中川「先輩、声が大きいですよ」キ~ン
両津「それは本当なんだろうな中川!?」
中川「ええ。コンピューター将棋の振興のために、将棋ソフトの『ポナンザ』と
一般の人との対局イベントが行われるんです。それに勝った人へ賞金300万円が贈られるみたいですね」
両津「将棋に勝つだけでか。ずい分と太っ腹な話だな」
中川「きっと、負けない自信があるんでしょうね。コンピューターは強いですから」
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両津「う~む、300万か・・・。これは欲しかった昭和ゴジラの放出お宝レアグッズが買えるぞ・・・」
麗子「両ちゃん、もしかして出場する気なの?」
両津「なぁに、ワシはこう見えても将棋にはそこそこ自信がある。賞金300万はもらったも同然だ!」
中川「そんなに簡単には行かないと思いますよ。何でもポナンザはプロ並の実力があるとか・・・」
両津「なに!そんなに強いのか?」
麗子「プロに混ざっても十分やっていけるぐらいの強さらしいわね」
中川「アマチュアだとまず勝てないだろうね」
両津「そんなにか・・・。ま、まぁしょせんは機械。計算できないような予想外の手を指せば
勝負になるだろ。ワシの得意分野だ」
麗子「両ちゃんも計算できないものね」
両津「こら麗子!言ってくれたな!」
中川「まぁまぁ先輩、出場するつもりなら練習に丁度いいソフトがあります。
インターネットで無料でダウンロードできる『ボナンザ』という将棋ソフトなんですが」
両津「『ボ』ナンザだと?『ポ』ナンザとはちがうのか?」
中川「『ボ』ナンザはコンピューター将棋に革新をもたらしたソフトで、今ある数々の強豪ソフトは
大体これがベースになっています。今の将棋ソフトがプロと張り合えるくらい強くなったのも
『ボ』ナンザがあったからこそと言えるかも知れませんね」
両津「そんなにすごいソフトなのか」
中川「世界コンピューター将棋大会に出た時は、初出場ながら優勝しています」
両津「ほう。相手にとって不足はないな」
中川「そして、『ポ』ナンザを開発された方が、革新的将棋ソフトだった『ボ』ナンザに対し
敬意を表して『ポ』ナンザという名前にしたそうなんです」
両津「うーむ、ややこしいな。まぁ、さっそく署のパソコンにそのボナンザとやらを入れて、
実力を試してみるか」
~2時間後~
両津「ダメだぁ、まったく歯が立たん!強すぎるよこのソフト・・・」
中川「『ボナンザ』はアマチュア3~5段の力がありますからね。『ポナンザ』の方はもっと強いですよ」
両津「本当にこれに勝てるヤツはいるのか?」
中川「プロの方なら勝ち越すそうですね。アマチュアの方でも特に高段者なら勝てるとか」
両津「うーむ、何か必勝法はないものか・・・」
中川「スキを作ってわざと角を打たせ、それをとってしまうという戦法が有名だそうですが・・・」
両津「うむ、しかし角1枚もらったくらいのハンデだとワシの腕では少々厳しいな・・・。
しかもポナンザの方では対策されている可能性もある」
中川「ええ、その可能性は高いでしょうね」
両津「あーあ、これじゃあ300万は難しいな・・・くそっ」
麗子「さすがの両ちゃんも、今回ばかりはお手あげみたいね」
中川「こういう計算の必要なゲームに関しては、コンピューターの独壇場だからね」
麗子「ええ。分野は違うけれど、チェスの世界チャンピオンも何年か前にコンピューターに敗れたわね」
中川「あと、最近だと囲碁の世界ランカーも敗れたってニュースになったよね」
両津「・・・その内に、ワシらの仕事もコンピューターにとって代わられたりしてな」
部長「その前に、お前は他人にとって代わられる事を心配したほうがいいぞ両津」
両津「げっ、部長!」
部長「仕事もせずに将棋ゲームとは、いいご身分だな両津」
両津「違うんです、これはハイテク犯罪に対抗するためにコンピューターの勉強を・・・」
部長「嘘をつくな!これはどう見てもボナンザだろうが」
両津「え?部長はこれを知ってるんですか?」
部長「あたり前だ。数年前から何回かニュースになってただろう。プロ棋士とも対戦してたしな」
両津「さすが部長、将棋の事は詳しい」
部長「それで、仕事中に将棋ゲームで遊んでいたわけを説明してもらおうか?」
両津「うっ、そ、それは・・・」
中川「部長、実は・・・」
両津「あっ、こら中川!」
ーーーー
ーーー
ーー
部長「なんだ、賞金目当てにポナンザに勝負を挑もうと思ってたのか」
両津「くそ、中川の奴・・・」
部長「両津、お前なんかが勝てるわけがないだろう。お前の脳みそじゃ100パーセント無理だ」
両津「あっ、部長、言いましたね!」
部長「小学校の計算も間違うような奴に勝てるわけがないだろう。
この前の報告書、計算間違いだらけだったぞ」
両津「そ、それとこれとは関係ないでしょう。もしかしたら勝つかも知れませんよ?」
部長「お前のようなバカが、プロも苦戦するようなソフトに絶対勝てるわけがないだろう。
約束してやる。万が一、お前が勝ったらホッキョクグマとダンスを踊ってやろう」
両津「部長、いいんですかそんな事言って?」
部長「ああ、構わん。お前のようなバカががポナンザに勝つ事なぞ
天地がひっくり返ってもないからな」
両津「く、くそ~・・・」
~その日の夜~
両津「部長め、さんざんワシのことをバカにしおって・・・見てろ、ギャフンと言わせてやる」
両津「とは言ったものの、ワシの腕前じゃとうてい勝つ見込みもない・・・」
両津「少し、ネットで情報を集めて見るか」カタカタ
両津「・・・ふーん、コンピューター将棋にも色々種類があるんだな。
初心者向けから上級者向けまで・・・」
両津「・・・これは使えるかも知れん」
~数日後~
挑戦者「・・・うーん、参りました」
司会「おーっと、ここでアマ有段者の津宵(つよい)さん投了です。いかがでしたか?」
挑戦者「いやー、強すぎますね。僕の完敗です」
司会「これでポナンザの通算99連勝ですね。いかがでしょう解説の将棋評論家、
漆高(しったか)さん」
漆高「うむ!ポナンザの人間にはとても思いつかない指しまわし、実に見事な将棋だった」
..16
アマ6段だそうです・・・
司会「ありがとうございます。さて、次の挑戦者は警察官の両津勘吉さんですね。
意気込みをどうぞ」
両津「ワシの駒たちの躍動する将棋、ぜひ見てもらいたい。あと部長、見てますか?
勝ったら約束守ってもらいますからね」
司会「ありがとうございました。それでは、張り切ってどうぞ」
~派出所~
麗子「ねぇ見て、両ちゃんがネット配信に出てる」
中川「今日ポナンザと勝負するからネット中継見てろって言ってましたけど、
まさか本当に出場するとは・・・」
部長「あのバカ、正気なのか?」
安価を覚えよう
~会場~
両津(昨日、知り合いのハッカーに頼んで会場のコンピューターに『ハム将棋』を仕込んでおいた)
両津(こっそりスマホで遠隔操作して・・・これでプログラムの中身がハム将棋にすり替わったはず・・・)
司会「さて、ポナンザの通算100連勝なるでしょうか?注目の一戦です」
>>21
ミスりました、ごめんなさい・・・
(10分後)
司会「・・・おや?ポナンザのこの手は一見金がただでとられてしまうように見えますが・・・
いかがでしょう漆高さん?」
漆高「うむ!これは人間は怖くてなかなか指せない手、素晴らしい!」
司会「ありがとうございました。・・・おや?次の手はこれはポナンザに
簡単に王手飛車がかかってしまいますが・・・」
漆高「これも素晴らしい!さすがポナンザ、この手は人間にはとても思いつかない!」
(さらに10分後)
司会「・・・これはポナンザ、完全に詰んでいませんか?」
漆高「うーむ、我々人間には詰んでいるようにしか見えないが、きっとここから
恐るべき大逆転の手が・・・。さすがはポナンザ、恐ろしい・・・」ゴクリ
司会「あ。とうとう玉が取られてしまいました。これは・・・」
漆高「ぎょ、玉を捨てて攻撃に転じたんだ!きっと!これは人間には絶対に指せない手!」
司会「参りました、と画面に出てますが・・・」
漆高「・・・」
~派出所~
麗子「両ちゃん、勝っちゃったわよ?」
部長「うーむ、とても信じられん・・・」
中川「何かポナンザの動きがおかしかった気がしますが・・・」
~会場~
司会「おめでとうございます両津さん!見事にポナンザを倒しましたね。
実にすばらしい」
両津「ははは!いやぁどうも!楽勝でしたね!」
司会「見事勝利した両津さんには。賞金300万円が贈られます!」
両津「いえ~い、部長、見てますか?私より将棋の弱い部長!勝ちましたよ!
約束通り、ホッキョクグマとダンス踊ってもらいますからね!」
~派出所~
部長「くそ、あいつめ調子に乗りおって・・・」プルプリ
中川「それより、先輩の事ですから本当にやらされかねませんよ」
麗子「ええ、あの両ちゃんの事だから・・・」
~会場~
司会「ところで、ポナンザに勝利するためのコツは何でしょうか?」
両津「やはり、一言でいえば作戦ですね。
今まで誰も試した事のないような作戦で挑みました」
司会「具体的にはどういった作戦ですか?」
両津「それは企業秘密だから教えられんな。まぁ、教えたところで
ワシぐらいの実力がないと実行できない作戦だから意味はないしな」がはは
司会「そうなんですか。ありがとうございました」
司会「いやぁ、それにしても本当にお見事でした。それでは賞金の300万円を・・・」
技術者「ちょっと・・・」
司会「ん?」
司会「なになに・・・?プログラムが書きかえられた跡が・・・?」
技術者「ええ、中身がハム将棋になってて・・・」
両津(・・・。ヤバい・・・)
両津「そ、それじゃあワシは忙しいからこの辺で!」ダッ
司会「あっ、逃げた!」
技術者「捕まえろ!」
~派出所~
ドタドタワーワー・・・ ハナセーワシハムジツダー・・・
中川「・・・やはり、何かインチキをしていたようですね」
麗子「どうりで・・・。変だと思ったわ」
部長「警察官の恥さらしめ・・・」ピクピク
中身がハム将棋になってたらさすがにバレるかと・・・
~翌日、動物園のオリの前~
部長「ほら、ホッキョクグマの花子ちゃんだ。しっかりとダンスを踊るんだぞ」
両津「そんなのできるわけないじゃないですかぁ~。食べられちゃいますよ~」ガチャガチャ
中川「逆に自分でやらされるハメになるとは・・・」
麗子「本当に哀れね」
両津「勘弁してくださいよ、ぶちょお~・・・」
終わり
以上です。
読んでくれた方、コメントくれた方ありがとうございました。
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