少年「テスト勉強した?」友「してない」(24)

少年「今日いよいよテストだな」

友「うん」

少年「テスト勉強した?」

友「してない」

少年「とかなんとかいって絶対してるんだよな~」

友「してないって」

少年「どうだ、100点!」サッ

友「100点」サッ

少年「ほらな、絶対勉強してるだろ、お前!」

友「してないってば」

少年「今日はマラソン大会だな」

友「そうだね」

少年「どうせマラソンの特訓してきたんだろ?」

友「してない」

少年「絶対してるだろ~」

友「してないよ」

少年「ハァ、ハァ、ハァ……同時に一位フィニッシュか……」

友「うん」

少年「余裕こいてるけど、お前絶対特訓してただろ! 分かってるんだからな!」

友「してないよ」

少年「ウソくせえ~」





やがて二人は成長していく――

男「目指せ壱竜大学!」バリバリ

男「おい、お前も壱竜大学が志望校なんだろ?」

友「一応ね」

男「んで、俺みたくバリバリ勉強してるってわけだ」

友「してない」

男「ウソつけ!」

男「よっしゃーっ! 壱竜大学合格! お前はどうだった?」

友「合格したよ」

男「ほら! やっぱり勉強してたんじゃん!」

友「してないけどね」

男「いやいや、勉強しないで受かるわけねーだろ!」

男「よ~し、絶対ノーベル賞取ってやるぜ!」

男「お前もノーベル賞に向けて、勉強やら研究やらやってるんだろ?」

友「いや、別に目指してない」

男「あっそ!」

男「だったら俺一人で、ノーベル賞ゲットさせてもらうぜ!」

記者「今年は日本人からノーベル賞受賞者が二人誕生しました! おめでとうございます!」

男「ありがとうございます!」

友「どうも」

記者「お二人とも、やはりノーベル賞を目標にされていたんでしょうか?」

男「当然です! ノーベル賞は私の目標……いや、夢でしたから!」

友「ぼくは特に意識はしてなかったんですけど」

男「ウソおっしゃい!」ビシッ

男「よおし、次は政界進出だ!」

男「ありとあらゆる手を使って選挙に勝って、この国をよりよくしてやるぜ!」

男「そういやお前も選挙出るんだって? なにか選挙活動してるのか?」

友「特になにも」

男「おいおいお~い、どうやら次は俺だけ当選することになりそうだな!」

男「当選だぁーっ! やったぁーっ! ダルマさんに目を入れてやる!」マルッ

友「ぼくも当選した」

男「やっぱりか!」

男「なぁ……影で努力してるんだろ? 頼む、そういってくれ」

友「いや、何もしてないよ」

男「ううう……マジかよぉ……」

記者「お二人の出した政策が、それぞれ大成功を収める結果となりましたが……」

男「ありがとうございます!」

男「我が国と国民のことを血眼になって分析したかいがありました!」

記者「ということは、やはりあなたも分析を?」

友「いえ、ぼくはなんとなく頭に浮かんだ政策を実行しただけです」

男「……」

――

男「なあ、親友よ」

友「ん?」

男「この年になって、俺はようやく気づいたよ」

男「俺とお前は今までほぼ互角の結果を出してきた……多分世間もそう思ってる」

男「だけど実際は全然互角じゃない……」

男「お前が何もしなくても出しちまう100という結果に」

男「俺は死に物狂いで98か99ぐらいを出して、食らいついてたに過ぎないってな」

男「お前は真の天才だ。一方、俺はただの凡人に過ぎない」

男「いや、本当は気づいてたけど、認めたくなかっただけかもしれないな」

男「俺は……お前よりずっと格下だって」

男「お前もさぞかしうっとうしかったことだろう」

男「圧倒的に格下のはずの俺が、いつまでもお前と同格みたいなツラしてるんだもんな」

男「今まで……すまなかった」

友「いや、そんなことないよ」

男「……え?」

友「ぼくは君に感謝している」

男「え? なにを? 引き立て役になったことを?」

友「そうじゃない」

友「だってぼくは……君がいなければ、多分死んでいただろうから」

男「! ――ど、どういうことだよ!?」

友「今からいうことは嫌味になってしまうかもしれないけど、正直に話させてもらう」

友「ぼくは幼い頃からなんでもできた」

友「何もしなくても知識がどんどん入ってきて、運動では適当にやっても結果を出せた」

友「そんなぼくを、みんな恐れたり褒め称えたりしてくれた」

友「ぼくは……子供心に思った」

友「ぼくはきっと世界のバランスを崩す存在なんだって」

友「いっそ消えてしまった方がいいんじゃないかって」

友「だけどそんな時、君がぼくの目の前に現れた」

友「君はぼくのいる位置に必死についてきてくれた」

友「もし、ぼくが“影で努力している”とウソをつけば、君は多分ホッとしただろう」

友「だけどやらなかった。君の必死さにウソをつきたくなかったから」

友「だからぼくは“何もしてない”と正直に答え続けた」

友「にもかかわらず、君はついてきてくれた」

友「もし君がどこかでぼくを追うのを諦めてたら、ぼくは死を選んでいただろう」

友「今日この時までぼくが生きてこられたのは君のおかげだ。どうもありがとう」

男「……」

男「やれやれ、本当にイヤミな話だぜ」

男「俺は自分自身の手で、目の上のたんこぶを生かしてたってことになるんだからな」

男「それなら……!」

男「さっきの言葉は全面撤回だ! これからも俺はお前に追いすがってやる!」

男「んでもって、いつか必ずお前を負かしてやるからな!」

友「……ありがとう」

男「いいってことよ。俺もお前のおかげでここまでやってこれたって一面もあるしな」

男「よーし、だったら……景気づけに今から飲みに行くか!」

友「いいけど、ぼくビール一杯で酔っちゃうよ」

男「いよし! やっと一つ勝てた!」





終わり

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