宴会場
桃「それではこれより各チームによるかくし芸大会を行う」
杏「優勝チームには豪華賞品も用意してるからなぁ」
「「おぉ~」」
桃「ちなみに三位は大洗商店街のサマーセール福引補助券。二位は学食の食券500円分。一位の賞品は十万円相当の……」
「「おぉ~!!!」」パチパチパチ!!!!
桃「詳しくはあとで発表する。以上」
沙織「現金かなぁ!?」
優花里「10万円あればティーガーの履帯が一枚買えます!」
みほ「私、ボコのぬいぐるみ買ってもいいかな?」
沙織「いいよ。ボコのどこが良いかわからないけど」
みほ「……え?」
華「みんなで温泉に行きましょうよ」
麻子「単位が欲しい」
みほ「……」
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翌日 大洗女子学園 共同玄関
沙織「おっはよー」
華「おはようございます、沙織さん」
沙織「なんだか昨日が夢みたいだったね」
華「いいえ、夢ではありませんわ。わたくしたちは優勝したんです」
沙織「だよね! だよね! これで私も有名になっちゃったし、全国からファンレターがきちゃうかもー。やだもー」
華「そうなるといいですね」
沙織「絶対なるもん!! もう今日から靴箱にラブレターが入っていてもおかしくないし!!」
華「ここは女子校ですけど」
ザワザワ……ザワザワ……
華「あら? どうしたのでしょう。人だかりができていますね」
沙織「磯辺さんがいる。おーい、いそべさーん」
典子「武部さん!!」
沙織「なにかあったのー?」
典子「ここ、武部さんの靴箱ですよね……」
沙織「え?」
華「これは……」
典子「朝、来てみたら既にこうなっていて……」
沙織「な……え……?」
華「沙織さんの靴箱にぬいぐるみが押し込まれていますね」
沙織「このぬいぐるみ、ボコ?」
典子「はい。しかも、かなりの数がこの小さな靴箱の中にあるみたいで……」
華「どれほどの力で押し込んだのでしょうか。取ろうにも簡単にはいきませんね」
沙織「誰がこんなことするのよー」グググッ
典子「悪趣味な悪戯ですね」
沙織「ふーん!! ふぅー。とれたー」
華「上履きはありますか?」
沙織「んー? ないっぽい……」
典子「武部さんの上履きなら靴箱の上に置いてありましたよ」
沙織「よかったー。これがゴミ箱にあったら完全にイジメだよね」
典子「ですね!!」
華「そうでしょうか……?」
沙織「このボコ、どうしよう」
華「みほさんに差し上げたらどうでしょう」
沙織「そっか。それがいいよね。みぽりん、よろこぶかなー」
典子「それよりもこんなことをした犯人を捜さなくていいんですか」
沙織「ヘーキ、ヘーキ。別に上履きの中に画びょうを入れられていたわけでもないし」
典子「武部さんがそういうのなら」
沙織「みぽりんはもうきてるかなー」
華「それではまた後ほど」
典子「はい!!」
沙織「またねー」
華「沙織さん、大丈夫ですか?」
沙織「……華ぁ、どうしよう……。わたし……いじめられてるのかなぁ……」
華「強がる必要、あったのですか?」
沙織「だって!! 磯辺さんからみんなに伝わったら、色々と心配させちゃうかもしれないし!!」
華「わかりました。これからどうします?」
沙織「犯人探し、したほうがいいと思う?」
華「沙織さんが気になるというのなら、手伝いますが」
沙織「うぅ……これって、やっぱり、あれかなぁ……優勝したからっていい気になるなよ、的なやつだったりするのかな……?」
華「そこまでは……。ですが、沙織さんだけでなく、戦車道受講者に嫉妬するのはありえるかもしれませんね」
沙織「あぁー!! やっぱり、私って罪な女ぁー!!」
華「その解釈は如何なものかと思いますが」
沙織「ねえ、華ぁ。私のこと、守ってくれる?」
華「勿論ですわ。それに優花里さんも麻子さんも、そして……」
沙織「みぽりんも守ってくれるよね!!」
華「はい。まずは教室に行き、みほさんに相談してみましょう」
沙織「うんうん!! みぽりんならなんとかしてくれるかも!!」
華「きっとしてくれます」
沙織「よぉーし!! みぽりんに相談だー!! パンツァー・フォー!!!」
教室
沙織「みーぽりんっ!!」
ザワザワ……ザワザワ……
華「何か様子がおかしいですね」
沙織「な、なにかあったのかなぁ」
ねこにゃー「あ……武部さん……五十鈴さん……」
沙織「おはよ、猫田さん」
華「何かあったのですか?」
ねこにゃー「た、武部さんの机に……その……」
沙織「私の!? な、なに!? どうしたの!?」
ねこにゃー「ぬいぐるみが……たくさん……」
沙織「え……」
華「またしても、ボコのぬいぐるみが……」
ねこにゃー「机の中にも詰め込まれてて……」
沙織「ど、どうして……? な、なんで……」
華「執拗にぬいぐるみを沙織さんへ送るなんて……」
ねこにゃー「ちょっと怖い……」
沙織「こわすぎるわよー!! みぽりん!! みぽりーん!! たすけてー!!」
華「落ち着いてください、沙織さん」
沙織「でもでも!!」
ねこにゃー「あ、西住さん」
沙織「え!? やったぁ! みぽり――」
みほ「……」
沙織「……!?」ビクッ
みほ「おはよう、猫田さん。沙織さん、華さん、おはよう」
沙織「あ、うん」
華「みほさん、聞いてください。沙織さんが何者かに狙われているようなのです」
みほ「そうなの?」
沙織「う、うん」
みほ「そうなんだ。何があったの?」
ねこにゃー「武部さんの机にボコがいっぱいいて……」
みほ「わぁ、ボコだー。かわいいね」
沙織「え? いやいや、みぽり――」
みほ「かわいいよね?」
沙織「え?」
みほ「……」
沙織「か、かわいいね」
みほ「うんっ」
華「愛らしくとも、これだけ大量にあるとその、あまり見栄えはよろしくないかと」
みほ「そうかな。ボコは可愛いと思うけどな」
沙織「み、みぽりん?」
みほ「なに?」
沙織「な、なんだか、いつもと様子が違うような気がするのは、気のせい?」
みほ「なにが? 私、おかしいかな?」
沙織「な、なんでもない」
昼休み 食堂
優花里「許せません!! 武部殿を怖がらせるなんて!!」
沙織「ゆかりぃーん。ありがとう。私のために怒ってくれて」
優花里「当然です!! 私の大事な人にしていいことではありません!!」
沙織「やだもー。大切な人って、恋人じゃないんだからぁ」
優花里「西住殿もそう思いますよね!?」
みほ「うん。そうだね」
優花里「犯人を見つけ出して詰問しましょう!!」
麻子「沙織」
沙織「なに?」
麻子「お前に原因はないのか」
沙織「どういうこと?」
麻子「誰かを激しく怒らせたとか」
沙織「えー? そんなことないってー」
みほ「……」
麻子「どうだろうな。沙織は時々、何気なく毒を吐くときがあるからな」
沙織「麻子ほどじゃないもん」
麻子「私の場合はわざとだ」
沙織「尚更、性質悪くない?」
華「麻子さんの言うことも一理あるかもしれません」
沙織「華までなんてこというのよぉ」
華「何か理由がなければあのように手の込んだことをするとは思えません」
沙織「そ、そうなの?」
優花里「靴箱や机の中にぬいぐるみを押し込む作業を誰の目にも触れずに行ったわけですよね。確かに並々ならぬ執念を感じます」
麻子「思い出せ。本当に身に覚えはないか?」
沙織「そ、そんなこといわれても……」
みほ「……」
沙織「あ、あれかなぁ。前にバーベキューをしたとき、会長の趣味が料理ってきいて反射的に見かけによらないですねって、言ったことがあるけど」
麻子「それだな」
優花里「それだと会長が犯人になってしまいます。あの明朗な会長が実行するとは考えにくくないですか?」
麻子「会長が犯人とは限らない」
優花里「どういう意味でしょうか」
麻子「心の広い人の傍にはその人を深く慕う者がいる」
華「ま、まさか……」
麻子「悪口を言われて怒るのは、何も本人だけじゃない」
優花里「で、では……犯人は……」
沙織「か、河嶋先輩……? け、けど、あれはもうかなり前のことだし」
麻子「恨みというのはそういうものだ」
優花里「戦車道大会の真っただ中、仲間内で争っている場合ではないと判断した可能性があります」
華「河嶋先輩……そこまで我慢していたとしたら……」
麻子「沙織が悪い」
沙織「まってよぉー!! 確かに私が悪いけど、ここまでされなきゃダメかなぁ!?」
麻子「何気ない一言で相手を勇気づけることもあれば、深く傷つけることもある」
沙織「うぅ……」
麻子「謝ったほうがいい」
沙織「謝るけど、それで許してくれるかな?」
優花里「誠心誠意、心を込めた謝罪ならば許してくれますよぉ。まだ、そうと決まったわけでもありませんが」
沙織「うん……」
みほ「……」
華「とにかく、生徒会室へ行って、話してみましょう」
優花里「それがいいですよぉ、武部殿」
麻子「仕方ないから、ついていってやる」
沙織「みんな、ありがとぉ……」
優花里「もし、武部殿に非があるのでしたら、同じチームメイトである私も土下座して謝ります」
沙織「ゆかりん。そこまではしないで。ゆかりんは何も悪くないんだから」
優花里「しかし、武部殿」
沙織「大丈夫だよ。ちゃんとごめんなさいって言えるから。でも、もし、なんか危ない雰囲気になったら、助けてね」
優花里「もちろんです」
華「任せてください」
みほ「……」
/::::::::::::::::::::::::::\~プーン
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\~プーン >>1
|:::::::::::::;;;;;;|_|_|_|_|~プーン
|;;;;;;;;;;ノ∪ \,) ,,/ ヽ~
|::( 6∪ ー─◎─◎ )~ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|ノ (∵∴ ( o o)∴)~ <このSSを書けば賞賛の嵐だお。皆見てくれるお。レスももらえるお。
| ∪< ∵∵ 3 ∵> ムッキー! \_____________________
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| ,,ノ(、_, )ヽ、, :::| このスレを立てたときの>>1
| ト‐=‐ァ' .:::|
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| ノ ヽ、 :| このスレを閉じたときの>>1
| (●), 、 (●)、.:::|
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生徒会室
沙織「ごめんなさい!!!」
柚子「へ?」
杏「ん?」
桃「な、なんだ!! いきなり!!」
沙織「私の心無い一言で傷つけたこと、反省してます!!」
桃「何の話だ」
沙織「だから、その、バーベキューのときに、私が失言して……それで先輩が……怒って……」
桃「怒る? 私が?」
沙織「は、はい」
杏「かわしまぁ、武部ちゃんになんか言われたぁ?」
桃「いえ。覚えはありませんが」
沙織「いえ、河嶋先輩に言ったんじゃなくて、会長に……いっちゃって……」
杏「あたし? なんていったの?」
沙織「料理が、できるってきいて、思わず見かけによらないですねって……。ごめんなさい!!」
柚子「あぁー。そんなこといってたかも」
桃「言っていたな」
杏「はむっ」モグモグ
沙織「あの、えっと……」
優花里「武部殿は猛省しています!! どうか、許してあげてください!!」
華「申し訳ありません」
麻子「許してほしい」
みほ「……」
沙織「みんな!! やめて!! これは私のことなんだから!!」
優花里「いえ!! 武部殿の問題は私たちの問題でもあります!!」
沙織「ゆ、ゆかりん……」
華「もし言葉だけでは足りないというのなら、なんでも仰ってください。それに応えるだけの覚悟はあります」
沙織「華、やめてってば!!」
杏「じゃ、全校生徒の前であんこう踊りでもやってもらおうかなぁ」
沙織「えぇぇ!? い、いや!! 私、それぐらいのことを言っちゃったんだもん!! あんこう踊りぐらい、やらなきゃ……!!」
柚子「会長、あまりかわかないであげてください」
沙織「え?」
杏「あはは。ごめんごめん。冗談だから。会長、ジョーク」
優花里「じょ、冗談、ですか」
桃「会長の趣味が料理というのは、確かに見かけによらないからなら」
華「まぁ……。そのようなことを言ってもよろしいのですか」
杏「大体、武部ちゃんみたいに言われてるからなぁ。見かけによらないなって」
柚子「実は私も言ったことがあって」
桃「私もだ」
沙織「あ、れ……? それじゃあ、怒っては……」
杏「かわしまぁ、怒ってた?」
桃「いいえ。気にも留めていませんでした」
杏「こやまぁ、怒ってた?」
柚子「怒る理由がありません」
杏「だってさ。もちろん、あたしも怒ってないから。よかったね、武部ちゃん。干し芋、たべる?」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆警告☆閉鎖★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
★ ☆
☆ このスレは2chから閉鎖処置を受けました ★
★ ☆
☆ 今後 書き込みを行ったものは アクセス禁止 の対象になります。 ★
★ ☆
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
沙織「な、なんだぁ……よかったぁ……」
桃「大丈夫か」
柚子「何かあったの?」
沙織「そ、それがぁ」
杏「今朝、武部ちゃんの靴箱と教室の机に大量のぬいぐるみが押し込められてたらしいね」
柚子「え!? そうなんですか!?」
桃「その報告は受け入ていませんが」
杏「あまり広めないようにってねこちゃんには言っておいたからな」
華「猫田さんが報告を……」
杏「心配してたよ。武部ちゃんを助けてあげてって言われたし」
優花里「猫田殿、そこまで想っていてくれたのですね」
沙織「猫田さんにお礼、言わなきゃ……」
華「それがいいです」
桃「ということは、お前たちは私がそんな陰湿なことをしたと思ったのか。そのほうが、傷つく……」
柚子「桃ちゃん、泣かないで」
優花里「すみません!! 河嶋殿!!!」
華「あ、あの! 可能性の話をしていたら、ここへ行きついてしまっただけです!!」
麻子「別に疑っていたわけじゃない」
桃「うぅ……うそだぁ……」
沙織「あぁー!! ごめんなさい!! ホントーにごめんなさい!!」
桃「うぇーん、かいちょぉぉ……」ギュッ
杏「よしよし、かわしまが良い子なのはあたしがよぉーく、しってるから」ナデナデ
桃「うぅぅ……」
柚子「武部さんは口を滑らせたことが原因だって思ってるの?」
沙織「それしかないかなって」
杏「難しいよな。自分の言ったことが相手にどれだけの影響を与えたかなんて、よくわかんないし」
華「そうですね。ただ、沙織さんの失言が原因で起こったことかも、まだ確証を得てはいませんが」
麻子「ここが違うとなれば、沙織自身に問題はないかもしれないな」
沙織「やっぱりさ、誰かの嫉妬なんじゃないかな。取材とかも受けちゃったことあるし」
みほ「……」
通学路
優花里「それではここで失礼します」
沙織「うん、ゆかりん、バイバーイ」
優花里「武部殿!! 私たちがついていますから!! 心配しないでください!!」
沙織「うんっ。わかってる。頼りにしてるからー」
みほ「……」
華「結局、何も手がかりはありませんでしたね」
麻子「沙織の言う通り、誰かの妬みだとしたら厄介だな。現状では手の打ちようがない」
沙織「誰かにつけられてない?」
華「そのようなことはないみたいですけど」
沙織「はぁー、どうなっちゃうんだろ、わたし……」
華「弱気にならないでください、沙織さん。わたくしたちがいます」
沙織「うん……」
みほ「沙織さん。不安なら私が寮まで一緒に帰ってあげるけど」
沙織「いいの!? でも、みぽりん、遠回りになっちゃうよ……?」
みほ「気にしないで。だって、沙織さんのためだから」
沙織「みぽりん……!」
華「みほさんが一緒なら安心ですよね」
沙織「うん!!」
麻子「それじゃあ、私はこっちだから」
華「わたくしもここで」
沙織「今日はありがとー!! まこー!! はなー!! またあしたねー!!」
華「はい。それでは」
麻子「気を付けて帰れよ。西住さん、沙織をよろしく頼む」
みほ「うん」
沙織「さぁ、かえろー、みぽりん」
みほ「……」
沙織「ね、手、繋いでもいいかな?」
みほ「いいよ」ギュッ
沙織「あ、いた……ちょ、みぽりん、握力すごくない?」
寮 玄関前
沙織「ついたー。みぽりんが一緒だからぜーんぜん、怖くなかったよー」
みほ「そっか」
沙織「そーだ! みぽりん、お礼に今日はごはん食べていってよ。腕によりをかけちゃうから!」
みほ「いいのかな」
沙織「気にしないで、ほら、入って入って」ガチャ
みほ「……」
沙織「ちょっと散らかってるけど、好きなところに座って――」
沙織「……!?」
みほ「わぁ。部屋中、ボコでいっぱいだぁ」
沙織「あ、あれー……お、おかしいなぁ……私の部屋って、ネコのクッションとかブタのゴミ箱とかしかなかったのになぁ……」
みほ「ふふっ。ボコってかわいいよね」
沙織「……」
みほ「ね、沙織さん?」
沙織「あ、あの、みぽりん……? なんでそんな笑顔なのかな……」
みほ「どうしたの、沙織さん?」
沙織「あ、朝からなんか様子がおかしいと思ってたけど、やっぱり、今日のみぽりん変だよ!!」
みほ「変? 私、変かな」
沙織「どうしちゃったの!? みぽりん!! なにかあったなら言ってよ!!」
みほ「そんなにおかしいのかな。私……」
沙織「あ、え……?」
みほ「……」
沙織「み、みほ……? な、なにが……」
みほ「私、変じゃないよ」
沙織「え? え?」
みほ「だって、私、ただ沙織さんに分かってほしいだけだから」
沙織「あのー……みほー……?」
みほ「沙織さん、言ったよね。ボコのどこが良いのか、わからないって」
沙織「……!?」
みほ「覚えてない? 沙織さんは、確かにそう言ったの」
沙織「やめて……みほ……」
みほ「ボコは何度倒れても必ず立ち上がる。何度も何度もボコボコにされてもめげない」
沙織「あぁ……」
みほ「何度挫けても立ち上がりたい。そう思わせてくれるんだ」
沙織「そ、そっかぁ。うんうん。わかる、わかるよー」
みほ「――ホントに?」
沙織「ひぃ……」
みほ「ホントに分かってくれたの?」
沙織「ごめん、なさい……」
みほ「どうして謝るの、沙織さん。私は分かってくれたかどうかを訊ねてるだけなのに」
沙織「あぁぁ……」
みほ「正直に言って欲しいな」
沙織「ごめん!! 全然、わからない!!」
みほ「これだけ用意してもわからないんだ……」
沙織「だ、だ、だだ、だって!! こんなにあったら怖さのほうが際立っちゃうじゃない!!」
みほ「……」
沙織「どうして靴箱や机に詰め込んだの!? あんなことしなくてもいいじゃない!!」
みほ「私だって、本当はどれか1匹に絞りたかった。でも、できなかった……だって……だって……」
みほ「みんな、可愛いから!!」
沙織「……!?」ビクッ
みほ「どれを渡せば沙織さんが気に入ってくれるのか、一晩考えた。でも、結局答えなんてでなくて……」
みほ「だから、全部持ってきたんだ」
沙織「ぜ、ぜんぶって……」
みほ「沙織さんの目に必ず入る場所に忍ばせておけば、きっとボコの良さを分かってくれるって……」
沙織「わかんないって!! それならみぽりんの部屋に誘ってよ!!」
みほ「けど、前に沙織さんが私の部屋に来たとき、ボコには一切触れなかった。部屋に招いても同じことになる」
沙織「ま、まぁ……興味なかったし……」
みほ「興味を、好意をもってもらうには、こうするしかなかった……。沙織さんの周りをボコだらけにするしか……」
沙織「もっといい方法あったと思うけど!?」
みほ「たとえばどんなことかな?」
沙織「そ、それは、あの、ほら、えーと……」
みほ「……」
沙織「……」
みほ「ただ、私はボコを好きになってほしかった。他の誰でもない大切な人である、沙織さんに」
沙織「その気持ちは嬉しいんだけどさぁ……ここまでしなくても、いいんじゃない……?」
みほ「沙織さん!! このボコを見て!!」グイッ
沙織「むぐぐぐ……!?」
みほ「このボコは大洗限定のボコなの!!」グググッ
沙織「ぅぐぐぐ……!! ちょっと!! 息、息できないから!!!」
みほ「あ、ごめんなさい……近くで見てほしくて、つい顔に押し付けて……」
沙織「はぁ……はぁ……。み、みぽりんがボコをどれだけ愛してるのかは、よくわかったから……」
みほ「分かってほしいのは、そこじゃなくて……ボコの良さを……」
沙織「ぜんっぜん!! わかんない!!」
みほ「だったら!! この北海道限定のボコを!!」グイッ
沙織「ちょっとやめて!! そういうことを言ってるんじゃないから!!」
みほ「どうしたら、分かってくれるの……沙織さん……」
沙織「押し付けられたら逆に嫌いになっちゃうけど」
みほ「そんな……!!」
沙織「ストップ!! ボコをそれ以上、近づけたらホンキで怒るから!!」
みほ「……」
沙織「ふー。よし。分かった。みぽりんがマジなんだってことは、すごくわかったから。座って、落ち着こう」
みほ「はい」
沙織「まずは、謝るよ。どこが良いかわからないって言って、ごめんなさい」
みほ「私は謝ってほしいわけじゃ……」
沙織「でも、今はまだボコの良さはわからない。むしろ、怖いよ。トラウマになりそうなぐらい」
みほ「……」ガタッ
沙織「だから、楽しませてよ」
みほ「え……?」
沙織「ここにある無数のボコで私を楽しませて。みぽりんは私を怖がらせたんだから、それぐらいしてよね」
みほ「楽しませる……ボコで……?」
沙織「そう。今日は私がボコの良さを理解できるまで、みぽりんは帰っちゃダメだからね」
みほ「そんな……」
沙織「というか、みぽりんをそこまで本気にさせるんだから、ボコにはとてつもない魅力があるような気がしてきたし」
みほ「そ、そうそう!! そうなの!!」
沙織「それを教えて」
みほ「はいっ」グググッ
沙織「ちょ……!? おしつけないで!!」
みほ「あ、ごめんなさい……」
沙織「も、もう……。私にボコを近づけることなく、ボコの良さをアピールして! お願いだから!!」
みほ「わかりました」
沙織「けど、いつまでもやられたら困るから、夜が明けるまでね」
みほ「残り10時間……。あまり、時間はない……」
沙織「めちゃくちゃあると思うけど」
みほ「考えないと……沙織さんを楽しませる戦術を……どうしよう……どうしたら……」
沙織(試合のときより悩んでるような……)
沙織「みぽりーん。ごはん、できたよー」
みほ「こうしたら……沙織さんは……そのときは……こうして……」ブツブツ
沙織「みぽりんってば」
みほ「あ、はい」
沙織「ごはんにしよ」
みほ「いいの」
沙織「なんで?」
みほ「まだボコで楽しませる方法を思いつけていないのに……」
沙織「ごはん食べたら思いつくかもしれないじゃない?」
みほ「そうかな」
沙織「そうだって」
みほ「それじゃあ、いただきます」
沙織「どーぞ、めしあがれー」
みほ「はむっ……。美味しい」
沙織「でしょ? これ食べて、しっかり考えてね」
沙織「――みぽりーん、お風呂はー?」
みほ「できた! できたー!!」
沙織「なにが?」
みほ「沙織さんも楽しめるボコ劇場です!!」
沙織「ああ、うん」
みほ「沙織さん、座ってください」
沙織「う、うん。お風呂は?」
みほ「それでは、始めます。西住流ボコ劇場」
沙織「……」
ボコ『ハクシュガナイゾ。ドウナッテルンダヨ』
みほ「沙織さん、拍手して」
沙織「……」パチパチ
みほ「これでいいかな?」
ボコ『シカタネエナ。コレデガマンシテヤルゼッ』
沙織(みぽりんってこういうことするんだ)
ボコ『オイラ、ボコダゼ!!』
みほ「ある日、ボコはいつものように森を歩いていました」
沙織「ボコだぜって言いながら?」
みほ「すると前から人間の女の子が歩いてきました」
みほ『あ、ボコだ』
沙織「みぽりんも出演するんだ」
ボコ『ヨウ、オジョウサン。コノモリハアブナイゼ。ハヤクデタホウガイイ』
みほ『どうしてですか?』
ボコ『ソレハナ、オイラミタイナコワイクマガイルカラダー』
みほ『きゃー』
みほ「女の子は逃げていきました」
ボコ『コレデイイ。コノモリヲアルクニハ、カレンスギルカラナ』
みほ「本当は人間とも仲良くなりたい。けど、ボコはあえて悪役になり、危険な森からか弱い女の子を遠ざけます」
ボコ『カゼガナイテルゼ』
沙織(みぽりん、すごいテンションあがってるなぁ)
みほ「別の日、いつものようにボコが森をパトロールしていました」
沙織「散歩じゃなかったの」
みほ『きゃー』
みほ「女の子の悲鳴が聞こえてきました」
ボコ『ナンダナンダ』
ネコ『ニャー、ワタシハワルイネコダニャー。コノオンナノコヲイジメテヤルニャー』
みほ『誰かー!』
沙織(私のネコのクッションまで出演しちゃった)
ボコ『マチナ!!!』
ネコ『ダレニャ?』
ボコ『ソノコヲハナシナ』
みほ『ボコさん!』
ネコ『ナマイキナヤツダニャー。ヤッチマエ!』
ブタ『ブヒー』
沙織(ブタのゴミ箱まで使われちゃった!?)
ボコ『ウワー』
ネコ『ヨワイニャー。ニャッニャッニャッ』
みほ「ボコがみんなにボコボコにされてしまいます。みんな、ボコを応援してあげてください!」
沙織「え?」
みほ「応援です!」
沙織「ぼ、ぼこー、がんばれー」
ボコ『ゼッタイニアキラメルカァ。ナンドダッテ、オイラハタチアガルンダァ!!!』
みほ「ボコが立ち上がりました!」
沙織「お、おー、ぼこー、まけるなー」
ボコ『ココカラハンゲキダァ!!』
ネコ『ウルサイニャア!!』
ブタ『ブヒー』
みほ「ボコはまたボコボコにされてしまいました」
沙織「ダメじゃん」
みほ「悪いネコとブタはボコをボコボコにしたことで疲れてしまい、そのまま帰っていきました」
みほ『あなたのおかげで助かりました』
ボコ『ダカライッタンダ。モウコノモリニハチカヅクナ』
みほ『あの、せめてお礼を……』
ボコ『ハヤクデテイケ!! コレイジョウ、オレヲオコラセルト、イノチノホショウハデキナイゾ!!』
みほ『あ、ありがとうございました。この御恩は、一生忘れません!!』
みほ「走り去っていく女の子の背中を見つめながら、ボコはつぶやきました」
ボコ『カゼガナイテルゼッ』
沙織「そのフレーズ、好きなの?」
みほ「おしまい」
沙織「……」
みほ「……」
ボコ『オワッタノニハクシュガナイゾ』
沙織「……」パチパチパチ
ボコ『アリガトヨ!!』
みほ「沙織さん、どうだったかな? ボコ劇場、楽しめた?」
沙織「あ、うん、もう、すっごい楽しかった。みぽりんの意外な一面を知れたし」
みほ「よかったぁ。練習できなかったから不安だったけど、沙織さんが楽しめたなら成功でいい、のかな」
沙織「いいんじゃない」
みほ「こうして自分でボコを演じてみて、またボコを好きになれた気がする。ありがとう、沙織さん。私に新しいボコの良さを教えてくれて」
沙織「え? ああ、うん。みぽりんが楽しかったなら、もうオールオッケー」
みほ「これで……沙織さんにも伝わったんだね……」
沙織「よぉーく、理解したよ。無理をいったのにここまでしてくれてありがと」
みほ「ボコの良さが分かってくれたなら、それで……」
沙織「お風呂、どうする?」
みほ「入ります!」
沙織「劇で疲れたでしょ? 先にはいっていーよ」
みほ「けど、沙織さんに悪いし……」
沙織「いいから、入って。ほらほら」
みほ「なら、お言葉に甘えて」
沙織「はーい。ごゆっくりー」
沙織「電気けすよー」
みほ「うん」
沙織「はい」カチッ
みほ「帰らなくてもよかったの?」
沙織「夜、遅いしね」
みほ「ごめんなさい、沙織さん。今日の私、どうかしてた……」
沙織「元はと言えば私が悪いんだし、お互いさまってことで」
みほ「沙織さん……」
沙織「もー、なに?」
みほ「沙織さんが大洗にいてくれてよかった」
沙織「急にどうしたの?」
みほ「私の事をこんなに理解してくれる友達なんて、いなかった」
沙織「そんなことないって。きっとみぽりんが気が付いてなかったんじゃない?」
みほ「ううん。だって、ボコのことを話したら、みんな私から距離をとることが多かったから……」
沙織「そ、そう……まぁ……うん……」
みほ「ここまで付き合ってくれたのは、沙織さんが初めてだった」
沙織「そうなんだ。ま、まぁ、ほら、私はみぽりんの親友だし、どんなことでも受け止めるよ」
みほ「沙織さん!!」グググッ
沙織「むぐぐぐ!!」
みほ「ありがとう!! 沙織さんのこと、大好きです!!」
沙織「ぅぐぐぐ……!! ちょ!! みぽりん!! いい加減、ボコで顔を押さえるのやめて!!」
みほ「あ、ごめんなさい。嬉しくて、つい……」
沙織「嬉しいのはわかるんだけど、もう靴箱にボコをいれないでね」
みほ「もうしません」
沙織「約束ね」
みほ「はいっ」
沙織「それじゃ、もう寝よ」
みほ「沙織さん……」
沙織「おやすみ、みぽりん」
みほ「おやすみなさい……」
翌日 通学路
沙織「ふわぁぁ……ねむい……」
みほ「やっぱり、私の所為?」
沙織「そんなことないってー」
優花里「おはようございます!!」
沙織「おっはよ、ゆかりん」
みほ「おはよう」
優花里「武部殿。お守りしますからね」
沙織「いいよ、もう」
優花里「しかし、事件はまだ解決していません」
沙織「したんだって」
優花里「え?」
沙織「ねー?」
みほ「そうみたい」
優花里「どういうことですか? よくわかりません。説明してほしいであります!!」
教室
ねこにゃー「あぁ、武部さん」
沙織「おはよー」
ねこにゃー「今日は大丈夫だった?」
沙織「うん。というか、もう今後、あんなことをする人は現れないから」
ねこにゃー「ど、どうして?」
沙織「いいから。猫田さん、心配してくれてありがとう」
ねこにゃー「だ、だって……と、とも、だち……だから……」
沙織「サイコーの友達だよね、わたしたち」
ねこにゃー「おぉぉ……まさかの友達認定……!!」
華「みほさん、昨日は何があったのですか?」
みほ「よ、よくわからないけど、きっと、なにかあったんだと思う」
華「それをお聞きしたいのですが」
みほ「あはは……」
華「気になりますわ」
生徒会室
杏「もう解決したんだ」
沙織「はい。ばっちりです」
杏「口は災いの元だからねぇ」
沙織「え?」
杏「かくし芸大会のとき、ボコのどこがいいか分からないって言ったから、靴箱や机にボコをいれられちゃんだよー」
沙織「か、会長……もしかして……」
杏「ふふーん」
沙織「気づいてたなら、言ってくださいよぉ」
杏「言わなくても仲直りできると思ってたからな」
沙織「まぁ、確かにできましたけどぉ」
杏「よかったじゃん」
沙織「はい。わたし、みほのこともっと好きになれた気がします」
杏「ボコは?」
沙織「それは……あまり……」
食堂
麻子「解決ということは犯人がわかったのか」
優花里「一体、誰なのですか!! 武部殿!! 西住殿!!」
沙織「いーじゃない、気にしなくても」
華「そんなこと言われても、気になります」
沙織「わすれよ、ね。あれは悪い夢だったんだから」
優花里「武部殿は心が広すぎますよぉ」
みほ「ホントにね」
麻子「……」
みほ「な、なにかな?」
麻子「ま、沙織が納得しているならいい」
華「よくありませんわ」
優花里「そうですよぉ!」
沙織「はいはい。とりあえず、おひるごはんたべよー」
みほ「いただきます」
華「そろそろ戦車道の授業の準備をしましょう」
麻子「そうだな。遅刻するとそど子がうるさいし」
優花里「今日も装填、がんばるであります!!」
みほ「沙織さん、沙織さん」
沙織「ん? どうしたの?」
優花里(おや……? 西住殿と武部殿……なにを……?)
みほ「これぐらい小さなキーホルダーなら、どうかな?」
沙織「え……?」
みほ「つけてほしいな。ボコホルダー」
沙織「あ、いや、気持ちは嬉しいけど、昨日あんなことがあったに私がボコグッズをつけてたらおかしいから」
みほ「あ……それもそっか……」
沙織「それはまた今度受け取るから」
みほ「ざんねん……」
沙織「そんなにおちこまないでよぉー」
優花里「……」
翌日 学園 共同玄関
沙織「それでいきなりメールで告白されちゃったのー。もー、どうしよー」
みほ「そうなの!?」
華「それはただの悪戯メールでは?」
沙織「なによ!! それぐらいわかってるもん!!」
ザワザワ……ザワザワ……
みほ「あれ……? なにかな……」
華「人だかりができていますね」
沙織「嫌な予感がする」
典子「武部さん……」
沙織「な、なにか、あったの」
典子「貴方の靴箱に……大量の……」
沙織「大量の……?」
典子「西住さんの生写真が……」
沙織「えぇぇぇ!?」
典子「武部さん、一体何があったんですか」
沙織「私が知りたいぐらいなんだけど……」
華「ぬいぐるみの次は写真……犯人の目的はなんでしょうか……」
沙織「もー!! なんでわたしばっかりねらうのよー!!!」
優花里「……」
優花里(西住殿からのプレゼントを断るなんて……。それにどれだけの価値があるのかわかっていないようですね……)
優花里(傍にいて西住殿の凄さを理解できていないなんて……。武部殿、私が西住殿の魅力をたっぷりと伝えてさしあげ――)
杏「秋山ちゃん」
優花里「はい?」
桃「話がある」
柚子「ちょっときてくれるかな」
優花里「え? あの……」
杏「やるなら、西住ちゃんみたいにうまくやらないとな」
優花里「待ってください!! 私はただ西住殿のすばらしさを伝えたかっただけです!! 武部殿が!! 武部殿が西住殿のプレゼントを断ったりしなければ――」
END
このSSまとめへのコメント
ボコキチやべー