財前時子「法子がドーナツになった……ですって?」ドーナツ(椎名法子)「そう!」 (24)

ドーナツ(法子)「朝起きたらドーナツになってたんだよね」

時子「……色々と突っ込みたいことはあるけれど、貴方、どうやって喋ってるの?」

ドーナツ(法子)「うーん……どうしてだろう。でも、喋ることと動くことはできるみたいだから問題ないってことで!」

時子「問題しかないわよ……」


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ドーナツ(法子)「そうかなあ?」

時子「逆に何が問題じゃないのか教えてほしいくらいよ」

ドーナツ(法子)「だって、ドーナツになったんだよ?」

時子「それで説明できていると思っているとしたら貴方は本当のバカね」

ドーナツ(法子)「バカなんて……時子さんひどいよー」

時子「ということは本当に思っていたのね……」

ドーナツ(法子)「だって、ドーナツだよ?」

時子「『ドーナツだよ?』と言われてもどう答えろって言うのよ……」

ドーナツ(法子)「『そうね。ドーナツだものね。ドーナツなんだから仕方ないわね』とか?」

時子「ドーナツはそこまで万能じゃないわよ……あなたはドーナツをなんだと思っているの?」

ドーナツ(法子)「ドーナツはドーナツだよ!」

時子「……そう」

ドーナツ(法子)「でも、どうしよう。このままじゃ、アイドルを続けられないよね……」

時子「気にするところはそこじゃないと思うけれど、まあ、そうかもしれないわね」

ドーナツ(法子)「……それは、嫌だなぁ」

時子「……」

ドーナツ(法子)「……あ!」

時子「……どうしたの?」

ドーナツ(法子)「わかった……わかったよ! 時子さん!」

時子「何が?」

ドーナツ(法子)「私、ドーナツアイドルになればいいんだ!」

時子「……ハァ?」

ドーナツ(法子)「だって、私、この状態でも喋れるし、動けるんだよ? 今日も一人で……一ドーナツで事務所まで来たし」

時子「その状態で一人で来るって頭おかしいんじゃないの?」

ドーナツ(法子)「一人じゃなくて一ドーナツだよ! 今の私はドーナツなんだから!」

時子「そこはどうでもいいでしょう……」

ドーナツ(法子)「よくないよ! 時子さんはドーナツをなんだと思ってるの!?」

時子「ドーナツよ……」

ドーナツ(法子)「……正しいね!」

時子「そう……」

ドーナツ(法子)「それで、ドーナツアイドルのことだけど」

時子「それ、続いてたのね……」

ドーナツ(法子)「続いてたよ! でね? 私、このままでも喋って、動けるじゃない? だから、歌って踊ることもできるんじゃないかなーって」

時子「ドーナツが歌って踊るっていうのが意味わからないわよ」

ドーナツ(法子)「でも、これ、いけると思うんだ。ドーナツがアイドルになるって、たぶん、初めてのことでしょ?」

時子「初めてじゃなかったらこわいわよ」

ドーナツ(法子)「それに……私は、今、ドーナツだから。ドーナツである私だからこそ、伝えられることもあると思うの!」

時子「ないわよ……」

ドーナツ(法子)「見てて、時子さん! 私、世界一のドーナツアイドルになるから!」

時子「他に居ないから既に世界一よ……」



――それから、ドーナツ(法子)の厳しいレッスンが始まった――

マストレ「椎名! ステップが甘い! そんなことじゃ観客席からは見えないぞ!」

ドーナツ(法子)「はい!」ピョコピョコ



時子「ステップの問題じゃないわよ……」

マストレ「椎名! ドーナツならもっとドーナツの魅力を出すんだ! お前のドーナツ愛はそんなものか!」

ドーナツ(法子)「……そうだよね。私、間違ってた。私は、今、ドーナツなんだ。つまり、今の私は、世界で一番魅力的――マストレさん! お願いします!」

マストレ「ふっ……いい目、いや、いいツヤをしている。……いくぞ!」

ドーナツ(法子)「はい!」



時子「……どういうことよ」



――厳しいレッスンの日々、そして、つかの間の休息――


かな子「法子ちゃん、これ、新作ドーナツ。作ってきたんだ。食べる?」

ドーナツ(法子)「いいの!? あ、でも、今、私ドーナツだから……共食いにならないかな?」

かな子「おいしかったら大丈夫だよ~」

ドーナツ(法子)「だよね! じゃあ、いただきまーす!」モグモグ

かな子「ドーナツが法子ちゃんの穴の中に消えていく……法子ちゃんの穴って、どこにつながってるの?」

ドーナツ(法子)「うーん……どこなんだろう。わからないや!」

かな子「そっか。わからないんだ。それじゃあ仕方ないね」

ドーナツ(法子)「うん!」


時子「仕方なくないわよ……」



――そして、月日は流れ――


――ライブ会場


ドーナツ(法子)「みんなー! 今日は集まってくれてありがとー!」

ワー ワー ノリコチャーン! ドーナツー!

ドーナツ(法子)「えへへ……みんな、ドーナツしてるー?」

ドーナツー! 

ドーナツ(法子)「ありがとー! それじゃあ、一曲目、いっくよー!」

ドーナツ(法子)「」スゥ……


ドーナツ(法子)「『お願い!シンデレラ』!」



――


ドーナツ(法子)「……それじゃあ、次で最後の曲です」

エー! モットキキターイ!

ドーナツ(法子)「ありがと! ……でも、楽しい時間も、いつか終わりはくるもので……だからこそ、この時間は、大切なんだと思う」

ドーナツ(法子)「それに――心配しないで! 私は、また、みんなの前で歌うから! みんなと離れる時間は、ドーナツの穴みたいなものだけど……穴の向こう側で、待ってるから! 穴も含めて、ドーナツだから!」

ドーナツ(法子)「それじゃあ、みんな、最後まで盛り上がっていくよー!」

ワー! ノリコチャーン! ドーナツー!


――

ドーナツ(法子)「はぁ……はぁ……」

時子「お疲れ様、法子」水ヒョイ

ドーナツ(法子)「時子さん……ありがと。でも、水はいいや。湿っちゃうから」

時子「そう……」

ドーナツ(法子)「時子さん……私、やったよ。みんな、ドーナツの魅力を……わかってくれたかな」

時子「……それなら、問題ないわ。ステージでのあなたは、魅力的で――そんなあなたは、ドーナツなんだから」

ドーナツ(法子)「そう……かな」

時子「そうよ」

ドーナツ(法子)「時子さんがそんなことを言うなんて……明日、雨でも降るのかな」

時子「それ、どういう意味よ。……でも、この私が認めているんだから、胸を張りなさい」

ドーナツ(法子)「……うん! 時子さん、ありがとう!」

時子「……どういたしまして」


――


チュンチュン

時子「……」

時子「……」

時子「……なんて夢を見ているのよ、私は」


――事務所


時子「おはよ――ん? 誰も居ない? ……まったく、私が来ているのに誰も居ないなんて、躾が必要ね」

???「時子さーん!」

時子「……? 今、声が……どこに隠れているの? 出てきなさい」

???「ここだよー! テーブルの上―!」

時子「テーブルの……ドーナツ?」

???「そう!」




ドーナツ(法子)「時子さん! 私、ドーナツになっちゃった!」






終わりです。ありがとうございました。

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