眼鏡男「超音波洗浄機が大好き!」 (16)
眼鏡男「僕さ、超音波洗浄機が大好きなんだよね」
眼鏡女「超音波洗浄機って、よく眼鏡屋さんの店先とかにあるアレ?」
眼鏡男「そうそうアレ!」
眼鏡男「外でアレを見かけるたびに、絶対洗浄しちゃうもん」
眼鏡女「ふーん、どうしてそんなに好きなの?」
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眼鏡男「一つ目は、単純に眼鏡をキレイにできるから!」
眼鏡男「あれで洗うと薄汚れてたレンズもピッカピカになるし」
眼鏡男「鼻あてにくっついてた脂みたいなやつもシュワァ~って取れるし」
眼鏡女「一つ目ってことは、もしかして二つ目があるの?」
眼鏡男「ああ、むしろ二つ目の方が重要さ」
眼鏡男「眼鏡のレンズ部分を水につけて超音波でシュワシュワさせる」
眼鏡男「水から出した後、普通の水でもう一度ゆすいで、水滴を拭き取る」
眼鏡男「この一連の作業がさー……なんかいいんだよな。そそられるんだよな」
眼鏡男「なんていうか怪しげな実験でも行ってる気分になれて、さ」
眼鏡男「分かるだろ?」
眼鏡女「よく分からないわ」
眼鏡男「女には分からないか……こういう男のロマンは」
眼鏡男「さっきから全然食いついてこないけど、君はあの洗浄機に興味ないの?」
眼鏡女「私はそもそも眼鏡にそこまで汚れがつかないから」
眼鏡男「まるで僕の眼鏡の使い方が乱暴だ、とでも言いたげだな」
眼鏡女「言いたげ、じゃなくそう言ってるつもりだけど」
眼鏡男「うぐぅ……」
眼鏡男「それはさておき、あの洗浄機が店の外にある眼鏡屋って意外と少ないんだよな」
眼鏡男「店の中に置いてあることも結構多いんだ」
眼鏡女「だったら、中に入って使わせてもらえばいいじゃない」
眼鏡男「何も買うつもりがないのに、洗浄のためだけに眼鏡屋に入るのはちょっと」
眼鏡女「気が引けちゃうか。まあ、気持ちは分かるけどね」
眼鏡男「ちょっと洗浄したいなって日に限って、いい店が見つからなかったりするんだ」
眼鏡男「あーあ……いつでもあの洗浄機を使えたらなぁ」
眼鏡女「だったらさ、いっそ買っちゃえば?」
眼鏡男「ええっ!? だけどアレって多分10万ぐらいするだろ!?」
眼鏡女「いえ……今スマホで調べたら、物にもよるけど数千円で買えるみたいよ」
眼鏡男「数千円……!」
眼鏡男「……ちょっと考えてみる」
数日後――
眼鏡男「ジャーン、買っちゃった!」
眼鏡女「あら、買ったんだ」
眼鏡男「これからはこいつで、ジャンジャン眼鏡を洗いまくるぞ!」
眼鏡女「あまりやりすぎるとレンズやフレームがダメになるらしいから、気をつけてね」
眼鏡男「分かってるさ、大丈夫、大丈夫!」
それからしばらくして――
眼鏡男「……」
眼鏡女「どうしたの? ずいぶんブルーな顔してるけど」
眼鏡女「もしかして、洗浄しすぎて眼鏡がおかしくなっちゃった?」
眼鏡男「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
眼鏡男「最近、超音波洗浄やってても、ちっとも楽しくなくなってきちゃったんだよね」
眼鏡男「なんでだろ、これ?」
眼鏡女「よく考えてみたら、そりゃそうかもしれないわね」
眼鏡男「どうして?」
眼鏡女「今まであなたは出先でたまに見かける超音波洗浄機を使ってたわけだけど」
眼鏡女「それが洗浄機を購入したことで、いつでも洗浄ができるようになってしまった」
眼鏡女「つまり“特別感”のようなものがなくなっちゃったってわけ」
眼鏡男「特別感……」
眼鏡女「たとえば、旅先だと安いコンビニ弁当でも妙においしく感じたりするじゃない?」
眼鏡男「あるある!」
眼鏡女「なんでおいしいかっていうと、多分旅をしているという特殊な状況や高揚感が」
眼鏡女「弁当のおいしさを引き立ててるからだと思うんだけど……」
眼鏡女「今回の件もそれと似たようなものね」
眼鏡女「あなたは外でたまにやる超音波洗浄が楽しかったのであって」
眼鏡女「それがいつでもできるようになると、魅力を感じなくなってしまったのよ」
眼鏡男「そういうことだったのか……」
眼鏡男「僕は自分の手で、超音波洗浄機の楽しさを失わせる道を歩んでしまったのか……」
眼鏡男「また昔みたいにワクワクしながら洗浄するにはどうしたらいいんだ……!」
眼鏡女「ねえ、だったら私がもらってあげようか? 超音波洗浄機」
眼鏡男「え、いいのかい? もらってくれるのかい?」
眼鏡女「うん、元はといえば私があなたに購入を勧めたんだしね」
眼鏡男「よかった! ありがとう!」
眼鏡男「これでまた眼鏡屋の店頭でワクワクしながら眼鏡を洗浄できるよ!」
眼鏡女「……」
眼鏡女「計画通り」クイッ
おわり
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