モバP「妄想はもうよそう」 (33)
ライブ終了後の舞台下
凛「やった……やったんだよね私達」
未央「そうだよ! 大成功だったよ!」
卯月「はい! ファンの皆さんも凄く盛り上がってて……すっごくキラキラしたライブでした! えへへっ」
ツカツカ
P「ああ、最高だったぞお前達」パチパチ
凛「プロデューサー……!」
未央「ねえねえ見てた!? 私達の大活躍!」
P「勿論だよ。今日までの練習の成果が100%発揮された……完璧なライブだった。俺はお前達のプロデュースが出来て誇りに思うよ」
卯月「うぅ……プ、プロデューサーさぁん……」グスン
P「おいおい卯月。まだまだ泣くのは早いぞ? ほら……聞こえないか?」
卯月「ふぇ?」
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『アンコール! アンコール!』
凛「これって……」
P「そういうことだ。行って来い。ファンの皆が待ってる」
未央「……うん。行こう! しぶりん! しまむー!」ギュッ
凛「うん、いこっか。もう1回……輝いていこう!」ギュッ
卯月「はい、頑張ります!」ギュッ
P「……」
P「……」
P(ここで……)
P(突然、俺が凛たちを押しのけて、1人で舞台に上がったら……)
P(どうなるのかな……)
P(どうなっちゃうのかな……)
ホワンホワンホワン
未央「よーし、準備オッケー!」
凛「行くよ!」
卯月「せーの!」
ダッダダッ
P「――フライドチキン!」ピョイーン
未央凛卯月「プロデューサー!?」
ゴゴゴゴゴ
『アンコール! アンコール!』
『……来たぞ! 舞台が上がってきた!』
『凛ちゃーん!』
『未央ー! 俺だぁぁぁぁ! こっち見てくれぇぇぇぇ!』
『卯月ちゃーん! エヘ顔ダブルピースを何卒もう1度! 何卒!』
ゴゴゴゴゴゴガタン
P「……」
『……』
『だ、誰だあのオッサン……』
『おい……ニュージェネの3人は……?』
『どうなってんだよ!?』
ザワザワ ザワザワ
P「……」
『お、おい……凛ちゃんは? 俺達の凛ちゃんはどこだよ!?』
『未央にゃんは!? 未央にゃんいないの!? どうして!? 未央にゃんのいない人なんて……俺、生きるのやめる!』
『卯月たそ……卯月たそは幻だった……? 幻……俺はいつから幻を見せられていた……?』
P「……」
P「……どうも、ニュージェネレーションのプロデューサーです」
P「今日は生まれて初めてのライブで緊張していますが……精一杯――頑張ります! えへへ!」ダブルピース
P「では聞いて下さい――おねだり Shall We~? 」
ホワンホワンホワン
P(――そして俺の歌とパフォーマンスには想像以上の反響があり「あのイケメン歌ウマプロデューサーは一体誰だ!?」と話題になり……)
P(瞬く間にアイドル界にデビュー)
P(駆け上がるようにアイドルランクを上げて、その年の紅白歌合戦に出場……)
P(関連商品も色々出て、ゲームにも参戦……勿論アニメにも)
P(印税もガッポガッポで、タワーマンションに住んで、ライオンを飼ったり……)
P(そうだな。成功の秘訣を聞かれたらこう返そう。「男だって――シンデレラになれるんです。その気持ちを持ち続ければきっと――」ってな)
P(ああ、でもライオンをペットにするのはやめようかな。嚙まれたら嫌だし、餌用意するの難しいだろうし……)
トントン
凛「じゃあ行って来るね、プロデューサー? プロデューサー……聞いてる?」
P「えっ!? あ、ああ……聞いてるよ。そうだな。やっぱりライオンは止めて、ライオンの着ぐるみ着た仁奈を飼おうかなと思ってる。週5で、時給2000円くらいで
凛「なに言ってるの!?」
ありす「あの……Pさん」
ありす「待てますか? いいから待てるか答えて下さい」
ありす「何がってそんなの……言わせないで下さい……!」
P「……」
P(もし……)
P(待てないって答えたら……どうなるんだろう)
P(どうなっちゃうのかな……)
ホワンホワンホワン
ありす「ど、どうなんです? 待ってくれるんですか?」
P「――待てない」
ありす「えっ……あ、ああ……そ、そうですよね。待て……ませんよね。4年は長いですもんね……そう、ですよね」
P「違う、そうじゃないぞありす。4年なんて待ってられない。今すぐ結婚するぞ!」
ありす「えぇ!? そ、それは……嬉しいですけど。色々と問題が……」
P「問題なんて知るか! もぉう我慢できないぃ!」
ありす「そんなコーンフレークのCMみたいに言われても……」
ありす「法律とか倫理的にとか……」
P「法律なんて桃華がチョチョイと何とかしてくれる!」
桃華「櫻井財閥の力を見せてやりますわ!」
P「倫理? そんなもの俺が――捻じ曲げてやる!」
ゴゴゴゴゴ
ありす「え!? な、なんですかこの音は!?」
蘭子「理を破壊する者!?(プロデューサーさん……まさか、法則を……この世界の理を根源から書き換える気ですか!?)」
蘭子「それ即ち神の所業!(そんなこと神様にしか出来ません! 無理無理! 無理ですって!)」
P「いや、できる! 俺がありすを想う気持ちは――神を超える!」
P「うおおおおおおおお!」
P(あと少し……あと少しなんだ……! あと少しでありすと結婚……)
P(くっ、だがこのままでは……)
ちひろ(今ならたったこれだけのマニーで、ありすちゃんと結婚できる世界に書き換えれますけど……どうします?)
P「払いまぁぁぁす!」
ホワンホワンホワン
P(そして俺は世界を書き換えた)
P(法律的にも、倫理的にもありすと結婚できる世界に……)
P(だけど、世界を書き換えた結果、俺とありすの出会いも無かったことになっていた)
P(ある日、道で擦れ違った他人の俺達)
P(そのまま歩き去る――と思いきや、ありすが振り返る)
P(その瞳には本人も理由が分からない涙が溢れていて――)
P(俺はそんなありすに「これがシュタインズ――」)
チョイチョイ
ありす「あのPさん? それで……どうなんです?」
P「え? ああ――」
P「待てるわけないだろ? 今すぐ俺とレッツファイナルフュージョンだ!」
ありす「え!? で、でも私、まだ12歳で……」
P「大丈夫大丈夫。ちひろさんに課金して法則書き換えるから」
ポンポン
P「ん?」
早苗「事務所に響き渡る大声だったわねー。ちょっと話があるから、こっちに来なさいP君」ガシッ
ズルズル
P(まぁ……こうなるな)
>>8
> ありす「そんなコーンフレークのCMみたいに言われても……」
菜々「なんでありすちゃんが知ってるんですかねぇ……」
事務所
留美「P君。書類持ってきたわ」トサッ
P「ありがとうございます和久井さん。すいませんね、仕事手伝ってもらっちゃって」
留美「ふふっ、いいのよ。こうやってP君が仕事してるのを近くで見るの、好きだもの」クスッ
P「あはは……さて、後はこの書類に印鑑を押していくだけだな」
ペラ ポン ペラ ポン ペラ ポ――
P「――と。和久井さん。またですか」ペラ
>婚姻届け
P「書類の間に、記入済みの婚姻届けを挟むの止めてくださいってば」
留美「あら、バレちゃった? ふふっ」
P「うっかり押しちゃったらどうするんですか」
留美「うっかり押して欲しいの。その後は市役所に一直線よ」フフッ
P「全く……」
P「……」
P(本当に押したら……どうなるんだろう……)
P(この婚姻届けに判を押したら……どうなってしまうんだろうか……)
ポワンポワンポワン
ポン!
P「あ! うっかり婚姻届けに実印を押してしまったぞ!」
留美「本当に!? ふふっ、頂くわ! 千載一遇のこのチャンス!」サッ
留美「後は市役所に行けば――」
P「和久井さん」ガシッ
留美「あ……ご、ごめんなさいP君。ちょっと悪ふざけが過ぎたわよね……」ションボリ
P「和久井さん」
P「市役所に行くなら……2人で、行きましょう」ギュッ
留美「えっ」
市役所
P「じゃあこれお願いしますね」
事務員「はい承りました。おめでとうございます! お幸せに!」パチパチ
パチパチ
オメデトー
オシアワセニー
P「はい2人で幸せになります! ね、和久井さん?」
留美「えっ」
式場
P「はい、はい。このコースで。式は……洋式か和式か」
P「和久井さんはどっちがいいですか?」
留美「えっ」コッチ
式場(本番)
P「はい、こっち持って和久井さん」
P「初めての共同作業――なんか、初ライブの時より緊張しますね!」
留美「えっ」スッ
家
P「ここが俺達の新しい家ですよ」
P「2人で暮らすのには少し広いですけど……もうすぐ、3人になるから、いい広さですよね。留美」サスサス
留美「えっ」サスサス
家(20年後)
P「子供達も独り立ちして……また2人になったな」
P「旅行でも行こうか」
P「そうだ。ウサミン星で菜々さんデビュー20周年を祝うお祭りがあるらしいんだ。行ってみないか?」
留美「えっ」ブンブン
家(60年後)
P「留美……すまんな。先に行くよ……」
P「君はもう少し、こっちでのんびりしてから来るといい……」
P「愛してるよ。あっちで待ってるから……な……」ガクン
留美「えっ……」グスン
留美「……」
留美「……」
留美「P君がいない人生……どうすればいいか……わからないわ」
ポワンポワンポワン
ポワンポワンポワン
P(こうなるんだろうか……)
P(あ、ペットのことを忘れてたな。猫飼いたいけど、和久井さん猫アレルギーだし……)
P(しょうがない。猫の着ぐるみ着た仁奈に週5くらいでペットやってもらうか。時給2200円くらいで)
ペラ ポン!
留美「……!?」
P「あ、しまった! ぼんやりしてたら、婚姻届けに印を押してしまった!? 婚姻届は2枚あった!?」
留美「貰ったわ!」サッ
留美「やったやった! これがあればP君と結婚できるわ!」ピョンピョン
留美「後はこのまま市役所まで行けば――」
シュルシュルシュル
留美「はっ!? あ、足にリボンが絡み付いて……!?」
まゆ「まゆの目の黒いうちに、そんな真似は許しませんよぉ……と!」グイッ
シュパーン
留美「きゃあ!?」
留美(天井に吊り上げられて……!?)
まゆ「うふふ……亜季さんから教えてもらった、スネアトラップ……見事に成功ですよぉ」
まゆ「凛ちゃん!」
凛「――後は任せて、まゆ」
凛「はぁぁぁぁぁ」
ゴゴゴゴゴゴ
凛「輝け! 蒼の剣(ハサミ)! 受けよ――アイオライトブルー!」
ザンザンザン
留美「あ、ああ……!? 婚姻届けがバラバラに……」
まゆ「やりましたぁっ」グッ
凛「まあ、こんなものかな」ファサッ
まゆ凛「ふふっ」ハイタッチ
留美「うぅ……まだ諦めないんだから……いつかきっと、必ず……!」グスン
P(こうなるのか……)
P「おーい乃々! そろそろレッスン行くぞー」
乃々「あうぅ……見つかっちゃったんですけど……」
P「ほらほら。ライブまでもう少しだから、しっかり練習しないと」
乃々「ま、また……あんな恥ずかしい格好をさせられるんですね……。あぅ……想像しただけでも、恥ずかしくてお家に帰りたくなるんですけど……」
乃々「も、もりくぼ、そろそろ……アイドルやめようと思うんですけど……」
P「お、アイドル辞めたい宣言久しぶりだな」
乃々「たまには言っておかないと……プロデューサーさんが構ってくれなくなりますし……」ボソッ
P「……」
P(本当に……)
P(本当に乃々の言葉を鵜呑みにしてアイドル辞めさせたら……どうなるんだろうか……)
ポワンポワン
P「……そっか。分かった。無理に続けさせてもしょうがないしな」
乃々「えっ」
P「今まで悪かったな。俺の自己満足で無理やりアイドルやらせて。すまなかった!」フカブカ
乃々「いや、えっと、あ、頭を上げて欲しいんですけど……!」
乃々「た、確かに昔は本当にアイドル辞めたいと思ったこともありますけど、最近はな、なんていうか……プロデューサーさんに構って欲しいから言ってるだけで……!」
P「とりあえず今日はもう帰っていいぞ。契約についての話とか、そういうややこしいのはまた後日ってことで」
乃々「え? あ、あのプロデューサーさん?」
P「タクシー回しとくから、それで帰ってくれ。俺はそろそろ行かないと。じゃあな。今まで楽しかったよ」
バタン
乃々「あ、あれ? 行っちゃったんですけど……。ほ、本当に……?」
乃々「ち、ちが……も、もりくぼそういうつもりで言ったんじゃないんですけど……」オロオロ
乃々「えっと、えっと……」
乃々「……」
乃々「あうぅ……」
乃々「も、もりくぼ、最近はアイドルするのが楽しくて……これからも、プロデューサーさんと一緒にアイドルやりたいのに……」
乃々「どうしてこんな事に……」ジワァ
ポワンポワン
P(そして家に帰り、薄暗い部屋の中で今まで撮られた写真をぼんやり眺める乃々)
P(写真の中の自分は、恥ずかしそうに俯いていたが、それでも笑っていた)
P(キラキラ輝く世界の中で、仲間とともに笑っていた)
P(だがそれは既に過去の話だ)
P(もう乃々は、あの輝かしい場所に戻ることはできない)
P(たった一つの言葉で、世界が変わってしまうことはあるのだ)
P(その遅すぎる後悔で胸がじくじくと痛み、1人で嗚咽を漏らすことしかできない)
P(今日も、明日も、次の日も、その次の日も、ずっと……)
乃々「あ、あのプロデューサーさん?」チョイチョイ
P「だがそんな鬱屈した精神に蝕まれることで、乃々の新しい才能が目覚めた。そうポエムの才能である。今までの子供のお遊び染みたポエムは鳴りを潜め、14歳の生々しい感情を紙に叩き付けるかのようなポエムがネットで評価されて、むふふ――ん? どうした乃々?」
乃々「いや、プロデューサーさんが何だかぼんやりしてたので……」
乃々「それで、あの……やっぱり、もりくぼ、アイドル辞めようと思うんです。マジで」
P「え? いつもの『アイドル辞めようかなぁ(チラッチラッ)』みたいなヤツじゃなくて?」
乃々「はいマジなやつなんですけど」
P「ど、どうした急に? 何かあったのか?」
乃々「……お腹が目立つ前に辞めておいた方がいいと思うんです。それに何だか、最近は気分が悪くなることも増えてきたので……」
P「え? 何を……言ってるんだ乃々?」
乃々「なにって、もりくぼとプロデューサーの赤ちゃんのことですよ」サスサス
乃々「あ、そうだ。そろそろ名前も考えた方がいいと思うんですけど」
P「さっきから何の話を……」
乃々「2人で住むお家もそろそろ見に行った方がいいですよね。もりくぼ的には小さなお家でも全然問題ないんですけど……。ペットはどうします? リスなんか、可愛くて小さくてお勧めなんですけど……あ、でも餌の用意とか、大変なんでしょうか……あうぅ……そ、そうだ。仁奈ちゃんにリスの着ぐるみを着てもらって、週5日くらいでペットをやってもらうってのはどうでしょうか……時給2300円くらいで……。それからそれから……むふ、むふふ……」ポワンポワン
P(これは一体……乃々に何が?)
P「この感覚……そうだ、最近、俺にも起こるこの感覚……妄想の感覚……」
P「乃々の……妄想なのか……」
P「……」
P「そうだ……俺も妄想しないと……」
P「もっと妄想しないと……むふふ……」ポワンポワンポワン
?「むふふ、ようやくプロデューサーさん以外にも妄想の楽しさが伝わってくれたようで……日菜子、嬉しいです、むふふっ」
日菜子「後はこのままどんどん妄想の輪が広がって、事務所の皆で一緒に……むふふ」
日菜子「いずれは世界中の皆が妄想の虜になって……」
日菜子「争いも全部無くなって……ただひたすら妄想をするだけの世界……」
日菜子「そんな素晴らしい世界……考えるだけでも妄想が捗ります……むふふっ、むふふふっ」
日菜子「……」
日菜子「……さっきから日菜子のことをずっと見ているあなた」クルッ
日菜子「あなたも一緒に妄想を楽しみませんか?」
日菜子「楽しいですよぉ……むふふっ」
おしまい。
皆でむふむふ言ってる世界って楽しそうですよね。もっと色々な妄想を書きたかったんですけど、ここまでにしておきます。
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