幼女「ほんとに先生は、私がいないと何もできないんですから」 (280)

とあるマンションの一室

女「」パソコンカチカチ

幼女「」トタトタ

幼女「先生、ただいま帰りましたー」ガチャ

女「んー……おかえり」カチカチ

幼女「よいしょ、帰ったら手洗いうがいっと……」

幼女「」チラ

幼女「あ、先生ちゃんと仕事してますね。いいじゃないですか。その調子ですよ」

女「うん……」カチカチ

幼女「あれ?先生?」

女「」カチカチ

幼女「……?」ノゾキ

幼女「ってこれゲームじゃないですか!何やってるんですか真剣に仕事してると思ったら!!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1465287225

女「ちょっとくらいいいじゃんかよー、休憩休憩」カチカチ

幼女「休憩って……どう見てもがっつり遊びこんでるじゃないですか」

女「そんなことないよ、それとなくやってるだけー」

幼女「……どのくらいやってますか、コレ」

女「かれこれ二三時間くらい?」

幼女「全然休憩じゃないじゃないですか!」

女「まーまー、そうカッカしなさんな。心配しなくても、もう前半はおおよそ完成したし後半の構想も……」

幼女「」バタン

女「わあああああっっ!!」

幼女「もう締切までそんなにありません、こんなことしてる暇あったら一文字でも多く書いてください」

女「ちょっと!これネトゲだし切断ペナルティあるんだけど!」

幼女「知りません、自業自得です」

女「なんだよもー……ちょっと休憩してるだけだったのに」

幼女「二三時間は休憩じゃありません、今日はいくらか書きましたか」

女「んー……一枚分くらい?」

幼女「……それじゃ間に合いません、今日中に五枚は書かないと」

女「なんでぇー、短編なんだからすぐ終わるよ、そんなに急がなくても」

幼女「先生のその類の言葉は信用できないんですよ」

女「ちぇー」

幼女「……手、洗ってきますから早く仕事に取り掛かってくださいね」

幼女「」トタトタ

女「しゃーねー、やるかー……」




女「……」

幼女「……」カキカキ

女「……むぅ……」

幼女「……」カキカキ

幼女「先生、全然はかどってないみたいですけど」

女「幼女ちゃんはほんとに、帰ってきてすぐ宿題なんてえらいよねー」

幼女「先生と違って私はやるべきことはすぐ終わらせますから」カキカキ

女「その勢いで私の仕事までやってくれないかなー」

幼女「ゴーストじゃないですか……」

幼女「それよりどうしたんですか?後半の構想はもうできてるんですよね」

女「うん」

幼女「じゃあなんでそんなに唸ってるんですか」

女「……結構つじつまあってないハリボテプロットでさー……
  とりあえず頭に浮かんだの放り込んだだけなんだよねー……」

幼女「そんな状態で悠々とネトゲ……」

女「うるっさいな、そういう助手くんはもう自分の仕事は終わったのかね」

幼女「前半の推敲ですか?もう終わらせました」

女「幼女ちゃんさっすがー!デキる助手!」

幼女「まあ今回は特に大きく気になる箇所はなかったですね。相変わらずミスタイプがひどいくらいで……
   原稿は机の上に置いておいたんで確認しといてください」

女「う、私の仕事が増えた……」

幼女「当たり前ですよ、いくら私が直したところで完成させるのは先生なんですから」

女「まあねん」

幼女「……」カキカキ

女「……」

幼女「」カキカキ

女「……うーん……うーん」

女「あー!やっぱりダメだ!ちょっと散歩に出てくる!バラバラのピースをうまくつなぎ合わせるいいアイデアを……」

幼女「ダメですよ」

女「な、何故」

幼女「結局どっかで買い食いするくらいで何も収穫できないじゃないですか、先生の散歩は」

女「そ、そんなことないよー……ホラ、前の鯨のカラクリだって考えたの散歩中だったじゃん」

幼女「それは私が付き添ってたからですよ……よいしょ、宿題終わり」トントン

女「あーんもう!子供はいいよなー!宿題終わったら遊ぶだけで」

幼女「先生、この調子じゃまた缶詰ですかね……」

女「た、短編一本書くだけなのに……」

幼女「ホントですよ、編集さんが急かしにくるのも時間の問題ですね……」

女「はあー……なんとかなんないかなー……これ」

幼女「あ、そういえば編集で思い出したんですけど」

女「なに?」

幼女「担当編集者さん変わったらしいですね」

女「へ?そうなの?」

幼女「そうなのって……自分のことじゃないですか、なんで私が知ってて先生が知らないんですか」

女「坂崎さんじゃなくなるの?」

幼女「まあ、そうみたいですね」

タイポの指摘は校正っていうんやで

それはともかく期待

女「が、ガーン……坂崎さんいい人だったのに……」

幼女「確かに温厚で優しい人でしたよね」

女「あの優しくて太ってて生え際が後退し始めた坂崎さん……」

幼女「こらこら」

女「どーしよー……次の担当がめっちゃ鬼のような人だったら……
  締切破ったら舌抜かれる……」

幼女「わけわからん妄想してる暇あったら早く書いてください」

女「もー、ユーモアが足りないなー幼女ちゃんは。小学生なんだからうんこで爆笑するくらいじゃないと」

幼女「イマドキ男子でもそんなんじゃ笑わないと思いますけど……」

女「それでも幼女ちゃんは真面目すぎる!」

幼女「先生が不真面目なだけです」

ピンポーン

女「あれ、だれだろ」

幼女「先生の部屋に来る人なんてきまってますよ」

女「まさかあの鬼担当編集者!?」

幼女「鬼と決まったわけじゃないじゃないですか……出てきますね」

ガチャ

担当ちゃん「こんにちはー、せんせ……」

幼女「こんにちは」

担当「あ、あれ!?えーっと……す、すいません、部屋まちが……」

幼女「間違えてません、女先生の部屋はこちらです」

担当「え、だ、だって」

幼女「新しい担当編集者さんですか?」

担当「そ……うです」

女「」チラ

幼女「まだ顔も合わせてないんでしたっけ、あそこで覗いでるのが女先生です」

女「な、なぬ……?おなご!?鬼じゃない!?」

担当「鬼?」

幼女「気にしないでください、それよりまだ原稿は時間がかかると……」

担当「ああ大丈夫です大丈夫です、締切までまだありますから。今日はちょっと、挨拶に」

幼女「ですって先生。あ、上がってください」

担当「し、失礼しまーす……」アガリ

女「ふむ」

担当「こっ!こんにちは女先生!このたび担当編集者になりました担当です!
   急に伺ってすいません、お時間よろしかったでしょうか!?」

女「……」ジー

担当「……え?」

女「」モミ

担当「きゃあっ!!」

女「なんだ……この主張の激しいバストは……」

幼女「」ゴスッ

女「おばふっ」

幼女「初対面早々セクハラしないでください」ゴリゴリ

女「イヤージョークデスヨースキンシップデスヨー」

幼女「すいません担当さん気をつけてくださいね、この人結構見境無いですから」

女「担当ちゃーん!かわいいね!何歳!?」

担当「ははは、大丈夫です……ちょっとびっくりしましたけど……」

幼女「ホラ先生、引かれてますよ」

女「引かれてなんかないよ!ねー担当ちゃんねー」

担当「そ、そんなことよりすごいですね、ここがあの女先生の自宅……」

女「もとい仕事場」

担当「私、女先生の担当だって言われてびっくりしたんです、先生は売れっ子ですし、私なんかまだ新人編集者で……
   釣り合うかどうか……」

女「だいじょーぶだいじょーぶ、心配しなくても」

幼女「そうですよ、むしろ先生が担当さんに迷惑かけないか心配ですよ」

女「もー幼女ちゃん、余計なことは言わんでよろしい」

担当「先生の小説はどれも素敵な作品ばかりで……編集者になる前からファンだったんです。
   だからすごく緊張します」

女「あらあら、褒めてもなにもでなくってよ」

幼女「ところで今日は何故そちらから……」

担当「はい、担当になることが決まってから先生にご挨拶する機会をずっと窺ってたんですが、
   あまり編集部にいらっしゃらないものですから……」

幼女「ああ、先生ほぼ引きこもりですもんね」

女「いやいや、仕事が忙しいのだよ」

幼女「もっと編集部に顔出したほうがいいですよ?担当さんにもわざわざ時間作らせて悪いじゃないですか」

女「だーって家にいたほうが気楽なんだモーン」

担当「……さっきからずっと気になってたんですけど……」

女「ん、なに?」

担当「先生ってお子さんいらっしゃったんですね」

女「へえ?」

担当「どこかで未婚と聞いてたんですが……私の勘違いでしょうか」

幼女「娘じゃありません」

担当「え、あっ、失礼しました、えっと、じゃあ……妹さん?」

女「違うぜよ」

担当「ええ……じゃあ……な、何ですか?」

女「なにって……そりゃあ……」

幼女「……」

女「我が優秀なる助手だよ」

幼女「です」

担当「はあ……助手、ですか」

女「そうですよー、この娘がいなければ私は小説なんて書けません」

幼女「ほんとに先生は、私がいないと何もできないんですから」

担当「そうなんですか?」

幼女「そうですよ……助手としての小説の推敲はもちろん家の掃除や洗濯まで……
   おんぶにだっこですよ」

女「あはは、まあそれだけ小説、仕事に集中できるんだよ」

幼女「ネトゲやってたくせに……」

女「息抜きは必要」

担当「でも見た感じ……」

幼女「はい、小学生です」

担当「ですよね」

女「心配しなくても!学校にはきちんと行かせてますよ、そこまでこき使ってるわけじゃないんで」

幼女「こき使ってますよ……」

担当「じゃあ小説はお二人が力をあわせて作ってる、ってことですか」

幼女「力をあわせて……というよりか、私はサポートです。確かに色々指摘はしたりますが
   結局書いてるのは全部先生なので……」

女「それでも!私は幼女ちゃんがそばにいないとなにもできない!小説なんぞ書けん!」

幼女「そうですね、担当さん、脅しておきますけど先生はかなり遅筆ですよ」

女「むしろ幼女ちゃんがいるから遅筆程度ですんでいると言える」

担当「そんなにですか」

女「そりゃあデビューしたての頃はひどかったもんよ……編集部で締切破りの女の名を欲しいままに……」

幼女「その時と比べれば今はだいぶ安定してきましたね。それでもお世辞にも早いとは言えませんが……」

女「これも幼女ちゃんのサポートおかげってわけよ」

担当「へえ……」

担当(あんなに売れっ子だからすごくストイックに仕事してるイメージだったけど、
   意外と人間らしいんだな、女先生って)

女「まあ私らはこんな感じだよ、今日も元気!」

幼女「元気だったら小説書いてください」

女「次は担当ちゃんのこと教えて!」

担当「あっ、はい!じゃあ改めて、このたび先生の担当になりました担当です!
   まだまだ新人でご迷惑かけるかもしれませんが、しっかり先生のサポートができるように……」

女「あー、そういうのいい、いいから」

担当「え、でも」

女「もっと聞きたいことがある」

担当「はあ」

女「何歳!?身長いくつ!?血液型は!?彼氏いる!?そのなかなかのお胸は実際何カップあるの!?
  それと今まで付き合ってきたにんず……」

幼女「」ツネリ

女「い゛っでえええええ!!」

幼女「こんな先生ですがこれからよろしくお願いします」

担当「こっ、こちらこそ、よろしくお願いします!」ペコリ

ガチャ

幼女「はあー……」

女「きっ、きさま……小説家にとって大事な手をつねりおって……」

幼女「なんであんなセクハラするんですか、引かれますよ、てか引かれてましたよ」

女「いやーいいよね……若い女の子は……」

幼女「先生だって十分若いじゃないですか」

女「あら、嬉しいこと言ってくれるのね、うふ」

幼女「いや二十代だし……」

女「でも結局一番若いのは君だよ、トム」

幼女「誰がトムですか、いいから仕事してください」

女「もー、口を開けば仕事仕事って、幼女たんは……」

幼女「新人編集者さんを困らせるわけにはいかないでしょう」

女「わかってるけどさ……でも思いつかないものは思いつかないし、しょうがない」

幼女「それを思いつくのが先生の仕事ですよ」

女「お腹すいた」

幼女「唐突ですね……現実逃避じゃないですか」

女「うぐふ……お腹が減って力が出ない……エネルギー補給ができれば十枚くらい一瞬なのに……」

幼女「嘘つかないでください」

女「うるさい!お腹減った!腹が減ってるから戦ができない!!」

幼女「わかりました、わかりましたよ。じゃあちょっと早いけどご飯作り始めますね、それ食べたらちゃんと書くんですよ」

女「やっほーい!めーしだー!」

幼女「全く……ほんとに、私がいなきゃなにもできない……」









女「ふーっ……」ノビ

幼女「先生、お風呂あきましたよ」ホカホカ

女「そう、じゃあ私も今日はこのへんで。おつかれー」パタン

幼女「……何枚ですか」

女「四枚!」

幼女「んー……先生……あと一枚……」

女「うわー!聞こえない聞こえない!さ!早くお風呂入って寝よ!!」スタスタ

幼女「……まあいいですよ、今日はご飯食べたあとは頑張ってたみたいだし……」

女「今日のご飯美味しかったから……」

女「ま!幼女ちゃんの作るご飯はいつだっておいしいよ!」ビシッ

幼女「そのかわり明日はもっと書けるように頑張ってくださいね」

女「知らん!明日のことは明日の私に聞いてくれ」スタスタ

幼女「もー……先生ったら……」

女「ふんふふーん♪」

幼女「……仕事が忙しくなかったら」

女「うん?」

幼女「……一緒に入りたかったですよ」

女「何が?」

幼女「……お風呂」

女「あー、背中流してほしかった?」

幼女「私だって好きで先生を急かすようなこと言ってるわけじゃないんですよ」

幼女「やるべきことはすぐに取り掛かって終わらせたほうが後々楽なんだってこと」

幼女「先生にわかってもらいたいです」

女「んー、まあそう思ってその通りに動けるんだったら苦労はないよね」

幼女「先生が遅筆なのは、単に気持ちの問題もあると思うですよ。ダメだと思ってるからダメっていうか」

女「そうだねえ……この仕事になって結構経ったしたくさん書けばいつか作業効率も上がるって思ってたんだけど……」

女「慣れないもんだね」

女「ま、だいじょーぶだいじょーぶ。今まで何とかなってきたんだからこれからも何とかなるよ」

幼女「はあ……気楽ですね、先生は」

女「気楽になれるのも幼女ちゃんのおかげだよ」

幼女「ほんとですよ、私がいなかったら路頭に迷いますよ?先生」

女「ははは、感謝しておりますでよ」

幼女「」ジー

女「……」

女「」ポムポム

女「……今日も一緒に寝ようね、幼女ちゃん」

幼女「いやまあ……言われなくても」

女「ふふふ」ニコ

女「さーてと、お風呂お風呂ー」

幼女「……」







幼女「……先生はどうして私がいないと眠れないんでしょう」

女「枕が変わると眠れない」

幼女「私枕じゃないんですけど」

女「枕だよー、抱き枕」

幼女「冬はよくっても夏だと流石に暑苦しいんですよ」

女「でもうちにはこんなに可愛い助手がいるんだから抱き枕にしない手はない」

幼女「どういうことですか……」

女「ほら、ぶつくさいってないでもう寝ましょう」

幼女「はい……じゃあ電気消しますよ」

女「ほい」

パチ

幼女「……」

幼女「」モゾ

女「おおー我が優秀な枕よ」

幼女「だから枕じゃ……」

女「」ギュ

幼女「んん……」

女「O-CHI-TSU-KU」

幼女「そうですか……」

女「……幼女ちゃん、明日も頑張ろうね」

幼女「頑張るのは先生ですよ」

女「はは、そうだね」ナデナデ

幼女「ん……」

女「……」ナデナデ

幼女「……」

女「おやすみ」

幼女「はい、おやすみなさい」

自分は小説家になったことがないので>>10みたいな知識不足が多々あるかもしれませんがよろしくお願いします





別の日

幼女「」センタクモノタタミ

幼女「……」

女「」ノソ…

幼女「あ、先生、おはようございます」

女「……」

幼女「どうしたんですかそんな暗い顔して」

女「今日は……何月……何曜日……」

幼女「今日は……」

女「う、うわああああ」

幼女「……」

女「し、しめきりがぁッ……しめきりの足音がすぐそばまでェ……ひいぃ……」

幼女「はあ……もうぼちぼちタイムリミットですよね……」

女「私昨日一枚も書いてない……」

幼女「ええっサボってたんですか」

女「オーマイガッ」

幼女「オーマイガじゃないですよ、じゃあなんでこんな時間まで寝てるんですか」

女「たいへんだぁ……急いで間に合わせないと……」

幼女「全く、先生ったらいつもこうですよ」

幼女「少し前の余裕綽々の先生はどこに行ったんですか」

女「ああ……タイムスリップしたい……ネトゲやってた自分を殴りに行きたい……」

幼女「だからあんなに注意したのに……まあ、いつものことですよね」

女「達観してないで!協力してよ!」

幼女「まあ協力はしますよ、それが私の仕事ですし……でも今まで怠けてた分苦しむのは先生ですよ」

女「ひい……反省しました……是非お力添えを……」

幼女「先生にできることは書く事だけですよ」

女「はい!頑張ります!」

女「」バッ

幼女(普段からあれくらいの勢いでやればいいのに……どうしてあの人は)





幼女「……というわけで先生は今絶賛奮闘中です」デンワ

担当『そうですか……大丈夫ですか、間に合いますかね』

幼女「間に合わせます。先生が怠ければムチでも打ちます。だからそこらへんは心配しないでください」

女「ムチとか言ってる!怖!」カタカタ

担当『せ、先生の声が……』

女「担当ちゃん助けて今無慈悲な鬼幼女に強制労働を強いられて……」カタカタ

幼女「無慈悲な鬼にでもならなきゃ先生とはやっていけませんよ」

女「ああんまたタイプミスした!」カチカチ

担当『すごい頑張ってるみたいですね……』

幼女「はい、まあそういうことですんで原稿は必ず……」

女「」バタッ

幼女「あ、倒れた」

担当『え!?大丈夫ですか!?』

幼女「ああいえ、そんな大袈裟なものじゃなくて。まあ言えば寝たふりですよ」

幼女「頭がパンクするとああいうふうに机に突っ伏して思考停止するんです」

女「」チーン

担当『そ、そこまで追い詰められてるんですか』

幼女「まあいつものことです」

女「だめだ……もう……おっぱい……」

幼女「うわごとで何か言ってます」

女「担当ちゃん……来て……」

幼女「だそうですけど」

担当『ええ、私ですか?今のところ私が出向いたところで特に役立ちそうなことはないんですけれど……』

幼女「だそうですけど」

女「いいんだ……癒しが……癒しが欲しい……おっぱい……」

幼女「だそうですけど」

担当『癒しって、どういうことですか』

幼女「あの人また担当さんの胸を触る気ですよ、こないほうがいいですね」

女「ああんもう余計なことを!!」ガタッ

担当『わ、私の胸が癒しになるんでしょうか』

女「そりゃあおっぱいパワーにかかれば二秒で書き上げられるよ」

幼女「ホラですね」

担当『えー……っと……どうしましょう、今から少し用事が……でも早めに都合をつければなんとか……』

幼女「担当さん、まじめに検討しないでください」

担当『そ、そうですね。じゃあ今日はこのへんで……』

幼女「はい、ありがとうございました」

ガチャ

幼女「……」

幼女「」チラ

女「」バタッ

幼女「寝たふりしないでください。書いてください」

女「おらぁもうぅ限界だぁ……」

幼女「ムチ打ちますよ?」

女「ひっ!」ガバッ

幼女「ムチに怯えて行動するなんて……動物ですか」

女「うるさいこのS!サディスト!サディスティックバイオレンス!!」

幼女「言いがかりですよ」

女「ぬぬぬ……しょうがないここは自分で自分を奮起させるしかあるまい」

幼女「? 何かするんですか?」

女「いい考えがある、キタマエ」

幼女「なんですか」

女「ここに座りタマエ。膝に」

幼女「ああ、またあれですか」

幼女「よいしょ」

女「」ダッコ

幼女「おお」

女「」ストン

幼女「……」

女「うむ。相変わらず座らせ心地がよろしくってよ」

幼女「座らせ心地って」

女「こうして常に幼女ちゃんの監視状態にすることによって怠けないし、抱き枕効果で集中力アップ」

幼女「前者はわかりますけど、抱き枕効果ってなんですか」

女「うりうり」ゴリゴリ

幼女「あ、顎で頭ゴリゴリしないでください」

女「幼女ちゃんが膝にいればなんとなく癒されるから。ストレスに負けない、気がする」

幼女「前の締切間近の時もやってましたよね、コレ」

女「私がしばらくの作家生活の末に編み出した必殺の集中術なのだよ」

幼女「私が膝の上にいるだけですけど」

女「効果テキメンだよ、多分」

幼女「それより私部屋の掃除しないと……」

女「そんなことはあとでよろしい今は小説が第一優先だ」

幼女「私は先生と違って計画的に物事をこなしてるんですよ、先生の都合だけで決められては……」

女「」ナデナデ

幼女「ん……」

女「」ナデナデ

幼女「……なんで撫でるんですか」

女「引き止めるためさ」

幼女「……」

女「」ナデナデ

幼女「……しょうがないですね。ここにいてあげますよ」

女「やりい」

幼女「怠けたらつねりますからね」

女「ふふ、それでいいんだよ」

幼女「ほんとに先生は、私がいないと何もできないんですから……」

女「さ、やるぞっ、幼女ちゃんサポートよろすく」

幼女「見てるだけですけどね」

女「」カタカタ

女「」カタカタ

幼女「……」

女「」カタカタ

幼女「……」

幼女「先生、そこ、間違った言葉の使い方してますよ」

女「あ、ほんと?おっかしいな……」

女「」カタカタカチカチ

幼女「……」

幼女(それにしてもこの見張りの仕事は、先生はいいかもしれませんが私は暇ですね……)

幼女(でも先生がせっかくやる気になってくれてるんだから水を差すわけにもいかないし……)

女「」カタカタ

幼女「先生、お茶かなにか用意しましょうか」

女「ん、大丈夫。気ぃ使わなくても。幼女ちゃんはここにいて」

幼女「……ですけど」

女「どかした?」

幼女「なんでもないです」

女「」プニュプニュ

幼女「や、やめてください、頭の次は頬ですか」

女「暇なんだろ?知ってるよ」

幼女「そ、そんなことないですよ」

女「顔に書いてあるんだなーこれが。幼女ちゃん堅そうにみえるけど意外とわかりやすいよね」

幼女「……」

女「ほれほれ」プニュプニュ

幼女「うう、私のことは心配しなくてもいいですよ。ここに私がいることが先生の助けになるなら……」

女「そう肩に力入れるなって。軽い話の相手くらいならできるよ」カタカタ

幼女「ええ、でもそれじゃ先生が……」

女「平気さ。何回小説書いてると思ってんだもう慣れっこだぞ」

幼女「およそ慣れっこの締切間近の状況には思えないんですけど……」

女「まーまーそういうな。幼女ちゃん学校では今なにしてるの?」

幼女「なにって……別になにもありませんよ。普通です」

女「またそう言う。なんかあるでしょーほら、給食にデザートがでてきて美味しかったとかさー」

幼女「そんな話題膨らみますかね」

女「膨らむ膨らまないでするもんじゃない会話ってのは。えっと、ここの表現はどうしようかな」カタカタ

幼女「でも私の学校の話なんて先生には不必要でしょう」

女「必要不必要で判断しないでさ。話したいこと話そうよ」

女「幼女ちゃんは事務的になりすぎだし、もっと子供らしくしていいと思うよ」

幼女「さて、誰がそんなに事務的にさせてるんでしょう」

女「あはー」

幼女「自分がいないと何もできない人間がいますから。忙しくって、子供らしくなんてしていられませんよ」

女「おおー我社はそんなにブラック企業だったか」カタカタ

幼女「いいです。私が好きでやってる部分もあるので」

女「……辛くない?」

幼女「別に。平気です」

女「……そっか」

女「」カタカタ

幼女「……」

女「」カタカタ

幼女「……」

幼女「先生、そこの視点切り替え、読者にわかりにくいので文付け足して明確にしたほうがいいと思いますよ?」

女「ええー?マジで?うーん……頑張ってみる」

女「」カチカチ

幼女「……」

女「」カタカタ

幼女(話したいこと……話す……って……)

幼女(先生になにか話すことなんてあったっけ)

女「」カタカタ

幼女「先生は私に何を話してほしいんですか」

女「幼女ちゃんが話したいことでいいんだよ」

幼女「だからそれがわからないんですよ」

女「そうねー、昨日とか、一昨日でも、その一日にあったこととかかなー」

女「幼女ちゃんはどうかしらないけど、人間ってさ、自分の身に起こったことを間接的でもいいから誰かと共有したいって
  思う生き物だよ。話すという行為によって」

女「幼女ちゃんはそういうこと思わないかな」

幼女「どうでしょう……」

女「私はまだ結婚してないからわかんないけど、息子か娘か、幼稚園から帰ってきて、覚えたての言葉を目一杯使って
  今日あったことを親に話すみたいな、そういうのはいいよね」

幼女「……」

女「」カタカタ

幼女「そんな場面……先生の小説にあった気が」

女「あーばれた?」

幼女「先生はそういう思想を基盤にして小説を組み立てるんですね」

女「うひゃーそこまでバレるとは。さすが幼女ちゃん。我が優秀なる助手よ」

幼女「今回の小説はなにか基盤があるんですか?」

女「んーまあね」

幼女「なんですか?」

女「私事ですが」

幼女「はい」

女「昔夏祭りの縁日でゲロ吐いたことがあって」

幼女「……」

女「異様に人多いしさーあそこ。あと無駄に暑いよね。なんであんなとこに人集まるんだろーって……」

女「なんか食いたいならコンビニにでも行けばいいしさ」

女「理屈だけなら縁日とかその類の否定なんていくらでもできるんだよね」

女「でも違うんだなー……なにか意味があって、いや意味がないからこそ人は祭りにあつまるんだろうなーって」

女「それにあの提灯下がった縁日独特の雰囲気は、一小説にする価値アリですよ」

女「だからゲロ吐いた私の心情も絡めつつ、夏祭りを軸としたお話です」

幼女「唐突にゲロとか言わないでください」

女「いやー言うよ?ゲロでもうんこでもおっぱいでも」

幼女「そんなんだから彼氏とか、できないんじゃないですか?」

女「今はそういうのは別にいいと思っている……」カタカタ

幼女「……」

女「それに、幼女ちゃんをこえるパートナーはそうそう見つからないと思うな」

幼女「……ここは喜ぶところでしょうか」

女「さあ?それは幼女ちゃんの心情しだいだよ。もっと自分に素直になりんしゃい」

幼女「先生は時々難しいことおっしゃいます」

女「まあ小説なんて書くしね。色々考えることはあるよ」

幼女「……」

女「っと……よし。進んだ進んだ……いいペース」

幼女「間に合いそうですか」

女「それはまだなんとも」

幼女「間に合わせます。徹夜してでも」

女「こ、こえー……おっかねー……」

幼女「私が付き添わなければ先生は眠れませんから。簡単ですよ」

女「睡眠まで幼女ちゃんに頼りきりとは……自分のことながらがっくし……」

幼女「そうならないようお願いします」

女「はい、頑張ります……」

女「」カタカタ…

幼女「……」

幼女「くぁ……」アクビ








女「……」カタカタ

女「」ターン

女「……」

女「……よし」

女「よおし!」

女「よーし山場終了!あとちょっとだ!この小説も」

女「はあー……頑張った……こんなに頑張ったの久々だ……今日は一日中仕事だった……」

女「サポートおつかれさん、助手さん。これも幼女ちゃんのおかげ……」

幼女「」

女「ってあれ?」

幼女「」スー…

女「……」

幼女「」スー…

女「……ふふ」

女「」ツンツン

幼女「んん……」

女「……いつから寝てたのかな」

幼女「」スー…

女「あーあー……仕事終わったのに、動けなくなっちゃった。あはは」

幼女「ん……むにゃ……」

女「!」

幼女「せんせ……しごと……かいて……」

幼女「」スースー…

女「……」

幼女「」スースー…

女「」ナデナデ

幼女「」スースー…

女「夢の中でまで仕事してたのかな?」

女「そんなに、頑張り屋さんじゃなくてもいいのにね。我が優秀なる助手よ」

幼女「」スースー…

女「」ナデナデ

幼女「」スースー…

今日はここまで

担当「」カツカツ

担当「……」

担当「」フー…

ピンポーン

担当「……」

ガチャ

女「あ!担当ちゃーん!よく来たねー!いらっしゃい!!」

担当「こんにちは先生!あの、お時間よろしかったでしょうか」

女「あーんもうお時間なんていつでもオッケーよ別に聞かんでもー、入って入ってー」

担当「はあ、お邪魔します……」

担当(あ、遊びに来たわけじゃないんだけどな……なんだろこのゆるい感じ)

担当(作家と編集者の関係ってもっとこう……私の幻想かな)

女「お、どかした?」

担当「いえ!大丈夫です。お構いなく……」

担当「それよりですね、執筆の状況の方は……もうあまり……」

担当「というか、だいぶ時間がないことは先生もご存知だと思うんですけど」

女「ふっふっふっ……そういうと思ったよ、ボクの予想通りだね……」

担当「まあ、私の先生への用事なんてそれくらいしかないですし……」

女「じゃあああん!これを見たまえ!!」ヒラヒラ

担当「おお!」

女「実はもうできてるんだなこれが!幼女ちゃんのおかげもあって今回は割と早い段階で終了できました!まる!」

担当「じゅ、十分遅いですけど……」

女「わたしにしては」

担当「でもよかったです先生!これで今日にでも編集に取り掛かれます」

担当「あの、失礼ですけど、私、もっと本当にギリギリまで待たされるんじゃないかと……」

女「いくら私でも。新人さんを困らせるような真似はしないよ。まあそういうことはこれからたびたびあるかもだけど……」

担当「ははは、先生ったら」

女「そこだ!」バシュッ

担当「きゃっ!」

女「ぬ……うまく撮れなかった」

担当「ななな、なんですかいきなり」

女「見ればわかるだろう。写真さ」

担当「びっくりしました……なんでまた」

女「担当ちゃんって生真面目であんまり笑わないからさー、今さっきみたいに笑顔なのが珍しいと思って……」

女「まあ?前々から撮る機会をうかがってたっていうか?うかがってなかったっていうか?」

担当「急にそんなことしないでください、ていうかそんなにフラッシュたかなくても……」

女「そうだね。ちょっと設定間違えちゃったみたい。そのせいでうまく撮れんかったよ」

女「んじゃまあ普通に撮ろっか」

担当「え」

女「はい、チーズ」

担当「チ、チーズ……」

女「」パシャ

女「なんか、表情がぎこちないね、まあいいか」

担当「なんで私の写真を撮ることになったんですか、ていうか何に使うんですか」

女「待ち受けとか?」

担当「冗談ですよね?」

女「まあ今の待ち受けが気に入ってるからそうそう変えないかな。見る?」

担当「なんですか?」

女「幼女ちゃん。幼女ちゃんの寝顔」

担当「こ……これは……」

女「まえ私の膝の上で眠りこけちゃった時に撮ったんだよー可愛く撮れてるでしょ」

担当「親バカか何かですか、勝手に待ち受けにされて幼女ちゃん怒ってないんですか?」

女「そうだよ、知れば怒るだろうねーかなり。このこと本人には内緒ねっ」

担当「はあ……で、今日は幼女ちゃんは……見当たらないみたいですけど」

女「今日は普通に学校さ。まあもうそろそろ帰ってくるかな」

担当「とういうか、幼女ちゃんって先生の膝の上で寝たりするんですね。かなり大人びてる感じなんで意外です」

女「私が座らせたのさ」

担当「あ、そうだったんですか?」

女「そうすれば小説が書けると思って……」

担当「? どういうことですか……」

女「まあちょっとサポートしてもらったってだけだよ。その途中で寝ちゃったんだけどね」

担当「ほんとうに、幼女ちゃんは先生につきっきりなんですね」

女「そうかな、いやそうだね。まさにつきっきりって感じ?」

担当「なんというか……こんなこと言っちゃアレですけど、私の存在意義が薄れる気がします」

女「あえ?そうかな?」

担当「だって書いた小説の推敲も全部幼女ちゃんがやってるんですよね?」

担当「一応こちら側でも確認してるんですけど、幼女ちゃんを通した後なのであまりやる意味がないっていうか……」

女「はえーそうなんだ。当たり前だからあんまり意識してなかったな。推敲で編集者とタメはれる小学生ってすごいね」

女「うん。流石は我が優秀なる助手」

担当「ほかにも私がやるような仕事は全部幼女ちゃんが終わらせちゃってるっていうか、なんというか……」

女「んー、まあそこまで深く考えなくていいんじゃね。いくら幼女ちゃんでも原稿まとめて本として出版することは
  できないわけだし、そこらへんがあなたがたの仕事だよ」

担当「先生の書き上げた原稿を誰よりも先に読むのは私だと思ってたのに……」

女「へ?」


担当「ま、まあそうですよね、そこまで深く考えなくても……」

女「今のは何かな?愛の告白かな?」

女「『永遠に先生の隣にいて書きあがった原稿を見てたい……』とか、そういう解釈でいいのかな」

担当「うえっ!?なんですかいきなり!飛躍しすぎですよ!!」

女「担当ちゃん、わたくしめでよければ」ペコ

担当「ちっ違いますよ!頭上げてください!」アセアセ

女「あー、じゃああれだ。結婚しましょう」

担当「だーかーらー!!」

女「」ダキッ

担当「!!!!!」

女「担当ちゃん……やっと二人きりになれたね……」

担当「ええええ、せん、せんせ、どうされましたか、えっと、なんですこれは」

女「前々からずっとかわいいと思ってたよ……そして……私のものにしたいって……」

担当「ちょ、ちょ……やめ、やめ……///」

女「ふふ、赤くなっちゃって、可愛い」

担当「え、えと////」

女「大丈夫、怖がらなくても……私がしっかり教えてあげるから……」

担当「は、はわ……/////」

女「ねえ。担当ちゃん……」サワ…

担当「!!」

女「いいでしょ…………?」

担当「~~~~ッ///////」

女「さあ、その大ぶりの果実を私にさらして……」

幼女「」ゲッシィ

女「おばるぶぐるばっっ!!」ドカ

幼女「なに担当さんを困らせんてるんですか、自重してください」

女「い、いでえ……いでえよ……おかえり……」

幼女「はい、ただいま帰りました。大丈夫ですか?担当さん、あの阿呆がまた失礼なことを」

担当「だだだだ、だいじょぶです、ぜんぜん、平気です、ええ、平気ですよ」

女「阿呆呼ばわりとは……」

幼女「今回ばかりは阿呆ですよ先生、担当さん困らせて何が楽しいんですか」

女「ふ、ふ……ちょっと驚かせようと思って……高度なボケです、勘弁してください……」

担当「高度すぎます!!!」

幼女「すみませんほんとに。今後もまたセクハラされたら遠慮せずに言いつけてください制裁しますんで」

担当「よ、よろしくお願いします……これじゃもちません……」

幼女「先生も、反省してください。全く」

女「はい、猛反省です……」

担当「……」

幼女「ほら先生、立ってくださいいつまでも寝そべってないで」

女「うう……あの飛び蹴りはきいたよ……」

担当「お二人は、結局どういうご関係なんですか?」

女「え?だから我が優秀なる助手……」

担当「ええ、それはもうわかりましたけど、でもなんでご一緒に住んでらっしゃるのかとか、色々とわかないというか……」

幼女「先生をサポートするには住んだほうが都合がいいので」

担当「そうですか……」

担当(やっぱりどこか解せないな……)

幼女「それに先生は私がいないと眠れませんから」

担当「ええ?それはどういう……」

女「きゃーはずかしっ!やあね、枕が変わると眠れないんだよ」

幼女「だから枕じゃ……」


担当「一緒の布団で寝てるんですか」

女「あははー、ほら、幼女ちゃんをあやしてんの」

幼女「デタラメ言わないでください、先生のためですよ」

担当「本当に、お二人は仲が良いんですね」

幼女「そうですかね」

担当「そうですよ、さっきの女先生の待ち受けとか……」

女「! 担当ちゃ」

担当「あっ!しまっ」

幼女「待ち受け?」ピク

担当「え、えーっと、その、ちがくてですね」

幼女「」パシ

女「あーっ!私の携帯!オイ!勝手に見るな!!」

幼女「」ポチキドウ

幼女「……」

幼女「……なんですかこれ……」

女「あ、あは、あはは、えーっとね、まあいいじゃない、可愛く撮れてるし……ね?」

幼女「」ゴゴゴゴ

女「ひゃーっ!担当ちゃん助けて!」

担当「原稿もいただいたので私はこれで!!失礼しました!」ピュー

女「ワーッッ!!裏切り者ーーー!!」

幼女「仕置きですよ」

女「ひえーーーーェェ!!!」

担当「」スタスタスタスタ

担当「……っ、はあ……」

担当「なんか……逃げてきたみたいになっちゃった……」

担当「先生に後で謝っとかないと……」

担当「……それにしても……」


幼女『先生も、反省してください。全く』

幼女『先生をサポートするには住んだほうが都合がいいので』

幼女『ほんとに先生は、私がいないと何もできないんですから』


担当(幼女ちゃんはしっかりしてるなー……)

担当(まだ小学生だってのに)

担当(どうしてふたりは助手と作家の関係になったんだろう)

担当(ほんとうに親子じゃないっぽいし、どういう経緯かな)

担当(とにかく、私だって先生のサポート役なんだ……負けないようにしっかりしないと……)パンパン

担当(………)

担当(先生……)

担当(……)


女『担当ちゃーん!かわいいね!何歳!?』

女『待ち受けとか?』

女『あー、じゃああれだ。結婚しましょう』

女『いいでしょ…………?』


担当(…………)

担当(なんか……)

担当(あの人……苦手かも………)ズーン

女「はーー……あぁ……」サラアライ

幼女「それが終わったら風呂掃除もよろしくお願いしますね」

女「なんで私がこんなこと……」

幼女「待ち受けの件と、担当さんを困らせた罰です」

女「せっかく原稿渡せたってのに……ハッピーじゃないなあ、なんだか」

幼女「自業自得ですよ」

女「ま!待ち受けは別に変えないけどね!」

幼女「なんでですか!変えてください、恥ずかしいじゃないですか!」

女「もー、全然そんなことないのにー……かわいいのに」

幼女「かわいいとか……そういうこと言わないでください」

女「なんで?かわいいよ、幼女ちゃんはかわいい」ナデナデ

幼女「……」

女「かわいい」ナデナデ

幼女「トイレ掃除も追加で」

女「なんで!?」

幼女「ふん」

今日はここまで





幼女「……」

幼女「ん、んーん……」

幼女「ふぁ……」ノビ

幼女「」ボー

幼女「……」

女「zzzz」グーグー

幼女「……」

幼女「先生、起きてください、朝ですよ」

女「むにゃ……」

女「zzzzz」グーグー

幼女「はあ……先生、相変わらずですね」

幼女「よいしょ」ピョン






幼女「」パシャパシャ

幼女「ふー……」

幼女「」ハミガキゴシゴシ


幼女「」メダマヤキジュー

幼女(味噌汁……)カパ

幼女(よし、完成)


幼女(盛り付けて……)

幼女(これは……先生の分)

幼女(ラップして……)

幼女「いただきます」

幼女「」モグモグ

幼女「……」


女「zzzzz」グーグー


幼女(先生……ひどいとお昼まで寝てるからなあ……)

幼女(滅多なことじゃ早く起きないし)

幼女(……)モグモグ

幼女(……早く起きれば、朝ご飯一緒に食べれるのに)

幼女(……)

幼女「……」モグモグ





幼女「先生、行ってきます」

女「zzzz」

幼女「」ハナツマミ

女「ふがっ……」

幼女「あ、起きました?」

女「……??」

女「zzzzz」

幼女「……ダメか」

幼女「ちゃんと朝ごはん食べてくださいね」

幼女「せっかく作ったんですから、全く」

幼女「」ガチャ

・・・

当番「きりーつ」

ガタガタガタ

当番「おはよーございまーす」

オハヨーゴザイマース

当番「ちゃくせーき」

ガタガタガタ

当番「それでは朝の会を……」


幼女「くぁ……」アクビ

隣の女の子「あれ?ねぶそくかな」

幼女「違いますよ、ちょっと気が緩んだだけで」

隣「ふーん、でも次の理科のせんせ、あくびするとちゅういされるから気をつけたほうがいい、と思う」

幼女「そうですね……あくびなんて出るときに出るもんだと思いますけど」

隣「……」チラ

隣「……」ジー

隣「時間割……」

幼女「?」

隣「いちじかんめ、理科で……えっと……見えない、みて」

幼女「一時間目理科、二時間目国語、三時間目体育、四時間目算数、五時間目……」

幼女「あ、参観日ですね、道徳です」

隣「さんかんび」

幼女「なんか忘れてましたね」

隣「そっか、さんかんびだね、えへへ」

幼女「眼鏡忘れちゃったんですか?」

隣「あ、うんっ、めがね、あるよ。だけどあんまりつけたくなくって、好きじゃないの」

幼女「そうなんですか?」

隣「うんっ、まあ流石に、じゅぎょうの時はつけるけど……」

幼女「だいぶ近眼みたいですね」

隣「きんがん……ああ、うん、目、悪い」

幼女「ずっとつけてるんじゃダメなんですか?」

隣「う、うんっ……そんなことよりさ、参観日だね、きょうはお母さんが来てくれるんだ」

幼女「へえ、いいじゃないですか」

隣「うんっ、あのさ、幼女ちゃんのおかあさんもくるの?」

幼女「ああ、まあ、来ませんね」

隣「そうなの?」

幼女「はい」

隣「そ、……っか、幼女ちゃんのおかあさん、見てみたかった」


当番「これで朝の会を終わります、ありがとーございましたー」

アリガトーゴザイマシター






ワイワイガヤガヤ

幼女「さて、理科室へ移動しないと」

隣「あ、あのさ、いっしょにいこ」

幼女「はい、眼鏡忘れないようにしてくださいね」

隣「あっ、うんっ!忘れるとこだった、ありがと」

幼女「いえいえ、じゃあ行きましょうか」

隣「うんっ」

幼女「」テクテク

隣「」テクテク

隣「あのね、最近、せきがえして、となりになれてよかった」

幼女「そうですね、でも女の子と隣になるとは思ってませんでしたよ」

隣「うんっ、わたしも。クラス女子多いもんね、ちょっと」


隣「それでね、幼女ちゃんと、えっと、となりになれてうれしいの」

幼女「そうですか?まあそう言ってくださると私も嬉しいですけど」

隣「うんっ、まえからね、ちょっといいなー……って思ってたから」

幼女「え、何がですか?」

隣「幼女ちゃん」

幼女「私?どういうふうに」

隣「あっ、ん、えーっと、あー……なんか、」

隣「かわいい……みたいな」

幼女「……?」

隣「あっ、あっ!その、ちがくてえっと、まあ、ともだちになりたいなって」

幼女「……」

幼女(先生にも可愛いって言われるのに……)

幼女(なんか私ってそんな雰囲気なのかな)

幼女(違う気がする……)

隣「ご、ごめんね、えっと」

幼女「別に謝ることじゃないですよ、私の事、好意的に捉えてくださってるのなら喜ばしいことです」

隣「……こうい、てき……に、とらえ……て、よろこば……」

幼女「あ、要するにありがとうってことです」

隣「幼女ちゃん、たまにむずかしいことば使う、わかんない」

幼女「すいません、都合上色々言葉を知ることが多いので」

幼女(でもそんなに難しいかな)

隣「あと、ですますではなすことないのに、友達、だし」

幼女「それも……ごめんなさい、癖みたいなもんで」

隣「あっ、ううん!平気!それも幼女ちゃん、だし、幼女ちゃんしっかりしてるし」

幼女「そうですかね」

隣「うんっ!こどもっぽくない、ちゃんとしてる。しゃんと」

幼女「……」

幼女(子供っぽくないって、それも先生に言われたことだ)

幼女(……)

幼女(……うーん……)


隣「あのね、えっと、りか、となりの席座ろ」

幼女「え、理科の席は各々で決まってるじゃないですか」

隣「おのおの……だいじょうぶバレないよ、理科のせんせ、そういうのあんまりみてないから」

幼女「そうですかね、でも叱られたら……」

隣「大丈夫!幼女ちゃん、わたしをしんじて」ギュ

隣「あああ、ごめん!手、にぎっちゃって」

幼女「別に大丈夫ですよ?」

隣「あっ、うん、そっか、えへへ」

幼女「うーん……それでもルール違反はよくありませんから、決まった席に座りましょう」

隣「……そっか」シュン

幼女「普通の教室で隣ですし」

隣「や、やっぱり子供っぽくなくて、しゃんとしてるね!幼女ちゃん、ん」

幼女「……」

隣「」ニコニコ







隣「幼女ちゃん、このつくえはこぼ。これで最後だから」

幼女「はい、……よいしょ」

隣「よいしょー」

キーンコーンカーンコーン

隣「あ……掃除のじかんおわった」

幼女「じゃあ私バケツ片付けてきますね」

隣「あ、あ!いいよーわたしやる。から」

幼女「そうですか?じゃあ、お願いします」

隣「うんっ」

隣「」ガラッ

隣「わっ」

幼女「どうかしましたか?」

隣「もうろうかに、お母さん達とか、きてる、ほら参観日だから」

幼女「ほんとですね……」

ガヤガヤ

幼女「隣さんのお母さんはいますか?」

隣「ん、んー……まだ、いないみたい、けどすぐ来ると思う」

ガヤガヤ

キーンコーンカーンコーン

当番「きりーつ」

ガタガタガタ

当番「これから六時間目の授業をはじめます、おねがいしまーす」

オネガイシマース

当番「ちゃくせーき」

ガタガタガタ

先生「はいそれではですね、今日は参観日ということで、保護者の皆様今日はお忙しいところありがとうございます。
   この授業では道徳の……」



幼女「……毎度のことながら、後ろにこんなに人が並んでいるとやりづらいですね」

隣「だよね、なんか、見られてるーっ……てかんじするよね」

幼女「」チラ

幼女「男性の方……お父さんの方もちらほら見受けられますね」

隣「わたしのおかあさん……あっ!いた!」

幼女「どこですか?」

隣「あそこ、えと、はしっこの、そうじロッカー?の近く」

幼女「あの人ですか、優しそうなお母さんですね」

隣「ん、そうかな、えへへ」

幼女「はい、それに……」

幼女「……」

隣「それに?」

幼女「……」

隣「あ、あれ?幼女ちゃん、どかした?」

幼女「……あれですね、参観日だからと言ってキョロキョロしてるとみっともないのでこの辺にしておきましょう」

隣「んっ、んー、そだね、しゃんと、じょぎょううけよ」

幼女「……」

幼女「……」

幼女「」チラ


女「……」

女「……ぁ」

女「」ノシ


幼女「……」

隣「幼女ちゃんだれみてるの?」

幼女「わっ!あいや、なんでもないですよ!」

隣「そーお?ん……今キョロキョロやめようっていったばっかなのに」

幼女「そ、そうですね、すいません……」

隣「あっ、いや、うんっ!キョロキョロしてもいいと思う!うんっ!せっかく、さんかんびだし」

幼女「あはは……大丈夫ですよ、フォローしなくても」

隣「あ、ああー……えっと、うんっ」

幼女「……」


女「~♪」


幼女(なんで来てるんですか……)

隣「幼女ちゃん、こわいかお」

幼女「えっ、あ、そうですか?」

隣「なんかあった、かな?」

幼女「大丈夫、平気いつもどおりですよ、授業受けましょう」

隣「うんっ……」

幼女「……」

幼女(解せない……)

隣「また、こわいかお……」









ガヤガヤ

女「いやー!小学校ってこんな感じだったなー!懐かしいよ」

幼女「懐かしいよ、じゃありませんよ、何来てるんですか」

女「なんで?参観日って、保護者が子供の授業見に来る日でしょ?別にええやん」

幼女「ええくないですよ、いつから先生は私の保護者になったんですか」

女「んー、なんかそんな感じじゃん?現に来ても何も言われてないし今のところ」

幼女「どちらかと言うと保護者は私の方ですよ……はあ、せめて来るんならそう言っといてくれればよかったじゃないですか」

女「はっぴーさぷらーいず」

幼女「アンハッピー……」

隣「……」

女「ん、なにかな」

隣「幼女ちゃんのおかーさんですか?」

幼女「違います、この人は……」

女「うん、そだよー」

幼女「ちょっ」

隣「へー!へー、幼女ちゃんのおかあさん、きれいな人だね!」

女「おっ、サンキュー」

幼女「先生、悪い冗談はやめてください」

女「なんでさ、こっちのほうが都合がいいだろう?」

隣「せ、せんせえ?がっこうの……?つごう?ん、?」

女「細かいこと気にするな少女よ、人生長いぞ」ポンポン

隣「は……はいっ、幼女ちゃんのおかあさん!」

幼女(めんどくさいことになった……)

隣母「……あ、あなたが幼女ちゃん?」

幼女「あっ!はい、幼女です」

隣母「あらー、隣ちゃんね、最近幼女ちゃんの話ばかりしてるの」

隣「あ、あっ!おかあさん、そういうんのいわなくていいからっ」

隣母「これからも仲良くしてあげてね」

幼女「はい!もちろんです」

隣母「……そしてそちらの方は……」

女「はーいMOTHERでーす」

幼女「マザーって」

隣母「幼女ちゃんの?あらー……お若いのねー……」

女「いえいえー、よく言われますー」

幼女「否定肯定どっちですか」

隣母「こんにちはー隣ちゃんがお世話になってます、今後ともよろしくお願いしますね」

女「はいはい、こちらこそ!幼女よろしくお願いしますー」

隣母「」ペコペコ

女「」ペコペコ

隣「な、なんか、自分のおかあさんが、学校いるのってなんかはずかしいねっ」

幼女「そうですよ……なんでしょう、このもどかしい感じは」

隣「えっと、えっとね、おかあさん、きょうはこのまま幼女ちゃんと帰るから先くるまで帰ってていいよ」

隣母「はい、じゃあね」

女「ありがとうございましたー」

隣母「どうもー」

幼女「……さて、じゃあ私達も帰りましょうか」

隣「うんっ」

女「ほいほーい」

幼女「」ビシッ

女「いてっ」

幼女「自然に紛れないでくだい、先生も先に帰っていいですよ」

女「なんで?私歩いてきたんだけど」

幼女「え、そうだったんですか?」

女「うん、手ぶらで」

幼女「はあーやっぱりただの気まぐれできたんですね、どんだけお気軽なんですか、そんなださい部屋着で……」

女「パーカーlove」

幼女「みっともないですよ、外出るときは周りを意識してちゃんと着替えてくださいっていつも言ってるじゃないですか」

女「だぁってめんどくさいんだもーん」

幼女「全く、ちゃんとTPOをわきまえて……」

隣「幼女ちゃんのおかあさん、なんか、おもしろい人だね!」

幼女「そ、……そうですか」

隣「うんっ」ニコニコ

女「ま。細かいことウジウジ言ってないでとっとと帰ろうぜ?ねー隣ちゃんねー」

隣「そうっ、帰ろ!」

幼女「……はい、帰りましょうか」

幼女(もどかしい感じから解放されない……)







帰り道

幼女「」テクテク

女「んー!なんかいい天気!歩くのがきもちいね!」

幼女「普段の先生の生活ぶりからは想像できない言葉ですね」

隣「……」

女「なんでえなんでえ、私が引きこもりだとでも言いたいのか……」

隣「ねえ、なんで幼女ちゃんって、おかあさんのことせんせいって呼んでるの?」

幼女「あー……」

隣「?」

幼女「えーっと……」

隣「……」

幼女「……呼んでませんよ?ちゃんとお母さんって呼んでます」

隣「あっ、え、え?あれ?だって今だって、せんせいって……あれ、私きのせい?」

幼女「そうですよ、気のせいです」

隣「な、なんだ気のせいかー……そっかー……」

女「お、合わせる気になったか」

幼女「しょうがないじゃないですか、これ以上色々言ってもややこしくなるだけですよ」

女「そ、わかればよろしい」

隣「あ、あのさ、幼女ちゃん、とお母さん……って、どこらへんにすんでるんですか??」

女「あっちらへん」ユビサシ

幼女「アバウト……」

隣「あっ!えっ、ふーん……なんか、いがいと真逆、うちと」

幼女「そうなんですか?」

隣「ん、っと、あ、まぎゃく、ってほどではないかも、でもとおいかな」

女「そうなんだ」

隣「あのさ!こんどさ、遊び、いきたいんだけど、幼女ちゃんち」

幼女「私の?」

隣「ど、かな」

幼女「……んー……」

幼女(どうだろう、私が友達の家に遊びに行くことはよくあるけど、自分の家、先生の家に招いたことはあまり……)

幼女(だって先生の仕事の邪魔になったら良くないし、先生自身もあまり快く思わないかも……)

幼女(……先生今どんな顔してるかな)チラ

女「……」

幼女(なんとも言えない顔してる……どうしよう、誘っちゃっていいのかな)

女(あんなところにラーメン屋あったんだー、近所のラーメン屋はすでに制覇したと思ってたんだけどなー)

幼女「えっと……わかりません、ちょっといろいろ都合があるので、また後日誘い直してもらってもいいですか?」

隣「え、あ、そっ、か、うん……」シュン

幼女「すいません……」

隣「だ、だいじょうぶ!またいつか、ね、幼女ちゃんちどこにあるかしりたいから」

幼女「そうですね。わかりました」

幼女(帰ったら先生に相談しよ)

女(ラーメンくいてー)

隣「あ、もう別れ道……」

幼女「それじゃ、隣さんまた明日」

隣「あっ、うん!また明日!おかあさんも、ありがとうございました!」

女「はいはーい、ありがとねー」

幼女「……」

隣「……」

幼女「じゃ、バイバイですね」

隣「うんっ、バイバイ」

幼女「……」

隣「……」

女「ん?なんで二人共引っ付いたまま離れんの?」

幼女「いや、だって……」

隣「?」

ギュウウウ

隣「わっ!わっ、わっ!!」パッ

隣「ご、ごめ、ごめん、いつのまにか、袖掴んじゃってた、ごめん、えへ、えへ」

幼女「大丈夫ですよ、でもなんかちょっとびっくりしました」

隣「あ、あはは……」

隣「えっと……じゃもういっかいだけど、また明日」

幼女「はい、また明日」

女「バイビー」

隣「」ノシ

幼女「」ノシ








ガチャ

幼女「はー……ただいま、です」

女「ふー、久しぶりに歩いた歩いた」

幼女「なんだか今日は疲れました」

女「そう?」

幼女「主にあなたのせいですよ」

女「いやーそれほどでもー」

幼女「まさか学校にくるなんて、思っても……」

女「うーん、まあそういうのはもういいからラーメン食い行こうぜ?」

幼女「は、ラ、ラーメン。どっから出てきたんですか」

女「気分さ、気分」

幼女「ダメですよ」

女「なんで?」

幼女「先生はラーメンよりやることがあるじゃないですか」

女「んー、よし……そろそろやるか……」

幼女「そうですね」

女「昨日買った新作ゲームの続きを……」

幼女「仕事でしょ?」

・・・




幼女「ふー……」ゴシゴシ

幼女「せんせー、お風呂あきましたよー」

幼女「よいしょ」キガエ

幼女「……先生?」

幼女「」チラ

女「」

幼女「あ、さては……」

女「zzzzzz」

幼女「あーあ……またこんなところで寝て……しかもこれ、仕事中じゃないですか?」

女「zzzzzz」

幼女「今日もあんなに寝てたのに……全く、風邪ひきますよ?」

幼女「」モウフカケ

女「zzzz」

幼女(とういうか先生、私がいないと眠れないんじゃ……)

幼女「不意に寝るんだったら大丈夫なんですかね」

幼女「……よくわかりませんね」

女「zzzz」

幼女「……」

幼女「私も寝る準備しますか……」

ピンポーン

幼女「?」

幼女「誰でしょう、こんな時間に……」

幼女「はーい」ガチャ

隣「あっ」

幼女「!?」

幼女「あれ!?え、何、どういうことですか!?」

隣「よ、幼女ちゃん、えへへ、きちゃった」

幼女「きちゃった……って……な、え、ええ??」

隣「ごご、ごめんね、きゅうに来て、えっと、その」

幼女「どういうことか説明して頂いてもいいですか……?」

隣「あっ、ん。んー……」

幼女「……」

隣「めっ、……めいわく、だったかな、」

幼女「迷惑っていうか……だってもうこんな時間なのに……」

幼女「……よほどの急用ですか?」

隣「きゅうよう……とか、あー……そゆんじゃないけど」

幼女「せ、せんせー……ちょっと、隣さんが」

女「zzzzzzz」

幼女(聞いてねえ……)

隣「……」

幼女(どうしよう……困りましたね)

隣「あ……あが、あがっても、その、いいかな」

幼女「どうしましょう……」

隣「……」

幼女「まあとりあえず、どうぞ」

隣「あっ、うんっ、ありがと、えと、おじゃまします」

隣「」キョロキョロ

隣「幼女ちゃんのいえって、こんなのなんだー……」

幼女「私のというより、先生の家ですけど」

隣「せんせ……」

幼女「あ、なんでもないです」

幼女「それより驚きましたよ……もうこんな暗いのに……」

幼女「聞きたいことが山ほど……なにから消化すれば」

隣「すわ、すわって、も、いいかな」

幼女「どうぞ」

隣「」チョコン

幼女「……」スワリ

隣「……」

幼女「まず……」

幼女「ここまでどうやってきたんですか?」

隣「あるいて……」

幼女「あ、あるいて。こんな暗いのに」

隣「街灯とか、あるからだいじょうぶだよ?」

幼女「そういう問題じゃ……」

幼女「……ていうかなんで私の家知ってるんですか」

隣「あっ」

幼女「……」

隣「お、教えてもらった……し」

幼女「あんな指差しただけの情報量でここまで来れるわけないでしょう……」

隣「……」

幼女「……どうなんですか?」

隣「……」

隣「……ちょ」

隣「……っと……」

幼女「……」

隣「ついて……きた……みたいな」

幼女「ついてきた?」

隣「うんっ」

幼女「どういうことですか?」

隣「あのあと……別れたあと……」

幼女「今日の学校の帰り?あの分かれ道のことですか?」

隣「そそ」

幼女「え、それって……あのあとバレないように私たちを尾行してこの場所を特定したってことですか?」

隣「わたし、たちを……?びこ、びこ……とくて……」

幼女「あ、つまり……別れたあと私達にバレないようについてきて、それでこの場所を知ったんですか?」

隣「……」

幼女「……」

隣「」コク

幼女「え、ええー……」

隣「……」

幼女「それって……」

隣「……」

幼女「どうなんでしょう……」

隣「……」

幼女「ていうかついてきたなら隠さなくても……その時言ってくれれば……」

隣「あ、ん……はやく、かえらないとおかあさんがしんぱい、しちゃうから」

幼女「こんな夜中に出歩く方が心配されると思うんですけど」

隣「だいじょぶ、ばれずに来たから」

幼女「ばれずに?抜け出してきたんですか?」

隣「うんっ、寝たふりして……」

幼女「そ、それでパジャマ……」

隣「あ……ごめんね、えへへ」

幼女「いやなんというか……うーん……」

幼女「そもそも何しにここに……急用ではないんですよね?」

隣「……?」

幼女「なにが目的で来たんですか?」

隣「あっ?あ、えっと……なんか……あ、あそびに……?」

幼女「こんな時間にですか?」

隣「って、いうか、あー……幼女ちゃんに、あい、あいたか、った、っていうか」

幼女「明日学校で会えるじゃないですか……」

隣「幼女ちゃんどういうとこにすんでるか知りたかったというか、顔、みたかったというか」

幼女「それでこんな時間にここに……」

隣「うんっ……」

幼女「……」

隣「……」

幼女「えっと、とりあえず言いたいことがあります」

隣「あ、はい」

幼女「まず……いくら相手の家を知りたかったといってもつけてまで……ちょっと非常識というか」

隣「ん……」

幼女「厳しいことをいうようですけど、よくありませんね」

隣「……」シュン

幼女「あと、こんな時間に小学生が外を出歩くのは大変危険です」

幼女「保護者同伴ならまだしも一人だなんて、どんな危険な目にあってもおかしくありません」

隣「幼女ちゃんおかあさんみたいなこという……」

幼女「お母さんじゃなくても……誰でも言いますよ」

幼女「私に会いに来てくれたのは嬉しいですけど、それだったらちゃんと時間をつくって会いましょう」

隣「そ……だね、そだね、うんっ、ごめん……なんかきゅうに来ちゃって」

幼女「ほんと、びっくりしましたよ……」

隣「で、でも、かおとか、見れてよかった、あいたかった、し」

幼女「別にそんなに、学校でいつでも会えるじゃないですか」

隣「そ……そうなんだけど……」モジモジ

幼女「とにかく今日はもう帰ったほうがいいですね、あ、でもまた歩いて帰ることに……困りましたね」

隣「平気だよ、だいじょうぶ、ふつうに帰るから」

幼女「ダメですよ、なにかあったらどうするんですか。そうだ先生に車出してもらって……あ、寝てるんだった……」

隣「ほ、ほんとに、だいじょうぶだから。心配しなくても」

幼女「でも……」

女「……」

幼女「?」

女「ん……にゃ……」

女「」ノソ

幼女「先生!起きたんですか、ナイスタイミングですよ!」

女「……??」

幼女「ね、寝ぼけてます?ちょっと隣さんの為に車を……」

女「枕……」

幼女「え?」

女「」ガシッ

幼女「えぇぇ!?」

女「」オシタオシ

幼女「ちょ……」

女「」ギュ

幼女「おぉぉ……」

女「……」

幼女「せ、せんせ?」

女「zzzzz」

幼女「ね、寝た……」

隣「????」

幼女「す、すいません……身動きが、とれなくなってしまいました……」

隣「幼女ちゃんのおかあさん、だいじょうぶ?」

幼女「どうでしょう……どうしましょう……」

隣「えっと……で、出るの手伝おうか?」

幼女「お願いします……はあ、この調子じゃ車に乗る方が危ないですね……」






隣「よい、しょ……っと」

幼女「ふう、やっと出られました。全くあの人は……」

隣「じゃあ、私かえるね。だいじょうぶ、心配しないで」

幼女「本当に歩いて帰るんですか?」

隣「うんっ、でも平気だから」

幼女「……そうですねえ……」

隣「……」

幼女「えっと、じゃあせめてこれを……よいしょ」

隣「?」

幼女「防犯ブザー持って行ってください。私のですけど、予備あるんで」

隣「あっ!あー、ありがと!えへ、なんか、嬉しいな、えへへ」

幼女「それでは……お気を付けて」

隣「うんっ、ありがと!じゃあね」ニコッ

隣「」ガチャ

幼女「……」

幼女「さてと……」

女「zzzzzz」

幼女「これ……どうしましょう」

・・・



幼女「ん……」

幼女「くぁ……」アクビ

女「なんか今日しゃきっとしてないね幼女ちゃん、なんかあった?」

幼女「誰のせいだと思ってるんですか……」

女「え、えええ?私なんかした?」

幼女「はあ……やっぱり昨日のこと何も覚えてないんですね……」

女「お、おおう……ごめん、私夢遊病で幼女ちゃんにキスとかしちゃった?」

幼女「違いますよ、まあ近いかもですけど……」

女「なにあった?」

幼女「寝ぼけて私に抱きついてきたんですよ、枕……っていいながら」

女「ほう、そんなことが……一切記憶にないな」

幼女「全く、あれからベッドに連れて行くの大変だったんですからね」

女「なんか……ごめん!」

幼女「いいですよ、それに隣さんの一件のせいでもありますし……」

女「え?隣ちゃん?なんで?」

幼女「昨日なんか……来たんです、隣さんが。それで対応に手間取ったというか……」

女「来た!?なにここに!?いつよ、全然気がつかなかったんだけど」

幼女「そりゃそうですよ、先生爆睡してたじゃないですか」

女「あれそんな時間?えじゃあなに?夜に来たってこと?」

幼女「そうです、だから困ったんです」

女「そんな時間に……ていうかなんで隣ちゃんここ来れたの?」

幼女「昨日下校中別れたあと尾行して突き止めたらしいんです」

女「尾行!?」

幼女「少なくとも本人はそう言ってました」

女「ええー……それは……隣ちゃん、普通にいい子だと思ってたけど……」

女「なんか、結構ヤバイ子なんじゃない?」

幼女「……かも、しれません」

今日はここまで





女「……ふー、ついた」

女「いやー車運転したの久しぶりだわ」

幼女「先生それ車乗るたびに言ってますよね」

女「まああんまり動かすことないしね……それにしても今日はいい天気だなあ」

女「うん、買い物日和」ガチャ

幼女「こんな遠くのショップモールなんて来るの久しぶりですね」

女「そうだねえ……休日だし人も多いね。活気に満ちてる」

幼女「で、なんでここなんですか?」

女「ん、言ってなかったけ」

幼女「言ってなかったっていうか……行き先すらろくに告げられないまま車に乗り込まされたんですけど」

女「ドキドキ感あるじゃん?」

幼女「いりませんそんなドキドキ感」

女「まあたまには外で買い物でもしないと不健康だしねえ……」

幼女「こんな大きなところまで来てよほど買いたいものがあるんですか?」

女「ないよ!」

幼女「ないんかい」

女「でもさ、いいよね……ショッピングモール。好きだよショッピングモール」

幼女「なんですかそれ初耳ですけど」

女「この器の大きさ?いいよね……もうなんでもあるからね」

女「地球最後の一人になってもここにいれば先五年は暮らせるよね」

幼女「どういうイメージですか」

女「とにかくショップモールが好きなんだよぼかあ。滅多に来ないけど」

幼女「ああ、それで……」

女「うん、なんか、小説に使おうと思って」

幼女「ショッピングモールが舞台なんですか?」

女「そう、そしてゾンビが出るの」

幼女「ああ、ショッピングモールとゾンビって……ベタですねー」

女「それを逆手にとるのさ。ゾンビが出てるってのは物語の背景にとどまっていて本編には全然出てこないっていうか……」

女「まあ仕事の話はここらへんにしようではないか。今日は楽しいお買い物だよ」

幼女「取材じゃないんですか?」

女「そーんな堅苦しいことじゃないよーただなんとなく雰囲気つかめたらいいなーと思ってきただけー」

女「お買い物を楽しむのが最優先だ」

女「というわけで幼女ちゃん、付き合ってくれるかな?」

幼女「いやもう連れて来といてそれはないでしょう」

女「そだねー、じゃあ行こうか、手でも繋いで」

幼女「なぜですか」

女「迷子になるといけないじゃないか……!!」

幼女「先生がですか?」

女「ちがわい!」

幼女「不必要です。私は迷子になんてなりませんよ」

女「やっぱり堅いなー幼女ちゃんは。子供なんだから、黙って手でも繋がれときんしゃい」

幼女「子供扱いしないでください」

女「ちぇー」

ウィーン

女「ふむ」

ガヤガヤ

女「大層な入口、自動ドアを抜けるとそこはショッピングモールだった」

女「視界に常に一定数入る人の頭、賑やかな喧騒」

女「全五階で構成されたこの建物、入口付近は左手が最寄りのスーパーを想起させる大きな買い物スペース」

女「右手がファストフード、ラーメンなどの有名チェーン店が出店しているフードコートである」

女「また、それらは同時に今私の目の前の光景でもあったのだ」

幼女「地の文っぽいですね、書き出しですか?」

女「小説家たるもの常に情景描写に事欠かさない……!」

幼女「でもゾンビがいるんじゃ」

女「そうだね、だから人の頭とか喧騒とかはないかも」

幼女「まあそれはいいとして……これからどうするんですか?」

女「右手だ」

幼女「右手ですか」

・・・

女「ふいーっ!お腹すいたー!」ドカッ

幼女「そんなふうに座らないでくださいよ」

女「いやー、運転するの疲れちゃってねー」

幼女「別に大した距離じゃないじゃないですか」

女「……なんか遅めの昼食になっちゃったね」

幼女「先生が急に外行くとか言うから……いつもの時間に食べれなかったんですよ」

女「まあまあそう言うなって。外食なんて久しぶりじゃないか。どれどれ……」

女「うん……なんかいろいろあるね」

幼女「ラーメンハンバーガー、うどんにたこ焼き……」

女「これは迷う!」

幼女「どれも美味しそうですね」

女「幼女ちゃん、決めて」

幼女「私ですか?そうですね……」

女「ラーメン食おう」

幼女「ちょっ、私が決めるんじゃ」

女「このまえラーメン食いそびれたの思い出したぞ」

幼女「執念深いですね……」

女「食べ物のことは忘れないよ!」

・・・

女「」ズズズ

女「うん、おいしー。多分まずいラーメンなんてないなきっと。ラーメンはうまいもんだ」

幼女「私こんなにたくさん食べれるでしょうか……」

女「余ったら私が食べてやるよ。心配すんなって」

女「」ズズズ

幼女「先生それ……」

女「ん、豚骨だよ」

幼女「油っぽ……それ食べて私の分も食べる気なんですか?」

女「よゆーよ」

幼女「そんなんでよく太りませんよね」

女「体質なのよ」

女「」ズズズ

女「うまし。ベリーうまし」

幼女「……」ズズズ

幼女「……」モグモグ

女「……幼女ちゃんひょっとしてさーぁ」

幼女「? なんですか?」

女「体重とか気にしてんの?」

幼女「……別に……」

女「オー、図星が顔に出てるぞーほれほれ」ツンツン

幼女「や、やめてください、ほんとに気にしてません」

女「じゃあそのラーメンも全部食べれるよね」

幼女「それは……量が多いって話であって……」

女「幼女ちゃんまだ小学生なんだしさ、育ち盛りだし、別にそゆんの気にしなくてもいいと思うけどな」

幼女「だから気にしてないって言ってるじゃないですか」

女「」ズズズ

幼女「……」モグモグ

女「……見てたぞー……幼女ちゃんが真剣な面持ちで風呂上がりに体重計のってるとこ……」

幼女「!! よ、妖怪覗き見!!」

女「あ、ほんとにのってるんだ」

幼女「なっ、カマかけたんですか!?」

女「幼女ちゃんまだ小学生なんだしさ、育ち盛りだし、別にそゆんの気にしなくても……」

幼女「わー!先生なんで意地悪するんですか!私は先生と違ってなんでも好きなときに食べれるわけじゃないんですよ!」

女「あははー、面白いなあ、幼女ちゃんは……」

幼女「からかわないでくださいよ……うぅ……」

女「で、実際どうなのよ」

幼女「……なんか最近お腹が出てきてる気がして……」ボソボソ

女「幼女ちゃんまだ小学生なんだしさ、育ち盛りだし、別に……」

幼女「もういいです先生の馬鹿」ズズズ

女「おーいい食べっぷり」

幼女「ヤケですよ」

女「」ズズズ

女「んー!やっぱりラーメンは豚骨が一番やなあ!」

幼女「塩ラーメンだっておいしいですよ……はあ……これでまた増えてたら……」

女「ぽっちゃり業界への需要が高まる」

幼女「もう先生死んでください」

・・・

女「はーごちそうさま。腹いっぱいだわー」

幼女「美味しかったですね」

女「幼女ちゃん結局全部食べたね」

幼女「先生があんなこと言うからじゃないですか……」

女「ふふふ……体重、健康面、あらゆることを考慮して我慢してもいつかは欲求に負けて食べてしまう、
  それがラーメン……ひいては炭水化物……」

幼女「で、これからどうするんですか?」

女「はらいっぺーでうごけんぜよ」

幼女「何しに来たんですか」

女「そうさねえ……幼女ちゃんなんか買いたいものとかある?」

幼女「え、別に……そうですね、んー……ないですね」

女「困ったね、ただ漠然とショップモールいきてーなーって思ってきたから……」

幼女「小説のためにきたんだったら一通り回っておいたほうがいいんじゃないですか?」

女「そうかもしれんな、よし……」

女「じゃあまずは三階のゲームコーナーだ☆」

幼女「なにが“まずは”なんですか」

女「うそうそー、でも今んところやりたいことそれくらいしかないかも」

幼女「無計画ですね……せっかく来たんだからなにか買えば……」

女「そんなこと言ってもねえ……あっ」

女「服買う?服」

幼女「服ですか?先生がファッションに興味を示すなんて珍しいですね」

女「違う違う。幼女ちゃんの服だよ」

幼女「え、私のですか?」

女「いいじゃん。女の子なんだから新しい服とか欲しいでしょ?」

幼女「そんなには……もう家に数着ありますし」

女「たまには違うのも見てみたいじゃないか。そう思わんか」

幼女「いやどちらかというと先生の服の方が必要な気が……」

女「私はね、機能性重視マンなんだよ」

幼女「はあ……もうちょっと人目を意識して……」

女「よし決まり!行こう幼女ちゃん子供服ってどこで売ってるのかな」

・・・

女「ふむ……」

幼女「……」

女「いっぱいあるな」

幼女「いっぱいありますね」

女「幼女ちゃんなんか気に入ったのある?あったら試着してみれば」

幼女「そうですね、うーん……先生が決めてもいいですよ」

女「まじ?じゃあこれとー、これとー、あ、これもかわいいこれとー、あとー」

幼女「そんなに買うんですか!?」

女「着るだけタダだー!試着だけしとけしとけー!買うかどうかはそのあとだ、あとこれー」

幼女「どうでしょうそれは……」

女「あとこれだ」カチャ

幼女「なんか先生適当に選んでません?」

女「瞬間的なインスピレーション、フィーリングと呼んでくれたまえよ」

女「よし……じゃあまずはこれを着てもらおう」

幼女「ちょ、そんなフリフリの着られませんよ」

女「えーっ、幼女ちゃん私が選んでいいって言ったじゃーん」

幼女「まあ……言いましたけど……」

女「じゃ、いいでしょ!絶対似合うって、さあ試着室にいざゆかん」スタスタ

幼女「待ってください、ああもうそんなにいっぱい持って……」

・・・

幼女「」キガエキガエ

女「幼女ちゃーんまだー?はよー」

幼女「ちょっと待ってください、ていうかあと何着あるんですか」

女「たった三着目でなに弱音いってんだー!まだまだあるぞー!」

幼女「おおすぎですよ!」シャッ

女「きゃー!似合う幼女たんそれ!今までで一番にあってるんじゃない!?」

幼女「いや……」

女「」パシャパシャ

幼女「あとどんだけ写真とるんですか」

女「全部買えるわけじゃないからさー、記念記念」

幼女「また待ち受けとかにするつもりじゃ……」

女「さっ!幼女たん軽くポーズとってみようか!ほらかわいいから!」

幼女「とりませんよ!」

女「なんでえ」

幼女「恥ずかしいじゃないですか……ていうかこんなに騒ぐとほかのお客さんに変に思われますよ」

女「幼女たんの可愛さに免じてそんなことはどうでも……」

幼女「あとその呼び方もやめてください」

女「よーしじゃあ次はこれかな、ほれほれー」

幼女「はあ……これじゃまるで先生の着せ替え人形じゃないですか……」シャッ

女「うーん……」シャシンナガメ

女「これは結局どれを買えばいいのか……」

幼女「別に、先生が気に入ったのでいいんじゃないですか?」キガエキガエ

女「私が気に入ったのねえ……」

・・・

店員「ありがとうございましたー」

幼女「せ、せんせい……」

女「ぬふふ」

幼女「結局全部買ってるじゃないですか」

女「いやほらなんか……テンション上がっちゃって」

幼女「無駄遣いじゃないですか?こんなに着れませんし……荷物も増えましたし」

女「いやあ楽しいねショップモール……!!久々に目的持って外出た甲斐あったわ」

幼女「でもいくら来たからといってお金を使いすぎるのは……」

女「あ!ゲーセン!そうかここ三階か」

幼女「言ってるそばからお金を無駄使いしそうな場所に……」

女「うわーなんか……今のゲーセンってこんな感じなんだ」

幼女「先生ゲームセンターとか行ったことあるんですか?」

女「学生のころクレーンゲームにいくら費やしたかわからないよ……!」

幼女「先生らしいですね……」

女「よしいっちょ腕前見せてやる、えーと百円……」

女「よいしょ」チャリーン

幼女「本当に大丈夫ですか?また無駄に使いすぎるんじゃ……」

女「ふっ……この女様を見くびっているようだな……大丈夫、このくらいよゆうすぎ失敗したー!?」

幼女「早速百円無駄に……」

女「くっ、腕が衰えているようだな。しかし次で決める楽勝さ」

女「」ウィーン

女「しっかり狙いを定めて……」

ウィーン…

女「よしここだッ!!」ポチ

ウィーン…

ポトッ

女「………」

幼女「…………」

女「……」

女「よしもういっかい」

幼女「ダメですよ先生このペースは沼行きですよ」

女「くそっ!こんなに馬鹿にされてたまるか!!クレーンゲームごときに!クレーンゲームごときに!」

幼女「あー先生なにもそれじゃなくてもほかにもあるじゃないですか。使うんだったらそっちにしましょう」

女「くっ……仕方があるまい……」

幼女「先生、あれなんてどうですか?」

女「あれ?」

幼女「エアホッケーですよ、やったことありますよね?」

女「そりゃあもちろん。なんか弾いて入れるやつでしょ?」

幼女「ちょうど一対一できますしどうでしょう」

女「ええー……いくら私といえど小学生相手に本気出すのはなー、ちょっと大人気ないというか」

幼女「先生は毎日指しか動かしてないんですから、手加減いりませんよ」

女「挑発的ィー!いいよやろうか!負けても文句言うなよ」

幼女「はいでは二百円」

女「ほい」

幼女「」チャリン

女「ふふふ……さあ弾き弾かれ言い訳無用の熱き戦いの火蓋が切って落とされ……」

幼女「よっ、先制点」ガシャン

女「ああぁぁ!?なにやってんだ人が前フリしてる時に!」

幼女「もう始まってますよ」

女「せっかく試合を盛り上げようとしてたのに……!」

幼女「別に盛り上がりませんよ。それにお金払ってるんですから時間内に目一杯やらないと損でしょう」

女「ノリの悪い奴……これでもくらいな!」ガッ

幼女「おっと」

女「はっはっはっ!そんなヤワな腕じゃ太刀打ちできんべ!」

幼女「うわっ」

女「くらいな!」バシュッ

幼女「ああ」ガチャン

女「サアーッ!!」

幼女「思いっきり本気出してるじゃないですか!」

女「手加減なしでいいと言ったろう!」

幼女「いきますよ先生」ガッ

女「おっと間髪いれずに!これを華麗な反射神経で対応していく!」

カンカンカン

幼女「」トン

女「あっ!その上からマレットで挟んで止めるのなし!」

幼女「いいじゃないですか別に。これも戦法ですよ」ガッ

女「とおっ!」

幼女「あっ」ガシャン

女「ほらー!ズルするからだよ」

幼女「だからズルじゃありません……なんなら先生も使っていいですよ」

女「敵からの情けなど無用」

幼女「よっ」ガッ

女「と言いつつ使う」トン

幼女「おいおい」

女「そこからポン!」バシュッ

幼女「ああっ」ガシャン

女「ふふ、やはり私の圧勝のようだな……この勝負、もはや決まったも同然」

幼女「そうですね……まあ目的は勝つことではなく楽しむことですから」

女「今更負け惜しみなど聞きたくないね!かかってこいや!こいや!」




幼女「」ガッ

女「」ガシャン

女「ああ……」

幼女「先生大丈夫ですか、序盤の俊敏さが嘘のようですけど」

女「ひい……体力が……切れてきた……あとどんくらい……」

幼女「あと一分ありますけど」

女「馬鹿なッ……持たないッ……!!」

幼女「いやどんだけ体力ないんですか」

女「日頃運動してこなかったツケがこんなところで……!」

幼女「持久力がないんですね」

女「このままでは負けてしまう……!」

幼女「まだ点数では先生のほうが若干上ですけど、その様子じゃ私が越すのは時間の問題ですかね」

女「げえへっへ……そう時間の問題なのさっ……私はいいことを思いついてしまったぞそれを逆手にとるんだ……!」

女「今パックは私の手元にある……つまり試合終了まで私がパッドを打たなければこのまま勝ちだ!どうだ!」

幼女「せこっ」

女「はっは勝てばいいんだよ勝てば……費やしたお金も体力も無駄にしたくない……!!」

幼女「いいんですか先生、そんなんで」

女「ははは、なんとでもいいたまえ……勝ちが全てだ……」

幼女「まあ先生がそれで満足するのなら私も待ちますけど」

女「ははは……」

幼女「……」

女「………」

幼女「…………」

女「…………」

幼女「…………」ジー

女「たっ!耐えられない!この気まずい沈黙と幼女ちゃんの軽蔑するような冷ややかな視線に耐えられない!」ガッ

幼女「よっ」

女「ああああ!!」ガシャン


・・・

ピー

幼女「終わりましたね」

女「……」

幼女「私の勝ちです」

女「」ガクッ

女「負けた……小学生相手に……」

幼女「そんなに凹むことないじゃないですか」

女「」ダッ

幼女「あ、先生どこに……」

女「」チャリン

女「」ボコォ

幼女「パ、パンチングマシーン……」

・・・

ウィーン

女「いやー楽しかったねーお買い物」

幼女「結局私の服しか買いませんでしたね」

女「いいんだよ。いろいろ回れたおかげで雰囲気がだいぶつかめてイメージが湧いてきた。ああ!創作意欲が……」

幼女「じゃあ早速帰って具体的にまとめますか?」

女「ラーメンおいしかったね!!」

幼女「話そらさないでください」

女「幼女ちゃん……こんなに楽しい気分なのに……」

幼女「仕事はしなくちゃいけないんですよ?」

女「……」

女「今日は、仕事しない。」

幼女「いい感じのキャッチコピーみたいに言わないでください」

女「ま、いずれにせよ帰ってから決めることだ。まずは車に乗る」

幼女「もうちょっと計画性もって行動してくださいよ」


女「……それにしても幼女ちゃんはえらいなあ」

幼女「なにがですか?」

女「こんなとこまで来たのにあれがほしいとか、これがほしいとか全然言わなくってさ」

女「言えばアイスクリームくらい買ってあげたのに」

幼女「いや、別に欲しいものありませんし」

女「ほんとにそう?」

幼女「そうですよ」

女「……そう思い込んでるだけじゃない?見たいものとか触りたいものとか、幼女ちゃんは自分からは言わないけどね」

幼女「……」

女「でもあるんじゃないかな、そういうの。私だって見たい映画とかやりたいゲームとかあるわけだし、
  幼女ちゃんだけないってことはないと思うんだけど。どうかな」

幼女「……」

幼女「……難しいですね」

女「そうかな」

幼女「でもわがまま言うわけにはいきませんし。先生には迷惑かけたくないんですよ」

女「私のことはいいんだよ?」

幼女「そうは言っても……」

女「……」

幼女「でも私は、先生が書いたお話をいろんな人が読むっていうのが、一番望んでることですから。
   そのお手伝いをするんですよ」

女「」ピッ

車「」ガチャッ

女「……そっか」

幼女「そうですよ」

女「……おお、我が優秀なる助手よ」

女「やっぱり幼女ちゃんはえらいね」

幼女「そんなことないですよ」

女「かえろか」ナデナデ

幼女「はい」

今日はここまで

幼女「先生、あの」

女「なーに?」

幼女「明日お昼から隣さんの家に遊びに行くことになったんですけどよろしいでしょうか」

女「おーいいじゃん、いってら」

幼女「それで、先生の明日はどんなご予定ですか?」

女「えっとね、あ、私もお昼から予定があるな」

幼女「そうなんですか?どうしましょう、私も付き添わなきゃいけないような用事ですか……?」

女「あーんーんだいじょうぶだいじょぶ、また新しく連載することになってさ」

女「そのことについて担当ちゃんと打ち合わせだから。近くの喫茶店で」

幼女「そうですか……まあできれば私も行きたかったですけど、仕方ありません」

幼女「かねてからの隣さんとの約束なんですよ」

女「そんなに待ちに待ったのかい?」

幼女「忙しいので……なかなか遊ぶ時間を作れなくてですね」

女「まさか仕事優先で予定組んでるの?いつも真面目にやってくれてるから言ってくれれば少しくらい
  ほっぽかしたっていいのに」

幼女「そういうわけにいきません。私がいないと先生は何もできないんですから」

女「ありゃー?私のせいか」

幼女「そうかもしれません」

幼女「まあとにかく明日は羽を伸ばしてくるのでよろしくお願いします」

女「はいよー、私の方は気にしなくてもいいから楽しんできてねー」

・・・


とある喫茶店

担当「先生!」

女「はい」

担当「この前の短編集先日発売になったそうで、おめでとうございます!」

女「あ、あれもう発売してるんだ」

担当「そうですよ!あの本を世の出せて私ほんとに嬉しかったんですよ!」

担当「特に!特にあの川原の少年の話が!私大好きでしてね、ラストのシーンからくるじんわりとした
   温かみが……私、もらった原稿をみて泣きそうになったんですよ」

女「うん、前も言ってた」

担当「短編は長編より書ける情報量が限られてるのに……それであれだけ人の心を動かせる作品がかけるなんて
   先生はやっぱりすごい人です!一瞬でもただのセクハラさんと思ってしまった自分を恥じます……」

女「おいおい」

担当「あっ、すいません興奮して……」

女「まあ担当編集のあなたにそれだけ言ってもらえるなら書いたかいがあるってもんだけどね」

担当「あれだけの先生と幼女ちゃんの苦労、やっぱりダテじゃないですよ」

女「まあねん」

担当「それで今日は新しい連載の話でしたよね、えっと、どのようなお話になさるおつもりですか?」

女「あー、いよいよ長編連載が始まろうとしてるのか……頑張らなきゃなー……」

担当「はい、締切は守ってくださいね」

女「考えてるのはねー……えっと。舞台が長野県でー……」

担当「はい」

女「そこでね?えっと、主人公がスキンヘッドのやつなんだけど、そこで天狗にあうの」

担当「はあ」

女「それで、東京で落書き事件が多発してー」

担当「相変わらず断片的だとなんのこっちゃわかりませんね先生の小説は」

女「まあ小説なんてそんなもんさ」

担当「もう少し段階を踏んでお話、お願いできますか?」

女「うん!まずさっき言ったとおり舞台が長野県なんだけどー……」

・・・


隣「ついた!えっと、ここがわたしのいえだよ!」

幼女「ここですか、いい家ですね」

隣「そ、そう?えへへ、そっか。じゃああがって!」

幼女「はい……っと、車がありませんけどお母さん出かけてらっしゃるんですか?」

隣「う、うん、きょうは夜までかえってってこないんだ、なんかようじあるみたいで」

幼女「夜まで?す、すいませんそんな時にお邪魔させてもらって……私留守宅にあがることに……」

隣「いいの!気にしないで、今日おかあさんいないからきょうにしたんだよ!」

幼女「え?そうだったんですか?」

隣「あっ……ううん、えっと……まあほらあがって!ゆっくりしてね!」

幼女「はい、お邪魔します」ガチャ

隣「えへへ、ようこそ幼女ちゃんっ」

隣「えっと、ここまであるいて疲れたでしょ?のみものとか、
  あとお菓子!とか、もってくるからリビングでくつろいでてね」

幼女「ありがとうございます、お構いなく」

隣「」トタトタ

幼女「ふー……」スワリ

幼女(隣さんが言ってたとおり、ここまで結構遠かったなー……)

幼女(真逆って言いたくなる気持ちもわかる)

隣「幼女ちゃーん!オレンジジュースと、お茶と、あ、あと牛乳もあるけどどれがいーい?!」

幼女「どれでもいいですよー、おまかせでー」

隣「えー、ん、あー……きめられないよー、幼女ちゃんきめてー」

幼女「そうですか?じゃあお茶でー」

隣「はーい」

幼女「……」

幼女「んー……」ノビ

幼女(先生今どうしてるかなー……)

・・・


女「うまい……なんだこの喫茶店、コーヒーがうまいぞ……」

担当「先生、仕事の話に集中してください」

女「うん、まあさっき一通り言ったような感じでやっとこうと思うんだけど、どうかな!?」

担当「いいと思いますよ。物語に天狗が絡んでくるのは単純に面白いと思いますし。
   でも長編にしては少々構想が短すぎるように感じるんですが」

女「なんとかします。埋めます」

担当「じゃあ心配はそこだけですね。あとは先生の腕しだいですよ。それでは早速……」

女「お、終わった……」

担当「? なにがですか?」

女「いやー……担当ちゃんは私の小説への理解が深くて助かるよー……」

担当「ま、まあ。私もこの立場になる前は一読者でしたから」

女「ほらね、色々考えもせずに口出ししてくるような人もいるから……」

担当「そうですか……揉めたりするんですか?」

女「そらもう揉めるよ。むしろ揉めない事の方が少なかったことすらあるよ」

担当「うーん……私も先生の作品に色々言ったほうがいいですか」

女「んー、まあ協力はしてほしいけど基本的には口挟まれない方が楽にやれるかな私としては」

女「おかげで今日の打ち合わせもこんなにスムーズにいったし」

担当「はい、予定していた時刻よりかなり早く終わりましたね」

女「時間は余ったし」

担当「はい」

女「これで担当ちゃんと遊びにいく時間がとれたし」

担当「はい……って、は?」

女「」ニヤァ

担当「な、なにを企んでらっしゃるんですか……」

女「おっぱい触らせろ」

担当「嫌ですよ!」サッ

女「もぉーいけずーぅ」

担当「せっかく真面目な仕事ムードになってたのに……やっぱりただのセクハラさんですか」

女「いいじゃないか……私と担当ちゃんの関係じゃないか……」

担当「小説家と担当編集者の関係ですよ!」

担当「はっ!そうか、今日幼女ちゃんがいないから……」

女「ぬ、ふ、ふ、ふ、ふ」ニヤァ

担当「え、えっと……」

女「さあ行こう担当ちゃん……さしずめラブホあたりに……」

担当「わたしかえります!!お会計はこれで!!!失礼します!」ビュウウン

女「まちたまえ、なぜ帰ろうとする……」ガシッ

担当「み、身の危険を感じたので……」

女「ニゲラレルトオモウナヨ」

担当「ひっ……」

・・・


幼女「飲み物……隣さんまでお茶じゃなくてもよかったのに」カチカチ

隣「ううん、いいの。これで」カチカチ

幼女「私に合わせることなかったんですよ?」

隣「そんなことないっ、えっとね、幼女ちゃんといっしょのがよかったの」

幼女「そうですか?……あっ」シュピーン

隣「あーあぁ、よそ見、してるから」

幼女「ゲームは不慣れなので……せんせ……お、お母さんはよくやってるんですけど」

隣「えー?幼女ちゃんのおかあさん、ゲームやるんだーぁ」

幼女「そうですね、やりすぎちゃうので私が止めるんですけど……」

隣「幼女ちゃんが?えへー、なにそれ、へんなのー」

幼女「そうですかね」

隣「そうだよー、わたしはわたしがやりすぎてお母さんに止められるのにー」

隣「“こら隣いつまでもゲームやってるんじゃないの宿題終わったの!?”」

隣「って」

幼女「それ、隣さんのお母さんのモノマネですか?」

隣「えへー、似てる?」

幼女「いや隣さんのお母さんが怒ったところ見たことないのでなんとも……」

隣「あっ、そっか、ごめんね?」

幼女「いえいえ……」

隣「幼女ちゃんちは、その、おこられるのと、おこるのがぎゃくなんだ。面白いねっ」

幼女「まあうちの場合はちょっと特殊なので……」

隣「私んちもおかあさんがゲームやってたらなー……一緒にできるのに」

幼女「じゃあ今度私の家に来たとき一緒にやりますか?私のお母さんと」

隣「あっ、うんっ!いいね、やろやろ。それに幼女ちゃんちまたいきたいなっ」

幼女「あはは……だからといってまた夜中に来るのは勘弁してくださいね」

隣「あっ、うんっ。ごめん、ごめん」

幼女「いえそんな……ん……こいつなかなか倒せませんね」

隣「あーこいつねー、ちゃんと決まったじゅんばんでたおさないと復活するんだよー」

幼女「そうなんですか?難しいですね……」カチカチ

・・・


女「いやー!楽しかったあのジェットコースター!!めっさ速かった!」

担当「……」

女「ねえもっかいのる?もっかい乗っちゃったりする?」

担当「先生……」

女「はい」

担当「なんで私は今先生と遊園地にいるんでしょう……」

女「なんか近くにあるって聞いたから」

担当「そういうこと聞いてんじゃないですよ!」

女「そうさねえ……いつの時代も、小説家のと、担当の関係ってのは大事なもんでね。
  二人で一つの物語を作る。いつだって二人三脚さ。だから仕事を超えた関係って言うのも時には必要で……」

担当「ほんとうは?」

女「担当ちゃんとデートしたいなと思いましたっ!」

担当「はあ……それでこんなところまで連れてきたですか」

女「いーじゃんいーじゃん!担当ちゃん最近仕事ばっかで疲れてるでしょ?たまには遊んだりしたホーがいいって!」

担当「余計なお世話ですよ。私は私でしっかり自分のスケジュール管理してるので」

女「つれないな~ぁ、もう」

担当「それに遊園地なんてめちゃめちゃ久しぶりですし……」

女「ならなおさらじゃん!一緒に楽しもうよ!」

担当「まあ……ここまで来といて今更なにも楽しまないってことはないですけど」

女「だよねー!ねえ担当ちゃんつぎはどこいこっか」

担当「でもそんなはしゃがなくても」

女「だって楽しくない!?」

担当「まあ……」

女「あ!担当ちゃんあそこでなんか美味しそうなの売ってるよ!?ねえ買わない?」

担当「ああ、ポップコーンですか。おいしそうですね」

女「買ってきた」

担当「早ッ!?」

女「キャラメル味だよ、王道だよね」

担当「ポップコーンもまた久しぶりですねー……」

女「映画とかあんま見ないの?」

担当「見ますけど、ポップコーン頼まないんです」

女「んーそっかそっかー」グイ

担当「ちょ、何故ナチュラルにポップコーン持った手をこちらの口元に」

女「わからない?」

担当「えっと……」

女「説明しよう!これは日本古来より伝わるイチャつき文化、アーンといってこれを向けれた彼女は何びとたりとも
  口を開かないことは許され、ぬ!!」

担当「まあ小説家と担当がやることではないですよね少なくとも。てか彼女じゃないです!」

女「いいんだよー今は仕事の関係なんて忘れましょジュリエット。はいアーン」

担当「あ、アーン……」

女「どう?」

担当「……普通のキャラメルポップコーンですね」

女「もぉー、そこは『先生からもらったからとりわけ美味しいです』とか言うところでしょ」

担当「先生は私に何を求めてるんですか」

女「んー……ほんとにただのキャラメルポップコーンだね。おいしいけど」ポリポリ

担当「まあそんなもんですよ……」

女「はい、アーン」

担当「ん……」パク

女「意外と素直にやってくれるね」

担当「……」ジー

女「おっと睨まないで」

担当「恥ずかしいですよこんな。周りにはカップルとかいたりするのに……」

女「そんなこと言ったら私たちだって」

担当「違いますっ!」

女「あー……もうなんかあれだよね、付き合お?」

担当「付き合いません!!///」

女「お?なんか顔赤くない?ねえどうなの??」

担当「……帰ります」

女「わーっ!待った!私が悪かった!!」

・・・


テレッテレーレー

幼女「やった!やっと倒しましたね!」

隣「幼女ちゃんすごい!はじめのときより、ずっとうまくなってるよ!」

幼女「そうですか?ありがとうございます」

隣「うんっ!じゃあ、つぎのステージいく?」

幼女「そうですね……でも今日はこんなに天気がいいのにずっと家でゲームってのも少し不健康な気がしますね」

隣「あっ、ん、んー……そかな」

幼女「どうでしょう、少し外で遊ぶというのも……」

隣「あっ!あ、あー、ね、私のへやこない??」

幼女「隣さんの部屋ですか?」

隣「う、うんっ!あのね、にかいにあるの」

幼女「そうですか。行ってみたいですね、隣さんの部屋ってどんな感じか見てみたいです」

隣「じゃ、いこっ。えっとね、こっちが階段だから」

幼女「いいですね、自分の部屋なんて。私は持ってないんです」

隣「ん、そなの?」トタトタ

幼女「はい、隣さんはご兄弟とかいらっしゃるんですか?」

隣「えっとね、いないよ。あ、ここが私のへやだよ、えっと、どうぞ」ガチャ

幼女「おじゃましまー……おお」

隣「ど、どかな」

幼女「すごい女の子の部屋って感じですよ。可愛いじゃないですか、このぬいぐるみとかも」

隣「そお?ん、あはは、ありがと」

幼女「本棚……本もたくさん持ってますね」

隣「あっと……それ、ぜんぶゲーム……」

幼女「……え、わっ」

幼女「ほ、ほんとですね、これ全部……すごい」

幼女「隣さんこんなにゲームやるんですね」

隣「ん、んー……ま、やるかな、けっこうね」

幼女「こんなにゲーム持ってる人初めて見ました、先生のより多いかも……」

隣「えっと」

幼女「どうかしましたか?」

隣「そのほんだなさいきんのやつとか、今やりたいのだけいれてるから……探せばもっとあるんだけど」

幼女「ちょ、超ゲーマーじゃないですか」

隣「あっ、そかな……ん、でもいうほどやってないとおも……う」

幼女「これ全部クリアしてるんですか?」

隣「ん……まあ」

幼女「なら並大抵の時間じゃないと思いますね」

隣「えー……まあ……そっか、まあそうかもね、んふふ」テレテレ

幼女(先生もよくやってますし、ゲームってそんなに面白いんでしょうか)

幼女「なにか面白そうなのありますかね」ジロジロ

隣「あ、あっと、うーん……」

幼女「これなんか、なんとなく面白そうな……」ヒョイ

隣「あ、それ。えっと、その……」アセアセ

幼女「あとこれ……ん、これなんかパッケージの色が違いますね」

幼女「隣さん、この背表紙に書いてあるアルファベットはゲームの難易度ですか?」

幼女「じゃあこのDのゲームなんてそうとう……」

隣「わ、わ、わ、!!幼女ちゃ!ちょ、こっちきて!」グイ

幼女「うわっ、どうしたんですか急に」

隣「ええ、えっと、あのね」キョロキョロ

幼女「?」

隣「ぬいぐるみ!そ、ぬいぐるみみせたかったの!あと、その、どうかな」

幼女「ああ、ここに並んでて可愛いですね。全部隣さんが集めたんですか?」

隣「う、うんっ、そだよ。すきだから、」

幼女「」ジー

幼女「んー……癒されますね、うちはこんな感じじゃないので」

幼女「……?あれ、この子……お腹が裂けてわた見えちゃってますけど大丈夫ですか…」

隣「」サッ

幼女「え?隠さなくても」

隣「そそそ、それよりべつのこたちをみてほしいかな、なんて、えへ」

幼女「……?まあそうですね、みんな可愛い……」

幼女「」チラ

隣「」サッ

幼女(クローゼットの中にさっきのぬいぐるみを……)

・・・


担当「あ……あれ?」

女「終わった……」キョロキョロ

担当「あはは、なんか、あんまり怖くありませんでしたねお化け屋敷」

女「はーぁ、まあこんなもんかー……あー、もっと担当ちゃんが怖がってくれればいちゃつけたのに」

担当「な、どういうことですか」

女「キャーこわーい、ってなってさ、ふっ、大丈夫だよ担当ちゃんボクがついてるから……」カタダキ

担当「……」

女「みたいな?定番でしょ?」

担当「肩をもたないでください……」

女「あわゆくば惚れさせられると思ったんだけどなー」

担当「そんなちょろくないですよ」

女「かわいくないなあ、もう」


担当「……ところで今日はいつまでここで遊んでるんでしょう」

女「そりゃあ私と担当ちゃんが愛の誓いを結ぶまで……」

担当(幼女ちゃんに制裁をお願いしたい……)

担当「先生最近セクハラがヒートアップしすぎです」

女「気のせいさ」

女「ま!今日は私これ以上予定ないから担当ちゃんが可能なとこまででいいよ」

担当「それでしたらもうそろそろお開きにしたいんですけど」

女「何故!?」

担当「あんまりですね、遊びすぎるのもあれかとおもうんですけど。今日お休みの日じゃないですし」

女「」ダキッ

担当「ちょっ」

女「担当ちゃん……私さびし……」

担当「も、もうその手には乗りませんからね!!」

女「なんだいちぇー」

担当「離れてください、だれが見てるかもわかんないのに……//」

女「んー、私の周りの人は真面目ちゃんばっかりだなー、幼女ちゃんといい」

担当「先生が自由奔放すぎるだけですよ」

女「それでも担当ちゃんはとりわけ生真面目だよ」

担当「私は自分の仕事を大切にしてるだけですから」

女「どうすれば落とせるかな」

担当「それは本人に聞くことじゃ……」

女「やっぱりさ、担当ちゃんも女子だし、なんてかな、
  女子高生が好きそうなキュンとくるシチュエーションとか好きだったりしない?」

担当「どうでしょう……例えば……」

女「不意にキスとか」

担当「そんなこと本当にしてくる人いますかね」

女「……」

担当「……」

担当「あッ!まさか今やるきじゃ」

女「」チュッ

担当「はにゃっ!?」ビクッ

女「あはは、はにゃっ、だって。ほっぺにしただけなのに。可愛いなあもう」

担当「そそそ、そろそろ訴えますよ!てか訴えますからね!///」

女「おーぅ、それは勘弁してくれー」

担当「うう……///」プシュー

女「真っ赤だなあ」

・・・


担当「それでは……えっと、今日はありがとうございました。まあ自分から行きたかったわけじゃないですけど……」

女「ははは、担当ちゃん付き合ってくれてありがとね!また行こ!」

担当「それはちょっと……」

女「ツレダスカラナ」

担当「でもまあ、たまにはこういうのもいいかなって、思いますし」

女「そうだよー、たまにはたまには」

担当「あの……えっと……」

女「? なにかな」

担当「なんか、今日はこんな感じになっちゃいましたけど、次会うときはちゃんと仕事仲間として会いましょう。
   これはおねがいです」

女「遠まわしにもうセクハラするなって言ってるな」

担当「それももちろんあります」

女「心配しなくても。突然襲ったりしないからだいじょーぶだいじょーぶ」

担当「信用できません……とても」

女「じゃ。またの機会に」

担当「はい、ありがとうございました」

女「」スタスタ

担当「……」

女「」スタスタ

担当「……先生」

女「お?なに?」クルッ

担当「……」

担当「セクハラは……人目のつかないところでしてください」

女「ああ、はいはい」スタスタ

女「……」スタスタ

女「……?」

女「んん??待って担当ちゃん、それってどういう」クルッ

シーン

女「あら」

女(もういない……相変わらず帰るの早いなー……)

女(……うーん)

女(……)

女(人目がつかないとこだったらしてもいい……)

女(ってこと?)

女(……)

女(考え過ぎか)

女(あー、今日はいっぱいイチャイチャできていい日だったなー!明日から頑張って仕事できそう)スタスタ

・・・


幼女「……」

隣「……」ニコニコ

幼女「なんでしょう、ほかの人の部屋なのにすごく居心地がいいですね」

隣「そそ、そうかな」

幼女「はい、今この家にいるのが隣さんと私二人だけってのもあるんでしょうけど、なんだかすごくリラックスできますね」

隣「幼女ちゃん、いっつもいそがしそうに、してるもんね」

幼女「そうですか?」

隣「うんっ、だからえっと、たまにはのんびりしたほうがいいよ」

幼女「ですけど、せっかくの時間ですからなにかやらないと隣さんも退屈なんじゃ……」

隣「わたしならだいじょうぶ!だよ、わたしは、えと、幼女ちゃんといっしょのへやでいるだけで、えーっと……
  たのしい?から……」

幼女「そうですか?でも流石に何もしないっていうのは……」

隣「幼女ちゃんゆっくりしててほしいの!あ、と、ベッドで横になってもいいよっ!」

幼女「ベッドですか?」

隣「うんっ」

幼女「んー……よいしょ」

幼女「ふー……」ゴロン

隣「ど、かな」

幼女「きもちいですね……私の使ってるベッドよりふかふかな気がします」

隣「あっ、そなの?」

幼女「はい。ていうかベッドが広く感じますね。いつも先生と……」

隣「?」

幼女「あ、なんでもありません……それにしてもこのまま寝れそうです」

隣「ねても、いいよ?」

幼女「あはは、それはさすがに」

隣「うふふ……」ニコニコ

幼女「隣さんすごく笑顔でいいですね」

隣「ん、そかな」

幼女「はい、とてもにこやかで」

隣「あ、だって、幼女ちゃんがわたしのへやにいてくれるのが嬉しくて。えっと、なんかすごく、しあわせ」テレテレ

幼女「そこまで言ってくれるとこっちも嬉しいですね」

隣「うんっ」

幼女「それで今から何を……」

隣「あッ、いいよ、起きなくて。えっと、ねててだいじょうぶだから」

幼女「でも人のベッドですしいつまでもここで寝てると……」

隣「あ全然、だいじょぶ、から、あっと、あー……」

幼女「?」

隣「ちょと、トイレ。ごめんね」

幼女「ああはい、いってらっしゃい」

隣「」トタトタ

幼女「……」

幼女「」ゴロン

幼女(人の家ですけど、のんびり出来るのはいいですね……)

幼女(今思ってみれば毎日先生と仕事ばかりですし、たまにはこういう時間があっても……)

幼女(……)

幼女「」チラ

幼女(さっきのクローゼット……)

幼女(……)

幼女(でも勝手に中を見るってのはちょっと、良くないですよね)

幼女(……)

幼女「」スク

幼女「……」

幼女(ちょっとだけ、覗いて……)

幼女「」キイ

幼女(……?あれ、なにかいっぱい入って……)

ドサッ

幼女「わっ」

ドサドサッ

幼女「……???」

幼女(ぬいぐるみ?溢れ落ちてくるほどたくさん……)

幼女(それにこのぬいぐるみ……)

隣「幼女ちゃん?」

幼女「あっ!すいません!勝手に中を……」

隣「……」

幼女「さっき並んでたわたがでたぬいぐるみをですね、
   隣さんがここにしまっているのを見てちょっと……気になってしまって」

隣「……そっ、かー……」

幼女「はい……それで、えっとなんていうか、これはどういう……」

隣「壊れたぬいぐるみをね、そこにしまっておいたの」

幼女「こんなにたくさん……」

隣「そのままにしておいたら幼女ちゃんが怖がっちゃうと思ったの。それでしまったの」

幼女「そうだったんですか……いやそれにしてもこれら……どうみても自然に壊れたようには見えないんですけど……」

隣「……」

幼女「と、隣さん?」

隣「んー……っとね、それ見て」

幼女「どれですか?」

隣「その子。そのぬいぐるみ」

幼女「あ、これは……」

隣「動かないようにね、縛ってあるの」

幼女「ぬいぐるみはもとから動かないと思うんですけど……」

隣「縛るのが好きなの」

幼女「はあ」

隣「どうかな」

幼女「どう……っていわれても……す、すごいですねこれ。よく見たら縛り方が並大抵のそれじゃ……」

隣「それで、ね?こういうのがあるんだけど」

幼女「……」

隣「」シュルシュル

幼女「ロープ……ですか?」

隣「いつもお人形さんにやるときはこんなに太いとやりにくんだけど、人間相手ならこれくらいかな」

幼女「いつも……」

隣「うふふ」ニコニコ

幼女「……」

隣「……」ニコニコ

幼女「……」

隣「……」スッ

幼女「……え?あっ」

幼女「それで縛られろと」

隣「幼女ちゃんベッドから出ちゃったから……」

幼女「いや勝手にクローゼット見たのは悪かったと思ってますけど……」

隣「そゆんじゃないの」

幼女「……」

隣「……」

幼女「……」

隣「ダメ……かな」

幼女「……」

幼女「ほっ……」

幼女「ほどいて……くれるなら……」

隣「」ニコッ

隣「じゃあベッドに……」

幼女「必ずほどいてくださいよ?」

隣「うんっ、約束する」

幼女「」イソイソ

隣「手、後ろで組んで」

幼女「」スッ

隣「……」

幼女「……」

隣「」ギュッギュッ

幼女「……」

隣「」シバリシバリ

幼女「っ……」

隣「ごめんね?痛かった?」

幼女「だ、大丈夫です……」

隣「」シバリシバリ

幼女「……」

幼女「す、すごい、なんというか、慣れた手つきですね」

隣「……」ギュ

幼女「……」

隣「んっ……しょ」シバリ

幼女「……」

隣「もちょっと」

幼女「……」

隣「よいしょ」ギュッ

幼女「……」

隣「かんせ」

幼女「……」

隣「動けないでしょ?」

幼女「動けません……」

隣「私が縛ったから」

幼女「いや、わかってますけど」

隣「うふふ」ニコニコ

幼女「……」

隣「」タイイクズワリ

幼女「え、これでどうするんですか」

隣「見てる」

幼女「みてる……って」

隣「幼女ちゃん、さっきもベッドからでちゃったし。ベッドから出ないようにしたかったの」

幼女「それ……って、どういう」

隣「」ダキツキ

幼女「うわっ」

隣「」オシタオシ

幼女「っ……」

隣「……」ギュウ…

幼女「ちょ、苦しいですよ」

隣「私ね、幼女ちゃんのこと、ずっと可愛いって思ってた」

幼女「それは……いつからですか?」

隣「……私が隣になる前のずっとずっと前から」

幼女「……」

隣「それで……可愛いからね、飾っておきたくなるの。そこのぬいぐるみさんたちみたいに」

隣「ずっとずっと、幼女ちゃんが私の部屋にいてくれたらなあ……って」

幼女「それでこんなことを……」

隣「だってそうでしょ?人の心は変わるもの。おかしなところに行かないように縛っておかなくちゃ」

隣「ここにずっとつなぎとめておけばいつまでも変わらないし、ずっと私のものでいられる」

隣「そうやって、ね?私は大切なものを失ったりしたくないの」

幼女「……」

隣「幼女ちゃん抱き心地いいね、抱き枕みたい」

幼女「……」

隣「それで……幼女ちゃんは、時々寂しそうな顔をすることあるから。私心配になっちゃう。
  気づいてるよ?私幼女ちゃんのこといつも見てるもの」

幼女「……」

隣「忙しいもんね。幼女ちゃん」

幼女「……」

隣「ごまかしてるんじゃないかな」

幼女「……」

隣「『忙しいからさ』って……人からえらいなんて言われても、素直に喜べないでしょ?」

幼女「それは……」

隣「違うかな」

幼女「……」

隣「忘れてないでしょ?人に見てもらう、ってこと。理屈でごまかしても心のどこかでそれを思ってる。
  それが、表情に出てる。いつも」

幼女「……」

隣「……そういうところがね、私に似てるの」

隣「だから可愛いって思っちゃう」

幼女「……」

隣「幼女ちゃん……」ギュッ

幼女「んん……」

隣「……でもね、幼女ちゃんの心、私は幼女ちゃんのこと大好きだけど、でもきっと幼女ちゃんは私の手では満たされない」

隣「と、思うんだけど」

幼女「……」

隣「……」

幼女「ちょっと……よくわかりませんけど」

隣「そうかな」

幼女「でも、それなら……誰が……」

隣「ほんとは私がいいの。でも違うみたい。残念だけど。きっとほかの誰かだよ」

隣「大丈夫。きっとすぐに気がつく」

幼女「……」

隣「幼女ちゃん、ドキドキしてる?」

幼女「……」

隣「ふふ、可愛い」

幼女「……」

隣「幼女ちゃん、お母さんのことすき?」

幼女「お母さん……は」

隣「……」

幼女「えっと……すいません……今まで嘘、ついてました」

隣「?」

幼女「詳しくは省きますが、その、ホントは親子じゃないんです。
   ちょっと関係が複雑というか、一言では表しにくいというか」

隣「……」

幼女「えっと……」

隣「ふーん……そっ……か、なるほど……」

隣「だから私に似てたのかな」

幼女「……?」

隣「私もね、実はお母さん、お母さんじゃないの」

幼女「え?」

隣「ホントはね。昔、私のお母さん病気で死んじゃって。それでお父さんが再婚したの。
  だから幼女ちゃんが知ってる私のお母さんは実は本当のお母さんではないの」

幼女「そっ……」

隣「……」

幼女「そ、うだったんです、か」

隣「うんっ、まあ、そういうこともあるかなって思うけど」

幼女「……」

隣「でもね、私は今のお母さんのこと、嫌いじゃない。好き。大好きだよ」

幼女「……」

隣「そりゃさ、血は繋がってないかもしれないけど、でも家族だもん。
  昔色々あったりしたかもだけどさ、そんなこともういい。大事なのは誰が一番身近にいてくれるかでしょ?」

隣「私は……そう思ってるけど」

幼女「……」

隣「だからさ……」ギュ

幼女「……」

隣「幼女ちゃんが幸せなのが一番いいと思う。やらなきゃいけないことが多くても、それで思い込もうとしないでさ」

隣「私を見てって」

隣「言える?」

隣「私を見てって。」

隣「自分が一番好きだと思ってる人に」

幼女「わたしを……みて……」

隣「だから……私は、このロープを解くよ」

隣「さっきも言ったけど、幼女ちゃんが幸せなのが一番いいと思う」

隣「から」

幼女「……」

隣「でも……ごめん、もうちょっとだけこのまま……」

幼女「苦しいです」

隣「やっぱり幼女ちゃんは可愛いな」

隣「ふふ」ニコ

幼女「……」

・・・


幼女「隣さん……」

隣「……」

幼女「隣さん」

隣「zzzz」

幼女「起きてください隣さん!」

隣「んにゃっ!?」ガバッ

幼女「お、おはようございます」

隣「え、え、?あれ、私……あ!そっか!あのままねて……私」

隣「ごごごごめん!すぐ解くね!ごめんね!じかん、だいじょぶ?あ、」

幼女「時間は大丈夫です。それにしてもあんまり気持ちよさそうに寝てるんで起こしづらかったですよ」

隣「ご、ごめん……せっかくあそびにきたのにこんな……よいしょ」ホドキ

幼女「ほどくのも上手ですね」

隣「まあ……」


幼女「んーっっ」ノビ

幼女「体が硬い……」

隣「あ、ほんとに、ずっとこんなじょうたいで、ごめん」

幼女「大丈夫ですよ。それに抱きつかれて眠られるのには慣れてますから」

隣「?」

幼女「おっと……それよりその、壊れたぬいぐるみさんたちを散らかしてしまったので片付けますよ」

隣「あっ、んーんだいじょうぶわたしがやるから!それよりね、幼女ちゃんはかえって。遅くなっちゃうよ」

幼女「いえでもちょっと申し訳なくて……」

隣「もうしわけないのはこっち……きょうなんか、幼女ちゃんにすごいへんなこといちゃったし、縛ったし……」

幼女「約束通りほどいてくれたので問題ないですよ」

隣「え、、じゃあまた縛らせてくれる!?」

幼女「はは……それはどうでしょう……」

隣「ん、そうだよね……ごめん」シュン

幼女「そ、そんなにがっかりしなくても」

ブゥーン

幼女「おや、車の音……」

隣「あれ?お母さんかな」


・・・


ガチャ

隣母「ただいまー、隣ちゃん」

隣「おかえりーっ、おかあさん、えっと、幼女ちゃんいるよ」

幼女「こんにちは。おじゃましてます」

隣母「あらー、幼女ちゃんこんにちは。隣ちゃん、来るんだったら言ってくれればよかったのに」

隣「ん、そ、だね」

隣母「あ、でも留守宅に誘うのはダメだからね?今度から……」

隣「んあ、はい、ごめんなさい……」

隣母「……ま、いっか。幼女ちゃんこれから帰るの?ちょっと遅いから気をつけて帰ってね」

幼女「す、すいませんありがとうございました」

隣母「はーい」

隣「おかあさん、どしたの?きょう、夜までじゃなかったの?」

隣母「思ったより早く用事がすんだの」

隣「そ、だったんだ。えへ、じゃあゆうごはん一緒にたべれるね!!」

隣母「そうね。嬉しいわよ隣ちゃん、あ、これお土産?好きでしょこのお菓子」

隣「ああ!あ、ありがとおかあさん!!これ、ありがと!」

隣母「うんうん、でもご飯のまえに食べちゃダメだからね?」

隣「うんっ、ありがとお母さん!大好き!」


大好き!


幼女「……」

隣母「あ、ちゃんと幼女ちゃん見送ってあげて」

隣「あっ、ごめんね幼女ちゃ、はなしこんじゃって。えっと、」

幼女「いえ大丈夫ですよ。そうですね、今日はありがとうございました。楽しかったです」

隣「あ、あっ、こちらこそ!たのしかった、えっと、また来てね!」

幼女「はい、それではまた」

隣「うんっ、またね!」ノシ

幼女「……」

ガチャ

隣「……頑張って」

幼女「……」

隣「じゃね」

幼女「はい」

バタン

次回更新大幅に遅れます おそらく最後です

たいへんながらくお待たせいたしました 夕方に更新します

女「夜になるとさ、大体太陽が沈んでるわけだから、寒くなるはずなんだよね」

幼女「はあ」

女「だから昼間はめちゃめちゃ暑い砂漠も夜になると凍えるほど寒くなるって言うけど」

幼女「よく聞く話ですね」

女「だのに……」

女「今日、今この瞬間はなにゆえこんなに暑いのか」

幼女「熱帯夜ですねー……直射日光とはまた違う、蒸されるような暑さです」

女「あ゛ーーっつっ……いよ!太陽はもう沈みに沈んでるはずなのにこりゃどういうこっちゃ」

幼女「もう夏ですね……」

女「なんでこのタイミングでエアコンが壊れたりするんだ!!なんでなんだ!?え!?」

幼女「しょうがないじゃないですか。修理屋さん、来てくれるまでしばらくかかるって話ですし」

幼女「その間は扇風機で我慢しましょう」

女「無理だ溶ける……チーズのように……」ムシムシ

幼女「今夜、暑くて眠れないかもしれませんね……」

女「てかさ、幼女ちゃんなんでそんな涼しい顔してんの、きつくない!?これ」

幼女「まあ確かに暑いですけど、でもたまにはいいじゃないですか」

幼女「エアコンばかり使ってしまうと体に悪いです。たまにはうちわや扇風機で風情を楽しまないと」

幼女「先生もうちわ使います?」

女「ノー、サンキュー!あいにく私は現代人なものでね」

幼女「そうですか」

女「あ、あつっ……やっぱ使う、貸して……」

幼女「最初からそういえばいいじゃないですか」

女「はぁー……もうここまで来たら風鈴かなんかほしいとこだ」パタパタ

幼女「どうしたんですか急に」

女「もうここまで来たら開き直って夏の風情に浸りつくそうとか思ったりするんだ。蛍とか見たいよ」

幼女「蛍ですか、いいですね」

女「そう!なんかどっか遠出すれば見られるかな?ちょっとネットで調べて……」

幼女「ダメです、先生はその前に仕事です」

女「なんだいぶー!」

幼女「遠出なんて、そんな暇ないですよ」

女「そうでもないよ?」

幼女「そうですか?」

女「うん、時間がないなんてことはない!時間は己でつくるものだ!」

女「幼女ちゃんがどうしても蛍を見たいというのなら!私はたとえ血反吐を吐こうと蛍のもとへ……」

幼女「つまり、遊びに行く時間の余裕ができるくらい先生が仕事を頑張るってことですか?」

女「まあ?結果的にはそうなるね」

幼女「言うは易く行うは難しですよ先生。先生に本当にそんなことできるんですか」

女「出来る出来ないじゃない、問題は幼女ちゃんが行きたいか、行きたくないかだ」

幼女「蛍見たいって言ったのは先生じゃないですか」

女「まあそうだけど」

幼女「……」

女「……行きたくない?」

幼女「そりゃ……行けるんだったら行きたいですけど」

女「それだよ幼女ちゃん。もっとその気持ちに素直でいいと思うよ?」

幼女「素直に……」

女「うん」


幼女「……適当言わないでください。どうであろうと出来ないものは出来ないし行けないものは行けません」

幼女「それに……私のわがままで先生に迷惑かけるわけには」

女「別に、迷惑じゃないんだけどなー」

幼女「……」

女「まあいっか。なんかほかに夏っぽいものってなんかあったけー」

女「あそうだお祭りは?今年も近所でやるんでしょ?」

幼女「そうですね、確かにもうすぐ近所で……」

女「うむ!蛍には会いにいけなくても近所の祭りくらいだったら行けるのではないか」

女「『あ、なんか祭りやってんなー』となんとなく思うだけで毎年終わっていたから、
  今年は出向いてみるってのもアリなんじゃないか!?」

幼女「そんな暇ありますかね……」

女「ほらまたそういうことそうやって言う!問題はそこではない!」

幼女「わ、わかりましたよ、そうですね、祭り……夏祭り……」

女「幼女ちゃん、お祭りとか言ったことある?」

幼女「小さい頃……一回だけ、夏祭りに行った記憶があります」

女「今も十分小さいじゃないか」

幼女「うるさいですね」

女「そうかー……幼女ちゃんが今より小さいときかー……それは具体的に何年何月何日だったんだろうね」

幼女「覚えてません……し、覚えておく必要もないかと」

女「やっぱりそんな昔のことは覚えてないか」

幼女「……」

女「私もひょっとしたら吐いたとき以来かな!」

幼女「一応言っときますけど、今回も吐かないでくださいね」

女「はは、それは流石に」

女「あーあ、このまえショップモール行ったとき幼女ちゃんの浴衣とかも一緒に買っておけばよかったなー」

幼女「……」

幼女「昔のこと……ですか……」

幼女「……」

・・・





『幼女ちゃんは、時々寂しそうな顔をすることあるから。私心配になっちゃう』





幼女「……」

女「zzzzz」

幼女「……」

女「」ギュウ

幼女「う、くるし……」

幼女(さっき散々暑い暑いって言っておきながらよく眠れますね)

幼女(私はこんなに眠れないのに……)

幼女(ていうか、ホント夏なのに……先生はそろそろ一人で寝られるようになったほうがいいんじゃ……)

幼女「……」

幼女「」チラ

女「zzzzzz」

幼女「……」



『忙しいもんね。幼女ちゃん』


『ごまかしてるんじゃないかな』


『『忙しいからさ』って……人からえらいなんて言われても、素直に喜べないでしょ?』



幼女「……」

幼女(少し前から……なにか……引っかかる……)

幼女(なんだろう……別に、困ったことなんてなにもないのに……)

幼女(だって私には先生がいる、先生と私の生活は、これからもずっと……)

幼女(……)

女「zzzzz」

幼女「……」

幼女(……何もおかしくないですよね、先生)

幼女(私は、先生の優秀なる助手ですから)

幼女(……)

女「zzzzz」







――――――――――――――――――


―――――――

――

キーンコーンカーンコーン

ガラッ

『こんにちはー!』

『新一年生のみなさん!ご入学おめでとうございます!』

『この日であなたたちは小学生!ピカピカの一年生です』

『私がこの一年二組の担任になりました……』

シーン…

『ん……え?なにかな』

一年生『せんせい、このきょうしつは、一年三組だとおもいます』

『え……え!?、え、え!?』キョロキョロ

『あ……』

『……』

『せ、先生間違えました!失礼しましたー」』

ガラガラピシャ



(きょうからしょうがくせい……)

幼女『……』

幼女(せんせい……どんなひとかな)

ガラッ

幼女『!』

『こ、こんにちは~……あはは』

『えっと……ここが二組?であってるよね、あってるね』

『いや~、先生張り切りすぎてさっき間違えて別の教室に入っちゃいました~……あはは……』

幼女(おんなのひと……)

『はい。じゃあ改めまして今日からこの一年二組の担任になる……』カッカッカッ

幼女『……』



『はーいみんなすわってー、すわってー』

幼女『』スワリ

『はい、それでは授業をはじめ……』

『うわっ!?教材忘れた!すいません取りに行ってきます!!』ピュー

幼女『……』



幼女(きょうはこうていでたいいくのじゅぎょう……だけど、せんせいまだかな)

『す、すいませ~ん!みんなー!』タッタッ

幼女『……』

『ちょっと、色々あって遅れちゃいました~!みんなちゃんと待っててくれてありが……』

『うひゃあぁっ!?』コケ

ズシャァー

ワーワー センセイガコケター センセイダイジョーブ?

『い……っつー……あ、ぎゃああ擦りむいた!』

幼女『……』



『こ、困った……』

幼女『……』

『ない……教科書がない……あれー、おっかしいなー……ここら辺にあるはずなんだけど……』ガサゴソ

幼女『……』

幼女(きょうかしょなくしたのかな……)

幼女(ドジのおおいせんせ……)

しょ、職員室に置きっぱなしになってるのかなー……いやそんなはずは……』

『どうしよ……休み時間終わるまでに見つけないと……どこだー……?』ガサゴソ

『国語の教科書……』キョロキョロ

幼女『……』

幼女『……せんせい』

『うーん……』ガサゴソ

幼女『先生』

『ん、あ、幼女ちゃん。なにどしたの?』

幼女『こくごのきょうかしょなら、先生よくつくえのにばんめのひきだしにしまってます』

『あ……え?そうだっけ?』

『えーっと……』ガサゴソ

『あ!あった!』

『ありがとー!幼女ちゃん!これで授業できるよ!いやー一時はどうなることかと』

幼女『よかったですね、きょうかしょあって』

『幼女ちゃんのおかげだよ!ありがと!』

『にしてもなんでここにあるってわかったの?』

幼女『先生のつくえのまえのせきなので……よくみえるんです』

『あ、そっかーそうなのか、ありがと!なにはともあれ』

幼女『はい……』

・・・


近所のスーパー


ワイワイ

幼女『……』

幼女(えっと、あと買うものは……)テクテク

幼女(卵と……ネギと……)

ワイワイ

幼女(……?)

『……』

幼女『先生……?』

『……あ』

『あれ!?幼女ちゃんじゃん!奇遇だね!どうしたの?』

幼女『え、えっと……』

『おつかいかな?えらいねー』

幼女『いえちがくて……その、ゆうごはんじぶんでつくるので、ざいりょうを』

『え、自分でつくるの!?なにそれすごい』

幼女『あはは……まあその』

『私も食材買いに来たんだよー、目的まで一緒だね。まあスーパーだし当たり前か』

幼女『先生も、じぶんでごはんつくるんですか?』

『ん、んー……まあ、ね、一人暮らしだし自炊ぐらいしないと……』

幼女『ひとりぐらし、ですか』

『そうだよーぉ、さびしいよー幼女ちゃん』

幼女『え、え』

『あはは冗談冗談。そんなにうろたえないで』

幼女「あ、はい』

『じゃあ明日学校でね!宿題ちゃんとやれよー』ノシ

幼女『はーい……』




スーパーの入口


ザアアァァ……

幼女『……』

幼女(いつのまに……こんなにふりはじめちゃったんだろう……)

ザアアァァ……

幼女『……』

『おおーやばいねこれ。そうとう降ってるね』

幼女『あ、せんせ』

『オッス。またあったな、ひどい雨で災難だね』

幼女『きょういちにちはれだってテレビでいってたのに……』

『傘とかないかー、まいったね、先生も歩いてきたんだよ』

幼女『あるいて?』

『うん』

幼女『えっと、とすると、先生のいえって、けっこうちかいんですね』

『そうだよー、学校からも近くてね、おかげて極力早起きしなくてすんでるよ』

幼女『ど、どこらへんに、あるんですか?』

『薬局がある通りのアパートの102の部屋』

幼女『へーえ……』

『あははここまで細かく教えることなかったかな。暇だったら遊びおいでーなんちて』

幼女『でもほんとうに、わたし、あるいていけそう……』

『いや私の家の話はもういいじゃないか、それより今この状況を打開しなくちゃ……』

幼女『でも……やむの、まつしかなくないですか』

『でも幼女ちゃん小学生だし、暗くなる前に帰らないと……あ』

幼女『?』

『傘あるわ』

幼女『え、ほんとですか』

『折りたたみ傘持ってるの忘れてた。備えあれば憂いなしだね』

幼女『折りたたみ傘……』

『うん』

幼女『……』

『……』

幼女『あ、せんせ……さようなら……』

『ふふ、困ってる生徒一人おいて帰ったりしないよ。教師だもの』

幼女『え、でも……』

『この傘幼女ちゃん使いな。明日学校来たとき返してくれればいいから』

幼女『そんな……わるいです』

『ふっふふ~先生ね~最近運動不足なんだ~』

幼女『?』

『なあにこのくらいの雨なんともない!先生走って帰るよ!どうせ帰ったらシャワー浴びるつもりだったし?モーマンタイ』

幼女『ほ、ほんとですか、むちゃしてませんか』

『大丈夫!そい!』ダッ

幼女『あっ……』

『じゃあねー!幼女ちゃん!また明日ー!!』タッタッタッ

幼女『……いっちゃった』

幼女『……』

幼女『』カササシ

幼女(パワフルなせんせ……あのくらい元気なら風邪もひかなさそうだな)

・・・


次の日

教師『えー、担任の先生は風邪で熱がでてしまったようで今日はお休みです。代わりに今日一日私が……』


幼女『……』

幼女(せ、先生……)

幼女(やっぱり……むちゃしてたんだ、きのう……)

幼女(……)

幼女(先生……だいじょうぶかな)

幼女(かさ……かえしにいかないと)

幼女(……)



放課後

幼女(やっきょくの……とおりの……)

幼女(アパートの……102……)テクテク

幼女『……』

幼女(ここかな……)

幼女『……』

ピンポーン

幼女『……』

幼女(だれもでない……)

幼女(でも先生、ねつだしてるはずだから、いるとおもうんだけど)

幼女『……』

ピンポーン

幼女『……』スッ

ガチャ

幼女『!』

幼女(かぎあいてる……)

幼女『……』キョロキョロ

幼女『す……すいませーん……せんせーい……』

幼女『いませんかー……』

幼女『は、はいっていいですかー……おじゃましまーす……』

幼女『……』

幼女(な、なんか……すごいちらかってる……)

幼女(せんせいほんとにいないのかな……)

幼女『……ぁ』

『zzzzz』

幼女『先生』

『……うーん』

幼女(うなされてる……)

幼女『あ、あの……かさを……』

『……zzz』

幼女(おこさないほうがいいのかな……)

『うーん……うん?……』パチ

幼女『あ』

『……?』ゴシゴシ

『あにゃっ!?よ、幼女ちゃん!?なんでここにいるの!?』

幼女『えと、その、かさ、かえしにきました』

『あ、昨日の……』

幼女『あと、ねつがでたってきいて、ちょっとしんぱいして』

『それでわざわざここまで?うわーありがとう!なんかうれし……っくしょい!』

幼女『あぁ、ごめんなさい、わたしのせいで、かぜ……』

『いやいや!幼女ちゃんのせいじゃないよ!全然!』

幼女『ほんとに、だいじょうぶですか』

『平気平気!このくらい一日寝てれば元通り。それよりあんまりここにいるとうつっちゃうかも……』

幼女『だいじょぶ、です。それより……』

『どした?』

幼女『なんか……すごく……』

『あはは、やっぱ気になる?やあねー幼女ちゃんが来てくれるってわかってたらもうちょっと綺麗にしておいたんだけどね』

幼女『いつもこんなかんじですか』

『そうだね……私の部屋はこの状態がデフォルトだよ』

幼女『そうなん……ですか』キョロキョロ

『ごほごほ、あはは、まあいい反面教師になれたんじゃないかな?』

『幼女ちゃん!こんな大人になっちゃダメだぞ!』ビシッ

幼女『……』キョロキョロ

『……汚いところとか苦手?じゃああんまり無理しないで、もう帰っても……』

幼女『先生』

『はいなんでしょう』

幼女『わたし……かたづけます』

『え?いやいや、いいよ、悪いし。そんな』

幼女『かたづけます……かたづけ、たいです』

『げほっ、だだ、大丈夫だよ。先生熱ひいたら自分で掃除するから』

幼女『先生、このじょうたいがデフォルトだってさっきいいました』

『言ったけど』

幼女『ねつがひいても、ほんとうにそうじするとはおもえません』

『で、でも』

幼女『ゆかにおちてる、ゴミとか、すてるだけでもちがうとおもいます』

『……えー……っと……どうしようかな』

幼女『かたづけますね』ソソクサ

『あ、ちょっと……いや、なんか、先生なのに、自分の部屋子供に掃除させるのってなんかふがいな……』

『っ!へっ、くしょい!』

幼女『先生はねてていいですよ』

『ずず……うう』

幼女『ねてください』

『……はーい』

幼女『……』

幼女(じかんかかりそ……)



幼女『せんせ、せんせ』ユサユサ

『う、うーん……』

幼女『おきてください、先生』

『う……にゃ……あ、幼女ちゃ、おはよ……』ゴシゴシ

『うわっ!?なんかすごい!部屋が綺麗になってる!!』

幼女『そうじ、しました』

『ほ、本当にやってくれたんだ……!すごい、幼女ちゃん、見違えたよ……!』

『私の部屋ってこんな広かったんだ……!』

幼女『ちょっと、じかんかかっちゃって』

『時間……?あ、もうこんな時間だけど。幼女ちゃん早く帰らないと』

幼女『いえだいじょうぶです』

『そう?いやでもこれ……すごい綺麗、幼女ちゃんすごいなあ……』

幼女『えっと、あと』

『?』

幼女『よけいなおせわだったら、わるいんですけど』

幼女『おかゆとか……つくってみました』

『え!?おかゆ!?ほんと!?』

幼女『ごめんなさい、れいぞうこのしょくざい、かってにつかっちゃって……』

『いや全然!おかゆなんて、幼女ちゃんすごい……そっかご飯自分でつくってるんだもんね』

幼女『えっと、たべてくれますか』

『もちろん、ありがたくいただきます』

幼女『じゃあ、もってきますね』

『うん……』

幼女『』トテトテ

『……』

幼女『はい、どうぞ』

『ありがと、じゃあ、いただきます』

幼女『はい』

『』モグモグ

『んー、おいしい』

幼女『あ、ありがとうございます』

幼女『あの、先生、ちょうしはどうですか』

『うん!もうだいぶ楽になったかな、明日にはもう完治してそう』

幼女『そうですか、よかったです』

『いやほんと、部屋綺麗にしてもらって、おかゆまでつくってもらったら元気になるよ!ありがと幼女ちゃん』

幼女『いえ』

『ごめんねー、なんか色々してもらっちゃって。私が先生なのにね、しっかりしなきゃ』

幼女『あの、そうじとか、りょうりとか、すきなんで、だいじょうぶです』

『あー、そうなんだー、私とは違うなー幼女ちゃんえらいなー』

幼女『先生は、そうじ、りょうり、きらいですか?』

『嫌い!』

幼女『あっ、そうですか』

『だって家にいるんだもーん、家ではゆっくりしてたいもーん』

幼女『でも、せっかくこんなにきれいにしたんだし』

『そうだね!じゃあこの部屋維持できるように頑張るよ!整理整頓頑張る!』

幼女『はい、がんばってください』

『んー、あはは、やっぱりなんか立場が逆な気がする』

幼女『……ふふ』

・・・


下校中

幼女『』テクテク

前を歩いてる男の子『』トタトタ

男の子『ただいまーっ!』ガチャッ

オカエリナサーイ

ネエネエキョウガッコウデネ、コンナコトガ…

幼女『……』



幼女『』テクテク

ガチャッ

幼女『……』

幼女『た、ただい……』

幼女『ま……』

シーン…

幼女『……』

・・・


幼女(きょうは……おやすみのひ……)

幼女(先生……いるかな……)

幼女『……』

ピンポーン

幼女『……』

ガチャ

『はいはーい ……あ!幼女ちゃん!』

幼女『こ、こんにちは』

『どした?なんかあった?』

幼女『いえその、ようじがあるってわけじゃないんですけど、その』

『お?じゃあなにかな』

『遊びに来てくれたの?』

幼女『えっと……まあ』

『ほんとー?嬉しい、けどちょっと、んー……あはは』

幼女『?』

『しょ、諸事情によりここから先はお通しできません』

幼女『? ?』グイグイ

『ちょ!幼女ちゃん無理矢理覗き込まないで!!』

幼女『!』

幼女『先生……へや……』

『わーっっ!ごめんなさい!維持できませんでした!!』

幼女『はいりますね』

『どうぞ』

幼女『……』

『すいません、ホンットすいません』

幼女『もとどおり、ですね』

『ぐうぅ……不甲斐ない……』

幼女『あんなにがんばってそうじしたのに……』

『わああ!ごめさい!!忙しくて!そう忙しくて!片付けに手が回せなかったんです!』

幼女『先生』

『は、はい』

幼女『みそこないました』

『ガ、ガーン』

幼女『でも、やっぱり先生は先生ですね、ふふ』

『幼女様お許しくださる……ありがたき幸せ』

幼女『じゃあかたづけますね』

『え、あ、そうなの?片付けるの?』

幼女『はい、ちらかったのなら、そうじしなければ』

『で、でも。だって……せっかく幼女ちゃんが頑張っても、私また元に戻しちゃうかも……』

幼女『そしたらまたかたづけますよ』

『……』

幼女『』カタヅケ



幼女『せんせー』ピンポーン

ガチャ

『はーい幼女ちゃん』

幼女『こんにちは』

『えーっとね、ご覧の有様です』

幼女『……たったいっしゅうかんで、ぜんぶもとどおり』

『もうこの散らかった部屋という名のモンスターは私じゃ太刀打ちできないよ……!!』

幼女『かたづけますね』

『すまないねえ』



幼女『こんにちはー』ピンポーン

『ウェルカム幼女ちゃん!今日も部屋がひどいぞ!』

幼女『もうなれました。かたづけます』

『ああー、幼女ちゃん聞いて!』

幼女『? 何ですか?』

『ごめんね!定期的に来て掃除してくれるのはとてもありがたいんだけど、このままじゃ先生堕落しちゃう!』

幼女『だらく?』

『うん、だって幼女ちゃん来てくれるから、じゃあ部屋汚くしてもいいやーって思っちゃうもん!』

『そんなんじゃだめでしょ教育者として!遊びに来てくれるのは嬉しいけど、掃除はもうしなくても……』

幼女『いいですよ』

『?』

幼女『だらくしても、いいですよ』

『え?』

幼女『私がかたづけますから』

『あ……』

幼女『……』カタヅケ

『……』

『……ごめんね、ありがと』

幼女『いえ』



幼女『来ましたー』ピンポーン

『鍵空いてるから、入っていいよー』

幼女『』ガチャ

幼女『先生、こんにちは』

『はいこんにちは』

幼女『』カタヅケ

『いやーありがたいね、いつもいつも』

幼女『いえ』

『ときたまこうやって、幼女ちゃんが来てくれると、私嬉しくなるんだよね』

幼女『? そうなんですか?』

『うん、片付けてくれるってのもあるけど、やっぱり「来てくれる」ってのが嬉しいんだと思う』

幼女『はあ』

『こんな可愛い娘に通い妻してもらっちゃったらだれでも幸せになれちゃうよ』

幼女『か、かわいいって』カア

『あはは、そんなに照れなくても』

幼女『先生、ひとりぐらしですもんね』

『そうだよー、寂しんだよー、だから幼女ちゃんが癒しなんだよー』

幼女『……』

幼女(先生、ひとり……か)

幼女(私といっしょかも)

幼女『……』カタヅケ

幼女『先生、あの』

『ん、どかした?』

幼女『インスタントのたべものとか、コンビニのおべんとうとかの、ゴミがおおいんですけど』

『うん、食べたからね』

幼女『先生、ちゃんとしたごはん食べてます?』

『あ、あははー……痛いとこつく』

幼女『』ジー

『自炊続かないでござるよ』

幼女『……かたづけおわったら、なにかごはんつくりますね』

『え!?そんなことまでやってくれるの』

幼女『あんまりじかんないので……たいしたものつくれないですけど』

『うわあ……幼女ちゃんマジ通い妻……そこまでしてくれるなんて嬉しい限りで……逆に自分が不甲斐ない……』

幼女『気にしなくてだいじょうぶですよ、せんせ』

『ホント、色々ありがとう』



幼女『先生って、よくパソコン使ってますけど、なにしてるんですか?』

『ぬふふ。秘密』

幼女『きょうしの、お仕事ですか?』

『それもあるけど』

幼女『ほかになにか』

『……ここだけの話ね』

幼女『は、はい』

『先生ね……小説とか書いたりするんだ』

幼女『しょうせつ……』

『うん』

幼女『しょうせつかさん、ってことですか』

『そういうことになるかな。まあまだ全然、有名とかではないんだけどね。あはは』

幼女『でも先生って、先生なんですよね』

『そうだねー、まだ見ての通りまだ小説だけじゃ食っていけないからねー』

『大層な言葉を使うと、兼業作家なのさ』

幼女『けんぎょう』

『そそ。今までも色々書いて、出したりもしたけど……なかなか手応えなくてね。夢追い人状態』

幼女『先生がしょうせつか……全然、知りませんでした』

『でもさ、教師でも小説家でもどっちにしろ先生であることには変わんないよね、なんて。あはは』

幼女『先生、がんばってるんですね』

『そうそう、なんでもかんでも幼女ちゃんに任せっきりじゃなくて、先生も頑張ってるんだぞー』

『いつか小説だけで暮らしていけるようになりたいんだよね。いろんな、たくさんの人に読んでもらいたくって』

幼女『……』

幼女『そうなん、ですか』

『うん』

幼女『夢、ですか』

『そうだよー、いい年こいてね。あはは』

『それにねー、最近書くのが調子いいのは幼女ちゃんのおかげなんだー』

幼女『私の?』

『うん。前にも言ったでしょ、癒しだって』

『幼女ちゃんが家事してくれるおかげで、時間的にも精神的にも余裕が出来てね』

『おかげでいい文書ける気がする、いや書ける』

『幼女ちゃんのおかげ』

幼女『私の……おかげ……』

『うん!いつもありがと、幼女ちゃん!』

幼女『……』



ガチャ

幼女『……』

幼女『ただい』

幼女『ま……』

シーン…

幼女『……』

幼女(もう、ただいまっていうのやめようかな……)

幼女(……)


『うん!いつもありがと、幼女ちゃん!』


幼女(……)

幼女(私が……ご飯つくったり、そうじしたりすることがあんな形で先生のやくにたってるなんて……)

幼女(……)

幼女(ちょっと……うれしい)



幼女『こんにちは』

『おーいらっしゃーい』

幼女『今日も、書いてますね』

『うん、あのさ、最近幼女ちゃんいっぱい来てくれるようになったよね』

幼女『そうですね』

『おかげで綺麗な部屋が維持できてるよー、常に清々しい気分で小説も書けるし』

『ほんとに感謝してもしきれない』

『けど……ちょっとね、先生心配なことがあって』

幼女『? 何ですか?』

『幼女ちゃんまだ小さいしさ……あんまり毎日のように来てると、おうちの方心配したりするんじゃないかなー……とか』

幼女『……』

『ご飯つくってから帰るとそこそこ遅い時間になっちゃったりするしさ』

『たまにならいいかもしれないけど、それが頻繁になると……あんまり良くなかったりするんじゃないかって』

幼女『……』

『思ったんだけど』

幼女『……大丈夫です』

幼女『問題ないですよ』

『そお?まあ、幼女ちゃんが問題ないっていうなら問題ない……のかな、うーん』

幼女『私、おそくに帰ってもだれもいませんし』

『え?なにそれどういう……』

『……あ』

幼女『……』

『ご、ごめんね?なんか、そういうつもりじゃなかったんだけど、その、忘れてて』

幼女『いえ、平気ですよ。両親いなくてつらかったことなんていちどもないですし』

『親戚の家にいるんだっけ……?』

幼女『はい。でも家の人は仕事が忙しくてちょっと……まあ、いつも基本的にいないというか』

『そうだったか……だからこんなに私の家に来ても咎められなかったんだね』

『なんか……ごめん』

幼女『だから大丈夫ですよ』

『……そうか……』

幼女『さてと、そうじそうじ……』

『あのさ幼女ちゃん』

幼女『はい』

『あの……私の家に来ることが、なんていうか、幼女ちゃんにとっていいことだったりするのかな』

『ほら、私自分が助けてもらってるとばっかり思ってたから。けど、ひょっとしたら幼女ちゃんも……』

幼女『……』

『あ……ごめん、ちょっとデリカシーなかったかな』

幼女『……いえ、たしかに』

幼女『誰もいない家にいるよりかは、ここで、先生とお話してたほうが、いいです』

『……そっか』

『わかった』

『じゃあいっぱいお話しようか』ナデナデ

幼女『……はい』ニコ



『幼女ちゃーん、今日から二年生だねー』

幼女『そうですねー……』

『新一年生も入ってきて、もうお姉さんだねー』

幼女『それはどうでしょう』

『ってなことは学校でも話したけど』

『私も幼女ちゃんのお世話になり始めてから随分と経っちゃったね』

幼女『まあ、だいぶ経ちましたね』

『私ね、幼女ちゃんが来てくれる前は相当書くの遅かったんだ』

幼女『今もまあまあ遅いじゃなですか』

『あはは、でももっとひどかったよ、一年で一本書けるか書けないかみたいなとこあったもん』

幼女『そこまでですか』

『それがねー……幼女ちゃん来てくれるようになってから随分と早くなったよ』

『兼業ってなるとどうしてもあくせく働いちゃうからね、心にゆとりをもつって大事だと思ったよ』

『この前賞取れたのも、やっぱり幼女ちゃんのおかげかな』

幼女『先生、最近小説家の方の、お仕事の調子がいいみたいですね』

『そうだね、じわじわいろんなところから取り上げてもらえるようになってきて……』

『ようやく報われるのかな、私』

幼女『まだまだこれからじゃないですか?』

『わー、きびしー、幼女ちゃん』

幼女『ちょっと……寂しいです』

『え?』

幼女『なんでもないです、ご飯つくりますね』

『わーい、ありがとーぉ、あはは』



幼女『先生……』

『んー?』

幼女『あの、その……』

幼女『せ、先生やめるってホントですか?』

『……あー』

幼女『あ、教師の方の』

『なんで知ってんの?』

幼女『他の先生方が、おっしゃってました』

『そっかー、んー、卒業式まで秘密にするつもりだったんだけどなー』

幼女『やっぱり……そうだったんですか、専業になるんですね』

『そそ、小説家の方ね、ありがたいことに忙しくなってきて、専念したいって思ったの』

幼女『お、おめでとうございます先生、夢叶ったじゃないですか』

『いやー、まだまだ!これからって感じ?』

幼女『そうです、か……』

『うん』

幼女『まあ!私、先生と、学校で会えなくなるのは寂しいですけど、でも普段通り、来るのでそれで……』

『……出版社の近くのね?』

幼女『ぁ……』

『うん……ちょっと遠くに引っ越すことにしたんだ』

幼女『やっぱり……そうですか』

『そのほうが仕事やりやすいからね』

幼女『…………』

『……ごめんね』

幼女『いえ、そんな、私、先生の小説をいろんな人が読んでくれるなら、それでいいです』

『……』

幼女『先生が、小説家として成功するのが、一番いいことです』

『……』

幼女『です……』

幼女『…………』

『……ほんとにそう思ってる?』

幼女『思ってます』

『……そっか』

幼女『……』

『幼女ちゃん、今まで色々、ありが……』

幼女『せ、先生!』

『っ?』

幼女『私!先生の、先生が、』

幼女『先生のこと……!!』

『……』

幼女『……』

幼女『……ほ』

幼女『ほおっておけません!!』

『……え?』

幼女『だってだって!先生、今の状況!ご飯も洗濯も掃除も全部私に任せっきりじゃないですか!』

幼女『家事とか!ほとんど私がやってるじゃないですか!』

幼女『なのにいきなり先生!急にどっかよその遠いところに引っ越してどうなります?暮らしていけますか?
   私がやってること引っ越した瞬間全部やることになるんですよ?小説の仕事もやりながら』

『え、えっと』

幼女『無理です!ぜっっったい無理です!だって先生は堕落してますもん!私が堕落させましたもん!』

幼女『先生、私がいないとなにもできないじゃないですか!』

『……』

幼女『……』

『……そ、そういう問題?』

『あれ?私てっきり幼女ちゃんが離れ離れになるのを寂しがってるとばっかり……』

『も、もしかして私心配されてる?教え子に?自分の生徒に?』

幼女『それに……先生……私……』

幼女『まだ私……』

幼女『うっ……』ポロポロ

『幼女ちゃん……』

幼女『わかって……ないんですよ……なんで、先生のおせわしてるかとか』ポロポロ

幼女『なんで……先生なのか、とか……』ポロポロ

『……』

幼女『』ポロポロ

『』ナデナデ

幼女『っ……っ……』ポロポロ

『ごめんね、時々、会いに来るから』

幼女『』ポロポロ



幼女『もうすぐ卒業式ですね』ショッキアライ

『そうだねえ……早いもんだ』

幼女『……なんか、傘を返しに行った日が懐かしいですね』ゴシゴシ

『あー……あの時は幼女ちゃんとこんな関係になるなんて思ってもいなかったな』

幼女『雨、先生の風邪、散らかった部屋、どれが欠けても成り立たなかったでしょうね』

『よく覚えてるなー!そんなこと。そうそう、スーパーでばったりあったんだよね、懐かしい』

幼女『先生私、楽しかったですよ』

『やめてよー、湿っぽいなー』

幼女『でも、言っておきたかったんです』

『……』

幼女『……』フキフキ

幼女『』ジャー

『……』

『……来る?』

幼女『……?』

幼女『え?』

『私と一緒に来て、』

『助手になってよ』

幼女『……それは、どういう……』

『幼女ちゃんってさ、ほら、親戚の方の家にいるじゃん。でさ、忙しくて家にいないんでしょ?』

幼女『はい……』

『じゃあさ、私が引き取れないかな。だってさ、小説家って家にいること多いし、
 幼女ちゃんが家で一人でいる時間がなくなるに越したことはないでしょ?』

幼女『……』

『ちょっと学校とか、変わっちゃうかもしれないけど、でもそれなら私も幼女ちゃんにお世話してもらえるし』

『幼女ちゃん、前から私の助手っぽいなって思ってたんだよねー』

『ほら、先生の助手。いいでしょそれっぽくて。一緒に暮らせば今以上にサポートしてもらえるし』

『我が優秀なる助手に』

幼女『……』

『なんて……都合のいい話』

幼女『えっと……急な話で、家の人に聞いてみないとなんとも……』

『だよね、やっぱそっか……ごめんね、忘れて。ほのかな期待だったんだ。そうできないかなって』

幼女『……』

『要するに幼女ちゃんを助手にしたかったの。ちょっと自分勝手だね』

『あはは』

幼女『……』

幼女『私が……先生の……助手……』



幼女『……先生』

『ん、こんにちは幼女ちゃん』

幼女『ちゃんと、言われた時間に来ました。先生をお見送りできる時間』

『ありがと。やっぱりえらいなあ幼女ちゃんは』ナデナデ

幼女『ん……』

『引越しの準備、してもらってありがとうね』

幼女『いえ』

『最後まで幼女ちゃんにはお世話になりっぱなしだったな』

幼女『……』

『幼女ちゃんの言うように、私も一人でなんでもできるようにならなきゃ』

幼女『……もう、行くんですか』

『うん!行く時はきっぱり!幼女ちゃんにまたねって言えたら、私はもうここにやり残したことはないよ』

幼女『……あの』

『なに?』

幼女『助手になるっていう、件なんですけど……』

『お?もし助手になってくれるんだったら私はもう教師ではないから、小説家として先生と呼んでくれたまえよ』

幼女『どっちにしろ同じじゃないですか』

『はは、まあね』

幼女『一応……家の人に聞いてみたんですけど』

『うん』

幼女『いくら学校の先生でも、いきなり引取りとかは、ちょっと難しいって……』

『やっぱそっか……そうだよね、うん』

幼女『……』

『まあまた会いに来るよ。寂しそうな顔しないで』

幼女『……ごめんなさい』

『お見送りは笑顔で!』

幼女『……先生、頑張ってくださいね』

『あいよ!そんじゃちょっくらいってくるわ!』

幼女『……』

幼女(本当に、これでいいんだろうか……)

幼女(私と先生は、「私と先生」以外にはなれない……なれるはずもない……)

幼女(それでも私は……傘を返しに行ったあの日から、ずっと先生と一緒に……)

幼女(……なんで)

『』クルマガチャ

幼女(……)

幼女(やっぱり、私……)

幼女(先生と……!!)

幼女『…………!!!』

幼女『せっ………』









幼女「『先生』」













女「うん?」クルッ





ワイワイガヤガヤ……

幼女「……!」

女「どした?」

幼女「えっと……」

女「幼女ちゃーん、折角夏祭りに来てるんだから、欲しいものあったらいいなさーい」

幼女「じゃあその……りんご飴を……」

女「え、ほんとに欲しいものあったの?」

幼女「はい、まあ」

女「珍しくね?幼女ちゃんがそういうこと言うの」

幼女「だめですか?」

女「いやまあ!もちろん買ってあげますとも!まってろ」

女「おじさーん、これくださーい」

幼女「……」

幼女「先生が買い食いしすぎなんですよ」

女「なんでよー、来たんだもん、食わにゃそんだぜ?」

幼女「焼きそばたこ焼き唐揚げかき氷と、そんなにドカ食いする必要ないじゃないですか」

女「久しぶりだからね!テンション上がっちゃって。はいりんご飴」

幼女「ありがとうございます」

女「ところでなんでりんご飴なの?」

幼女「……昔食べた気がして」ペロペロ

女「その昔というのは……」

幼女「一回目の夏祭り。私の中で、ですけどね」

女「ふーん。そのときもりんご飴で舌赤くしてたのかな」

幼女「んべ」

女「んー、まだあんまり赤くないね、もうちょっと食べないと」

幼女「そうですか……」ペロペロ

女「赤くしたいの?」

幼女「いや、別に」

女「んー、遊び心がないなー幼女ちゃんは。まあいいや。次どこ行こっか」

幼女「そうですね……」

幼女「……」


幼女(りんご飴……昔を思い出す、味)

幼女(昔って……私、何してたのかな)

幼女(先生に会って……ううん、先生に会うよりもずっとずっと昔)

幼女(初めて来た夏祭りは……『誰』と、来たのか)

幼女(そんな過去の後で……今、私と先生は……)

幼女(私と、先生は……)

幼女(……)


子供「やだやだー!まだ帰りたくないー!射的もっとやるんだあー!」

親「いい加減にしないさい、もう散々やったでしょ!もう帰りますよ」

子供「いやだぁー!あの景品落とすんだー!帰りたくないー!」

親「駄々こねるなら一生ここにいなさい!」

子供「やだぁー!お母さんー!お母さんーー!」


幼女「……」

女「おーい!幼女ちゃーん!何見てんの?ねえ金魚すくいやろーよー!」

幼女「あっ、先生、もうそんな遠くに……待ってください!」

女「そっ、そこ、人が多いから気をつけて……」

幼女「え?」グラ

幼女「ひゃあっ!」バタッ

女「ああ!ちょっと!幼女ちゃん大丈夫?」タタタ

幼女「っ……あ、たっ……」

女「あぁー……綺麗に膝すりむいちゃったねー……」

幼女「痛い……です、はやく消毒しないと……」

女「そうだね」

幼女「先生、近くに水道とかありましたっけ……」

女「わっかんないなー……ここらへんあんまこないからね」

幼女「そうですか……困りましたね」

女「私が唾つけといてあげようか?」

幼女「結構です」

女「冗談よ冗談」

女「……一旦家戻る?」

幼女「家戻って、またここに帰ってくるんですか?」

女「だって幼女ちゃん血ぃでちゃってるし。そのままじゃお祭り楽しめんでしょ。どうにかしないと」

幼女「そうですけど……」

女「うん」

幼女「あの」

女「なに?」

幼女「先生がよければでいいんですけど……その、もう帰りませんか?」

女「え?んー……もうちょっとくらいいてもいと思うけどなー」

幼女「なんか……居心地悪くて。ここ。怪我もしちゃいましたし……」

女「でも幼女ちゃんあんまり食べてないでしょ?おなか減らない?」

幼女「それは大丈夫です。帰ることも、強制するわけじゃないんです」

女「そう?まあ……そうだね、この辺にしとくか。元々そんな長居するつもりじゃなかったし」

幼女「すいません」

女「いーのいーの。それより怪我の方なんとかしないとね、急いで帰ろ」

幼女「はい……よいっしょ」

女「あ、歩ける?大丈夫痛くない?」

幼女「平気です。家までなら」

女「ん、そっか、じゃあ帰ろー」

幼女「……」ズキ

幼女(あれ、思ったより痛い……)

幼女「……」

女「……?」

幼女(それに……居心地の悪さとか、前からの違和感とか、私、昔を思い出して……)

幼女(私は……なんで先生と……)


『私を見てって』

『言える?』

『私を見てって。』


幼女(……)

女「幼女ちゃん?」

幼女「……」

女「おーいどした?」

幼女「意外と痛いんです……足が」

女「ありゃ、ほんと?困ったね、どうしよ」

幼女「それで……その……」

女「?」

幼女「……」

幼女「……先生」

女「はい」

幼女「……」

幼女「だっこ……してください」

女「……え?」

幼女「……」

女「なんて?」

幼女「だからっ……」

幼女「だっこ、してください」

女「……」

幼女「足、痛いじゃないですか。私、歩けないじゃないですか。で、家まで帰らなきゃいけないじゃないですか」

幼女「だから……だっこ……って」

幼女「思って……」

幼女「……」

女「……」

幼女「……」

女「よい、しょっ!」

幼女「うわっ」

女「……っと、こんなかんじ?」

幼女「あ……はい」

女「ん、じゃあ帰ろうか」

幼女「……はい」

女「」スタスタ

幼女「……」ダッコ



帰り道

女「幼女ちゃん、大きくなったねー」

幼女「そうです、か?」

女「うん、一年生の頃と比べちゃうとほんと」

幼女「私、先生の膝におさまっちゃうくらい小さいですけど」

女「それでも大きくなったよ」

幼女「……」ギュッ

女「お祭り、楽しかった?」

幼女「……先生と行けるんだったら、どこでも楽しいですよ」

女「え、何それ嬉しい、ふふ」

幼女「……先生」

女「大丈夫?幼女ちゃん、居心地悪かったって」

幼女「ああ、その……なんでもないんです、ちょっと……」

女「どうかしたかな」

幼女「……先生は、昔のことどこまで覚えてますか」

女「んっと……どうだろうね」

幼女「私は……初めて行った夏祭りのことをよく覚えていなくて」

幼女「何とか、思い出そうとしたんですけど」

女「覚えておく必要ないんじゃなかったの」

幼女「確かに……そうですけど」

女「珍しいよね、やっぱり。幼女ちゃんがだっこだなんて」

女「寂しくなっちゃった?」

幼女「……」

女「なーんて。冗談冗談……」

幼女「はい」

女「……え?」

幼女「私……寂しいです」

幼女「多分寂しかったんだと思います」

幼女「先生に会う前からずっと……」

女「会う前って……」

幼女「私と先生の関係はスーパーでばったりであったことから始まりました。覚えてませんか?」

女「ん、そんな感じだった気もする」

幼女「……私は先生に寂しさを和らげてほしかったんでしょうか」

女「……」

幼女「そこだけわからなくて……私」

女「幼女ちゃん」

幼女「はい」

女「言ったでしょ?お祭りは理屈で来るもんじゃないって」

女「みんなそこに思い出を求めに来てるんだよ」

幼女「思い出……」

女「うん、だからさ、今日こうやってお祭りに来たことが、幼女ちゃんにとって思い出になれたかな」

幼女「……」

女「そうであるなら、私は良かったなって思う」

幼女「……」

女「……」


幼女「……先生にだっこされるの、きもちいです」

幼女「ずっと……だきまくらにされてきた、からなのか」

幼女「」ギュ

女「ん……」

幼女「先生……」

幼女「女、さん」

女「……」

幼女「私……女さんと一緒がいいです」

幼女「一緒に……いてくれますか」

女「……うん」

女「一緒にいようか」ナデナデ

幼女「……はい」ニコ

・・・


幼女「先生、もうこんな時間です」

女「ん……そうか、そろそろ寝よう」

幼女「先生、お祭りで遊んだ分明日は仕事頑張るんですよ?」

女「うへえー、やっぱそうなるかー」

幼女「そうです。ゆっくりしてられませんよ?」

女「やっぱり幼女ちゃんはしっかりしてるなー」

幼女「先生がフリーダムすぎるだけです」

女「ま!祭りの思い出は過去に落として、今日はもう就寝!キタマエ抱き枕」

幼女「抱き枕って呼ばないでください……」

女「我が優秀なる抱き枕」

幼女「先生は一体いつから私がいないと眠れなくなったでしょうか」

女「うーん……覚えてないね」

幼女「私も……思い出せません」

女「いいじゃないか、過去のことは覚えてなくても今現在は確かにここに存在しているのだから!」

幼女「でも暑いんですよ、たまには一人でも寝られるように努力しませんか」

女「つめてーなーオイ」

幼女「では私の分の布団を敷きますね」

女「え!?まじで!?まじでやるの!?」

幼女「冗談ですよ、今更そんなことしません」

女「びっくりしたー、焦ったじゃんもう」

幼女「ふふ、そうですか」

幼女「じゃあ、電気消しますね」

パチ

女「おいでー」

幼女「」モゾ

女「おおー、我が優秀なる枕よ」

幼女「枕になることも助手の仕事、ですかね」

女「今日も一緒に寝てくれて感謝であります!」

幼女「ホントは暑いんですよ?」

女「ははーっ」

幼女「もう」

幼女「ほんとに先生は、私がいないと何もできないんですから」ニコッ

女「そうだね、ふふ」ナデナデ

幼女「」ギュ

女「」ナデナデ

幼女「おやすみなさい、せんせ」

女「はい、おやすみなさい」












おわり

以上となります ここまで読んでくれた人ありがとうございました
百合かどうかは未定ですがまたスレ立てるので見かけたらよろしくお願いします

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