一夏「アイエスクンポケット」(22)

 俺の名前は織斑一夏。決してパワポケとか名付け親の顔を見てみたいレベルのDQNネームじゃない。
 ちょっとした事情で両親がいないだけのどこにでもいる高校受験生だ。

「織斑君、早く受験会場に行くでやんす!」

 彼の名前は場田。よくプロ野球選手だった湯田と間違えられるけど、『湯田』じゃなくて『場田』だ。やんす口調に眼鏡が特徴の俺の友人だ。

「あぁ、そうだな。早速試験会場へ…(ゴロゴロ)う…!」
「? どうしたでやんす?」
「お、お腹の調子が…。昨日からどうも……」
「とっとと行ってくるでやんす!」
「うん…」


 …………

一夏「ふう、スッキリした。我ながら緊張してるのかな、やっぱり」

 『下痢』が治った!

一夏「それにしても……随分広いな、この会場。しかも機能性じゃなくて見た目重視なのか変なところも多いし……っていうか、受験会場どこだよ!?」

 …………

一夏「お、ここかな? すいません」
女性「あら、あなたも受験生? なら、急いで着替えてちょうだいもうすぐ始まるわよ」
一夏「はい、すみません」

 (スタスタ……)

女性「それにしてもあの子、なんで受験なのに野球のユニフォームなんか着ているのかしら?」

 …………

一夏「えーとここで着替えるのか……って、なんで着替えるんだ? カンニング対策か何かかな?」

 (キョロキョロ)

一夏「あれ、これって……IS、か? ……って、ここってもしかしてIS学園の受験会場!?」

 (ガガーン!)

一夏「IS(アイエス)と藍越(あいえつ)って確かにパッと聞いた感じじゃ聞き分けられないけど…にしたってさっきの人、俺は男だって一目でわかるだろうに……。それにしても、ISか。男には起動できない、特殊パワードスーツ。まぁ、俺なんかが触っても起動なんかしない……」

 (キィン!)

一夏「え? (カッ!)わぁっ!!?」

 (ガラリ!)

女性「ちょっと、一体何をして……え?」
一夏「……(ボーゼン)」
女性「男が、ISを起動した!?」

 それからはとても受験どころではなかった。俺が家に帰れたのは夜のことだった。

 やる気が2下がった!

 第一章『IS学園』

一夏「ここがIS学園。島の上に建てられたIS専用の学校か。元々は別の高校があったけど、その高校が閉校して新たに建てられたのがIS学園……」
??「おい一夏。早くしろ、入学式が始まるぞ」
一夏「あ、千冬姉」

 (バシッ)

千冬「ここでは織斑先生、だ。公私をわきまえろ」
一夏「うん…いや、はい」

一夏「(この人は織斑千冬。俺の姉さんだ。このIS学園で教師をしているらしい。…俺、千冬姉が教員免許持ってるって聞いたことないんだけど……)」
千冬「何か思ったか?」
一夏「いえ、なにも(勘が良すぎだろ)」

 …………

一夏「織斑一夏です。よろしくお願いします」

 (パチパチパチ)

真耶「はい、これで全員ですね。改めまして、私は山田真耶です。上から読んでも下から読んでも『やまだまや』ですよ」

 (シーン…)

真耶「あ、あれ……?」

一夏「(滑った……)」

 ガラリ

千冬「すまない山田君。HRをやってもらって助かった」

真耶「あ、織斑先生。もう職員会議は終わったんですか?」

千冬「うむ。さて、諸君。織斑千冬だ。ここでの私の役割はお前たちを一人前にすることだ。私の言葉には『はい』か『Yes』で応えろ」

 (ざわざわ…)

千冬「静かにしろ! それではこれでHRを終わりとする。十分の休憩のあと、授業に入る」

…………
(昼休み)

一夏「ふぅ。どの授業も初めてなものだらけだからかなり疲れたな」

??「おい」

一夏「……? えーと……」

??「ちょっと屋上までいいか?」

一夏「えーと……」

A:行く

B:行かない

≫10

>>10は遠いような・・・

>>7
それじゃあ、≫9で

A:行く

一夏「あぁ、分かった」

 …………

??「……久しぶりだな、一夏」

一夏「あぁ、久しぶりだな箒」

一夏「(彼女の名前は篠ノ之箒。俺の小学校時代のクラスメイト。……というより幼馴染、かな?)」

箒「あぁ。それにしても驚いたぞ。お前がISを動かすとはな」

一夏「ははは、千冬姉にも同じことを言われたよ」

箒「そうか、千冬さんも…」

一夏「それはそうと、要件は何だ?」

箒「え? ……あー、その…」

一夏「?(ぐー…)なぁ、急ぎじゃなきゃ後ででいいか? 腹減ってるんだ、俺」

箒「あ……そう、だな」

一夏「よし、それじゃあ一緒に食おうぜ」

箒「…! あぁ!」

 箒と出会った! 
 箒の好感度が3上がった!

 今日はここまでです。また明日同じ時間ぐらいに来ます。

 …………

(帰りのHR)

一夏「(ふぅ。ようやく放課後か。それにしても入学初日から授業があるなんてな)」

千冬「さて、それではこのクラスの代表を決めたいと思う。自薦、他薦は問わん」

女子「はい、織斑君が良いと思います」

女子「はい、ワタシも」

女子(?)「ほるひすだよ。推薦もするけどヒットも打つよ」

一夏「なんか今、変なのいなかったか…」

 (ざわざわ…)

??「待ってください、納得いきませんわ!」

一夏「(誰だあの子…?)」

セシリア「クラスの代表に、唯一の男子などと言う理由で男を選ぶなんて正気を疑いますわ。代表としてふさわしいのはこの、セシリア・オルコットですわ!」

 (ざわざわ…)

千冬「ならばオルコット。自薦という事でいいのだな?」

セシリア「もちろんですわ。この私こそ相応しいのですから」

一夏「その割には誰も推薦しなかったよな…」

セシリア「あなた何か言いまして!?」

一夏「(地獄耳かよ…)いや、誰も推薦してなかったと思ってね」

セシリア「キー! バカにしてますの!?」

一夏「(どうすりゃバカにしてるって捉えられるんだよ…)」

セシリア「決闘ですわ! どちらがクラスの代表にふさわしいのか、白黒つけようではありませんか!」

千冬「ふむ。どちらにせよ、二人立候補者がいる以上何かしらの方法で決めなければならない。丁度いい。では一週間後、試合を行ってどちらが代表になるかを決めるとしよう。では、本日は以上だ」

一夏「(なんか、俺。置いてきぼりな感じがする…)」

 体力が20下がった。
 精神が10上がった。

 放課後。

一夏「なんかとんとん拍子で事が進んでいる気がするな……」

真耶「あぁ、織斑君。よかった、まだいてくれましたね」

一夏「山田先生? あの、どうかしましたか?」

真耶「はい、実は織斑君の部屋の準備が出来ましたので、カギを渡しに来たんです」

一夏「え? 俺、一週間は家から通うように言われたんですけど……」

真耶「え? 話を聞いてないんですか?」

一夏「えぇ……」

千冬「なんだ、まだここにいるのか?」

一夏「あれ? 千冬姉」

(バシッ!)

千冬「織斑先生、だ。公私は分けろと言っただろう」

一夏「はい……」

千冬「それはそうとさっさと部屋に行け。荷物は私が纏めておいてやった」

(ポイッ)

一夏「はい……」


 …………

一夏「ここが俺の部屋か……」

(キョロキョロ)

一夏「結構いい部屋だな。二人部屋っぽいけどどうせ俺一人だからなぁ…」

(ガチャ)

箒「すまない、同室の者か?」


一夏「え?」

箒「え?」

一夏「(箒……? なんで? そしてなんでバスタオル一枚の状態? それにしても箒、胸でかいなぁ…)」

箒「……っ」

(チャキ)

一夏「え、木刀……?」

箒「不埒なぁ!!」

一夏「ぎゃああああーーー!!?」


体力が70下がった。

筋力が10下がった。

精神が10上がった。

『ムラッ気』が身についた。

 (一週間後)

一夏「うーん……」

千冬「どうした一夏?」

一夏「あ、千冬姉。実は、1週間があっという間に過ぎてるような気がするんだ」

千冬「昔から光陰矢の如しというからな。それに、このSSでは一回行動すれば1週自動で過ぎる」

一夏「え……? SS? 一回行動? あの、千冬姉? 何言ってるの?」

千冬「だから、行動を起こすときは体力やタフ度など、様々な要素を考えてから行動しろよ」

一夏「体力…? タフ度…? 千冬姉、本当に意味が…」

千冬「そら、もう朝だぞ。分かったらさっさと起きろ!」

一夏「え?」

 (チュドーン!)

 
 (ガバッ!)

一夏「は!? …………ゆ、夢か。なんだか随分具体的な夢だったな……」

(第二グラウンド)

一夏「ついにオルコットと試合か……」

千冬「一夏。分かっているとは思うが、念のため『IS野球』のおさらいをしておくぞ」

一夏「うん」

千冬「『IS野球』は文字通り、ISを使って行う野球の事だ。本来なら実際の野球と同じく9イニングまであるが、今回は時間の関係で5イニングまでだ。そして、今回は1対1で行われる」

一夏「で、そうなる場合、自分のポジション以外はCPUで動く無人ISが動くんだよな?」

千冬「そうだ。無論、CPUの動きやプレイが不安だという場合は、自分で操作してもいい。ISに搭載されているハイパーセンサーとコアネットワークを使って動かしたいCPUに視覚が繋がる。もっとも、視覚と操作を移す際は若干のラグが発生するから気をつけろよ」

一夏「大丈夫だ」

一夏「それにしても遅いな山田先生。俺の専用機を持ってくるって言ってたけど」

(ガチャ)

真耶「はぁ、はぁ……お待たせしました織斑君。専用機が届きましたよ!」

(ガシュン……)

一夏「白い装甲だな」

真耶「はい。それにちなんで名前は白式です!」

一夏「白式…」

千冬「織斑。時間が無いからそのまま装着しろ。フィッティングは試合を行いながらするんだ」

一夏「はい!」

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