飛鳥「ファミチキください」 (18)

飛鳥(――と言えたら、どんなに輝いた未来が待っているのだろう)

飛鳥(食べてみたい。だがどうも頼みづらい……。今日こそはと思ってファミリーマー○に立ち寄っても、いつもコンビニ限定のドリンクだけで済ませてしまう)

飛鳥(そして今日もまた、ファミチキを頼めずに店を出てしまった。どうしたものか――)

??「我はファミチキを所望する!」

飛鳥(!? 今の声は、というかあの喋り方は……)

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蘭子「ククク、我の食欲を常に促す黄金色に染まりし聖なる鶏よ。今宵も我の贄となることを栄誉と思うのだな! 無作法ではあるが、今ここで……!(いつ見てもファミチキは美味しそうだなあ。今日も食べてあげるからね♪ お行儀悪いけど、もう我慢できなーい!)」


飛鳥(やはり蘭子だったか。歩きながら今にもファミチキにかぶりつこうとしている……そうだ)

飛鳥(蘭子に一口貰えないか頼んでみよう。一口でも味わうことが出来れば、ボクはもうファミチキを頼むことが出来ない自分に苦悩せず済むかもしれない)

飛鳥(善は急げだ。ファミチキが蘭子に食べ尽くされないうちに……!)

蘭子「我の贄となるために控えておったか? 此度は特に絶品なるぞ!(揚げ立てだったのかなあ? ん~、カリカリしてて脂も乗ってて美味しい♪)」

飛鳥「や、やぁ、蘭子。奇遇だね」

蘭子「おお、我が友飛鳥! しばし待たれよ、我は神聖なる儀式の最中でな(飛鳥ちゃん! ちょっと待ってね、今大事なところなの)」

飛鳥「キミとこんなところで出逢うとは思ってもみなかったよ。この運命とも呼ぶに相応しい引き合わせに何か意味を見出すとすれば……って蘭子! ボクの話を――あっ」

蘭子「~~♪ 美味であった……。して、飛鳥よ。我に何用か?(あー、美味しかった……。それで、飛鳥ちゃんは私に何か用事?)」

飛鳥「……いや、蘭子を見かけたから、声を掛けたまでさ……うん」

蘭子「?」

飛鳥(蘭子が一瞬で食べ終えてしまうほどにファミチキってヤツは美味しいんだろうか。ますます興味が湧いてきてしまった……)

蘭子「友よ、先刻から黙っているが我に何用かあったのではないか?(飛鳥ちゃん、さっきから黙ってるけど私に用事があったんじゃないの?)」

飛鳥「あるにはあったんだが、今の蘭子にはもう特に用はないよ」 プイッ

蘭子「ふぇっ!? わ、我の知らぬ間に友を落胆させてしまったのか……?(ふぇっ!? わ、私の知らない間に飛鳥ちゃんをガッカリさせちゃった……?)」

飛鳥「キミは悪くないさ。ボクに……そう、意気地がないばかりにね」

蘭子「ふむ……。飛鳥は我に何を申し出るつもりだったのか、云ってみよ! さすれば次回こそ我がそなたの力となろう!(ふーん……。飛鳥ちゃん、私に何の用があったのか言ってみて? 次から気をつけるから!)」

飛鳥「それは……その……」

飛鳥(キミが今食べているファミチキを一口くれないか、と言うつもりだったなんて今さら言えるものか……!)

蘭子「飛鳥?(飛鳥ちゃん?)」

飛鳥「いや、何でもない。些末なことだから蘭子が気にする必要はないよ」

蘭子「そうであるか……。我はそなたが我を求めるのならばいつでも応じよう。遠慮はいらぬぞ(そっか~。私なら、いつでも飛鳥ちゃんの力になるからね? 遠慮しないで何でも言って!)」

飛鳥「う、うん……」

飛鳥(どうしよう。蘭子もこう言ってくれてることだし、せめてファミチキについて聞いてみようか? 味とか、食べ応えとか)

飛鳥「なぁ、蘭子。さっきキミが食べてたのって、なんだい?」

蘭子「あれか! あれはだな……我が魔翌力の源として日に一度は補給せねばならぬ、大事な贄なのだ!(ああ、あれね! 私が1日を元気に過ごすために必要な食べ物なんだ~♪)」

飛鳥「そ、そうかい。毎日食べてるのか……それは、さぞや美味しいものなんだろうね」

蘭子「うむ! 先刻我の魔翌力の糧として消えたものは、我に捧げられるのを待ち望んでいたかの如く、灼熱の黄金の海へ沈んだ直後のようでな。筆舌に尽くしがたかったぞ!(うん! さっき食べたファミチキは私がお店に入る直前に揚がったばっかりみたいでね? とっても美味しかったなあ~♪)」

飛鳥(……聞かなきゃよかった)

蘭子「飛鳥は何用で彼の地へ?(飛鳥ちゃんは何を買いに○ァミリーマートへ?)」

飛鳥「喉が渇いたからさ。ほら、飲み物を買ったんだよ」

蘭子「ほう、彼の地にのみ顕現するという水中を優雅に飛びし鳥の飲料か(あっ、ファミ○ーマートで見掛けるペンギンの炭酸飲料だ)」

飛鳥「知ってるのかい?」

蘭子「ククク、彼の地に足繁く通っている我に知らぬことなどない!(ふふん、ファミリーマ○トによく通ってる私にわからないことはないもん!)」

飛鳥「……キミがあそこを気に入ってるのは理解ったよ。やはりファミ――さっき食べてたあれのせいで?」

蘭子「あれがなくては我の魔力は尽きてしまう……。生命の源と呼ぶに相応しい(ファミチキがなきゃ生きていけないなあ。私の主食だよ!)」

飛鳥(蘭子……そこまで……。一体、ファミチキの何が彼女をそうさせるというんだ?)

飛鳥「……。キミがそこまで推すものをボクも一度くらいは食べてみたいかも、なんてね」

蘭子「そうするとよい! あれはだな……他の物など一切口にしなくてもよくなる、我を虜とすべく生まれし禁断の果実よ!(ぜひそうして♪ ファミチキはね、ファミチキさえあれば生きていけるような気になれるんだー)」

飛鳥(重度の依存性……もしかして食べない方がいいのか? いや、ただの比喩でそれだけ美味しいと考えた方が妥当だろう。さすがに毎日なんて飽きるに決まってるさ)

蘭子「ふむ、今ならまだ……。しばし待つがよい、親愛なる友に我が至高の贄を与えん! 彼の地へ今一度舞い戻り、必ずや手にしてこよう(まだ間に合うかな? ちょっと待ってて、せっかくだから飛鳥ちゃんにも食べてほしいなー。すぐ買って戻ってくるから!)」

飛鳥「蘭子? ボクは別に――って、もう往っちゃったか」

飛鳥(なんだろう、思わぬ形でありつけてしまった。蘭子にあそこまで言わせるファミチキ、か。ボクはどんな新世界の扉を開こうとしているんだ?) ドキドキ


その後

飛鳥「……」

P「おはよう飛鳥。あれ、どうしたんだボーっとしちゃって」

飛鳥「あぁ、キミか……おや? キミが持ってるそれは」

P「これか? 朝バタバタしちゃってさ、事務所で朝食を取るつもりでフ○ミマに寄って買ってきたんだ」

飛鳥「そ、そうか。この芳ばしい香りは……ふぅん……」 ジュルリ

P「ん? なんか変な音が、まあいいや。じゃあ早速いただくとするかな、まずはファミチキから――」

 パッ  ビリッ

P「え?」

飛鳥「……」 ムグムグ

P「ああああああ! 何するんだ飛鳥、俺の朝飯だぞ!」

飛鳥「……♪」 ムグムグ

P「やめろおおおおお、返せっ!! 俺のファミチキいいいいいいいいいい!!」



そして、財布の減り具合と反比例するように飛鳥の体重が増えていくのはまた別のお話

終われ

>>5
×魔翌力
○魔力

今もペンギンの炭酸ってたまに売られてるんですかね?

食べたくなったので今日はファミチキ買いに行きます。こんな時間にこんなの書くんじゃなかった……

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