主人公「学校一週間休んだら世界がゾンビで溢れてた」【たまに安価】 (212)


 2016年6月末日。

 そろそろ期末試験の勉強を始めようかなー、なんて学校帰りに呟いた。

「うわ、そんな事言うなよ、明日雪降ったらどうするんだよ!?」

 並んで歩いていたクラスメイトの啓吾(けいご)が心底嫌そうな顔でこちらを見る。

 おいおい、俺の勉強に対する熱意を知らないのか。

(……雪が降るくらいには冷えていたりもする)

「つーか、お前顔色悪くね?」

 啓吾が心配そうにこちらを見た。よせやい照れるじゃないか。

「体調は悪くないけど、少し関節が痛いかな」
「インフルじゃねぇのか?」
「マジで? この季節に?」

 やった!! 学校休める!!

 高校二年生にもなってこの発想。心底の屑である。

「病院ちゃんと行けよ。俺はかかりたくないから先に行くぜ!」

 啓吾……付き添ってくれないのか(寂)。

「……………家で寝てれば何とかなるだろ」

 俺は病院に行かなかった。

 熱がある感じではないし、きっと季節の変わり目に当てられたんだろう。


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「……ようやく治ってきたかな」 

 それから一週間が経つ。

 思ったよりも身体は悲鳴を上げていたらしく、僕は学校を休み続けた。

 熱はないのに気だるさだけが延々と続き、病院に行くほどではないけど登校することはできない。

 ラインで心配の声が毎日届くが返すのすら億劫だった。

(まるで生きる事を身体が拒絶しているみたいだった)

 例えるならお腹は減っているのに食べ物に手が伸びないような。

 トイレだけは何とか行く事ができたが、何度か危なかった。

「……一番最初に沸いて来るのが性欲とはね」

 むらむらと下半身にエネルギーが溜まっている。

 風に揺れるカーテンさえも裸の女性が艶めかしく踊っているように見えた。

「エロ画像で抜くかな」

 久しぶりにスマホに手を伸ばす。

 いつも一桁しかなかった電池残量がマックスだ。

「うわ、ライン通知が三桁いってる……」

 開くのすらめんどくさくなるな、これ。

「とりあえずまとめサイトでも見るか」

 人間は多くの知識を取り入れたら強くなった気になれる。それが正解不正解であるかは関係ない。

「……なんだ、これ?」

 まとめサイトにまとめられた掲示板のタイトル。

 そのほとんどが災害に関する事だった。

「世界おわた。ゾンビになりたくない。死にたくない。水を買え。街は危険だ」

 いつの間にかネタサイトにすり替わったのだろうか。ブラウザを閉じてヤフゥーッニュースを開く。

「……更新されて、ない?」

 日付を見る限り、三日前から一切更新されていない。

 どっかの都知事がクビになった事が大きく書かれている。こんな事ありうるのだろうか。

(あれ……? そう言えば僕、三日前から……)

 背中の汗がべっとりと気持ち悪い。



 僕が最後に家族と会ったのは……





「んぐっ、んぐっ、んぐっ」

 三日間も飲まず食わずでいた所為か、麦茶が酒のように美味しい。いや、酒の味は知らんけど。

「テレビは……駄目か」

 どの局もご迷惑をおかけしますと表示されたまま動かない。

 電気が通っているのだから一つくらいは放映されているかと思ったのに……。

「バイオハザードか……」

 漫画や映画でよくある設定だ。

 突如一般人がゾンビと化して襲いかかってくる。ゾンビに噛まれた人間はゾンビになって他の人を襲う。その繰り返しだ。

「三日前に起きたって事は相当数の人間がゾンビになってるだろうなぁ……」

 もちろんあれはファンタジーな話であり、実際はあんなに増えたりしないと思う。

(インフルエンザとかの感染と違って感染者はゾンビになるんだ。誰が近づくだろうか)

 あるいは潜伏期間が長ければ既に大多数の人間がゾンビになってもおかしくないだろう。

(もしかして今までのあれが……?)

 いや、もしそうなら僕もゾンビだという事だ。思考する事ができて水分補給ができるゾンビが主流なら世界はパニックになったりしない。

「とりあえずラインでも見るか……」

「皆を助けたいと今までありがとうの嵐だ」

 クラスメイトのグループラインは阿鼻叫喚だった。

 死を目前にして少しでも綺麗な魂でありたいと思ったのか、まるでゲームの主人公のような振る舞いをしている。

 人は皆、本質的に中二病なのだろう。

 個人ラインは三日前からぱったりと送られていない。

 残念ながら啓吾も僕なんかに気を使っている暇はないという事か。

「家族からのラインもないって事は……」

 僕の事が嫌いか、あるいは……。

(いや、希望を持とう……)

 少なくとも妹は生きているはずだ。

 あの子は僕に似ず賢いし運動神経も良い。

(これからどうしようか……)


安価
1、まずはこの家を補強して外からゾンビが入ってこないようにしよう。
2、妹を助けに行こう
3、両親を助けに行こう
4、啓吾を助けに行こう
5、クラスで一番可愛かった佐々木さんを助けに行こう


安価下1

「やっぱり妹を助けに行くべきだよな」

 両親は大人だ。何かあった時に自分の行動は自分で責任とれる。もしかしたら妹を助けに行っているかもしれないし。

「中学生とはいえ、スマホを持たせるべきだったな父ちゃんよ」

 たぶんびっぱーかなんじぇい民の父ちゃんは妹に近づく男に警戒していたからな。それが裏目にでたようだ。

(まとめ民で良かった)


「こんなもんか……」

 とりあえずまとめで培ったサバイバル知識を活かし、水や食料、布、ライター、妹のパンツ(洗っている奴かどうか選別済み)、ストレス発散の為にハンターハンター一冊、包丁とハサミ、電池数本とアルミホイル、サランラップ、ガムを用意した。鞄はパンパンだが、布が多いので重くはない。

「よし、行こう」

 がちゃり、ドアを開けるとそこは……。

「うぅ……あぁ……」

 ゾンビの世界でした。

 溢れかえるゾンビ、ゾンビ、ゾンビ。

 腐った肉の臭い。壁に衝突した車から漏れるオイルの臭い。

 ずっ、ずっ、と足を引きずるゾンビ。猫背で顎の上がった顔から漏れる「あぁ、うぅ」という音。

 現実で起きるゾンビパニックは予想以上に漫画や映画そのものだった。




 ごっ。


 ゴルフクラブ(7番アイアン)がゾンビの頭を吹き飛ばした。

「父ちゃんが金持ち気分を味わう為にかったクラブ……一発で折れ曲がったな」

 五千円くらいしたって言ってたけど……すまん。

「うぅ……あぁ」

 顔の半分を失ったゾンビは手脚を動かしながら立ち上がろうとしていた。

(もしかして顔を失っても動くのか?)

 専門的な事は分からないけど、もしかしたら寄生虫のように命令する何かが身体の中にいるのかもしれない。

(もしくは身体全部が脳みそみたいになってるとか)

 単純な動き(膝や足の関節を使わずにゆっくりとずり歩く)くらいなら単細胞が寄生してもできるのかも。

(だとしたらゾンビ映画のように頭を吹き飛ばしても意味がない?)

 単純な動きしか出来ない分、誰かが監督した走るゾンビ映画のような事はならないだろうけど、集団相手の危険性が増した。

(絶対に多数に囲まれないようにしよう……)

 希望を見いだすとすれば、こんな遅い動きに妹が捕まるはずがないって事だ。

「絶対に生きてる……絶対にだ」

いったんここまでにします。妹の特徴をいくつか置いておきますので安価お願いします。

安価↓1
口調
1お嬢様?口調 例「お兄様」「ふざけないでください」
2元気っ子口調 例「兄貴!」
3冷静口調   例「……兄さん」
4冷酷口調   例「死ねばいいと思います」
5その他

安価↓2
容姿

安価↓3
特技


お願いします!!安価が被ったら↓になります!

続き10レスくらい行けたら行きます!

背が高くて眼鏡でクールJC了解いたしました!


「……くそ、一回くらい文化祭に行くんだった」

 あんな父親だから当然妹は女子校に入れられた。

 駅二つ離れた山に立つ私立の学校だ。

(だけど山の傾斜をゾンビが歩けるとは思えない。ますます妹が生存している可能性が高まった)

 僕はとても嬉しかった。

 特に妹と仲が良い訳ではなかったけど、それでも家族が生きていて喜ばない奴なんていない。

 問題は……。

「あぁ……うぅ……」
「お……おぉ……」
「ごぽっ……ごぽっ……」

 街を闊歩する死体の群。

 死体の多くは目が飛び出していて気持ち悪い。

 上を向いているゾンビは口の中で腐った血をゴプゴプいわせている。

「駅近くは人で溢れかえるだろうから、川原沿いを行くべきだな」

 金八先生のオープニングにできそうな川原が中学校近くまで続いている。

 あそこを辿ればリスクは減るはずだ。

川原

「ゾンビはいるけど斜面を転げ落ちて上がれないみたいだ」

 受け身も取れなかったのか立ち上がれていないゾンビも沢山いる。

 上の道路は見渡す限り数人しかいない。

「正解だっ――」


 ――パァンッ!!


「え?」

 聞き慣れない音。何かが破裂したような。

 漫画のようにそれが銃声だとすぐに気付く事はできなかったが、続け様に叫び声が上がり理解する。

『そこのお前!! 手を上げろ! 撃つぞ!』

 声の主は川向うから黒い何かを構えていた。

(銃? あんな少年が?)

 身長一メートルと少しくらい。

 半ズボンに白いTシャツ、黒いランドセル。

 紛れもない小学生が、銃をこちらに向けていた。

(なるほど、警官から盗んだのか……)

 周りを見るとパトカーが川に突っ込んでいる。

 遠くではっきりしないがモデルガンというより拳銃に見えるしな。

「俺は君を襲う気はない! 見逃してくれ!」

 この距離があればいくら拳銃と言えど僕を殺す事は不可能だろう。

 少年の技術で当てられる訳がないからだ。

『ま、待て! 荷物を置いて行け!』

 女の子にさえ思える可愛らしい声。

 どうやら僕の荷物がお目当ての様子だ。

(音に対してゾンビの反応が鈍い。ゾンビ映画のように耳が聞こえる訳ではないのか?)

 だとすればパンデミックが起きた原因が分からない。やはり空気感染による潜伏発症だろうか。

 もしそうなら僕や目の前の小学生がゾンビになっていない訳がない。抗体を持っていればあるいは……。

「……君! 血液型は!?」

『び、B型!』

 小学生は反射的に応えた後、しまったという顔をした。可愛らしい。

(僕がAB型だから血液型に依る説は否定された)

 いや、今はまだ感染かどうかも分かっていないんだ。変に決めつけるより分からないまま慎重になった方が良いだろう。

「悪いな! 僕は行かなくちゃ!」

『ま、待って!!』

 小学生は一人で不安なのか僕を追いかけようと斜面に足をかけた。

「ばか! あぶな――」

『うわぁああああ!?』

 ずるりとこけた小学生。お尻を擦りながら下に滑り落ちて行く。

「くそっ!」

「待ちたまえ!」

 突如、僕の腕が掴まれた。

「ひえっ!?」

「危険だ! 諦めたまえ!」

 僕の腕を掴んだ制服の女性。見ると近所の女子高の制服だ。

 黒髪ロングの和風な装い。目つきは少し鋭いが、かなり美人。

 肩には円い筒を担ぎ、腰には……刀?

「ぼ、僕を殺す気ですか!?」

「あっ……、いや、すまない。これは護身用だ」

「あなたは?」

 いや、名前を聞いてる場合じゃない。小学生が悲鳴を上げている。

「私は大和涼香(やまとすずか)、こう見えて武道など嗜んではいない」

 ふふんと自慢げに胸をはる女子高生。いや、見ず知らずの人間に無力だと言っていいのかよ。


 1、そんな事より小学生を助けなきゃ!

 2、大和さんの言う事を聞いておこう。


安価↓1

選択で主人公が死んだりはしません。

登場人物に変化が起きる場合があります。

(……まぁ、俺も彼に義理がある訳じゃないしな)

 それどころか命を狙われ脅された関係だ。助ける必要もないか。


 ――パァン! パァン!


 消費されていく銃。もちろんゾンビに命中するはずもない。

 ゾンビは臭いで判断しているのか少年の存在を感知し、近寄って行く。

『うわぁああああああ!!』

 甲高い悲鳴と共にゾンビが少年の肩を噛んだ。続けて別のゾンビが頭を噛み、また別の這いずるゾンビが足を噛む。

 しばらく傍観していると、大和さんが僕の手を掴んだ。

「べ、別に君に好意を抱いている訳じゃないぞ。単に怖いからだ」

 古風?な喋り方なのに言っている事はヘタレが過ぎる。

 僕の好きなゾンビ漫画にもこういう出で立ちの女性がいるけど、彼女は嬉々としてゾンビを斬り殺してたなぁ。

(まぁ現実は甘くないという事か……)

 しばらくして肉の一部を失った小学生がゾンビとして動き始めた。

 どうやらゾンビの噛みつき行為は捕食ではなく仲間の増殖にあるらしい。

(確定したのはゾンビに噛まれればゾンビになるという事)

 とある海外ドラマはすでに人類全体がゾンビになる素養を持っていて、衰弱がゾンビ化に繋がっていたけど、あの小学生の成り方を見る限り感染の方が可能性高そうだ。

「ところで君は今からどこに行くんだね?」

「え? 僕は山中女子中まで」

「やまなかに? 家族でもいるのかね?」

「ええ、妹が」

「では是非私を連れて行きたまえ。山中卒業生だ」

「……本音は?」

「一人で生きる自信がないからだ」

 またしてもふふんと胸をはる大和さん。うん、分かりやすくて良いな。

「じゃあ刀を預かっても良いかな」

「私に扱える物ではない。もちろん良いのだが……」

「?」



「君は私を護ってくれるか?」



1、分かりました。貴方を護りましょう。
2、いや、妹の命優先ですが。
3、自分の命優先ですが。

安価下1

「分かりました。貴方の命を護りましょう」

「ほ、ほんとか!? ほんとにほんとか!?」

 うわぁ、美人が泣くほど喜ぶ姿とか見られる日が来るとは……。

(護りたい、この美人)

「でも、何でそこまでして生きたいんだ? ゾンビしかいないのに」

「もちろん理由は一つ」

「………」


「痛いのが怖いからだ!」


「へぇ」

「反応が薄い!」

 へたれ可愛い女子高生が仲間になったけど、正直お荷物感がやばい。

 この人すぐ人質になったり罠にかかったりして仲間に迷惑かけるタイプのキャラだろ。

「ところで君の名前は?」

「……南路(なんじ)」

「なんじ? 変わった名前だな」

「良く言われる。まぁ、気軽に南(みなみ)って呼んでよ」

 まぁもちろん偽名だ。この人が僕を騙している可能性だってゼロじゃないからな。

 終わった世界で名前なんて何の意味があるって話だけど、生きている人数が限られているという事は変に追いかけられると名前なんかの情報が重要になってくるという事だ。

(もちろん某掲示板から借りた名前だ)

「分かった。南、よろしく頼む」

「じゃあ、行きましょうか」

「ああ」

「………」

「………」

「え?」

「ん?」

「いや、案内……」

「それは無理だ。口で案内する」

「はぁ?」

「君は愚か者か? 前を歩くとか怖くて出来る訳がないだろう」

「………」

 うん、現実は甘くない。

いったんここまで!

中学校の状況をお願いします!(妹は生きている設定です)


1、ほぼ壊滅。数人の生徒と先生が生き残っている。
2、数十人生き残っている。主従関係がある。
3、ほとんど生きている。数グループに分かれて戦争状態になっている。


安価下1


 緊張感のない話だが、斜面を登る事もできない情けないゾンビに怯える事など出来なかった。

 むしろ知らない女性と手を繋いで歩いている事の方が心臓に与える刺激は強い。

(人生で一度も彼女のいない僕には刺激が強すぎます!)

 加えて利き手で持っている刀はずっしりと重い。この先の武器としては頼りがいがあるような荷が重いような微妙な感覚だ。

「大和さんは……」

「大和、もしくは涼香で良いぞ。女子高育ちの私は異性と接触の機会がなくて大体呼び捨てだったからな」

「じゃあ、大和」

「涼香で良いぞ」

「………」

「ん? 遠慮しているのか?」

(最初から言え……)

 少し一緒にいれば分かる涼香の鬱陶しさ。

 可愛さ余って憎さ百倍だ。女特有の陰湿な部分がないだけマシだが。

「……涼香の家族は?」

「………ああ、心配するな。私の両親は海外でゾンビになっているだろう」

(何だか声のトーンが変わったな。哀しみを乗り越えたというよりは……)

 最初から両親に対する心配など一切していないような。

「そうか。じゃあ俺の家族の心配をしてくれ。少なくとも妹は生きていると思うんだ」

 瞬間。涼香は僕の手を強く握った。

「それが君の本質か? 正直惚れてしまうぞ?」

「いや、良く分かんないけど……」

「あぁ……うぅ……」

 川に沿って歩いたからと言って、ゾンビが大人しくしているかと言えばそうでもなかった。

「下がってろ涼香。つーか手を放してくれ」

「いや、怖くて手が離せん」

「……他意はない!」


 ふに!


「ひゃぁん!?」

 僕は思い切り涼香の胸を揉んだ。彼女は思い切り跳び上がると僕の手を放して距離をとった。

「き、ききき、君! いくら親しい仲とは言えいきなり女性の胸を触るだなんて許されない行為だぞ!」

「はぁっ!!」

 涼香の言葉に耳を傾けている暇はない。

 僕は思い切り刀を振り下ろした。


(くそっ! 胴体は骨が多くて勢いが削がれた!)


 素人の自分はいかに骨が硬いか想像できなかったのだ。

 まるで鉄に当たったかのような硬さに手が痺れてしまった。ゾンビの左肩から背骨までも到達せず刀は止まっている。

(抜こうにもゾンビが手を伸ばして……っ)

 早くも嫌な予感が的中した。

 僕はあまりにも大きな力を手に入れて調子に乗ったのだ。

 使いこなせない力はないのと同じなのに。

「折れたらごめん涼香!」

「えっ!?」

 僕は刀から手を放すとゾンビの胴体を思い切り蹴飛ばした。

「ごひゅっ!」

 口からどす黒い液体を吐きだすゾンビ。ご飯に箸を立てたような形で刀の柄が天を向く。

「どっこいしょ!」

 ゾンビのヘソ辺りを足で押さえ思い切り刀を引っ張り抜く。心臓が動いていないのか血管から血が噴き出す事はなかった。

(刀として使うのはやめよう)

 バットのようにした方が使いやすいだろう。

「だけどその前に……」

「南?」

 涼香の声を無視し、僕はサラリーマンの姿をしたゾンビの首に向けて刀を振り下ろした。

「かった!?」

 首の骨も太くて硬い。

 何度か振り下ろしてようやく首の切断に成功する。

「………やっぱり動くか」

「どういう事……?」

 涼香が首を傾げた。

 僕は説明しようにも知識が足りないのか適切な言葉が思い浮かばなかった。


 続けて腕と足を切断してみた。

 アダムスファミリーの手みたいに動くかと思ったけど、意外にも動くのは胴体だけだった。

(胴体に何かしらの命令器官ができているのか?)

 そう言えば頭も動いていない。内臓の筋肉だけがゆっくりと動き、切断面から大腸らしきものが漏れだしている。

「首を切り落としても意味がないってことか……」

「君は随分と容赦がないな。何か経験があるのか?」

「いや、強いて言うならゲームや漫画かな?」

 大人はゲームや漫画を否定するけど、僕達は別にそこから取り入れた知識で働きたい訳じゃない。

 知識の枠を広げる事でより多くの可能性に手が届くようになるんだ。

 今だってゾンビの映画を見た事無い人よりは効率良く動けている。後は想像と行動の繰り返しだ。

「なるほど、私はそういう物を一切読まない所為で君の足を引っ張りそうだ。本当にすまない」

「大丈夫。他の全てでも足を引っ張ってるから」

「……酷いな君は。凹みそうだ」

「いや、凹まないのか……」

 正直これからの事を考えると涼香には精神的に強くなってもらわないと困る。

 ストレスを多く感じて耐性を身に付けてもらいたいんだけど……。

(まぁ、お荷物はお荷物として端っこにいてもらえばいいか)

「それで、この人達は何と呼べばいいのだろうか」

「ゾンビって知ってる?」

「言葉くらいは……」

「いや、ゾンビって内容知ってなきゃ言葉を知ってても無意味だと思うけど」

 想像の産物なんだから字面だけ見て何の意味があるんだ……。

「ゾンビって言うのは動く死体の事」

「死体が動くのか!?」

「動いてるじゃん。そこらへんに」

「あの人達は死んでいるのか!?」

「……何だと思ってたんだよ」

「……病気かと」

(そう言えば……)

「ふむ、ではこの携帯する他人の運命という状態になっているのだね?」

「うん、全然違うけどね」

 涼香はハンターハンターを読みながら何かを分かっている気になっていた。

「要は動く死体ってのは自分の意思で動かず、近づく人間を襲うように出来ているから危険だって事。絶対に近づいたら駄目」

「ああ、それは重々承知している。なるべく君の傍にいよう」

(それは僕から言う言葉では……)

 清々しいほど僕だよりで図々しい。

 何だか逆に愛着がわいてくる。まるでペットみたいな……。

「十分くらいで着くかな……」

「川から離れるが大丈夫だろうか」

「まぁそこは慎重に行こう」

「分かった」

 川から学校のある山に向かうには、どうしても大通りを通らなければならない。

 それ以外は路地裏の細い道と獣道くらいしかなく、より危険が増すからだ。

「あの橋を渡ろう。誰もいないみたいだし」

 橋にはバスが一台止まっているだけで誰もいない。

 恐らく運転手が逃げ出して乗客も逃げたのだろう。

「……大丈夫だろうか?」

「バスの入口は片方しかないから、その逆をいけば襲われる心配はないよ」

「君は天才だな」

「……よく言われる」

更新は夜かな?(・∀・)ワクワク

生きてた…(°ω°)

ペットショップ

ドッグフード食べなきゃ(使命感)

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