ダイヤ「そ、それは一体どういう意味ですの?」
花丸「? オラはただお月様が綺麗だなーって」キョトン
ダイヤ「そ、そうよね。本当に月が綺麗ね、満月かしら?」
花丸「なんだか変なダイヤちゃん」クスクス
ダイヤ(そうよね、有名な話ではあるけど全員が全員あの話を知っているわけではないですし、何よりわたくしとマルちゃんは女同士ですわ)
ダイヤ「今度お月見でもしますか? ルビィも誘って」
花丸「お月見! したいずら!」
ダイヤ「ふふ、それでは次の満月の日に。次は一体いつかしら」
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花丸「あ、でも」
ダイヤ「でも?」
花丸「ルビィちゃんと3人っていうのも楽しそうだけど――」
ダイヤ「? あぁ、Aqoursの9人で?」
花丸「じゃなくて、逆で……」
ダイヤ「逆、ですか?」ハテ
花丸「ダイヤちゃんと2人がいいなーなんて、マルは思ったり」エヘヘ
ダイヤ「っ!」ドキッ
花丸「ダメ、かな?」ウワメ
ダイヤ「い、いえ。たまには2人きりというのもいいかもしれませんわね」
花丸「わぁい! やったずら!」ピョンピョン
ダイヤ「では、次の満月の日を調べて」
花丸「今日じゃ、ダメなの?」
ダイヤ「なんの準備もしていませんし、今日は厳しいかと」
花丸「コンビニで何か買って、ベンチに座りながら2人でお話するだけでも、マルは嬉しいずら」ニコッ
ダイヤ「……そうですわね、思い立ったが吉日とも言いますし」
ダイヤ「次の満月の日では1ヶ月後ですものね」
花丸「うん!」
花丸「えへへぇ、ダイヤちゃんとお月見ぃ」ギュッ
ダイヤ「……その、マルちゃん?」
花丸「なぁに? ダイヤちゃん?」
ダイヤ「腕に抱き付かれていると歩きづらいというか……」
花丸「嫌だった?」ウルウル
ダイヤ「いえ! 決してそういうわけでは!」アセアセ
ダイヤ「ただ少し、すこーしだけ歩きづらかっただけですので!」
花丸「そっかぁ、歩きづらいんじゃ仕方ないずら……」スッ
ダイヤ「あっ……」
花丸「でも、こうすれば、歩きづらくないよね?」ギュッ
ダイヤ「手を? そうですわね、腕に抱き付かれるよりはずっと歩きやすいですわ」
花丸「それに、こうして」カラメッ
ダイヤ「指を絡めるのですか!?」ドキドキ
花丸「えへへぇ、こうしてるとダイヤちゃんの温もりが伝わってきて、心がぽかぽかしてくるんだぁ」ポワポワ
ダイヤ「そ、そうですわねー」
ダイヤ(落ち着くのよ、ダイヤ。相手はマルちゃんですわ)
ダイヤ(いくらこれが俗に恋人繋ぎと言われているものでも、マルちゃんにそんな気持ちは一切なくて……っ!)
花丸「――ヤちゃん」
ダイヤ(落ち着きなさい、ダイヤ。相手はマルちゃん。殿方ではなくマルちゃん)
花丸「ねえ、ダイヤちゃん!」
ダイヤ(女同士、つまりこの恋人繋ぎはノーカウントですわ……!)
花丸「ねえってば、ダイヤちゃん!」
ダイヤ「っ! な、何かしら、マルちゃん」
花丸「コンビニついたよ?」
ダイヤ「い、いつの間に!」
花丸「手をつないでからなんだかダイヤちゃん空返事で、心ここにあらずーって感じだったずら」
花丸「マルと歩くのつまらなかった……?」ウルウル
ダイヤ「っ! そんなことありませんわ!」
ダイヤ「ただ、その――」
花丸「その?」
ダイヤ「この手のつなぎ方が恥ずかしくて」カアアアアアアア
花丸「え、恥ずかしい繋ぎ方だったずら!?」
ダイヤ「その、俗に恋人繋ぎ、などと呼ばれている繋ぎ方で」
花丸「恋人繋ぎ!?」
花丸「そっ、それは、申し訳ないずら」
花丸「オラと恋人だなんて思われたら、恥ずかしいよね……?」
ダイヤ「そうではなくて、わたくしが女同士だというのに恋人繋ぎというものを意識してしまって」
ダイヤ「ですからマルちゃんと一緒にいるのがつまらなかったとか、恋人と思われるのが恥ずかしかったとかではなく!」アセアセ
花丸「そ、そっかぁ。よかったぁ」ニコニコ
花丸「何買おっか」
ダイヤ「そうですわね、やはりお月見と言えば――」
ダイマル「「お団子!」」
ダイヤ「ですわよね」
花丸「ずら!」
花丸「じゃあマルはあんこ!」
ダイヤ「ではわたくしは三色団子に――」ハッ
花丸「? ダイヤちゃん?」
ダイヤ「い、いえなんでもありませんわ」
ダイヤ「……」ジッ
花丸「? あっ! 抹茶プリン!」
ダイヤ「お月見と言えばお団子……」グヌヌ
花丸「あ、でも。プリンもいいかもしれないずら」
花丸「ほら、プリンって上から見たらお月様みたいだし!」
ダイヤ「なるほど! 月見団子ならぬ月見プリンですね!」
花丸「そうずら!」
花丸「それに、2人で全く違うものを買えば2倍楽しいずら!」
ダイヤ「では、わたくしは抹茶プリンにしますね」ニコニコ
花丸「うんっ!」
――――
――
―
ダイヤ「はあ、本当に月が綺麗ですわね」
花丸「ねー」
ダイヤ「きっとわたくし1人では見逃してしまっていましたわね」
花丸「えへへ、マルもね、ダイヤちゃんと一緒だから見つけられたんだ」
ダイヤ「? どうして?」
花丸「ほら、マルって小さいから大きいダイヤちゃんと一緒にいると上を向くことになるでしょ?」
花丸「だからふと上を見て、綺麗だなぁって」エヘヘ
ダイヤ「なるほど、わたくしとマルちゃんだったからこそ、こうして2人で見ていられるのですね」
花丸「うん」
ダイヤ「そういえば、どうして2人きりでお月見をしたかったの?」
花丸「ダイヤちゃんって、他の人がいるとオラのこと花丸さんって呼ぶことが多いから」
花丸「2人でいると、マルちゃんって呼んでくれるし、何より――」
ダイヤ「何より?」
花丸「マルがダイヤちゃんに甘えたかったずら」エヘヘ
ダイヤ「……っ!」ドキッ
花丸「ルビィちゃんがいると、どうしてもダイヤちゃんはルビィちゃんのお姉ちゃんで――」
花丸「ルビィちゃんのことはもちろん大好きなんだけど、えっと……」
ダイヤ「ふふ」ナデナデ
花丸「っ!」
ダイヤ「マルちゃん、わたくしにとってあなたも妹のようなものなんだからいつでも甘えてくれていいんですよ?」
花丸「ダイヤちゃん……!」
花丸「あ、あの、あのね」
ダイヤ「どうしたの?」
花丸「お姉ちゃんって、呼んでもいい?」
ダイヤ「っ! い、いいですわよ?」
花丸「えへへ、じゃあ呼ぶね」
花丸「こほん……。お姉ちゃん」
ダイヤ「る、ルビィ以外にそう呼ばれるのは案外恥ずかしいものですわね」カアアアアアアアアア
花丸「あ、そうだ。さっき買ってきたお団子とプリン!」ガサゴソ
ダイヤ「あぁ、そうでしたわね。マルちゃんとの話に夢中で忘れていましたわ」
花丸「えへへぇ、おいしそうずらぁ」ニヘラ
花丸「はい、これダイヤちゃんのプリン」
ダイヤ「ありがとう、マルちゃん」
花丸「それじゃあ、いただきます!」
ダイヤ「いただきます」
花丸「んー! お団子はもちもちで、あんこの程よい甘さとあまーい香りが口の中に広がって――」
花丸「マル、幸せぇ」トロン
ダイヤ「ふふ、大袈裟ですわね」クスクス
花丸「大袈裟じゃないずら、ダイヤちゃんも食べたらきっととろーんってしちゃうもん!」
ダイヤ「所詮はコンビニスイーツでしょう?」
花丸「文明の進歩って言うのを舐めない方がいいずら」
花丸「はい、あーん」
ダイヤ「!?」カアアアアアア
花丸「ダイヤちゃん? あーん」スッ
ダイヤ「じ、自分で食べられますわ!」
花丸「でもこのまま食べた方が楽だよ?」
ダイヤ「ですが!」
花丸「あっ、分かったずら!」
ダイヤ「? 何が分かったんですの?」
花丸「お姉ちゃん、あーん」ニコニコ
ダイヤ「なっ……!」
花丸「ほら、お姉ちゃん」
ダイヤ「あ、あーん」
花丸「えへへ、どうぞ」
ダイヤ「はむっ、っ!」
花丸「どう? どうずら?」
ダイヤ「おいしい……っ! 所詮コンビニスイーツと侮っていましたわ」
花丸「マルの言った通りだったずら」エヘン
花丸「ダイヤちゃんはプリンは食べないの?」
ダイヤ「あぁ、食べますわ」ピリリッ
ダイヤ「では一口」ヒョイッ
ダイヤ「この食感! 味! 香り! はぁ、たまりませんわ!」
花丸「ねえ、ダイヤちゃん」
ダイヤ「なぁに、マルちゃん?」
花丸「オラも一口ほしいずら」
ダイヤ「お団子ももらいましたし、はい、どうぞ」
花丸「そうじゃないずら」フルフル
ダイヤ「へ?」
花丸「あーん」
ダイヤ「なっ! そ、そういうこと?」
花丸「あーん」コクコク
ダイヤ「じ、自分でお食べなさいな!」
花丸「お姉ちゃん、お願い」ウルウル
ダイヤ「ちょ、調子のいい時だけお姉ちゃんなどと……!」
花丸「」ウルウル
ダイヤ「……。っはあ! 仕方ないですわね!」
ダイヤ「言っておきますけど、今回だけですからね!」スッ
花丸「わぁい! お姉ちゃんありがとう!」パクッ
ダイヤ「全く、手のかかる妹が一人増えたみたい……」ハァ
花丸「ごめんなさい、少し調子にのりすぎちゃったみたい……」シュン
ダイヤ「! いえ、いいんですよ? マルちゃんは普段しっかりしているから甘えたい時もあるものね?」
花丸「もっと甘えていいずら?」
ダイヤ「えぇ、もちろん。今日は目一杯お姉ちゃんに甘えていいですわよ!」
花丸「お姉ちゃん!」ダキッ
ダイヤ「えぇっ!?」
――
ダイヤ「……全く!」
花丸「」スヤスヤ
ダイヤ「抱き付いてきたと思ったら突然寝てしまうとはどういうことなのですか!?」
花丸「えへへぇ……」スヤスヤ
ダイヤ「こんなに幸せそうな顔で……」ハァ
花丸「ダイヤちゃぁん……」ムニャムニャ
ダイヤ「はあ、わたくしも夢に出ていますのね」
ダイヤ「……」
ダイヤ「本当に、可愛らしい寝顔ですわね」ナデナデ
ダイヤ「そりゃ、ルビィとあの善子さんと一緒の学年だったら疲れますわよね」ハァ
ダイヤ「というか、Aqoursのメンバーは大抵一緒にいて疲れますけれど!」
ダイヤ「……。いつもルビィを近くで支えていてくれてありがとう」ナデナデ
花丸「どういたしまして」ニコニコ
ダイヤ「!? ま、まま、マルちゃん、起きていらしたの!?」
花丸「えへへ、もっと撫でてほしくて寝たふりしてたんだぁ」
花丸「それに膝枕までしてもらっちゃって、天国かと思ったずら」
ダイヤ「起きたのなら退きなさいな!」
花丸「えー、もうちょっとだけー」
ダイヤ「ダメです!」
花丸「ダイヤちゃんのけちー」ムクッ
花丸「……」
ダイヤ「? 上を向いて止まって、どうしたのですか?」
花丸「ね、ダイヤちゃん」
花丸「月が綺麗だね」ニコッ
ダイヤ「? そうですわね」
花丸「……」
ダイヤ「え? それだけ?」
花丸「うん!」
ダイヤ「月が綺麗だなんて、だからお月見をしたのでしょう?」
花丸「うん、お団子もプリンもおいしかったずら」ニコニコ
ダイヤ(……そういえば、マルちゃんって本が好きなはずですわね)
ダイヤ(本が好きで、国語の成績もいいのに、あの有名な話を知らない……?)
ダイヤ「っ!」
ダイヤ「あの、マルちゃん……?」
花丸「なぁに?」
ダイヤ「『わたくし、死んでもいいですわ』」
花丸「っ!」
ダイヤ「これでいい?」ニコッ
花丸「ふえぇん、よかったずらぁ……」ポロポロ
ダイヤ「……まわりくどいのよ、マルちゃんは」ギュッ
ダイヤ「どういう意味か聞いたときもはぐらかして」
花丸「だって、ぐすっ、断られたらって思うと怖くてぇ」グスン
花丸「でもやっぱり確かめたくって――」
ダイヤ「それで、あんなに積極的に?」
花丸「うん……」
ダイヤ「はあ……。気付かなかったらどうするつもりだったのですか?」
花丸「ダイヤちゃんなら、気付いてくれるって思ってたずら」
花丸「だって、昔ダイヤちゃんにお勉強教えてもらった時に教えてもらったことだったから」
ダイヤ「っ! そう、だったかしら」
花丸「ダイヤちゃんは覚えていなくてもマルは覚えてるずら」
花丸「ダイヤちゃんが『素敵ですわね』って乙女の顔をしてたのも、覚えてるずら」
ダイヤ「それで、わざわざこんな――」
花丸「でもうまく伝えられなくて、誤魔化しちゃったりして……。マル、反省」
ダイヤ「本当ですわ、まったくもう」ムスッ
花丸「でもね、信じてほしいずら!」
花丸「オラがダイヤちゃんを好きな気持ちは、本物ずら!」
ダイヤ「……それは疑いませんわ」
ダイヤ「だって、こうして抱きしめていると」ギュッ
花丸「ふわっ!?」モガモガ
ダイヤ「マルちゃんの心臓が高鳴っているのがわかるんですもの」
花丸「……。ダイヤちゃんだって」
ダイヤ「そ、それはそうですわ。わたくしだってマルちゃんのこと――」
花丸「……」
花丸「あのね、オラよく考えるんだ」
花丸「どこにいっても、誰といても、しょせん人間は1人なんだなぁって」
花丸「他人の気持ちを完璧に分かることなんてできないずら」
花丸「でもね、自分が本当に好きになれる人を見つけて、その人が自分を好きでいてくれたら――」
花丸「それって、幸せなことなんだよね」
花丸「分かりたい、分かってもらいたいって思えることって、とっても幸せずら」ニコッ
ダイヤ「……マルちゃん」
花丸「あっ、ごめんね。オラまた変なこと言っちゃった」テヘッ
ダイヤ「幸せにしますわ」
ダイヤ「わたくしだってマルちゃんをわかりたい、わかってほしい」
ダイヤ「そう心から思えますもの」
花丸「……そっか」
花丸「そんな人に出会えて、そんな人を好きになれて」
花丸「オラは幸せ者ずら」
おわり
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