お嬢様「おすわり」男「わんっ!」 (103)
~公園~
お嬢様「…………」ジーッ
男「…………」
男(へんなやつ)
男「おまえ、ここらじゃ見ない顔だな」
お嬢「うん、引っこしてきたばかりなの」
男「ふーん」
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お嬢「あのね……あのね」
男「?」
お嬢「いっしょにあそぼう?」
男「やだ」
男「女は混ぜないきまりなんだ」
お嬢「あそびたいな」
男(しつこいなー)イラッ
男「あっちいけ!」ヒュンッ
ポイーン
お嬢「いたいっ」
男「うりゃ、もう一発!」ヒュンッ
ポイーン
お嬢「いやーっ」
男「っしゃ! クリーンヒット!」
男友「やめたほうが……」
男「男友、おまえもやれ」
男友「え、でも」
男「やれ」
男友「…………」
男友「ごめん!」ポーイ
ポイーン
お嬢「うっ」グスッ
お嬢「うわーん、パパーママー!」
タッタッタッ
男「ぎゃははは、パパーママーだって! だっせー!」
男友「…………」
男「男友?」
男友「今日はもうかえる」
男「えー! まだ時間あるだろ!」
男友「そんな気分じゃない」
スタスタスタ
男「…………」
男「なんだよ……つまんね」
男(ぜんぶあの女のせいだ)
~男の家~
<ライダーキ-ック!
男「いっけー! やっつけろー!」
ピッ
男「なにすんだよー! いいとこだったのにー!」
男父「出かけるぞ」
男父「この服じゃだめだ。スーツに着替えろ」
男「はぁ?」
~豪邸~
男(すっげー。噴水のある庭なんて初めて見たぜ)
男父「これから会う人は父さんの会社で一番偉い人だ」
男父「くれぐれも失礼のないようにな」
男「へいへい」
男父「あーごほんごほん」ソワソワ
男父「ネクタイをもう一度締め直してっと」キュッ
男(親父のやつ、いつになく緊張してんなー)
ガチャッ
紳士「いやーよく来てくれたねー」
男父「本日は! お忙しいところをお招きいただきっ! 大変恐悦至極にっ!」
男父「男、お前も頭を下げなさい!」
男「ども」
紳士「はっはっは、堅苦しいあいさつはいいよ。あがりたまえ」
男父「は、はいっ!」
紳士「こちらが妻だ」
美人「はじめまして」
男父「お綺麗ですねー」
美人「うふふ、お世辞でも嬉しいですわ」
男父「いえいえ! 決してお世辞では!」
ワイワイガヤガヤ
男「…………」ポケーッ
男(ヒマだなー)
紳士「そうだ、娘にもあいさつさせよう」
美人「でもあの子、今日は部屋から出たくないって」
紳士「だめだだめだ。せっかくの客人なんだ。呼んできてくれ」
美人「わかりました」スッ
男父「娘さんがいらっしゃるんですね」
紳士「ああ、だがどうにも臆病な性格でね」
紳士「まだ友達が一人もできないんだ」
紳士「男くんが娘のいい友達になってくれると嬉しいんだが」
男父「それはもちろん! 喜んで!」
ガシッ
男父「なっ、男!」
男(うざい。肩つかむなっつの)
美人「つれてきましたよ」
紳士「? いないじゃないか」
美人「まったくこの子は。いつまでも甘えん坊なんだから」
美人「ほら、ママの背中に隠れてないでちゃんとあいさつしなさい」
お嬢「…………」チラッ
男「ん?」
お嬢「…………」ジーッ
男「…………」
男(こいつ、どこかで?)
『うん、引っこしてきたばかりなの』
『あのね……あのね』
『いっしょにあそぼう?』
『うわーん、パパーママー!』
男「!」
お嬢「!」
男・お嬢「「あーーーーっ!!」」
ここまでテンプレ
男「おまえは!」
嬢「あのときの!」
男・嬢「へんなやつ(ひと)!」
嬢母「うふふ、二人はもうお友達だったのね」
嬢父「だったら話ははやい。男くん、これからも嬢と仲良くしてやってくれよ」
男父「仲良くな男!」
男「…………」
嬢母「嬢も男くんと仲良くするのよ」
嬢「…………」
嬢母「嬢? 返事しなさい」
サッ
嬢母「あら? この子ったらまた私の背中に隠れて」
嬢「ママ、わたし部屋にもどる」
嬢母「どうして? 男くんと遊べばいいじゃない」
嬢「やだ」
嬢「またボールぶつけられるもん」
嬢母「え、ボール?」
男「!」
男(やばっ……!)
嬢母「どういうこと?」
嬢父「嬢、くわしく話してみなさい」
嬢「うん……」
――――
――
―
-
ゴツンッ
男「いてっ!」
男父「わかってるのか! 女の子に暴力をふるうのは男として最低だぞ!」
男父「それも二人がかりでなんて! 嬢父さんが怒るのも当然だ!」
男父「明日嬢ちゃんに謝ってきなさい」
男(たしかにやりすぎだったかも。あいつ泣いてたし)
男(ちゃんと謝るか)
男「うん……」
~翌日・嬢の家~
ピンポーン
嬢母「はーーーい」ガチャッ
男「…………」
嬢母「あら、男くん?」
男「昨日はごめんなさい」
嬢母「いいのよ。おばさんはそんなに怒ってないから」
嬢母「でもおじさんは……機嫌を直すのにちょっと時間がかかりそうね」
嬢母「あの人は嬢のことになると、ときどき周りが見えなくなるから」
男「うぅ……」
嬢母「うふふ、そんなに暗い顔しないの。あとでおばさんがフォローしといてあげるから。ね?」
嬢母「男くんは嬢に謝りにきたんでしょう? さ、あがって」
男「おじゃまします」
休憩
コンコン
嬢母「嬢ー。はいるわねー」
ガチャッ
嬢「ママ?」
嬢母「お勉強中のところごめんね。あなたにお客さんよ」
嬢「?」
嬢母「男くん」
男「うっす」
嬢「!」
嬢母「男くんから嬢に言いたいことがあるんですって。聞いてあげて」
サッ
嬢母「こらこら、ママの背中に隠れないの。ママはこれからお買いものに行くんだから」
嬢母「二人で仲良くするのよ。じゃあね」
バタンッ
嬢「…………」
男「…………」
シーーーン
男(一気に静かになったな)
男(なにか話さないと)
男「難しい本読んでるんだな」
嬢「うん……」
男「おもしろいのかそれ」
嬢「わかんない」
男「ふーん」
嬢「…………」
男「…………」
シーーーン
男(って、そんな話をしにきたんじゃないだろ)
男(謝らないと!)
男「あのさ……昨日」
男「昨日……昨日はその。あれだよあれ」
嬢「?」
男「昨日の……」
男「お面ライダーおもしろかったよな!」
嬢「お面ライダー?」
男「アニメだよ。アニメ。おまえしらないの?」
男「ライダーキーック!ってやつ」
嬢「テレビはあんまり見ないの」
男「そ、そっか。夕方6時からやってるから今度見てみろよ」
嬢「うん……」
男「…………」
嬢「…………」
男(じゃなくて!)
男「そんなことはどうでもいいんだ!」
嬢「え?」
男「オレが言いたいのは昨日のあれだよ」
嬢「?」
男「ほら、あれだよあれ。あれだってあれ」
嬢「あれってなに?」
男「あれといえばあれにきまってんだろ」
嬢「わかんないよー」
男「だーかーらー!」
男「公園でオレがおまえにボールぶつけただろ!」
嬢「!」
サッ
モゾモゾ
男「なに布団にもぐってんだよ」
嬢「またいじめるの?」
男「しねーよそんなこと」
嬢「うそだ」
男「」イラッ
男「昨日おまえが親にチクったせいで、オレは親父にゲンコツくらったじゃねえか!」
男「頭にまだたんこぶが残ってんだぞ!」
男「全部おまえのせいだ!」
嬢「!」
男「オレが言いたかったのはそれだけだよ!」
男「はぁはぁ……!」
嬢「…………」
男「あっ」
男(こんなはずじゃなかったのに)
男(謝りたかっただけなのに)
男「ごめ……」
嬢「ごめんなさい」
男「!」
嬢「ごめんなさい……!」ポロポロ
男「………っ」
男「バッカじゃねーのっ!!」
ガチャッ
バタンッ!!
男(悪いことをしたのはオレの方なのに)
男(なんで怒らないんだよ)
男(なに謝ってんだよ……!)
~男の家~
<ライダーキーック!
男「…………」ボーッ
男父「嬢ちゃんにちゃんと謝ったのか?」
男「んーー」
男父「なんだその煮え切らない返事は? ほんとうに謝ったんだろうな」
男「謝ったよ」
男父「そうか」
ナデナデ
男父「えらいぞ。ちゃんと『ごめんなさい』が言えるなんて」
男「っ」ズキッ
男父「これからは嬢ちゃんに優しくしてやれよ」
男「うん……」
<ウソツキハ ドロボウノ ハジマリダゾ
ピッ
男「…………」
今日はここまで
~次の日・公園~
嬢「…………」ポツーン
男友「なぁ男。あそこにいるのってこの前の」
男「…………」
男友「なんかこっち見てるけど……あの子、俺たちといっしょに遊びたいんじゃ?」
男「気のせいだろ」
男「おいてくぞ」タッタッタッ
男友「あ、まてよー!」タッタッタッ
男(いっしょに遊ぶつっても……)
男(いまさらどんな顔して誘えっていうんだよ)
~数ヶ月後・公園~
男友「あれ? いないぞ」
男「なにがだよ」
男友「きまってるだろ、あの女の子だよ」
男友「あの子、雨の日以外はいつも来てたのに」
男「いそがしいんだろ」
男友「そういうもんかー」
男「そういうもんだよ」
男友(オレらとちがって難しい勉強してるみたいだし)
~一週間後・公園~
男友「これで一週間か」
男友「引っ越しちゃったのかな?」
男「…………」
男友「あの子、ふつうの女の子とはちがう感じだったよな。変わってるというか……」
男友「でもかわいかったなぁ。仲良くしとけばよかったよ」
男友「なぁ男?」
男「…………」
男友「男?」
男「ごめん、用事思い出した」
男友「え?」
男「じゃあな」タッタッタッ
男友「…………」ポツーン
男友「用事って、どこいくんだよーっ!」
~嬢の家~
ピンポーン
男「…………」
男(はやく出てくれ!)
ピンポンピンポンピンポーン
男「…………」
シーーーン
男「出ない……」
男(まさかほんとうに……?)
ミス
>>56
×男友(オレらとちがって難しい勉強してるみたいだし)
○男(オレらとちがって難しい勉強してるみたいだし)
ガチャッ
嬢母「ごめんなさい、ちょっと今手が離せなくて」
男「!」
嬢母「あら、男くん。久しぶりね」
嬢母「ひょっとして、嬢のお見舞いにきてくれたのかしら」
男「え!? あいつ、病気なんですか!」
嬢母「ただの風邪だけどね」
嬢母「今は熱も下がって落ち着いてるわ」
男「そうですか」
男(よかった……)
嬢母「嬢もきっと喜ぶわ。男くんがこんなに心配してくれてるんですもの」
男「べ、別に心配なんか……」
嬢母「うふふっ」
今日はここまで
嬢母「嬢、男くんがお見舞いにきてくれたわよ」
嬢「…………」
嬢母「あら? おかゆこんなに残しちゃって」
嬢「…………」
嬢母「しっかり食べないと元気になれないわよ」
嬢「いらないもん」
嬢「ママ、わたしあの子を探しにいきたい」
嬢母「無理いわないの。そんな体で行けるわけないでしょ」
嬢「こほっ、こほっ」
嬢「行きたいのっ」
嬢母「いいかげんにしなさい。ダメって何度も言ってるでしょ」
嬢母「ママが今度新しいの買ってあげるから」
嬢「やだ」
嬢「あの子がいいのっ」
嬢母「はぁ……」
男「あの子って?」
嬢母「嬢が大事にしてるお人形さんのことよ」
嬢母「去年フランス旅行に行ったときに、嬢に買ってあげたものなの」
嬢母「でも最近になってどこかに落としちゃったらしくて……」
男「新しいものを取り寄せたりできないんですか?」
嬢母「難しいわね」
嬢母「おじいちゃんが経営してるこじんまりとしたお店だったから、海外への販売はしてないと思うわ」
男「そんな……」
嬢「こほっ、こほっ」
男「…………」
男「探してくるから」
嬢「え?」
男「オレが探してくるから」
男「だから、おとなしくしてろよ」
タッタッタッ
嬢母「男くんっ?」
嬢「…………」
男友「あれ? もどってきたのか」
男「人形だ」
男友「へ?」
男「フランス人形をさがすぞ」
男友「おまえにそんな趣味があったなんて……かわいいな。ギャップ萌えか」
男「ちげーよ!」
・・・・
男「というわけだ」
男友「ふーん。あの子はどこらへんに人形を落としたんだ」
男「わからん」
男友「人形の特徴は?」
男「……わからん」
男友「…………」
男「…………」
男友「見つかるのかよ」
男「見つけるしかないだろ」
こんなことで許してもらえるとは思ってない
でも、あいつはいつも悲しい顔ばかりしてたから
笑わせてやりたかった
休憩
――――
――
―
-
男「くそっ! はやくしないと夜になっちまう」
<おとこーっ
男「見つかったのか!」
男友「それっぽいのが落ちてたよ」
男友「でも……」
男「!」
ガチャッ
男「うっす」
嬢「あ」
男「おまえが探してたのってこれか?」
嬢「!」
男「…………」
嬢「うっ……」グスッ
嬢「うわーんっ!」
手足がもげ、ところどころ綿がはみ出している物体
それはまぎれもなくあいつが大切にしていたフランス人形だった
嬢「ひっくひっく」
男「泣くなよ」
男「おばさんも言ってたろ。人形なら新しいのを買ってもらえばいい」
嬢「ダメ」
嬢「それじゃ……ダメなの」
男「なんでだよ」
嬢「あの子は友達だから」
嬢「わたしの、たった一人の友達だから」
嬢「わたしのお話をなんでも聞いてくれるの」
嬢「悲しいとき、辛いとき、いつも黙ってお話を聞いてくれたの」
嬢「でもいなくなっちゃった……」
嬢「いなくなっちゃったよぉ!」ポロポロ
男「おまえ……」
嬢「わたし、あの子がいればよかった」
嬢「あの子だけがいればよかった! 他に友達なんて……!」
男「ウソだ!」
男「だったらなんであのときオレに声をかけたんだよ」
男「なんでオレたちが遊んでるのをうらやましそうに見てたんだよ」
嬢「……ぅ」
男「おまえ、ほんとは友達が……」
嬢「ちがうっ!」
嬢「ちがうちがうちがうっ!」
男「おい、落ち着けって」
嬢「こないでっ!」
ブンッ
男「おわっ!」
パリンッ
男「なにすんだよ! あぶねえだろっ!」
嬢「こないで……」
嬢「こないで、よぉ……」ポロポロ
男「…………」
このまま帰ったらいけないと思った
ここで帰るとこいつとはもう会えなくなる
そんな予感がしていた
幼少期、できれば今日中に終わらせたい……
やっぱ無理
次回は来週の月曜の予定
もうちょっと内容考えたいんで次回は明日に
嬢「かえってよ!」
男「かえらない!」
嬢「かえれー!」
男「かえらないっていってんだろー!」
嬢「はぁはぁ」
男「ぜぇぜぇ」
嬢「しつこい……!」
男「そっちだって……!」
嬢「なんで?」
嬢「なんでわたしにかまうの! わたしのこときらいなくせにっ!」
男「きらいなわけあるかっ!」
嬢「え?」
男「きらいなわけあるか」
男「きらいだったらこんなところにこねーよ。おまえの人形を探し回ったりしねーよ」
嬢「じゃあ……」
嬢「なんでわたしのこといじめたの?」
男「それは……」
男「…………」
嬢「…………」
男「ごめん」
嬢「え?」
男「ずっと謝りたかった。でもはずかしくて言えなくて……」
嬢「…………」
男「つーわけで帰る!」ダッ
嬢「まって!」
嬢「わたしのこと……きらいじゃなかったの?」
男「さっきから何度も言ってんだろーが!」
嬢「よかった」
男「え?」
嬢「きらわれてなくてよかった」
男「なに安心してんだよ。おまえ、オレのこときらいなんだろ」
嬢「うん。きらいだった」
男「」ズルッ
嬢「でもいまはちがう」
嬢「わたしのこといじめるし、口も悪いけど」
嬢「ほんのちょっとだけ……優しいところもあるってわかったから」
男「…………」
嬢「きらいじゃないよ」
男「バカだな」
嬢「?」
男「オレ。もっとはやく『ごめん』って言えばよかったなって」
嬢「うん」
男「うんじゃねーよ。いじめるぞ」
嬢「きゃー!」
男(ま、冗談だけど)
男「これからどうする?」
嬢「どうするって?」
男「夕飯まで時間あるだろ。だからもうちょっと遊ぼうかなって」
嬢「いいの?」
男「なにがだよ」
嬢「わたし、友達じゃないのに」
男「なにいってんだよ。オレたちもう友達だろ」
嬢「!」
嬢「うんっ!」ニコッ
男「!」ドキッ
男(笑ったらけっこうかわいいんだな)
嬢「男くん」
男「んあっ!?」
嬢「どうしたの?」
男「な、なんでもない。それより名前」
嬢「呼んじゃダメだった?」
男「別に。おまえの好きにしろ」
嬢「むーーー」
男「?」
嬢「おまえじゃなくて」
嬢「名前。ちゃんと呼んでほしいな」
男「なまえ。読んだぞ」
嬢「ちがーうっ」
男「わかってるって。嬢」
嬢「うん!」
男「で、なにして遊ぶんだ」
嬢「ごっこ遊びがいいー。わたし、お姫さまの役やりたい!」
男「オレは王子さまか」
嬢「ううん、召使い」
男「なんでだよ!」
嬢「ハキがないから。そういう人は出世できないってパパが言ってた」
男「やかましーわ!」
嬢「おすわり」
男「は?」
嬢「わたしの言うことがきけないの? 悪い召使いねー」
男(はじまってんのかよ!)
嬢「おしおきが必要かなー」
男(くっそー。あとで絶対いじめてやる)
嬢「おすわりは?」
男「わんっ!」
幼少期おわり
思ったより長くなってしまった……
次から現在編やっていきまっす
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