モバP「ベランダ越しの佐藤心」 (17)

P(仕事から帰って、飯食って、風呂入って、明日の準備をして)

P(あとは寝るだけになったら、窓を開けてベランダに出る)

P(アパートの一人部屋から眺める月にほんのり哀愁を感じていると、やがていつものように――)


ばたばたばたっ

がららっ


心「こんばんは♪ プロデューサー♪」

P「こんばんは」

P(隣の部屋でどたどた物音を鳴らしながら、彼女がベランダに現れる)



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心「今日は出てこないかと思ったぞ? 日付変わりかけだし」

P「別に、約束しているわけじゃないですからね。わざわざ夜にここで話さなくても、昼間に事務所でいくらでも顔を合わせるわけですし」

心「んもう、わかってないなあプロデューサーは! こういう、直接顔が見えないやり取りはとってもスウィーティーなんだぞ☆」

P「それを言うならロマンチックでは」

心「スウィーティーという単語はロマンチックの意味も含みます」

P「そんな無茶苦茶な」

心「いいだろ♪」

P「……まあ、ダメではないですけど」

心「ふふ♪」


P(このアパートに引っ越してきたのは、俺のほうが後。しかし隣にアイドルが住んでいるとは知らなかった)

P(当時は心さんが別の事務所に所属していたので、当然彼女の住んでいる場所など知らなかったのだ)

P(その後、なんやかんやあって彼女はうちに移籍。今では担当アイドルがお隣さんという状況が生まれている)

P「……風、結構冷たいですね」

心「だね。今夜はちょっと冷えるかも」

P「こんな時間に外に出ていたら、風邪ひいちゃうかもしれませんよ」

心「へーきへーき♪ 実家から持ち込んだどてらを装備してるからな! 防寒はバッチリ☆」

P「顔が見えなくても、今あなたがドヤ顔をしているのがなんとなくわかります」

心「お? それは『好きな子のことはなんでもわかる宣言』?」

P「違いますけど」

心「もう、ノリ悪いぞ?」

P「夜も更けてきたのに、そんなにテンション高くいられませんよ」

心「ふうん。ところでさ」

P「はい」

心「はぁとのこと、好き?」

P「……酔ってます?」

心「26が酒飲んじゃ悪いかよ~」

P「やっぱり飲んでる」

心「酔ってないって♪ 普通に呂律も回ってるでしょ?」

P「……まあ、泥酔ってわけじゃないみたいですね」

カトレア思い出した

P「………」

心「………」


P(最初にちょっと話したら、そのあとは黙って夜景を眺めるのがお決まりだ)

P(ベランダの壁越しに心さんの気配を感じながら、ただぼーっと月や街並みに目をやる)

P(昼の彼女と過ごす時間はたいがい騒がしいので、静寂を大事にするこの時間は、なんとなくお互い気に入っている)


心「………ふう」

P(たまに彼女の息遣いがはっきり聞こえて、少々どきりとさせられる時もある)

P「心さんって、夜は印象違いますよね」」

心「ん、そう?」

P「昼間は常時ハイテンションですけど、今は静かだし」

心「あぁ……まあ、そうかも? ツインテールほどいてるし」

P「髪型関係あるんですか?」

心「あるよ? ツインテールにすると元気100倍だからな♪」

P「そんな設定があったんだ」

心「なんならプロデューサーもやってみる?」

P「髪の長さが足りませんし、やったらやったで気持ち悪いだけですよ」

心「いやいや、意外とかわいく決まるかも………ごめん、やっぱないわ」

P「でしょう」

心「あははっ」

P「……っと。そろそろ一服」

P「ふう……」スパー

心「あ、はぁとも吸いたいから一本ちょーだい♪」

P「いいですけど……一個聞いてもいいですか?」

心「なぁに?」

P「毎回俺からもらうくらいなら、自分で持って来ればいいのでは」

心「ククク、人の金で吸うタバコは最高だぜ☆」

P「ひどい」

心「って、さすがにこれは冗談。はぁとはね、自分のタバコを買わないことにしてるの」

P「買わない? どうして」

心「タバコ吸いすぎると、運動に支障をきたすでしょ? もうその辺考えなきゃいけない歳だし、タバコは一日一本までって決めてるんだ」

心「でも家にあったらついつい吸っちゃいそうだから、毎日誰かから一本もらおうって♪」

心「どうよこれ、名案でしょ」

P「わりと図々しいアイデアですね」

心「まあまあ、そんなこと言わないの♪ これにはちょっとした思いがこめられているんだから♪」

P「思い?」

心「気軽にタバコをもらえるような、そういう人間関係を大事にしましょうってことだぞ☆」

P「なにをちょっといい話風にしようとしてるんですか」

心「てへぺろ☆」

P「だいたい、誰かからもらうって言ってますけど……ほとんど毎日俺からしかもらってないじゃないですか」

心「ま、それはそうだけど」

心「……どういう意味があると思う?」

P「………」


P「さあ」

心「わかってるのに答えないのはチキンだぞー、チキン」ブーブー

心「ふう……プロデューサーの好きな銘柄、はぁとも好きだぞ」スパー

P「気に入ってもらえてなによりです」

心「………」

P「……心さん?」


心「ねえ、もう一本ちょうだい?」

P「もう一本って……一日一本じゃなかったんですか」

心「日付変わったからセーフ」

P「え? ……あ、ほんとだ。12時回ってる」

心「ふふっ♪ ということで、お願い?」

P「しょうがないですね」

P(心さん側に近づいて、腕を伸ばして壁の向こうにタバコを差し出す)

心「サンキュ……へくちっ!」

P「やっぱり、身体冷えてるんじゃないですか? そろそろ戻ったほうが」

心「へーきへーき……くしゅんっ」

P「まったく、強情なんだから」

P(様子をうかがおうと、向こう側のベランダに顔だけ伸ばす)

心「つーかまえた」

P「え」

P(その瞬間、両頬を心さんの両手で挟まれた)

P(髪をおろした彼女の鼻はまったく汚れておらず、俺はさっきのくしゃみが演技だったことに気づく)

P「……顔、近くないですか」

心「わざとだよ」

P「いや、わざとって」

心「………」

P「心さん……あの」

心「………」スッ

P「ちょ、ま……!」




心「なーんちゃって☆」デコピン

P「あいてっ!」

心「ものの見事に引っかかったなー♪ 顔真っ赤にしちゃって、かわいいやつめ☆」

P「………あのですねぇ」

心「それじゃ、心配してくれてるみたいだしそろそろ寝るわ。おやすみー」ヒラヒラ


がららっ
ばたんっ

P「………」

P「はあ……まったく」


P「顔が真っ赤だったのはどっちだと思ってるんだか……それとも、単にアルコールがまわっていただけなのか」

P「……敵わないなあ、あの人には」

P「俺も寝るか……」



おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます

>>4ですでに言われちゃっていますが某エロゲリスペクトです。金髪ツインテつながりです



しゅがはさんが属性別5位でびっくらこいたとかいうレベルじゃなかったので急遽書きました
どうか、少しでも佐藤心さんいいなあって感じている方は清き一票をお願いします

心さん関連の過去作

モバP「先輩! なにしてんすか!」 心「え゛」
佐藤心「ポッキーの日☆」モバP「それ昨日」
佐藤心「やっぱり女は度胸と愛嬌☆」
二宮飛鳥「心……お姉さん?」

などなど
よかったらこれらもどうぞ

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