結衣「奥様もお呼びになっておられますよ」
八幡「は、え...何だって?」
結衣「ふふ、寝ぼけてらっしゃるんですか? もう朝ですよ?」
八幡「...」
辺りを見渡す。
広々とした空間に、大理石らしきもので作られたテーブルや、いかにも高級そうな革張り(?)のソファー...。
由比ヶ浜の向こうには、部屋の掃除をしている執事さん(?)...。
さらには、壁にはよく分からん絵画まで掛けられている。
結衣「御主人様、奥様に怒られてしまいますよ?」
...そしてコイツ。
同級生の由比ヶ浜が、何故かメイドの格好をして、俺を起こそうとしている。
黒を基調としたドレスに、白いカチューシャらしきものを頭につけて...いわゆる、ゴスロリメイドというやつなのだろうか。
だいたい、俺はいつも通り自分の部屋で一人で寝た。
こんな所に移動した覚えはないし、まして由比ヶ浜がいた覚えもない。
八幡「...よく分からんが、分かった」スクッ
色々と疑問は尽きないが、由比ヶ浜が困った顔をしていたので、とりあえず促された通りに動く。
由比ヶ浜の後について部屋を出ると、廊下もまた凄かった。
なんかシャンデリアとかあるんだけど...。
コンコン
由比ヶ浜「奥様、若様を連れてまいりました」
由比ヶ浜が凄い扉をノックして...っていや、おいおい。
若様って何だよ、若様って。
?「はーい。どうぞー」
扉の向こうから、気さくな声で返答が返ってくる。
毎日聞いている、聞き覚えのある声だった。
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小町「はちまーん、遅いよー。小町、お腹ペコペコだよー」
結衣「すみません、奥様。私の手際がもう少し良ければ...」
小町「結衣ちゃんのせいじゃないよ。八幡の寝起きが悪いのがいけないんだもん」
...予想通り小町だった。
何故か、奥様と呼ばれている。
と言うことは、もしかして俺の母親が小町ということになるのだろうか?
小町「八幡、結衣ちゃんにごめんなさいは?」
...小さい子ども相手に話すような言い方なのは何故だ。
小町の方が明らかに年下だろ。
小町「ほら、はちまーん」
結衣「お、奥様、そんな滅相もございません!」
...なんかもうめんどくさい。
ちゃちゃっと言って終わりにしよう。
八幡「由比ヶ浜...すまん」
結衣「ご、御主人様も! おやめになってください!」
何なんだ、この茶番は。
って言うか、由比ヶ浜が敬語を使えていることが一番の驚きだわ。
小町「はい、よろしい。じゃ、ご飯にしましょー。結衣ちゃん、今日のご飯は?」
結衣「あ、はい...。本日の朝食は---」
糞みたいな茶番の後、これまた豪勢な朝食が出てきた。
朝からメロンとか出てきたし...。
いや、コイツの身体の話じゃないからね。
結衣「御主人様、朝食がお済みになられたら、一先ずお部屋に戻りましょう」
八幡「あ...おう」
小町「結衣ちゃーん、今日も八幡のことよろしくねー」
結衣「はい、承知しました」
ガチャ バタン
行きと同じように、帰りも由比ヶ浜の後ろに付いて歩く。
結衣「御主人様、本日はいつもの様に、10時から家庭教師の方がいらっしゃいます。お昼まで勉強した後、一時半から再開です」
え、家庭教師とか来るの?
って言うか、学校とか無いの?
ガチャ
とか何とか考えてたら、俺の部屋(?)に戻って来た。
改めて見ても、無茶苦茶広い。
パタン
結衣「...えへへ」
由比ヶ浜が突然笑い出した。
言っちゃあ悪いけど、少し不気味だ。
まあ、可愛いけど。
結衣「うーん、やっと空き時間だね、ヒッキー」ダキッ
八幡「!?」
そして、これまた突然抱きつかれた。
メロンが非常に主張してきて、色々とヤバイ。
あ、今度は身体に付いてる方。
八幡「ちょ、ちょっと待ってくれ! 由比ヶ浜!」
結衣「も~、今は二人っきりなんだから、ちゃんと『結衣』って呼んでよ~」
八幡「は、え、は!?」
こ、これはヤバイ...。
とりあえず、事情を話して分かってもらおう...。
八幡「...由比ヶ浜、じ---」
結衣「結衣」
八幡「...結衣、実はな---」
俺は元々、普通(だったはず)の男子高校生だったこと、由比ヶ浜が同級生であること、小町が妹であること...。
とにかく、現状の全てが分からないことを話した。
初めは訝しげに聞いていた由比ヶ浜だったが、徐々に俺の話を信用してくれたのか、本気で聞いてくれた。
結衣「じゃあ...ヒッキーは、私のことも覚えてないの?」
八幡「...そうだな。この世界のお前に関しては、何も...」
結衣「そう...なんだ」ジワ
事を理解した由比ヶ浜は、同時に、目尻に涙を溜めてしまった。
俺自身、訳が分からないながら、申し訳なくなってしまう。
だから、罪を償うため...いや、もしかしたら興味本位なのかもしれないが、彼女に問おうと思った。
八幡「もし良かったら...聞かせてくれないか?」
結衣「グスッ...何を?」
八幡「この家の...それと、俺とお前の状況を」
結衣「...うん」
結衣「何から話したら良いんだろ...」
うーん、と唸りながら、由比ヶ浜は宙を見つめる。
こういう何気ない仕草は、俺の見覚えのある由比ヶ浜そのものだった。
結衣「えっと...まず、ここは比企谷家のお屋敷」
八幡「ちょっと待て」
結衣「え、何?」
八幡「お屋敷ってどういうことだよ。俺ん家って金持ちなのか?」
結衣「あ~...そこからか。えっとね、比企谷家の始まりは、大政奉還の動乱に乗じて、ヒッキーのお父様が---」
八幡「ちょっと待て」
結衣「も~、今度は何?」
ヤバイ、頭が痛くなってきた...。
大政奉還?
親父がナンタラ?
八幡「あー...えっと、何時代? いや、年号は?」
結衣「時代は分かんないけど...年号は大正」
八幡「...」
昭和ですら無いのかよ!
いや、でも、大正って15年で終わるはずだし、もうすぐ昭和なのか...。
っつっても、どっちにしろ戦前...。
...戦前でも、日本にメロンってあったんだ。
結衣「えっと、説明続けるよ?」
そう言って、由比ヶ浜は説明を再開した。
結衣「その時に、旦那様...つまり、ヒッキーのお父様が事業を開始なさって、あれよあれよと言う間に大成長。今じゃ、日本屈指の大財閥だよ」
財閥...比企谷財閥か...。
なんじゃそりゃ...。
結衣「で、その旦那様がお建てになったのが、このお屋敷」
八幡「...なるほど」
そう言われてから改めて部屋を見回すと、どことなく大正ロマンっぽい気がしないでもない。
...すみません、なんとなく知ってる単語を使いました。
結衣「それで、私は比企谷家で奉公させてもらってるの」
八幡「女の子一人で?」
結衣「うん。でもね、普通こういう場合は...その、え、エッチなことされることも覚悟しとかないといけないんだけど、旦那様も奥様もお優しくって、全然そんなことなくて...」
八幡「そう、なのか...」
コイツも、結構な覚悟をして生きてるんだな...。
時代が違うと、ここまで違うもんなのか...。
結衣「あ、でも言っとくけど、ここで奉公させてもらうまでは実家で家業を手伝ってたから、そんな経験一度もないからね!」///
八幡「...何を突然言い訳始めてんだよ」
結衣「え...だって、私達、こ...恋人、なんだよ...?」
八幡「...え、マジ?」
結衣「...マジ」
...今気づいた。
これは絶対に夢だ、うん。
じゃないと、由比ヶ浜が俺の彼女なんてありえない。
だいたい設定がありえない。
とりあえず、定番のアレ...頬を抓ってみよう。
八幡「...」ギチチチチ
...痛い。
はい、夢じゃない。
じゃあなんだよこれ?
結衣「...ヒッキー、何してるの?」
八幡「いや、夢かどうかの確認...」ヒリヒリ
結衣「なんで?」
八幡「だって、お前みたいな可愛い娘が彼女とか、俺の妄想だとしか思えねえからな」
結衣「か、かわっ...!? もう、ヒッキーったら...」プイッ
そう言いつつも、赤面しつつニヤケるコイツの表情の破壊力は半端じゃない。
でも、それはすぐに消えてしまった。
結衣「でもさ...ヒッキー、私に関する記憶持ってないんだよね?」
八幡「...ああ」
結衣「じゃあ...私のこと、好きでもなんでも無いんだよね?」
そう問いかけてくる彼女の表情は、哀しみに満ち溢れていた。
由比ヶ浜のこんな顔は、向こうの世界でも見たことがない。
俺は、どう答えるべきなのだろうか?
そんなことを考えても、答えなど出るはずもない。
だから、今の気持ちをありのままに話した。
八幡「実は...向こうの世界でも、同じような状況だったんだ」
結衣「へ...?」
八幡「あっちでもな、お前は俺に好意を向けてくれていた...。でも、いろんな事情があって、俺はそれに応えるべきか否かを迷ってたんだ」
結衣「いろんな事情...っていうのは、こっちの世界でも続いてるの?」
いろんな事情...。
誤魔化したが、要は俺がカースト最底辺であるということ。
それと、人の好意を信じられないということだ...。
後者はともかく、前者は完全に消滅したと言っても過言ではない。
八幡「---って感じだ。半分消えて、半分残っている...ってところか」
結衣「なるほど...」
...そうだ。
俺はまだ、コイツを信用できない。
コイツは、向こうの由比ヶ浜と完全に同一人物であるという訳ではない。
もし仮にそうでも、周りの状況によって、人の取る行動は変わってくる。
結衣「...ヒッキーが何で悩んでるのかは分かんない。無理に聞こうとも思わない。でも...ヒッキーに認めてもらえるように、私...頑張るから」
そう言って、由比ヶ浜は笑った。
ただ、その笑顔が無理に作られたものであるのは容易に分かった。
結衣「それとさ」
八幡「ん?」
今度は、先程と打って変わっていたずらっぽい笑みを浮かべている。
表情の豊かさも相変わらずだ。
結衣「ヒッキーは、『事情があるから』私の好意に応えるべきか否かを迷ってるんでしょ?」
八幡「...」
結衣「ってことは...むふふ」
なるほど、言いたいことは分かった。
それと、コイツの言いたいことだけでなく、コイツ自身が厄介で、なかなか切れ者であることも...。
向こうの由比ヶ浜と違って、こっちの由比ヶ浜は鋭い。
結衣「...っと、もうそんなに時間がないね」
由比ヶ浜が見ている方向を俺も見る。
そこには、大きな時計が掛かっていた。
俺からしたらレトロなデザインで、振り子がゆらゆらと揺れていた。
結衣「あと20分くらいで先生がいらっしゃるから、そろそろ切り上げないと...」
『先生』と、彼女はそう言った。
さっき言っていた、家庭教師というやつだろう。
ふと、気になったことがある。
八幡「なあ、由比ヶ浜」
結衣「...」
八幡「...あれ、どうした?」
結衣「ヒッキーが今までのヒッキーとは違うっていうのは分かってるけど...でも、結衣って呼んでくれない?」
八幡「え...」
結衣「ワガママだって分かってるけど...ダメ、かな?」
そう言いながら、上目遣いでこちらを見てくる。
俺じゃなければ、速攻で落ちているだろう。
しかし...。
八幡「...ダメだ」
結衣「あはは...だよね」
八幡「俺は...こんな中途半端な気持ちのまま、お前に『こっち側の俺』を思い出させるような真似はしたくない」
結衣「へ...?」
八幡「だから...俺の気持ちにちゃんと整理がついてから、呼び方を変えるかどうか、改めて決める」
結衣「ヒッキー...。へへ、やっぱり、ヒッキーはヒッキーだよ」
ふと、彼女がそんなことを言い出した。
ぶっちゃけ、意味が分からない。
結衣「そうやって、真摯に私の気持ちに向き合ってくれる...そんなところに、私は惹かれたの」
そう言いながら、彼女は頬を紅に染める。
俺も、おそらくそうなっているだろう。
結衣「だから...待ってるね」
八幡「...おう」
リンゴーン
結衣「わっ、マズイマズイ...先生がいらっしゃった...。私、これからお迎えに上がるけど、その時に時間稼ぐから、その間にヒッキーは着替えてて!」
八幡「ちょ、ちょっと待て!」
慌てて部屋から飛び出ていこうとする彼女に、既のところで声をかける。
二人とも慌ててあたふたしてしまっている。
八幡「ふ、服ってどこだよ!?」
結衣「あわわ、えっと...そこ! 向こうの大きいクローゼットの中! それじゃ、行ってくるね~!」
ガチャ バタン
大きな音を立てて、由比ヶ浜はすっ飛んで行った。
俺もわちゃわちゃと服を選んでいるとき、ふと思った。
クローゼットって、この時代から既に日本にあったんだな。
八幡「...なんとか着替えられた」
クローゼットの中には、ものすごい量の服が入っていた。
種類は様々で、洋服も和服もあった。
しかも、どの服も高価そうで、肌触りも凄かった。
...その分、と言って正しいのだろうか?
無茶苦茶着こなしが大変だった。
コンコン
軽快に二度、扉がノックされた。
これはアレか?
俺が何か言うべきなのだろうか?
八幡「...はい?」
思わず疑問系になってしまった。
まあ、問題はないだろう。
結衣「由比ヶ浜です。先生がいらっしゃったのですが、入ってもよろしいでしょうか?」
予想通り由比ヶ浜だ。
先程とは異なり、堅苦しく敬語をバリバリ使っている。
八幡「ああ...どうぞ」
ガチャ
結衣「失礼します。先生、どうぞ」
八幡「...は?」
思わず、素っ頓狂な声を出してしまった。
由比ヶ浜が連れてきたのは、よく見知った人物であり、まさしく俺とその人の間柄そのものだったからだ。
静「いやあ、久しぶりだな比企谷。と言っても、たった3日ぶりだがな」
こんな感じで進めていきます、ガハマちゃんメインのssです。
メイドのガハマちゃんとイチャコラしてもらいます。
R-18要素は検討中です。
ちなみに、次回は話の都合上、設定を説明する回みたいな感じになってしまいます。
更新後に、適当にまとめみたいなのを作るので、そっちだけ読んでいただいても結構です。
エロい展開も期待してるで
エロ有りならSSRに移行されるで
>>22
もしエロを書いたら自動で
SS速報R
http://ex14.vip2ch.com/news4ssr/
に移行される
このスレをSSRで立て直すもよし、自動で移行されるまで書くもよし
自動で移行される場合はこのスレに移転先URLが貼られるらしい
いつからかに関しては管理人の荒巻さんが明言してないからわからない
>>23
うおぉ...
ありがとうございます!
エロ要素を入れることになったので、SS速報Rでスレを建てました
もしよろしければご覧ください
↓
ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1463225330/
リンク貼れてない...
あと、sagaにしてしまって申し訳ないです...
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