※黒井崇男の命令によって961Pがライバルプロダクションを潰そうとする話です。
※奥山沙織・荒木比奈両アイドルが眼鏡皆勤賞をもらいます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1465790298
――961プロダクション、社長室。
黒井「私が呼んだ理由が分かるか?」
P「いえ……」
黒井崇男は手にしていたパンフレットを机の上に広げて置いた。
そこには渋谷凛、十時愛梨を中心に据えた新興のプロダクション
シンデレラプロのライブについて書かれていた。
黒井
「最近シンデレラプロという成り上がりが
背丈に似つかわしくない勢いをつけ始めている。
我が961プロやあの765プロと比肩するほどにな」
P「聞き及んでおります」
黒井
「そこで、だ。お前に頼みたい事がある。
シンデレラプロに侵入し、内部から奴らを崩せ」
P
「……。失礼ですが、そこまで警戒すべき事でしょうか?
事務所の規模も歴史も我らと比べてかなり……」
黒井
「甘いな。放っておけばあの手の事務所は害になる。
765プロの子会社から独立を果たした社長の手腕は確かなものだ。
今俺たちは四条貴音、我那覇響、ジュピターを失い、事務所の主戦力が
厳しい状況……憂いの芽は早めに刈っておくに限る」
P「……分かりました」
黒井社長の手引きによってシンデレラプロダクションに入社した彼に
早速担当アイドルが割り当てられた。
とりあえずはこれ以上シンデレラプロの勢いがつかないように
期待の新人アイドルを潰していく事を当面の方針とした。
しかし、担当になったアイドルばかりを潰していっては
早々に業務不振で首を斬られてしまうだろう。
まずは有望株である島村卯月、本田未央、ヘレンの三人を核にして
プロデュースし、それ以外のアイドルを軒並み間引いていく事にした。
沙織
「は、はは、はじめまして……! わだす、奥山沙織十九歳です…。
わ、わだすなんかがアイドル目指すなんて馬鹿って思われるかもしれねーけんど
……頑張りますから、プロデュースおねげーします!!」
P
(ふん……上京してきた田舎娘か。訛りが酷いし見た目もパッとせんな。
しかし、実力はそこそこある。磨けば光るタイプとみた。
……よし、まずこの娘から潰してやるとするか……)
沙織「こ、これが初めてのライブで着る衣装だか……!」
P
「ああ、沙織。あと、眼鏡はつけたままで頼む。
メガネショップの新作とタイアップも兼ねているから」
沙織
「眼鏡はかけたまま、だか。いやぁ、こげなあだすを
変身させるなんでメイクさんと衣装さんは神様だ」
P「……それなんだが、化粧は極力しない方針でいく」
沙織
「ええっ!? でもあだす、そばかすあって……すっぴんは自信ねぇだよ」
P
「沙織はまだ十代だろう? その肌のハリは立派な武器だ。
それは化粧のない方が映える。俺は沙織の素朴さをウリにしていくつもりだ。
それに、お前はそばかすをマイナス要素として考えているようだが、それは間違いだ。
それは立派なチャームポイントだぞ」
沙織
「そ、そうだか……?
プロデューサーが素顔のわだすもカワイイって言ってくれるんなら……」
P
「あと、東北弁は無理に直さなくていい。
自然体でやる事がこのライブで一番大切な事なんだ」
沙織「ほんとうだか? よがった、あだす、なかなか訛りがとれなぐて……助かっただ」
P
(フフフ、これでいい。統計学的に見ても眼鏡をかけた女子は
総じて裸眼女子に比べて人気がない。
眼鏡っ娘が可愛いなどというのは、狂信者の妄言、まやかしに過ぎない。
でなければメガネザルみたいな眼鏡女子への蔑称など、そもそも生まれないのだからな)
P
(さらに、三つ編み・太眉が加われば、それらを備えた女子の人気は壊滅的となる。
どんなに元が良くてもその三つのマイナス要素が必ず足を引っ張る。
そして方言だ。単体で見ればたしかに変化球の個性として受け入れられるだろうが
前三つの要素と合わせる事によって醸し出す芋臭さを激臭へと変える)
P
(この四重苦を抱えた、田舎を歩いていたら
どこにでもいそうなアイドルに人気など出る訳がない。
ふん、もって一年といった所だろうな)
ファンA「いやぁ、おぐやまちゃんいいよね~」
ファンB「おお、貴殿もそう思うでござるか!」
ファンA
「当然だよ。あの派手さのない落ち着いた見た目が妙に癒されるんだ。
俺は化粧バッチリ決めた娘ってちょっぴり苦手だからさ
ステージにまでほぼノーメイクで歌うだけで好感度グイグイな訳よ」
ファンB
「拙者はソバカス萌えな訳でござるが、メイクされると
それを消してしまう事が多くて……
その点さおりんはノーメイクイエスソバカスなスタンスでござる!
ケイト殿と並んで拙者の二大推しメンでござるよ」
ファンA
「あと外せないのが方言だね。
いなかっぺな訛りが畑だらけの実家を
思い出させてくれて、優しく耳に響くわけ」
ファンB
「しかり、しかり! そして方言連発で相手が戸惑っているときとか
眼鏡の奥にある綺麗な瞳が不安そうにしていて、それがくらっとくる!」
ファンA「全くおぐやまちゃんのプロデューサーは只者ではないな」
ファンB
「しかり、しかり。凡百の輩なら眼鏡も方言もソバカスも
不人気要素として全部取っ払ってしまう所でござる!
神仏そしてプロデューサー殿に感謝するでござるよ」
プロデューサーの思惑とは裏腹に、奥山沙織は着々とファン数を増やしていった。
アイドル戦国時代とも言えるこの大海においては
生半可な個性や外見だけで到底渡りきれるものではない。
飾らな過ぎる身なり、そしてきつい方言は
アイドルとして化粧をばっちり決めている娘たちの中でも
埋もれない個性を示し、瞬く間にアイドルランクを伸ばしていった。
沙織
「あのっ、ありがとうごぜーますプロデューサー。
あだす、アイドルになって……あきらめねえで、ほんどにえがった……!」
P「あ、ああ……そうだな」
P(どういう事だ? 三つ編み、眼鏡、太眉だぞ?
人気の出る要素は皆無なのになぜこんなにも高評価が……)
春菜「失礼します! 貴方が噂のプロデューサーですね!」
P「え、ああ、そうだ。君は確か……、上条春菜さん?」
春菜
「はいっ! 実は今日、眼鏡の魅力を毎日伝えている沙織ちゃんに
眼鏡皆勤賞を授与しに来ました!」
P「眼鏡皆勤賞?」
沙織「あだすに? あ、ありがとうごぜーます、春菜さん」
春菜P「うおお、心の友よ――っ!」ガバァ!
P「ひいい、何だあんたは!」
春菜P
「私か? 私は眼鏡と共に生まれ、眼鏡と共に生きんとする
マスターオブ眼鏡、上条春菜のプロデューサーだ」
P「わ、分かったからハグはやめてくれ。……で、一体何のようなんだ」
春菜P
「言った通りだ。君と奥山沙織の素晴らしい門出を祝福しに来たのだ。
私は愛してやまない眼鏡っ娘の魅力を少しでも多くの人に啓蒙しようと
日夜春菜と共に努力を重ねてきた」
春菜P
「例えば成年向け漫画では眼鏡娘を出そうとすると編集は露骨に嫌がる。
アンケートが取れないから裸眼女子でいけと言うのだ。
そんな逆風は人気取りの業界において常に吹き荒れている」
春菜P
「我々はそんな嘆かわしい社会に警笛を鳴らし、本来得られるべき権利を
主張する役割を担っている訳だが……!」ヒシィィィィ!
P「ひぃ!」
春菜P
「君の眼鏡娘布教活動は本当に素晴らしい!
下手に裸眼にして平均的アイドル像に近づける事なく
素材の魅力をそのままに生かして新生眼鏡娘アイドル・奥山沙織の
魅力を存分に発揮させている!
茨の道かもしれないが安心してほしい! 君は、一人じゃない。
君と奥山沙織の活動にこれからも期待しているよ!」
P&沙織「あ、ありがとうございます……」
P
「……なんなんだあの熱血ホモは……。
さて、気を取り直して新しくアイドルをプロデュースするか……」
荒木比奈「お願いしまース……」
P
(……ボサボサの髪にジャージ、そして眼鏡……
典型的なオタク女子の姿だな。
だが、下地は悪くない。それらを全部捨てて磨けば光る……
いやいや、いかんいかん! 磨いてどうする!)
P
(俺の使命はシンデレラプロを潰す事!
そしてそのためには目ぼしい新人アイドルの芽を摘み取る、刈り取る事!)
P
(そうだ。だからこのままでいい! 沙織は例外だ!
不人気要素はそのままにして埋没させたままにしてやる!)
――半年後。
ファンA「いやぁ、荒木氏のライブ最高でしたな」
ファンB
「ホントホント。俺さ、この前のサイン会で
オキニのアニメキャラまで色紙に書いてもらったんだよ。
下書きもなしにすらすらと。流石元壁サーの作家だなって思ったよ」
ファンA
「良いですなぁ、私も今度のライブで既刊誌にサインしてもらいましょうかね。
それはそうと、この前月刊ライブフォーユーに載っていた
荒木氏の水着グラビア、見ましたかな?」
ファンB
「見たともさ! 荒木氏の水着姿が載っているので即複数買い!
あのコーナー今度のCDの販促だったけど、荒木氏のプロポーションが最高なんだよね」
ファンA
「そうですな。私のフェイバリットショットは、いつものジャージを
スクール水着の上から羽織ってぺたんと座ったまま上目遣いをしている所。
あれだけで後五年は戦えますな!」
ファンB
「ああ、あのピンナップはクリティカルヒットだった!
デビューしてからずっと眼鏡を離さずつけている所も評価高いし
これは更にブレイクする予感がするよ」
春菜「眼鏡皆勤賞、荒木比奈殿!」
比奈「どうもッス……」
春菜P
「うおおおおおお、心の友よ――っ!
また一人、素晴らしい眼鏡アイドル(メガドル)をブレイクさせてくれたぁ!」スリスリ
P「ぐあああ、頼むから頬を擦り付けるなぁぁぁぁぁ!」
こんな事に堪えかねて彼は奥山沙織と荒木比奈を
春菜Pに託し、新たなアイドルをプロデュースする事にした。
P
「はぁー! はぁー! あンのメガホモ野郎! 人の気も知らないで!
とにかく、不本意ながら実績は出来た。今度はプランBで行くぞ!」
次に彼はアイドルのライブ先について誤情報を流す事に専念した。
ファンは金と時間を費やして会場に来る。
時間も約束もルーズなアイドルには到底信用など得る事はできない。
アイドルとファンの信頼関係は大切なのだ。
P「手始めにこのアイドルを徹底的に潰してやろう。
この手はあまり多人数に使わない方がいい。
一極集中、一人一人を確実に潰す。――よし、このアイドルにしよう。
ライブチケットの安さが気になるが、その分参加者が他の者より一桁多い。
ふん、この手のアイドルは客がいなくなればすぐに消えるものなのだ」
彼はそのアイドル、宮本フレデリカに偽の会場情報を流した。
あらかじめ間に複数人置いて伝達し、書類まで偽造するという徹底ぶりである。
この嫌がらせを数ヶ月に渡って続けたが
宮本フレデリカの人気は下がるどころかどんどん上がっていった。
流石におかしいと思い、フレデリカを担当しているプロデューサーにそれとなく探りを入れた。
フレデリカP「えっ、最近困った事がないかって」
P「ええ」
フレデリカP
「そうだなぁ、最近熟女モノで抜けなくなってさ
んでロリ系女優ばかりで抜いてるんだ」
P
「いえ、そういう事でなくてですね……
仕事上で何かトラブルがないかと」
フレデリカP
「うん、そうなんだ。
でね、ここのラーメンがなかなかオツでよく通っていて……」
P「ここはカフェテリアですよ」
フレデリカP「あ、そっか。まあいいや」
P「いや、あの話の続きをですね……」
フレデリカP
「話? ああ、ごめんね。俺ってばついつい話が脱線してしまってね
そんでついたあだ名がJRなんだよ。参っちゃうよね。
さっき思い付いたんだけど」
P「……。それでですね……」
フレデリカP
「うんうん、それでね、話を戻すと、巨乳熟女モノばかり
使っていたもんだから抜き所が今一つ……」
P「いや! だからアンタのAV談義はもういいって! 仕事、仕事上のトラブル!」
フレデリカP
「ああ、ごめんね。いやぁ、話し込んでると話題の移り変わりが早いね」
P(まだ十分も経ってねぇよ!)
何とかこのテキトーなプロデューサーから話を引き出した所、次のような事が分かった。
つまりこの男はテキトーにライブ先の候補をいくつかピックアップして
ファンにはそれらのどこかで当日ライブをすると伝えていた。
どこでライブをするかは当日のフレデリカに決めさせているという。
P「ファンは怒らないんですか、そんな事して!」
フレデリカP
「だって一つに決められないし、フレデリカのフリーダムな性格は皆承知の上だし
機材やスタッフは最小限、チケット代も有り得ない程低くしてるから
そんなに文句を言われた事はないな。
ファンは各々どこにフレデリカが出没するかを
予想して張り込むし、うん、彼らも楽しんでるよ」
P「それで採算がとれるんですか?」
フレデリカP
「今は採算よりも顔を売る方が大事だね。
知っての通りフレデリカは見た目よし、いい性格、歌は上手い
プロデューサーもイケメンだから、多少レアリティをつけると
皆一目見ようと探してくれるんだなぁこれが」
P
(信じられん……プロデューサーもプロデューサーなら
ファンもファンだろ……。そんなプロデュースの仕方なんてアリかよ……)
部長「君、担当アイドルの育成も忘れてはいかんよ」
P「は、はい」
P(そうだ……業績のためにも、とりあえずはアイドルを育てなければ)
とりあえず彼は卯月、未央、ヘレンに加えて相川千夏のプロデュースに力を注いだ。
千夏を入れたのは今まで軽視してきた眼鏡アイドルが予想外の躍進を遂げていたのを見たからだ。
沙織と比奈を預かった春菜Pは眼鏡アイドル六人をプロデュースして高評価を得ている。
この眼鏡っ娘ブームに乗れば千夏も人気が出ると踏んだのだ。
しかし、眼鏡をかけているにもかかわらず千夏は中々ブレイクせず
注目されるのは春菜Pのアイドルグループだけだった。
卯月と未央は時間をかけている割に一向に芽が出ず、ヘレンに至っては
大言壮語ばかりで全く実力が伴わず、金だけが
トップアイドルレベルで減っていくという有り様だった。
凛P「ええ、僕にそんな大役を……っ!?」
P
「うん。恥ずかしいが、俺の力だけでは卯月と未央が羽ばたけるには不充分なんだ。
彼女のためにも是非とも君の力を借りたい」
凛P
「しかし、僕はただの新参Pで……凛が初めての担当アイドルなんです。
それにプロデュースも今は彼女だけで精一杯で……」
P
「凛P君。君はもっと自信を持つべきだ。
君のプロデュースは洗練こそされていないが、アイドルの実力を
引き出す力は新人の中でも抜きん出ている。
いずれこのシンデレラプロの中核と成り得る人材、そう俺は確信している」
凛P「先輩……」
P「君から見て卯月と未央はどうだい?」
凛P「確かに、光るものは感じます」
P
「そう。アイドルは原石のようなものだ。
研磨されなければその内に隠された輝きを放つ事は出来ない……。
俺は、彼女たちを原石で終わらせたくないんだ。
しかし、俺の力では彼女たちを次のステージに押し上げる事は出来ない。
恥を忍んで頼む! 彼女たちをプロデュースして
新たなステージを見せてやってくれ!」
凛P
(何て熱い先輩なんだ……そんな人が
新人の俺をこんなにも買ってくれてるなんて……よし!)
凛P
「分かりました。全力で先輩から託されたアイドルを
プロデュースします! 任せて下さい!」
P「ありがとう! ありがとう……!」
凛P
(涙まで流して……本当は親しくしたアイドルを手離したくないんだ……
そんな大切なアイドルを、俺に託してくれた……!
うん、早速トリオの申請とレッスンスケジュールを見直さなくては!)
P
(ふっ、馬鹿は扱いやすい……だが、確かにあいつは新人Pの中でも有望株。
順当に育てば961プロの恐ろしい相手になるだろう。
だから、充分な経験をつけていない今がチャンスだ)
P(中々ブレイクしないお荷物アイドルを押し付ける事によって
プロデュース活動で足を引っ張らせる。これがプランCだ!)
P
(成長しきっていない新人が一気に三人もプロデュースすれば
とどのつまり、どのアイドルのプロデュースも中途半端なものになり
期待の星であるアイドル渋谷凛の実力も伸びきらない。
他の二人は言わずもがな、だ。
新人が三足草鞋を履けばどうなるか、火を見るより明らかだ)
プロデューサーは凛Pだけでなく、他の二人についても、それぞれ唯Pと
新人Pに押しつけて新しいアイドルをプロデュースし始めた。
どちらも新人潰しが目的である事は言うまでもない。
P
(ふん……インテリな相川千夏と典型的ギャルの大槻唯では正に水と油
デュオにしようものならきっと仲違いして足を引っ張り合う事だろう)
P
(そしてヘレンだ。口ばかりが先行して金ばかりかかる厄介者!
こいつを新米Pに委ねれば嫌気がさすのが先か、破産するのが先か。
いずれにせよあの新人は終わりだな)
しかし数ヶ月後、期待と裏腹に凛Pは砕身尽くして新生アイドルユニット
ニュージェネレーションズをプロデュースした。
彼女たちは一年後に劇的ブレイクを果たした。
その時のインタビューで彼はこう語る。
凛P
「先輩から大切なアイドルを預かった時、僕は最初無理だと思ったんです。
僕はペース配分というのが苦手で、一人のアイドルに全力投球するスタイルなんですよ。
入社一年未満の僕に一気に三人ものアイドルをプロデュースするなんて無茶苦茶です。
……でも途中で投げ出さなかったのは一人の先輩の存在でした」
凛P
「彼はこんな経験もない僕の実力を誰よりも評価し
信じてくれただけでなく、頭まで下げて三人プロデュースしてほしいと頼みました。
その時の涙を滲ませた先輩の瞳は、どこまでも真っ直ぐで、澄んでいました。
その目を見て、僕は三人のプロデュースを新人の身でやる事にしたんです」
凛P
「それはもう、最初は全然手が回らなくて
正直に言うとDランク引退も覚悟していた時期もありました。
でもあの二人、卯月と未央は先輩から預かった大切なアイドルです。
凛と共に僕にとって最も大切なアイドルなんですよ。
だから、命に代えても三人共トップアイドルに導いてやる
そんな気持ちで毎回オーディションに臨みましたね」
凛P
「先輩には感謝してもしたりないです!先輩の存在があったから
僕はアイドルと共に自分自身の限界すら越える事が出来たんです!
新たなステージを見られたのは先輩のお陰なんです!」
P「……どうしてこうなるんだ……」
さらに悪い事は続くもので、千夏とヘレンのアイドルランクもぐんぐんと上がっていった。
ファンA「いやぁ、気ぃつけばちなったんの事ばかり考えとるわ」
ファンB「あれ、君は確か唯たん一択と言ってはなかったかい」
ファンA
「ははは。実は、あまり興味なかったんやけどな。
ほら、ワシって生粋のJK至上主義者やから。
しかしやな、唯たんがちなったんとかなり仲良くしているのを見て
ごっつ興味もってや、色々調べ始めたんやって。
そーしとるうちにちなったんについての認識を
改めるべきちゃうかと思い立ったが次第」
ファンA
「学力的にも二人はまず正反対やん。
それでいて決してそれを鼻にかける事なく唯たんと接するちなったん……
彼女と一緒におる時は唯たんもいつも以上にはしゃいどる。
そんな唯たんもゴリ可愛かったりすんねやけど
それを見守りながら遊びに付き合うちなったんにも
ワシは母性っちゅーか姉属性を見出だしてしまった訳やねん!」
ファンB
「ふむふむ、やっと君もちなったんの魅力に気づいてくれたようだね。
唯たんもちなったんもそれぞれ単体として魅力があるけれど
ペアだとその魅力が三倍にも四倍にも膨れていくのを感じるよね。
まさにアイドルデュオの良いところが強調されていて、うならせてくれるよ」
ファンA
「ゆいちなは正義、これぞこの世の理ちゅーこっちゃな」
唯P
「俺、最初は絶対うまく行かないと思ったんすよね。
唯と千夏じゃあタイプからして違うし。
でもね、先輩に言われて迷っていたら、ニュージェネレーションズを担当している
同期のPが言ってきたんですよ。
『先輩を信じてプロデュースしろ』『きっと上手く行く』と」
唯P
「それからは遮二無二でしたね。
でも千夏と唯があんなにも相性が良かったなんて……
ひょっとしたらこれを気づかせるために先輩は千夏を預けたのかな。
プロデュースも実はアイドル一人の時より楽になったんですよ。
仲良しコンビを見た番組や企業がイメージガールやらレギュラーやらを頼み込んできて……
こんな事ならもっと早くデュオの可能性に気づけば良かったですよ。
先輩には頭が上がりませんねホント」
ヘレンP
「第一印象は、やっと面白い娘が来たなって思いましたね。
俺は正統派アイドル育成ばかりを直属の上司から
求められてそればかりやってました。
でもなんか違うな、ってずっと思っていたんです。
アイドルは歌を歌うだけが仕事じゃないって。
人々を喜ばせる事、言ってみればそれが俺のアイドル観なんですよ」
ヘレンP
「だからかな、上司への反発もあって無性に
バラエティアイドルをプロデュースしたかった。
でも上田鈴帆や難波笑美、赤西瑛梨華といった娘たちは
既にデビューしていて確固たる支持層を集めている。
彼女たちに負けないパワフルなアイドルが欲しかったんです」
ヘレンP
「ヘレンさんはそんな俺の理想にぴったりでした。
確かに散財はありましたけど、彼女の行動力とアイディアを俺は大切にしました。
表向きはグラビアアイドルとして活動させたので、上にも文句を言わせませんでした。
そうして徐々にバラエティの仕事を確実に増やしていって
今では『えっ、ヘレンさん芸人じゃなくてアイドルなんですか!』
とまで言われるようになりました。
ありがとうございます先輩って、声を大にして感謝したいですよ、ハハハハハ」
P「何がハハハだ! くそがぁぁぁぁぁ!」
――非常階段にて。
黒井『……ずいぶんとまあ、頑張っているようだな?』
P「はっ、はい、ええと、その……」
黒井
『貴様をそっちに送ってからずいぶんと経つ。
その間に何があったかな? 上条春菜をリーダーとする眼鏡っ娘ユニット
「グラッシーズ」のブレイク、バラエティの核爆弾とも
超新星とも呼称される人気アイドル・ヘレン
モデル雑誌における定番のアイドルデュオの相川千夏と大槻唯
……そしてとどめに、目まぐるしい急成長を遂げ、シンデレラプロきっての
トップアイドルに輝いたニュージェネレーションズ!
奴らは以前にも増して力をつけている! 貴様の手引きによってな!』
P「ご、誤解ですっ!」
黒井
『何が誤解だ! 失望したぞ、一体全体貴様は
何をしにそこにいると思っている。
俺が何のためにそこへ送り込んだと思っている!』
P
「工作は常に行っております!
ただ奴らはプロデューサーもアイドルも想像以上にタフで……!
しかし、ご安心下さい。計画に支障はございません!」
黒井『苦し紛れの言い訳ではないのだろうな?』
P
「滅相もない。奴ら、これまでの働きから
私を完全に信用し、この度愚かにも人事担当に据えました。
ここで一気に箸にも棒にもならない不良在庫アイドルを雇い入れ
経営を圧迫し、シンデレラプロの息の根を止めてみせます!」
黒井
『分かっているだろうな!
これ以上妙な真似をすると帰る机がないと思え!』
黒井は怒鳴りながら電話を切った。
P「くそっ……! こうなったら徹底的に訳のわからんアイドルばかり集めて
事務所を地獄色にプロデュースしてやる!
俺を人事に据えた事を後悔するんだな、シンデレラプロ!」
P
「さて、人事担当に異動した訳だが……しかし何というか、個性というか
あくの強いアイドル候補生ばかりだな……。
俺が手を下さなくても勝手に自滅しそうなメンツの履歴書ばかりだ。
よく今までやってこれたもんだな、ったく。まあ、いい。
事務所の劇毒になるようなアイドルばかり入れてやろう」
P(えーと、何々……高橋礼子と柊志乃、か。
年齢は……二人とも三十一だと!?
アイドルとかやる歳じゃないだろう。採用しよう)
人事部部長
「お、おい君! 彼女たちをデビューさせるというのかね」
P「そうですよ」
人事部部長
「確かにビジュアルは素晴らしいが、いかんせんあの歳では
モデルや俳優ならともかく、アイドルだとかなり厳しいぞ。
もっと将来性のある若い娘を起用した方が……」
P「いえ、部長。彼女たちがいいんです。
確かに我々にとって次世代アイドルの育成は必要です。
しかし同時に、即戦力が求められているのも事実ではありませんか?
一昔前と比べて若手育成にかける時間は短くなっています。
その反面、アイドルに対して求められている質は高くなっていくばかりです」
P「だからこそ、彼女たちのような存在が俺たちのプロダクションに必要だと考えています。
容姿は文句なしのトップクラスですし、それに年齢は経験の厚みでもあります。
この豊富な経験はまだ若い新人アイドル、そしてまた
プロデューサーを大いに助けてくれるでしょう」
P(次は……星輝子、か。んー、茸が好きで人と話すのが苦手……
コミュ障にアイドルなんかできるかよ。採用しよう)
人事部部長
「君、大丈夫かね。あんな内向的な子、デビューさせて……
厳しい業界に押しつぶされはしないかい?」
P
「部長、彼女の評価ポイントはキノコの栽培にあります。
キノコはほっておけば勝手に増えていくものと思われがちですが
実際は無菌に近い培地や湿度・温度・空気
そして光の加減など様々な要因をクリアする必要があります。
特に無菌培地の保存は難しく、害菌が入るとただ腐って収穫できないのです。
あと、彼女の話を聞きますと栽培法が確立されていないキノコまで立派に育てています」
人事部部長「……。それが、何のためになると言うのだね?」
P「勿論、彼女の栽培法が商業的栽培法に改良できるかどうかについてはまた、別問題です。
つまり何が言いたいかというと、彼女には難しい条件を
管理維持できる素質があるという事です。
適切なプロデュースでその管理能力を自身のメンタルや身体面にフィードバックすれば
例え人付き合いが苦手であっても立派にそれを克服し、アイドルとして戦えると判断しました」
P(それから……神崎蘭子、か。何々?『契約に応じ、魔力を解き放つときが』
……何言ってるのかさっぱり分からん。頭大丈夫か? 採用しよう)
人事部部長「君、流石にこの娘は問題あると思うのだが」
P「部長、お言葉を返すつもりはございません。
ですが彼女のもつ可能性全てを頭から否定するのはいかがなものと」
人事部部長
「むっ。しかしだね、何か悪いものにかぶれているようなしゃべりではないか。
あれでは痛々し過ぎて、デビュー以前に人としてどうも……」
P
「多種多様なアイドルニーズにこたえる能力
それがこのシンデレラプロの最も誇るべき所である、そう私は考えています。
なるほど、確かに彼女は俗に言う所の中二病というやつかもしれません。
しかし私には分かります。その言葉の裏には
彼女の真摯な態度と飽く事なき向上心が隠されている事を」
P「彼女は前向きで真面目な努力家です。
それはプロデュースしてみればすぐに分かるでしょう。
それに加えてあのハイレベルな容姿は安定した人気を約束しています。
次世代のシンデレラを担うであろう彼女を
プロデュースをする事は、これ以上ない幸せだとすら思います」
このように言いくるめながら、彼は次々と
ピーキー過ぎるアイドルばかりを優先して採用していった。
P(向井拓海、か。いいね、元暴走族なら問題を起こしてくれそうだ。採用しよう)
P
(安部菜々、か。趣味はウサミン星との交信?
年齢は永遠の十七歳? ふざけるな。採用しよう)
P
(イヴ・サンタクロース? スカウト時の状態といい
履歴といい、胡散臭すぎる。採用しよう)
P
(双葉杏、か。夢は印税で生活だと?
こんな起きながら夢見ているニートなんぞお荷物以外の何物でもないな。採用しよう。
ついでに次のアマゾネスも採用しとこう。
上の指示という事で無理やりデュオを組ませてやれば
地獄が見れるぞ! ハハハハハ……!)
P
「ふー、よぉし……これくらいキワモノアイドルばかりを
大量に抱えれば流石にこの狂った事務所も行き詰まるに違いない……」
しかしそのような目論みとは裏腹に、高橋礼子と
柊志乃は余裕のあるアラサー女性好きの需要を充たして人気アイドルとなった。
星輝子は若手のプロデューサーの手腕により
奇抜なメタル系アイドルとして華々しくブレイクした。
向井拓海は担当Pの趣味によりラブリー衣装に身を包む姿がギャップを呼び
イヴは少ない活動期間にもかかわらず人気アイドルの一角を担うまでになった。
神崎蘭子と安部菜々に至ってはその個性的な設定、キャラクター、完成されたルックスによって
後に開催される総選挙でも常に上位をキープするほどのトップアイドルとなり
シンデレラプロの知名度や人気を不動のものにした。
P「な、何故だ……こんな、こんなはずじゃ……」
立て続けに芸能業界の話題をかっさらうアイドルのデビューに
シンデレラプロは景気のいい話で溢れ返った。
社員は皆笑顔で一点の曇りも見えなかった――そう、ただ一人を除いて。
明るい事務所の中でただ一人、スパイ活動をしていたこの男だけは
肩を落として暗く沈んでいた。
プロダクションを無茶苦茶にしようと努めたが、やる事全てが裏目に出てしまっている。
気がつけばシンデレラプロダクションは、弱体化するどころか
「個性が綺羅星のごとく輝く」アイドル事務所として
類を見ないほど目覚ましい躍進を遂げていた。
P(もう、言い逃れも出来そうにない……)
黒服の男「……さんですね?」
連絡場所の喫茶店で今後の工作活動をどうしようかと
思案していた所、彼は黒服の男に声をかけられた。
黒服の男「黒井社長よりお連れするようにとの事です」
P
(これが最後の定期報告になるかもしれない……
この際だ、ダメ元で社長に直接詫びるほかないだろう)
彼は男に案内されるまま車に乗り込んだ。
車の行き先は本社と思っていた彼だったが
車は海沿いに進み、ある寂れた波止場に着いた。
P「? 待ってくれ。こんな所に本当に社長が……」
その時、背筋に冷たい感覚が走った。
何か硬く冷たいものが背中に突きつけられた。
黒服の男「社長なら来ないぞ」
P「馬鹿な真似はよせ」
黒服の男
「悪いな。あんたの上司に依頼されたのさ。
敵陣で仕事に失敗してばかりの奴をいつまでも置いていられねぇとよ」
銃口がじりじりと彼の神経を締め付けた。
黒服の男「悪く思うな。あんたを片付け……ぬああああああああ!」
その時だった。
側頭部をぶん殴るようなエンジン音をふかせたバイクが突進してきて
黒服の男を牽き飛ばした。
「へへ、間に合ったぜ!」
「ちょっと拓海ちゃん! このコはチューンナップしたばっかだから
もっと優しく扱ってあげないと!」
「うっせぇな、そんな事言ってる場合かよ!」
拓海の後ろから原田美世が顔を出す。
やや遅れて到着した警察が、男を難なく逮捕した。
「拓海、どうしてここが……?」
「菜々の奴が知らしてくれたんだよ」
プロデューサーが無事だと知ったためか
それとも牽き飛ばした所を警察に目撃されなかったためか
拓海は安堵の表情を浮かべてここに着いた訳を説明した。
それによると、喫茶店で最近バイトに入った菜々が
怪しい男についていく彼の姿を見たらしい。
その電話を受けた拓海と美世が、車種から特定して追った所
きな臭い波止場に向かっていたので警察にも連絡をつけたという事だ。
ここの波止場は昼でも人も少なく、ヤンキー同士の戦争を仕掛ける時や
薄暗い商売にも使用されるので、拓海は
ここの地理や出入りする人間がどういった奴かを知っていた。
奇しくも潰すために採用したアイドルに彼は命を救われた事になった。
暗殺を謀った黒井社長は、このプロデューサーが
961プロのスパイだという事を取調室で吐いた。
しかし、それを信じる人間は皆無に等しかった。
社員A
「彼がスパイだと? 何を訳の分からん事を。
彼の事務所への貢献は計り知れないよ。
例え百歩譲って敵側の信用を得るための行動だとしても、サービスが良すぎる」
社員B
「そうそう。こんなにドル箱アイドルを沢山見出だしてしまったら
かえって相手に塩どころか金銀財宝を送るようなものだ。
スパイと言うには不自然過ぎるだろう」
社員C
「人事になった時だけでなく、アイドルを抱えていた時とか
やろうと思えばいつでもアイドル潰しやプロデューサー潰しが出来たはずだろ?
大体就職して数年は経つのに成果の一つも上げられないなんて、あまりにポンコツ過ぎる。
そんな人間をあの黒井がいつまでも雇っている訳がない」
そう口々に言ってプロデューサーたちは
黒井社長の苦し紛れの虚言だと信じて疑わなかった。
さてスパイの彼はこうして首が繋がった訳だが
クライアントが逮捕されてしまい、報酬をもらう算段がつかなくなってしまった。
P
「さいわい、あいつらは俺の正体に気づいていない……
ポンコツと言われた事はショックだが、このままここに
根を下ろして再就職するのも悪くないかもしれない……」
そう思い直して、今度は腰を入れてプロデュースや人事業務に励んだ。
――後日、シンデレラプロダクション社長室
P「失礼します」
社長「まあかけてくれ」
P「はい」
社長
「765プロダクションから独立した我が社は急成長の最中にある。
単純な数として比べられないが、既に765プロダクションの十数倍ものアイドルが在籍し
音楽業界の売り上げ的にも目を見張る成果を出している。
これは私一人の力ではなく、君たちプロデューサーたちの才腕によって
初めて成し得た事だ。私はそう考えている」
P「恐れ入ります」
社長
「……単刀直入に言おう。今も信じられないが
君の事をもう一度調べさせてもらった。……あやめ君」
あやめ「ここに」シュタッ
社長
「彼女は伊賀鍔隠れ衆の末裔でね、徳川家にも縁のある家柄だ。
訳あって765プロから独立した時に主家の娘さんに仕えていたのをスカウトした。
こっちについてきてもらってからはアイドル兼
密偵として側に置いている。優秀な娘だ」
P「……」
社長「彼女の調べでは、君は黒井社長の放ったスパイだそうだが、それは事実かね?」
P「……。本人に、直接それを聞く訳ですか?」
社長「いかんかな?」
P「いえ」
社長「質問に答えてもらおうか」
P「……。間違いございません」
社長「スパイだったと、認めるというのかね?」
P「はい」
社長は溜め息をついた。
彼は否定してくれる事を密かに期待していた。
否定すればそのスパイ活動について全てを許すつもりだった。
社長「……残念だ」
P「豚箱に送りますか?」
社長
「本当はそうする所だ。しかし、今の我がプロダクションの勢いは
君の働きなくしては有り得ないものだ。
理由はともかく、君のもたらした功績は少なくない。
それを考慮し、起訴はしないつもりだ。ただ……」
P「分かっています」
彼は封筒に入れた辞表を差し出した。
社長「気づいていたのだね?」
P「いえ、ここでの仕事が終われば出すつもりでした」
社長「……そうか。辛いだろうが、これからもどこかで元気でやってくれ」
P「はい……失礼します」
彼は荷支度をして退社した。
P
「ふ……情けない話だ。工作任務は失敗に終わり、依頼主に殺されかけ
当の依頼主は豚箱、潜伏先でやり直そうとした矢先に
正体がばれて退職……とんだピエロだ」
「先輩!」
「プロデューサー!」
ふいに声をかけられたので彼は振り向いた。
そこにはニュージェネレーションの島村卯月と本田未央
奥山沙織や上条春菜などの眼鏡アイドルなどに加えて
彼の採用したアイドルたち、そして彼女らのプロデューサーの面々がいた。
P「何の用だ、皆して」
春菜P「聞いたぞ心友! 事務所を辞めるって本当かい!?」
P「……ああ。世話になった」
凛P「そんな……寂しい事言わないで下さい先輩!」
比奈「プロデューサー、本当に帰る意志はないんですか?」
P「……。ああ」
唯P「そうですか……なら俺たち、先輩と一緒に辞めます!」
P「!? な、何を言って……」
春菜P
「心友! 実は我々も先ほど辞表を叩きつけてきたのだ。
そこで我々で新しく事務所を作って君を社長にし
アイドルプロデュースを続けようってハラさ」
千夏
「プロデューサーの考えは分かりません。
でも、私たちに今があるのはプロデューサーのおかげなんです」
P「……」
沙織「あだす、どこまでも付いていぎます!」
沙織に手を握りしめられ、どう返答していいものかと思案していた時
胸ポケットの中の携帯が鳴った。
P「はい、もしもし」
社長
「ああ、君だね。今どこにいるんだい?
すぐに事務所に戻ってきてくれないか」
P「はぁ? それは一体……」
社長
「実は先ほどトイレから帰ったら辞表の山が机に置かれて度肝を抜かされた所なんだ。
君が辞めるなら大半の社員が辞めると言って聞かないんだよ!
ニュージェネレーションズや蘭子君たちが一気に抜けてしまったら
事務所としては大損害だ!
君には相応のポストを用意する、過去の事は水に流して一切不問としよう。
だから頼む、もう一度考え直して話し合おうではないか」
しばらくの間彼は携帯を持ったまま瞬きも忘れて放心していた。
>>19の一行空けミスりましたが以上です
これ「人の将来なんてどうなるか
わからない」という寓話でしょう
かねえ? 現実、例えばプロ野球
でもそれは一緒で、2年目までに
65勝もした投手が100勝投手
にもなれず、4年目まで一軍出場
ゼロだった投手が200勝投手に
なれちゃうんですから(^^)
黒ちゃんは私呼びだぞ
>>45
すみません。渋では修正します
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