総士「さあ、飲もうか!」一騎「はあ……」 (45)

総士『……僕の名は皆城総士。きみがこれを聞く時、僕はもうこの世にいないだろう』

総士『僕らは選択をしてきた。たとえそれがどんな残酷な結末を迎えたとしても』

総士『見えない希望を信じて……進み続けた』

総士『だが……そこにあったのは辛い思い出だけではなかった。彼等と共に過ごした時間は、明日を生きるための灯火となった』

総士『これから話すのは、僕達が大人として認められた後……つまり、成人式が終わった後の出来事についてだ』

総士『楽しかった……楽しかったのだが、うん……』

総士『……流石にマークニヒトにこれを残すのは気が引けるので、カセットテープに残しておく。見つけたら聞いてくれ』

総士『さて、それでは話をしよう。あの悪夢のような、そして奇跡のような夜について……』

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―――

溝口「はあ……あいつらももう二十歳か……」

史彦「……彼等には、本当に長い間戦ってきてもらった……戦えない我々のために」

溝口「そうだな……本当に立派だよ」

千鶴「……今夜は彼等だけで集まるそうですけど……行かなくても大丈夫、ですよね?」

史彦「……これからの戦いのために、英気を養うのも重要な事だ」

溝口「まあ、色々楽しめるのが大人ってもんだ!それに一騎や総士、真矢ちゃんなら少々酔っぱらっても大丈夫だろ!」

史彦「うむ……まあ、そうだな……」

溝口「んじゃ、俺らも行こうか!今日は無礼講ってことでな!」

―――

里奈「一騎先輩たち、今からお酒飲むんだってさー!いいなー、大人って色々できて!」

芹「そうだね……」

里奈「……昔ね?お婆ちゃんの持ってたお酒、暉に騙して飲ませたことがあるの」

芹「……!」

里奈「そしたらね?暉のやつ、『ケコッ!?』とか言ってぶっ倒れちゃって……面白かったなぁ!まあ、私はその後お婆ちゃん達に一日中説教されたけどね」

芹「里奈……」

里奈「……うん。私、絶対忘れない。アイツがここにいたんだって事……絶対に」

芹「……」チラッ

広登『みんな、今日はこの竜宮島で見つかった謎の生物を探しに―――』

芹「広登……うん、私も絶対に忘れないよ」

里奈「……そういえばさ、あの中だと誰が一番お酒に強いと思う?」

芹「え?うーん……総士先輩……は案外弱そうだし、遠見先輩かな?」

里奈「そうだねー……結構強そう。私は一騎先輩かなー?ああ見えて酒豪、なんて……」

芹「ふふ、まさか……」クスクス

里奈「はは、流石に無いか!」

―――

剣司「さて、晴れて二十歳を迎えた俺たちですが!いよいよ大人の楽しみの一つ……お酒を初めて飲みたいと思いまーす!」

咲良「イエーイ!」

真矢「……」パチパチ

甲洋「……」

一騎「……」

総士「……」

剣司「暗いなお前ら!?もっと盛り上がれよ!」

一騎「あ……悪い、なんか実感が沸かなくて……」

総士「……まあ、実際に僕はまだ二十歳になっていない訳だが」

咲良「そんなの私も同じだってば!でもね……」

剣司「成人式の後は皆で飲むって決まってるんだよ!そこはスルーするんだ総士!」

総士「……まあ、もし誰かが倒れた時、冷静な判断ができる者がいなくてはな」

真矢「……そうだね」

一騎「甲洋、お前は大丈夫か……?」

甲洋「仲間外れは嫌だから、ね?」

総士「甲洋なら酔い潰れることもないだろう……安心して飲めるぞ、一騎」

一騎「総士……案外楽しみだったりするか?」

剣司「それでは!乾杯の挨拶を真壁一騎くんにお願いしまーす!」

一騎「え、俺!?剣司じゃないのか……?」

剣司「俺は進行役だしなー、適任だと思うぜ?」

一騎「そ、総士……」

総士「諦めろ、一騎」

咲良「ほら、早く早く!いつまでたっても始まんないでしょ!」

一騎「う、うう……」

真矢「……ふふ」クスクス

一騎「え、えー……皆さん、本日はお日柄も良く……」

剣司「堅ぇぞ一騎!?もうちょいリラックスして!」

一騎「う、うるさいな……コホン。……ここまで来れたのは、本当に皆のお陰だ。誰かがいなかったら、俺たちはここにいないと思う」

一騎「……だから、これからも皆で協力して……えっと……」

一騎「……生きよう。ここにいない人たちのためにも」

総士「(一騎……)」

真矢「(一騎くん……)」

一騎「こ、これで挨拶は終わり!えと……じゃあ、乾杯!」

『乾杯!!』

甲洋「……」ゴクゴク……

剣司「……ぷはぁ!これが酒か……」

咲良「ふーん……まあ、なんというか……」

真矢「……こんなもの?って感じ…」

総士「……遠見、大丈夫か?」

真矢「え?大丈夫だけど……」

総士「……そうか」

剣司「まあ、まだ酒も量はあるし、飯もオードブルで用意してる!夜はまだまだこれからだ!」

―――

総士『……初めの頃は良かった。料理を食べながら、酒を飲みながら、皆で楽しく語り合った……』

総士『……だが、一時間後……そこから先が地獄の始まりだったんだ』

―――

咲良「剣司……!」

剣司「さ、咲良……!」

咲良「あんたって……あんたって奴は本当に……!」

総士「…………」

真矢「…………」

一騎「……」トポトポ

咲良「剣司!」

剣司「は、はい!」

咲良「剣司、剣司剣司剣司!!ああもう本当に……」



咲良「大好きよ剣司ーー!!」ダキッ

剣司「うおおお!?お、俺もだ咲良ーー!!」ダキッ

総士「(……惚気だしたな)」

一騎「はい総士、酒」

総士「む……すまないな」

咲良「本当に大好き!!もう本当の本当の本当に大好き!!私のダーリン!!」

剣司「咲良……俺も!愛してるからな、咲良!絶対に守ってやる……お前をもう苦しませたりなんかしねぇ!」

咲良「約束……約束だよ剣司!」

剣司「ああ、絶対に皆で生きていくんだ……!」

総士「まったく、すっかり出来上がってしまったな……遠見?」

真矢「…………あっついなぁ……ここ」ヌギヌギ

総士「」ブハァッ‼

剣司「」ブハァッ‼

総士「(これは……!!元々素質のあった物が期待通り、いやそれ以上の質量をもって僕の視線を釘付けに……)」

総士「(ぐわぁぁぁぁ!?何を考えている皆城総士!?だが視線を反らせない反らす事が出来ない―――!!)」

総士「うおおおおおお!!煩悩よ!!無にぃぃぃぃ!!帰れぇぇぇぇ!!」ガタッ

一騎「だ、大丈夫か総士……!?ほら、酒!!」

総士「あ、ああ……すまない……取り乱した」キリッ

咲良「剣司ぃぃぃぃ!!なんであんたまで反応してるのよぉぉぉぉ!!」ブンブン

剣司「ぐえっ……!!いや、流石にあれには驚くというか、やっぱ遠見すげぇっていうか……く、首が……!?」ギチギチギチ

真矢「もー……なによ、みんなしてー……キャハハッ♪」

咲良「っ!遠見!あたしのダーリンを誘惑しないでよ!!」

真矢「え~?誘惑~?私そんなの知らないよ~?」プルン

咲良「だから!その胸隠しなさい!恥ずかしくないの!?」

真矢「む~?胸~?胸だったら……」キラーン

咲良「え……ひっ!?」

真矢「ふふ、ほ~ら……咲良も中々成長してるじゃ~ん?」モミモミ

咲良「ああっ!だ、駄目ぇ……これは剣司のだから……!!」

剣司「なんてこった……。こ……ここが、楽園だったのか……!」

総士「流石に……もう収集が着かなくなってきたな……」

総士「くっ、頭痛が……僕も飲み過ぎたか……甲洋、すまない。彼女達を止めて……」

甲洋「………………」

総士「甲洋……?」

甲洋「」バターン‼

総士「な……!?」

―――

総士『気付いた時には、もう遅かった』

総士『既に魔王は覚醒し、僕らを守る守護神は敗れ去っていたことに……』

―――

http://sp.nicovideo.jp/watch/sm7335038

総士「な……甲洋!?馬鹿な……僕ならともかく、甲洋が倒れるまで飲んでいた!?いったいどれだけ……」

一騎「なんだ……もう終わりか、甲洋」トポトポ……

総士「……!まさか……一騎……!?」

総士「(待て……確か、先程から一騎は……)」

一騎「あ、総士。はい、酒」トン

総士「あ……いや……」

一騎「飲めよ、総士」

総士「(……同じ行動を繰り返してばかりではなかったか!?)」

一騎「ほら、総士」

総士「い……いや、僕はもう……」

一騎「…………」ズイッ

総士「か、一騎……!?もう酔ってるのか……!?」

一騎「俺はまだまだ行けるよ。ほら、酒」ズイッ

総士「いや……これはかなり……」

一騎「………………」ジトッ……

総士「う…………」

一騎「……俺の酒が飲めないのか、総士?」ズイッ

総士「あ、いや……そうじゃ……」

真矢「そうよ~!一騎くんのお酒飲みなさいよ皆城くぅ~ん!キャハハハッ♪」ガシッ

総士「(!?羽交い締めに……背中に柔らかい物が当たって……いやいやいやいや……これは……まずい!)」

一騎「……総士」

総士「……は、い」

一騎「飲め」

総士「……はい」

総士「ぐ……虚無の……申し子が……テクニカルで……しゅう、せい……」バターン

一騎「あ、堕ちた」

真矢「ふふ~ん、他の皆も寝ちゃったねぇ……♪」

剣司「うーん……咲良……愛してるってば……」クタッ

咲良「うん……信じてるから……剣司ぃ……」クタッ

一騎「……それじゃ、二人で飲もうか、遠見」

真矢「ふふ、オッケィ、一騎くん♪」

―――

総士『……ここで僕は倒れたが、何故かその後の記憶も持ち続けていた』

総士『思えば、ジークフリードシステムの弊害だったのかもしれない……ともかく二人は飲み続けた』

総士『とは言ったものの、遠見が一方的に話しかけて、一騎が相槌を打つのみだったのだが』

総士『かなりの時間が経ち、ほとんどの酒が空になった頃、ついに勝負がついた』

―――

真矢「えへへ……一騎くんと一緒にお酒飲めるなんて、嬉しい♪」

一騎「そうだな……はい遠見、酒」トン

真矢「ふふ……一騎くん♪」

一騎「…………」

真矢「……ねえ、一騎くん?私って、可愛い?」

一騎「……遠見は昔から可愛いだろ」

真矢「……///」ポンッ

真矢「えへへ……そっかぁ……そっかぁ……」

真矢「ありがと……一騎くん……」ガクッ

一騎「遠見……?……寝ちゃったか」

一騎「……酒も切れたみたいだし、俺も寝るか」

一騎「……zzz」

―――

総士『結果、相討ち直前で一騎のクリティカルKO』

総士『まったく……いつも感謝されるのはあいつだけだ』

総士『さて、これで全員眠った訳だが……続きがあるんだ』

総士『当然だろう?これだけではただの恥ずかしい思い出じゃないか』

総士『……あの後、全員が覚えていなかったが……僕は覚えている』

総士『あの優しい声を……僕だけが』

―――

―――

ギィ……

『うわ、こんな所で寝ちゃってるよ……』

『もう、みんな風邪ひくよ?』

『毛布をかけてやろう、たしかあっちに……』

剣司「……さくら……」ギュッ

咲良「けんじぃ……」ギュッ

『……手、つないだまま寝てるや』パサッ

『結婚指輪……本当におめでとう、二人とも』

『本当は、僕が二人のためにスピーチを読みたかったんだけど……』

『……良かった、君たちを守ることが出来て……』


剣司「ん……」

咲良「……まも、る……」

衛『……これからも幸せにね。剣司、咲良……』

真矢「くぅ……」

『上着と毛布……と』パサッ

『……真矢、とっても優しい、私の友達』

『あなたは優しいから……私の事みたいに、一人で背負おうとするのよね?』

『でも……助けを求めてもいいの。それは一人じゃ背負えないわ』

『……この島に、貴女を責める人なんていないもの。皆があなたの味方よ』

翔子『だから……安心してね、真矢』

真矢「……うん、うん……」ポロポロ

翔子『……春日井くん』

甲洋「…………」

翔子『……ごめんね、私、あなたにひどい事をした』

翔子『……ううん、あなただけじゃない。お母さんにも、皆城くんにも、一騎くんにも……みんなを、悲しませて……』

翔子『でも……もう私は見ていることしか出来ない……だから』

甲洋「……うん、大丈夫だよ、翔子……」ツー……

甲洋「守るよ、絶対に……みんなを……」

翔子『……ありがとう、春日井くん』

『まったく……だらしないぞ、みんな』

『総士も……お前が潰れたら誰も一騎を止められないってわかってただろ?』

総士「…………」

『……成人式……大人、か』

『……いや、悔いはないよ。私は未来を残せた』

『後は……お前達に託したんだから』

『なぁ……一騎』

一騎「…………」

『……お前達には、本当に辛い選択をさせてしまった』

『すまない……一騎、総士……』

一騎「…………いいんだ、カノン」

カノン『……!?い、意識があるのか!?』

一騎「……お前のお陰で、俺は力の使い道を選ぶことができた」

一騎「総士も……きっとお前に感謝してる……だから……いいんだ、カノン」

カノン『……一騎』

一騎「………zzz」

カノン『……寝言、か。まったく……お前らしいよ』

衛『……じゃあ、もう行くね』

翔子『みんな……私達は、ずっとここにいるわ』

カノン『ああ。だから……』

カノン『みんなも忘れないでくれ……私達がここにいた事、そして……お前達も、ずっとここにいるという事を……』

ギィ……

バタン……

総士『…………』

―――

総士『……以上で、この話は終わりだ』

総士『……次の日、大人達に見つかるまで眠っていたことや、僕たちに1ヶ月の飲酒禁止令が出されたこと』

総士『剣司と咲良が以前にも増して距離が縮まったこと、主犯の二人は完全に記憶を失っていたということ』

総士『そして、頭痛で動けなかった僕が、一日中織姫のおもちゃにされたことなどは、話さなくてもいいだろう』

総士『僕はあの日、酒というものの恐ろしさを知った……だが、それ以上に……』

総士『彼らと一緒に過ごしてきた時間を、僕は忘れないだろう』

総士『たとえ、次の戦いでどれだけ残酷な結末が待っていたとしても……』

総士『……苦しみの中に囚われても、哀しみの雨に打たれても、僕は忘れない』

総士『僕が、いや……』

総士『僕たちは、ここにいたという事を……』

総士『……では、願わくばこのテープが聞いてもらえる事を願って』

総士『竜宮島から、皆城総士』

―――終―――

以上です

うん、これは今日中に書き終わらなきゃ……と思って書きました。なので前作より勢いで書いてます

>>1もファフナーはUXからのニワカです。なので設定に間違いとかあればどんどん申してください

それでは、最終回を楽しみに待ってます……BS組ですが

あ、前作もよろしければどうぞ

一騎「試したいんだ」総士「一騎……?」
一騎「試したいんだ」総士「一騎……?」 - SSまとめ速報
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カノン「出来たぞ一騎!ケイ素をたちまちシャイニー☆にしてしまうリモコンだ!」 - SSまとめ速報
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