男「俺には幼馴染はいる。けれども馴染みがある訳じゃない」 (78)

よろしくお願いします。以下注意。

・基本駄文
・誤字脱字注意
・不定期更新

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1460738458

友「なぁさっき帰ってきた化学の点数何点だった?」

入学以来の付き合いである男友は、神妙な顔をしながら聞いてきた。ただ口元は少し弛んでいた。

男「78点だよ?」

男友「すげえなぁ男。平均点よりも32点上じゃねぇーか!!」

男「大したことねぇよ。それよりもお前赤点回避できたんだな」

男友「なんでわかるんだよ」

男「もしお前が赤点だったら、ヘラヘラ笑いながらこっちに来てただろ?「赤点とったどー」って言いながらさ。それが無言で変な顔してくるわけだから何時もとは違うんだなって思っただけよ」

男友「ちぇ、わかっていたのかよ。驚かそうとしたのに…あのフーバーに「お前頑張ったなぁ!おめでとう」って言われたんだよ」

俺は苦笑いした。きっとフーバーにとって友は男出来そこないだ。赤点補修の常連が少し出来たわけだから「おめでとう」って言ったんだな。ちなみにフーバーは化学の先生のあだ名だ。くしゃくしゃしている天パーかつ頭の中央部が禿げていて、見た目がポ〇モンのフーバーに似ているからである。

男友「なあ順位は?」

男友は俺の回答用紙を覗く。フーバーはテストの点数と共にクラス内の順位を書いてくれる。78の横には7/40と書かれていた。クラス40人中7位って意味だ。

男友「7位か… もっと上かと思っていたけどなぁ」

男「まぁそんなもんでしょ。上には上がいるし…」

男友「そうだな… まぁ最も一番はお前の幼馴染がとっている訳だが…」

男友はそう言い、少し離れている幼の方を見た。幼は数人の女友に囲まれていた。その内の一人が黄色い声で「幼!凄いじゃん!1位じゃん」って言っていた。

男「そうみたいだな…」

幼とは幼稚園以来の付き合いである。幼は近所の名家でお屋敷に住んでいて、小学校入る前は広い庭で遊んでいた。ただ小学校に入るとお互い同性の友達を得るかわりに、幼との関係は薄れていった。年が上がるにつれて疎遠になって中学に入る頃には全く関わらなくなった。もっとも高校は別れると思っていた。幼の学力では十分に県下トップ高を狙えたのに、地区二番手のこの高校に推薦で入った。そんな訳で高校も同じ学校を通う事になった。

そして幼はとても美人であった。才色兼備で男子には人気だったし、実際に小中学校の時に何度も告白されたらしい。高校でも相変わらずで、幼馴染って事でよく俺に「紹介してほしい」とか「仲介してほしい」とか頼まれた。男友にも頼まれたこともある。ただ俺はそれらを断り続けた。あまりに疎遠すぎて紹介だの仲介だの出来ないからである。そもそも携帯の連絡先すら知らないくらいである。
 もっとも、これらの類のお願いは高2になってから、まったく無くなった。どうも幼が入っている剣道部の先輩と付き合っているかららしい。

 俺には幼馴染はいる。けれども馴染みがある訳じゃない。俺と彼女には才覚の差があるし住んでいる世界も違う。

一同「お疲れ様でしたー」

三年生が抜けて、少し狭くなったバスケ部の円陣。部活終わりの最後の挨拶が終わった。

男友「男~! この後暇? 秀人とヨシ、夏帆、なつみと一緒にカラオケ行かない?」

男「ごめん…居残りするわ」

男友「ノリ悪いなぁ…まあでも、お前らしいなぁ、また今度」

男友はそう言い部室の方へ戻っていった。俺以外の人間も体育館を出て行った。静けさだけが体育館を支配していた。

男(相変わらず付き合い悪いなぁ…)

 俺は人付き合いが悪いし苦手だと自覚している。特にカラオケなど大多数でワイワイしている所は苦手だ。騒いで何が楽しいだろうか… 
 
 男友が去った後、俺はずっと3Pの練習をしていた。なんども何度もシュートを打った。


 これが意外と楽しい。部活中の練習みたいに五月蠅くもないし、ゴールや体育館を独占できる。指先の感覚まで集中して練習できる。

女「男?」

ゴール下にある出入り口に女が立っていた。女バスのメンバーで同じクラスでもある。たしかポジションは同じポイントガードだった。

男「どうしたの?」

女「いや、そのぉ… 私も居残り練習しようかなって思って…邪魔かなぁ?」

男「邪魔じゃないけど? よかったら一緒にする?」

女「やったぁ!じゃあお願いしていい?」

男「お願い?」

女「うん。 男って3Pシュート上手いじゃん? 私にコツを教えてもらえないかなぁって?」

男「いや、まあいいけど… ただ、男と女じゃあシュートの方法違うし、参考になるかどうかは…」

女「全然大丈夫!大丈夫!」

それからしばらく2人で練習を続けた。しばらくすると、体育館の水銀灯がバッチと消えた。

女「何?」

男「自動でブレーカーが落ちたんだ。7時になると、勝手に落ちるんだ」

女「もう、そんな時間なんだ。もう出来ないし帰ろっか?」

 月明かりを頼りに、俺たちは片付け部室に戻った。俺は着替え終わり、部室のドアのカギを閉めた。 女子の部室はまだ電気がついていた。

男(一緒に帰ろうとは言われてないけど、待つべきなのかな…)

とりあえず今日は以上です。

しばらくすると女バスの部室から女が出て来た。

女「あ、お待たせ!」

 女は笑顔でそう言い、部室の扉を閉めた。そして、二人で駅に向かった。

女「そう言えばさぁ、男って何処に住んでいたっけ?」

男「××町」

女「えっ? じゃあさ、もしかして幼ちゃんと同じ小学校?」

男「まあ、そうだけど」

女「へぇ~ 意外!そんな関係に見えなかったよ」

男「まあ、昔からそんなに仲良くないからさぁ」

女「ふーん。そんなモンかなぁ… 私も小学校以来の知り合いがいてさ、中学まではまったく関係なかったんだけど、高校になってから付き合う様になった子がいてね。なんていうかな、ほら、高校入ったばかりの時って見知らぬ子ばかりじゃん。でもその中に同じ中学の子がいれば、顔見知りって事で安心するじゃん。わたしはそれでその子と仲良くなったんだけどね」

男「へぇ~ でも、何ていうかな。俺と幼は住んでいる世界が違うっていうのか… 例えると貴族のお嬢様と平凡な一般市民みたいな感じなんだ」

女「でも、その気持ちわかるかも。 幼ちゃんピアノうまいしね、美人で頭いいから女の子から見ても凄いなぁって思っちゃう」

しばらく女と話しながら歩いていった。そして高校最寄りの駅に着いた。

男「女って何処に住んでいるんだっけ?」

女「△△町。だから、男が降りる2個先の駅だね」

改札を通り、1番線に続く階段を上った。上った先のホームには同じ制服を着た男女の集団が幾つかいた。彼らも部活帰りだろう。

女「あれ? 幼ちゃんじゃない?」

女は4人組の集団に指を指した。その中に幼がいた。幼もこっちに気付いた様で、笑顔で軽く手を振っていた。

電車の中で、女と二人でバスケ講談を行った。シュートとか技術的な話から部活の事まで色々な事を話した。電車は幾つかの駅を過ぎ、俺が降りる駅に近づいた。

車掌「まもなく~ ××、××です。お出口は~右側です~」

女「もう××だね」

男「あぁ…じゃあ、明日」

女「おやすみ」

女はそう言い、窓越しから手を振ってくれた。その後、電車は発車し次の駅へと走って行った。
電車を見送り改札の方に向かった。改札を出てすぐのところに幼が待っていた。

幼「男君 おかえり」

幼は笑顔で言った。

男「あ、あぁ… そっちこそおかえり」



家までの道中、幼と並んで帰って行った。しかし、何も話す事はなかった。そもそも何を話せばいいのかわからなかった。話しかけられたのも中学以来だし、こうやって一緒に帰るなんて記憶にないくらいだ。幼も同じような感じだった。只々、お互いに並んで歩いているだけだった。

幼「男君!」

駅前から続く大通りが終わるT字路の交差点に達した頃、幼が沈黙を破った。

幼「女ちゃんはいい子だよ?」

男「あ、うん。そうだと思う」

また沈黙が支配した。

今度も幼が話を切り出してきた。といっても取り留めのない日常の会話。幼の周りの人間だったり、授業の事だったりした。それを近所で別れるまで話し続けていた。ただ、それでも幼との距離は感じた。喋っている間、幼はずっと敬語を使っていた。もともと丁寧な言葉使いをしているかもしれないけど、俺はよそよそしく感じた。

翌日、学校に行くと、俺の席で男友が座っていた。その周りにはバスケ部のメンバーを中心に男子が集まっていた。

男「おはよう」

男友に挨拶したが返事が返ってこない。顔を顰めているだけだった。周りの男たちも顔を顰めていたり、あるいはにやけていた。

男「なんだよ。男友、気が悪いじゃねーか。昨日のカラオケの件か?」

男友は何も言わずに席を立ちあがった。そして「ちょっと屋上への階段に行こっか?」と言った。

 屋上への階段は普段人がいない。どの位いないかと言うと、偶に煙草の吸殻が発見されて全校集会で注意喚起が行われる位である。そんな人がいないところに男友を始め、男子一行様が現れた。まるで市中引き回しの様に俺をそこに連れて行った。


男友「さあて? 真相を聞かせてもらおうか?」まるで裁判官の様だ。

男「真相?」

男友「女と付き合っている事だよ?」

男「はぁ?何を誤解してるんだ?」

男友「昨日二人で帰っている所を見たんだよ。この眼でなぁ」

男「あぁ、確かに帰ったよ。 でm」

男友「付き合ってないのに二人で仲良く帰るかぁ?」

男「話を聞けよ! 確かに帰った。でもたまたま居残り練習で一緒になって流れで一緒に帰っただけだよ。 なんだよ一緒に帰っただけでカップル認定しあがって。小学生か?」

男友は黙ったまんまだ。周りの男子も「何だデマかよ」とか「いきなり過ぎるよなぁ」とかざわついていた。

男友「…じゃあさ、男は女の事かわいいと思ってたりしてる?」

男「ん~可愛いと思うけど、好きとか付き合いたいとかはないかなぁ」

 確かに掛け値なしに女は可愛いと思う。幼が大人っぽい美人とは対称に女は活発で元気で可愛いという形容詞が似合っていた。ただ、付き合いたいとは考えてない。嫌いなわけじゃないけど、俺は彼女を持ちたいと思った事は無い。髪の毛を弄ってまで彼女を得たいという気持ちが理解できないから絶食系かもしれないけど、そもそもあまり人付き合いをしたくない性分が大きな原因である。一人の方が楽と思うからである。

男友「とりあえず帰っていいかな? あと、裏付けしたかったら女に聞いたらどう?」

そう言い、俺は教室へ戻った。

酉つけました。夜に投稿できればいいと思います。

ps 人物紹介みたいなもの書いた方がいいですか?

更新遅れてすまんな。

久しぶりの更新だけど、量は少ないぜ! 忙しくてストックできなかったんだ。 すまんな。次こそは

女「ねえ?男君?いいかな?」

その日の部活の練習中、女が近づいてきた。少し照れている様子だった
ちょうど、半コートで男子Bチームと女子Aチームで練習をしていた時だった。 俺は男子Aチーム、女は女子Bチームと言う事で小休憩に入っていた。

男「あぁ…あのことだよね…」

 女は軽くうなずいた。女の方でもいろいろと根掘り葉掘り聞かれていたらしい

男「そのぉ…」

言葉が詰まる。俺が女に言いたいのは「男友が勝手に認定しただけ。俺は気にしてないし、むしろ相手が俺で悪かった」。それを正直に言うのは恥ずかしかった。

男「あっこのバカに付き合っている認定されたことだよね?」

照れ隠しもあり、そうチャラけて答えた。そしてコートにいる男友を指した。男友はちょうどレイアップシュートを外している所だった。しかもノーガードだった。

男「男友、それを外すんじゃねーよ」

男友は親指を下に向ける最高に汚い手草で返事を返してきた。そんな俺たちのやり取りを見て女は少し笑っていた。

男「とにかく、俺は気にしてないし、むしろそっちが気に障るようだったらごめんね」

女「いいのよ。別に悪い気はしなかったし、気にもしてないのよ。ほら、私って彼氏なんていないってみんなに思われているから、それが突然彼氏出来たってなれば少しくらい話題になっちゃうんだよ」

男「ふ~ん。でもさ、女は可愛いからモテたんじゃない? 今まで告白されたことないの?」

女「まったくないよ。そもそも、そんな私なんて可愛くないし…女子力とかそういったのは無縁だし」

ピピィーと笛が鳴った。チーム入れ換えの時間だ。

女「もう私たちの番ね」

男「そうだね」

女「男君!お手柔らかにお願いします」女は笑顔でそう言った。

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その日、女は用事があると言って居残り練習はいなかった。ただ一人で黙々と練習していた。

男友「よぉ! 相変わらず練習熱心じゃねえか?」

男「なんだ。男かよ…」

男友「「なんだ」はないだろ?来ちゃあ悪いのかよ?」

男「いや、お前が残るのは珍しいと思ってさ」

男友「まあ、確かにそうだな。そう言えば女は?」

男「友達と遊びに行くみたい。 終わる時わざわざ言ってきたよ。ごめんてさ」

男友「へえ…ところでさ?」

男友は神妙な顔をして聞いてきた。

男友「あくまで仮の話だけど、もし仮に女がお前の事を好きだったらどうする?」

男「そりゃあ…」

そう言いながら、女が彼女になった時を想像してみた。女は屈託のない笑顔で僕のそばにいる…あーでも、それはないなぁ… まず俺に彼女は似合わないし、そもそも好きになってくれる魅力もないし、それに…

男「その時になってみないとわからないけど、たぶん現地点では断ると思う」

それに、女を彼女にしたい理由なんてないし…

男友「なんで?」

男「何ていうのか? 部活の仲間っていうのか女友達って感じかな。お前だって女友達全員が恋人候補じゃないだろ?」

男友「まあそうだけど。ただ、お前と女と話しているとき仲好さそうだと思うからさ…」

クラスメイト1「あー悪いわ」

男「ああ、いいんだよ。気にしなくて」

これで声をかけたのは何人目だろうか。覚えてない。ただ全員「いいよ」と返事はくれなかったのはしっかり覚えている。秋に開催される新人大会の地区予選がウチの体育館で行われることになった。主催校として準備や運営をする必要があるのだが…如何せん人手が足りなかった。引退した三年生をかき集めてもあと3人足りなかった。もだからこうやって助っ人を探しているのだ。

男友「おー男。そっちはどうだ?」男友は不景気な顔で聞いてきた。

男「ナッシング」

男友「そっちもかぁ…他の奴らからも朗報来てないし…」髪をむしりながらそう言った

男友「まあ、わざわざ土日に自分と関係ない部活の手伝いをする奴なんていないよなぁ」

ノッポ「なあ?男」

男「ノッポ?」

クラスの男子ですごく背が高い奴だ。センターをやっている男友よりも10cmも高い。ただ運動はしていないみたいで、やせている事からノッポと呼ばれている。ノッポに手伝いができるか聞いてみたが断られている。

ノッポ「どうだ? 人集めは?」

首を横に振った。

ノッポ「大変そうだな。あと、さっきは断ったけど気が変わったわ。やるわ」

男友「え、マジ?」

ノッポ「やると困るのか?」

男「イヤ、困るどころか助かるよ。ただ、何というのか…意外と言うのか…お願いしている俺たちが言うのもどうだけど、実際にやってくれる人がいるとは思わなくてさ」

男友「そうそう! 逆の立場だったら断っているし」

ノッポ「あぁ、別に深い意味はないよ。俺、部活やってなくて暇だし、それに…」

男友「それに?」

ノッポ「いや、なんでもないよ。 で、大会の運営の予行とかあるのかい?」

男「あーそこらへんの日程についてはウチの部長から連絡が来ると思うんで… だから、ノッポの電話番号部長に教えていい? 隣のクラスの野溝って奴なんだけどさ?」

ノッポ「別に構わないよ」

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その日、部長から新人戦の運営の手伝いが決まったと報告があった。

部長「お前らが連れてきたノッポ、ノッポの彼女、あと幼。この三人で埋まったよ」

さらにノッポとノッポの彼女が中学の時にバスケをやっていたと聞いた。どうも部長と同じ地区で対戦したことがあるみたいで、部長がいうには中学の時もデカくてリバウンドで無双していたみたいらしい。ノッポの彼女についても名前を知っている程度らしい。ただ、何故二人がバスケをやめたのか?他の部活に入らずに帰宅部にいるのかはわからないらしい。 ただ、元バスケ部が二人なのは大いに戦力だと言っていた。
幼については女が落としたらしく、二つ返事で「うん」と言ってくれたらしい。

部長「そうだ。今日から新人戦の選考やるんでお前らがんばれよ」

部長が言った通り、今日からの練習は先行の為に紅白戦など実戦形式が多めになった。
三年生の引退試合であるインターハイ予選では俺も男友はベンチであった。3年生がいなくなった今、スタメンを目指している。他の奴らも当然、目指しているようで、皆目をギラつかせていた。練習の雰囲気もピリピリと緊張感が漂っていた。
 練習後の自主練でもそれなりの人が残っていった。けれども時間が経つにつれて一人一人と抜けていって、最終的には俺と女と二人になった。

男「どう、選手なれそう?」

女「んーミカちゃんいるしスタメンは厳しいかなぁ?」 

ミカは女と同じ学年でかつ同じポイントガードである。ミニバスからやっていて、中学には県選抜の候補にもなったミカと女と比較すると、どうしてもミカの方が軍配が上がる。

女「だから、ベンチ狙いかな。 男は?」

男「んーまぁスタメンめざしてってところかな」

女「大丈夫だよ。男は絶対にスタメンだと思うよ?」女は笑顔でそう言った。そして俺の心の奥で少しドッキとした。

今日はここまでです

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ミカ「女って上手くなったよね?」紅白戦の途中、試合に入ってないミカが聞いてきた。

男「そうなの?」

ミカ「夏休み前よりも上手くなっているわ。きっと特訓コーチがいいんだよね」

男「俺は大したことは教えてないよ。本人の努力じゃねえ?」

ミカ「あらあら謙遜しちゃって。男は気が付いてないかもしれないけど、プレイスタイルとか雰囲気とか男に似てきているのよ。ただ…」

男「ただ?」

ミカ「貴方にも言える事かもしれないけど、自分でゴール下に攻め込むことが出来ないのよ。男はスリーがあるからそこまでじゃないんだけど、女はそうじゃない。黒子に徹しすぎて守る側からすれば全然怖くないのよ」

男「…」最もな指摘であり核心でもあった。女のシュートの決定力は平均以下だ。ただ、女はすごく視野が広い。これは自分やミカよりも優れており、時折、ディフェンスの裏をかくようなパスワークが出来る。しかし、ミカと女の決定的な差は、自分で得点できるか否かであった。そして、それがスタメンとベンチとの分け目でもあった。


その日の練習後、新人大会のスタメンが発表された。俺は背番号5、男友は7であった。女バスの主将であるミカは背番号4、そして女は19であった。つまりスタメンは女ではなくミカであった

駅アナウンス「まもなく電車がまいります」

ちょうど7:00発の電車に毎日俺は乗っている。後ろから2両目があまり混んでなく、いつもそこに乗る。 大体一人で登校し、偶に男友などに会う。ただ今日は違った。

幼「おはよう」幼が肩をたたきながら挨拶してきた。

男「あ、あぁ…おはよう」耳につけていたイヤホンを外しながら返事をした。

幼「何きいているの?」

男「多分知らないとおもうよ。マイナーだし。〇〇っていう人」

幼「ん~やっぱりわからないなぁ」

男「でしょうな」○○は普通のアーティストじゃない。アニメやドラマなどのBGMなどを作詞・作曲している人だ。俺は独特の旋律が好きでウォークマンに入れている。

幼「ところでさ、男は携帯もっているよね?」

男「あ、もちろんだけど」

幼「じゃあさ、メルアド交換しよ?」

男「あ、うん…」

幼「これが男のメルアドね… 変ね、お互いの家も知っているのに、携帯のアドレスが知らなかったとはね… 偶に聞かれるの「 本当に男と幼馴染なの?」って」

男「なんて答えていたの?」

幼「んー、幼馴染だよって答えていたよ。それしか答えようがないじゃん」

今日はここまでです

幼「幼馴染で思い出したんだけど、大会の手伝いのノッポさんとその彼女さん。幼稚園以来の幼馴染らしいわ。なんでも中学校から付き合っているみたいね」

男「へえ~幼馴染同士とは知らんかったわ」

ノッポの彼女とは何回か面識がある。その印象は「彼女」と言うよりも「お母ん」みたいな感じだった。例えばノッポが弁当を忘れて来た時に、彼女さんが悪態をつきながら届けていたところを見た。その時はやけに高圧的な彼女だなって思ったが幼馴染と思えばそうでもない。まあ、尻に敷くタイプなのは間違いないかもしれないが。

幼「ずっと仲良かったから自然と付き合った感じみたいね…それに比べて私たちは話すら難しくなったもん」

幼は苦笑いしながら言った。そして小さくボヤいた。

幼「なんで話辛くなったんだよね?」

 その問いに何て答えていいのか俺には分からなかった。年が上がるにつれて、幼との関係が薄まっていくのは当然だと思っていたし、実際にそうなった。
 ただ、それを幼が望んでなかったら?…いや実際に望んでなかったんだろう…

男「ごめん…」

幼「謝る必要はないよ。 ただね…」

男「ただ?」

幼「…いややっぱなんでもないわ。忘れて…」 

そういい幼は目線を窓の外に移した。「ただ…」その後に何を言いたかったのか俺には分からない。かつての様に友達になってほしいのか? なら何故黙るのか? いやでも10年近くも疎遠になっているのにじゃあ今日から仲良くし直しましょうって言うのはおかしいよなぁ… そもそもここ数日幼馴染は何故、話しかけるようになったんだろうか…

その日は部活がなく、主将と男友、そして俺の3人でカラオケに行くことになった。

カラオケ店員「ではごゆっくり」

通された部屋は3人にしてはすこし広かった。 6人か7人座れるL字型のソファーが置いてあった。もしかしたら、部屋の都合がつかなかっただけかもしれない。

主将「よっしゃ、お前ら曲バンバンいれておけ。あと男友、しょっぱな君が代はなしだぞ! 開会式じゃああるまいし」
 
男友「えっ、マジかよ…」

男友と主将の選曲が終わったらしく、端末が手元に来た。主将は「Butter-Fly」を入れていた。デジ〇ンのオープニングで定番だ。男友は「俺ら東京さいぐだ」 コイツしょっぱなからネタに走っているぞ…

主将「アーアーアー」主将はマイクをもってハウリングテストをしていた。直ぐにイントロが流れ、曲が始まった。

男(どうしようかな…明るい曲とネタ曲入れてこられたし、しんみりとしたバラードは避けた方がいいよなぁ。うーん「チェリー」でいいか)

男友「おっ!男決まったかぁ…っていきなりド定番かよ」

男「しょっぱなネタ曲ぶちこんでくる男友に言われたくねえよ」

主将が歌い終わり、男友の番が来た。男友は立ち上がり、俺たちに背を向けた。そしてイントロが流れると、親指を立てにやけた顔をしながら振り返った。主将は苦笑いしていた。

男友「はぁーーテレビも無エ、ラジオも無エ!」


男友のネタは見事に滑った。男友が歌い終わった後、俺と主将は顔を合わせた。お互い「どう反応すればいいのか?」わからなかった。

男友「何だよ。この空気は…」

主将「いや、なんて言えばいいのか…もうちょっと後にすればよかったんじゃない?」

主将の言うとおりだ。タイミングがおかしすぎだ。ダレてきたときに入れるべきだったのに…

男友「まあそうだけど、この後のザ・普通よりかはいいだろ!」

そういい男友はマイクを渡してきた。

男「どうも、ザ普通です」

イントロが流れてきた直後、男友の携帯が鳴った。

男友「あっ! ごめん。ちょっと抜けるわ」そういい、男友は抜けていった。

今日は以上です。毎度毎度、更新少なくてスミマセン。

男友が戻ってきたのは、ちょうど俺が歌う終わった頃だった。ただし男友一人だけではなかった。3人ほど連れて来たのだ。他校の制服でしかも女だ… 事態が読めずポカーンとしている俺を差し置いて、主将は彼女らに席に座るのを薦めた。

主将「やあやあ、ようこそ。どうぞ、どうぞかけてくださいな」

ギャル「こんにちは―どうぞよろしくぅ~」

三人の中の一人、如何にも私ギャルですって子が元気よく挨拶してきた。無茶苦茶元気だ…

男「なあ、男友。知り合い?」

男友「まあ、一人はそうなるかなぁ…」

男「一人? じゃあ後の二人は?」

男友「まあ焦んなよ。直ぐに自己紹介の場設けるからさぁ」

男「自己紹介? もしかして合コンってやつ?」

男友「ああ、そうなるな」

男「えっ? 俺聞いてないけど?」

男友「あーごめんごめん!誘う時に言わなかったわ。ただ、おめえ彼女いないし問題ないよな?」

男「まあ…いいけど…」

それからお互いの自己紹介して、4人はわちゃわちゃ仲良くし始めた。ただ、俺はその輪には入れなかった。たまに会話が振られるが事務的に答えるだけだった。もう一人、楽しんでなさそうな子がいた。目つきが悪いのか、死んでいるっていのか、退廃的って言えばいいのか… まるですべて悟ったかのような眼の子も楽しんでなかった。自分が歌う時以外は携帯を弄っていた。

しばらくして僕は「飲み物を取りに行く」と言って席を立った。 ドリンクサーバーが置いてある空間はラウンジになっていて席も置いてあった。 俺はその席に座った。
 
正直、ああいう空間は苦手だ。どうして二人は見知らぬ女の子と楽しく話せるんだろうか?

???「やあ、隣いいかい?」

声の方に振り替えると、あの独特の眼の子がいた。俺の返事を待たず、隣に座ってきた。

???「さて、私はだれか分かるかい?」

男「そりゃあわかるよ。さっき会ったばかりだもん。キクチさんでしょ?」

ケイコ「正解。でもね、出来ればケイコって呼んでほしいかったなぁ…」

ケイコ「で、君は何であそこに戻らずここで暇を潰してるんだい?」

男「ええと…あそこ暑くて逃げて来たのよ」

ケイコ「なるほどね。私も一緒だわ」

ケイコ「ただね、私にはもう一つ理由があるの」

男「もう一つ?」

ケイコ「そう、私は数合わせ出来たのよ。正直、興味がないの」

男「あーなんか申し訳ないね」

ケイコ「あ、今のはほかに人には秘密にしてね。あと、もしかして君もその口かい?」

男「まぁ、そうなるかな…」

ケイコ「やっぱりそうだったのね。だってあまり積極的じゃなかったもん。もしかして君は彼女さんとかいるのかい?」

男「残念ながら彼女はいないよ」

ケイコ「じゃあ、積極的じゃないのはメンバーが好みじゃなかったのかい?」

男「そうなるのかなぁ…」

ケイコ「ふ~ん。男の好みって何? 芸能人で言うと誰?」

男「あーあまりテレビを見ないって言うのか実はあまり芸能人わからないんだ」

ケイコ「そ、そっか。じゃあどんな雰囲気の子が好きなの?」

男「うーん。ちょっとおかしいんだけど、実は俺、恋愛に興味ないんだ。だからそういった類の質問をされると困るというのか…」

ケイコ「えっ1? 君はいわゆる草食系男子かい?」

ケイコの問いに俺は頷いた。







ケイコ「私の考えだけど、君は恋愛に対してモラトリアムになっていると思うの」

男「モラトリアム?」

ケイコ「大人になるための猶予期間って意味なんだけど…要はお子ちゃまって意味」

男「だいぶひどい事言うなぁ」

ケイコ「私も思うわ。でも、ちょっと話しただけで君は彼女できなさそうって思ったの。その、君が不細工とか外見に問題があるって訳じゃなくて、むしろ中身に問題があると思うの」

男「中身?」

ケイコ「恋愛に対して億劫になっているのよ。考えすぎてるって言えばいいのか? でも、私は君のそういう所嫌いじゃないよ。でも損はしていると思うわよ」

ケイコはそういいニコッと笑った。


帰りの電車。二人の顔を見るにどうやら合コンの結果は空振りに終わったらしい。

男友「そーいえば男さ。キクチさんと何をしていたの? だいぶ抜けていた時間が長かったからさぁ」

男「いや、まあ少し会話していたんだ」

男友「会話? 何を話していたんだ?」

男「俺が草食系人間だってさ」

男友「草食系人間!? あいつ変わっているなって思ったけど、お前にそんな事言っていたんだ!! マジウケるわ」

男友と主将は腹を抱えながら笑った。どうやら二人のケイコの評価は低いみたいだ。

主将「でもその指摘あながち間違いじゃないよな。男は恋愛しなさそーだもん」

その後、お互いのあげた今日の成果を話した。とても中身のない話だった。 別れ際、主将から「明日、大会運営の練習をする」と伝えられた。

1だよー 

実はこれから3つのルートを用意してます。

①幼馴染ルート
②女ルート
③ケイコルート

どれがいいですかねえ? 人気ありそうな方から書きたいと思います

翌日の土曜日。その日の部活は大会運営の練習だった。…といっても大会の登録メンバーは運営の練習は除外された。体育館の半分でメンバー入りできなかった部員と助っ人で運営の練習を、残り半分を大会の男子チームと女子チームで対戦する事になった。
運営といっても様々な役割がある。例えば記録だったり点呼だったりする。一番大変なのは試合の記録だから、素人の幼がやるわけではない。やるとしたら点呼とか簡単なところだろう。

主将「あーわかった。皆ちょっと集まってくれ!」

11時くらいだった。主将が点呼をかけた。皆ぞろぞろと集まって輪を作り始めた。ジャージ姿で赤いゼッケンをつけた幼も輪に加わった。

主将「…というわけで、1Qのみだけど実際の大会どおりにやるのでよろしく。審判は俺が務める。あと交代もしてほしいから男とミカは監督役をやってほしい」

どうも大会運営の予行をやるみたいで、実際を想定して男子と女子のミニゲームを行うらしい。交代も含めた

主将「最後に何か質問はあるか? …なければさっそくやろうか!」

主将がそう言うと、皆それぞれの持ち場へと散って行った。幼馴染はスコア板のところへといった。

男「なあ、男友。」

男友「んぁ? なんだよ?」

男「幼って得点のジェスチャーって知っているのかな?」審判は何点得点したのか?有効なのか無効なのか?を示すジェスチャーがある。

男友「さぁ? でも、誰かが教えて解るんじゃねえの? じゃなきゃあやらせないだろ?」

男「まぁ確かにそうだけど…」

遅れてすまんな。 

ミニゲームは3回くらい行ない昼休憩に入った。 

男友「男? 飯食わねかー?」

男「わりぃ。 朝買い忘れたわ」

男友「まじかよ? コンビニ行くのかよ? ご愁傷様」

実は学校の近くにコンビニはないのだ。一番近くて10分くらい離れている。平日なら購買が空いているのだが、残念ながら今日は休日だった。

男「しゃあねえ行ってくる」

女「男コンビニいくの?」

男「あぁ…そうだけど?」

女「私も用事あるの。よかったら一緒に行かない?」

女は周りの子に「先に食べてて」といい、立ち上がった。

コンビニはバイパスの国道に出て5分くらいのところにある。バイパスは田んぼのど真ん中を突っ切っていて、トラックや自動車がビュンビュンとばしている。

 
男「暑いね…」 

日差し、コンクリからの反射熱で上と下から焼かれているようだった。

女「うん…」

こころなしか元気のない返事だった。

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