でずよ!!!!」

シャム「女ざっ…!」

シーン

シャム「…ぁ」

シャム「…ぅあああ…!」

シャム「…ぅああああああああっ!!!!!」









妹「どうしたの?兄ちゃん」

シャム「…」

妹「…朝起きたら、随分元気ないじゃん」

シャム(…あの世界は、時間の流が遅かったんだで…)

妹「…?おーい?引きこもり」

シャム「…」

シャム「…くる」

妹「は?」

シャム「…ハローワークに、行ってくる」

妹「あー、ハローワークね」

妹「ハローワークぅ!?!?」

シャム(…勇気、まだなくらないでほしいだで)





一週間後

シャム「ここだで…」

妹「お兄ちゃん、深呼吸深呼吸!」

母「うぅ…この子がはたらきたいだなんて…!」

シャム「…」




シャム「…失礼、しますだで」

ジロッ

シャム「…ぐっ」

シャム(この視線…やっぱり辛いで…!)

シャム「ん?」

男「…あ」

シャム「…」

男「…少し席を外してくれないか、君達」

「えっ?でも…」

男「…彼とは少し話したいことがあるんだ、いいね?」

「…?」

男「…この会社を選んだのは、偶然かい?」

シャム「…会社名を覚えてなかっただけだで」

シャム「俺は、片っ端から連絡しただけだで」

男「…そうか、私がきっちり資料に目を通していれば、書類の段階で君を落としていたのにな」

シャム「…」

シャム「…あの…」

男「…逝ってしまったよ」

シャム「…」

男「…あの後君にあそこで殴られて、私は気を失っていてね」

男「起きたら目の前には、もう魂の抜けた彼女しか居なかった」

シャム「…そう、だで」

男「後悔はしていない」

男「私は彼女と生きるために出来る全てをした」

男「何を後悔する必要がある?」

シャム「…」

男「だが、少し、君のような人間を見くびっていたのは事実だ」

男「…クズはクズだ、その考えは変わらない」

男「だが、クズはどうしてクズになったのか、それを私は考えもしなかった」

男「…君は、どういう理由でクズになったんだい?」

シャム「…俺は…」



勇気を、出して



シャム「…ふん、そんなもの」

シャム「…理由なんて無いんだで」

男「…」

男「…ふっ…あっははは…!」

男「そうか、理由が無いか、それが君の理由か!」

シャム「…」

男「…それで、君はどうありたい?」

シャム「…強く、なりたい」

シャム「…強い心が、欲しいで」

男「…ふん」

ポンッ

シャム「…」

男「必要な書類は渡しておく、三日後までにそこに必要な事を書いて郵送したまえ」

シャム「えっ…えっ…!?」

男「採用だ、君が望むような強い心、持たせてあげようじゃ無いか」

男「後で泣き言言っても知らないからな」

シャム「…っ!」

シャム「…ありがとうございます!」




妹「やったじゃん、兄ちゃん!!」

母「ぅああああああああっ!じゅんべいがぁぁぁ!」

妹「とうとう兄ちゃんも社会人だね!」

シャム「…ぁあ」

妹「よしよし、次は結婚だよ!結婚!」

シャム「…結婚…結婚…」

シャム「いや、それは…まだ出来そうにないで」

妹「…?なんで…?」

シャム「…でも、もう、二人に苦労はかけないんだで」

シャム「…すごく遅れたけど…でも、今から取り戻すから…」

シャム「よろしくおねがいしますだで!!」

「「うんっ!」」





シャム(君はどこかで、見ているんだろうか)

シャム(…見てなくても、いいで)

シャム(いずれそっちに行ったとき、俺は教えるで)

シャム(俺は、勇気を出せたよ、って)



おしまい

二週間後
浜崎家にはYouTuberとして新たな一歩を踏み出したシャムの姿が!


おしまい

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年03月16日 (木) 12:04:26   ID: Ot_yywox

本物のシャムさんに見てもらいたい作品

2 :  SS好きの774さん   2017年08月19日 (土) 17:17:42   ID: Bek7OoYG

泣いた

3 :  SS好きの774さん   2017年09月15日 (金) 20:50:24   ID: mNAHwlyD

いい作品だった。ちょっとハロワ行ってくる

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