総士「ここがIS学園か」 (126)
インフィニット・ストラトスの世界に蒼穹のファフナーの皆城総士が登場するクロスss
一夏もちゃんと登場します
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1462193568
一騎、僕はフェストゥムに痛みと存在を教えた。
そして僕は、彼らの祝福を、存在と無の循環を知った
――存在と、無の循環?何のことだ
僕の体は…もうほとんど残っていないんだ、一騎
――島に戻って2人で治療を受けよう。そうすればきっと
お前はそうしろ、一騎。僕はもうすぐ、いなくなる
――総士、何を言ってるんだ。やめてくれ総士
僕は一度、フェストゥムの側に行く。そして再び、自分の存在を作り出す
どれほど時間が掛かるか分からないが、必ず…
――総士!いるんだろ!そこにいるんだろ、総士…!総士!!
僕はここにいる。いつか再び、出会うまで
――ああっ…!総士ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
甲洋<総士…>
ミョルニア<今の私や竜宮島では、皆城総士の肉体を作ることは出来ない
皆城総士の肉体を作るには我々の力が必要だ
だが我々は皆城総士たちによって砕かれたことによりそれは出来ない>
甲洋<じゃあどうすれば…>
ミョルニア<我々の欠片がいずれ成長し、新たなミールが生まれる。
そこに私の持つ真壁紅音の知識と皆城総士のコアを託す>
甲洋<それは何時になる。総士は我々に痛みと憎しみを教えた
新たに生まれる我々の中には総士を消そうとする我々もいるはず
探さなきゃいけない、総士を助けてくれる新たなミールを>
甲洋<第一総士のコアは不安定な状態だ。
俺以外の我々が総士を襲う危険が付きまとっている今、
どちらかがコアを守りながら僕以外の我々と戦わなければならない
それでは新たな我々に託す前に総士が持たない>
ミョルニア<1つだけ託せる場所がある。以前より遥か遠くから我々に話しかけていたミールがいる
そこに一時的に皆城総士のコアを託す>
甲洋<その我々は総士を託せる我々か?それに一時的とはどういう事だ>
ミョルニア<遥か遠くにいるミールは既に人と共存している。皆城総士を託すことに問題はない>
そのミールは時間・時空を超えた世界に存在する。そこに至る経路は本来我々が通るもので人の体では肉体は崩壊する
よって皆城総士は新たに生まれるミールの下で改めて肉体を取り戻すしかない>
甲洋<それ以外に方法が無いのならば、総士を託そう。はるか遠くにいる我々に>
総士「ここは…」
総士(この浮遊感…赤い液体……カプセルか?)
自分は今、甲洋や咲良が入っていたカプセルの中にいるようだ
総士(島に戻ってきたのか…?)
意識を失った時を思い出す
僕はフェストゥムの同化により肉体は失った
だがその直前自分に埋め込まれたミール因子を使い、フェストゥムのようにコアを作り出したことまでは覚えている
いつかそのコアを使い体を取り戻し、島に帰るために
そんな事を考えていると、外にいる人物に声を掛けられる
???「やっほ~、お目覚めかな?」
カプセルの中から声を掛けた人物を見てみる
僕より上の年齢の女性のようだが、まず目に付いたのはその服装だ
島の人間ならアルヴィスの制服を着ているはずだが、彼女のそれはかなり独特だ
なにやらウサミミの様な形をした機械のカチューシャが頭にあり、着ている服も童話に出て来そうな物だ
???「うん、バイタルその他もろもろ問題なし、そこから出してあげるね」
そう彼女が言うと、僕の入っていたカプセルが開かれた
カプセルを出て自分の体を確認する
この体はしっかりと僕の記憶通りの体のようだ
一騎が教えてくれた、僕が僕である証であるこの左目も
???「すごいでしょその体、なんたってこの束さんが君の体を用意したんだもん、むしろ本来のより調子が良いくらいでしょ。
そーれーと、君の服は私が用意したからそれを着てねキャッ♪」
そういって彼女は部屋を出て行った
流石に見ず知らずの女性に目の前で裸を見続けられるのは気恥ずかしいので正直助かる
そばに用意された服を着るために手に取ってみると、中世貴族のような派手な装飾の服だった
彼女の服装センスはかなり変わっている(お前が言うな)何やら空耳が聞こえたが無視する
他に無いのでその服を着ながら考える
どうやら彼女は束という名前らしい
僕の覚えている限り島にそのような名前の人物に心当たりはないが、名前からしておそらく日本人なので人類軍でもないようだ
そこから予想するに、彼女は僕がいた時より未来に生まれた可能性が高い
一体どれほどの時間が流れたのだろう
総士「一騎…」
かつての友の名を呟く
あの時、一騎との再会を約束した
甲洋の助けで僕たちはフェストゥムの無の世界から脱出できた
しかし僕ほどではなかったが一騎も酷い同化現象に襲われていた
考えたくはないが仮に回復したとして、そう長く生きられるとは思えない
総士「一騎、無事でいてくれ…」
だがたとえどれだけ可能性が低くとも願うしかなかった
大切な友との再会を
服を着終え、部屋から出ると束さんが待っていた
束「着替え終わったみたいだね!じゃあ積もる話もあるだろうし一緒に食事しながらお話しよっか♪」
そういって彼女が移動するので後を付いていく
通路を見てみるが、全く見覚えがない
僕の記憶にあるアルヴィスとは内装どころか、通路自体が全く別物だった
束「も~、君さっきから考え事ばっかで私と全然話をしてくれなーい」
このまま1人で考え込んでいても仕方がないので彼女に聞こう
総士「ここは一体何処ですか?貴女は竜宮島の人ですか?今は西暦何年なんですか?」
束「ちょっとー、確かに話そうって言ったけどそんな一気に質問しないでよー
あ、着いた着いたさあ中に入って―」
どうやら食堂に着いたようで
中に入るともう1人の銀髪を三つ編みにした女性がサンドイッチ等の軽い食事を用意していた
その女性に案内されて席に付く
束「あ、そういえば名乗ってなかったね。私は天才科学者の篠ノ乃 束さんで、その子は私の娘のくーちゃん」
クロエ「クロエ・クロニクルです」
2人からそれぞれ自己紹介されたので、僕も名乗る
総士「皆城 総士です」
束「そーくんね、私のことは束おねーさんって呼んでね」
総士「では束さん、さっきの質問ですが」
束「むー釣れないなあ、そんなんじゃモテないぞ」
そう言いつつ彼女が食事を始めたので僕も食べる
束「ありがとねくーちゃん」
クロエ「いえ、今回は束さまの用意して頂いた物を並べただけですので」
束「もーママって呼んでって言ってるのにくーちゃんも冷たーい」
わざとらしく頬を膨らまして拗ねている
束「質問に答える前に聞くけどそーくんって平行世界とかパラレルワールドって知ってる?」
総士「ある出来事が発生したか否かで世界が分岐するという、理論上でのみ存在するものですか?」
束「うん、厳密には違うんだけど君にとってはここはそのパラレルワールド。すっごいでしょ!」
総士「なっ!」
束「あのカプセルに入ってる時にそーくんの記憶を見させて貰ったけど
フェストゥムだっけ?それとの戦いに人生の全てを捧げてたんだね
でも安心!この世界は人を滅ぼそうなんてするフェストゥムなんかいないんでーす!」
投下ここまで
地の文が多いですがその方が総士らしいと思いこの形となりました
去年ファフナーと艦これクロスSS書いた?
>>10
あの人とは別人です
ちょっと投下します
総士「フェストゥムが…いない?」
食事の手を思わず止めてしまう
彼女から発せられた言葉の突飛のの無さに理解が追い付かない
束「理解は出来ないと思うけど順応性を高めてあるがままを受け入れてね
まあそーくんはこれを見ればすぐに分かると思うよ」
彼女とリモコンをもって操作をすると天井からモニターが現れ映像が映し出される
『はーい、こちら人気の喫茶店@(アット)クルーズでーす』
女性アナウンサーが喫茶店の取材をしている映像が映し出される
喫茶店の窓の外ではカメラに映ろうとしているのか多くの人が集まっている
束「おーあのパフェおいしそー!ねぇねぇくーちゃんとそーくんの3人で食べに行かない?
できれば箒ちゃんとちーちゃんといっくんも誘いたいんだけどなー」
束さんが話しかけているが頭の中に入ってこない
『では今日の全国の天気ですが…』
今度は気象予報士が日本全土の今日の天気予報を伝えている
総士「信じられない」
思わず口にしてしまうが受け入れざるを得ない
平和なのだここは、この世界は
束「理解できた?」
食事を終えた後束さんに声を掛けられる
総士「ええ、どうにか」
束「ならオッケー!じゃあそーくんにはこの束さん直々にこの世界について説明しなきゃね」
片付けをクロエに任せ、別の部屋に向かうため2人で移動する
フェストゥムのいた僕の世界については僕の記憶を見て大体知ることが出来たので必要ないといった
頭の中を見られることは文句を言える立場ではないし、フェストゥムに関する説明をしなくて済むのは助かる
そして束さんから今僕がいるこの世界について説明される
西暦で言えば僕の本来いた世界よりかなり昔だが、僕の知る歴史と異なる存在がある
飛行型パワードスーツ《インフィニット・ストラトス》通称が≪IS≫
本来は宇宙空間の探査などを目的とした物だが、ある事件を境に世界中に兵器として普及
現在は表向きはスポーツ用のものとして扱われる
ISの最大の特徴は女性には扱えないというのだ
そしてある常識が出来上がってしまった
【ISがあれば男なんかより女の方が強い】
このことが影響し女尊男卑が蔓延っている
政治などは今でも一応は男が中心となっているが
それはただISが普及する前の名残で政策などは女性優位の物が多い
社会の権力者はほぼ女性になるのは近い将来確実に来るという事らしい
束「だからそーくんは外へ出かけるとき気を付けてね。ま、そんな事も無くなるんだけどね」
総士「どういう事です?」
束「もうすぐ分かるよ」
そういって無邪気な笑顔を僕に向けてきた
束「とーちゃーく!」
今度はまた別の部屋に案内される
中に入ると、見た事のない機械が何かを造っていた
そばには完成図と思われる映像がモニターに映されていた
先ほど説明されたISのようだが見た瞬間それが何かを理解してしまった
丸みのある長い腕にバイザーを持った爬虫類のような形状の頭部パーツ、これは…
総士「まさか、ファフナー?」
束「半分正解!そーくんのいた世界の技術を知った私はすぐにそれをISに転用したんだ
そうして出来た異なる技術を一体化した全く新しいIS
名前は向こうの名前を頂いて≪ファフナー・ノートゥング≫って名付けたの」
総士「なぜこんなものを造ったんです!!」
声を荒げて束さんに問い詰める
束「何言ってるのそーくん、私は科学者なんだよ
こんな新しい技術を知って試さない訳にはいかないじゃない」
総士「ファフナーは平和を守るための力だ!
元から平和なこの世界には必要ない、いやあってはいけないのにあなたは…!!」
穢された気がした
島の平和を守るため、ファフナーに乗って犠牲となった仲間たちを
束「そーくん落ち着いて」
僕をなだめるように言う
束「そーくんにだけは教えてあげる。私のとっておきの秘密」
その言葉と共にモニターに映し出される映像
無意識に除外していたこの世界には存在が映された
総士「そんな、これは!?」
束「君たちの呼び方だと≪ミール≫って呼ぶんだっけ
異なる2つの世界のただ唯一の共通点、この子がこのIS製造を望んだの」
ここまで
1巻までは書き貯めできてて2巻部分の展開に悩み中
≪ミール≫
知識を収集することを目的とし、内部には膨大な情報を内包している
ときとしてその収集した知識を元に活動をする光子結晶体
束「そーくんはこの子がどんなのかはよく知っているよね」
総士「ミールは人の理解を超えた存在で、少し間違えば人を滅ぼすものになるほど危険なものです」
瀬戸内海にあったミールは人の生死を正しく理解できなかったために
人を死の恐怖から解放するため新しく人が生まれることを、受胎能力を奪った
北極のミールは同化により人と共により高次の存在へ至ることを目的にしていた
言ってしまえば彼らにとってどれも善意による行為だった
だがその善意が火種となり人類と戦争になり、多くの犠牲者が出た
束「最初はね、私一人でこの子に人ってどんなものか理解してもらおうと頑張ったの
でもこの子はもっといろんな人を知りたいって望んだの
私はこの子が生んだコアを使って、私は多くの人と繋がれるようにISという存在を創ったの
この世界じゃISがある意味フェストゥムであり、ファフナーになるんじゃないかな」
総士「…そうでしたか、済みません取り乱して
ですが貴方はさっき、この世界にフェストゥムは存在しないと言ったはずでは?」
束「あれー?そんなこと言ってないよ
私は【人を滅ぼす】フェストゥムがいないって言っただけだよ」
早計だった
先程の彼女の発言を僕は【フェストゥムそのものがいない】と解釈してしまった
そこからミールもこの世界に存在しないと勘違いしてしまった
束「この≪ファフナー・ノートゥング≫はそーくんたちがどうミールと共存してるか知りたかったから造ったの」
総士「本来のファフナーは完全な対フェストゥム兵器、あまり参考にはならないと思いますが」
束「いやいやそうでもないよ
ファフナー独自のシステムも再現させてもらったけどIS本来の開発コンセプトとすっごく合致してたもん」
総士「本来の開発コンセプト…ですか?」
束「うん、人を正しく理解して一緒にこの広い宇宙で新しい出会いを求めて旅をする
それがこの子の望み、そしてその手伝いをするのが私の役割だった
だけど世界はISをこの子が望んだ形にすることを許さなかった。あの白騎士事件を切っ掛けにして…」
先程まで見せていた明るい表情に一瞬だけ陰りが射した
束「でもね、私もこの子も絶望してないよ
まだその望みが叶わなくなった訳じゃないから、どれだけ時間が掛かろうとも私はこの子の望みは叶えてみせる」
暗い表情をしながらも、彼女の瞳には強い決意が宿っているように見えた
この時だけは、嘘偽りの無い思いを語っていると思えた
総士「僕にもどれだけの時を掛けても果たさなければならない約束があります
だからその…気持ちはよく分かります」
束「励ましてくれてるの?そーいうのは誤解を招く可能性があるから気を付けてね
それともおねーさんを口説いてる?だったらもうちょっと気の利いた言葉が出ればいいね」
総士「そんなつもりで言った訳では、き、気遣いを口にしたまでです!」
柄にもなく動揺してしまった
たしかに束さんは一般的に魅力のある女性かもしれない
だが落ち着け僕には遠見がいるんだそうだこの程度で揺らいでいてはダメだ
そうだ狩谷先生を思い出そう………………………………………………………………
束「じょーだんじょーだん
いっくんほどじゃないけどそーくんも可愛い反応してくれるね!ってどうしたのそんな暗い顔して」
総士「何でもありません。それとこの様な事はもうしないでください」
束「んー考えておくね」
総士「頼みます」
束「努力するよ」
総士「お願いします」
束「善処するよ」
総士・束「「……………………」」
食い下がってみたがどうやら譲ってもらえない様だ
勘弁して欲しい
束「脱線したから戻るけどこのISについて説明するね」
彼女から説明されたのをまとめるとこのような内容だった
今造られている僕の知るファフナーに似たIS≪ファフナー・ノートゥング≫
第三世代型ISをベースにしつつ操縦システムとして
両腕部の中にある計10個の指輪と頭部・肩・腹部・大腿部のコネクタを搭乗者に接続する
≪ニーベルングシステム≫を搭載、これにより今までとは別のISとの一体化をもたらす
武装は初期装備(プリセット)にマインブレード・デュランダル・レージングカッターを機体に内蔵
後付武装(イコライザ)として以下の物から選択して装備
近接兵装
ピラム・ルガーランス・ロングソ-ド
遠距離兵装
スコーピオン・ゲーグナー・ガルム44・レールガン
ガンドレイク・メデューサ・ドラゴントゥース
特殊装備
防御兵装イージス・多目的支援兵装ノルン
また頭部にはジークフリード・システムを搭載
この機体を中心に周囲のISと独自のコア・ネットワークを構築
システム使用者との皮膜神経細胞を通して繋がった状態《クロッシング》を行う
クロッシング状態においてはIS各機の状態を搭乗者を通じシステム使用者に伝達
より高度の部隊の指揮や管轄を可能とする
最大可動状態においてはシステム使用者と精神の接続が可能
ただしこの状態に置いては送られる情報量が膨大であり、クロッシング相手の精神状態や痛みも伝わるため
使用者への負荷が大きいため最大可動は推奨されない
総士「一体何処からこれほどのデータを…」
僕が知っているファフナーの装備の全てがこのISに詰め込まれている
だが僕に装備の構造や製造の知識はほとんどないのにどうやって建造をしたんだ?
束「それはそーくんと一緒にデータが送られてきたからだよ
詳しく言うとある時突然そのデータと一緒にそーくんのコアが転送されて来たんだ
そのコアを調べたら人の人格があってビックリ!!で、詳しく話を聞くために体を私を用意して今こうしてるわけ
でもそーくんが知らないとなると誰が送って来たんだろうね?」
その送られてきたというデータを見せて貰う
ファフナーのデータだけでなく、偽装鏡面やヴェルシールド等竜宮島自体のデータもある
総士「1つ確認ですが、今の僕の体を用意するときにこの送られて来たデータは使いましたか?」
束「あー、それ人に関するものは一切無しだったからけっこー苦労したんだよ
ま、そーくんの記憶とくーちゃんを研究してた所のデータでやれたけどね」
もし僕が竜宮島のミールによりここに来たならばそれはありえなかった
乙姫によって生と死の循環を知った島のミールなら僕の体の復元方法のヒントとなる情報があるはずだ
島やファフナーの事をよく知りながらも、島にはいない
そこから考えられる存在は…
総士「北極のミールに囚われていたあのフェストゥムか」
一騎の母親である真壁紅音と共鳴したマスター型の赤いフェストゥム
一騎たちの話ではそのフェストゥムにより同化現象の治療法を始めとした有益な情報をもたらしてくれたと言っていた
おそらくその時にファフナーに関するデータを島から持って行ったのだろう
技術の流出に関しては問題はない
偽装鏡面やヴェルシールドは知られた所で対策は容易でないのは変わらない
ファフナーは人類軍のザルヴァートルモデル、マークニヒトが奪われていたので今更だ
束「さて、これで説明は大体終わったけど
ほかにそーくんが聞きたい事はある?」
総士「僕は…竜宮島に戻れるのですか?」
束「向こうじゃ今そーくんを消そうとするのがいっぱいだからしばらくは無理だね
あと向こうに帰るにはそーくんにはコアに戻らなきゃダメだから
そーくんの祝福を正しく理解して体を作ってくれるミールが生まれるのを待って貰わないと」
よかった、帰れるんだ
一騎たちのいるあの島に
総士「それまでは僕にやれることは」
束「うーん、じゃあそのISをちょっと触ってみてくれない?」
総士「ファフナー・ノートゥングにですか?」
ISの建造を手伝えという事なのだろうか
メカニックに関する知識がない僕は関わっても役には立てないと思うが
そんな考えを持ちながらISに触れてみる
――キィィィン――
総士「なっ!?」
ファフナー・ノートゥングが光を発しだした
束「おー、やっぱりそーくんなら起動するんだ」
総士「ISは女性にしか起動しないのでは!?」
束「そーくんの中のミール因子が共鳴してるから起動できるの
ISはどれだけ搭乗者とコアが同調できるかで適正が決まるからね」
束「それでね、そーくんが元の世界に戻す手伝いをする代わりに一つお願いがあるんだよねー」
総士「一体何を?」
束「そーくんにはIS学園に入学してもらって
このISファフナー・ノートゥングに乗って稼働データを収集して欲しいの」
総士「IS学園…?」
束「IS操縦者育成用の特殊国立高等学校、そこでなら堂々とデータ収集をやれるんだよね
それとそーくんには高校生活をエンジョイできるチャンスだったり
どうどう?悪い話じゃないと思うけど」
総士「それが僕がここにいる意味なら、そうします」
束「了解と受け取っていいんだね
それじゃあ諸々の準備は私に任せておいてそーくんは部屋に行って休んでいいよ
場所はくーちゃんが知ってるから」
総士「分かりました」
そう彼女に告げて部屋を出るとクロエが待っていた
彼女の案内について部屋に案内された後はベッドに倒れ込む
総士「流石に限界だ…」
ミールの起こす事象に常識は当てにならないのは重々理解していたつもりだった
だが今回のは完全に参ってしまった
異世界?世界が平和?今考えても半分も信じられない
だが、現実だ。それに希望はまだある
もしかしたらあの時僕は消えていたのかも知れないんだ
それがこうして僕はまだここにいる、ここにいるんだ
一騎との約束を、果たせるんだ
束「さてと、行ってくれたか」
そーくんが部屋を出たのを確認して一つのデータに目を通す
≪ファフナー・ザルヴァートル≫
ファフナー・ノートゥングの建造中にいつの間にか出来上がっていたデータ
どうやらノートゥングの改修データのようで、より高性能になるのは分かる
けど、何か胡散臭い
いや、不気味なんだ
よく科学者はオカルトを信じないとかいうが私は違う
オカルトは原理が分からないだけ、それを理解し実際に起こして見せるのが科学者の成すべきことだ
だから私は第六感というのを信じてる、そしてそれが告げているのだ
――これは作ってはいけない――
だからこのデータを使用せずファフナー・ノートゥングは本来の予定通り作り上げた
このデータは不要だ
ピーッ
データの削除完了っと
これで良し
束「これからがんばろうね」
そーくんの世界でミールと呼ばれるこの子に語りかける
これからそーくんとファフナー・ノートゥングの事をこの子に教えていこう
そうすればいつかは………
投下ここまで
僕がこの世界に来た翌日
あれから僕は束さんの指示によりIS学園転入前に、組み上がったISの起動試験を始めた
各種機能に問題が無いかの確認と、僕がISの操作に慣れるのを目的にしたものだ
搭乗のため、専用のISスーツを身に着ける
構造としては島のシナジェティックスーツと同じで、コネクタ接続のため肌の一部が剥き出しに、さらに頭部コネクタ接続のヘッドギアがある
束「準備オーケー、始めていいよー」
総士「ファフナー・ノートゥング、起動開始します」
起動は僕の知るファフナーと似たようにまず腕部内にある計10個の指輪に指を通す
根元まで通したところで指輪が締まりぴったりと嵌まる
最後に頭部・肩・腹部・大腿部のコネクタが接続されISとの一体化は終える
ファフナーはコネクタ接続時に痛みに襲われるが、そのような事はなかった
この一連の流れはこの起動試験のみで、個人認証が終われば展開と同時に自動接続されるらしい
束「じゃあISを通して周りを見てみて」
ISの視界は360度全域が見える
ファフナーの視界も広かったが、真後ろまで見える事は無かった
その事は搭乗前に聞かされていたので問題はなかった
だが
総士「くっ」
起動試験中止
想定は出来てたが、やはり左目が見えるのが受け入れられなかった
束「やっぱダメか―、とりあえず想定通り左側の視界を調整してみるね」
あらかじめ束さんに伝えてはいたので左目側の視界を無くすことで対応した
起動が成功したので次にISを動かしてみる
動作自体はそこまで問題は無いのだが、違和感がある
ファフナーは機体と操縦者の感覚が融合していた
搭乗中は機体が僕らの体で、機体が傷つけばその痛みが、機体に風が当たればその感覚が操縦者に伝わったのだ
ISにはそのような事がないので、まるで自分の体の感覚が喪失したような感覚だった
基礎的な動きを一通り終えたので起動試験で最も重要な項目を開始する
束「じゃあそーくん、くーちゃん、やってみて」
総士「ジークフリードシステム起動、クロッシングを開始します」
クロエ「分かりました」
≪ファフナー・ノートゥング≫の頭部に組み込まれたシステムを起動する
単機では機能試験が出来ないので、クロエも今は隣のケージでISに搭乗している
まず機能を制限した状態でクロエのISとのクロッシングを開始
クロエのバイタルと搭乗しているISの状態・装備などが表示される
総士「システムを最大稼働に移行します」
最大可動により僕とクロエの精神が繋がる
クロエの見ているもの、感じているものが伝わってくる
おそらく向こうにも僕の感覚が伝わっているだろう
クロエ「これが…クロッシング」
僕の目の前に体が紅く染まったクロエが現れる
あくまでそこにいるのではなく、精神が繋がったことにより脳内でそこに映し出されているだけだ
紅く見えるのは『人の中の色は血で紅い』という心理から来るものだ
束「じゃ、くーちゃんを通してそーくんに質問するからそれに答えていってね」
これは僕ら2人の精神がどこまで繋がっているかを知るためのものだ
束さんが僕に聞こえないようにクロエに質問、クロエが内容を僕に伝え、回答をしていく
幾つか回答した後、役割をクロエと交代し彼女への質問を伝えていく
システム使用者間で正しいやり取りが行われているかの確認だ
束「おつかれー、もういいよ」
午前の起動試験を終え、僕らは昼食のため部屋を移動する
今回の食事はクロエが用意する予定だったが、そのクロエの強い希望で僕が作ることになった
あまり時間は掛けられそうにないので、ルーを使ったカレーにした
一騎はかなり拘った作り方をしていたので、僕も何時かあれに挑戦しようと思った
総士「水の量が予定より18cc少なかった、次は気を付けるか」
出来上がったカレーを持って行き、昼食を開始する
束さんは器用に食事をしつつ携帯端末でISの調整をしながら僕らに話しかけている
ISの調整についての希望とクロッシングの感想について聞かれた
午後はその調整に取り掛かるらしい
話が一段落したとき、緊急ニュースが始まった
何でも男性が動かせないはずのISを起動したとの事
僕自身がISの起動が可能なうえ、束さんとクロエ以外の人物に会ってない現状ではあまり凄さががわかない
ISを起動した人物の顔と名前が映される
≪織斑 一夏≫
僕と同じ年齢だ
束「あ、いっくんだー」
総士「知り合いですか?」
束「うん、私の大好きな人」
ニュースの続きを見る
世界初の事例なので特別措置としてこのままIS学園の入学が決定との事
世界各国はそれを承認するも、自国にスカウトするのに必死になることが目に見えてるらしい
束「おー、となるといっくんとそーくんが一緒の学園になるんだ」
総士「彼は大丈夫ですかね。強引にどこかに連れ去らわれたりは…」
束「大丈夫大丈夫、そんな世界を敵に回すことする愚か者はいないさー
でも国自体が欲しがるってのがあるしなー、念のため私が釘打っておく必要があるかも」
束「ごめんそーくん、もう一機IS造らなきゃいけなくなったからIS学園の入学遅れるかも」
昼食後少しして束さんにそう断られた
案の定と言うべきか先程の世界初の男性IS搭乗者スカウトの為の彼専用機の準備で各国の争いになった
専用機を提供するという事は、彼のデータがその国に独占できる
事態が大きなものになる前に、束さん自ら専用機を提供すると表明したことで事態を収めたとの事
そして彼の身に何かあった時にはISのコアの全ての機能を停止するという宣言と共に
機体は先ほどクロエの搭乗したISをベースにするようだ
このISは日本で第三世代機としてゼロベースから開発されてたが
各種調整が難航、開発が遅れる中イギリスやドイツが第三世代機発表
それに対抗するため開発は第二世代IS≪打鉄≫をベースに行う事で工期を短縮するプランに変更
不要となったこの機体はコアを抜かれ、処分するのを待つだけだったのを束さんが回収したらしい
束「てなわけで機体ポテンシャルはOKなんだよね。ただ調整とかで手間取りそうで」
総士「その位の事でしたら別に構いません」
束「ありがとー、束さんのワガママ聞いてくれて」
そうしてファフナー・ノートゥングの調整は一時中止
束さんは織斑 一夏専用ISの開発に注力する事となった
その間僕はやることが無いのでIS学園入学前に国語辞典のような分厚さのISの参考書を読むことにした
この中に詰め込まれた内容を入学前に全部覚えなければならないのだから骨が折れる
途中、僕の勉強の手伝いをして欲しいと束さんに頼まれたクロエが手伝いに来たりしながら進めていった
島には高校が無かったのでこうやって入試勉強のようなことをするのは少し楽しいと柄に無く思った
身を隠していた束さんが数年ぶりに存在を明かしたため、その所在を各国が捜査を始めた
それから逃れるために拠点を移したり今まで以上に表立った動きが出来なくなり2機のIS開発は大幅に遅れることになった
どうにか4月上旬に織斑一夏専用機が完成しファフナー・ノートゥングの調整を再開
4月下旬に入ろうとする時期、今日はこの機体を僕専用機にするための≪初期化≫と≪最適化≫を行った
これで僕専用IS≪ファフナー・ノートゥング≫が遂に完成した
束「お疲れそーくん」
束さんから声を掛けられる
僕が出て行ったあとこの拠点は破棄、束さんとクロエはまた別の場所へ移る
束さんの居場所を聞き出そうとする者から僕を守るためだという
お疲れと言うにはまだやることが多い
これから僕はIS学園に向かい、ISの稼働データを収集しなければならない
今回の投下ここまで
次は所用により1~2週間ほど空きます
IS学園から少し離れたとある町の郊外
学園転入のため、束さんここまで送られて来た
束「IS学園までの道はそこに書いてある通りね。これでしばらくお別れだね」
総士「ここまでありがとうございました」
束「何言ってるの、そーくんが元の世界に戻るときにまた私のお世話になるでしょ」
総士「そうでした」
束「じゃあまたその時が来たらね」
そういって彼女は人参のような奇抜なデザインの乗り物に乗って去って行った
見つからないようにここに来たはずなのになぜと思うが流石に慣れてきてしまった
総士(ISのデザインは真っ当なのになぜ…)
時間を確認するとまだ余裕がある
『しっかりと平和な日本を楽しむといいよ』
束さんがそう言ってくれてると思った
丁度いい、時間まで画面越しにしか見て来なかった町を散策するとしよう
総士「やめよう…」
確かに町は平和だった
だが女性から散々な扱いを受けて楽しむことが出来ない
外を歩けばナンパされるのはいいが、それを断ると酷い悪態を受けた
店の中に入れば、他の女性客から都合のいい使い走りにされそうになった
それに僕に対する女性店員の接客態度があからさまに悪い
男の立場がここまで悪いとは思わなかった
街の散策は止めて早くIS学園に行って手続きを終わらせよう
電車の使用は避けた方がいいと束さんに言われた意味が身に染みて解ったのでタクシーを使いIS学園に向かった
タクシーに乗ってから運転手の男性と世間話をしたが、この時ようやく心から落ち着いた
総士「まさかここまで時間が掛かるとはな…」
IS学園に到着し、手続きをしたがこれが大変だった
織斑一夏というIS操縦者の発見以降、世界各地で男性のIS適合検査が行われていたのだが
2か月間、いくら検査しても新たな男性適合者は見付からなかった
僕は束さんが見つけた男性適合者と伝えられているはずだが
この経緯と彼女の名前を語った詐称が多いせいで僕もそのたぐいと思われてしまった
束さんから預かった専用機を持っていることを見せた後、学園にある練習機のISを起動させて納得させた
動かせると分かると今度は本当に男か疑われ、念入りに身体検査された
正真正銘男のIS操縦者と認められ、ようやく本来の転入手続きに入れた
この手続きもやることが多く、全てを終えた頃には日が完全に落ちて星空が広がっていた
学園には寮があるが部屋の準備のため入れるのは明日以降で、今日は学園の手配した手配した外の宿泊施設に泊まる事となった
総士「明日の事も考えて早く移動しなくてはな」
IS学園は人工島丸ごと使用した施設で移動に電車があるが時間が掛かる
それに加え転入のため朝職員室でやることがあるのでかなり早起きをしなくてはならない
大きな荷物は学園に預かって貰えたので必要最低限の荷物を持ち宿泊施設に向かう
校門から出ようとしたとき、小柄な少女に声を掛けられる
少女「あーそこの子、ちょっといい?」
総士「なんだ?」
声のかかった方を向くと、両サイドの髪を束ねた少女がなぜか驚いた表情でいた
=============
転入手続きをするために総合事務室がどこにあるかを聞くため目の前の生徒に声を掛けたんだけど
鈴「男ぉ!?」
返事の声が恐ろしく低くて思わず叫んでしまった
あたしが叫んだ瞬間、目の前の男の眉間に皺が寄った
なによ、男のくせにそんなロン毛でいるのが悪いじゃない
男「一体何の用だ、僕は急いでいるんだ」
うわぁ、ちゃんと答えてはくれてるけど声に力入ってるし
明らかに不機嫌だ
とりあえず用件だけ聞いておこう
鈴「総合事務室ってどこにあるか知らない?私ここ来るの初めてだからさ」
男「それならばアリーナの向こうにある灯りの点いている部屋がそうだ」
鈴「そ、ありがと」
時間も時間だし手早くお礼を言って小走りで事務室に向かう
さっきの男、私とそう歳の変わらない感じだったのにIS学園に何の用だったんだろ?
まあいいや、それより一夏だ一夏
1年ぶりに会える好きな男の姿を思い浮かべる
ホントはもっと遅くに来る予定だったのを一夏がいるって聞いてから頑張って予定前倒しにしたんだよね
なんか国のお偉いさんが驚いてたけどそんなの一夏に逢えることに比べたらどーでもよかったし
男子にとって中3から高1ってのは大きいからなあ、きっとかっこよくなってるんだろうな
鈴「えへへっ」
ついつい笑みが零れるが恋する乙女なんだ
このくらい許されるでしょ
一夏「だから…」
アリーナを通り過ぎたところで少し懐かしい男の声が聞こえた
そうじゃん、今ここで一夏に会えてもおかしくないじゃん
いきなり転校して来たって驚かすならここで話しかけたっていいんだし
引き返すため振り向いたら
一夏「2人の説明は分かりづらいんだって」
「だからあそこをこうクイッとする感じで」
一夏「箒はその独特すぎる表現じゃなくてほらもっとこう…」
「ですからあそこは右後方36度に回避するようにすれば…」
一夏「セシリアもそれはイメージしにくいんだって。こんなんで俺クラス代表戦大丈夫かな」
「何を弱気な事を言っている。そのようでは勝てる試合も勝てなくなる」
「そうですわ。せっかくわたくしがクラス代表の座を譲ったのですから優勝しないと許しませんわよ」
なにあの女たち
一夏の奴、私というのがありながら何両手に花状態で女はべらしてるの
そりゃIS学園は女ばっかだけどさ、あれはいくらなんでもないんじゃないかな
声を掛けるのを止め事務室に向かうけど、さっきまでのウキウキした気持ちは消え去ってしまった
総合事務室に着いてから転校の手続きを済ます
中国の代表候補なので面倒事は国が予め済ましてくれてるからこの時間でも手早く終わった
事務員「ようこそIS学園へ、凰 鈴音さん」
にこやかに歓迎の言葉を掛けられる
おかしいな、いつもならこっちも笑顔で返せるはずなのに
心がざわつくせいでそれが出来ない
鈴「ところで織斑一夏って何組ですか?」
事務員「貴女も噂の男子生徒が気になるの?
あの子は織斑先生のクラスだから1組で凰さんは2組ですから残念ですけど別のクラスね
他に聞きたいことはあります?」
まずい
せめて同じクラスならどうにかなったのにこのままじゃさっきの女達に一夏を取られる
そういえば一夏ってクラス代表がどうとか言ってたよね
鈴「じゃあ2組のクラス代表って決まってる?」
事務員「ええ、もう決まってますけど」
鈴「名前は?部屋はどこ?」
事務員「えっと…聞いてどうするんですか?」
鈴「代表の座を譲ってもらいます、何が何でも」
もう一夏と少しでも接点を持つにはこれしかない
=============
翌日の早朝
寮の部屋が手配できたという事でそこに宿泊に使った荷物を置き、職員室に向かった
総士「失礼します」
千冬「よく来た。私がお前の入るクラスの担任の織斑千冬だ」
真耶「副担任の山田麻耶です。今日からよろしくお願いしますね」
職員室に入ると2人の女性から自己紹介される
しかしこのIS学園、教師も女性が殆んどのようだ
生徒が女子のみなのだから納得できるが
鈴「失礼します。2組の担任はどちら…って昨日の男女!?何でここに!?」
昨日僕に話しかけて来た女だ
あの時は疲れもあって不機嫌に振る舞ってしまったが、いい加減我慢できないので言い返す
総士「何なんだお前は昨日から人に対して失礼な。礼儀というのを知らないのか!」
鈴「はぁ?黙りなさいこのクソロン毛!間違われたくなかったら鬱陶しい髪を切りなさいよ!」
総士「なんだと!!」
スパパーン!!
総士「ぐあっ!」
少女「いたっ!」
千冬「転校早々貴様らは何をしている」
この担任、一切の躊躇なく殴ってきた
あまりの痛みにどんな鈍器を使ったかと思ったが、彼女が手にしているのは出席簿だ
これだけの激痛、どれほどの力で殴ったんだ
少女「でも千冬さん…」
千冬「ここでは織斑先生だ。転校してクラス入りする前に反省室送りになるか?ん?」
少女「ご、ごめんなさい」
こんな恐慌政治のようなことをする人物が僕の担任だとは
これから向かうクラスは大丈夫なのだろうか
職員室を出て教室に山田先生と一緒に向かう
織斑先生は他の仕事があるので少し遅れて教室に来るとの事だ
教室に着いて先に山田先生が教室に入り、僕は呼ばれるまで扉の前で待つ
山田「えー、お知らせなんですけど今日はみんなに転校生を紹介しまーす」
「え、転校生って2組じゃなかったの?」
「黛先輩しっかりしてよねー」
山田「それじゃあ皆城君入ってきてくださーい」
「え、君って…?」
呼ばれたので扉を開き教壇の横に歩いていく
総士「皆城総士です
事情によりこの時期に転校という形になってしまいましたがよろしくお願いします」
「…………………………………………」
教室に入る前は喧騒が聞こえていたのに僕が入ってきた途端静寂に包まれた
「転校生って…男?」
クラスの1人から質問される
山田「はい、そうですよ」
僕の代わりに山田先生が質問に答えた
元々女子しかいない学校に男が入るのだ
疎外されるのは予想できていた…と思っていたら
「「「キャアァァァーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」
凄まじい歓声が僕に浴びせられる
声で窓をここまで振動させるのが可能だと初めて知った
「男子だよ男子!2人目が来たよ!」
「織斑君と違ってクール系!」
「あぁっ、冷たい瞳で私を口汚く罵って!!」
山田「みっ皆さーん、ホームルームを始めるので静かにしてくださーい!」
山田先生の号令でクラスに少し落ち着きが戻る
歓迎されているのは分かったが、これはこれで先行きが不安だ
投下ここまで
トリテスト
ホームルームが終わり授業が始まるまでの空き時間
僕はクラスの女子から質問攻めに遭っていた
「皆城君ってどこから来たの」
「女性のタイプは?恋人は?」
「お願い私を踏みつけて!!」
先程からとんでもない事を頼んでくる女子がいるが関わらない方がいいだろう
そんな中、人ごみを掻き分けて1人の男子が話しかけて来た
一夏「よっ、初めまして」
総士「織斑一夏か」
一夏「あれ、自己紹介まだなのになんで俺の名前知ってんだ?」
総士「あれだけ世間を賑わせたんだ、君の事を知らない人はいない」
一夏「ははっ、そうだった」
男子2人で話している間は僕らの周りだけ不自然に人が離れ、質問攻めは収まる
視線を動かし廊下を見ると他の学年やクラスも来ているのか凄まじい人数がひしめき、写真を撮る者もいる
総士「動物園の動物のような扱いだな」
実際の動物園はどの様なものかは知らないがそう例える
どうせなら時間があれば行ってみるのもいいかもしれない
一夏「昨日までは落ち着いていたんだけどな
新しい男が来て盛り返しちゃったみたいだな」
「それにしても転校生が男子だったなんてねー」
「黛先輩も間違えるもんだねー。フェイクの情報を掴まされるなんて」
「あの中国から専用機持ちが来るって噂?」
鈴「フェイクじゃないよ、それ」
先程僕と一緒に織斑先生に殴られた失礼な少女が教室の入り口から入って来た
一夏「鈴…?お前、鈴か?」
鈴「そうよ。専用機持ちで中国の代表候補生、凰 鈴音
ついでに2組のクラス代表になったから宣戦布告に来たわ」
総士「宣戦布告?1組と2組は仲が悪いのか」
一夏「違う違う、もうすぐ1年のクラス代表同士のISでの対抗戦があるんだ
ちなみに1組の代表は俺だからよろしく」
鈴「ま、この私が代表になったんだから簡単には優勝させないから覚悟しとくことね」
昨日から失礼な女、凰というのか
今まで僕に会った時と違い気取った話し方をしているな
一夏「ところで何かっこつけてんだ、似合ってないぞ」
鈴「んな!?なんてこと言うのよアンタは!」
一夏に指摘され僕の知っている凰の口調に戻った
しかしそろそろ時間が迫っているので2人に声を掛けよう…ああもう手遅れだ
スパパーン!!
千冬「もうすぐ授業が始まるというのに、何を騒いでいる馬鹿者ども」
案の定というべきか織斑先生に殴られている
一夏「いってぇ、何すんだよ千冬姉」
鈴「千冬さん…」
千冬「ここでは織斑先生だ。凰は自分の教室に戻れ、邪魔だ」
鈴「す、すみません…」
凰が怯えながら教室から出ていく
鈴「またあとで来るからね!待ってなさい一夏!」
千冬「さっさと戻れ」
鈴「は、はい!」
織斑先生に怒られ全力で走って去っていく
それにしてもさっきの会話からして凰と一夏は知り合いか何かか?
他のクラスメイトもそう思ったようで一夏に質問をするが「授業を始めるぞ馬鹿者ども」という織斑先生の一言ですぐに静まった
何かと紆余曲折ではあったがこうして僕の高校生活は幕を開けた
世界各国から生徒が集められている上、入学式から1か月近く経っているだけあって授業の内容は進んだものが行われている
千冬「では皆城。ISの各世代の違いを説明してみろ」
総士「第1世代はまず兵器としてISの完成、第2世代は後付装備による多様化
第3世代はイメージ・インターフェイスを利用した特殊装備の搭載を目的にしています」
千冬「正解だ。どこかの愚弟と違ってしっかり予習しているようだな」
横目で一夏が苦い顔をしているのが見えた
転校前に束さんが予習させてくれたおかげで授業に付いて行けないという事態は起きなくて済んだ
竜宮島では学校の授業だけでなくアルヴィスの勤務というのがあったのを考えるとあの参考書を覚えるのはそう苦ではなかった
途中、2人ほど何度も質問を答えられず注意として織斑先生に殴られていたのを除けば問題なく進められた
「お前のせいだ!」
「あなたのせいですわ!」
一夏「なんでだよ…」
昼休みに入って早々、一夏が先程の注意を受けていた女子2人に責められている
なぜ責められているか一夏には分かっていないようだが、僕にも分からない
一夏「話ならメシ食いながら聞くから学食行こうぜ」
「一夏がそう言うのなら、いいだろう」
「そうですわね、行ってさせあげてもかまいませんわ」
一夏「総士も一緒にどうだ?転校初日で学園に慣れてないだろうし案内するぞ」
総士「僕は別に構わないが…」
一夏「おう、じゃあ行こうぜ」
待て、せめて同行者に確認を取るかしたらどうだ
2人の怒りが僕に向かってきているぞ
僕と一夏と件の女子2人、その他数名のクラスメイトが付いて来ながら僕らは学食に移動した
学食に向かう間に他のクラスメイトの自己紹介を受ける
織斑先生から注意を受けていた2人の黒髪の方が篠ノ乃 箒、金髪の方がセシリア・オルコットというようだ
束さんから予め聞いてはいたが、彼女が妹か…
人の事は言えないが似ていない
移動中に残りのクラスメイトたちの紹介を受け、それが終えたとほぼ同時に学食に着いた
はじめて利用するので手堅くカレーライスを注文しておく
鈴「待ってたわよ一夏!」
一夏「待ってたも何もそっちが一方的に約束しただけじゃねえか」
注文した品を受け取った僕らに凰が話しかけて来た
一夏の提案により彼女も合流し一緒に食事することとなった
かなりの大人数になったが、運よく全員が座れる大テーブルが空いてたので皆でそこに座り食事を始める
席につき食事を始めたら凰と一夏が話し出す
一夏「それにしてもいつ日本に戻ったんだ。ビックリしたぞ」
鈴「ビックリしたのはこっちもよ。いきなりニュースでアンタが出たとき犯罪でもやらかしたかと思ったわよ」
一夏「おいおい、俺がそんな事するように見えてたのかよ」
鈴「男がISを動かせるよりかは信憑性はあると思うけど?」
一夏「ぐ、それを言うか」
現在ISの男性搭乗者はおおよそ60億分の2
ニュースが流れた時点では表向き0だったのだから凰の意見は至極当然だ
箒「一夏、そろそろどういう関係か説明して欲しいのだが」
セシリア「そうですわ!もしかしてその方と付き合ってらっしゃるのですか!?」
一夏が凰と話し込んでしまっているのに業を煮やした篠ノ乃とオルコットが割って入った
鈴「つ、付き合ってるってそんなんじゃ…」
一夏「何でそんな話になるんだよ?ただの幼馴染だって」
鈴「………」
一夏「何で睨んでくるんだよ」
鈴「何でもないわよ!」
一瞬、一騎の顔がよぎった
一夏もあいつと同じ他人の気持ちに鈍感な性格か
箒「幼馴染…?」
一夏「箒が転校したのって小学4年の終わりだったろ?
5年の初めに鈴が転校してきたから2人は面識ないんだったな」
鈴「そういや一夏が時々話してたわね。これからよろしく一夏の昔の女さん」
箒「なに…!?」
セシリア「んんっ、わたくしの事をお忘れでは?中国代表候補生の凰 鈴音さん」
鈴「…アンタ誰?」
セシリア「イギリス代表候補生のこのセシリア・オルコットをご存じないと!?」
鈴「うん、あたし他の国とか興味ないし」
セシリア「な、な、な……!!」
箒とセシリアの2人を挑発するような言動、凰のあの失礼な性格は男女関係ないのか
会話からこの4人の関係性が大体見えてきた
この感じ、一騎や遠見達を思い出す
ただこの女子3人は遠見が翔子にやったように譲る気はないようだが
一夏「そういや総士と鈴って知り合いなのか?」
総士「いや、昨日少し顔を見た程度だ」
一夏「ふーん、そうなのか。なんか妙に仲良いなーって思ってさ」
総士・鈴「「どこがだ(よ)」」
一夏「ほら、そういうとこ」
凰「………………」
凰が一夏を睨んでいる
当の一夏は笑っているが、相手に変に煽るように誤解されることをするな
こういうのは一度こじらせると面倒なんだ
鈴「そういえば一夏ってクラス代表なんだっけ」
一夏「まあ、成り行きでな」
鈴「何ならアタシがISの操縦を見てもいいけど」
箒・セシリア「だめだ(ですわ)!!」
箒「ISの操縦は一夏から直々に私に教えて欲しいと頼まれているからな!」
セシリア「第一貴女は2組でしょう!敵の施しは必要ありませんわ!」
再びケンカを始めてしまった
もうこれ以上巻き込まれるのは御免なので他のクラスメイトと話す
名前は…布仏 本音、鷹月 静寐、相川 清香だったか
静寐「それにしても皆城君が入学に間に合っていたらどっちがクラス代表になってたんだろうね」
総士「クラス代表はどうやって決めたんだ?」
清香「自薦・他薦どっちもアリで自薦がセシリアさん、他薦が織斑君だったよ」
本音「みっしーはきっとおりむーとおんなじで他薦されたんじゃないかな~」
みっしー?まさか僕の事か?
静寐「そーなると織斑君・セシリアさん・皆城君で代表決定戦だったのかな?」
本音「おりむーとせっしーが専用機持ちだからみっしーの分が悪いよね~」
総士「確かに、その頃は僕の専用機の調整が終わってなかったからな
訓練機に使われている第2世代では第3世代の専用機と戦うとなると不利だ」
清香「え?皆城君も専用機があるの!?」
総士「男性搭乗者のデータ収集が目的で渡された。一夏も同じ理由で持っているはずだと聞いているが」
ガタタッ!!!
そう答えた瞬間食堂にいた生徒全員が僕の所に集まってきた
「ということは訓練相手が必要だよね!」
「私3年だから教えられること沢山あるからどう!?」
「いやいやここは同じ1年同士一緒に頑張っていきましょう!」
「貴女3組でしょう!クラスの結束を高めるためにクラスメイトの私と!」
「ちょっとアンタは織斑君狙いのハズでしょ!」
「私もお願い!思いっきりやっていいからむしろ私を痛めつけて!!」
また不穏な発言が聞こえた事は触れずにおく
転入するまではほぼ1人で、本当に必要最低限しかISを動かせていないので申し出は助かる
だから言い争いをするのは止めて欲しい
ここまで
話し合いの結果、僕の訓練相手は1日2人でローテーションを組むことで決定した
午後の授業が終わり、放課後に自主訓練のために開放されるアリーナに向かう
アリーナの更衣室でISスーツに着替え、ピットに向かう
ピット内は他の生徒が使うために訓練機が陳列されているがなかなか壮観だ
ピットに着いた時には既に訓練相手のパートナーが来ていた
初日はなるべく経験のある人に教えて欲しいという僕の希望から3年の先輩2人にしてもらった
「あ、来た来た。今日はよろしくね」
「ちょ、そのスーツ露出度スゴイ…」
なぜかパートナーの1人に顔を赤らめ目を逸らされた
肌の露出具合は普通のと変わらない筈だが
先輩2人が訓練機の搭乗に向かったのでISを起動する
総士「ファフナー・ノートゥング起動」
起動成功
展開自体は素早く行えるが、そこに至るまでのイメージが少し手間取る
これは経験を積んで覚えていくしかなさそうだ
「よかった、ISのパーツで隠れてくれて…」
「へ~、皆城くんのって綺麗な空色なんだね」
このファフナー・ノートゥングの機体色は束さんが決めた
奇しくも一騎がかつて乗っていたマークエルフと同じだ
「じゃ、始めよっか」
総士「お願いします」
パートナーとスタジアムに入り、まず飛行訓練を行った
動作にある程度慣れたところで、回避行動の訓練に入る
訓練相手が射撃し、僕がそれを躱す
必要最小限に、距離に常に気を配る
「上手だね、これは私たちが何か教える必要はあまりないかも」
「じゃあ回避はここまでにして攻撃の練習をしましょう」
基礎的な動作を行うため、後付武装(イコライザ)はライフルのガルム44・ロングソード・レールガンを装備した
射撃訓練のための的が並ぶ
まずガルム44とレールガンで移動しながら的に射撃する
特にレールガンが顕著だが実弾兵器なので反動が大きく、姿勢を大きく崩し墜落しかけた
次にロングソードとマインブレードでの格闘を行った
島で剣道をしてきたおかげでこちらはある程度は上手くいった
一通りの動作を終えた後、訓練相手と運用法を模索する相談をした
「うーん、射撃は反動で武器に振り回されてるね」
「レールガンは威力は申し分無いから確実に当てることを優先してもいいとおもうな」
総士「射撃時の機体の姿勢制御これからの課題になりますね」
「それとソードだけど、両手持ちなのがね」
総士「射撃との併用は難しいですね」
「射撃しつつ奇襲で接近してから出すかあらかじめ出して相手の射撃を捌き切るか…」
武装の種類が多いのでとれる戦法も多いが、その分搭乗者の技能も大きく求められる
使いこなせるようになるには時間がいくらあっても足りないくらいだ
アリーナ利用の終了時間の少し前、今日の訓練は早めに終了した
寮に用意された僕の部屋に入るため色々やる必要があるからだ
総士「今日はありがとうございました」
「いやいや、こっちも皆よりリード出来たから。色々ね」
「あーあ、次はいつやれるのかなぁ」
スタジアムから出るとき横目で見たが、一夏は箒とオルコットと訓練を続けていた
どうやら一夏1人に女子2人が組んでいる…連携の練習だろうか
ピットに戻りISを解除、男子用に割り当てられた更衣室に向かう
更衣室の前に着くと、昨日からよく見る者から声をかけられた
鈴「なんだアンタか。一夏はまだなの?」
総士「なんだとはなんだ。一夏ならもう少し後になるぞ」
鈴「そ、教えてくれてありがと」
相変わらず失礼な物言いだが本人に悪気が無いのは理解した
だが不服がないわけではないので咎める事は続ける
IS学園の制服に着替え更衣室から出ようとしたとき、それは起きた
≪タ……スけ………テ…≫
総士「っ!!」
突然何かの声が聞こえたと思った瞬間、頭に強烈な痛みが走った
この痛みには覚えがある
ジークフリードシステムを通して経験した、同化現象の症状に似ている
痛みに耐え切れず思わずロッカーに倒れかかってしまう
鈴「総士!?一体どうしたの!」
ロッカーにぶつかった音が外に聞こえたのか凰が駆け寄ってきた
総士「大丈夫だ…すぐ、収まる」
深呼吸して落ち着くのを待つ
痛みは時間と共に弱くなり、ある程度落ち着いたところで椅子に座る
凰が持っていたスポーツドリンクを差し出してきた
鈴「大丈夫?これ飲む?」
総士「済まない…」
受け取ったドリンクを飲んだら少し楽になった
鈴「歩ける?保健室に行くわよ」
総士「もう1人で問題ない、安心していい」
鈴「安心出来ないわよ、じゃあ行くわよ」
腕を掴まれ立ち上がらされた
だが体力をかなり奪われたのか足に力が入らない
鈴「ほら何が問題ないよ。肩貸してあげるから」
そういって僕を支えながら保健室に連れていかれた
体重をかなり預けているのに凰は体格差を物ともせず平然としている
見た目によらずかなり体力があるようで、流石に代表候補だけあると感心する
総士「一夏の事を待ってたんじゃないのか」
鈴「そんな事気にしてたの?」
総士「お前にとっては大事なはずだろう」
鈴「あたしはそこまで薄情じゃないわよ」
言い合っている内に保健室に着いていた
担当の先生にベッドに寝かされ、しばらく休むように言われた
その様子を見ていた凰に声を掛ける
総士「アリーナに戻るといい。一夏に会うならまだ間に合う」
鈴「うん、総士も養生しなさいよ」
総士「面倒を掛けさせて済まなかった」
鈴「こーいうのは気にしないの、じゃあまたね」
保健室から出た頃にはまた夜になった
症状の事を話したら原因を調べるためのまた長時間検査された
結果として異常は見られなかったのでしばらく経過を見る事となった
本来の予定では今日の授業や訓練の復習を予定していたがもう夜も更けてしまっている
流石に今からやってたのでは明日に響いてしまう
総士「もう勘弁して欲しいものだな」
今日はもう部屋に行って荷解きをしたらシャワーを浴びて寝ることにしよう
予定していた訓練の復習は明日の昼休みにすればいい
シャワーを浴びた後の飲み物が何か欲しいので寮内の自動販売機に寄り道する
その間訓練後の倒れる直前の出来事を思い出す
総士「あの声は一体…」
たすけて
確かにそう聞こえた
それにあの直接頭の中に響く感覚、ジークフリードシステムのような…
総士「まさか…」
待機状態としてチョーカーに変化しているファフナー・ノートゥングを手に取る
今回の訓練では使用していないジークフリードシステムが作動しクロッシングを行ったのか?
だとしたらなぜ勝手に?そもそも誰と行ったんだ?
鈴「グスッ、一夏のばかぁ……」
考え込んでいたら自動販売機のそばにある椅子で凰が泣いているのが見えた
寄り道は止めて部屋に戻ろう
鈴「待ちなさいよ」
気付かれた
鈴「泣いてる女を放ってくなんて男としてどうなのよ」
総士「済まないが恋愛関連の相談は僕には無理だ」
自分のですらどうすれば良かったのか分からなかった僕にアドバイスなど出来るはずがない
鈴「こーゆーのは黙って話を聞いてやるだけでもいいのよ。だから聞け」
総士「そ、そうか。分かった」
半ば命令される形で凰の愚痴に付き合わされた
要約すれば一夏にプロポーズのつもりで言った言葉が間違って覚えられており
それで頭にきて思いっきり頬を引っ叩いて来たが耐え切れず泣き出してしまったらしい
鈴「昼食の時、あたしのことただの幼馴染って言ってたからちょっと不安だったんだけどね
ただいくらなんでもこんなのってないじゃない…」
そのプロポーズの言葉は「毎日酢豚を作ってあげる」とかいうものだ
もっと分かり易い言葉で伝えなかった凰が悪い
一瞬そんな考えが頭を過ぎったが、その言葉は飲み込んだ
総士「…そうだな」
思いを伝えることの難しさ、そのせいで起きてしまう擦れ違い
言わずとも理解してくれると相手に押しつけてしまう
相手と本当の意味で通じ合うのは本当に難しい
その経験をしてきたから、僕は彼女のつらさを理解できる
鈴「ねえ総士、アタシどうしたらいいんだろ…」
総士「話を聞くだけで充分じゃなかったのか?」
鈴「そのくらい気を利かせなさいよ」
総士「仕方ない、あくまでこれは僕の考えだが…」
気まずいままでいたらお互いの心が余計に離れてしまうから早く和解する方がいい
ただ今は互いに感情的になるだろうから落ち着いて話せるようになるまで待った方がいい
とりあえずそうアドバイスしてみた
鈴「うん、そうしてみる」
総士「そうか。では健闘を祈る」
鈴「ありがと。じゃあまたね」
総士「ああ、また会おう」
凰の元気が少し戻ったように見えた
僕と一騎のように重要な事を伝えないばかりに拗れてしまわなければいいが…
今日の投下ここまで
凰からの相談を受けて1週間ほど経った
未だ一夏と話してない様子の凰が気になり昼休みに2組の教室に向かう
あれ以来凰と話すようになり、相談内容を一夏に聞かれないように2組に出向くようにしていたのだが
「お、みんな皆城君だよ」
「今日もまた一緒にお昼食べにいってもいい?」
総士「それは構わないが…」
「あ、ズルーイ。私も私も!」
そんなことをしてたせいか、いつの間にか1組より2組のクラスメイトと打ち解けていた
それにより想定していなかった問題が発生していた
1組を入るときにこんな会話が聞こえてきたのだ
「最近皆城くん2組にばかりよく行くよね」
「聞いた話なんだけど凰さんが皆城くんに泣きついてたって聞いたんだけど」
「それほんと!?もしかして私たちから皆城くんを取るためにわざと…」
「織斑君には頑張ってくれないとね、皆城君を奪った2組を叩きのめして貰わないと」
そして2組に入ろうとしたときに聞こえたのが
「男子を独占してる1組なんて軽く捻っちゃって凰さん!」
「そうよ織斑くんだけでもかなり譲歩してるのにね!」
つまり1組と2組が僕を巡り対立しているのだ
総士「何てことに…」
まさか僕1人にここまでの影響力があるとは考えもしなかった
島にいたときは1学年1組、そして男女比がここまで極端でなかったためクラス同士の対立が全く予想できなかった
問題はこのままクラス対抗戦が行われればその勝敗で対立が悪化し取り返しがつかなくなってしまう事だ
お互いのクラス代表がこの事態を収めるのが良いのだろうが肝心の凰と一夏が喧嘩中でそれが叶わない
鈴「えっと、ごめんね。あたしのせいで」
総士「責任を感じているなら早く一夏と和解するんだ。1組との対抗戦は来週だろう」
鈴「分かってるって、今日の放課後ちゃんと一夏と話し合うから」
総士「それならいいが。それよりお前が悪く言われてるのは…」
鈴「いいの。自業自得みたいなもんだし気にしないで」
発端は凰だろうが悪化の一端は僕にあるというのに
それを責められないと却って罪悪感が強くなる
話が一段落したのでそのまま一緒に食堂に向かう
食堂で1組の生徒と会ったが僕らに同行していた2組の生徒と睨み合いになってしまった
総士「食事の時くらい仲良くしてくれないか」
鈴「無駄よ。注意したところでアンタの気付かないところで続けるのがオチ」
放課後の訓練は明日からクラス対抗戦の準備のため会場となるアリーナが使用不能
例外としてクラス代表とその練習相手のみ授業外のIS訓練が可能だが
僕はそこに含まれないので今日を最後に暫く動かせなくなる
なのだが今日の練習相手のパートナーが運悪く1組と2組の生徒だった
その2人が戦闘を始めてしまいその火消しで手いっぱいで碌にやれなかった
凰と一夏が和解しない限りこれが続くと考えると気が重くなる
やべ使うトリ間違えた
あっちのスレと読者被ってないこと祈らないと
翌日の朝、1組のクラスメイトから事の顛末を知り凰に問い詰めた
総士「で、どうしてこうなったか教えて貰おうか」
鈴「そ、総士、怒ってる?」
総士「………………………………………」
鈴「ひぃっ!」
無言で睨みつけることで答えてやった
凰に詳しく聞いた所、改めてプロポーズの件について話し合ったが、間違いに気付いていない一夏に上手く伝わるはずもなく
再び喧嘩し、来週のクラス対抗戦で勝った方が負けた方に何でも言う事を1つ聞かせられるという約束をしてしまったらしい
「ねぇねぇ、これで凰さんが勝てば皆城君を2組にする事って出来るかな?」
「うーん、ただの生徒間の約束だから難しいんじゃない」
「でもその生徒がお互いのクラス代表なんだからいけそうじゃない?」
しかも懸念していたクラス対抗戦にそんな約束をするせいで対立がさらに酷くなった
どちらが勝とうが、もう状況の解決は望めなくなった
なぜ和解しようとして状況を悪化させているんだ
鈴「ごめんなさい…」
総士「お前はクラス代表なんだ
振る舞いひとつで2組全体に影響するのだからその責任の重さを自覚しろ」
どうしたものか
今更僕が1組に働きかけて沈静化しようにも、ここまで悪化していては手遅れだ
鈴「…クラス対抗戦の事だけど、負ける訳にはいかないから」
総士「…仕方あるまい、お前は代表候補でもあるからな」
クラス対抗戦には各国から来賓が来る
その目的の中には代表候補の査察もあるので、凰にとってはクラスの問題を抜きにしても勝たなくてはならないのは理解している
鈴「ごめん」
総士「謝る必要はない」
クラス間対立のそもそもの原因が僕なのでそれ自体を責めるのは筋違いだ
むしろこの件では鈴は一切僕を責めてないのだからかえってこちらが申し訳なく思う位だ
一夏「なあ、ちょっといいか」
ホームルームの時間が迫ったので1組の教室に戻ると一夏に話しかけられた
タイミングからして凰の事について聞きたい様子だ
一夏「総士って鈴と最近仲良くやっているだろ。あいつが怒ってる理由知らないか?」
総士「残念だが僕の口からは何も言うことは出来ない」
一夏「そうか、じゃあやっぱり勝って本人に聞くしかないか」
僕らが話している間、箒とオルコットがこちらを見ていた
喧嘩理由の真意を分かっているのか、心配そうな顔をしている
一夏「それにしても最近、このクラスなんか変だよな」
総士「変とは?」
一夏「なーんかピリピリしているというか、そんな感じ」
一応表立って対立しているよう男子に見えないよう隠している
ここまで悪化した状態が続いたのと2組とも交流があるので流石に僕は気付いたが
元からあまり2組と接触しないため1組の物しか感じ取れていないせいか一夏はまだ気付いてないようだ
千冬「ホームルームを始めるぞ、席につけ」
今はこれ以上この件を考えるのは無理だろう
昼休みに改めて解決方法を模索しなくては
昼休みに考えた結果、僕は考え付いた内容を実行するため放課後に凰を尋ねた
総士「凰、お前のクラス対抗戦の練習に付き合おう」
鈴「…いったいどういう風の吹き回し?」
総士「1組と2組の勝負、お前に勝って貰うためだ」
鈴「これ以上2組に肩入れするような行動して大丈夫なの?」
総士「心配はない、いくぞ」
既に周りには僕は2組、特に凰に入れあげていると判断されている
今更このような事をしようが状況は良くも悪くもそうは変わらない
総士「ただし頼むことが1つある」
凰のした約束の言う事を1つ聞くというのに関して考えた
一夏は「喧嘩理由を包み隠さず話す」と既に何を言うかは決めていた
一方凰はまだその内容については明言してない
ならば凰に勝って貰い一夏に事態の沈静化の協力を取り付けさせればいい
総士「1組で対立の原因の僕と2組のクラス代表の凰、2人が事態を憂いていると分かって貰えば解決するはずだ」
鈴「そういう事ね。いいわ、その考え乗ってあげる」
一夏達は対抗戦まで第1アリーナで練習すると聞いた
これ以上2人がまた喧嘩しようものなら完全に手が付けられなくなってしまうので
対抗戦までに凰と一夏が鉢合わせるのを避けるため別のアリーナで凰と演習することにした
今度こそこれで解決することを願う
風呂入るため一時中断
==========
あたしの使用する専用IS≪甲龍≫
二振りの青龍刀≪双天牙月≫を持った近接パワータイプ
ただし真価は空間自体を圧縮することで砲身を生成、余剰衝撃を砲弾とした衝撃砲≪龍咆≫だ
砲身も砲弾も不可視の上、全方位への射撃が可能で普通は躱せるはずがないのだが
鈴「なんで避けられるのよ!」
今総士とアリーナで模擬戦をしているけど、悔しいけど苦戦してる
総士「確かにその衝撃砲は強力だが凰は過信し過ぎている
タネが分かって近接武器を持ったまま距離を取られれば警戒もする」
あたしが総士に対し龍砲を使ってみた結果、殆んどが躱されるかむしろ撃ちだす前にカウンターを受けさせられた
総士「他に遠距離武器はないのか
それと併用すれば衝撃砲の特性が生かせるはずだ」
鈴「だったら、これでぇ!」
双天牙月を連結させて投擲
回避されるがその隙をついて龍咆を発射
一瞬総士が慌てたように見えたがこれも躱された
総士「ほう、そう来るか。だがまだ甘い」
鈴「それはどうかしら」
総士「何…ぐっ!?」
さっき投げた双天牙月が放物線を描き総士に背中から命中した
総士は龍咆を警戒してたからそれをオトリにすることを思いついた
そして双天牙月を先に使って龍咆を本命と思わせてやった
流石にこの二段構えのには気付かなかったようだ
鈴「どうよ!」
総士「なるほど、これはやられた」
模擬戦闘をして思ったが、総士は専用機持ちにしてはISの技能はぶっちゃけ良くない
操縦に関しては動きがかなりぎこちなくて武装の展開にてこずってるのからして、単純に経験不足だと思う
けど戦法とか武器の使い分けとかの知識面は相当しっかりしているからこんな風にアドバイスが的確だ
本国じゃ甲龍の強みしか研究してこなかったのでこうやって弱点を教えてくれるのは助かる
総士「今日はここまでにしよう」
鈴「了解っと」
アリーナの使用終了時間がきたのでピットに入りISを解除し、今日の練習を終わる
模擬戦中、少し気になる事があったので聞いてみる
鈴「ねえ総士、1つ確認しても大丈夫?」
総士「訓練に何か問題でもあったか?」
鈴「もしかして、左目…見えてない?」
総士「……ああ、そうだ」
左目の傷に触れながら答えた
途中から動きに不自然なトコがあって気になってもしかしてと思った
けどISのハイパーセンサーで得た情報を直接脳に送られるため本来はIS搭乗に視力は影響しないはずなのに
鈴「どうして見えないままにしてるの?すごいハンデじゃない」
総士「確かにISによって視力は得られるが受け入れられないんだ、左目が見えることが
この体が僕でない別の物になっていく気がして、ISとの一体化が出来なくなるんだ」
ISとの適合率が高くとも、こんな風にISとの一体化を受け入れられないのがときどきいるのだ
曰く「私の目はこんなにも広く見えない」とか、「こんな手が大きいなんておかしい」とか
こういったのは学園の入試試験で確認され、不合格となる
多分総士は貴重な男性適合者だからハンデを無視してここにいるんだろう
鈴「そうなんだ…、ごめんこんなこと聞いて」
総士「気にするな、これは僕の心の問題だ」
鈴「無理はしないでよ」
世の中には隻腕でも問題なくISを動かせる人物がいると聞いたが、それはかなり特殊な例だ
強引に動かそうとすれば搭乗者にかかる負担が凄まじいことになる
自分が言った手前そんな事させる訳にはいかないので注意しておく
==========
更新ここまで
次回からクラス対抗戦が始まります
昼くらいから投下
原作1巻分の範囲を書き終えたらこのスレは依頼出して2巻以降の分はは新スレ立てます
前回と同じくトリ間違い
投下開始
あれから1週間
土日を除き毎日実機訓練し遂にクラス対抗戦の日がやって来た
スタジアムは男性搭乗者の一夏が参加するだけあって見学希望者が入りきらず
一部はスタジアム外のモニターでの観戦となっている
「一夏くーん、皆城君の仇を取ってー!」
勝手にクラスメイトを殺すな
「凰さん、勝って皆城君を2組にー!」
凰ならば僕より一夏を取ると思うぞ
まあどちらを取ろうがそんな事をすれば1組と2組の恨み合いが解決不可能になってしまう
ちなみに今僕は2組側のピットにいる
観客席に入ろうとしたところで2組の生徒にここに連れられた
中にいる2組の担任には渋られたが積極的に凰の訓練に付き合ってた実績を考慮され入ることを認められた
総士「完全に寝返ったと思われたな」
鈴「大丈夫よ、そんなのあたしが勝てば全てチャラなんだから」
総士「そうだな、お互いの組の未来が今日決まるんだ。負けるなよ」
鈴「この1週間アンタのおかげであたしはずっと強くなれた。任せなさい!」
そういってスタジアム内に飛び立っていった
僕がやれることは精一杯やった
あとは凰の健闘を祈ろう
==========
試合開始直前、一夏と会話を交わす
鈴「約束の件、忘れてないでしょうね」
【勝った方が何でも1ついう事を聞く】
あたしが言い出してしまった今起きている問題を悪化させたもの、今はその解決の鍵になっているもの
一夏「男に二言はねぇ、そっちこそやっぱやめたなんて無しだぞ」
鈴「一夏、手加減して欲しいなら今のうちよ」
一夏「いるかよそんなの、全力で来い」
鈴「そう、じゃあ…」
≪試合、開始≫
鈴「あんたの心配はしないわよ!」
==========
織斑一夏の操るIS≪白式≫
ジーフリードシステムの試験時クロエが登場していた機体を束さんによって完成した第3世代IS
実のところ、僕のISと違い調整などに一切関わってないので白式の機能等については全くわからなかった
知っているのは先月行われた1組のクラス代表決定戦の映像で見たものだけだ
その映像から予想した通り、白式は近接ブレードを展開し切り込んだ
甲龍は青龍刀で応戦、代表候補としての経験値とおそらくISのパワーが上回っている甲龍が押し始める
体勢を立て直すためか剣の打ち合いから脱し距離を取ろうとする
鈴『甘い!』
凰はその隙を見逃すことなく衝撃砲を叩き込んだ
鈴『今のはほんのジャブ、本番はここからよ!』
そこから甲龍は衝撃砲による遠距離攻撃に移行
だが効果があったのは最初だけで次第に躱され始める
「どうして避けられるんだろう」
ピットにいる生徒から声が挙がる
総士「ISのハイパーセンサーで探知してるんだ。おそらくそれを見て回避している」
不可視の砲身とはいえ、ISのセンサーを使えば砲身生成時の大気の変化などで気付くことが出来る
凰も衝撃砲の効果が薄れているのに気付いたのか再び接近戦に入る
「じゃあもう衝撃砲は役に立たないの?」
総士「いいや、凰の言っていた本番はここからだ」
==========
総士との訓練を開始して2日目
クラス代表決定戦の映像から対一夏用の訓練メニューを総士から提案されたが
鈴「そんなのフェアじゃないから普通の訓練にしておいて」
そう却下した
あたしも代表候補としてISの操縦を始めたのは1年に満たない
自分の経験からよく分かるが1か月もあれば相当上達する
過去のデータなんて当てにならない
それにあいつはどんな時でも正々堂々とぶつかって来るんだ
全力でそれに答えなきゃ失礼じゃない
総士「なら甲龍の性能を生かせるようにするか」
鈴「生かすったって、全力を出した結果が昨日のアレなんだけど」
甲龍の切り札の龍咆があそこまで通用しなくて結構ショックだった
正直、まだ引き摺ってるせいで自信が無くなりそう
総士「凰はこのISをどう扱っている」
鈴「どうって、双天牙月で切り込むか龍咆で遠距離攻撃するか相手によって選んでるけど」
武装としては遠近揃っているからそれを場面によって使い分ける
そうすればどんな相手にだって戦える
総士「どうやら凰は衝撃砲の利点を誤解している」
鈴「誤解って、砲身も砲弾も見えないのが最大の利点じゃない」
総士「ISのセンサーで探知できるのに距離を取ってどうする?
相手にとっては対応を容易にしているだけだ」
鈴「じゃあISとの戦闘じゃ使い物にならないのこれ」
総士「相手に合わせた戦い方をするのではなく、甲龍の強みを生かす方向で考えろ
昨日僕に攻撃を当てたときを思い出してくれ」
鈴「えっと、龍咆をオトリに双天牙月を当てたあれ?」
正直その場の思いつきと勢いでやっただけなんだけど
総士「そうだ、あれを凰には極めて貰いたい」
鈴「……あんたの言いたいことが分かったわ」
相手によって戦法を変えるんじゃない、どんな相手でもアドバンテージを取れる戦い方に持ち込む
鈴「どうしたの一夏、仕掛けてくる割には大したことないじゃない!」
一夏「くそっ」
つまり甲龍のパワーを生かして接近戦で相手を圧倒して
鈴「ほらそこ!」
一夏「しまっぐあぁ!!」
相手の隙を作り出してそこに龍砲を当てていく
鈴「さあさあ、どんどんいくわよ!!」
双天牙月を連続で叩き込み隙を見ては龍咆を至近距離で叩き込む
ハイパーセンサーで探知させる余裕なんて徹底的に潰す
この一週間、この戦法をものにするために総士相手に徹底的に特訓してきた
一夏はどうにか距離を取ろうとしてるけど逃がすもんか
このまま押し切らせてもらう!
一夏「く、うおおおお!!」
鈴「な、くぅ!」
龍咆を撃とうとした瞬間タックルで突っ込まれた
どうにか振り払ったときには体勢を戻されていた
一夏「へへ、どうだ」
鈴「今のはビックリしたわ。でも形勢はまだこっちのもんよ」
いけないいけない、試合相手は一夏だ
今のは頭の硬い総士には思いつきそうにない方法だったせいで不意を突かれた
けどさっきまでの攻撃のおかげで向こうのシールドエネルギーはかなり削った
殆んどダメージの無いあたしがかなり優位なのは変わらない
一夏「勝負は最後まで分かんないもんだぜ」
けど一夏は諦めていない
それでこそあたしの好きになった男だ
鈴「そうこなくちゃね」
青龍刀を構える
一夏も同じ考えかブレードを構えたまま動かない
次の一撃で勝負を決める
仕掛けたのは……同時だった
一夏「うおおおおおおお!!」
鈴「はあああああああ!!」
―――ドオオォォォン!!!
一夏「うおっ!?」
鈴「くっ、なに今の!?」
お互いの攻撃が交差しようとした瞬間、何か強い衝撃が発生した
一夏の攻撃じゃない、本人も何が起きたか混乱してる
スタジアムの中央、そこから煙が上がってる
空から攻撃?スタジアムのシールドをぶち破って?
鈴「一夏、すぐにピットに戻って!」
正体は分からないが何かがあたしたちを狙っていて
しかもそれはアリーナのシールドをぶち破るほど強力な遠距離装備をもってる
近接装備しかない一夏じゃただのの的だ
一夏「お前はどうするんだよ!」
鈴「あたしは救援が来るまでここで時間を稼ぐ」
一夏「女1人置いて行けるか!」
鈴「あたしより弱いのに何言ってんのよ!第一さっきまでのでシールドエネルギーは…」
一夏「危ねえ!」
一夏に掴まれたと思ったら、さっきまでいたところにビームの奔流が走った
一夏に庇わられたおかげで助かった
襲撃して来たのが
空からの狙撃と思って上を警戒していたせいで攻撃に反応するのが遅れた
一夏「やっぱお前1人じゃ不安だな」
鈴「ちょっ離しなさいよ!」
一夏「おい、暴れるなって」
鈴「うるさい!」
どうにか一夏から離れて攻撃が来た方を見てみる
ハイパーセンサーに反応、所属不明のIS!?
一夏「なんなんだ、こいつ…」
ISはパワードスーツの一種だから普通は人のシルエットの形に近い
けど侵入してきたそれは足の下まで届く異様に長い腕でそれから大きく外れている
さらに全身装甲<フルスキン>で搭乗者がまるで見えないせいで不気味さに拍車がかかっている
真耶『織斑君、凰さん今すぐアリーナから脱出してきださい!そのISは先生たちで制圧します!』
一夏「いや、ここに残って先生たちが来るまで俺たちが戦います」
鈴「あっちはやる気満々みたいだしね」
下手に逃げようとしたら背中から撃たれる羽目になる
それにアリーナのシールドを突破したという事は観客席にいる生徒が危険だ
一夏「来るぞ!」
侵入してきたISの両腕からビームが放たれる
せめて全員避難が終わるまではここで食い止めないと!
総士「何が起きた!」
「アリーナに侵入者、これは…ISです!」
映像を見ると凰と一夏が侵入してきたISと交戦していた
総士「僕が2人の援護に向かう、中に入れてくれ!」
千冬『まったく、オルコットに続いて皆城もか』
総士「織斑先生!」
千冬『侵入ISの仕業だろうが現在スタジアムの扉が全て閉鎖されてる
学園の精鋭がロックを解除してるがが今すぐには無理だ』
総士「ならば解除され次第行けるよう待機します」
千冬『救援には教師と3年が担当する。お前では足手まといだ、そこで大人しくしていろ』
総士「…わかりました」
僕が出るよりかは3年や教師のほうが経験も実力もある
何度か訓練に付き合ってくれた時に見たのでそのことは間違いない
総士「……」
ISを手に入れ戦う術を手に入れたのに、結局はこうして見ている事しかできないとは
結局は島にいた頃と何も変わってないのか
せめて凰たちの状況は知っておこうとピットのモニターを見つめる
実力と装備の関係か凰か砲撃支援に徹し、一夏が切り込んでいく
2対1だけあってある程度は押し続けているが、敵ISは致命傷になりそうな攻撃は確実に躱している
まるで2人の心を読んでいるように……
総士「いや、ありえない」
何を考えてるんだ僕は
なぜあの存在と重ねてしまったんだ
箒『一夏ぁ!』
突然スピーカーから大音量の声が聞こえた
篠ノ乃が放送室から叫んでいた
箒『男なら…男ならそのくらいの敵に勝たないでどうする!』
篠ノ乃の声に反応して敵ISが放送室に目を向けた
このままでは篠ノ乃が狙われる
一夏もそう思ったのか敵ISに飛び込んでいく
だがそこに凰の衝撃砲が叩き込まれた
総士「凰、何をして…!」
凰の衝撃砲が一夏の白式に当たった瞬間、凄まじいスピードで敵ISに突撃していった
あれはまさか、瞬時加速≪イグニッション・ブースト≫に衝撃砲の被弾エネルギーを加えたのか
その勢いで白式は斬りかかりに行き、そのまま敵ごとアリーナの壁にぶつかっていった
右腕を切り落とすも、撃破には至ってなかった
白式はそこから離脱するも満身創痍なため敵ISに捕縛された
掴んだ腕部にビームの光が収束していく
助け出そうと甲龍が動き出すも間に合わない
鈴「やだ、一夏ぁ!!」
一夏『…狙いは?』
セシリア『完璧ですわ』
先程一夏が衝突したアリーナの壁に穴が開いており
そこからオルコットが射撃することで敵ISは撃破された
オルコットの攻撃で敵ISが沈黙したと同時にピットのロックが解除された
総士「これより救援に向かいます。許可を頂けますか」
突入に教師や3年を送る理由は侵入ISとの交戦を想定してのことだった
救援という名目なら問題はないはずだ
2組教師「大丈夫です。気を付けて下さいね」
2組の教師の許可を得てファフナー・ノートゥングを展開し凰達のもとに向かう
オルコットは既に2人に合流していた
一夏「助かったぜセシリア」
セシリア「これでもイギリスの代表候補生ですのよ、このくらい当然ですわ」
総士「2人とも無事か」
鈴「あたしは大丈夫、それより一夏は?」
一夏「あちこち痛ぇけど俺も平気だ」
総士「そのどこが平気だ。それと早く戻ってISの修理をした方がいい」
衝撃砲の被弾を瞬時加速≪イグニッション・ブースト≫のエネルギーに使ったせいで損傷が激しい
この状態のままではISに変な稼働データが蓄積され、下手をすれば今までの経験が全て無駄になってしまう
それを避けるために早く修理を行わなければならないはずだ
鈴「それにしても、こんなの誰が送り込んで来たんでしょうね」
凰が沈黙した敵ISを見ながら呟く
無人機という存在しないISを作り出し、この学園を襲撃した理由…
セシリア「それはわたくしたちが考えても仕方ありません。きっと教師の方たちが調べてくれるでしょう」
総士「解明されたとしても、生徒である僕らに教えられることはないだろうがな」
鈴「不可解ったらありゃしないわね」
一夏「不可解って言えばもう1つあるぞ」
セシリア「まだ何かございますの?」
一夏「ああ。あいつの腕を斬り落としたらそこから結晶が出て来たんだよ」
総士「……なに?」
鈴「結晶?そんなものがISに?」
一夏「これなんだけど、無人機の秘密につながる物かもしれないかも」
一夏からさし出されたそれは、翡翠色をしていた
これは!?
総士「少し借りるぞ」
半ば奪う形でファフナー・ノートゥングの手に持たせる
見間違い様がない、この結晶は…!
ビキビキッ!!
総士「ぐうっ!」
一夏「総士!?」
手に持っていた結晶が機体を浸食してくる
総士「僕に触るな!!」
鈴「なによこれは一体!?」
総士「ぐあぁ!!!」
セシリア「皆城さん!!」
先週と比較にならない頭痛に襲われる
そして突然、頭の中に声が響く
≪私はここにいるッ!!!≫
先週の物とは違う
この世界に来る少し前に聞いた声
バキンッ
声が響いた瞬間、機体を包んだ結晶が砕ける
総士「ハァ…ハァ……」
痛みから解放され、一息つく
一夏「大丈夫か!」
総士「ああ、どうにかな…」
セシリア「撃破された場合のトラップ?これ以上何か起きる前に戻りましょう」
鈴「そうね、これ以上何かあってからじゃ…」
≪あ……はそ……………か≫
総士「!!!」
突然聞こえた声に背筋に寒気が走る
直接脳内に語りかける優しげで抱擁されるような声
だがそれと矛盾する心臓を直接鷲掴みされるような恐怖感
一夏「今誰かなんか言ったか?」
鈴「私じゃないわよ。セシリアあんたじゃないの」
セシリア「違いますわ。皆城さんでは…ないですわね。女性の声ですし」
他の皆にも聞こえているだと…まさか
ハイパーセンサー……気流異常、空間移送………あのISからだと!?
総士「皆ここからいますぐ離れろ!会場にいる者全員もだ!!」
最悪の事態が頭をよぎる
もし侵入者が予想通りの存在なら、ここにいる人全員がいなくなる
焦る僕に構わず、今度ははっきりとその声が聞こえた
≪あなたは、そこにいますか≫
ちょっと休憩します
続きは20時くらいからになります
==========
突然何処からか質問が投げかけられた
鈴「なに、そこにいますかって?」
一夏「そんなの」総士「答えるな!!!」
一夏が何か言おうとした瞬間、総士が怒鳴ってきた
一夏「うわ、いきなりなんだよ総士」
総士「いいか、質問には絶対に答えるな!」
いつもは仏教面した総士が焦りを隠すことなく叫んでる
そんな事を考えていると倒したはずのISが起き上がってきた
セシリア「そんな、確かに撃破したはずでしたのに…」
鈴「それより、なんなのこの反応は!」
センサーにはさっきまでISと認識してたのに今は識別不能と出ている
ISに搭載されているのは最先端なはずのこれはいったい
総士「まだ再生に少し時間が掛かるか…凰・織斑・オルコットは奴が動き出すまでに逃げろ!」
鈴「総士、あのISの事知ってるの!?」
総士「正確には分からない。だがもし想像通りの存在ならば…」
一拍置いた後に発した言葉は…とても残酷だった
総士「ここにいる人全てが…犠牲になる」
そういった瞬間、敵ISが緑の結晶に包まれ、その中から金色に輝くISが現れた
==========
一夏「機体が再生した…?そんなことありえるのか」
結晶から飛び出したISは一夏が破壊した右腕が元に戻っていた
鈴「ありえないはずよ…けどアイツはしている。どういう事?」
総士「ここまで再生が早いとは…もう話す時間はない、3人は撤退しろ」
セシリア「わたくしも残って戦いますわ。鈴さんは一夏さんを」
鈴「…まかせたわよ」
総士「オルコットも下がるんだ。アレは危険すぎる」
セシリア「あなた1人置いてはいけませんわ。さあ行きますわよ」
総士「待て、無茶だ!!」
オルコットのビームライフルが放たれる
だがそれは変化した敵ISに躱され、追撃でさらに撃ったのもすべて回避された
回避を続けていた敵ISが両腕のビームを放ち攻勢に移った
僕とオルコットはライフルに掴みかかった
セシリア「くっ、離しなさい!」
ピキピキッ
掴みかかられたライフルから結晶が発生している
まずい!
セシリア「なんですのこれは!?」
総士「ライフルを離せ!!」
腕部に内蔵されたレージングカッターでブルー・ティアーズを掴み強引に引き離す
それと同時にライフルは翡翠色の結晶に包みこまれ砕け散った
セシリア「なんですのあれは!?」
総士「同化能力、それにさっきのは読心…。やはりあれは」
この学園に来てからずっと起動してなかった頭部パーツを展開
そこに搭載されたシステムを起動する
総士「ジークフリード・システム起動、最大可動」
僕の知るジークフリード・システムとどこまで同じかは分からない
それに僕1人を対象に起動しても読心能力対策の思考防壁が構築される保証はなかった
気休めだがあれに対抗するには使わないよりかはマシだ
総士「なぜここにいる、フェストゥム!!」
侵入してきた時と形状は変わってないが、全身を金色に輝かせるISに問いかける
返されたのは、先ほどと同じ言葉だった
≪あなたは、そこにいますか≫
今度はしっかりと僕の方を見て問いかけてきた
総士「…僕は、ここにいるぞ!」
本当ならフェストゥムの質問に答えてはならないが、あえて答える
敵IS、いやフェストゥムはこちらに完全に狙いを定めた
これでいい、オルコットから注意を逸らせることが出来た
総士「仕掛ける!」
レールガンを展開、照準、発射、敵ISに着弾
読心対策の思考防壁の構築に成功したようだ
ハイパーセンサーに情報を取らせる
シールドエネルギーは消失したまま、フェストゥムの持つ防壁も持ってないようだ
ならば対応はしやすい
セシリア「待ってください。あの機体の事をいい加減教えて下さい」
総士「奴には人のおそらく思考を読む能力がある
そのせいでオルコットの攻撃はすべて躱されたんだ」
セシリア「思考を!?ではあのISはどう倒せば」
総士「僕のISにはそのための装備がある。だから僕が奴を倒す」
セシリア「装備…今展開した頭部ですか?」
総士「ああ」
オルコットと話している間にもフェストゥムへの警戒は続ける
ダメージは殆んど与えられていないようだ
決定打を与えられないと判断しレールガンを格納、ルガーランスを展開する
レールガンより威力のあるもの…
ドラゴントゥースは完全な狙撃用でアリーナ内では距離が取れなくて危険だ
メデューサはパッケージの換装を行わないと使用が不可能
つまりこの状況で有用な射撃武器は…無い
そうなると使えるのは近接武器しかない
総士「だからオルコットはここにいても邪魔になるだけだ」
セシリア「わたくしはただ見ていろと、そう仰るのですか!」
総士「それだけあの存在は危険なんだ!」
言い争っているとフェストゥムの腕にエネルギーが収束している
総士「来るぞ!」
フェストゥムの攻撃を別方向に回避する
相手の様子を伺いながら考える
――あなたは、そこにいますか――
この言葉は僕の世界の北極ミールから生まれたフェストゥムしか発しない筈だ
なのにアレは僕の知るものと同じ様に質問を出してきた
なぜだ?
まさか…
============
僕がIS学園に入学する前、僕が帰る手段はどんなものか束さんに聞いたことがある
束「方法はあるよ。ちょっと準備が大変だけどねー」
総士「その手段というのは?」
束「実はそーくん、こっちの世界に来てからずっとクロッシングし続けてるんだよ」
総士「クロッシングを?」
束「調べたんだけどクロッシング相手は結局向こうの世界にいるってことしか分からなかったんだけどね
でも帰るときはそれを辿って行けばいいって算段なんだよ」
===========
この世界に来るまでで最後にクロッシングしたのはマークザインだ
どうやら僕はマークザインとずっと繋がっていたようだ
そして他のフェストゥムにその情報が伝搬しないようザインの中に封印した存在がある
―――マークニヒト―――
そして一夏が持っていた結晶に包まれた瞬間響いた声
あれはかつてマークニヒトを乗っ取っていたマスター型フェストゥムの声だった
一騎と共にマークニヒトと共にマークザインに同化して消滅した
だが一騎が限界になり、ニヒト自体はマスター型を始めとしたフェストゥムの情報を持ちザインの中に残り続けている
総士「まさか…!」
先程の結晶から起きた同化で、マークニヒトの中に残されたフェストゥムの情報を取りこんだのか!?
総士「こうなったのは僕が原因か!」
不用意に一夏の持っていた同化結晶に触れたばかりにこんな事態に
だったら僕1人で責任を取らなければ
総士「うおおおおおお!!」
ルガーランスを構え突撃する
さっきの射撃から見てチャージ時間は長い
だったら回避は容易だ、あえて撃たせてその隙に倒す
ギュウゥゥゥン!!
案の定迎撃のため撃ってきたのを回避する
連射は効かない装備だ、構えた状態で無防備になっている
この機は逃さない、攻撃する!
総士「喰らえぇ!!」
相手の懐に入りルガーランスを突き立てる
ガシィ!!
総士「しまった!」
だが刃が届く前に飛び掛かれ、抱きかかられるような形で拘束される
抜け出そうにも近すぎて武器が構えられない
そうしてる間に空いてのビームがチャージされている
総士「くそっ」
打つ手なしか!
セシリア「させません!」
オルコットの乗るISから射出されたノルンのような自立兵器からビームが放たれる
フェストゥムは僕を拘束しているため回避できず直撃、それにより拘束から解放される
セシリア「先程の借りはこれでお返ししましたわ」
総士「まだ撤退してなかったのか!」
セシリア「先ほどから一体どうしましたの?冷静になって下さい!」
総士「冷静になるのはそっちだ!我儘を言うな!!」
セシリア「我儘を言ってるのはそちらでしょう!
わたくしがいなければやられていたではないですか!」
総士「次はこうはいかない!」
そうだ、向こうがどう対抗してくるかはさっきので解った
次こそは確実にとどめをさせるんだ!
セシリア「いい加減にして下さい!!!」
パァン!!
ISの腕部を部分解除してビンタをしてきた
流石にこの程度だと絶対防御が発生せず思いっきり受けてしまった
セシリア「少しは落ち着きましたか?」
総士「なにをするんだ!」
セシリア「言い訳は聞きません!
原因は知りませんが皆城さんは今冷静さを欠いてます」
総士「それは…!」
急いでアイツを倒さなければフェストゥムの情報が他のISに広がってしまう
それだけは避けなければならないんだ!
セシリア「代表候補生としてハッキリ申し上げます。皆城さん1人では決して勝てません」
総士「オルコット、お前だったら」
セシリア「倒せるわけがないでしょう。心が読まれているのでしょう?」
総士「何処でそれを」
セシリア「読心・同化能力、先ほどから皆城さんが呟いていた言葉から推測しました
どうやら皆城さんはあのISについてかなりお詳しい様子で」
無意識のうちに何処まで口に出していたんだ
出来ればフェストゥムの存在は誰にも知られないようにしておきたかったがもう無意味だ
セシリア「ようやく自覚できるくらいにはなってくれましたね
この件について色々聞きたいですけど今は追及するつもりはありません」
総士「なに?」
セシリア「今は皆城さんがあのISをどうするかが重要です」
総士「そういうことか…」
至近距離で攻撃する必要があるが一夏のように瞬時加速≪イグニッション・ブースト≫が使えない
1人で接近戦に持ち込むのは先ほどのように反撃の恐れがあるがオルコットの援護があればやれるはずだ
総士「いいだろうオルコット。僕の援護を頼む
あの2人が必死にやったんだ。次は僕らであのISを止める」
セシリア「そうですわね。いきましょう皆城さん」
もう眠いので今日はここまで
フェストゥムに接近しようとするが一度使ってしまったので警戒されてそれが叶わない
まずもってビームの威力から一発でも受けたら機体が持たない
それに長大なあの腕の長さから懐に飛び込めても防がれてしまう可能性が高い
総士「奴の動きを止めなければ…やれるか!」
セシリア「お任せを。行きなさいブルー・ティアーズ!!」
先程のノルンのような兵装がブルー・ティアーズから4機の砲塔が切り離されビームを放つ
全方位からの攻撃にフェストゥムは回避を止め防御の為動きを止める
セシリア「今です!!」
総士「ああ!」
オルコットが作った隙を逃す訳にはいかない
ルガーランスを構え全力でフェストゥムに突撃した
ザシュッ!!
刀身が奴の胸につきささる
だが両肩を掴まれこれ以上刃を押し込まれまいと抵抗されるが、甘い
引き金を引き、突き立てた刀身が縦に割れ斬り口を押し広げる
総士「喰らえぇ!!」
ルガーランスは展開した刃を砲身としレールガンを撃ち込み敵の内部を直接破壊する武器
刃さえ突き刺さればこちらの勝ちだ
とどめを刺そうとしたその時、両肩から激痛が走る
ファフナー・ノートゥングの肩に敵の爪が食い込み、そこから同化現象による結晶が発生している
総士「貴様ぁ…!」
どうにか止めを刺そうとするが力が入らず引き金が引けない
そう手こずっている間にも内に同化が進んでいく
総士「ぐぅ!」
捕まれた状態では離脱ができない
オルコットも敵と接触してしまっているせいで手を出せないでいる
駄目だ、このままではなす術がない
だがここで引き下がってはコイツを野放しにしてしまう事になる
それだけは避けなければ…!
「!?」
突然敵の様子が変化し、同化を中断され腕が肩から離された
理由は分からないがこの機を逃す訳にはいかない!
総士「消え去れええええ!!!」
ルガーランスをさらに深く突き刺し、引き金を引く
弾丸が撃ちこまれ敵ISが内側から爆発
結晶と機体の破片が飛び散り、上半身と下半身が分断され別々に吹き飛ぶ
総士「両腕部、ネクローシス!」
バキバキ、ゴトッ
敵と距離が開いたので同化による浸食を広げないために両腕を自壊させる
該当箇所を無理矢理破壊させることによる強制排除なため接続されていたところに痛みが走る
セシリア「今度こそ、やりましたの…?」
総士「まだ…わからない」
各種センサーを稼働させながら接近する
フェストゥムと同じならばコアを破壊しない限り再生する可能性がある
撃ち抜いた痕からコアの有無を確認するため接近する
すると上半身の方が再び動き始めた
総士「やはりまだ生きていたか!」
セシリア「待ってきださい、何か様子が…」
敵ISはなんと弾痕に自らの腕を押し入れ、中から何かを抉り出した
そして今度こそ停止したのかそのまま動きを止めた
セシリア「あれは…ISのコアですわ」
総士「なぜそんなことを…
だがこれで何か情報が得られるかもしれない」
このISについて謎が多すぎる
少しでも何か知るには残骸を調べる必要がある
残骸を回収するため接近した
セシリアが敵ISのコアを掴んだ瞬間、残骸にごく小さな黒い球体が発生しているのが見えた
まさか、ワームスフィア!?
総士「逃げろオルコット!!」
オルコットを突き飛ばしこの場から離した
そしてスフィアの発生源から離脱をしようとしたが遅かった
黒い球体は一瞬で巨大化し僕ごとファフナー・ノートゥングを飲み込んだ
体が黒い奔流に飲まれるのを感じながら僕は意識を失った
============
――ありがとう、私を止めてくれて
何だ、声が…
――アレに支配されそうになって、あの人と一緒に必死に抗った
――だけど、限界になってどうにもならなくたった
――あの人もいなくなってしまった
まさか、フェストゥムの事か?
――けど、束さんが見つけてくれた貴方なら、支配されてしまった私を止めてくれる
――そう思ったから貴方に助けを求めた
――時間がなかったからこちらから尋ねたけど
……まさか、お前は
――最後の力で私の知りえたアレの情報は残し、託した
――貴方も他の人たちに伝えて
――私が守ることの出来なかった、あの人のような犠牲を出さないために
……分かった
――ありがとう
――最後に伝えるね
――貴方の中に眠っているもの、目覚めさせるは強大過ぎてアレは耐えられなかったみたいだった
――けどアレの仲間が目覚めさせようと来るはず
待て、どういう事だ!?フェストゥムが他にもいるのか!
――気を付けて
============
総士「ここは……」
意識を取り戻すと、早くも見慣れて来てしまったIS学園の医療施設にいた
鈴「総士!?」
目を覚ました瞬間、凰の声が聞こえた
周りを見渡すと他にも一夏やオルコットも来ていた
総士「静かにしてくれ、辛い」
意識がまだ覚醒しきってないのに大声を出され頭に響く
鈴「あ、ごめん」
一夏「そうだぞ鈴。俺の見舞いのときだって…」
鈴「あ゙ーそれは言うなー!!」
話の途中で凰が引きずって外に連れ出していった
一夏は何を言おうとしたんだ
セシリア「皆城さん、あの時は庇ってくださりありがとうございます」
2人だけになった部屋でオルコットが話しかけてくる
総士「気にするな、僕を叱責してくれた借りを返しただけだ」
セシリア「ただいくらISのシールドが優れているとはいえあのような無茶はしないでください」
総士「本音を言ってしまえば死ぬ覚悟だった
だが凄いものだなISのシールドは。僕自身生きていられるのと思って無かった」
そういった瞬間オルコットの表情が途端に険しくなっていく
セシリア「…さっきのお礼は撤回させていただきますわ」
パァン!!
アリーナでやられたように再びビンタを撃たれた
総士「…こうなることは予想出来てた」
セシリア「ええ、危険な真似を刺せないためにもう一度釘をさしてあげます
今回は時間もある事ですし病人だからと言って容赦はいたしませんから」
その後凰たちが戻ってくるまでセシリアからたっぷりと責められた
他人に心配を掛けさせるな、何よりも死ぬような真似はするななどだ
一騎に言い聞かせていたことが今は僕に説かれているとは、島で指揮を執っていた時には考えられなかった
だが気になったのは、攻めている言葉の節々からオルコットが死に関し強い忌避感を持っているように感じられたことだった
凰たちが戻ってきてから意識の無かった1週間のことを聞いた
僕と一夏は所属不明機との戦闘の怪我で暫く入院となっていた
一夏はそれほどではなかったので翌日には授業に戻って行ったが
僕の方はワームスフィアに飲まれたときの傷の治療に今日まで眠り続けていたらしい
その間に1組・2組間の不和は凰と一夏の働きで解消された事が見舞いに来た凰の口から聞かされた
総士「そうか、苦労を掛けて済まなかったみんな」
一夏「迷惑なんて思ってねえよ。むしろ俺の代わりに戦ってくれたんだし」
セシリア「無茶の仕方も一夏さんといい勝負でしたけど」
鈴「まあまあ。それとアタシのことは鈴って呼んでいいわ」
総士「鈴、クラスの事は色々巻き込んでしまって済まなかった」
鈴「気にしないの。アタシたち友達なんだから」
総士「…ふっ」
友達か
そうだな、こういうのが友達だったな
一夏「お、鈴いいこと言うじゃないか」
セシリア「そうですわね。皆城さん、わたくしのこともセシリアとお呼びしても構いませんわ」
総士「鈴、セシリア、一夏。3人とも今日はありがとう」
鈴「じゃあまた来るから早く退院しなさいよ」
セシリア「イギリス代表候補生として、共闘した仲間として、そしてクラスメイトとして皆城さんの回復を願ってますわ」
一夏「あ、俺もクラス代表とクラスメイトとして元気になるの願うぜ」
それから退院するまでがまた大変だった
お見舞いするといって女子生徒が絶え間なくやってきたのだ
中には入院中の授業内容をノートに纏めて渡して来る者もいたので助かりはしたが
遅れる訳にはいかないのでそのノートを使い自習を進めつつ別の物を作成した
数日して退院の日、病室から出ると織斑先生が待っていた
千冬「皆城、少しいいか」
総士「何でしょうか」
千冬「単刀直入に聞く、先日の所属不明機について知っている事を全て話せ」
総士「その事でしたら、これを」
織斑先生にデータディスクを渡す
千冬「これは?」
入院中、ずっと頭から離れなかった
金色の体、「あなたはそこにいますか」という言葉、同化現象、ワームスフィア
僕らの世界にいた、フェストゥムがなぜ此処にいるのか
だが理由を考えるよりも何者か知って貰わなければならないと思いデータディスクにまとめた
総士「侵入してきたISについて関連していると思われることで僕が知っていることはその中にあります
ですが僕自身何が起きているのか、その中身と本当に関係あるのかわからないんです」
千冬「それはこちらで判断することだ
それとこれ以外にも皆城には聴取を行うが構わないな」
総士「僕に出来る事があるならなんでもやります」
============
千冬「どうだ山田先生、解析の様子は」
真耶「そうですね…調査の筈なのに出てくるのは謎しかないです」
IS学園ではあれから所属不明のISについて調査が行われている
肝心のIS本体は重要な機器が詰まった上半身部が黒い球体に飲まれ完全に消滅してしまった
残された手掛かりは回収されたISのコアと…
真耶「それにしてもこれ、皆城くんの協力が無かったらお手上げでしたね」
千冬「……あぁ」
皆城の搭乗していたIS≪ファフナー・ノートゥング≫の肩部、そして渡されたデータだ
解析した結果によると当時結晶が生えた部分は未知の現象が発生していた
状況から敵ISによるものだと判断せざるを得ないが、そんな力がISが持つなどあの束でも出来るはずがない
未知の現象という事で行き詰る所だったが、皆城から渡されたデータを元に検証が進められている
この現象を皆城は知っているのだ
皆城総士
束から送られてきた男性のIS搭乗者
国際IS委員会が経歴を調査したが、日本だけでなくこの世界何処を探しても一切の情報が見つからなかった
この世界に存在しないはずの人物
束本人からのメッセージでIS学園に入学させてはいるが謎が多すぎる
そのため一夏とは別の部屋で監視を行っている
他にも理由を付けては各種検査を隠して実行しているが問題は一切なかった
真耶「織斑先生、皆城くんの対応はどうしますか?」
山田先生が聞いてくる
そうだ、今回とうとう問題が発生した
誰も知りえない筈の情報を皆城はこれだけ知っている
あの正体不明のISの製作者と皆城が何らかの繋がりを持っていると思うのが条理だ
千冬「監視体制は今まで通りだ。変更はない」
真耶「どうしてですか!IS学園を狙っている勢力の一員かもしれないんですよ!」
千冬「落ち着け。仮にそうだとしてもなぜこのデータをくれた?」
私も皆城に疑いを持っていたので、真意を確かめようと退院の日に本人を尋ねた
知らぬ存ぜぬで通せるところを、皆城はデータを渡してくれたのだ
そのときの皆城の目、あれを向けられたのは人生で3人目だった
自分一人ではどうしようのなくなり、誰かに助けを求める瞳
千冬「私は信じるさ、皆城を。山田先生も生徒のことを信じるんだ」
============
これでISの1巻分書き終えたので2巻分からは新たにスレ立てます
新スレにする理由としては>>1が凄まじい遅筆なため下手したら途中でスレ落ちする可能性が高いからです
どれほど遅筆かと言うとこのss書き貯め始めたのが昨年11月からだったりするくらいです
多分続きは半年先になるかもしれませんので待っていただけるなら気長に待っていただけると助かります
では依頼出してきます
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません