【デレマス】シンデレラの晩餐会【リョナマス】 (25)

※R18 グロ 閲覧注意※
※卯月、かな子、アーニャのファンは見ない方が良いです※

高い塀がどこまでも続いている。門はまだ見えない。
塀のコンクリート面は、夜の始まりを告げる青白い光が照らしており、
無機質な威圧感を放っている。

「どこまで続いているんだろう? まだ着かないのかな~」

本田未央は左後席から車外を眺めて言った。

「そろそろ着くでしょ」

渋谷凛は手に持った招待状を見ながら答えた。

「シンデレラの晩餐会」

招待状の表にはそう書かれている。
裏には集合場所と集合日時が書かれているだけで、
詳細は何も記されていない。

「そっちも卯月に連絡取れなかった?」

凛は未央に訊ねた。

「うん、全然繋がらないんだよ」

未央は振り返って車内の凛を見た。
数日前から友達の島村卯月に連絡がつかない。
凛も未央もそれを心配している。
この晩餐会の招待状は、卯月の所にも着たのだろうか?
着たとしたら、会場で会えるのだろうか?


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1461413980

しばらく話をしていると、屋敷の門の前で車が停まった。
西洋風の重そうな木製扉。
その左右の開き戸がゆっくりと開いた。
門の中に道が少しずつ見えてきた。
灰色の石畳が敷き詰められた車道が続いている。
門が開ききると、車は敷地内に滑り込んで行った。

凛と未央は、フロントガラスの向こう側を見た。
遠くに屋敷がある。
それは、群青色の空の中、橙色の灯火が揺らいでいる様だ。

屋敷の玄関前にロールスロイスが1台停まっている。
凛と未央が乗っている車と同型だ。
どうやら先客がいるらしい。

「渋谷様と本田様、当家へようこそ。さあ、こちらへ」

タキシードを着た初老の男性が、凛と未央を迎えた。
執事と思しき男性。
そんな人が迎えるシチュエーション。
思わず笑いそうになってしまう。
凛と未央は互いに顔を見合わせ、声を出さず笑顔になった。

「こちらの部屋でお待ち下さい。御食事の準備が出来次第、お呼びします」

豪華な応接間。
部屋の中央には象嵌のローテーブルが置いてあり、
その周りのソファに先客が座っている。

「凛ちゃん! 未央ちゃん!」

新田美波が立ち上がった。

「みなみん! ちえりん!」

未央が嬉しそうに笑った。

「あの……久しぶり……です……」

緒方智絵里がソファの上ではにかんだ。

「うん、あの騒動以降、みんなバラバラだったから」

仲間の顔を見て、凛は少し安心した。

「卯月ちゃんは来てないの?」

美波は凛と未央に訊ねた。

「私も未央も連絡が取れない」

凛は首を横に振る。

「ここには来てないの?」

未央は美波の顔を見ながら言った。

「卯月ちゃんは来てないみたいね。
こっちもね……
かな子ちゃんやアーニャちゃんと連絡が取れないの……」

美波は心配そうな顔をした。
智絵里は俯いて寂しそうにしている。

「あの騒動を解決した人が呼んでくれた食事会だから、
ここなら来てると思ったんだけどな……」

凛は残念そうに溜息をついた。

「それにさあ、もっと沢山人が来ていると思ったよ~
意外と招待客が少ないみたいだね」

未央は周囲を見回す。

「そうね……もっと大きなパーティーかと思うよね?」

「でしょ? みなみんもそう思うでしょ?」

未央は不思議そうに首を傾げた。

「今のところ……私たち4人だけですね……」

智絵里は小声ながらはっきりと言った。

「相当なお金持ちだし、もっと沢山人を呼べるよね……
あ、もしかして人混みは嫌いなのかな?」

未央は思いつきで喋る。

凛はソファに腰を下ろして、

「なんか、こんな森の中に私たちだけって、不安になるよね」

感想を述べた。

「まー、346プロの救世主だし、変なことはしないでしょ」

未央は、ソファの上で腕を伸ばしながら言った。

「それよりさ~、今日は何を食べるのかな?」

未央は目を輝かせる。

「フレンチが中心みたい」

美波はさっき執事に訊いたそうだ。

「フレンチ! 私、そんなの食べた事ないよ~」

未央は驚く。

「卯月にも食べさせたいね」

凛は未央を見つめた。

「しまむーの家はお金持ちじゃん。
フレンチくらい食べた事あるんじゃないの?」

未央は悪戯っぽく笑った。

「初めてじゃなくても嬉しいと思うよ」

美波が言った。

「そりゃそうですな~」

未央は腕を組んで頷いた。

「かな子ちゃん……もし来られたら喜んだよね……」

智絵里が呟いた。

「失礼します」

ドアをノックする音と同時に声が聞こえた。
そして、執事が応接間に入って来た。

「お食事の用意が出来ましたので、御案内します」

執事は深々とお辞儀をしながら言った。
4人は執事について歩き、廊下をしばらく歩いた。
廊下の明かりはロウソクだけで、なんだか薄暗い。
燈火の間に飾られている肖像画。
それは不気味に微笑んでいると凛には思えた。

「こちらがダイニングルームです」

4人は案内された部屋に入って行く。

「いやあ、ようこそ! 遥々こんな所まで来てくれて有難う!」

屋敷の主人らしき男が4人を出迎える。
白いテーブルクロスが掛かった長いテーブルがあり、
男はその前に立っている。

紺色でシングルボタンの三つ揃えスーツ、
左腕の袖には金色で高そうな腕時計、
オールバックに流した黒髪、
いかにも金持ちに見える格好の男。
中年に見えるが歳は分かり難い感じで、
ミステリアスな男。
何よりも、堂々とした態度が印象的な男。
この男が主人だと4人はすぐ理解した。

「新田美波です。はじめまして。
あの、346プロを救っていただき、本当にありがとうございます」

美波が自己紹介と礼を言い、他の3人もそれに続く。

「外資のレコード会社に買収されるなんて、
黙って見ていられませんでした!
ホワイトナイトを引き受けたのは当然のことです。
私は346プロのファンですから……
今日、皆さんにお会い出来た事も嬉しい」

男は満面の笑みを浮かべる。

「みなみん、ホワイトナイトって何かな?」

未央は小声で質問した。

「会社を救う為、外部の人が株式を買い占める事よ。
つまり、今、346プロの大株主はこの人ってわけね」

美波は説明した。

男は上座に着席する。

「さ、皆さんも好きな席へどうぞ」

未央と凛は隣り合って座った。
その対面には、美波と智絵里が並ぶ。
入口には執事が立っている。

最初の皿が運ばれてきた。
皿の上には赤黒いソーセージが載っている。

「オードブルのブーダンでございます」

執事が説明した。

「これ、ソーセージなの?」

凛が訊いた。

「フランス風のブラッドソーセージです。血と脂肉を混ぜて作りました」

「血! なんか気持ち悪いなあ」

未央は顔をしかめた。

「欧州や中国ではよく食べます。味はレバーに似ています。
甘い餌で肥えた家畜を材料にしたので……きっと美味しいでしょう」

男は皆に勧める。

「何事も挑戦ね」

美波はブーダンを咥えて噛み締め……飲み込んだ。
智絵里もそれに続いた。
その様子を見て、未央と凛も思い切って齧り付いた。

「食べましたね」

男が意地悪そうに微笑んだ。

「え? ええ」

この時の美波には、男の表情の意味が分からなかった。


2番目の皿が運ばれてきた。
バゲット(フランスパン)とパテとスープのようだ。

「これ……ラーメンのスープみたい……」

白濁しているスープを見た智絵里が言った。

「骨髄でとった出汁を使用しました」

男が説明する。

「これはレバーパテかな?」

凛がパテを一口食べて質問した。

「そうです。レバーをスパイスで味付けしました。
パテ・ド・カンパーニュと呼ばれる料理ですね」

男がペッパーミルを動かす真似をした。

「それ、パンとよく合いますよね。私、大好きです」

美波がパテをバゲットに塗って食べた。

「これ美味しいね! うんうん! レバーは体に良いんだよね!
ちえりんは貧血気味だから、沢山食べたほうが良いよ~」

未央が智絵里にパテを勧めた。

「え、ええ……食べます」

「そうですね。たくさん食べて元気を出してください。
その骨髄とレバーの持主、アルパカに似た動物で、
頑張り屋で健気な家畜ですから、きっと滋養豊富です」

男がにやりと笑った。

3番目の皿が運ばれてきた。
肉料理が皿に載せられている。

「通常、魚料理やサラダをメインディッシュの前後に出しますが……
今回は肉料理を楽しんで頂きたいので、いきなりメインディッシュです!
沢山あるので、どうぞ召し上がれ」

男は皿を指差して言った。

「エトフェした肉のロースト。
エトフェとは、窒息させて絞めた肉ですね。
放血せずに絞めるので、肉の間に血が残るのですが、
それがコク深い味わいとなるのです。
フレンチでは、一般的にカモやハトで行われます。
今回の家畜は、もっと大きなロシア産の動物ですが……」

男が料理の説明をする。

「なんだか残酷だな」

料理を見つめながら凛が呟いた。

「そうですね……美食は残酷さを伴います」

男が苦笑いする。

「カモ肉にカモの血のソースを合わせたりしますよね。
これも似たような味がするのですか?」

美波が訊いた。

「鉄分を帯びたコク深い味は似ていますね。
先ほどのブーダンもそうですが、血を味わう調理法は多数あります。
エトフェもそのひとつですが、肉自体に味付けされる点で独特です」

男が満足そうに笑った。

ゲスト4人は、肉のフルコースを完食した。

「いやー、初めてのフレンチ! どれも美味しかったね!」

未央は、グラス一杯の水を飲みほしてから言った。

「私はレバーパテが良かったよ。みんなは?」

凛が周囲に訊く。

「ソーセージ……美味しかった」

智絵里は食感と味を回想した。

「私はローストが美味しかったな」

美波が微笑んだ。

「皆さん、満足して頂いたようで……私も満足です!」

男が嬉しそうな表情を見せた。

「特別な肉を用意した甲斐がありました。
うん、本当に特別な肉ですからね……」

男は感慨深そうに頷く。

「あの、今日食べたのは……何のお肉でしょうか?
今まで食べた事ないお肉でした」

美波が疑問を述べた。

「そりゃあ、食べた事ないでしょうねえ。
特別に用意した珍品ですからねえ。
これからお見せしますよ、本日の晩餐になった私の獲物!」

ダイニングルームの入口が開いた。
黒服の男が3人……。
黒服たちは、それぞれが台車を押して入って来た。
計3台の台車、その上に何かが置かれている。
何かには白い布が掛けられており、正体が分からない。
人間位のサイズがある。
テーブルの前で台車が停まると、観音開きの入口扉は閉められた。
そして、外から施錠する音が周囲に響いた。

「さあ、皆さんに私の作品をお見せしましょう」

白い布が取り払われた。
台車の上に乗せられた「それら」を見て、4人は戦慄した。

「し、しまむー!」
「卯月!」

凛と未央が声を張り上げた。

「アーニャちゃん!」

美波は驚愕して叫んだ。

「か、か……かな子ちゃん……」

智絵里は蚊の鳴く様な声を出した。

やって来た3人……卯月、アーニャ、かな子は、人形みたいだ。
普段通りの服を着ているが、生気のない物体と化している。

「剥製作りが、私の趣味でして……
企業買収の見返りとして『素材』を求める事もあるんですよ。
そう、まさに……私がビジネスで狩った獲物!
今回はこの3人を選びました!
今日の晩餐、食材は彼女たちから採取したものですよ」

男は笑顔で剥製を見つめる。
その目の輝きは狂気そのもので、
その笑顔は邪悪そのものだ。

「ごらん。美しいだろう。
いつまでも美しさを保つ……私のアイドルだよ」

男は4人にアピールする。

「うそだ……うそだ……うそだ……」

未央は、顔面蒼白になって歯をがちがちと鳴らしている。

「嘘なんかじゃないよ。
いやあ、実に愉快だった。今日の晩餐は最高だったよ。
友達が友達を食べるなんて、最高に面白いじゃないか」

男の口元は大きく歪んだ。

「君たちは友達を食べました!」

男が大きな声で言った。

「う……うげえええええ……」

智絵里が嘔吐し、赤黒い吐瀉物が床に飛び散った。

「あーあ、勿体ないじゃないか。
緒方さん、三村さんで作ったソーセージを美味しいと言ったよね?
なのに、吐いてしまうなんて、いけないねえ」

男はにやけている。

「渋谷さんと本田さん、島村さんで作ったパテを美味しいと言った。
新田さん、アナスタシアさんで作ったローストを美味しいと言った。
うーん、美味しい料理になってくれた友達に感謝しないとね」

凛が走り出した。
そして、男の胸倉をつかんで怒鳴る。

「ふざけるな! 卯月を返せ!」

鬼気迫る表情で怒りをぶつけた。
しかし、すぐに2人の黒服が掴みかかって凛を取り押さえた。

「おいおい、何てことをする……破れたらどうするんだ。
これ、ブリオーニのスーツだぞ」

床にねじ伏せられた凛を見下ろしながら、男は文句を言った。

「返して……返してよ……卯月を返して! 返してよ!」

凛は床に顔をつけたまま号泣する。

「こんなことが許されると思っているんですか!?」

美波が叫んだ。その声は怒りに震えていた。

「許されるよ。私は346プロを買ったんだ。
つまり、君達アイドルも買ったというわけで、
君達をどうしようが私の勝手だよ」

男は呆れた様子で答えた。

「絶対に許さないから」

凛は男を睨みつけながら言った。

「君達に何が出来るっていうんだ?
向かってきた所で勝てない。家畜は飼い主に勝てないからな。
その気になれば、君らを生きたままブタの餌にする事だって出来るんだ。
逆らわない方が身のためだぞ。
大人しく飼われていたまえ。そうすれば無事でいられる」

未央が小声で喋り出す。

「け、け、警察に行こう。警察に助けてもらおうよ」

美波を見つめながら言ったが、その目は焦点が定まっていない。

「本田さん……君はバカかね?
こんな事をする位だから、もみ消し位は簡単に行えるのだよ。
人を消すのは容易いし、それを無かった事にするのも容易い。
それくらいの金と権力があるから、君達を家畜に出来るのさ。
まだ理解できないかな? ん?」

男の話を聴いて、未央はその場にへたり込んだ。

「なんで私達が……」

美波は唇を噛み締める。

「君達をペットにしたいのさ。
ペットを馴らすには餌を与えるのが一番だ。
君達さあ……私ばかり悪者にする気みたいだが……
君達も責任を感じなきゃいけないよ。
だって、君達は友達を食べたのだから!
それは純然たる事実なのだよ!」

男は深呼吸した。そして話を続ける。

「この事がばれたら、君達だって立場がないぞ。
友達を食べたなんて……世間に知れたらどうなるだろうね。
アイドル活動どころか日常生活すら苦しいだろうなあ」

状況を把握した4人の顔は真青になっている。

「安心したまえ。346からの『素材』は3人で十分ですよ。
君達は無事でいられる。私のペットでいる限り……ね」
                              完

文字通り、アイドルを料理してみました。
                               
直接的なグロは、あまりなかったかもしれません。
物足りない人もいるかも……。

莉嘉に美嘉を食べさせるネタもありました。
「お姉ちゃん お姉ちゃん」って精神崩壊するオチですがww

李衣菜で作ったハンバーグを前川みくに食べさせる。
そんなネタも考えました。
みくにゃん、李衣菜もハンバーグも好きですからねww

いくつかある中で、今回は猟奇フレンチを選びました。

読んで楽しんでくれた人、ありがとうございますね!
ではでは~♪

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom