肇「はじめましてのご挨拶は」 (33)


藤原肇ちゃんを中心にわちゃわちゃするSSです

短めです

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肇「おはようございます」

モバP(※以下表記P)「あぁ、おはよう。初出勤だな。昨晩は眠れた?」

肇「いえ……やっぱり、胸の奥がずっと落ち着かなくて。いつもより寝不足です」

P「ま、そんなに緊張することはないんだけどな。とりあえずこっちに」

肇「はい」

P「はい、どうぞ。ちょっと待ってもらうことになるけど、リラックスしてて」

肇「わかりました」


肇(ここが……芸能事務所)

肇(おもっていたより普通のオフィス、かな)

P「あぁ、そうだ。飲みものなにがいい?」

肇「あ……おかまいなく」

P「若いうちから遠慮を覚えてもいいことないぞ?」

肇「えっと、それならお茶を」

P「熱いのでいいかな」

肇「それでお願いします」


肇(ソファ、ふかふか)

肇(やっぱりいいものなのかなぁ)

P「へい、お待ち」

肇「ありがとうございます」

P「そこにある雑誌とか好きに読んでくれていいから」

肇「はい」

P「じゃあ申し訳ないけど」


肇(神秘の歌姫、高垣楓……)ペラッ

肇(そういえばこの人、ここの事務所だったような)

肇(……トップアイドルにいきなり会えるわけなんてないか)

柚「じーっ」

楓「じーっ」

肇「……?」

柚「じ~~~~~っ」

肇「あ……お、おはようございます」

柚「柚たちが見える……!?」

肇「えっ」


楓「ふう、座っていい?」

肇「は、はい」

肇(わ、ほ、本物だ……)

柚「おはこんばんちはなら!」

楓「あら、さようならも入れちゃうの?」

柚「どんな状況でも使えるようにしてるんだー」

楓「私も使っていい?」

柚「いいよ! まぁ柚のじゃないんだけどねー」

楓「ふふ、おはこんばんちはなら」


楓「はじめまして、よね?」

肇「は、はい。今日からこちらへお世話になる藤原肇と申します」

楓「肇ちゃん」

柚「肇サン」

楓「肇ちゃんにはじめましてって、安直ね。ふふっ」

肇「えっ、あ、は、はい、そうですね」

柚「肇サン、真面目に反応しなくて大丈夫だよ」


楓「肇ちゃんはどこから?」

柚「柚のカゼは鼻からが多いよ!」

肇「え、えっと……私は喉からくることが……」

楓「あら、きれいな声だから気をつけなきゃね」

柚「アメ食べる?」

肇「ありがとう、ございます……」

柚「龍角散のど飴って意外とおいしいよね」

楓「私は梅のど飴。ところで出身は?」

肇(あ……どこからってそういうことだったんだ)


肇「岡山県の備前市というところです」

楓「岡山県」

柚「びぜんし?」

楓「備前焼で有名なところね」

柚「ドコだっけ? 四国?」

肇「広島と兵庫の間ですね。中国地方の」

柚「香川? うどん?」

楓「それが四国」


柚「ん~……とりあえず地図で見ると左側にあるとこだね!」

楓「そうそう。柚ちゃんえらいえらい」ナデナデ

柚「へへーん。あっ、そうだ、きびだんごがあるとこ!」

肇「そうですね。私はあまり食べたことがないですけど……市街に行くと、桃太郎の像があったりします」

楓「あとは、もんげー」

柚「もんげー!」

肇「よくご存知ですね」

楓「もんげー?」

柚「もんげーもんげー♪」

肇(……使い方がちがうけど、まぁいっか)


沙紀「ふたりともなにやってんすか」

楓「あら、沙紀ちゃん、おはよう。肇ちゃんとお話を」

柚「こみゅにけーしょん!」

沙紀「おはようっす。交流は大事なことっすけど、困ってるじゃないすか」

楓「そう?」

肇「あ、楽しいですよ。あまりこういうのに慣れていないだけで……」

柚「だって! あっ、もしかしてもしかして、沙紀さんさみしかった~?」

沙紀「なに言ってんすか」

柚「返しがクール!」


沙紀「えっと、肇さん?」

肇「は、はい。なんでしょう」

沙紀「Pさんが急に用事入っちゃって。ちょっと時間空くからレッスン見学しておいてって伝言っす」

肇「わかりました」

楓「プロデューサーも忙しい人だから。ごめんなさいね、肇ちゃん」

肇「い、いえ! お仕事はしょうがないですから」

沙紀「あと30分くらいで行くから、それまでのんびりしといてっす」


柚「沙紀サンのレッスン見学?」

沙紀「そうっすよ」

柚「柚も見たい!」

沙紀「柚ちゃんは他の仕事が入ってるじゃないっすか」

柚「あー、そうだった。ちぇー」

沙紀「そんなに残念がることっすかね」

楓「ふふ、それだけ沙紀ちゃんのことが好きなのよ、柚ちゃんは」

柚「そーだよ! 沙紀サンガチラブ勢! あっ、もちろん楓さんも!」

楓「私も柚ちゃんかわいがり勢」ナデナデ

柚「うへへ」ナデラレナデラレ

肇(かわいい)


沙紀「じゃ、行くとき声かけるんで」

肇「はい」

柚「えーっ、沙紀サンもこっちでおしゃべりしよーよー」

楓「しよーよー」

沙紀「したいのは山々っすけど、アタシにもやることがあるんすよ」

柚「ぶーぶー」

楓「ぶーぶー♪」

沙紀「はいはい、別に今日しかできないわけじゃないっすから、またあとで」

柚「しょうがないなぁ、まったく」

沙紀「なんでアタシが悪いみたいな感じなんすか」

楓「沙紀ちゃん、それはしょうがない」

沙紀「なんなんすか、もう……」


肇(仲いいんだなぁ……)

楓「そういえば」

柚「ん?」

楓「岡山といえばままかりって魚があって、昔その酢漬けを食べたとき、すごいお酒に合ったのを思い出して」

柚「へぇ~、ままかりってヘンな名前だねー」

肇「ご飯が進んで、家で炊いた分を食べきってしまっても足りないから、隣の家からご飯を借りてこないといけないくらいおいしい、っていうのが名前の由来ですね」

柚「ままがごはん? なんで?」

肇「漢字で書くとこう……飯借りって書くんですよ。ご飯のことをまま、とか、まんまって言ったりしませんでした?」

柚「ほぉ~……」

楓「焼いたままかりの酢漬けがあるって聞いて、すっごく食べてみたいのよね~」

肇「私は未成年なのでわからないですけど、おじ……祖父や父がお酒の肴にしていました」


柚「えっ!?」

肇「ど、どうしました……?」

楓「肇ちゃん、いくつ?」

肇「16ですが……」

柚「柚といっこ違い!?」

楓「ごめんなさい。随分と落ち着いているから、大学生くらいだって勘違いしちゃって」

柚「柚よりいっこお姉さん……」

肇「大丈夫です。よく間違われるので……」

楓「言葉使いも丁寧だから余計に……どうしたの、柚ちゃん?」

柚「柚といっこ違い……」


肇「あの……大丈夫ですか……?」

楓「肇ちゃんがひとつ違いっていうのでびっくりしたみたい」

柚「もっとお姉さんだって……」

肇「ご、ごめんなさい……?」

楓「柚ちゃんはかわいい系で妹系だもの。肇ちゃんは、その逆かしら?」

肇「そう、なんでしょうか……自分じゃわからないですね」

柚「……柚は妹系?」

楓「純然たる妹系よ。なんといっても抱き心地がいいし」ギュッ

柚「むっ、柚太ってないよ! むしろちょっとだけ痩せた!」プンスコ

肇(妹系と抱き心地ってどう関係あるんだろう……?)


肇(あ、そういえば)ゴソゴソ

肇「これ、よかったら事務所のみなさんで分けてください」

柚「袖の下だ!」

肇「えっ、いや、あの……そういうつもりじゃ……」

楓「……ツッコミ不在だとまとまらないわね」

肇「ツ、ツッコミ?」

楓「ううん、こっちの話。それで、これは? 開けていいかしらって言う前に柚ちゃんが開けちゃってるけど」

柚「てへ。ガマンできずについ」


柚「むらす、むら……なんて読むの?」

肇「むらすずめと言って、岡山のお菓子です。薄いどら焼きの生地をひっくり返してあんこを包んだもの、と言えば伝わるでしょうか」

柚「あんこ!」

楓「岡山のお菓子といえばきびだんごのイメージだったから、これは初めて見たかも」

柚「柚はつぶあん派ー」

肇「むらすずめはつぶあんを使っているので、ちょうどよかったです」

楓「うん、おいひい」モグモグ

柚「お茶が欲しくなるねー」

肇「気に入ってもらえてよかったです」ホッ


楓「せっかくだし、肇ちゃんも食べたら?」

肇「いえ、私は……みなさんにと買ってきたものですし」

柚「肇サンもこの事務所の一員になったんだからさー、一緒に食べよ!」

肇「えっと……」

楓「こういうときは遠慮しちゃダメよ?」

肇「……なら、いただきます」

柚「やっぱりみんなで食べるとおいしいねー!」モグモグ

楓「ふふ、そうね」

肇(久しぶりに食べたかも……)モグモグ


柚「んまんま」モグモグ

肇(おいしそうに食べるなぁ)

楓「柚ちゃん」

柚「なにー?」モグモグ

楓「食べ過ぎじゃない?」

柚「大丈夫だよー、今日はレッスンあるし!」

楓「前もそう言って後悔してなかった?」

柚「うっ……ま、前とは違うから! 今日は頑張るし!」

楓「それも前に聞いたような……」

柚「ううう……だっておいしいのがいけないんだもん……」モグモグ

楓「おいしいものはなかなか止められないからしょうがないわね。私もお酒やめられないし」モグモグ


楓「3人で一箱空けちゃった」

柚「ほとんど柚と楓サンが食べてたけどね」

肇「まだあるので……これを他のみなさん用に」

柚「肇サンはいいおヨメさんになるね」

楓「わかるわ」

肇「えっ、あ、ありがとうございます」

柚「……なんだか調子狂っちゃうねー」

肇「え、えっと……」

柚「ううん、こっちの話ー」

楓「新たな刺客の登場ね」


沙紀「おしゃべりをお楽しみのところ申し訳ないっすが」

楓「あら、沙紀ちゃんもやっぱり寂しくなって?」

柚「もー、最初っから素直になればよかったのにー」

沙紀「違うっす。時間になったんで声かけに来たんす」

肇「あ……もう30分」

楓「楽しい時間はあっという間ねぇ」

柚「おしゃべりしたりなーい」

沙紀「別に今日だけってわけじゃないのに」

柚「今日という日は今日しかこない!」

楓「明日は明日の風が吹く」

沙紀「午前中なのになんでそんなにテンション高いんすか……」

楓「ふふ、肇ちゃんのおかげね」


肇「わ、私ですか?」

沙紀「困ってるじゃないすか」

肇「い、いえっ、私も楽しいです」

柚「ほらほらー、レッスン見学ってあとでもできるじゃーん」

沙紀「Pさんの指示なんだから、アタシに言われても」

柚「もっと自主性を持つべきだっておもうカナ!」

沙紀「便利な言葉に仕立てるのはやめるっす」

肇(沙紀さんが入って、すごい賑やかになって……仲いいんだなぁ)クスクス

楓「あ、そうだ」ピコーン

柚「お? 沙紀サンを丸めこむ作戦カナ?」

沙紀「それ、本人の目の前で言っちゃう?」


楓「肇ちゃんの歓迎会をしましょう」

柚「パーティー! やるやる!」

沙紀「全然いいとおもうっすけど、楓さんが言うとお酒を飲む理由が欲しいからに聞こえちゃうっす」

楓「もうっ、失礼しちゃう。4割しか考えてないのに」プンプン

肇「4割……」

沙紀「もうちょっとで半分すけど、大丈夫すか」

楓「その1割の壁は高いから」


柚「肇サンのこともっと知りたいし、柚たちのことももっと知ってもらいたいし!」

沙紀「アタシは賛成っす」

楓「なら今日やりましょう」

肇「すごく嬉しいんですけど、随分急ですね……」

楓「楽しいことを後回しにする理由なんてないでしょう?」

柚「思い立ったが吉日、だね!」

肇「……ありがとうございます。私のためにわざわざ」


楓「あとのことは私たちに任せて、ふたりはレッスンに行ってらっしゃい」

沙紀「……余裕持っといてよかったす」

柚「沙紀サンったらうっかりやさんなんだから~」

沙紀「……」グリグリ

柚「ほっぺぐりぐりしないでぇ~」

楓「ふふ、じゃあ、いってらっしゃい」

柚「またあとでねー!」





沙紀「スタジオは歩いてすぐなんすよ」

肇「本当に近いんですね。遅刻の心配はなさそう……」

沙紀「はは、そうっすねぇ」

肇「……事務所はいつもあんな感じなんですか?」

沙紀「騒がしかったっすか、やっぱり」

肇「い、いえっ、にぎやかでいいなぁって」

沙紀「あのふたりは特にあんな感じっすから。迷惑だったらハッキリ言っていいすよ」

肇「迷惑だなんてそんな……むしろ緊張していた私に気を使ってくれたみたいで」

沙紀「そこまで考えてるのかなぁ」

肇「戻ったらお礼を言わなきゃ……」

沙紀「律儀っすねぇ……夜になったら絶対会えるっすよ」


肇「本当にやるんでしょうか」

沙紀「ふたりに限らず、こういうのが好きな人ばっかりいる事務所っすから。まぁ、アタシもそのひとりっすけど」アハハ

肇「……嬉しいです。こういうの、あまり経験がないので」

沙紀「これから先、楽しいことをいっぱい体験できるっすよ。もちろん大変なことも多いけど、それ以上にドキドキできる毎日を過ごせるっす」

肇「素敵、ですね……」

沙紀「……まぁ、これPさんからの受け売りなんすけどね。でもアタシが保証するっす!」

肇(……お父さん、お母さん、おじいちゃん。私、ここでなんとかやっていけそう)


沙紀「改めて、これからよろしくっす!」

肇「はい……! よろしくお願いします」


おわり


岡山のお土産はきびだんごよりむらすずめか大手まんぢゅうを
ありがとうございました

普通に酉付け忘れてました

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