高槻やよい「とある放課後の、帰り道」 (15)
※やよいが高校生という設定になっております
そういうの苦手な方はブラウザバックでお願いします
それでは短いですが書きます
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カキーン──!!
「いったぞー!」
「はっ、はっ、はっ……──っ!!」
ズシャ──!!
「お、おい、大丈夫か!? マネージャー!」
────────
────
カァー カァー カァー…
「…………」
「……帰るか」
「……、……あれ」
「あっ──今、帰り?」
偶然、だった。
「塾は?」
「今日は面談があったから」
「そっか」
俺はいつも部活で帰るのは遅かったし、
受験を視野に入れてる生徒はみんながみんな塾に通っているような。
そんな、時期だったから。
「高槻はさ」
「んー」
「夢、とかあるか?」
放課後の帰り道。
肩を並べて歩く、俺と、もう一人。
「うーん、高槻はね……」
「いや、お前は誰なんだよ」
「高槻やよいですっ」
「おう……」
高槻、高槻やよい。
元アイドルで、今は普通の女子高生……だと思う。
「夢かぁ……うーん、何だろうね」
「……意外だな。てっきりなんか目標でもあんのかと思ってた」
「えー、なんで」
「だって……アイドルだった時、かなり売れてただろ」
「……」
「……なんだよ」
「けっこう、知っててくれてるんだ?」
「…………」
地元が同じだったと知った時は、驚いた。
高校に入って、クラスが同じになった時は本当におったまげた。
「ねぇ、ねぇ」
「…………ファン、だったし」
「うれしーなー」
「……」
野球が好きらしく、時々練習を観に来たりして。
いつしか、彼女と話せる仲になった。
「……だからさ。なんで、あんなに早く辞めちまったのかなって」
「……」
「……なぁ」
「夢、追いかけられなくなっちゃったんだ」
だけど、学年が上がるにつれて互いに忙しくなり。
二人でこうして話すのも、久しぶりだったりして。
久々の会話がなかなか重くなってしまったのは、
まあ、何というか。
本当に久々だったから、気まずくて、だから。
ただの話題作り、だったんだけど……
「ずっと、アイドルとしてやっていくんだって、
私も思ってたんだけどね」
「ある日突然、分からなくなったの。
『私は何がやりたいのか』が、見えなくなっちゃった」
「だから私、アイドルを辞めたんだ」
「…………」
高槻の話を聞いていて。
アイドルの頃のイメージと全然違うと、俺は思った。
明るくて、失礼だが悩みなんてなさそうな子だと思っていた。
その性格だということを前提に、俺は彼女と接していて。
だから、こういう一面を見るのは、初めてで。
「理由は分からない。けど……
今の私じゃ、答えを見つけることは、多分出来ない」
「それだけは、分かる」
「……だから、進学するのか」
「うんっ。まあね」
気まずいながらに、こういう話をしたけど。
高槻も高槻なりに、考えてるんだな。
見つからない答えを求めて。
それでも前に進もうとしている、高槻の姿勢に、俺は。
「きっと、見つけられるよ。高槻なら」
確証も何もない、無責任な返答をしてしまう。
根拠なんて欠片も存在しないけど、
見つけてほしいという気持ちだけは、伝えたかったから。
「……えへへ、ありがとう」
「お、おう……」
「……」
「……」
「……あ、あー! それよりも、脚は大丈夫?」
「えっ? ああ、これか……」
「ずっと気になってたんだけど……」
話が、俺の右脚に移る。
心配そうに目線を下ろしている高槻に対し、
罪悪感を覚える。
「大した怪我じゃないんだ、実は」
「え、そうなの?」
「これを機に俺、引退しようとしてた」
「ふぇっ!? な、なんで!?」
「反応濃いなぁ……」
何故か──理由は、高槻と似ている。
部活の中での俺の立場が、分からなくなった。
そこまで抜けた才能もなく、
チームにそれなりにしか貢献出来ていない俺は。
このまま、野球を続ける必要があるのかと思うようになって。
でも──
「でも、やっぱりやめた。辞めることを、やめたよ」
「あっ、そうなんだ……よかったぁ」
「……──の、おかげだ」
彼女の話を聞いて、もう少しだけ頑張ってみようと思えたから。
どんな選択をするか、時間を掛けてゆっくりと探してみて。
答えを出すのは、それからでも遅くはないと思えた。
なんだかんだで、やっぱり野球が、好きだから。
それに……
「えっ?」
「いや、なんでもない」
「えー」
これはおまけだけど、まあ……
ちょっと、カッコいいところも、見せたいし……
「……」
「ねぇ、なんて言ったの~?」
「おい、ちょ、転ぶからやめろって!」
とある放課後の、帰り道。俺と、もう一人の少女。
互いに見えない、この先の未来。
まっすぐに、道は続いている。
終わり
めちゃくちゃ早くに終わってしまった
こんな青春送ってみたかった乙!
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