穂乃果「18人の女神 だよ!」 (941)
ご注意
キャラと中の人のクロスオーバー作品です
中、外ともにキャラ設定がイメージ先行な点があります
エッチなのは無い(はず)です
作者は日本語が苦手なので、誤字脱字が多々あると思いますが、脳内保管してやってください
乗りで書いているので辻褄が合わなくなるかもしれません
ネタ的に荒れるようなことがあれば、そこでやめときます
こちらに投稿するのは初めてなので、何かあれば言ってください
以上、それでもいいよ、読んでやるよという心の寛大な方は読んでやってください
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第0章『プロローグ』
今日はドームでのμ’sファイナルライブ
観客は満員、全国各地だけでなく世界各国でのLV中継も行われている中、楽しさ、願い、ありがとうの気持ち、少しのさみしさを含め最高のパフォーマンスを披露する9人
私もその中で、心からのありがとうを全身で観客に届ける
会場を埋め尽くすサイリウムの光、割れんばかりの大歓声
そして、夢の時間も終わりに近づき、最後の挨拶
メンバー一人一人がその思いの丈を観客に伝えていく
そして私の番、挨拶をしようとした瞬間、頭に浮かぶ違和感
あれ?私は穂乃果?だよね?あれ?みんなはμ’sだよね?
そんな疑念が頭の中を駆け巡り、私が何も言えずにいると、μ’sのみんなや観客も異変に気付きざわつき始める
私は頭の中が真っ白になって、怖くなって、寂しくなって、泣きたくなって、そして涙がこぼれ落ちる瞬間
目が覚めた
「ふぁっ…?夢か~、良かった~」
「すごいリアルな夢だったな―、ドームだっけ?すごかったな~」
寝ぼけ頭でつぶやく
「だよねー、ドームすごいよねー、観客5万人だって、5万人!すごくない?」
「5万人!すごーい!!眠気も吹き飛んだよ!っていうか誰?!」
気が付くと普段使うことの無い自分の勉強机の椅子に見慣れない女の人が座っている
「っていうか泥棒?強盗!?たすけ…むーーー」
「しーずかにーー!」
叫ぼうとした瞬間口を押さえられ体をベッドに押し付けられる
そうこうするうちに徐々に暗闇にも目が慣れてきて、相手の顔が見えるようになってきた
「……あれ?」
知ってる?この人、誰?でもわかる、私、この人知ってる
っていうかこの人、私?じゃないけど??
「少し落ち着いたかなー?」
女の人はそういうとゆっくり体を動かして私を解放してくれた
「????」
混乱する私に対して女の人は
「こうして会うのは初めてだね」
「私は高坂穂乃果」
「見た目は違うけど、私はあなた、高坂穂乃果なんだよ」
そういうと彼女、自称『高坂穂乃果』はにこりと笑った
「は?え?はぁ?」
私が意味も分からず目を白黒させていると、もう一人の『高坂穂乃果』はさらに衝撃的な追い打ちをかけてきた
「えーっとねぇ、とりあえず今から私とコンビを組んでμ’sのみんなを落としていって貰うんで、よろしくね!」
「ちなみに拒否したり失敗すると死んじゃうから、ファイトだよ!」
「…は?」
我ながら間抜けな声が出た
っていうかファイトだよ!じゃねーっつーの!!
「落とす?死ぬ?ってなんなんですか!?」
「あー、ごめんごめん、もう少し詳しく話すね」
そういうと『高坂穂乃果』はなんか色々とスピリチュアルな事を話し始めたのだった
「この世界ってどう作られたのか知ってる?」
何を言っているんだ?そのくらいは私だって知ってる
「えーっと確か恐竜とかがガーっていたけど隕石が落ちてドーンってなって猿が人間になったんでしょ?」
ふふん、Q.E.D 我ながら完璧な説明だ
海未ちゃんもことりちゃんもすごいって褒めてくれるに違いない、自信満々でいると『高坂穂乃果』はなぜか残念そうな表情で
「あ~、いやぁ~、そうだったねぇ、何かごめんね」
などとのたまう
あれ?おかしいぞ、答えは完ぺきなはずだけど、しかもなんか謝られてるし
そんな私の心の声が聞こえるわけもなく説明は続いていった
「この世はね、神様に作られた世界なんだよ」
「あなたたち一人一人は物語の登場人物として作られたんだ」
「その世界には台本があって、一人一人には演じる人がいて、作られた物語通り時間が過ぎていく」
「そこにみんなの意思なんてない、ただ淡々と物語は進んでいって、そして終わっていく」
「それが世界の全て」
はぁ?イミワカンナイ?何を言っているのかなこの人は?
私の疑問が顔に出ていたようで『高坂穂乃果』は
「そりゃ解んないよね~」
「私は高坂穂乃果を演じた役者、だから、あなたは私、私はあなた」
え?何それ
頭の中から血の気が引いていく感じがした
「それじゃあ私はなんなの?音ノ木で生まれて学校に行って皆でスクールアイドルやってラブライブ目指して頑張ってる私は一体!…」
興奮した私のセリフをさえぎるように『高坂穂乃果』は私を抱きしめた
「でもね、穂乃果ちゃん?あなたが、あなたたちが頑張ったおかげであなたたちは『本物』になれたんだよ」
「…本物?」
「そう、あなたたちの頑張りが皆の感動を呼んで、多くの人に愛された結果、あなたたちは他人が作ったキャラクターから『本人』になれたんだよ」
「この世界は本物の世界、みんな生きてる、みんな自分の意思で動いている」
「それはみんなでかなえた夢」
「それがこの世界の真実だよ」
「でもね、余りにもみんなに愛されすぎて、境界があいまいになっちゃった」
「このままではこの世界自体がおかしくなって、壊れちゃうんだよ」
「特にμ’sは影響が大きいから」
「穂乃果には皆の自我を保つ役割をしてほしいんだ」
私の頭は大混乱していた
スピリチュアルなんてもんじゃないよ、コレ!
「ってゆーかなんで私なの?おかしいし、死ぬの嫌だし、落とす?何それイミワカンナイ!」
「ごめんごめん、死ぬっていうのはちょっと違ったかなー?正確には世界が滅びる、かな?」
「なんかもっと悪くなってるし!」
「穂乃果ちゃん、この物語は元々はあなたが主人公だったんだよ、世界を構築するにはあなたじゃないとダメなんだよ、そしてμ’sのみんなもそう、この世界を安定させているのはあなたたちなんだよ」
「そしてμ’s、あぁこれは私たちの事なんだけど、私たちはあなたたちを愛して、あなたたちになろうと努力して、最後に1つになれたんだ」
「でも、みんなそれぞれにあなたたちの存在が大きくなりすぎて、2つの世界の境界があいまいになったタイミングもあって、この世界に干渉してしまっている」
「このままじゃあせっかく命が吹き込まれたこの世界のバランスが崩れてしまう、そうしたらこの世界がどうなるか、最悪無くなるかも知れない」
「無くなる?みんないなくなっちゃうの?ダメだよ!そんなのいやだよ!」
私は怖くなって叫んだ
「みんながいなくなっちゃう、そんなのダメだよ!ずっとみんなと一緒にいるんだ!」
「それは私たちも同じ、だから、お願いします、助けてください、穂乃果ちゃん」
こんな話普通信じられないけど何故かこの人の話は嘘に聞こえない
なんでだろう?他人の様な気がしないんだ
「それじゃあ、あなたは誰?」
この人は自分を高坂穂乃果と名乗った、でも私を演じているならば本当の名前があるはず
なぜかこの人のこと、とっても知りたくなった
「あなたの本当の名前をおしえて、そうしたら信じるよ」
「…私、うそつくかもしれないよ」
「あなたは私に嘘はつかない、そんな気がするんだ、だから教えて、あなたの名前」
少しの沈黙の後
「いやあ、まいったねぇ、さすが穂乃果」
「やっぱり穂乃果は穂乃果だね」
「私の名前は新田恵海、みんなえみつんって呼ぶよ」
優しく笑う恵海さん
うん、やっぱりこの人他人の気がしない、不思議な感じだけどしっくりくる感じ
「穂乃果とこうして話せるのは私だけ、だから私は神様にここに来られるようにお願いしたんだ」
「お願い、してみるもんだね、叶っちゃった、スピリチュアルやね!」
クスリと笑うその笑顔を見て私は決意した
「解ったよ、恵海さん、私やるよ!よろしくね!」
「…っ、ありがとう、よろしくね、穂乃果」
穂乃果って呼ばれるのがすごい気持ちいい
だってそうだよね
私と新田さんは一心同体なんだもんね
「もうひとつお願い、聞いてくれるかな?」
すると、新田さんは恥ずかしそうにこう言った
「新田さんじゃなくて、えみつんって呼んでほしいな」
ふふっ、私はなんだか嬉しくなって、笑顔満開で答えた
「うん!えみつん、よろしくね!」
「ところで『落とす』とか『自我』がどうとかって言ってたけどどういうこと?実際なにしたらいいいの?」
素直な疑問をぶつけるとえみつんはニヤリと笑い衝撃の答え第2段を投下した
「落とすって言ったらそりゃあれでしょ、穂乃果もわかるでしょ?天下のJKじゃん、少女漫画にもあるアレだよアレ」
アレ?おや?おかしいぞ?おそらく私の知識にある『アレ』と同意義であれば確実に、色々と、倫理的におかしなことになるぞ?
そんな疑念をよそに、えみつんはこう言い放った
「攻略しちゃうの!好きにさせちゃうの!チューしちゃうの!キャー!」
「キャーじゃないよ!何それ?私女だよ?μ’sのみんなも女だよ?おかしくない?」
「またまたぁ、海未ちゃんとか絵里ちゃんとかといっつもしてるんじゃないの?」
「してないし!」
なにを言ってるんだこの人は、なんでこんなに嬉しそうなんだ?
少し想像してドキドキしてしまったことは隠して私は冷静に答えた
「ごめんやっぱ無理、えみつん一人で何とかしてください、それでは今から警察を呼びますので、さようなら」
私が携帯で110と打ちこみ始めると
「嘘です、ごめんなさい、冗談です、許して下さいなんでもしますから」
何か土下座してるし
なんかやっぱり自分と似てるなあと思いつつも睨みつけると
「ごめん、落とすっていうのは抽象的な表現で、具体的に言うと自分はμ'sで良かった、穂乃果とずっと一緒にいたいって思わせるってことかなぁ」
「つまりは穂乃果という人物と共に生きていきたい、μ’sというチームが大好き、と思わせる事によってこの世界にその子を定着させるっていうこと」
「そうすれば全て元通り、ずっとこの世界は生き続けることができる」
そこまで言うとえみつんは深々と頭をさげ
「お願いします、この世界を、そして私たちを助けてください」
「私からμ’sを奪わないで…みんなとの思い出を守ってください」
「無茶を言っている事は解ります、とんでもない押し付けなのも解ります、それでもお願い、助けて」
ああ、やっぱりこの人は私だ、こんなにもμ’sを好きでいてくれる
そしてきっとこういう思いを持った人たちがいっぱいいるんだ
これってすごいことだよね
私にできるかどうかなんて関係ない
やりたい、やらなきゃ!
みんなの思い、守ってみせるよ!
私やる!やるったらやるんだ!!
第0章『プロローグ』完
第1章『うみもりん』
「うーん、私がんばるよ~」
夢と現実の間を行ったり来たり、この時の感覚ってすごい好き
至高の時間だよ、ずっとこうしていたいよ~
という私の願いは
「穂乃果!あんたいつまで寝てんの!!」
「へぁ?!」
お母さんのどなり声により、叶えられる事の無い儚い夢想と化した
時計を見ると…
「うわぇええええーーー!!!!」
「なんでこんな時間?!」
これはやばい、マジやばい、久々の完全遅刻時間だ
お母さんに大目玉をくらいながら急いで身支度を整え、我ながら素晴らしいスピードで家を飛び出す
携帯を確認すると、ことりちゃんからの着信が3件ととメールが1件
---fromことりちゃん---
雪穂ちゃんから連絡があったから先に行くね
気をつけてきてね
あと今日は海未ちゃんのご機嫌がすごくいいみたいだから、急いで来ればいいことあるかも?
遅刻はやばい、でもことりちゃんのメールで少しだけほっとする
お母さんより、先生より、もっともっと怖い海未ちゃんの機嫌がいいらしい
そういえばことりちゃんからの電話はあったけど、海未ちゃんからは無かったな~
いつもは海未ちゃんからも連絡があるのに、なんだか心がモヤモヤする
なんて考えているとスクールバッグのマスコットから呑気な声が聞こえた
「いやぁー、あれだね、寝坊したときのすっごいよく寝た感ってなんだろうね」
この呑気な居候はえみつん、私に命を吹き込んでくれた人であり私自身でもある、らしい
今現在私たちは世界を守るために活動している、らしい
らしいというのはつい先日この話を聞いたばかりで、具体的に何が起こるか誰も解らないという情けない状況だからである
この相棒は普段はディフォルメマスコットに乗り移るというスピルチュアルな事をしており、常に行動を共にしている
何かあればすぐに行動できるようにしているのだが…
現在は世界の危機よりわが身の危機である
「そんなの知らないし!なんで起こしてくれないの?!遅刻しちゃうじゃん!」
「って言われても私も起こしたけど全然起きないし、昨日あんな遅くまで起きてるからだよ」
「だってスクールアイドル特集すっごい面白かったんだもん!しょうがないじゃーん!」
「そうだねー、そりゃしょうがないよねー、うん、しょうがない、海未ちゃんから連絡なくてしょんぼりしちゃうのもしょうがないよねー、乙女だものしょうがないよねー」
はい、急ブレーキ
「はぁ?!何言ってるの?はぁ?」
何言ってんだこいつ、イミワカンナイ!
思わず抗議の声をあげる私だが、ふと周りを見ると大勢の人のすっごいかわいそうな子を見るような目が突き刺さる
そりゃそうだ、マスコットに大声で叫ぶ子なんていたらそうなる
くっ!…私は敗北感を胸に再び走り出す
今はくだらない戯言に付き合っている暇は無い、とにかく学校に一刻も早くたどり着かねば
当のえみつんといえば
「ファイトだよ!」
ムカつく~!!
「ファイトだよ!じゃねーっつーの!!」
叫びを気合いに変え、学院への道をダッシュした
校門をくぐる直前、チャイムが鳴り遅刻が確定、疲労感のみを残し教室の扉を開くと
「はーい高坂遅刻なー、あとで職員室に来いよー」
うぐぅ…追加補修確定かぁ
くすくすというみんなの笑い声の中自分の席に向かうと
「穂乃果ちゃん、大丈夫?何かあったの?」
ことりちゃんがそっと聞いてくる、ううっその優しさが身にしみるよ
「いやあ、寝坊しちゃった、朝はごめんね?」
「ぜんぜん、大丈夫、なにもなくてよかったよぉ」
にこりと微笑むその姿はまさに天使、癒されるね
席に着くと隣に座る長髪大和撫子がこちらを向く
ああ、怒られる、正確には後で怒られる予約が入る
とほほ、と思いつつもとりあえずご挨拶
「おはよう、海未ちゃん、朝はごめんね?」
「くすくす、穂乃果遅刻しちゃったねぇ、残念でしたぁ、補修がんばってねぇ」
「ううっ、ヒドイよ」
私はうなだれながら授業の準備を始める
ん?あれ?なんか違和感
もう一回となりの海未ちゃんを見る
あぁっ今日もかっこかわいいよぉ…、じゃなくて
「海未ちゃん?」
「ん?なに?」
??
「い、いやぁ、なんかいい事あった?」
「ん?特には無いけど?」
「強いて言うなら穂乃果が補修確定で不幸なのが面白いかな?」
???
そこまで話して
「こらー、無駄話はそこまで、授業に入るぞー」
先生が話をさえぎる
「うへぇ、こっちも怒られちゃったじゃん、じゃあ、またあとでね」
そう言って笑った海未ちゃんの笑顔は、本物のアイドルみたいにかわいかった
「ちょっと、えみつん!何これ!なんか海未ちゃんがおかしくなってるんだけど!!」
「なんか遅刻したのに怒んないし、授業中居眠りしてても笑ってるし、ちょっと毒舌はいてるし、なんか笑顔がいつもと違うし、話し方も丁寧じゃないし!」
「なによりなんかアイドルみたいにかわいいの!!なにこれ?!」
「ちょっと待って!ちょっと待って!興奮しすぎ!!気持ちはわかるけど!ちょっと落ち着いて…」
昼休み、私は屋上でえみつんと緊急会議をおこなっていた
あの後半日一緒に過ごしたが、海未ちゃんはまるで別の人になったみたいになっていた
なのにことりちゃんも周りのみんなも全然普通に接していて、まるで穂乃果がおかしいみたいに言われる始末だし
そこで適当な理由を付けて2人だけで屋上までやってきて今に至るのだ
「それにかわいいのはいつもそうじゃないの?」
「違うよ!いつもの海未ちゃんは美人でかっこよくてやさしくてかわいいの!今日はなんかアイドルみたいなの!全然違うよ!!」
「なるほどわからん」
「これが異変なの?どうしたらいいの?世界が終っちゃうの?」
「海未ちゃんはどうなっちゃうの?うわーん!海未ちゃーーん!!いやだよー死なないで~!!」
「だーかーらー落ち着いてー!死なないからだいじょうぶだから!」
「うぅっ…、ほ、ほんとに?」
「ホントホント」
「ただ、このままでは海未ちゃんは元に戻ることは無い」
「どうしたらいいの?どうやって海未ちゃんを元に戻すの?」
混乱する私の問いかけに、えみつんは落ち着いて答えてくれた
「まず、今の状況を説明するよ」
「今海未ちゃんは人格が他の人になり変わっている」
「周りの人はそれが普通と思っている、ということは世界の法則が元あった状態からずれていってる」
「穂乃果と私はこの世界の中心点だから変更されることは無い、つまりは私たちの記憶こそが本来あるべき世界の指標」
「私たちは私たちの記憶の世界に戻していくことがこの世界を救う方法となる」
「今起こっている異常の中心は園田海未」
「海未ちゃんを元に戻すことこそが、この世界を救うということ」
「あなたの出番だよ、穂乃果、あなたにしかできない事だよ」
この言葉に私は思い出す
「私にしかできないこと…」
「そう、わたしからもお願い、この世界を救って」
そうだ、私にしかできないこと、みんなの思いを守ること、うん、私がんばるよ!!
待っててねみんな、助けてあげるよ海未ちゃん
その後教室に戻っても海未ちゃんの様子は相変わらず
でもいつもと違って海未ちゃんの周りにはすごい人だかり
元々色々と人気があるのは知ってたけど、なんかすごくなってない?
圧倒されていると、ことりちゃんが私に気が付いて声をかけてくれた
「穂乃果ちゃん、用事は終わった?」
「うん!大丈夫だよ、なんかバタバタしちゃって、一緒にお昼たべられなかったね」
するとことりちゃんは少し声を小さくして
「そうだね、でも私はいいけど、穂乃果ちゃんは残念だったね、今日は海未ちゃんご機嫌だったから一緒にご飯食べるチャンスだったのにね」
「ん?いっつも一緒に食べてるじゃん?」
「え?私たちはそうだけど海未ちゃんはいっつもどっかに行っちゃうから中々一緒に食べれないでしょ?」
「モテモテだもんねぇ海未ちゃん、穂乃果ちゃんもうかうかしてられないね!」
「でも大丈夫、海未ちゃんはなんだかんだで穂乃果ちゃんのところに戻ってくるから」
あれおかしいぞなんだこの話の流れ?
まるで私が海未ちゃんの事、その…あの…
なんて思っていると視線の片隅で、えみつんがすっごい笑い転げているのが見える
う~、おぼえてろー!
なんてことをしていると海未ちゃんがこっちにやってきた
「穂乃果~!戻ってたんならいってよ、ことりも教えてくれたらいいのに~」
「だって海未ちゃんファンのみんなに囲まれてすごかったから話しかけたら悪いかなって思って」
「別にいいのに~、ことりはいい子だね~」
むぅ…
「はいはい、穂乃果もやきもち妬いちゃだめですよ~」
「///やきもちじゃないし!!」
海未ちゃんは「わはは」と笑うと
「あのね、私すっごい画期的な決めポーズ思いついたんだけど見て!!」
『決めポーズ?』
なぜだ?嫌な予感しかしない!
っていうか、あれ?この感じなんだろう、ほんとにヤバい様な気がする?
「それじゃ、いくy『キーンコーン』…ってタイミング悪!」
ちょうど予鈴が鳴ったため、画期的な何かは中断された
「仕方ない、放課後の練習の時に披露するとしよう」
「うん!楽しみにしてるね!」
という笑顔の天使に合わせ、私も
「いやぁ、たのしみだなー」
と満面のひきつった笑顔で答え、問題の先送りに成功した
授業が終わると
「ごめーん!先行っててねー」
ダッシュで校舎裏へ移動し呑気にバッグにぶら下がっている相方に問いかける
「えみつん!穂乃果!全く!何にも!全然!どうしたらいいか解んないんだけど!って寝てるし!!」
「…はっ!すごい!穂乃果と海未ちゃんがチューして…」
「!?何の夢だよ!しないよ!っていうかなんでこんな時に寝てられんの?どうしてそんなとこばっかり似てるのさ!自分でいってて悲しいよ!!」
「あれ、ここどこ?」
などという寝起きぬいぐるみの声は無視して問いかける
「あの状況の海未ちゃんに何をどうしたらいいのか全然わかんなーい!」
そうなんだ、今の海未ちゃんはモテモテなのだ
あの後も少しでも時間があればみんなが周りに集まってゆっくり話もできない状態
会話に入るにしても、海未ちゃんのギリギリ『アウト』発言のフォローをするのでいっぱいいっぱい、なんか危なっかしくてそちらにばかり気が行ってどうこうする余裕がないのだ
まさか私が海未ちゃんのお世話をする日が来るなんて…
穂乃果の事もこういう気持ちで見てたのかな?
うう、こんなに大変なんだねぇ
海未ちゃん、ことりちゃん今までごめんねぇ、そしてこれからもよろしくね
なんてことより、
「どうしよー!!」
すると、えみつんはプリチーな見た目に反した真面目なトーンで
「それじゃあ、今の海未ちゃんの中の人をまず理解しておこうか」
と話を始めた
「まず、いまの海未ちゃんの性格の元になっているのは『三森すずこ』っていう人だよ」
「はっきり言ってアイドル声優としてならトップの人気者だよ」
「トップ…!すごい!」
「見た目もすっごいかわいいし、歌もダンスも上手だし、何よりいろんな意味で『アイドル』してるから」
「色んな意味?」
「まあ、アイドルって偶像って意味だから」
これは私にも何となくわかった
「なるほど、にこちゃんみたいなもんだね!」
「正解!でも元々の性格が大雑把っぽくてそれが漏れちゃってるんだけど、それがまた人気の一つなんだよ」
「仕事に対してはすごいストイックでかっこいいんだよ」
「基本思考は脳筋ぽいのが玉にキズかなぁ」
なるほど、性格は海未ちゃんとは真反対だけど、見た目の印象と思考回路は海未ちゃんとほとんど一緒だね
「えみつん、なんか詳しいね、さすがμ’sの仲間だね!」
そういうと、えみつんは懐かしそうに笑って(見た目はぬいぐるみなのでかわいいままだが、そう見えたのだ)
「デビューが一緒だったからねぇ、初めのころからの色々、酸いも甘いも一緒だったから…」
「まあ、それは置いといて、今の海未ちゃんはそういう人格になっている」
「この世界の『園田海未』という人格に私の世界の『三森すずこ』という人格が融合していってる状態」
「これは私の予想だけど、元々海未ちゃんは穂乃果への依存度が高いから、穂乃果のことを思いっきり意識させれば、園田海未を思い出して「すず」の人格を切り離せると思う」
「海未ちゃんが穂乃果に依存?反対だよそれ」
「ふふっ、そうかな?まあいいけど」
「いったいどうしたらいいの?」
うーん、マジで全然わかんない、するとえみつんはニヤリと嫌な笑みをうかべ
「だからぁ、言ってんじゃん、2人きりでぇ、屋上とかでぇ、いい雰囲気でぇ、チュ‐『絶っ!対っ!しないから!!』
よしわかった、こいつは敵だ、間違いない
「ふんっ!あ、そういえば、さっき海未ちゃんがなんか新ポーズ?かなんかやろうとした時、なんかこう、すっごい嫌な予感というかなんというか、変な感じがしたんだけど?」
「ん~?私には解んなかったけど、でも何かあるかもしれないし、気をつけておこうか」
「うん、気のせいだったかもしれないけど、注意しておくよ」
…こうして結局大した解決策も解らぬまま、私たちは部室へと向かった
「少し遅くなっちゃたなー」
急いで部室に向かい、ドアの前まで来ると中からかしましい声が聞こえる
「あれ?まだみんないたんだ」
ドアを開けて
「みんなごめんねー!」
と声をかけ、中に入るとみんな制服のままで何やらやっているみたい
「やるわね!海未!じゃあこれはどうかしら?」
「にっこにっこにー❤あなたのハートににこにこにー❤笑顔届ける矢澤にこにこ~❤」
「出た~!YAZAWA部長の必殺技!これにはさすがの海未ちゃんもヤバいにゃー!」
「さ、さすがです!にこちゃん!!全く恥じらいも感じさせず全開のあざとい笑顔!!スクールアイドルの域を超えてます!!」
「ハラショー!かわいいわ、にこ!」
「いや~ん、にこっちかわええよ~、わしわしした~い!」
「ちょっとそこドサクサに紛れて何言ってんのよ!」
見るとどうやら我がアイドル研究部部長であるにこちゃんとマジモンのアイドルが混じっているらしい海未ちゃんが何やらやっているらしい
「遅れてごめんねー、みんな、なにやってるの?」
「穂乃果ちゃん!あのね、今海未ちゃんとにこちゃんが、どっちがかわいいポーズができるか競争してるんだよ、二人ともとってもかわいいの!」
と、ことりちゃんが説明してくれる
すると少し離れたところで静かに本を読んでいた真姫ちゃんが
「全く、なにやってんだか…」
なんて言ってため息をつく、すると
「何言ってんの真姫ちゃん!これはライブを盛り上げるためには絶対的に必要なものなのよ!ライブの出来こそがファン獲得の重要な要素!せっかく海未がレベルの高いアオリを提案してくれているのだから、研究するのは当然よ!」
「そうだよ、真姫ちゃん!こんなレベルでのアイドルのアオリが目の前で見られるなんてまずないんだよ!曲、ダンス、かわいさ、これだけじゃライブは輝かないんだよ!盛り上げるという要素としての……」
「ヴェェェェェ…」
「凛はこういうかよちんも好きだよ」
あー、はじまっちゃった
…楽しいな、みんな笑ってる
絶対私が守ってみせるよ!
「どうしたの?穂乃果ちゃん」
「ん?なんでもないよ、大丈夫」
と笑顔で返す
ことりちゃんは少し困ったような顔をして
「なにかあったらすぐ言ってね?私はいつでも力になるから」
ことりちゃんには隠し事できないなぁ、ありがとう
「うん!困ったらすぐに相談するよ!」
決意を込めて返事をする
ことりちゃんは昔からの幼馴染、とっても優しくて穂乃果が無茶しても絶対助けてくれるの
きっと、今も穂乃果が何かやってるのも解ってるんだと思う
でも穂乃果のことを信じてくれてるんだね
こうやって昔から一緒に過ごしてきたんだ
そしてもう一人、ずっと一緒にいた大事な大事な幼馴染
海未ちゃん…
待っててね!
私が決意を固めると、タイミング良く海未ちゃんが
「じゃあ私の新必殺技でみんなびっくりさせるよー!」
ん?お昼に言ってたやつかな、とか思っていると
!?
この感じ、昼と同じだ!
えみつんも私の異常に気が付いたみたいだけど、行動を起こす前に海未ちゃんの『必殺技』は発射された
「みんなのハート!打ちぬくぞー!ラブアロー・シュートォ❤!!」
そういうと海未ちゃんは矢を射るポーズでみんなに向けて
「ばぁん❤」
うわやばいかわいいなんだこれすごい
という人として当然の感想を噛みしめる権利を行使する間も許されず、事件は発生した
「///…海未」
「///海未、ちゃん…」
「///海未、好きよ」
んんん?
「///海未、私のものになりなさい」
「///す・て・き❤」
「///にゃ~、海未ちゃ~ん」
はぁ?!
「///海未ちゃ~ん、かっこいいよぉ~」
ことりちゃんまで?
なにが起こった!?
「穂乃果大丈夫?!」
えみつんが動き出す
「私は大丈夫、だけどみんなが…」
なんだこれ?みんな海未ちゃんにメロメロになってる
さっきのラブなんちゃらのせい?
「とりあえず海未ちゃんを捕まえて!」
「解った!」
えみつんの言葉に反応して私は海未ちゃんに飛びかかる、が、さすが園田流は伊達じゃない
私のことなんてするりとかわして簡単に逃げられてしまう
ん?逃げた?
なんで?
海未ちゃんを見ると満面の笑みで
「これは?すごい!私も出来たんだ!やった!」
と意味不明な事をつぶやくと部室から飛び出していこうとする
「あ!待って―!」
私が追いかけようとすると
「こらー!すずーー!!」
えみつんの大声が響く
と、海未ちゃんの動きが一瞬止まり
「え?えみつん?ヤバッ!」
と言い残し脱兎のごとく逃げていく
「追いかけよう!」
えみつんの言葉にうなずき走り出した
廊下に出るとそこは阿鼻叫喚
あちこちで生徒たちがへたり込み、乙女な表情で海未ちゃんを讃えている
「すずのやつ~、やりたい放題だな~」
「なんか学院が凄いことになってるよ~」
「でも、なんで海未ちゃんはえみつんのこと知ってたの?」
「あれね、今は完全に意識がすずになってるんだよ」
「ちょっとテンション上がっちゃってるんだろうね、気持ちはわかるけど…」
そうこうしててもどんどん海未ちゃんファンが増加していってる
「///海未さん…」
「///お姉さまぁ」
行く先々でこんな状態なので、逃走経路をたどるのは難しくない
本気で隠れる気は無いのかな?
すると、えみつんは私の考えを読んだかのようにこういった
「すずはあんまり物を深く考えないから、多分面白がってやってるんだろうなぁ、もうっ!あとでよく言っとかなきゃ」
なるほど!脳筋ってやつだね!
「学院の外に出る前に捕まえなくちゃ!」
「そうだね、外に出る前に何とかしたいけど、って何とかなりそうだね」
走っていると、海未ちゃんの後ろ姿が見てきた、そりゃあれだけ遊びながら走ってたらいくら速くても追いつくよ
そして、その姿は弓道場へと消えていった
「一気に追い詰めよう」
私たちも弓道場へ駆け込んだ
私たちが弓道場に駆け込むと
「ラブアロー・シュートー❤」
「うわわっ!!」
思いっきり待ち構えられて『必殺技』で射抜かれる
「やられた?!」
うわーっ!私もメロメロになっちゃう!キャーどうしよう!はずかしー!で、でもしょうがないよね!そういう技だもん!そう、しょうがないんだよそうだよね海未ちゃん!う、海ちゃん!私、海未ちゃんのことす、すk」
「途中から心の声だだ漏れで盛り上がってるとこ悪いんだけど、何ともなってないよ」
「うわーー!!!って、えっ?!あれ?ホントだ!」
たしかにいつもと同じだ、あれ?ひょっとして穂乃果無敵?主人公補正ってやつ?
この状況に海未ちゃんこと三森さんは
「ありゃ?不発?じゃあもう一回…」
もう一回構えを作ったところに
「こらっ!すず!!もうやめなさい!!」
えみつんが一喝
「やっぱりえみつん?なんかちっちゃくない?キャラチェン?」
「違うし!もうやめなよ!」
あんまり聞いてないっぽい、我が道を行く人なんだね
「まあまあ、でも見て!えみつん!私も同化できたの!すごい!私がんばってがんばって、やっと出来たの!海未ちゃんだよ、私!」
「もうキャラ愛がどうの~とか、やる気が何の~とか言わせないよ!だってホントにその子の事思ってなければ同化出来ないんだもん!」
「すず…」
なんか色々あるのかな、でも
「お願い、三森さん!海未ちゃんを返して!」
「返すも何も、海未は私ですが?(キリッ 」
似てるよ!すっごい似てる!!ってゆうかほぼ本人だし当然!だけど、
「違うの!私は海未ちゃんがいいの!真面目で、おこりんぼで、融通きかなくて、恥ずかしがりやで、かわいくて、かっこよくて、やさしい、私の幼馴染、とても大事な人」
「穂乃果…」
いつのまにか元の姿に戻っていたえみつんが、そっと肩を抱いてくれる
「海未ちゃん…」
だめだ、泣いちゃう
涙が眼からこぼれそうになった時
「ほ、のか」
この声、間違いない、元の海未ちゃんだ!
その瞬間、私は無我夢中で海未ちゃんのところへ駆け出し、その体を抱きしめた
そして
「海未ちゃん…戻ってきて」
キスをした
「!!あれ?なんで?海未ちゃんから離れちゃう!だめだめだめ!こんなことで終わっちゃダメだよ!これはみんなで起こした奇跡なのに!あんなに辛いこと全部逃げずに頑張ってきた証拠なのに!あれ?あれあれ?」
海未ちゃんの体からもう1人の女の人が出てくるのが見える
多分あれが『三森すずこ』、海未ちゃんのもう一つの姿、っていうかすっごいかわいいんだけど!
三森さんの体が海未ちゃんから完全に離れると、えみつんが三森さんに話しかけた
「…すず、もういいでしょ?解ってるから、大丈夫だよ?」
すると三森さんは
「えみつん…」
一瞬観念したみたいだったけど、すぐにダダをこね始める
「やだー!!私このまま海未ちゃんと同じ体で生きてやる!ずっと一緒なの!」
「わたし、終わるとか思ってないし!私と一緒に青春したんだから私と一緒に成長して私と一緒に人生を歩むんだ!私わがままだから!もう決めてるから!!」
「すず!!」
その時
「ありがとう、すずこ」
いつの間にか目を覚ましていた海未ちゃんが、三森さんに語りかけた
「すずこ、ありがとう、これからも心はずっと一緒ですよ」
「…でも私たちは歩いて行くって決めたんです」
「その行き先はそれぞれ違うかもしれません、だって私は海未、あなたが命をくれた園田海未なんです」
「園田海未は三森すずこの心を持って生きてける、こんなにうれしいことは有りません、なぜなら、あなたは私のこと、こんなに好きでいてくれるんですもの」
三森さんは少し寂しそうな表情で
「…くっそ―!!そんなこと言われたら…覚えときなさいよ!!いつか絶対また同化してやるんだから!!こんちくしょー!!!大好きだー!!!ありがとー!!!!」
と叫ぶと、すごい勢いで走り去って行く
「すずこ、ありがとうございます!私ももっともっと素敵な、あなたみたいにキラキラ輝ける女性になりますから、だからまた一緒にステージへ上がってくださいね!」
海未ちゃん…なんて感動的なんだ、穂乃果泣いちゃうよ、さっきとは違う気持ちのいい涙だよ
なんて感動してると、すごい勢いで三森さんが戻ってきて捨て台詞
「うわーん!なんかめっちゃかわいいポーズ考えてやるからな~!!次のライブで披露してやる!!絶対また一緒にライブしようね!!またねー!!!」
と言って踵を返してまたダッシュしていく、その後ろから
「こらー!待て―すずこーー!!!」
とすごい剣幕で、えみつんが追いかけていく
そんなドタバタ劇が終わると
「///っ、そういうのは普通でいいです」
海未ちゃんはそう言った後、クスリと笑い
「また、お逢いする時まで、お互い精進ですね」
とつぶやく横顔は、とてもとても綺麗だった
騒動の後、静まり返った弓道場で2人きり
ヤバい、マジやばいです
だってその、キ、キスしちゃった
初めて、キスしちゃったんだよ、私
しかも、海未ちゃんと、うれしじゃなくて恥ずかしい…
なんてモジモジしていると
「穂乃果」
と声をかけられる
何々?告白?それとも殴られる?どうしよ~!なんて一人で悶えていると
「あの、実は大体のあらましはすずこの記憶で理解できたんですけど、今日の出来事は全然覚えてなくて…」
ん?
「でも、穂乃果の声が聞こえて、何か暖かくて、心が満たされて、気が付いたら穂乃果に抱きかかえられていて、私が倒れないようにしてくれていたのですね、ありがとうございます」
「その直前までの記憶があいまいで、良かったら教えてくれませんか?って怒ってます?」
「海未ちゃんの…海未ちゃんのバカーー!!!」
私のファーストキスは私の心の中にだけ存在するのさ、トホホ
そうしているうちにえみつんが戻ってきて、海未ちゃんに大凡のあらましを説明してくれた
ちなみに三森さんは元の世界に帰って行ったらしい(相当ダダををこねていたらしいが)
えみつんによると世界には修正がかかるため、海未ちゃんの記憶は明日には元に戻る、つまりは今日の事は忘れてしまうとのことだ
でもそれって…海未ちゃんは心配そうな私の頭を撫でながら
「大丈夫ですよ、穂乃果、私、絶対すずこの事忘れません」
「だって私は園田海未であって、三森すずこなんですもの、自分のこと、忘れる人はいないでしょう?」
と言ってやさしく笑った
第1章『うみもりん』 完
再開します
第2章「愛しのエリー」
「うわぁ~!遅刻だー!!」
今日も今日とて私は走る
「もうあれだね、テンプレだね、さすがっすね穂乃果サン、まじパねえッス」
スクールバッグの主が称賛の声を上げる
「も~!う~る~さ~い~!しょうがないじゃん、深夜にあんな面白い映画やるのが悪いんだよ!わたしのせいじゃな~い!!」
はい、そうです、今日も遅刻しそうです
海未ちゃんとことりちゃんは、もう(雪穂が)連絡しているため、先に学院に向かってもらっている
「でもあれだねぇ、そうやってパンを咥えて走ると、なんかのフラグ立てみたいでワクワクしちゃうね」
も~!呑気なもんだよ、このマスコットは!
このマスコットはえみつん、私に命を吹き込んでくれた人
今は訳あってこんな姿をしているが、れっきとした人間だ
今、私たちは世界を救うという、重大な任務に付いているんだけど…
私が遅刻しそうという目先の危機の前ではそれすらかすむよ!!
「いや、比べちゃダメなレベルじゃない?」
えみつんが人の心を読んだような発言をするが今は無視
とにかく急げ―!!!
そこの角から曲がって一気に加速、そのまま上り坂を駆け上がれば…
走行計画を頭に描き、角を曲がろうとしたところ
「えっ?きゃあ!!」
「うわっ!」
急ブレーキをかけたから大激突はしなかったけど、それでもお互いその場で転んじゃった
「ご、ごめんなさい!お怪我はありませんか?痛いところないですか?」
大変だ!急いで起き上がり相手を確認する
「あいたぁ、大丈夫、ちょっとびっくりしたけど…」
相手の女の人は大丈夫そう、良かったよ~
先に立ちあがり、手を伸ばす
「本当にごめんなさい、立てますか?手をどうぞ」
「うわ~、これ思い出すねぇ、私誘われた時のポーズじゃん」
うん?あれ?この人って??
「でも、そんなに走ったら危ないよ、ま、穂乃果だからしゃあないか」
「私、地味だし、見えなかったのも悪いかな?まあカムフラージュは万全ってことにしとこう」
地味目の上着を着込み、これまた地味目の帽子を深々とかぶったメガネ少女
うん、間違いないね
「え、絵里ちゃん…」
今回の異変は、絵里ちゃん地味化事件のようです
っとそういえば、時間がヤバい
「うわっ、もうこんな時間!絵里ちゃんも急いで!」
「マジポン?ちょっと本気で走んないとまずいかな?」
2人で学院への近道である階段を上っていると
「うわ~、ごめんもう無理、穂乃果先行ってて~」
あれ?絵里ちゃんがばててる
「どうしたの?いつもは絵里ちゃんのほうが長距離早いのに」
「えー、そんなことないじゃん、私運動っていうか体を動かす活動自体を憎んでるくらいなのに」
おい、ダンス担当!恐ろしいことを言ってくれるな
もー、なんか調子狂うな~
「もう少しだよ、がんばって!」
「つ、辛いです…」
なんやかんやで何とかギリギリセーフ、生徒会長が遅刻じゃかっこ悪いもんね
絵里ちゃんと別れて、教室に入ると親愛なる幼馴染たちにご挨拶
「おっはよー!今朝はごめんねー」
「おはよう、穂乃果ちゃん、今日はギリギリセーフだったね~」
にこにこと挨拶してくれるこちらの天使はことりちゃん
とっても優しくて、おしゃれな子
穂乃果のことを信用してくれていつも助けてくれるんだ
「全く穂乃果は、いつもいつも注意しているのに、また夜更かしですか?」
うぅ、怒られた、こちらのちょっと怖い大和撫子は海未ちゃん
怒りんぼだけど、穂乃果のことを本気で考えてくれてる、もう一人の幼馴染
そして…私のファ、ファースト…いや、なんでもない!
「?どうしたんですか、穂乃果?」
私が一人で顔を赤くしていると海未ちゃんが覗きこんでくる
「い、いやぁ、走ってきたから暑いねぇ」
我ながら下手な言い訳をすると
「明日はゆっくり歩いてこられるように、私が電話してあげますから、ちゃんと起きてくださいね」
やふーーー!海未ちゃんのモーニングコールだよ!ラッキー!!
心でガッツポーズを決める私に
「良かったね、穂乃果ちゃん、明日はいい朝になりそうだね!」
うん、ことりちゃんにはバレバレだね、さすがフェミニン・オブ・フェミニン
隠してても解っちゃうね
そんなことを考える私に対してことりちゃんは
…穂乃果ちゃん解りやすくてかわいい!…
などと考えているなんて、私は知る由もなかった
「そういえば、今日は絵里ちゃんと一緒だったんだよ、珍しいよね~」
休み時間になって、なんとなしに2人に今朝の話をする
すると海未ちゃんがため息をつきながら
「またですか、絵里にも困ったものです」
え?
「まあまあ、海未ちゃん、絵里ちゃんはやるときはやるから」
すかさずことりちゃんがフォローを入れる、えぇ??
「いや?絵里ちゃんはいっつもしっかりしてるじゃん、なんて言うか完璧超人みたいな」
私がそういうと2人とも頭の上に「?」と浮かんでいるのが見えたような気がした
「まあ、その気になった絵里はたしかにその通り、カリスマ性すら感じさせますが…」
「普段の絵里ちゃんはどっちかっていうとのんびりというか、マイペースというか、そんな感じでしょ?」
「両極端すぎるのも問題です、普段ももう少ししっかりしてもらわないと、生徒会長たる威厳が……」
「まあまあ、海未ちゃん」
お小言スイッチの入った海未ちゃんをことりちゃんがなだめる
うーん、絵里ちゃんの中の人って一体どんな人なんだ?
次の休み時間、私は屋上に出て相棒のマスコットから聞き込みを開始する
「えみつん、絵里ちゃんってやっぱり…」
「そうだね、あれは完全に同化が起こってるね」
「そうだよね、いつもの絵里ちゃんとは全然違うもん」
海未ちゃんの時もそうだったけど、周りの人は前からそうだったみたいに振舞ってる
世界が改変されているんだ
「絵里ちゃんの中の人のこと、教えて」
えみつんはコクリとうなずいて、話し始めた
「絵里ちゃんを演じていたのは『南條愛乃』さん、声優だけど歌もすっごい上手で、歌を出せばオリコンチャート上位の常連なんだ」
「うわー、すごーい!穂乃果だって知ってるよオリコン、それの上位常連ってすごいね!」
「他にもラジオとかもすごい人気があるし、尊敬する先輩だよ」
南條さんも年上なんだ
「あと、なんといってもすっごい男前!」
ん?
「あ、あのぉ、えみつん?南條さんは女の人だよね?」
「やだな~、絵里ちゃんの声聞いたら解るじゃん、女の人だよ、決まってるじゃん」
んー、そうだよね
「でも、男前って言ったような…」
「そーなのー!すっごいかっこいいんだよ!あの流し眼は危険だね!女性なら間違いなくやられるよ!」
うーん、でももてるのは絵里ちゃんに似てるかも
「性格はさばさばしてるっていうのかな、自然体っていうか、なんかこう、気張ってない感じで、そういうところも男女問わずに人気な理由かな?」
「しかも決める所は、ばっちり決める、かっこいいよ!」
えみつん、南條さんのことホントに尊敬してるんだろうな~、なんか話しててわかるよ
「でも、朝会った絵里ちゃんはなんかこう、地味っていうか、覇気がない様な感じで、もてそうな感じしなかったけどなー」
私がそういうと、えみつんは渋い顔をして
「それが、やる気ないモードのときの南條さんだよ、なんてったって引きこもりが夢とか言っちゃう人だから…」
「ホントはすっごいおしゃれなのに、あえて地味な格好するし、もったいない」
あ~、確かに、朝の絵里ちゃんはそんな感じだったな~
「こんな感じかな?あと、南條さんって呼ぶと寂しがるからみんな南ちゃんって呼ぶよ」
寂しがり屋なんだ、そこも絵里ちゃんに似てるね
「よし、南條さんの情報は大体解ったとして、次は絵里ちゃんの状況を確認しなくちゃ!」
と私が言うと
「穂乃果……」
えみつんが驚いたような表情(と言ってもぬいぐるみなのでポーズだけだが)をしてこう言った
「あなた、成長したね!さすがだよ!」
ふふん、だってひとつ事件を解決したんだから、経験値だって獲得してレベルアップしてるんだよ!
そんなふうにいい気になっている私に、えみつんはこう続けた
「さすが、オトナの階段登っちゃっただけあるね!だって海未ちゃんとちゅー『うわーーっ!!うるさーーーい!!!それはもういいのーーーー!!!!』
やっぱりこいつは敵だ!確信したよ
お昼休みになると、私は愛する昼食もそこそこに3年生のクラスへ向かった
当然、狙いは絵里ちゃん
3年の教室の近くまでやってくると見慣れた後ろ姿
「おーい!にこちゃーん!」
「うわっ!ビックリした!ちょっといきなり大声で呼ばないでよね!」
頭の上のツインテールをぴょこぴょこさせながら怒ってくる
「にこちゃん、絵里ちゃん知らない?」
「私の話は無視かい…」
「知らないわよ、違うクラスの事なんて、大方いつものところにいるんじなゃない?」
ん?いつものところ?
「もっと知ってそうな奴に聞いたら?」
もっと知ってそうといえば
「でも希ちゃんもどこにいるかわかんないよ?」
すると、にこちゃんは何故か合掌しながら
「大丈夫、厄災は向こうからやってくるものよ」
その瞬間
「いやーん!穂乃果ちゃんやーん!どうしたん、こんなとこで?ウチ、ビックリしてわしわししちゃーう!」
「うっ、キャアアアアア〜〜〜〜!!!」
私のおっぱいはすごい勢いでハラスメントされた
「うぅ…ひどいよ希ちゃん…」
「ゴメンゴメン、穂乃果ちゃんに会えてついついテンション振り切っちゃった、テヘペロ」
テヘペロじゃないよ〜、も〜
「ところでどうしたん?、3年生の教室まで来るなんて珍しいやん?」
「なんか絵里に用事あるみたいよ」
と、にこちゃん、すると希ちゃんは
「えっ?何?ひょっとして告白?海未ちゃんというものがありながら、ウチのえりちに告白するなんて!これはわしわししないと!」
「あー、こう微妙にリアル感があってツッコミにくいんだけど…」
いや、突っ込んで!色々とツッコミ入れて!そして私を助けて!
「まぁ、そんくらいにしときなさい、穂乃果泣いちゃうわよ」
「はーい」
と言って希ちゃんは動きを止める
ありがとうパイセン!ありがとう世界のYAZAWA!!
「あれ?何かディスられてるような気がするわ」
そんな事ないよ!にこちゃん!
「えりちの居場所?よーし、占ってあげるよ!」
「いや、そんな事しなくても、どうせいつものとこでしょうが」
「やーん!にこっちがウチのアイデンティティを奪おうとする〜」
「してないし!って言うかあんたのアイデンティティって占いなの?」
ワーワー、キャーキャー
あー、何か始まっちゃった
これは聞き出すのは無理だね
しょうがない、自分で探すとしようか、と言っても心当たりは少ないけどね〜
私はとりあえず少ない心当たりの中から、可能性が1番高そうな場所、生徒会室へとやって来た
中に人がいるとすればドアは開いてるはず
ドアに手をかけると
「開いてる」
どうやら正解みたい
「失礼しまーす」
よく考えてみたら生徒会室なんて部活の活動申請しに来た時以来だよ
あの時の絵里ちゃんはちょっと怖かったな〜
でも今はすっごい優しいし、頼りになるし最高の友達だよ!
ちょっと緊張しながら部屋に入ると、いた!けど…
「………」
絵里ちゃんは生徒会室のパソコンの前で黙々と何かやってるみたい
「…絵里ちゃん」
私が呼んでも反応なし、無視してるわけじゃなくて全然気がついてない感じ
なるほど!きっと生徒会の仕事を1人でやってるんだ!
今はすっごい集中してるから穂乃果のこと気がつがないんだね!
人の見てないところで本気出すなんて、確かにこれはカッコいいよ!
なんて穂乃果が感心していると、突然えみつんが
「穂乃果、絵里ちゃんのイヤホン外してみ?」
なんて話しかける
「えみつん!喋っちゃダメじゃん!絵里ちゃんに見られちゃうよ!」
「いや、別に見られてもいいんだけど…」
「えっそうなの?」
「別にペナルティがあるわけでもないし、言ってなかったっけ?」
「聞いてないし!穂乃果今まですっごい気にしてたのに!」
「まぁ、知られてない方が色々都合いいからこのままでいいけどね〜」
なんてやりとりをしている間も絵里ちゃんは黙々とパソコンに向かっている
「それでは…、絵里ちゃんゴメンね!」
宣言と共にイヤホンを引き抜く、と
『♪〜♪♪〜』
「おーっとビックリ!穂乃果じゃん、ビックリさせないでよ〜」
パソコンからはゲームの音楽が流れ、よく見ると絵里ちゃんの手にはゲームのコントローラーが握られていた
「えっ?え〜〜!!」
「絵里ちゃんゲームしてたの?」
すると絵里ちゃんは慌てて
「しーー!!先生にばれちゃうじゃん」
「私から、貴重なレベリングタイムを奪わないでー!」
あぁ、穂乃果知ってるよ、こういうの廃人って言うんだよね……
「いやぁ、でも朝はやばかったよねー、さすがに遅刻するかと思ったよ」
あの後すぐ、絵里ちゃんはノルマ達成したとか何とかでゲームを終わらせ私のお話相手になってくれてるの
「最近はそんな事なかったのになー」
「さすがに5時までインしてたのはやり過ぎたかなー」
「5時?!そしたら絵里ちゃんほとんど寝てないじゃん、体壊すよ!」
「なんかね、私寝なくても平気な人なんだよねー」
「ダメだよ、早死にするよ?」
「私、刹那的に生きていくからいいよ」
だめだこのひとはやくなんとかしないと…
「私、こう、太く短く生きるわ!」
この言葉に私は、なんだかとっても悲しくなっちゃって
「そんなのダメ!私たちはずっとずっと…おばあちゃんになっても…その先も…一緒にいるんだよ!!だからそんな事言わないで!そんな、そん、な……
うぇ〜〜ん!!」
あ〜、泣いてしまった
我ながら情けない、でも絵里ちゃんが悪いんだ、そんな悲しい事、言わないで
すると絵里ちゃんは、私を優しく抱きしめて
「ゴメンね、穂乃果、冗談のつもりだったんだけど…」
「穂乃果はみんなの事、すっごく大事にしてくれてるんだもんね、私がひどい事言っちゃったから、本当にゴメン」
「私も穂乃果と同じ気持ちだから、ずっと一緒にいたいから、だから、ね?もう泣かないで」
優しく声をかけてくれる、ありがとう絵里ちゃん
絵里ちゃんは私が落ち着く間ずっと抱きしめてくれた
全く、自然にこんな事しちゃうなんて、ふふっ、これはモテて当然だね
「もう落ち着いた?大丈夫?」
「うん、ゴメンね、ありがとう、もう大丈夫」
2人が離れようとした、その時
「えりちー、穂乃果ちゃんき、た、ぁ…?」
「ちょっ希、急に止まんないでよ、なんな、の…ってちょっとあんたら何してんのよ〜!!」
ふむ、ここは冷静に状況を分析しよう
生徒会室の扉を開けると、そこではモテモテ生徒会長が涙目の女の子を抱きしめていた
はは~ん、穂乃果わかっちゃったよ、これは間違いなく…
アウト!黒!どう見ても告白なシチュエーションじゃん!
「ちょっ、ちが、『ふぇ〜ん!えりちが、えりちがぁ〜』
うわっ、希ちゃん泣いちゃった!
「希!しっかりしなさい!ちょっと絵里!希泣いちゃったじゃない!」
「えっ?えっ?わ、私のせい?」
「穂乃果!あんたもねぇ!」
うわっ!こっちにも火の粉が飛んできた!
「待ってなさいよ!今、海未とことりの事呼び出すから!」
「えっ?えぇ〜〜!!」
なに?この修羅場?っていうか
「ダレカタスケテー!!」
「で、結果こうなったわけで、別に皆様が思い描いておられるような事は全くなく…」
あの後、すぐに海未ちゃんとことりちゃんも合流し、生徒会室はさらなるカオスと化したのだが、チャイムの音と騒ぎを聞きつけた先生によって一旦は解散となった
で、現在は放課後、部室で穂乃果と絵里ちゃんの弾劾裁判が行われているところだ
元々今日は練習をお休みにする予定だったけど、にこちゃん裁判長の緊急招集によりメンバー全員がここに集まっていた
ちなみにみんなの様子はというと
「うぅっ、えりちぃ、メソメソ…」
うわぁ、希ちゃんまだ泣いてる、相当ショックだったんだねぇ
「………」
これは海未ちゃん、怖い、怖いよ、般若の形相だよ!
「そんな…ほのうみが…私のほのうみがぁ」
ことりちゃんは何を言っているのかな?
「は、花園、お姉さまたちの花園ぉ…」
花陽ちゃんは少し読む本を選んだ方がいいとおもうよ
「真姫ちゃーん、終わったら一緒にラーメン食べにいこー?」
「///べっ別にいいけど!」
まじえんじぇー
ずっとそのままの2人でいてね
などと私が違う事を考えているうちに裁判は粛々?と進み、裁判長の判決は
「2名を無罪とします」
さすが絵里ちゃん、はらしょーだよ!
なんとか疑いが晴れた夜
「ちょっとランニングに行ってくるね!」
いつもの日課のランニング中、近所の公園で見知った人影
「絵里ちゃん?」
どうしたんだろう?
誰かと話してるみたいだけど…
そういえば帽子もメガネもしてないなぁ
なんとなく見ていると、
「!穂乃果?」
絵里ちゃんが私に気が付いたみたい
「ビックリしちゃった!声かけてくれればいいのに」
と絵里ちゃんは慌ててこちらに振り返る
「?誰か、いるの?」
「いやぁ、実は歌の練習をしててね、ちょっと恥ずかしいね、見られると」
「大きな声出さなくても色々方法あるかなーって」
なるほど、えみつんに聞いた南條さんの性格的に人前でがんばるのはちょっと恥ずかしいのかな?
でもやるときはやる、ふふっ、かっこいいね
「あー、でもあれだね、あんまりなれない事するもんじゃないね」
「やっぱ、私は家の中が一番、ずっと家の中で生きていきたい、そしてエ○ルゼアより愛を込めていたいよ」
前言撤回します、やっぱりだめだこの人
しかし次の日、絵里ちゃんの残念な願いが叶えれることとなる
朝の目覚めは最悪だったよ
「うぇーーー!!なんでー?今日は海未ちゃんからのモーニングコールがあるはずだったのにぃ~!!!」
「ことりちゃんからも何の連絡もないし、穂乃果ついに見捨てられちゃったのぉ~~!!!」
と、こんな感じ
今日に限ってなんか誰も起こしてくれないし、お母さんも雪穂もなんで起こしてくれなかったの!
大急ぎで身支度を整え家を飛び出す、いつもの道を全力ダッシュ!!
なんかいつもより走りやすいよ、ラッキー
学院までの近道、昨日絵里ちゃんとぶつかっちゃた角も問題なくクリアーして何とか学院まで到達!
したんだけど…
あれ?なんで?門が閉まってる
時間は?うん問題ない、完璧な遅刻の時間だ
「そっか!今日は祝日!きっとそうなんだね!」
いやぁ、穂乃果おっちょこちょいだから忘れてたんだね~、まいったまいった
自分の中で納得していると
「いや、今日平日だよ」
と、えみつんの声
「…ファイトの日とか、」
「いや、そんなバイオレンスな記念日ないから」
「…そういえば今日ここに来るまで誰にも会わなかった気がするねぇ」
「うん、そうだったね」
「と、いうことは…」
ここまで言うと、えみつんはおもむろに両手のこぶしを胸の前へ
いやぁ、やめて~、言わないで~
「異変発生だよ!穂乃果!ファイトだよ!!」
「ファイトだよ!っじゃねーつーの!!」
誰もいない町に、私の心の叫びが響いた
誰もいないところにいてもしょうがないと一旦家に戻ってみると
「お父さん、お母さんも、お店はどうしたの?」
「別に、お店開けなくても大丈夫、今はネット通販があるし、やっぱり楽なほうがいいもんね」
「………」
「お父さんもこう言ってるし、こういうのもアリかなって」
なにこれ!そうだ雪穂は?
「雪穂~!」
雪穂の部屋に飛び込んでいくと
「もー!おねーちゃんうるさい!!」
雪穂は勉強机に座って勉強中だったようで、抗議の声を私に上げる
「私受験生なんだから、静かにしてよね!」
「雪穂、学校は?」
「学校?家でやることやれば問題ないじゃん、いちいち歩いて行かなくていいし、ネットで授業だって受けられるんだよ、こっちのほうが効率的だよ?」
「でも、お友達と会えないよ?寂しいじゃん!」
「SNSでも何でもあるから平気平気!じゃあ、私勉強しなくちゃだから、邪魔しないでね」
そういうと部屋から追い出されてしまった
お友達と会えないなんて…私はいやだな
確かに画面を見たら会えるし、お話も出来るかもしれないけど、何か違うと思う
「穂乃果、元気出して」
えみつんが優しく声をかけてくれる
「やっぱり、直接声をかけてくれるのがいいね…心がポカポカしてくるよ」
ありがとう、ちょっと元気出たよ
よし!気合入れていくよ!
「さあ、絵里ちゃんのところに行こう!」
絵里ちゃんの家は、私の家からそんなに遠くないんだ
でも絵里ちゃんの家に行くまで誰もいないから、なんだかすごく遠く感じる
いつもの倍以上に感じた道のりを歩き、絵里ちゃんの家にたどり着く
「海未ちゃんの時のこともあるから気を付けよう!」
えみつんが私に声をかけてくれる
うん!やっぱり誰かと一緒だと心強いね!
「そうだね、でもどうやって絵里ちゃんに会おうか?多分、電話とかしても出てこないと思うし…」
「うーん?そうだねぇ、おぉ!私、いいアイデア閃いた!!」
えみつんはそういうと私から離れて
『ピンポーン』
インターホンを押した
「…なんで!?普通じゃん!!全然いいアイデアじゃないじゃん!!普通だよ、普通!」
「しかも、相手が何してくるか解んないって自分で言ったばかりじゃん!思いっきり正面突破じゃん!しかも無防備!ノーガード!どこぞのボクサーもビックリだよ!!どーすんのさー!!!」
私がまくしたてると、えみつんは
「実は私も脳筋でした(キリッ!!」
「そんな、宣言いらないよ!」
そんなレベルの低いやり取りをしているうちに
「はーい!」ガチャ
「うわっ!誰か出てきたよ!こうなったら!!えみつんガード!!」
「コラー!盾にするな―!!わー!!」
「仕方ないんだよ、えみつん!これはコマンド『防御』なんだよ!装備品がえみつんしかないからしょうがないんだよ!」
などと醜い争いを繰り広げていると
「穂乃果さん!こんにちは!」
中から出てきたのは、絵里ちゃんの妹で雪穂の同級生、亜里沙ちゃんだった
「お姉ちゃんはずっと部屋にいます、いつも通りですけど」
えへへ、と笑いながら、私たちを絵里ちゃんの部屋へ案内してくれる
「μ’sの皆さんはお元気ですか?亜里沙は皆さんの大ファンですから、ライブや新曲をいつも楽しみにしてるんです!」
「みんなは家の中で全部出来るっていうけど、亜里沙は出来れば直接皆さんのライブを見たいです」
「だって、やっぱり同じ空間にいるってなんか違うと思うんです」
「亜里沙はよく変わってるねって言われるから、みんなにはあんまり解ってもらえませんけど…」
亜里沙ちゃんは寂しそうにほほ笑む
「亜里沙ちゃん!穂乃果も同じだよ!」
「やっぱり直接会って、直接話して、直接肌で感じてみないと解んない事いっぱい有ると思う!」
「色んなこと解ったら、やっぱり楽しいし、そうしたらみんなすっごい笑顔になれると思うよ!」
「それって素敵なことじゃないかな?」
思いっきりの笑顔で私は答える
すると、亜里沙ちゃんもすっごいかわいい笑顔で
「はいっ!!」
うん!やっぱりそうだよね!!ありがとう、亜里沙ちゃん!!穂乃果自信が付いたよ
亜里沙ちゃんは、2階の絵里ちゃんの部屋の前まで案内してくれると、
「それじゃあ、飲み物、準備してきますね、ゆっくりしていってください」
と言って1階へ降りていった
「それじゃあ、いくよえみつん」
「今度は盾にしないでよね」
とりあえず、えみつんの抗議を無視して扉を開く
「入るよ、絵里ちゃん」
部屋には拍子抜けするほど、あっさりと入ることができた
照明は付いておらず、カーテンも閉め切っているため薄暗い部屋
当の絵里ちゃんはというと、パソコンをするでもなく、かといって寝ているわけでもなく
ただ静かに座っていた
「いらっしゃーい、穂乃果、そして、えみつん」
「待ってたよ、待ちくたびれちゃったよ、下で騒いでるのとか聞いててなんか寂しくなっちゃったよ」
「結果、色々考えてたネタも披露できずとりあえず静かに座ってラスボス感を出すという方法に落ち着いたわけですが」
絵里ちゃんはほほ笑みながらそう言った
「今のあなたは誰?絵里ちゃん?それとも…」
「あー、穂乃果とは初めましてだね、私の名前は『南條愛乃』よろしくね」
やっぱり、このおかしな世界にするときに完全に同化したんだ
「南條さん、ここまでですよ、もうやめましょう?」
今回も、いつの間にか元の姿に戻っていたえみつんが南條さんに話しかける
「それは拒否!かな?絵里は私、私は絵里なんだから無理ってもんじゃない?」
「しかもこの世界、最高っしょ、家から一歩も出ずに全てすむ世界、当然余った時間はエオ○ゼア!サイコー!イエーイ!」
イエーイじゃないよ!なんか微妙にテンション低いイエーイだし!!
「南條さん!絵里ちゃんを返して!私たちの大切なお友達なんです!」
「絵里ちゃんがいたから私は、私たちはここまで仲良くなれたんです!μ’sのみんなが繋がっているのは絵里ちゃんのおかげなんです!私たちの絵里ちゃんを返して!!」
私は自分の思いを叫ぶ
「絵里ちゃん、最初は怖い人かと思ってたけど、本当はすごく優しい人」
「いつもみんなのこと見ててくれる私たちのお姉さん、とっても美人で、とってもかわいくて、とっても優しい、絵里ちゃんを返して下さい!!」
すると少し間をおいて
「いいよ」
えっ?今、何て?
「いいよ、絵里を返してあげる」
「ホントに!ありがと『ただし!条件付き』
「条件?」
「簡単だよ、すっごい簡単」
「私にできる事なら、なんでもします、言ってください!」
「ん?なんでも?」
「よし、交渉成立!では早速、絵里にキスしてくださーい」
………え?
「えぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!!!!!」
「ちょ、ちょっと待って!そんな『なんでも!するんでしょ?』
「キス、したらすぐに絵里を返してあげる、簡単っしょ?」
そ、そんな、絵里ちゃんのことは好きだけど、それはお友達としてであって、そんな、海未ちゃんのそれとはちょっと違うというか、たしかにすっごい美人だし、優しいし、かっこいいけど、そんな……
私がオーバーヒートを起こして固まっている間にも
「じゃあ、目、つぶるから、キスする瞬間絵里から離れるからね、じゃあどうぞ!!」
絵里ちゃんが目を閉じる
これってそういう流れ?そうなの?
なんだか頭が混乱したまま絵里ちゃんの肩に手をおき、ゆっくりと近づいて
もう少しというところで
『穂乃果』
…海未ちゃん!
「ダメ―!!ごめんなさい!やっぱり無理です!穂乃果は、穂乃果は海未ちゃんのだから!だから!他の事なら、他のことでがんばるから!ごめんなさい!!」
「絵里ちゃん!ごめんなさい!!穂乃果は!穂乃果は!!」
「あら、ざーんねん」
え?
「あーーっいいとこだったのに」
んん??
「愛乃、もういいでしょう、穂乃果がかわいそうよ」
「まあ、今時珍しい純愛JKが見れたから良しとしよっか」
「南條さん、趣味悪いっすよ、乙女な穂乃果ちゃんがかわいそうじゃないですか?」
え?なにこれ?え?これってもしかして
絵里ちゃんと横に立っている人、多分、南條さん、さらにえみつんまでもが声を合わせて
『大・成・功!デッデレー』
デッデレーじゃないよ!!!
その後、亜里沙ちゃんの持ってきてくれた飲み物を飲みながら、南條さんに今回のネタばらしを聞いた
なんでも南條さんと絵里ちゃんは最初は同化していたのだが、昨日異変を起こした直後、南條さん自ら絵里ちゃんの体を離れたということだ
私が公園で絵里ちゃんを見かけたのは、その直後、南條さんと話しているところだったらしい
理由は解らないけど、多分南條さんは一歩引いた視点から『絢瀬絵里』というキャラクターを見ており、自分がなりきるというよりも娘のような感覚で絵里ちゃんを育ててきたからではないかと自分で分析していた
あとは暗がりで、自分は隠れた状態で、絵里ちゃんにアテレコしていたそうだ
「私の演技力もなかなかなもんでしょ」
まったく、完全に騙されたよ
ちなみにえみつんはこの部屋に入った段階で南條さんを見つけており、なんか面白そうだから放置していたと言っていた
あとで希ちゃんに呪いのおまじないを教えてもらおう
全てのネタばらしの後、南條さんは
「それじゃあ、帰るね」
あっさりと帰ると言い出した
三森さんがあれだけダダをこねていたから何か拍子抜けしちゃうな
「あ、でも、帰る前に絵里と2人で話がしたいな」
私とえみつんはうなずき部屋を出た
色々話したいこと、あるだろうしね
愛乃は照れ隠しの笑いを交えて絵里に話しかけた
「いやぁー、こう実際本物と会えるなんて、すごいね、世の中何があるかわかんないもんだよねー」
「…うん、すっごいかわいい、こりゃもてるわ」
絵里は微笑み返し
「ふふっ、ありがとう、あなたもとっても素敵よ、私をこんなに素敵にしてくれてありがとう」
「私のために無理までしてくれて、ごめんなさい、辛かったでしょう?」
「辛くなんてないし、だって絵里のためならなんでもできるよ、私、好きだもん絵里のこと」
「///ちょっ、もう、やっぱり女たらしなのって本当なのね」
「あれ?なんかした?私」
と、天然ジゴロを発揮するが、すぐに愛乃の表情はやさしい笑みに変わる
「私うれしいよ、だってここにいる絵里は本物なんだもん、私が思っていない発言しちゃうし、本当に生きてるんだって」
「μ'sっていうグループのみんなが楽しく生きて行ける世界がここにある、そのお手伝いができた、これってすごくね?」
「…だから泣かないよ…っ泣かないってだめだー!うぇーん!!」
ついに愛乃の目から涙があふれた
「ありがとう、愛乃」
「私しあわせよ、こんな素敵な人に想われて、すっごい大事に育ててくれて、愛乃みたいな人が、いっぱいいるんでしょう?それってすごい素敵な事よね、本当にありがとう」
愛乃の涙は止まらない
「うえーん、私の絵里がタラシになったー!うわーん!ありがとう、好きだー!」
「また会うときはもっともっとおしゃれさせてあげるから!もっと歌上手く歌わせてあげるから!ダンスだって頑張るから!だから、だから…」
「うん、私だってもっと素敵になって、みんなに会えるのを楽しみにしているわ、だから、またね」
そう言った絵里の目からも、同じ涙が流れていた
絵里ちゃんに呼ばれ部屋に戻ると南條さんはすでに帰った後だった
「2人とも、ありがとう、私、ちゃんとありがとうって言えたわ」
「この記憶も明日には無くなってしまうのでしょう?少し残念だけど、愛乃の気持ちが消えるわけではないから、寂しくはないわね」
ううっ、さすが絵里ちゃん、オトナの女って感じがするよ
絵里ちゃんはふふっと笑って
「それに穂乃果があんなに海未のこと好きだって解ったし」
「たしか、私海未ちゃんのだからーって言ってたわよね、だめよ、私たちまだ高校生なんだから、節度ある交際を心掛けないと」
ヴェェェェーーーー!!!私そんなこと言ってたの!!
「いやあああ!!!お願い忘れてええええ!!!!」
のたうちまわる私をおいて絵里ちゃんは
「新田さん、穂乃果の事、よろしくお願いします、私たちの世界を守ってください」
えみつんに頭を下げる
するとえみつんはにっこり笑って
「うん!でも大丈夫!だって穂乃果が一緒だから、何だってできるよ!」
「何かあれば私たちを頼ってください、私も愛乃も必ず助けに行きますから」
「ありがとう!絶対、やり遂げてみせるよ!18人全員でね!」
気が付けば外は夕暮れ、全てが金色に輝くとても綺麗な夕暮れだった
第2章「愛しのエリー」 完
再開します
第3章「青空の下、にこやかに」
……来週の朗読会の……
麗らかな陽気に爽やかな風
お昼に食べたパンの余韻
……かの暴虐な王を……
耳に聞こえてくる心地よい子守唄
はぁ、きもちいいねぇ
私、高坂穂乃果はうつらうつらとしながら、ぼぅっと外を眺めていた
校庭では、3年生の体育の授業が行われているようで、見知った顔もちらほら見える
……メロスには竹馬の……
あぁ、あの金髪さんは絵里ちゃんだ、遠くでもすっごく目立つなぁ
しかも足も速い、絶対完璧超人だよ、すごいなぁ
……国王は乱心か?………
希ちゃんだぁ、そうだ、実は希ちゃんもなんでも出来るんだよねぇ、
ほのかしってるよぉ〜
……私は命乞いなど………
あぁ、ねむい、もうげんかい〜、ねむい〜〜、にこちゃんだぁ〜、あぅぁ〜
……3日で私は帰って………
「…っていうか遅!遅すぎるよ!!」
いきなり立ち上がり、非難の声をあげる私に教室の全員が注目する
「高坂…よくわからんが一応こういう話だから、まぁ我慢してくれ」
という先生も苦笑い
うぅっ、みんなの視線が痛い
ことりちゃんも困った顔で苦笑い
海未ちゃんは、大きなため息をついている
「い、いやぁ、すみません」
私は謝り着席する
もう!にこちゃんのせいで恥かいたよ!
だってそうじゃん!みんなゴールしてんのになんでまだコースの半分くらいなの!そりゃツッコミたくもなるよね!
一気に目も覚めたよ、恥ずかしいなぁ
……濁流は、メロスの……
目が覚めたと思ったのも束の間、しばらくすると、また強烈な眠気が襲ってきた
こんどこそダメだ〜
……午後の灼熱の太陽……
私はなんとなしに、再び外を見る
すると今度はサッカーをしてるみたいだ
あぁ〜、のぞえりコンビはすごいなぁ、息もぴったり、えになるねぇ、
……わたしはここだ………
あっ、にこちゃんのまえにボールがきた、まわりにだれもいないしければゴールだねぇ〜
と思った瞬間
ズッテ〜ン!!
思いっきり空振りした挙句、勢いで頭からひっくり返った
「えー!!鈍臭っ!鈍臭すぎるよ!!それはないよ!!」
「あー、高坂?」
「///はい…」
「感情移入してくれるのはいいが、もう少し寛大な心で見てもいいんじゃないかな?」
教室の静けさはみんなの爆笑の声へと変わった
もう!にこちゃんのバカ〜!!
授業も終わり放課後
怒りんぼの海未ちゃんのお小言と、優しい天使のことりちゃんのフォローを聞きながら、部室に向かっていると、
「あれ?にこちゃん?」
にこちゃんが空き教室に入っていくのが見えた
少し迷ってから
「ゴメンね2人とも!穂乃果忘れ物しちゃった!先に部室行っててね」
と伝え、にこちゃんを追った
空き教室を覗き込むと、
「あっ、にこちゃんだ…」
教室の端っこに、にこちゃんがいるのが見えた
「……ブツブツ」
ん?何か言ってるねぇ、私は耳をすませてなんとか聞き取ろうとする、すると
「私はかわいい、私はできる子、私は面白い、私はスター」
どうやらにこちゃんはいわゆる自己暗示をかけているみたい
ライブの前によくやってるやつだ、見たことあるよ
これは声をかけないほうが良いね、と思ってそっと教室を出ようとしたところ
「ヘックチ‼」
バッグのマスコットからかわいいクシャミが聞こえた
えみつんを見ると
テヘペロ❤
うわっ、ムカつく!
「穂乃果?」
にこちゃんが声をかけてきた
「いたなら言ってよ、びっくりするじゃん」
「ゴメンね、にこちゃん、邪魔する気は無かったんだけど」
「全然、大丈夫!ただネタ帳の読みこみしてたから危なかったかも」
ネタ?
「出落ちの一発ネタだから、バレたら面白くないでしょう?まぁ、そのうち見せるから、楽しみにしててね」
あれ?にこちゃんてこんなだっけ?
「ライブも近いし、今日はしっかり打合せするから、気合い入れなさい」
「う、うん、そうだね」
なんとも言えない違和感とともに私は部室へと向かった
にこちゃんと一緒に部室の前まできたとき、にこちゃんが
「今日は穂乃果もいるから、いつものでいこうか?」
「え?い、いつものって?」
「基本のアレよ!いくよ!」
というとにこちゃんは扉を開け一言
「邪魔するわよ!」
私もにこちゃんに続いて入ろうとすると先に来ていた希ちゃんが
「邪魔するんやったらかえってや〜」
えっ?
「ほなまた来るわー」
と言ってまた出て行く
「えっ?な、なんで〜!?」
私が叫ぶと
…ぷっ、くっくっ、
『あっはははは』
部室内からみんなの笑い声
「やるやん!穂乃果ちゃん、タイミングばっちりだね」
「いわゆるお約束、ってやつでもキチンとやればこんなに笑いを取れるのよ!」
ドヤ顔でにこちゃんが解説する
「さっすが穂乃果ちゃん!凛も負けてられないよ!」
何故かみんなにすごい褒められてる、なんで?
「みんな揃ってるね!それじゃあ早速だけど次のライブの打合せ、いくよ」
私の混乱がどんどん酷くなっていく中、にこちゃんから最後の爆弾が投下された
「私たち、『お笑い研究部』の最高の舞台のために!!」
『おーーーっ!!』
…?え?えぇぇぇぇぇ〜〜〜!!!
なにこれ?イミワカンナイ!ダレカタスケテー!!
私は心の中で思いっきり助けを求めたが、帰ってきた答えは、とても小さな
「ファイトだよ!」
という、えみつんの声のみ
「ファイトだよ!じゃねーっつーの!!」
という、私の心からの叫びは
「なに?穂乃果、シュール路線に変更?」
なんて言ってる部長の声にかき消されていった
つ、辛いです……
「今回のライブはユニット毎になるから、ネタ合わせとかはそれぞれキチンとやっておくこと」
「ユニットはこの前組んだ通り、トリオ3組になるから」
この状況でトリオって聞くと、なんかやだな…という私の心とは裏腹に打合せは進んでいく
「それじゃあ、それぞれのトリオの名前と方向性を発表していこうか」
そうしてにこちゃん部長の司会のもと、各ユニットの発表が行われた
「まず、穂乃果、ことり、花陽の3人」
えっ私?っていうかこれってprintempsだよね?
なんて私が考えていると、
「私たちのトリオ名は『ぷりんてんむす』だよ!」
と、花陽ちゃんがちょっとモジモジしながら発表した
ぷ、ぷりん?てんむす?いやーーーー!!!それって間違いネタの名前じゃんか!やめてーー!
しかし、私の心の声は誰にも聞こえるはずもなく、花陽ちゃんの説明は続く
「このユニットは元気な穂乃果ちゃんを癒し系ことりちゃんがまさかの毒舌でいじり倒し、そしてオドオドしながら私がツッコミを入れていくっていうスタイルで勝負していこうと思うんだ」
…あれ?ちょっと面白そう
「さすがね、私と同等の知識を持つ花陽がブレーンとなっているだけあるね」
花陽ちゃんは、えへへと笑う
「ことりもとっても楽しみ!穂乃果ちゃん、花陽ちゃん、頑張ろうね!」
「うんっ!」
「お、おぅ」
えっ?これ頑張らなくちゃいけないの?
「さぁ次は、希、海未、凛の3人だね」
あー、LillyWhiteだね
「はーい!今度は凛が説明するにゃー!」
「凛たちのユニット名は『白百合三姉妹』にしたよ!かわいいでしょ?」
見ると海未ちゃんがちょっとドヤ顔をしてる、名付け親、海未ちゃんなんだ…
「凛たちはね、希ちゃんと凛が自由奔放にやりたい放題やるけど、天然海未ちゃんが最後は全部持ってっちゃうっていう流れなんだ!」
「もうオチも考えててね、海未ちゃんが山頂アタックです!!っていって凛たちを連れて行っちゃうんだよ!絶対面白いんだから!」
ん?あれっ?なぜか既視感が…
にこちゃん部長の評価はというと
「なるほど、希と凛のアドリブ力と海未の天然、求められるスキルはとても高いけど、ハマった時の爆発力は計り知れない」
「虎穴に入らずんばなんとやら、やってみる価値はあるね!いこう!」
「にゃー!がんばるよ!」
「カードも行けるって言ってるよ!」
「希、そのカードってラブカプラスですけど?」
「希ちゃん、ぶっ込んでくるにゃー!」
うわー、これ絶対面白いよ、残念ながら
「さぁそして、最後はこの私!大銀河宇宙No.1コメディアン世界のYAZAWAにこにーとその一味の登場よ!」
「さすが、にこね」
「……クルクル」
「って雑!反応雑なんだけど!真姫ちゃんに至っては反応すらしてないし!」
穂乃果知ってるよ、これお約束ってヤツだね
「ウフフ、ゴメンねにこちゃん」
真姫ちゃんが可愛く笑って謝る
続いて絵里ちゃんが説明にはいる
「私たちは一見スタイリッシュに見せて中身はコミカルっていう感じのビビッドな笑いを目指していくわ」
「トリオ名もそこからとって『ビビッドビット』にしたの、ハラショーでしょ?」
あーっ!惜しい、惜しいよ絵里ちゃん!なんかちょっと多かったよ!
「コントの流れとしては、にこがウザい感じのボケをかますところに、私がポンコツなボケを被せる、そこに真姫の辛辣なツッコミで全てを吹き飛ばすの」
「最後のセリフは当然いつもの…」
「イミワカンナイ!」
ふふんと笑ったにこちゃんは、満足げにうなずき
「これで会場は爆笑間違いなし!私達コント集団『μ’s』の評価も大幅アップ!」
「夢の舞台『ラブコント!』だって夢じゃないわ!」
ラブコント?うわぁ、出たくない…
そんな私の思いとは裏腹にみんなのテンションは最高潮、そして
「それじゃあ、みんな!気合い入れていつものいくよ!」
いつもの?いやな予感が…
「にこにこ七拍子!せーの!!」
『にっこにっこにー❤にっこにっこにー❤にっこにっこにっこにっこにっこにっこにー❤』
もういやーーーー!!!
地獄の練習時間が過ぎ、下校時のこと
今日は海未ちゃんとは別練習となったため、ことりちゃんと2人で帰宅
毒舌とガールズトークでボロボロにされた私はことりちゃんと別れた後、近くの公園で精神回復を兼ねた現状確認を行う
「えみつん、一体なんなのこれ?なんかスクール芸人とかラブコントとか、恐ろしいことになってるんだけど」
「すごいよね!ある意味すごい面白すぎるんだけど!ウケる!」
「ウケないよ!なんなのあれ!ことりちゃんとかの毒舌が心にグサグサきてヤバいんだけど!」
「覚醒したね!ことりちゃん!まるでうっちーみたいだよ」
「そんな知らない人はいいの!今はにこちゃんの中の人!もう穂乃果いや〜!」
穂乃果の心の叫びにえみつんは
「ラブコント見たいな…」
とかつぶやきつつも、答えてくれた
「にこちゃんを演じているのは『徳井青空』みんなはそらまる、って呼ぶんだ」
「すっごい頑張り屋さんで、苦手なことも頑張って練習してて、もう見てる方が感動しちゃう!」
「それにね、すっごいしっかりしてるから司会進行とか、1番上手いんだよ」
「それにすっごい面白いの!もうこんなに面白い人間この世にいるんだって思うくらい」
「なんか昔の夢が漫画家かお笑い芸人って聞いた事あるし」
本人が面白いのはいいけど、こっちが付き合わされるのはちょっと…
「でもμ’s、あ、これ私達のほうね、みんな基本的にキャラが立ってて面白いからそらまるがいるとすぐに芸人って言われてたなぁ」
なるほど、確かに三森さんとか南條さんとか、それにえみつんも、なんかやたらとキャラ強いねぇ、うん、一応聞いておこうか?
「一応聞くけど、μ’sってちゃんとアイドルしてるの?大丈夫?」
少し間をおいて
「多分、大丈夫だよ!きっと」
力強く曖昧な答えが返ってきた
心配なんだけど…
まさかこっちが本当の世界とかないよね
「こう、欠点とか弱点みたいのは無いのかな?」
すると、えみつんが真面目な声で
「あるよ」
なになに、この雰囲気、結構重要情報?
「そらまるの欠点、それは…」
「それは…?」
「死ぬほど運動神経が悪いんだっ!!」
「な、なんだってー!!とかならないから、何それ?」
「いやでもホントすごいんだよ、階段も普通に降りられないくらいなの!でもそれがチョーかわいいの!」
「そんだけ運動苦手なのにダンスとかすっごい頑張って、本当に上手くなって、いっつも笑顔で、本当に頑張り屋さんなの」
「そらまるの周りはいっつもみんなが笑顔なんだよ」
みんな笑顔、にこちゃんと一緒、すっごい頑張り屋さんなのも一緒だね
よし、にこちゃん!もう少しまっててね
次の日の放課後、日直の仕事を終わらせ、ことりちゃんのつらいつらい毒舌ツッコミに怯えつつ1人部室へいくと、
「来たわね、穂乃果」
にこちゃんが1人で待っていた
「にこちゃん1人?みんなは?」
「ちょっと席を外してもらってるの、穂乃果とどうしてもお話がしたくって」
?なんだろう、改まって?
「話は海未たちから聞いたわ…」
ん?なんの話かな?
「昨日の授業中、居眠りしながらも『走れメロス』にするどいツッコミを入れていたそうね」
え?昨日の…あぁ!いや〜寝ぼけててついつい大声で叫んじゃったやつだね
「海未ちゃんなんでそんな事言うのさ〜、恥ずかしいじゃん」
しかも叫んだ理由はにこちゃんのあまりの鈍臭さにビックリしたからだ、とは本人には言わないでおこう
「ふっ、やはりあなたは私の見込んだ通り、選ばれた人間のようね!」
えっ?私、何に選ばれたの?
「無意識に人を笑顔にしてしまう、そんな才能」
えっ?何それ?それって恥かく事が多いっていう事?
「思えば最初の講堂での漫才、あの時からあなたは違っていたのかも知れない」
えーっ、私たち漫才やったの?そりゃ誰もこないよ
「そして笑研に初めて来た時のボケ、忘れない」
私何したんだろ?
「まさかあの絵里に対してあんなツッコミをするなんて、普通殴られるよ」
殴られるほどの事ってなに?!
「初めての9人での単独ライブ、入学説明会に来た人たちにみせた、あのコント」
うわぁ、コントやっちゃったんだ
「あまりの爆笑で救急搬送7人、笑いすぎて体調を崩した人21人、なつかしいね」
大惨事だね、廃校待ったなしだよ
「私1人では成し遂げられなかった事ばかり、穂乃果には感謝してる」
出来れば成し遂げない方がイイものばかりだね
「でも、やっぱり自分が一番人に笑顔を届けたい、私の事を見てニッコリ笑顔になって欲しいの」
はい、どうぞどうぞ
「だから、お願い、勝負して欲しいの!」
なぜそうなる!
「判定はμ’sのメンバー、別に負けたからペナルティ、とかないから」
それじゃあ、今この瞬間参ったしてもイイかな?
「ただ、私の中で区切りが欲しいだけ、少しだけ、付き合って」
ここで断ったら壁突き破ってみんなでてきたりしないかな?
とか思いながらも、さすがにこの空気で断る勇気もなく
「うん、わかったよ」
と答える私であった
「ちょっと!えみつん!どうしよー!」
現在、みんなを呼び出す準備兼ネタの準備の時間を利用し緊急の作戦会議を開催中である
「そらまるさんなら兎も角、私ネタとかないし」
泣きつく私に、えみつんは
「もうこうなったら最終兵器、出すしかないかな?」
「えっ?なになに?なんかいいネタあるの?」
おおっ?希望の光?と思いっていた自分を殴ってやりたいと思う事をこのぬいぐるみは発言する
「数を数えて、3の倍数になった時だけ海未ちゃんとちゅーすんの!」
「すごいな私!画期的!誰も得しかしない、まさに笑顔の錬金術!」
………
「誰も得しないよ!それどころか関係者すべてが大怪我だよ!黒歴史確定だよ!!」
こいつは敵どころじゃない!ジェノサイダーだよ!!
大した解決策もないまま、時間となった
幸か不幸か私は後攻、まずにこちゃんから簡易ステージに上がり
そして事件は起こった
「にことネタバトルとは、穂乃果は大丈夫でしょうか?」
「穂乃果ちゃんはどっちかというと、天然よりだからね、タイマンバトルではにこっちのほうが有利かも知れんね」
「楽しみだにゃー!」
リリホワ組は完全に観戦モード、呑気なもんだよ
「穂乃果ちゃんも、にこちゃんも、今日もかわいいよぉ、突っ込まれた時の焦った表情が特に…」
「一体どういうネタで勝負するの?にこちゃん、先攻ということは会場の空気の把握も重要、いったいどんな入りで入ってくるか、それにより……………」
Printempsは自由だなぁ、私がいてもそうだろうけど、っていうかことりちゃん…
「見てみて、真姫、今度のハッピーセットのおもちゃは歴代M-1王者のリアルフィギュアだって!ハラショー!かわいいわ」
「いや、エリー、正気を保って、これのどこにかわいいの要素がはいってるのよ?」
真姫ちゃんがんばって、絵里ちゃんのポンコツを治療してあげて!
などとそれぞれに開始を待ち構えていると
「さあ、それじゃあ行くわよ!」
にこちゃんの声により勝負は開始された
開始直後、にこちゃんが渾身のあのポーズの構えをつくったとき
!?うわっ!この感じは!
でも、もう遅い!
「さあみんな!一緒に!せーの…」
『にっこにっこにー❤』
その直後
「まっきまっきまー❤」
わお!真姫ちゃんかわいい、でもどうした?
「にゃーんにゃーんにゃーん❤」
「ちゅーんちゅーんちゅーん❤」
うひゃあかわいいおやつにしたい
他のみんなも同じような状態、っていうことは海未ちゃんも!!
「うっみうっみうー❤」
ズッキューーーン!!
ふぁぁ!なにこれ?かわいいとか!ちょっとセクシーとか!そんなちゃちなもんじゃねえ!!もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ!!うひょ――!!
「こら!穂乃果!!なに変なテンションあげてんの!!」
えみつんの声が聞こえ我に返る
「はっ!わたしは しょうきに もどった!!」
「もういいから、とにかくこの状況何とかしなくちゃ!!」
そうだ、にこちゃんを何とかしないと!
にこちゃんを見ると
「………」
あれ?何かじっと自分の手を見てる、次にキョロキョロし始めた、あっ!こっち見た
「?穂乃果?と、μ’s?ここは部室?」
なんか、このにこちゃん、何もしてないのになんかすっごい面白いんだけど
なんて思っていると
「ってことは、同化してるの?私!おおっ凄い!」
「そらまる!」
えみつん(小)が声をかける、
「あれ?えみつん?同化するキャラまちがってるよ、それ!!」
「これはいいの!それより早くにこちゃんの体から離れて、元に戻してあげて!」
「…いや」
あれ?そらまるさん
の様子が変わった?
「私と、私たちの努力の結果!こうなれたんでしょ?神様が、がんばったご褒美を私たちにくれたんだ!」
「えみつんのお願いでも、これは聞けないよ、だって私がんばったんだよ!嫌なことでも逃げたことない!みんなが喜んでくれるから、みんなの為にがんばってがんばって!」
「そしたら、にこになれて、その上お笑いも出来るなんて!最高のプレゼント!」
「ここは私の夢の世界、私はここで生きていくんだ!」
逃げる気?でも、正直運動神経がそらまるさんのままなら、穂乃果は負けないよ
でも、そらまるさんは何故か余裕の表情で、こう言った
「いつぅ~、にこがぁ~、にこだけにしかぁ~、同化してないと思った?」
いらっ、むかつく、いつものにこちゃんに似てるのが、またムカつくね
でも、その言葉を聞いたえみつんは
「え?な、何を?そんな、まさか…」
あれ?ひょっとしてヤバそうな感じ?
「えみつんは、ボクの能力知ってるよね?」
「ボクの『トイズ』の力…」
ボク?あれ?なにが…
私の混乱をよそに、そらまるさんはポケットから金属のヘラ状のものを取り出した
「この部室にはパソコンもあるし、今はネットで何でもできるし、便利だよね!」
すると、えみつんがホントの姿に戻るや否や
「逃げるよ、みんなも部室から出して」
何かわかんないけど、たしかに様子がおかしい
私とえみつんは急いでみんなと共に部室を脱出、そして部室を出る瞬間
「喰らえ!ボクのトイズ!ダイレクトハック!!」
手の金属をパソコンに突き刺すのが見えた
廊下に飛び出た私は、身構える
えみつんの様子からすると結構大掛かりな事が起りそうな感じ、しかもヤバいっぽいやつ
「……」
えみつんも私と同じく、周囲をキョロキョロと見まわしている
「……」
「………」
「…………」
えーっと、
「……………」
「なんにもおこんないねぇ」
私が言うと
「なんにもおこんないねぇ」
と、えみつんが返す、こだまかな?とか考えていると
「やられたー!!そらまるめーーー!!!」
そう言うとえみつんは部室に戻る
私も追いかけて中に入ると
「窓が開いてる!あそこから逃げたんだ!!」
見ると部室の窓が開いている
ここは1階だから簡単に出られるんだ
「追いかけよう、手分けして探さなきゃ!」
えみつんが飛び出す
私すぐに後を追う、するとすぐに
「作戦変更、一緒に追いかけるよ!」
「なんで、見失っちゃうよ?」
「大丈夫!」
というえみつんの視線の先には…
そらまるさんがドタドタと走っているのが見えた
「おそっ!遅すぎるよ!!なんでまだそこなの!!」
「多分窓から出るのに時間かかったんじゃないかな?そらまるだし」
なんだろう、すっごい応援したくなる人だよ、ほんと、にこちゃんにそっくりだね!!
追いかけっこはすぐに終わった
あの後そらまるさんが曲がり角を曲がり切れず、ひっくり返ったところを私たち2人で取り押さえ、そのまま部室へと連行したのだ
「ムスー」
あー、むくれ方もそっくりだなぁ
そんな風に思っていると
「そらまる、もういいでしょ、にこちゃんを帰してあげて」
えみつんが話しかけた
「みんなそらまるが頑張ってるの知ってるよ?そうしてがんばったから、この世界が動き出して、そらまるが大事に、大事に育てたにこちゃんは、みんなのことすっごい笑顔にして、みんなを幸せにしてるんだよ」
「それってすごい奇跡だよね」
引き継ぐように私は
「私たちはにこちゃんに大事なこと、いっぱいおしえてもらったの、今私たちがアイドルとしてここにいるのは、にこちゃんのおかげ、私たち、そしてファンのみんなが笑顔でいられるのは、にこちゃんのおかげなんです!!」
「だから、お願いします、私たちから笑顔を奪わないでください」
「笑顔…」
そらまるさんはシュンとしつつ
「でもっ、でも!ここで別れたら…!にこが遠くに、とおく、に……ぐすっうぅ…」
そっか、にこちゃんとずっと一緒にいたいんだ、私がそんなことを考えていたその時
『なーに私の前で湿気た面みせてくれてんのよ!』
えっ?今のって!?
見ると、えみつんもそらまるさんも私と同じようにビックリ顔
すると
「はー、もう、しかたないなぁ」
そらまるさんがため息をついたと同時に
「やっぱ、この世界にはにこがいないと、だめなんだねぇ」
というと、にこちゃんの体からもう一人の人影が離れていく
にこちゃんの体からそらまるさんが完全に離れると、2人はにっこり笑って
『にっこにっこにー❤』
おおー!完璧だ!
「やるわね、さすが私の中の人ね!」
「こんにちは、にこちゃん、私、ちゃんとにこになれてたかな?」
「なるもなにもあなたは私だし、私はあなたよ、今までずっとありがとう…結構苦労したんじゃない?」
「大銀河宇宙No.1アイドルだしね、でも頑張ったよ、苦手なダンスも頑張ったよ、だってにこになりたかったから」
「みんなににこの良さを伝えたかったから、どうだったかな?」
「決まってるじゃない、あなたの頑張りがあって、認められたから私がここにいられるのよ」
「だから自信を持って!あなたも大銀河宇宙No.1なのよ!」
見るとえみつんも泣きながら「うんうん」とうなずいている
「ううっ、うれしい」
「…っ、泣いてる暇なんてないわよ、アイドルの世界は弱肉強食、少しの隙が没落につながるの、負けてられないわ」
「これまで以上にもっともっと気合い入れないと、No.1アイドルの座を守れないわよ!」
「それでこそにこだね、そうだね、これで終わりじゃないんだからもっともっと上を目指さなくちゃ!」
「これからも頼むわよ、あなたと私で、一緒に高みを目指すんだから!ぐずぐずしてると置いて行っちゃうわよ!」
「うん、ありがとう!」
「…こちらこそ、ありがとう、あなたじゃなかったら矢澤にこは存在出来なかった、あなただから私は頑張れた」
「あなただから、これからも頑張っていける」
「こっちもそうだよ、徳井青空は矢澤にこがいたから頑張れたんだよ、そしてこれからも、ずっとずっと、矢澤にこのかわいさをみんなに伝えるために頑張っていくんだ!」
「さすがね、そらまる」
「名前で呼んでくれてありがとう、にこ」
「さあそれじゃあ、景気づけに一番かわいいの、いくわよ」
「さあこい!」
『にっこにっこにー❤』
『大銀河宇宙 No.1!!』
「スーパーアイドル 矢澤にこ!」
「スーパーアイドル 徳井青空!」
『もっともっと、みんなを笑顔にしちゃうにこ❤』
にこちゃんとそらまるさんの笑顔の魔法は、絶対みんなに届いてる
だって、私の心はこんなに、にこにこ気分になってるんだもん!
そらまるさんが帰った後、私はにこちゃんと2人で部室に残っていた
「ごめんね、穂乃果、情けないとこ見せちゃったわね」
「わたしがあんたに嫉妬してたのはホント、情けないでしょ」
にこちゃんは寂しそうに笑う
「でもね、そらまるの気持ちを知って解ったの」
「私は、アイドル矢澤にこの目標は、『私』がNo.1になるんじゃなくて、『私たち』がNo.1になりたいんだって」
「私をμ'sに入れてくれてありがとう、そしてこれからもよろしくね」
「にこちゃん…うんっ!一緒に、9人じゃない、18人全員でがんばろう!」
にっこり笑顔で約束したよ!
空に輝く一番星
でも今日はもう一つ綺麗な星が輝いて、競争するように、すごくまぶしく輝いていた
第3章「青空の下、にこやかに」 完
再開します
第4章「マッキー☆パイ(極甘)」
今日は学校の屋上が工事という事で練習はお休み
海未ちゃんは弓道部、ことりちゃんも衣装の仕上げという事で家庭科室に行っちゃった
でも、さみしくないんだ!
実はこういう時、穂乃果には決まって行くところがあるんだよ
それはどこかというと…
ほら、聴こえてきたでしょ?
〜愛してるバンザーイ ここでよかった〜
〜私たちの今が ここにある〜
この歌声の主は西木野真姫ちゃん
私達μ’sの作曲担当で歌がすっごい上手なの!
しかもお嬢様で可愛い!
ちょっと素直じゃないところもあるけど、本当はとっても優しい子なんだ!
真姫ちゃんは時間があると、音楽室にやって来て、こうやってピアノを弾いてるの
真姫ちゃんはピアノがとっても上手で、聴いててとっても気持ちいいから、私大好き!
しかも今日は歌つき!
とってもラッキーだね
歌が終わると、私が拍手する、そうしたら真姫ちゃんはいっつもビックリして、私が怒られちゃうんだ
ふふっ、いつもの光景、いつもと一緒
あっ、歌が終わるよ
さぁ真姫ちゃんいつものように拍手するから、ビックリしてね!
〜昨日に手を振って、ほら前向いて〜
パチパチパチパチ!
「真姫ちゃん!さすがだね!」
すると真姫ちゃんは
「!穂乃果!わーっ穂乃果!聴いてくれてたの?ありがとう!」ギュー
あれ?
「真姫ちゃんね!絶対穂乃果が来てくれると思って頑張って歌ってたんだよ!上手だった?」
あれ〜?
「あれ?ひょっとしてダメだったの?」ジワッ
うわわっ?泣いちゃう!
「そ、そんな事ないよ!今日もとっても上手だったよ!真姫ちゃんの歌大好き!」
すると、真姫ちゃんの表情がパァァーっと音が聞こえるくらい変わって
「ありがとう!私も穂乃果大好き!」
うわっ、何だこれ?可愛い!
その時
「失礼します、真姫、作詞の事で言い忘れ、て…?」
う、海未ちゃん?…
弓道部にいったはずでは?
「し、失礼しました!」
回れ右して出て行こうとする
「違うの海未ちゃん!これは違う」
「えっ?穂乃果、私の事キライなの!?」
「違うからそうじゃなくて!」
「海未ちゃんも待ってー!!」
また修羅場です!何で?私何もしてないのにぃ!!
ダレカタスケテー!!
騒動はたまたま通りがかった、絵里ちゃんによって収束し事なきを得た
「少しびっくりしてしまって、申し訳ありませんでした」
これは海未ちゃん
あの事件以来、三森さんの影響からか、とっても笑顔がキュートになって、物腰も柔らかくなったような気がする
それでも、やっぱりこんな感じで海未ちゃんだけどね
「海未ったら、穂乃果が取られちゃうと思ったの?」
うふふ、と笑ってからかっているのは絵里ちゃん
絵里ちゃんも事件以来、考え方が柔らかくなったような感じ、そう、まるで南條さんみたい、になったと思う
ここにはいないけど、にこちゃんだって、そらまるさんの影響を受けてる
みんな、記憶はしてないけど、心の中では一緒なんだなぁ
なんて感慨深く見ていると
「海未ちゃん!私ね、今回の歌詞すっごい気に入っちゃってね……」
………
「海未ちゃん!真姫ちゃんオシャレなカフェ見つけたから一緒に……」
ヌヌ……
「海未ちゃん!今度私と一緒に………」
イライラ……
真姫ちゃん、ちょっと海未ちゃんにくっ付き過ぎやしませんかねぇ?
「あらあら、真姫は相変わらず海未が大好きなのね、でも、穂乃果の前では少し我慢した方がいいんじゃない?」
「穂乃果がヤキモチ焼いてこわーい顔になってるわよ?」
「はーい!」
えっ、私そんな怖い顔してた?
でも、この真姫ちゃん、とっても素直で人懐っこい感じ
アリだね!
私は、帰り道の途中、いつもの公園でえみつんから情報収集を開始する
えみつんっていうのは、私の、いわゆる中の人
今は世を忍ぶ仮の姿として、マスコットに姿を変えていて、私のバッグで揺られている
性格は、自分で言うのもなんだけど、穂乃果そっくり
でも、結構無茶ぶりとかしてくるし、なかなか、油断できない人形だよ
ちなみに、昨日私のおやつを盗み食いしたことによって、ジェノサイダーから、暴食の王にランクアップしたよ!
暴食の王は、真姫ちゃんの中の人について説明を始めた
「ちょっと、暴食の王とかやめてくれる!めっちゃ謝ったじゃん!」
「許してないもん!私のロールケーキ返して!」
「後で、ちゃんとあの店のイチゴロール買ってきてあげるから」
「ゆるした、えみつん!ずっともだよ♥」
えみつんはあからさまに「イラッ」としながらも中の人の説明を始めた
「真姫ちゃんの中の人は『pile』ちゃん」
「みんなパイちゃんって呼んでるよ」
パイル?外国の人?
私が「?」となっていると、えみつんが補足説明してくれた
「pileは芸名、タオル地のフワフワなとこ、あるでしょ?そこの名前からとったんだって」
「タオルみたいに暖かく包み込むような、誰にでも愛されるアーティストになれるようにっていう意味なんだって、とっても素敵だね」
うん!とっても素敵!
「オーディションで700人の中から選ばれてデビューした、すっごい子なんだよ!」
「すごい!やっぱり、歌、上手だったもん!」
すごいね!真姫ちゃんの歌声は血統書つきだね!
「でも、最初はすごい大変だったみたい」
「実は真姫ちゃんのオーディションに落ちたら、大好きな音楽を諦めようとしてたんだって」
「えっ?そんな、700人から選ばれる位なのに?」
「…まぁ、世の中色々あるから…」
「でも、真姫ちゃんに出会ってパイちゃんの音楽人生は変わった」
「今までやりたくてもできなかった事、見たくても見えなかった景色、全部一緒に見られるって、いっつも言ってるよ」
「真姫ちゃんとパイちゃんは似た者同士、真姫ちゃんは穂乃果に、パイちゃんは真姫ちゃんに、それぞれ諦めかけた夢を思い出させてもらった」
そっか、真姫ちゃんも初めはそうだったね…
「パイちゃんは真姫ちゃんに並々ならぬ感謝と愛情を注いでる」
「当然みんなもそうだけど、パイちゃんの依存度はすごいと思う」
「正直、このままでいさせたい気もする、でもそうしたらこの世界が…」
えみつんは寂しそうな顔をする
でも
「大丈夫!大丈夫だよ!」
私は言い切った
「そんなに真姫ちゃんの事が好きな人だもん、真姫ちゃんが嫌がる事、絶対するわけないよ!」
「…!そうだね、そうだよね!」
えみつんは笑顔でそう言った
pileさんが真姫ちゃんの事、すっごい好きなのは解った
じゃあどうやって真姫ちゃんを取り戻そうかな?
「pileさんの苦手な事とか、弱点みたいのってないの?」
「…あるよ」
えみつんはコクリと頷きこう言った
「パイちゃんは、見た目も中身も可愛くて、女子力も高い、一見パーフェクトな子」
「しかし、致命的な事が一つある、それは…」
「それは…?」
緊張がはしる
「それは、残念なくらいの、ポン…コツ…」
は?
「ぽ、ポンコツ?」
「そーなんだよー!パイちゃんは一見何でも出来そうなんだけど、残念なくらいポンコツさんなの!超カワイイでしょ?」
「しかも性格もすっごい良いし、超いい子なの!」
でも話し合いとかで解決できそうだしいいかも、などと考える私に対して、えみつんは、ほぼ恒例となってきた爆弾投下を行う
「ちなみにパイちゃんは、なんかすずのことすっごい好きみたいで、いっつもベタベタしてるよ」
「さっき真姫ちゃんが海未ちゃんにベタベタしてたのも、多分海未ちゃんにすずの雰囲気を感じたからかもね〜」
「すずもパイちゃんのこと好きだからこれはアレかもね、取られちゃうかもね〜?」
なん…だと…
そ、そんな!海未ちゃんが取られる?
でも相手は真姫ちゃん?
そんな、私は一体どうすれば!?
悩む私をえみつんは生暖かい目で見つめながらこう言った
「穂乃果、ファイトだよ!」
「ファイトだよ!じゃねーっつーの!!」
一体どうなるのー!!
次の日の練習時間
真姫ちゃんの行動をよく観察するよ!
何か真姫ちゃんを戻すヒントがあるかもしれないしね
「あ、あの、」
でも、この真姫ちゃんはとっても人懐っこい感じ、今も1年生組で集まってるけど真姫ちゃんからのスキンシップが多いね!
「あの、穂乃果?」
でも、会話は聞こえないな、後で花陽ちゃんから聞き込みだね!
「穂乃果!聞こえてますか?」
「えっ?ゴメン!呼んだ?」
海未ちゃんが呼んでるのに気がつかなかったよ
「さっきから呼んでますよ、あの、そろそろ離していただかないと、絵里とトレーニングの打合せができないんですが…」
そう、今私は海未ちゃんの事をガッチリ捕まえて拘束している、ようにも見える体勢で観察しているんだ
別に真姫ちゃんから隠そうとしている訳ではない
たまたまそこに海未ちゃんがいたからだ
そこに
「あら?今日も穂乃果は海未にそんなにくっ付いて、本当に仲良しね」
と絵里ちゃん
えっ?私そんなにいっつもくっ付いてる?
「でも、ゴメンね、ちょっと打合せしたいから、海未のこと借りて行くわね」
しぶしぶ私が離れると、なぜか後ろからことりちゃんが
「あぁっ!そんなぁ、ご無体な!」
と言ってうなだれていた
どうしたんだろう?
とにかく、今の真姫ちゃんともっとお話ししてみよう!
私は可愛い可愛い1年生たちの輪に入っていく
「やっほー!みんな何話してるの?」
すると
「にゃー!穂乃果ちゃん!あのね、真姫ちゃんがね、すっごいんだよ!」
と凛ちゃん
「凛ちゃん!それじゃ穂乃果ちゃん何が何だかわかんないよ」
すかさず花陽ちゃんがフォローを入れる
すると
「?私も何が何だかわかんない!」
『いやいやいや、真姫ちゃんの事だから』
全員から同じツッコミがはいる
「あれ?」
真姫ちゃんはまだ理解出来てないみたい、なるほどこれか!
「真姫ちゃんはアドリブに弱いからねー?」
「そ、そんな事ないよね?真姫ちゃんはキチンと考えてからしゃべるタイプだから」
「むー!私だって、こう、突然の、あの、あれの……なんだっけ?………………」
あ、フリーズした
…確かに、これは間違いなくそうだね
それから少しお話ししたけど、元の真姫ちゃんとは真反対の性格なのかな?
とにかく人懐っこいって感じで、いつも誰かの側にいるね
元の真姫ちゃんはまさに『高嶺のフラワー』だったけど、今の真姫ちゃんはもっと身近な『花壇のお花』、みんなと一緒に咲いている感じかな
だけど変わらない事もいっぱいあるよ
まずは
「花陽、凛、今度一緒にあの新しいショップにいこう?」
「うん!いいよ!実は行ってみたかったけど敷居が高そうで、入りにくくて」
「でも、真姫ちゃんとなら安心だね!」
「凛もいいよ!でも、凛女の子っぽい服あんまりないからなぁー」
「そしたら私が選んであげる!」
「凛は大事なお友達だから、とびっきり可愛くコーディネートしないとね!」
「恥ずかしいけど…ありがとう真姫ちゃん!」
「当然花陽もね!」
「あ、ありがとう、真姫ちゃん」
はぁっ!なにこれ?ここは天国?ここが優しい世界なんだね!
…っと、危く意識が飛びかけたよ
っていう感じで、とっても優しいところとか
♪~♪♪
「さすが!真姫ちゃん上手だね!」
「うん!私も真姫ちゃんの歌も、歌ってる所も大好きだよ!」
真姫ちゃんは歌う時すっごい楽しそうに歌うんだ
だから、その歌を聞いてる周りの人も、すっごい幸せな気持ちになれるんだよ
ほら、似てるでしょ?
その後も休憩時間毎に真姫ちゃんとお話ししてわかった事は、真姫ちゃんとpileさんは確かに人当たりは違うけれども心の中は同じ
とっても優しくて、とってもあったかい人だって事
pileさんは真姫ちゃんのことすっごい大好きって言ってたみたいだけど、真姫ちゃんもpileさんのこと、すっごい大好きになると思うな!
だって2人とも、こんなに似てるんだもん!
なんて考えていると
「うーちゃま!このリングすっごい可愛いの!ペアリングなんだけど一緒につけよ?」
「ま、真姫、うーちゃまは止めてください、あと、私にはそんな可愛いのリングは似合わないですよ」
「え〜?絶対似合うから、ね?」
「いや、でも…あの、薬指はちょっと…」
なんとぉー!わたしピーンチ!!
「なにおー!やっているのかなー!わたしも混ぜてほしいなー!!」
もう少し真姫ちゃんとお話しする事にしたよ
次の日、今日は朝からずっと雨
これじゃあ外での練習は無理だね〜
ということは…
「今日は音楽室を借りて歌の練習をしましょう」
と、絵里ちゃん
やったね!穂乃果はダンスで体を動かすのも好きだけど、歌うのも大好き!
しかも歌の先生は
「じゃあ、わたしが伴奏するから一人一人、パートごとに練習しよっか?」
そう、真姫ちゃんだよ!
わたしも頑張って真姫ちゃんみたく上手に歌えるように頑張るんだ!
「そうそう、穂乃果は声量があるから、みんなをリードしなきゃいけないの」
「でも、だからこそしっかりした基礎をやっていかないと逆に足を引っ張っちゃう」
「穂乃果ならできるから、頑張って!」
真姫ちゃんはこうやってみんなにアドバイスをくれるんだけど、絶対一言応援してくれるの!
今はpileさんと同化しているはずなのに、おんなじように励ましてくれる
ふふっ、やっぱり似てるね!
練習も終わりに近づいた時、先生に呼ばれていた絵里ちゃんと希ちゃんが帰ってきた
そして開口1番
「ライブが決まったわよ」
おぉー!なんか急だけどやったね!!
「なんか突然ね、なんかあったの?」
という、にこちゃんの質問に絵里ちゃんは
「今度の学校集会で部活の活動報告があるでしょ?」
「そこで私達にミニライブをしてはどうかって学院長先生からご提案していただいてね」
「さすがことりちゃんのお母さん!」
「お母さん、ありがとう!」
ことりちゃんも嬉しそう
「ラブライブの予選も近い事だし、予行演習、とまではいかなくても、いい機会かなって」
「えりちとウチがもうOKしてきちゃった、って訳なんよ」
やったー!ライブだー!
見るとみんなも嬉しそう!だよね、ライブ、楽しいもん!
「よーし!ライブも決まったし、ガンガン練習して、最高のライブをみんなに届けよう!!」
と言うわたしの言葉に
『おー!!』
みんなのかけ声が続く
うんっ!気合入れるぞ〜!!
その日の帰り道、海未ちゃんとことりちゃんはライブの準備
という訳で穂乃果は寂しく1人で下校
校門を出たところで
「穂乃果、ちょっと時間いいかな?」
真姫ちゃんが声をかけてきた
どうしたんだろう?何か相談かな?私は当然
「いいよ!」
と答える
真姫ちゃんはにっこり笑って
「ありがとう、立ち話もなんだからそこの公園のベンチで、いいかな?」
私はうん、と答えて公園へ移動した
雨があがった公園は、風が少し冷たい気がした
公園に着くと開口一番
「穂乃果、ありがとう」
真姫ちゃんが、声に出した
「?」
私が呆気にとられていると
「私をμ’sに入れてくれてありがとう」
「私にもう一度、大好きな音楽をくれてありがとう」
「私が私でいられる場所をくれてありがとう」
「穂乃果のお陰で毎日がすごく輝いてる」
「こんな日が来るなんて、高校に入った頃は考えてもなかった」
ちがう…
「私が毎日、こうして笑っていられるのはあなたのおかげ『違う!違うの!』
「えっ?」
私の声に真姫ちゃんは固まる
「違うの!真姫ちゃん!今のあなたは、もうひとり『穂乃果!!』
気がつくと私の後ろに元の姿のえみつんが立っていた
「ゴメンね、ちょっと立ち聞きしちゃって」
「赤い髪の子、真姫ちゃんだっけ?とってもいい子だね、お友達に素直にありがとうって言えるのとっても大事だよ」
「は、はい!ありがとうございます」
「そして、こっちのサイドポニーの子、穂乃果ちゃん」
「ありがとうって言われて恥ずかしかったのかな?」
「真姫ちゃんの気持ち、ちゃんと受け取ってあげないと、本当の気持ちなんだから、ね」
「うん…」
「ご、ゴメンね、真姫ちゃん、私、ちょっと照れちゃって」
「ありがとう、真姫ちゃんの気持ち、すごく嬉しいよ」
「こちらこそありがとう!」
えみつんに促され、2人は握手
「これからもよろしくね、穂乃果!」
「うん、真姫ちゃんもよろしくね!」
そう言って、2人は別れた
真姫ちゃんの姿が見えなくなった時
「穂乃果、よく頑張ったね」
というえみつんの声を合図に
「うっ、ううっ、わ、わたし…うわーーん!」
私は泣いた
私は最低だ
今の真姫ちゃんは性格がいつもと違うだけで、本物の真姫ちゃんなのに
さっきの言葉をいつもの真姫ちゃんから聞きたいと思ってしまった
真姫ちゃんからの心からのありがとうを
私はニセモノみたいに思ったんだ
「穂乃果、あなたは悪くないんだよ」
声を出さずに首を振る
「あなたは優しいね、だから真姫ちゃんは救われたんだよ」
「あなたのその優しさが、真姫ちゃんっていう、飾られた、絵の中のお姫様を、1人の女の子に戻してあげたんだよ」
「だから自分を責めないで」
「あなたが自分をそんな風に責めることは、それこそ真姫ちゃんの気持ちを踏みにじる事になるんだよ」
「だから、自分を嫌いにならないで」
私は自分のこころがとろけるくらい泣いた
えみつんはずっと私のこと、抱きしめてくれて、すごく暖かかった
どのくらい時間が経ったのかな?
よく涙が枯れるくらいって言うけど、涙っていくらでも出るんだ、なんて考える余裕が出てきた頃、
「もう大丈夫…」
私はそう言うと、ずっと私をぎゅっと抱きしめてくれていた、えみつんが
「うん…」
という言葉とともに私から体を離す
「えみつん、私、頑張るよ」
「みんなの心、もっともっと大切にできるように、私頑張るから!」
「だから、えみつん、私と一緒に来てくれるかな?」
私のお願いに
「ふふっ、私達は2人で1人、ずっと一緒なんだよ、知らなかった?」
そうだ、そうだよね!
私は一人じゃないんだ、えみつんやμ’sのみんなもいつも、いつまでも一緒なんだ!!
あれから数日後
今日はついにライブ当日!
みんなも準備万端、気合も最高潮!
ミニライブとはいえ、全力全開!
クライマックスは真姫ちゃんのソロパート!
と、その時!
?!
この感じ!まただ!と、いうことは、でも、止められない!!
〜パレードに誘われて〜
『まきちゃん!』
………は?
〜君と〜
『まきちゃん!』
〜踊る〜
『まきちゃん!』
いやいやいやいや、意味わかんないから、イミワカンナイ!マジで!なにこれ?
見ると観客全員が真姫ちゃんの方を向いてただ一言
「まきちゃん!」
とだけ叫んでいる
「うわっ?すごいねコレ、これが本物の患者ってやつなんだ!初めてみた」
見ると元の姿に戻ったえみつんが、隣で興味津々に眺めている
「えみつん!これなに?」
「これはいわゆる『真っ姫患者』ってやつで、真姫ちゃんのが好きすぎて、頭の中が全て真姫ちゃんで埋め尽くされてしまった、狂信的なファンの末路だよ!」
なにそれ?どれだけ真姫ちゃんの事好きなのさー!!
当の真姫ちゃんを見ると…
すっごい嬉しそうに笑ってる、ダンスもなんか楽しそう、そして何より
あんなに楽しそうに歌ってる
心の底からの笑顔、本当に幸せそう…
私は騒動そっちのけで真姫ちゃん、いや今は多分pileさん…に心奪われて、見入っていた
予定曲数を大幅に超え、ライブは終了した
えみつんはタイミングを見計らったようにpileさんに声をかける
「パイちゃん、良かったね、夢、叶ったね」
するとpileさんは
「ありがとう!えみつん!そして穂乃果!」
満面の笑みで答える
「pileさん、ライブ、凄かったです!最高でした!」
「ふふっ、トーゼンでしょ!だって私は真姫ちゃんなのよ!」
えへへ、さすがそっくりだよ
「パイちゃん、もういいかな?」
えみつんが優しく問いかける
「嫌だけど、いいよ」
pileさんが頷くと、真姫ちゃんの体からもうひとりの歌姫が現れた
現れたpileさんはとっても嬉しそうに真姫ちゃんに語りかけた
「やっと…やっと会えたね!」
そして、そのまま続ける
「私、真姫ちゃんのおかげで大好きな音楽を続けてこれたよ!見たことない様な大きなステージにも立ったんだよ!いっぱいいっぱいファンのみんなの前で歌えたの、ありがとう!」
それを聞いた真姫ちゃんも素敵な笑顔で
「わたしもそうよ、私に歌を与えてくれてありがとう、私をμ'sに入れてくれてありがとう、私の歌をみんなに届けてくれてありがとう」
2人はクスリと笑いあう
「あのっ、あのね、それから、それからあのね…、あのっ、ごめんね、もっともっと真姫ちゃんとお話したいのに」
「私もっと真姫ちゃんにありがとう言いたいのに、口下手で、あの…」
感情が溢れ出してなかなか上手に話せないpileさんに、真姫ちゃんは優しくこう言った
「パイちゃん」
「大丈夫、全部わかってるわ、だって私も同じだもの、私たちは一緒、知らないうちにお互い助け合って、いつの間にか2人で同じ道を歩いていたのね」
「うん…うん、そうだね」
「これからも一緒よ、大好きなみんなと、歌と、パイちゃんと同じ方向を向いて歩いて行くのよ」
「とっても素敵だね」
「そうねとっても素敵ね」
「だから、さよならは言わない」
「また逢いましょう、呼んでくれたらすぐ行くわ」
Pileさんはえへへと笑って
「さみしくてすぐ呼んじゃうかも」
真姫ちゃんもくすっと笑って
「少しは我慢してよね、私にもお勉強とかいろいろあるんだから」
2人はそう言って笑いあった
「じゃあ、次のμ'sライブまで我慢して、その間すっごい頑張って、次に真姫ちゃんにあったら、すぐにびっくりするくらいの大きなステージで歌えるようにしておくね、約束ね!」
「ふふっ、そうね、楽しみにしておくわね」
ひとしきり笑った後、ふいに真姫ちゃんが
「お願い、1つ聞いてくれるかしら?」
どうしたんだろう
するとPileさんも
「私もね、お願いがあるの」
「なに?」
「真姫ちゃんから先に言っていいよ」
すると真姫ちゃんは
「いっせーので言ってみる?」
「賛成!」
二人は笑顔で
『いっせーの!』
『一緒に歌ってください!』
…ふふっ、やっぱり似てるね!
二人は寄り添うようにピアノの前に座ると
真姫ちゃんのピアノの伴奏が始まる
愛してるばんざーい!
ここでよかった 私たちの今がここにある
愛してるばんざーい!
始まったばかり 明日もよろしくね まだゴールじゃない
笑ってよ 悲しいなら吹きとばそうよ
笑えたら変わる景色 晴れ間がのぞく
不安でもしあわせへと繋がる道が
見えてきたよな青空
時々雨が降るけど水がなくちゃたいへん
乾いちゃだめだよ みんなの夢の木よ育て
さあ!
大好きだばんざーい!
まけないゆうき 私たちは今を楽しもう
大好きだばんざーい!
頑張れるから 昨日に手をふって ほら前向いて
歌が終わり、もう一度二人は向かい合うと
「ありがとう」
「それじゃあ」
『またね』
2人の約束は歌声となって、いつまでもいつまでも、響き渡っていた
ライブの後、私は真姫ちゃんに音楽室に呼び出されていた
…あの時のこと、なのかな
私は少し陰鬱な気持ちで音楽室に入る
すると、真姫ちゃんはピアノ椅子に座って、私を待っていた
「…穂乃果『真姫ちゃん!ごめんなさい!』
「あの時、真姫ちゃんは私に心の底からの言葉をくれたのに!」
「私は疑うような…ひどいこと……してっ…」
「ウフフッ、穂乃果、やっぱりあなたは穂乃果ね」
えっ?
「どこまで行っても一直線、なにをやるにしても考えなし、周りをどんどん巻き込んで」
「いつの間にか私も、μ’sのみんなも巻き込まれちゃった」
「だから、もう一回言わせてもらうわね」
「私をμ’sに入れてくれてありがとう」
「私にもう一度、大好きな音楽をくれてありがとう」
「私が私でいられる場所をくれてありがとう」
「穂乃果、ありがとう」
「これは私と、パイちゃんからの言葉」
「私たちの、本当の気持ちなんだから、ありがたく受け取っておきなさい」
真姫ちゃん…
「うん!ありがとう!」
静かな静かな音楽室で、ありがとうの歌がずっとずっと聞こえていた
第4章「マッキー☆パイ(極甘)」 完
再開します
第5章「陽の光の下、百合の花は輝く」
皆さま、こんにちは、高坂穂乃果です
「まったく、あなたという人は………」
最近、どうですか?病気など、していませんか?
「いいですか?将来のことも………」
寒暖の差が、大きい季節ですから、気をつけてくださいね
「いつまでも子供では無いの………」
私ですか?おかげさまでとても『穂乃果ぁ!聞いてるんですか!!』
「はいぃ!!聞いております!!!」
はい、今私は海未ちゃんに、すごい勢いで、怒られまくっています
全く、ちょっと遅刻しかけて、授業中に居眠りして、ちょーっと、ほんのちょーーーっとだけウエストが、こう、ふわっとしたかなー?ってだけなのに、こんなに怒んなくてもいいよね!
大体絵里ちゃんが悪いんだよ!
なんか面白いゲームがあるって渡されたんだけど、これがまた、面白くってついつい夜更かししちゃったよ!
しかも、夜食まで食べちゃったじゃん!
「………という訳です!解りましたか?」
「はい、申し訳ありませんでした」
「わかれば結構、では、以上!」
ふわぁー!やっと終わったよ〜
うぅーっ、心が、心が折れかけている
全く、海未ちゃんはホントおこりんぼなんだから!
いつもは大天使のことりちゃんが助け舟を出してくれるんだけど、今日は家の用事でお休みなんだ
こうなったら、μ’sの誇るもうひとりの天使の元に行かなくちゃ
海未ちゃんによって、荒廃しきった私の心を癒してもらわなければ…!
「穂乃果!聞こえてますよ!!」
「うわわー!ごめんなさーい!!」
怒れる鬼神の追跡を逃れ、ついに我がセーブポイントに到達
はやく、早くHPを回復しておくれ!
そんな想いを胸に、私は一年生の教室の扉をくぐり
「おーい!花陽ちゃーん!」
目的の天使を探す、すると
「あーっ!穂乃果ちゃーん!」
凛ちゃんが私に気付く
「やっほー!」
ということは、隣には…
「天使はっけーん!花陽ちゃーん!私を、私の傷ついた心を癒してぇ!」
私は、オアシスを見つけた旅人のように、花陽ちゃんに抱きつこうとする、と
「…ちょっと、穂乃果ちゃん、なにしてんのかな?」
「私、こういうのやってないんで、他でやってくれる?」
…あ、あれ…?
「は、花陽ちゃん?」
「私、体に触られる系苦手なんで」
すると、隣にいた凛ちゃんが
「穂乃果ちゃん、かよちんのスイッチ押しちゃ駄目だにゃー」
え?な、なにが…
私が混乱していると今度は真姫ちゃんがやって来て
「穂乃果、あなた学習能力無さすぎじゃない?」
「花陽はそういうの嫌いなの、知ってるでしょ?」
こ、これは…!
「なんていうか、明るい人を見ると自分と比較しちゃう、なかなか辛いよね」
あぁっ、心が、心が痛いっ
「凛は、こんな心に深い闇を抱えたかよちんも好きだよ!」
なるほど!イエスマンならぬイエスガールだね!!
「花陽はクールね、私も見習いたいわ」
駄目だよ!騙されてるよ!これはクールじゃなくてダークだよ!!
私の貴重な無限エリクサーこと、花陽ちゃんがダークマターになっちゃったよ!
「ダレカタスケテー!!」
「ちょっと、それ、私のなんだけど」
これすらも許されないのぉ〜!!
さらなる追い打ちにより、ステータス「瀕死」となった私は、這々の体で一年生の教室から脱出し、少し離れた場所から花陽ちゃんを観察してみる
なるほど、こうしてみると見た目から印象が違うのがわかるね
まず、普段の花陽ちゃんは、なんというか小動物みたいな守ってあげたい感が湧いてくる感じなんだけど…
でも、今は立ち姿から違う
姿勢がいいのかな?なんかモデルみたいにスッとした佇まい
それに加え、希ちゃんの言うところの「かなり良いもの」を持っているため、スタイルの良さが目立つようになってる
っていうか、本当にモデルさんになれるんじゃないかな?
「かよちん、今月号みたよ!すっごく可愛いかったよ!」
今月…号?
「私も見たわ、さすがね、前の時も読者投票で上位だったんでしょう?」
読者…投票?
「いや、別に大したことないから、偶々だよ」
「そんな事をないにゃー!だってかよちんは絵里ちゃんと並ぶ、μ’sのグラビア担当なんだから!」
「読者モデルなんて言わないで、本当のモデルめざしたら?」
どくしゃもでるーー?!
なんてこったい!本当にモデルさんだったよ
なるほど、人前に出るの慣れてるから、見た感じの印象が違うんだね
私は、さらに観察を続ける、するともう一つの特徴が
凛ちゃんとか真姫ちゃんとはすごいにこにこしながら話してたのに、少し1人になった途端
「………」
うおぅ!すっごい私に近寄るなオーラ!
なんか小説みたいの読んでるし
それでも、今の花陽ちゃんは目立つから話しかけようとする子もいるんだけど
「あの、小泉さん!今月号みたよ!すっごい可愛かったね!」
「…ありがとうございます」
………
終わった!ぶったぎったよ!スゴイ!一刀両断!
ん?でも、
会話を諦めて帰っていく子の背中を、困り顔でチラチラ
なるほど、人見知りで恥ずかしがり屋さんなんだね!
「うわーん!エミえもん!誰も私を癒してくれないよぉ~!!」
私は心のダメージを和らげるため、困った時のエミえもんに助けを求める
「誰だ!エミえもんって!」
と、抗議の声をあげる、しゃべるスピリチュアルマスコットの名はエミえもん
「じゃねーよ!にった!えみ!え!み!つ!ん!」
そうだった、余りの心のダメージにより一時的な記憶障害が起こってたよ
あれ?エミえもんが何かごそごそとしてるけど?
「あ、もしもし海未ちゃん?あのね、穂乃果、実は海未ちゃんの事、あいs『ヒャァーーーハァーーー!!!』
「海未ちゃん!!いやあの、その、愛してるばんざーいにこういうエキセントリックな掛け声とかよくない?!え?良くない?!そっかわかったじゃああとでね」
……
「なにしてんの!人の電話だよ!しかもなんか恐ろしいこと言おうとしてるし!」
「いいじゃん、元気でたじゃん、結果オーライ!」
「これ元気じゃないよ!どっちかっていうとドーピングだよ!バッカスの酒だよ!!」
これが意趣返しってやつだね!穂乃果知ってるよ!この前の小テストで間違えてて海未ちゃんにすっごい怒られながら復習したばかりだからね!
ワーワー!キャーキャー!!
…
「…えみつん…穂乃果、疲れた…」
「…お互い、無駄な事はやめよう…」
そうだった、こんなことをしている暇なんてないのだ
「えっと、今、花陽ちゃんの性格の元になっているのは『シカちゃん』って言って、」
「シカ?ちゃん?」
「あっ!ごめん、それはあだ名でホントは『久保ユリカ』ちゃん」
「最近は声優のお仕事が多いけど、ちょっと前まで雑誌モデルでグラビアアイドルの仕事も多かったんだよ」
「ぐ、ぐらびあ…」
「本人は結構前から、声のお仕事に興味があって、その中で花陽ちゃんと出会ったんだって」
「シカちゃんってね、最初はちょっと怖い感じの雰囲気だったんだよ」
なるほど、あの近づくなオーラの事だね
「でも、今ではとっても仲良し!本来はとっても明るい子だから、すっごい楽しいんだよ」
凛ちゃん達と一緒のときはすごく笑ってたもんね
「なんてったってユニットも同じ、「ぷりんたいず」の仲間だしね!」
ん?もう、えみつんてば、プランタンを言い間違えてるよ!
ドジっ子だねぇ
「μ’sでは、特に南條さんと仲が良くてね、なんか昔同棲を申し込んだとか何とか?」
え?そ、それはつっこんでもいいやつなのかな?
「基本寂しがり屋だからね」
なるほど、そっちか
「あっさり断られてたけど」
南條さんっぽいね
「パイちゃんもそうだけど、シカちゃんも花陽ちゃんっていう子に出会ってから、すごく楽しいことが増えたって言ってたよ!」
「なんか、実家では花陽ちゃんは神殿に奉られているとか何とか…」
花陽ちゃん、ついに天使から女神に昇格しちゃったんだね
「ところで、何で『久保ユリカ』っていう名前なのにあだ名がシカちゃんなの?」
私は疑問を口にする
するとえみつんは真面目な声色で
「…聞きたい?」
えっ?な、なに?
「シカちゃんってあだ名の理由、その深い深い、真実」
「…覚悟、あるんだね?」
ひ、ひょっとして、あの、心の闇の真実がそこに…
私が、なにも答えない事を肯定と捉えたようで、えみつんはゆっくりと語り始める
「シカちゃんってさ…」
ゴクリ…
「出身地、奈良県なんだよね…」
……は?
「奈良県ってさ、鹿、有名じゃん?」
……………
「何それ!?違う方向でビックリしたよ!浅い!浅すぎるよ!その辺の水溜りよりも浅かったよ!!」
「私はまた、あの心の闇の謎とかかと思ったよ!」
「あ〜、あれはなんか、中学生の頃、モデルのオーディションに誘ってくれた子がいて、シカちゃんだけ合格しちゃったもんだから、なんか無視とかされたり、仕事でもイヤな事、半強制的にやらされたりした結果みたいだよ?怖いねー」
「怖いねー、じゃないよ!軽い!重いのにすごく軽いよ!!」
「久保さんのこと、もっと優しくしてあげてもいいんじゃない?」
するとえみつんは、
「優しく?」
あ、あれっ?怒って、る?
「シカちゃんはそんなに弱い子じゃないよ」
「自分の中にやりたい事、やらなくちゃいけない事、ちゃんとしっかり持ってる子なんだよ」
「例え穂乃果でも、私の友達のこと、貶めるような事は許さない!」
「あっ、ご、こめんなさい、あのっ、そんなつもりじゃ…」
「駄目だよ!許さないから!」
「罰としてこの前の数学の小テストの結果を海未ちゃんにそっとメールしたゃった、テヘ❤の刑を受けてもらうよ!」
なんだこの長い前振り!!
さっきか?さっき仕込んだのか?!
国語が見つかった時、数学はドサクサに紛れて逃げ切ったのに!
せっかく訪れた、私のナギ節がっ!
この召喚士の為に!!
なんてこったい!!
「召喚、出でよ!サムライガール!!」
……カツ…カツ…カツ
さあ
…ガチャ
地獄の
…ギィー
始まりだ!!
「穂乃果❤ファイトだよ!!」
「ファイトだよ!じゃねーっつの!!!」
悪魔人形の策略により、強制負けイベントに巻き込まれてしまった私は、とりあえず部室に逃げ込むと、先客が
「おおっ!にこりんぱな発見!」
あっ、『にこりんぱな』っていうのは、にこちゃんと凛ちゃんと花陽ちゃんの1年生3人組のことで
「あんた今、失礼なこと考えてるでしょ!」
「ひたたたた!ごへんなふぁい!!」
うぅ、思いっきりほっぺたつねられたよ
冗談はさておき、「にこりんぱな」っていうのはライブ途中に挟む、いわゆるMCの中で、この3人のトークがすっごい面白いって大評判になって、ファンの中で自然に発生した呼び名なんだ
本人たちも気に入ってるし、私たちも自然とそう呼んじゃうの
「3人ともなにしてるの?」
「私たちは次のライブのMCについて研究してるのよ!」
「競争激しいこの世界、常日頃からのこうした積み重ねが、明日への勝利につながるのよ!」
「さっすが世界のYAZAWAだにゃー!」
「にこちゃんの数少ない輝ける場所だね!」
「…もうちょっと私の事リスペクトしてもよくない?」
おぉ?これは…
「大体花陽だって人もこと、言えなくない?」
「はい、そうですけど?え?なに、こう言わしたいってことでしょ?」
「なんで、逆切れなのよ!」
「うんうん、かよちんの言うとおりだよ、ところで昨日ね…」
「あれ?凛ちゃん私の扱い雑じゃない?」
「いいよいいよ、ラーメン食べに行ったのね、そしたらね……」
「私にいたっては無視かい!!!」
あれれ?これって面白さが激烈にアップしてない?
にこちゃんいじり&適切なボケ拾い、花陽ちゃんの話術&闇スイッチ、凛ちゃんの毒舌&雑な返し
これは、ついに「にこりんぱな」は完成したんだね!!
「穂乃果、あんたなにナレーションで逃げようとしてんのよ!」
「うわわ!私はいいから~!」
「穂乃果ちゃんも一緒にかよちんの闇に触れようよ!」
「いやだよ!触れずにそっとしておこうよ!」
「ほら、知ってたよ、うん、べつにいいよ、私」
「こんなとこにもスイッチが!!」
闇の波動に飲み込まれるぅ~!!!
その日の練習時間
穂乃果のHPもなんとかギリギリ活動できるくらいまでは回復したよ!
よっし!頑張るよ!だって今日は
「では、予定通り、ユニット毎の練習を行います」
そう、今日はユニット練習なんだ
ことりちゃんがお休みのため、全体練習にしようか、という提案があったが
「次のライブの事もあるし、私たちはできる事するよ!」
という私の意見が無事通り、予定通り実施する事となった
ただし、悲しきかな、私の意見が通ったというより
「花陽がいるから、大丈夫でしょう」
という理由なのは秘密だよ!
でも、これで花陽ちゃんといっぱいお話しできそうだね!
「穂乃果ちゃん、ことりちゃんいないけど、どうする?」
花陽ちゃんはどうやらさっきの暗黒モードではなく、通常営業となっているみたい
「いやぁ、実はあんまり深く考えてなかったんだよねぇー、どうしよっか?」
すると、花陽ちゃんは
「なんだよそれー、私も全然、全く、何にも考えないんだけど!」
ニコニコしながら抗議する
「うーん、とりあえず、ライブの曲順でも考えよっか?」
「そうだね、どうしようっか?」
こんな風に話していると、不思議と心が落ち着いてくる
なんでだろうね?花陽ちゃんとは全然違う性格のはずなのに、花陽ちゃんと同じような居心地の良さ
きっと久保さんの心の中は、花陽ちゃんと一緒
思いやりのあるところとか、寂しがりやなところとか、あとちょっと暴走しちゃうところとか、うん!一緒だね!
あと、気がついた事といえば
「その時、凛ちゃんがこうガーってなって……」
「そしたら絵里ちゃん、それ持ったまんまダーッて走って……」
「昨日乗ったタクシーにゲームが……」
「にこちゃんのパソコンから……」
「真姫ちゃんてば……
「あれや……」
「これや……」
さ、さすが関西出身、だからかな?
一旦おしゃべりが始まったら止まんないね
あともう一つ
「先週のお休みに海未ちゃんとことりちゃんと一緒にお買い物に出かけたんだ」
「ちょうどイベントやってたでしょ?」
「すっごい楽しかったよ!」
「花陽ちゃんはどこかいったの?」
花陽ちゃんは少し影のある笑みを浮かべ
「…うん、行ったよ、私も、そこに」
「……1人で」
げぇっ、スイッチオン!
「凛ちゃんも真姫ちゃんも別の用事でいなくって、でも1人は寂しくていってみたんだけど…」
「そっか、穂乃果ちゃん達もいたんだ、楽しかったのか…」
「私には、なんか眩しすぎて、辛くなって、すぐ帰ったよ…」
ああっ!心が、心が痛い!
「家に帰ったら、お母さん達もいなくて、あまりの寂しさに耐えかねて…」
「秋葉のメイドカフェに行っちゃった…」
「な、なんで?メイドカフェ?」
私が恐る恐る質問すると
「メイドカフェって、『おかえりなさい』って言ってくれるんだよ」
「それって、すごくいいよね」
と、笑う瞳には、光がなかった…
と、こういう感じでどこにでもスイッチがあるのです
誰か、ダレカタスケテアゲテー!!
こんな感じでお話してたら、何時の間にやら
「うわわっ!もうこんな時間!」
「ホントだ!なんにも練習してないんだけど!」
そうなのだ、おしゃべりが楽しすぎて気が付かない間に練習も終りの時間
花陽ちゃんの謎闇にも慣れてくるもので、おしゃべりのスパイスみたいに感じてくる
すると、後はいつもと一緒
とっても楽しい、なんか元気になってくる
やっぱり花陽ちゃんは、私の心のコテージだよ
さて、家に帰ると、私は日課のランニング
さすがに今日は練習サボっちゃったし、しっかりやらないとね
いつものコースを走り、終盤の山場、神田明神様の階段登り
気合いを入れて一気に登って…
「ゴール!!」
すると
パチパチパチ
あれ?拍手?
「穂乃果ちゃん、毎日えらいね」
見ると、巫女服を着た希ちゃんだ!
「希ちゃん!今日もお手伝い?」
「そうだよ、穂乃果ちゃんはいつもきちんと自主練習して、えらいえらい」
えへへ~
「学校での練習もそれぐらいきちんとやると、もっとえらいんやけどね」
ばれてる!
「おさぼりするような悪い子には、わしわしをプレゼント…」
「お、おたすけ~」
希ちゃんはくすりと笑って
「しようと思ったけど、2人とも一生懸命やってるから、今回は勘弁してあげる」
た、たすかった~
ん、今2人って
「希ちゃん?2人ってことはもう一人誰かいるの?」
「あれ?穂乃果ちゃん知らんの?もう一人の常連さん」
常連ってことはいつもいるんだ、全然気が付かなかったよ
「まあ、穂乃果ちゃんはお参りしてすぐ行っちゃうし、しょうがないね」
「こっちにおいで」
希ちゃんは明神様の反対側に案内してくれた、するとそこには
「…花陽ちゃん?」
花陽ちゃんが、そこにいた
一心不乱にダンスの振り付けを練習してる
すごい、真剣な表情
自分で動画を撮影してるんだ、何回もチェックして確認してるね
「声、かけないの?」
希ちゃんの言葉に、私は
「うん、邪魔したら悪いしね」
「花陽ちゃんはこんなにアイドル、そしてμ'sのために一生懸命」
「知ってたけど、知ってたつもりだったけど、でも!やっぱりうれしいよ!」
「リーダーとして負けてられないし!私も頑張るぞー!!」
性格が変わっても、花陽ちゃんは花陽ちゃん
一生懸命で楽しくて、ちょっぴり暴走もしちゃうけど、想いの強さはNo.1!
やっぱり花陽ちゃんは、花陽ちゃんだよ!
ちなみに数日後、ちょっぴり暴走がちょっぴりじゃなくなっちゃったんだけどね…
今日は珍しく早起き!
だって今日は
「ライブだ!」
そう、今日はライブの日!
とはいっても秋葉原のイベントに参加する形なんだけどね
他のスクールアイドルも参加するイベントだし、楽しみにしてたんだ!
私たちは一旦学校に集合してから会場に移動することになっているんだよ
私は海未ちゃんと、ことりちゃんが待っている、いつもの待ち合わせ場所に向かうと
「あれ?」
誰もいないねぇ
今日は早起きさんだったから、私が一番だったのかな?
周りを見渡すと…あれっ?あれは
「海未ちゃん?」
よく見ると待ち合わせ場所には海未ちゃんがいる、けど、なんか様子がおかしいぞ
「海未ちゃん?」
私が声をかけると海未ちゃんは
「あ、わたしのこときらいな穂乃果!おはようございます!」
はぁっ?
「な、何言ってんの!そんな事あるわけないじゃん!」
「嘘です!だって私はいっつも穂乃果の事だけ考えて、穂乃果の為に色々言ってるのに、全部無視して…私は穂乃果に嫌われてるんです!私の本当の気持ちなんて……おーいおいおいおい!」
ど、どうしたの?
この超ネガティヴ発言は一体…私が混乱していると
「おはよう、2人とも!」
「ことりちゃん!海未ちゃんが!海未ちゃんの様子が…」
!?こ、ことりちゃん?
「はぁん❤!海未ちゃんが愛する穂乃果ちゃんに蔑ろにされて、マケミちゃんに!」
「これが、これが『ほのうみ』の新境地、ス・テ・キ」
こりゃヤバイ!色々ヤバイ!何がヤバイって精神的にヤバすぎる!!
マジ地球ヤバイ!だよこれ
「えみつん!」
「わかってるよ!とりあえず花陽ちゃんを見つけよう」
そうしてる間も
「穂乃果ぁ…メソメソ」
「いゃん❤マケミちゃんかわいい!」
………あれ?ことりちゃん、普段と変わらない?
…そんな事ないよね、うん、急ごう!
私とえみつんが学校に到着すると、校門に見えるのは
「絵里ちゃん!」
「あ、穂乃果!おはよう!」
「一見賢そうに見えるポンコツ生徒会長ですよ!」
な、なに言ってんのかな?
「エリチカ、そんな事ないのに!とっても賢いんだから!」
というポンコツかわいい発言を絵里ちゃんが繰り返している、その隣では
「スピリチュアル…スピリチュアルって、プププッ……はぁ」
うわぁ〜!希ちゃん!カードを折り紙にしちゃダメぇ〜〜!!
これは残りの子達も無事では済まないよ、とその時
「真姫ちゃん!」
真姫ちゃん発見、でも
「…ブツブツ…私は…彼氏いない歴、17年…デッショ〜…ブツブツ」
この状態を見たえみつんは
「真姫ちゃんはもうダメや…黒歴史が噴き出してきとる…」
真姫ちゃーーん!!待っててねーーー!!!
残りは「にこりんぱな」の、3人!
私が中庭まで来た時
いた!
「あんた、そんなんだから怒られんのよ!」
「にゃーっ!にこちゃんひどくない?」
「凛ちゃん?そんな事言っちゃダメだよ?」
あれっ?
「アイドルってのは、この私みたいなウルトラ『かよちーん!お腹すいたー』って聞きなさいよ!」
「えへへっ、はい、おにぎりだよ!」
「花陽まで〜!」
「はいっ!にこちゃんの分」
「…ありがたくいただくわ、もう、花陽にはかなわないわねー」
いつもと一緒だ
いつもの3人
今までと同じ光景
なんで……?
えみつんは表情は見えないけど、ただ、じっとその光景を見つめている
私もずっと3人を見続けていた
どのくらい時間が経ったのかな?
花陽ちゃんが
「…もういいよ、ありがとうね」
と言うと、他の2人は少し寂しそうな笑顔になった
「まぁいいって、長い付き合いなんでしょ?私たち」
「凛はこっちのかよちんも好きだったよ?」
そうか…
「また、会いたい時に会えるから…」
「凛だって、絶対絶対、すぐそばにいるはずだから…」
『またね!』
2人はそう言ってその場から離れていった
「えみつん、ゴメンね、ありがとう」
「最後の思い出、欲しくってさ、2人に事情話したら、いいよって」
「なにも疑いもせずに、付き合ってくれたんだ」
「最後じゃないよ!」
私はえみつんを遮って、花陽ちゃん、いや、久保さんに言う
「また会えるよ!だって約束したじゃん!2人ともまたねって言ったんだよ!」
「知ってるでしょ!あの2人は約束破ったりしないよ!」
「あの2人だけじゃない!μ’sのみんなも!また会えるんだ!絶対だよ!」
私は心の底から叫ぶ
頭なんかで考えていない、本当の気持ちを、久保さんにぶつける
すると
「穂乃果ちゃん、やっぱりえみつんにソックリだね」
久保さんは笑って
「リーダーにこう言われちゃ、しゃあないよね」
そう言うと、花陽ちゃんの体から、もう1人の、可憐な百合の花があらわれた
「はじめまして、かな、花陽」
久保さんは優しく笑いかける
「は、はじめまして、私、小泉花陽ですって知ってるか」
「ふふふっ、うん、よく知ってるよ、だって私、花陽の1番のファンだもん」
「私は久保ユリカって言うんだよ、まあみんなシカコとかシカちゃんって呼ぶし、そう呼んでね」
微笑みかける久保さんに、花陽ちゃんはちょっと見惚れちゃってるみたい
「ふわぁ、キレイ、ほんとに私の中の人?なんか、花陽なんかでごめんね?」
「私は一番のファンっていったじゃん、花陽なんか、なんて言ったら許さないよ!」
「ごめんなさい、そうだよね、シカちゃんがくれたこの幸せ、もっと自分に自信をもっていかなくちゃ、だよね」
「それじゃあ、シカちゃん、まず言わせてほしいの」
「ありがとう、あなたのおかげで私はここにいます」
「私の夢はシカちゃんやいろんな人のおかげで叶っていっています、私、どんくさいから少しずつだけど」
「でも頑張って、勇気を出したら、幸せすぎるって思うくらい、いろんなことができていって」
「でもそれはシカちゃんと一緒だから出来たんだって、今わかったんだ」
「だから、本当にありがとうございます、そしてこれからもよろしくね」
花陽ちゃんは恥ずかしそうにはにかむ
すると久保さんも、少しはにかみながら
「天使!私の花陽は天使だ!うれしいよ!すごいうれしい」
「わたしもね、いろんな夢があって、なかなか叶えられなくて、でもあきらめないで頑張ってる所であなたに出会えて」
「そしたらすごい事になっていって、自分でも分かんないくらいあっという間にいろんな事が起こっていって」
「でもいつも花陽と一緒だったから、負けないでがんばったよ、1人だったら頑張れない事でも2人だからがんばれんだ」
「だから、こちらこそありがとう、そしてこれからもよろしくね!」
2人は笑いあい
「ふふっ、私たち似てるのかな?」
「似てるも何も本人だしね」
そのまま自然と抱きしめ合う形となり、声を揃えて
『ありがとう』
「次会う時までにはシカちゃんに少しだけでも近づけるように頑張るから、花陽のこと見ていてね」
「私ももっと素敵な花陽になれるように頑張っちゃうんだから」
「あと実家の祭壇の花陽グッズもっと充実させておくから、見に来てね!」
「サイダンニカザッテアルノオ?」
「あはは」
「えへへ」
本当にありがとうね
久保さんが帰った日の夜
私は花陽ちゃんに呼び出されて、神田明神へ向かった
いつも花陽ちゃんが練習している場所へ行くと
「ごめんね?呼び出したりして」
「ちょっとお話し、聞いてほしくて」
花陽ちゃんはそのまま続ける
「私、自分は何も取りえがなくって、自信もなくって、あんまり自分の事、好きじゃなかったの」
「でもね、それは間違ってたって、最近思うようになって」
「なぜなら、私もμ’sの一員なんだって、自信じゃないけど、自覚を持ってきて」
「出来ないからやらないんじゃなくて、どうやったらできるのかって考えるようになったの」
「えへへ、みんなからは小さすぎる事かもしれないけど、私にとっては大きな一歩」
「きっと心の中にいる、もう一人の私が後押ししてくれたのかな?」
私は笑って
「後押しされたんじゃない、花陽ちゃんと久保さんは一緒に歩いているんだよ」
「だから、その一歩は2人の一歩、これからもずっと同じ道を歩いていくの」
花陽ちゃんもにこりと笑い
「うん!」
「穂乃果ちゃん!μ’sって最高だね!」
私は満面の笑顔で
「そうだよ!μ’sって最高なんだ!!」
花壇に咲く百合の花は、風に揺られて寄り添うように
いつまでも、いつまでも 輝いていた
第5章「陽の光の下、百合の花は輝く」 完
再開します
第6章「キミののぞみはアイなんだ!」
東京は神田にある、神田明神様
ずっとずっと昔からこの街を見守ってきたんだって
私は下町の老舗和菓子屋の娘ってこともあって、小さいころからよくお参りに来てたし、学校も近かったから、遊び場としても通ってた、大事な大事な思い出の場所
ここは、勝負事・商売繁盛、そして縁結びの神様として有名なんだ
そう、ということは、今の私に必要なもの、全てがまとめられているスーパースペシャルワンダフルなスピリチュアルスポットなんだ!
という訳で、最近ずっとお参りに来ているんだよ
私はこれでもスクールアイドル「μ’s」のリーダーをやっていて、ほぼ毎日のようにランニングを日課にしてるんだけど、そのコースにはここ、神田明神様も含まれてるんだ
今日も日課のランニング
終盤の階段ダッシュを
「うりゃーーっ!!」
ちょっと掛け声はアイドルらしくなかったけど、気合いは大事だからね!
ふうっ、さあ、休憩を兼ねたお参りの時間だよ
いつも通り5円玉を…
「よっと」
2礼2拍して
『神様!どうかμ’sのみんなと一緒に、ラブライブへ出場できますように!』
『あと、穂むらが商売繁盛して、穂乃果のお小遣いがグーンと増えますように!」
「///そ、そして海未ちゃんと、そ、その、こ、恋人に…なれますように」
よ、よし、今日はちゃんと言えた!
最後の1礼を終えた、その時
「ちょっとお願い事、多くない?」
「うわわをぉぉぉーーーー!!!!」
びっくりした!変な声でた!
振り向くと、そこには巫女服の女の子が
「の、希ちゃん!驚かせないでよー!」
私が驚いたからかどうかわからないが、満足そうな笑いをうかべ
「穂乃果ちゃん、驚きすぎじゃない?」
「ま、いいけど」
くうっ、お願いごとの時間が長かったからかな?全然気が付かなかったよ
でも、頭の中でお願い事してたから助かったよ、声に出てたら恥ずかしいどころじゃないもんね!
神様、ありがとう!
私が、神様へ感謝していると、希ちゃんは
「でも、お小遣いアップって商売繁盛と関係ある?あるのかな?ん?わかんないね」
「!んなっ!なんで、穂乃果のお願い事知ってるの!希ちゃんエスパー?」
つ、ついに希ちゃんはスピリチュアルパワーによってエスパー化しちゃったの?
「エスパーじゃなくても、普通に声に出してたら、聞こえるし」
…………えっ?私…声に出してたのぉ!
っということは…
「最後のやつは、多分範疇だと思うんだけど、5円じゃねぇ、サービス範囲越えてんじゃない?」
「そ、そんな―!!」
恥ずかしい上にお願いも聞いてもらえないなんて、私不幸すぎない?
「でも、これって願いっていうか、もう叶ってんじゃん、違うの?」
という希ちゃんの声は全く私に入るはずもなく、ただ私は
「もう今日の事は忘れて~!」
と叫びながら、走り去る事しかできなかった
この時、私は希ちゃんの様子が違うことに気がつかなかった
だってしょうがないじゃん!
恥ずかしかったんだからぁー!!!
次の日の朝、今日はいつもよりちょっとだけ、早起き
と言っても本当にほんのちょっとだけどね
「さすがに今日は遅刻できないもんね〜」
いつもと違ってノンビリと歩きながら並んで歩く親友達に話しかける
「穂乃果が普通に起きてくれれば遅刻なんてしないはずなんですけどねぇ」
うぐっ、痛いところをピンポイントでついてくるラブアローシューターは海未ちゃん
「まあまあ、海未ちゃん?今日は早起きできたんだから、明日からもきっと大丈夫だよ、ね?穂乃果ちゃん」
優しい口調でフォローを入れてくれるとこちらの天使はことりちゃん
性格はあんまり似てないけど、とっても小さい頃から、ずっといっしょの幼馴染
当然、これからもだけどね
いつもの3人、いつものようにおしゃべりしながら学校に到着
すると、校門で見慣れた姿が
「おはようございます」
「おはよう!絵里ちゃん!」
そう、そこには我が校の誇る賢く可愛い生徒会長が
今日は生徒会の風紀強化週間の一環で絵里ちゃん達生徒会が、朝から校門でお出迎えしてくれるんだ
そこで絵里ちゃんの応援も兼ねて頑張って早起きしてきたんだ
「おはよう、穂乃果、海未、ことり」
「キチンと時間通り、えらいえらい」
絵里ちゃんが素敵な笑顔で褒めてくれたよ!
「おはようございます、絵里、朝からご苦労様です」
「おはよう、絵里ちゃん!あとで差し入れ持っていくね」
海未ちゃんとことりちゃんもご挨拶
「ありがとう、生徒会の子たちも喜ぶわ」
とまたまたにっこり
少し前までは、ちょっと怖い人かと思ってたけど、μ’sに入ってからは本来の優しさが表に出てきて、ただでさえあった人気が更に倍増したんだよ!
あれ?ところで、いつも絵里ちゃんの隣にいるべきあの人がいないね?
「絵里ちゃん、希ちゃんは?」
そうなんだ、いつも隣にいるはずの希ちゃんがいない
ひょっとして、病気かなんかでお休み?
なんて、心配していると
「希は、いつも通りよ、はぁ、困っちゃう」
「?いつも通りなら、絵里ちゃんの隣にいるはずじゃないの?」
私は率直な疑問をぶつける
すると絵里ちゃんはもう一つため息を吐きながら
「何を言ってるの?穂乃果、確かに機嫌がいい時とかはそうかもしれないけど、普段は自由人だから、フラフラとしてるわよ、きっと」
すると海未ちゃんも
「本当に希も困ったものです、やる気がある時とない時の差が激しすぎます」
あれ?そうだったかな?
でもここで、ことり天使のフォローが
「でも、悪気があるわけじゃないし、いっつもニコニコしてるから、一緒にいると元気になっちゃうよね」
すると絵里ちゃんの目が、キラリと光り
「そうなの!もう、希ったら自分の興味のある時だけこっちに来て、ない時はどっかいっちゃって、本当に猫みたいな子よね」
「確かに、困ることも多いけど、元気付けられることが多いし、本当に困ってる時は一番に来てくれるの!一緒になって悩んでくれて、解決すると自分のことのように喜んでくれるの!」
「あとね、希ったら……」
うわわ?なんか始まったよ!
絵里ちゃんって本当に希ちゃんの事好きだなぁ
そんな生暖かい目で目で見ていると
「あーっ!なんかみんないるじゃん!おはよう!」
話題の人がやってきたよ
「おはよう!希ちゃん!」
「おはようございます」
「希ちゃん、おはよう!」
私達はそれぞれに挨拶する
「おはよう!みんなどうしたの?」
「おはようじゃないわよ!希、一体どこで何をやってたのよ?」
おぉっ!さすがに絵里ちゃんおこだね
希ちゃんは意に介さず答えた
「花陽ちゃんとアルパカ小屋にいたよ」
なんで?アルパカ小屋?
「もう、花陽のお手伝いもいいけど、こっちの仕事もキチンとやってよね」
そうか、お手伝いしてたんだ、ならしょうがないかな?
「いや、手伝ってはないけど」
手伝ってないんかい!
「じゃあなんでアルパカ小屋にいたのよ!」
そうだそうだ!
「いや、なんかさ、花陽ちゃんってアルパカと喋ってそうじゃない?」
た、確かに…
「いや、そんな訳ないでしょ?」
あれ?そうかな?
「うん、そんなことなかった」
なかったんかい!
「ずっと見てたけど、ただ花陽ちゃんが可愛いだけだったよ」
「で、飽きて戻ってきた訳ね」
「正解!さすがえりち!」
うーん、ザ自由って感じだね
「さすがじゃないわよ!ちゃんとやりなさい!」
あ、激おこになったかな?
でも当人は
「はーい」
明らかに興味ない返事だね、絶対サボるよ、これ
「ところで穂乃果ちゃん、昨日の神社でしてたお願い事さぁ…」
あぁ、早速飽きちゃったよ、また怒られるよどころじゃねぇ!何言ってんだこいつは!ちょっと待てはやまるな!
「昨日?穂乃果、明神様で何かお願い事を?」
一番絡んではいけない人が興味を持った!
「い、いや!なんのことかな?希ちゃん?よくわかんないんだけど?」
私は目配せで希ちゃんに合図する
お願い、気づいて、そして私の心を弄ぶのはやめてぇ!
でも希ちゃんは
「?」
可愛く首を傾げている
ダメだー!わかってなーい!
私は公開処刑を覚悟する
「お小遣いアップのための金運上昇のおまじないがあるんだって!」
「そっちかーい!!」
思わず思いっきりツッコミをいれる
ビックリさせないでよぉ〜、と胸を撫で下ろしたその時
「そっちということはもう一つあるのですか?」
しまったーー!!
希ちゃんの馬鹿〜!
これあれだよね?知ってるよ!ヤブヘビってやつだね
「い、いやぁ〜、な、何でもないんだよ?ねっ、希ちゃんってもう居ないし!」
ごまかそうとして振り向いた時には希ちゃんは既に絵里ちゃんの所へ
どんだけ飽きっぽいの!
そんなことより…
「?何か怪しいですね、あなたと希が結託するとあまりよろしくない結果しか想像できないのですが?」
海未ちゃんは完全に疑いモードに入っちゃった
「い、いやぁ、何でもないよ、ヒューヒュヒュー」
私は鳴らない口笛を吹いて誤魔化そうとするも、当然上手くいくはずもなく
「穂乃果、いらない隠し事は身を滅ぼしますよ?」
こうなったら
「何でもないヨーーーー!!!」
取り敢えずダッシュで逃げ出す
「コラー!待ちなさーい!」
海未ちゃんとの勝ち目のない追いかけっこの始まりだ!
追いかけっこの結果は私の勝利に終わり、今は屋上で一休み
えっ?何で勝てたかって?
それは
『うぇ〜〜ん!海未ちゃんのエッチ!』
『えっ?え、あ、あの穂乃果、な、何を言ってるんですか?』
ヒソヒソ、フウフゲンカ…ダンナノボウリョク…コマリガオノウミチャンカワイイヨォ…
『穂、穂乃果、もう怒ってませんから、泣き止んで下さい』
と、いう訳で完全勝利を勝ち取ったのだ
払った代償も大きすぎるが取り敢えず良し、だよ!
「東に向かって、ハラショー!!」
「西に向かって、はーいプシュ!」
「北に向かって……」
「…えみつん、何やってんの?」
「いや、希ちゃんが言ってた金運上昇のおまじないを」
などと、言っているこの金の亡者はえみつん
普段は私の鞄についているディフォルメマスコットだが、実は私に命を吹き込んでくれた恩人らしい
っていうか、そのおまじない1000%嘘だよね
「えっ…ウソ……」
いやいや、どれだけショックなの?
「そんなことより、今度は希ちゃんがおかしくなっちゃった!」
「いや……そん、な……」
「どんだけショックうけてんのさ!」
困った、このマモンがこんな感じでは…
「誰が強欲の悪魔か!」
あっ、戻ってきた、っていうか知ってたんだね、このネタ
「失礼しちゃうね!プンプン!」
見た目がマスコットなので、あまり怖くないが、取り敢えずあやまり、今回の中の人情報を聞く
「希ちゃんの中の人は、『楠田亜衣奈』ちゃん」
「みんなは『くっすん』って呼ぶよ」
かわいいニックネームだね!
「ちなみに私が呼び始めたんだけどね」
お前か!かわいいからいいけど
「くっすんはね、デビューが希ちゃんだったんだよ!」
「えっ?そうなの?」
「そう、くっすんはずっと希ちゃんと一緒に歩いて来たんだよ」
「すごい!素敵だね!」
私は素直に感動する
だってそうでしょ!なんか運命的なものを感じちゃうよね!
「そうだね、スピリチュアルだね」
えみつんがニコッと笑う
「それにね、くっすんってすっごくダンスが上手なんだよ!」
「すずと同じくらいかなぁ?いや、くっすんかなぁ?」
おぉっ、三森さんもかなり上手って言ってたけど、同じかそれ以上ってスッゴイね!
「ライブでもいっつもすっごい笑顔で踊ってるの!可愛いんだよ!」
明るい人なんだね!
「ずっと希ちゃんと一緒で、一緒に成長したんだって、言ってるよ」
「まぁ、中々いいことばっかりじゃなかったみたいだけど、それでもくっすん、頑張って確実にステップアップしてるんだよ」
人それぞれ、色々あるんだね
「ちなみにシカちゃんの孫で私の彼女で南條さんのお嫁さんだよ」
「イミワカンナイ!何それ?っていうか聞いていいやつなのかな?それ?」
「あはは、その位みんなに可愛がられてるってことだよ」
「とってもいい子なんだよ!」
なるほど、すぐみんなと仲良くなれるタイプなんだね
「でも、えみつん?」
私は、疑問に思ったことをえみつんに聞いてみる
「朝の様子だとなんかこう、自由人?っていうか、やりたい放題な感じがするんだけど」
「正解!」
あっ、正解しちゃった
「そうなんだよねぇ、自由なんだよねぇ」
「よく暴走してるんだよねぇ」
「えみつんが止めたりしないの?」
そう聞くとえみつんはすこぶる残念そうに
「いやぁ、残念ながら私も一緒に暴走して、りっぴーとかうっちーに怒られる側なんだよねぇ」
なるほどね、確かに残念だね
でも、誰だかわかんないけど止めてくれる人はいるんだね
「くっすんは止まんなかったりするけどね」
止まんないの?
「あっ、でも大丈夫だよ、いざとなったら南條さん呼んだら言うこと聞くから」
「ペットと飼い主か!」
私のツッコミに
「……否定ができないねぇ」
一体どんな人なのか?
わかるどころか、不安が増しただけのような気がするよ
それでも、希ちゃんのために頑張らなくちゃね!
「でも、えみつん?」
私は、疑問に思ったことをえみつんに聞いてみる
「朝の様子だとなんかこう、自由人?っていうか、やりたい放題な感じがするんだけど」
「正解!」
あっ、正解しちゃった
「そうなんだよねぇ、自由なんだよねぇ」
「よく暴走してるんだよねぇ」
「えみつんが止めたりしないの?」
そう聞くとえみつんはすこぶる残念そうに
「いやぁ、残念ながら私も一緒に暴走して、りっぴーとかうっちーに怒られる側なんだよねぇ」
なるほどね、確かに残念だね
でも、誰だかわかんないけど止めてくれる人はいるんだね
「くっすんは止まんなかったりするけどね」
止まんないの?
「あっ、でも大丈夫だよ、いざとなったら南條さん呼んだら言うこと聞くから」
「ペットと飼い主か!」
私のツッコミに
「……否定ができないねぇ」
一体どんな人なのか?
わかるどころか、不安が増しただけのような気がするよ
それでも、希ちゃんのために頑張らなくちゃね!
でも、聞いているうちに不思議な違和感
あれ?何だろう?いつもと雰囲気が違うけど
こう、ほのぼのとした中にも面白さがあり、ずっとこの雰囲気の中生きていたい、生きる希望が湧いてくるような気がしてくる
「今回も面白かったね!さすが絵里ちゃんと希ちゃんだね」
ことりちゃんがいうと
「全くです、前回の放送も人気投票で圧倒的に一位でしたが当然の結果と思います」
「い、一位!すごくないそれ!!」
私は思わず叫んでしまった、だってそうでしょ、一位だよ、一位!
「全く穂乃果は、確かに結果は驚きますがかなり前から、それこそ不動の人気となっているではありませんか」
「そうだよ、穂乃果ちゃん、何て言っても一部では『生きる希望』って呼ばれてるんだよ」
うわぁ、私の感想そのままだったよ
ふーん、でもあのノンビリした雰囲気は私の知ってる希ちゃんの感じがしたなぁ
よし、希ちゃんとお話しして色々聞いてみよう!
その後、休憩や放課後の練習の時、希ちゃんにアタックしようとするも、あっちへフラフラ、こっちにフラフラといった形で、結局2人でお話しはできずじまい
仕方ない、明日また挑戦かな?
ん?いや待てよ
そうだよ!希ちゃんといえば…
神田明神様だ!
その日の日課のランニング、いつも通りの通り道
階段をダッシュで駆け上がり…
「到着!」
いつもは休憩とお参りが目的だけど、今日のお目当は……
「あれ?いない」
いつもお掃除したり、おみくじの所にいるはずなのに、今日は姿が見えない
私は他の巫女さんに尋ねてみると
「今日は東條さんは巫女のご奉仕はお休みですよ」
残念!空振りだったよ
お礼を言って立ち去ろうとすると、その巫女さんは
「でも練習はいつもしているから、社殿の裏の方にいると思いますよ」
練習?いつも?そうなんだ
「有難うございます!」
私はお礼を言い社殿の裏にいくと…
本当だ!いた!
そこには一心不乱にダンスレッスンをする希ちゃんがいた
私はすぐに声をかけずに、ちょっと練習の見学
いっつも見られてるんだから別にちょっとくらいいいよね?
と思って見ていたんだけど…
「ダメ、これじゃ駄目だ」
「はぁっ、はぁっ、まだ、全然…」
「頑張らなくちゃ…出来るようにしなくちゃ…」
希ちゃんはとても辛そうに練習していた
疲れとかじゃない、嫌なことを無理やりやっているような、そんな感じに見えた
なんで?楠田さんはいっつも楽しそうに踊ってるって言ってたのに
希ちゃんと同化が始まってるなら、もっと楽しそうにダンスするんじゃないかって思ってたのに…
おかしいよ、こんなのダメだよ!
私はいつの間にか泣いていた
なんでかはわかんないけど、とても悲しかったんだ
「ん?穂乃果ちゃん?」
私が泣いていると、さすがに気づかれたようで希ちゃんがこちらへ声をかける
「えっ?泣いてるの?どうしたの?」
希ちゃんは私の心配をしてくれるがこっちはそれどころじゃない
「なんで、なんで希ちゃんはそんなに辛そうにしているの?」
「そ、それは練習がシンドイからかな?」
「ウソつかないで!なんでそんなに辛そうにしてるの?嫌なことしてるみたいに!」
そこまで言って私は号泣してしまった
あぁ、また泣いちゃった
でも、辛そうな希ちゃんを見ていると…
考えたくもないけど…
まるで、まるでμ’sにいることが辛いみたいで…
そんなの嫌なんだ!
私が泣き止みそうに無かったからか、希ちゃんは観念したかのように話し始めた
「穂乃果ちゃん、ゴメンね」
「穂乃果ちゃんの言う通り、いま、私辛いなって思いながら練習してたよ」
「でもね、聞いて欲しいの」
「これは、私がやりたくて、いや、やらなきゃいけない事なの」
昼間の希ちゃんからは想像もつかない真面目な口ぶりで話してくれる
私はまだ涙が出ているけど、声にならないような声で聞いてみる
「うっ、ひっく、な、なんで、やらなきゃって、イヤなのに?」
我ながら何を言ってるかわからないが、それでも希ちゃんは答えてくれた
「それは、私がμ’sでいるため」
「大好きなμ’s、そしてみんなと一緒に居られるようにするため」
「みんなの輝きを損なわないように、足を引っ張る事のないようにしないといけないから」
「だから私は練習するの」
μ’sを好きでいてくれるのはわかった
でも足を引っ張るなんて、誰もそんな事思ってないのに
「私はみんなと比べると、圧倒的に技量も魅力も足りていないから…」
「ゴメンね、穂乃果ちゃん、私、それでもμ’sでいたいの」
「大好きなみんなとずっとずっと、一緒にいたいの!!」
そこまで言ったとき、希ちゃんも泣き出してしまった
2人して泣いているもんだから、さすがに見かねたんだろうか
えみつんが人間モードでいつの間にか近くにいた
「そこの美少女2人組、なんか悲しい事でもあったの?」
程の悪いナンパみたいな事を言って話しかけてきた
「い、いえ、別にそういう訳では…」
希ちゃんが答える
びっくりはしたみたいだけど、相手が女性である事からそんなに警戒はしてないみたい
私の方はというと
ムスー!
拗ねていた
「おさげのお嬢さん、知ってる?」
「人はさ、楽しんでる奴が最強なんだよ」
「そしてね、最強の奴ってさ、輝いてるんだよ」
「お嬢さんは楽しんでる?」
希ちゃんはフルフルと首を横に振った
「じゃあさ、ダンスがどうのとか、歌がどうのとか言う前に、そんなのどうでもいいからさ、思いっきり楽しんでみなよ」
「お嬢さんが楽しんだら、間違いなく周りのみんなも楽しくなって、みんな一緒に輝けるよ!」
「あなたからみんなにパワー、あげてみたら?」
「…私から、みんなに?」
「そう、あなたなら出来るよ」
「だってあなたはスクールアイドルμ’sなんだから」
「私は、μ’sだから、出来る…?」
「そうだよ、違うの?」
私は居ても立っても居られなくなって、希ちゃんに叫んだ
「出来るよ!できるに決まってるよ!!だって希ちゃんはμ’sなんだから!」
「μ’sが全員揃ったら、できない事なんてないんだ!」
希ちゃんの目を見つめながら私は続ける
「μ’sの輝きは希ちゃんの輝きでもあるんだ、だってみんなと一緒にいるときの希ちゃんはあんなに楽しそうに輝いているんだから」
「他のみんなが輝いて見えるとしたら、それは希ちゃんが輝かせているからだよ!」
「私が…?」
「だから、みんなにその輝きパワーを分けてあげたら、みんなも輝いて、もっともっと自分たちも輝けるよ!」
「私に出来るかな?」
「希ちゃんにしか、できないことだよ?」
2人はにっこり笑い合う
「私、楽しむなんて考え、ちょっと忘れてた」
「うん!私、もっと楽しんで、周りのみんなも、もっともっと楽しんでもらえるようにするね!」
「希ちゃん!そうだよ!出来るよ!」
「だってもう私が楽しくなってきちゃったもん!」
希ちゃんは満面の笑みで
「うん!」
よーし!希ちゃんの元気も出たし、明日からはスッゴイ楽しくなりそうだね!
こんな私の予感は数日後、大当たりすることとなる…
あれから数日後の昼休み
今日は「のぞえりラジオガーデン」の放送日
楽しみにしている人も多いみたいで、いつもはざわついている教室がなんだからちょっと静かだね、と思っていると
『のぞえりラジオガーデン!』
始まったね!
この番組では冒頭に、私達のライブと、同じコール&レスポンスがあるんだ
放送でも、ノリのいい子は大っきな声でやってくれるんだよ
おっ、早速始まったね
『は〜い!かしこい、かわいい?』
『エリーチカ!!』
『ハラショー!μ’s絢瀬絵里です』
さすが絵里ちゃん!教室から普通にエリーチカコールが起こるとは
さぁ、続いて希ちゃんだ!
この前の約束通り、みんなを元気にしちゃうはずだよ!
『希パワー、たーっぷり注入!はーいプシュ!』
『いーただきましたぁーーー!!!』
轟くレスポンス
な、なにこれ?
ライブの時よりすごいんだけど?
私が驚いていると
「穂乃果?どうしたのですか?」
海未ちゃんが尋ねてくる
「ぼーっとしてはいけませんよ、あなたは可愛いんですからキチンとしなくては」
えっ、いま、なんて?
「ほら、パンばかりではなくご飯もたべなくては、私のご飯をあげますね、はいアーン」
えっ?えっ?あ、アーンって私に?
「どうしたのですか?あっ、もう、穂乃果は甘えん坊さんですね、恥ずかしいですが穂乃果のためですから」
「では、口移しでいきますね」
く、くちうつしぃー?
ありがとうございます!いただきます!
という心をギュッと抑えて
「う、海未ちゃん?あ、あの、私お腹空いてなくって…」
本当はお腹空いてるけど…
すると海未ちゃんは
「まぁ、ひょっとして体調が優れないのですか?」
「かわいそうに、私の穂乃果、私がギュッてしてあげますね」
と言って私を抱きしめ始めた
ふわぁ〜いいにおい、やわらかい、しあわせ〜
私がこの世の楽園を味わっていると、視界の端でことりちゃんが
「ほのうみキタァーーー!!」
と言ってなんか写真をガンガン撮っているのが見える
なにしてるのかな?
まぁ、幸せだしいいか、と思っていた時
「こら、穂乃果!いくよ!!」
うわっ、えみつんだ!
私を楽園から引き離そうというのか?
「あなた!私の穂乃果に何をするのです!」
海未ちゃん…私のために…キュン❤
「あー、えっとね園田さんちょっとお耳を拝借してもよろしいかしら?」
と言って何やらゴニョゴニョと
すると海未ちゃんは
「あ、あの、穂乃果…私、身を清めてお待ちしています…」
うわっ!顔真っ赤だし!何言いやがったのかなこいつは
「それじゃかりていくね!」
そう言うと、えみつんは私を安住の地から引っぺがして走り出す
「う、海未ちゃーん!」
海未ちゃんは夫を見送る妻のように、いつまでもいつまでも、手を振ってくれていた
「もー!えみつんなんなの?あんた一体なんなのさ!私の幸せを返せ!」
「うっさい!この色欲JK!本来の目的を忘れちゃダメでしょ!」
「本来の目的?私の目的はずっと前から海未ちゃんとの甘々な生活だよ!」
すると、えみつんはいつかのいやぁーな笑みを浮かべ
「それなら大丈夫だよ、さっきちゃーんと伝えたから…」
「!な、何を言った!さっき海未ちゃんに何を言ったんだ!」
「変なこと何も言ってないし」
「今日から、もう夫婦みたいなもんなんだからちゃんと旦那の仕事の事も考えてねって…」
「だからお見送りが奥様みたいだったのか!」
でも、確かに私にとって悪いことは特にないかな?
たまにはえみつんも役に立つね
「あと、今日から夫婦って事は今晩は初夜なのか〜って」
「おまえいつか絶対泣かすからな!覚えとけよ!!」
もうこの異変を解決して全てを無にするのが私の心の安寧をもたらす唯一の方法なのですね、神様
とにかく楠田さんと化しているであろう希ちゃんの所に行かねば
他の教室でも何やら起こっている様子で、1年の教室では花陽ちゃんが
「のぞえりは最高です!お姉様達の秘密の花園!あの2人のリアル感は堪りません!!」
と大演説を打っていたり
「凛はこんな風に腐ってるかよちんも好きだよ!いろんな意味で」
と爽やかに危険極まりない発言をしていたりと、なかなかのカオス状態
「ちょっとえみつん!これ一体なんなの?」
と、宿敵(とも)のえみつんに聞いてみる
「これは希ちゃんとくっすんの想いの暴走なんだろうね」
「昨日のみんなにパワーを分けてあげるとか、幸せになるとかいうのを具現化しちゃったんだろうね」
確かにみんなに幸せそうだったな
ん?という事は、海未ちゃんは……
いや、やめよう
まだまだ私は恋に恋する乙女なのだ
なんて事を考えていると、えみつんが
「あれ?そうしたらひょっとしてアドバイスとかした私のせい?」
「……ま、いっか」
「良くないよ!何とかしてよ!」
「穂乃果(とも)よ」
「お前を信じているぞ(ファイトだよ!)」
「意味わかんないルビで誤魔化すなぁー!(ファイトだよ!じゃねーっつーの!)」
希ちゃんの居そうな場所といえば
生徒会室?
「失礼します!」
勢い良くドアを開けると、そこには
「なに?穂乃果、びっくりするじゃない」
あれ?絵里ちゃん1人
「ゴメンね!絵里ちゃん、あの、希ちゃんは?一緒じゃないの?」
「私の希?私の希なら、また何処かフラフラと出かけていっちゃったわ」
「大方中庭辺りで他の子と遊んでるんじゃない?私というものがありながら」
「うん!わかった、ありがとう!」
「廊下は走っちゃダメよ」
私は、はーいと返事して中庭を目指す
絵里ちゃんのセリフに所々おかしな所があったような気がするが、絵里ちゃんだから仕方がないね
中庭を探していると…いた!
けど、絵里ちゃんが言うように誰かと遊んでるわけじゃなくて、花壇のお花に水をあげてるみたい
ちょっと意外、なんて言ったら怒られるかな?
「楠田、さん?」
私が声をかけると
「おぉっ!本物の穂乃果ちゃん!初めて見た!」
「握手して!」
「えぇっ、は、はい、初めまして」
グイグイくる楠田さんにちょっと気圧される
「穂乃果ちゃん!希と私をここまで連れてきてくれてありがとうね!」
「私達、スッゴイ幸せ!」
楠田さんは笑顔で語りかける
「という訳で、私ずっとここにいることになると思うんで、これからもよろしくね!」
さらっと恐ろしい発言をした次の瞬間
「ちょっと待たんかーい!」
と、えみつん登場
「あれ?えみつんじゃん!なんでいんの?」
「それはね、くっすんが悪い事してないか見張っとくためだよ」
「悪い事してないよ、みんなを幸せにしてるだけだし」
「でも、やり過ぎでしょ?」
「少しくらい派手な方が楽しくない?」
「…いや、やり過ぎはやっぱりダメでしょ」
えみつん、一瞬迷ったね
「えーっ!絶対そっちの方がいいって!」
「ねっ?一緒にやろ?ね?」
「……ちょっと、だけなら『いい訳ないじゃん!!』
「どんだけ意志が弱いんだよ!!」
全く、こっちは世界がかかってるのに!!
確かに楠田さんがお願い上手なのはわかるけど…
「穂乃果ちゃんも一緒にやろ!ねっ?」
おぅ、こ、これは気持ちが揺れ動くのもわかるけど、
「そうだよ、穂乃果もちょっとだけなら大丈夫だって」
「なんでえみつんがそっち側についてんの!」
こうなったら、一か八か
「わかりました、南條さんとうっちー?に来ていただいて判断を仰ぐ事とします」
私がそう言うと
「えーっ、南ちゃん関係ないじゃん!」
「う、うっちー来るの?ここに?えっ、い、いや、それはねちょっと……」
おぉっ!2人とも効いてるね、っていうか、えみつんビビりすぎてない?
楠田さんの方はと言うと
「うーん…まっいっか!」
「南ちゃんに怒られるの嫌だし、確かにここは希の世界だし」
「いいよ、元に戻るよ」
あっさり引き下がる
本当にサバサバした性格なんだね
「その代わりお願いあんだけど、いい?」
「お願い?」
「そう、2人きりでお話ししたいな、逃げたりしないから、ダメ?」
と、また、可愛いおねだり
でも今度は我慢しなくてもいいね!
「いいよ、希ちゃんもきっと喜んでくれるよ!」
「ありがとう」
楠田さんはそう言うと、希ちゃんの体からもう1人の姿が現れた
楠田さん、いや、くっすんかな
ちっちゃくてとっても可愛い人だね
「それじゃあ、2人とも、またね」
私はそう言うと、未だうっちーに怯えるポンコツと一緒に中庭から立ち去る
「楠田さんも希ちゃんも、キチンと言えるといいね」
私はなんとなく独り言をつぶやいた
2人きりになると、まず亜衣奈が語りかけた
「初めまして、そしてごめんね希」
「私じゃなかったら、もっともっと貴女は輝けたかもしれない」
「でも、私、私なりにだけど、頑張って、希と一緒に輝きたくて、いろんな事ガムシャラに頑張ったの」
亜衣奈は寂しそうに希を見つめる
すると今度は希が語りかける
「そしたら、ウチでごめんね、くっすん」
「私じゃなかったら、貴女はもっともっと、輝けたかもしれない」
すると、亜衣奈は必死な表情で
「そんなことないよ!私は希で良かったし希じゃないといやだよ!!私は希だったから頑張れたんだよ!!」
この言葉を聞いた希は、嬉しそうに笑い、
「うちもだよ、くっすん、同じだよ、気持ちは同じ、つながってるよ、ありがとうな」
と言い、亜衣奈を抱きしめた
「うぅ~、私に演じられていたくせに生意気だー、私のが年上なのに」
「ふふっ、うちのがお姉さんみたいやね」
「くっすん、私に素敵な世界ををくれてありがとう、あなたのおかげでみんなと一緒に夢をかなえられたよ」
「あなたのおかげでこれからもずっとみんなと一緒に歩んでいけるよ、大好き、ありがとう」
亜衣奈も競うように笑い
「希、私をここまで連れてきてくれてありがとう、辛いこともいっぱいあったけど、それ以上に楽しい事もいっぱいあったよ!」
「私、あなたがいたから頑張れたんだよ!」
そう言うと、亜衣奈は笑みをイタズラっぽい笑みと替え
「もっともっと頑張って次会うときは私のほうがお姉さんだって解らせてやるんだから」
「あと言っとくけど、私のほうが好きだから、んーと、千倍くらい?」
「えー、ほなウチは一万倍!」
「じゃあ私一億倍だし」
「ほなウチは一兆倍やでー」
…クスクス『スピリチュアルやね!』
2人の心からの笑顔が花壇の花とともに、キラキラと輝く
「それじゃ、またね、希」
「うん、またね、くっすん」
爽やかな風が、2輪の花をいつまでも靡かせていた
その日の夜
日課となったランニング
いつもの時間
いつもの場所
いつもの神社にいつも通り希ちゃんはいた
「穂乃果ちゃん、ありがとうな」
「くっすんの記憶を共有して知ったけど、色々苦労してるみたいやね?」
希ちゃんは少し申し訳なさそうに、私に話しかけてきた
「穂乃果は全然平気だよ!」
「苦労どころか、みんなのために頑張れるのってすごい嬉しいんだ!」
「凄いんだよ!みんな本当に、心の底からμ’sが大好きなの!」
「希ちゃんもそうでしょ?」
私がたずねると
「うん!そうだよ!」
キラキラ笑顔で答えてくれる
「私もくっすんも、μ’sに居られるように頑張ってたけど、それは間違いだったんだってわかったの」
「だってμ’sは全員揃ってμ’s」
「私もμ’sなんだ、この輝きは私の輝きでもあるんだ」
「だから、私は大好きなμ’sのために頑張るんだって考えたら、なんだか全部の事が楽しくなっちゃった!」
そう言うと希ちゃんは、スピリチュアルやね、と言ってウインクした
「この出会いはきっと奇跡」
「でも、その奇跡はきっとみんなの想いが起こした事やないんかな?」
「だから、私はここに居るんだね」
そして、希ちゃんは空を見上げて語りかけるように呟いた
「ねっ?くっすん」
神田の夜空は明るいけれど、今日は不思議といつもより多くの星が、色んな光でみんなを楽しませている
そんな不思議で楽しい空だった
第6章「キミののぞみはアイなんだ!」 完
希ちゃんのお話で書き込み漏れがありました
後で抜け分投稿し直します
希ちゃんのお話で書き込み漏れがありました
後で抜け分投稿し直します
希ちゃんのお話で書き込み漏れがありました
後で投稿します
なんかPC調子悪いです
折角ですので希ちゃんのお話最初からあげなおします
というわけで246-300は無しということで
内容はほぼ同じですが、268と269の間に少し抜けがありましたので追加があります
などと書いていますが、読んでくれている人っているんですかねぇ?
とりあえず再開、というか再掲します
第6章「キミののぞみはアイなんだ!」
東京は神田にある、神田明神様
ずっとずっと昔からこの街を見守ってきたんだって
私は下町の老舗和菓子屋の娘ってこともあって、小さいころからよくお参りに来てたし、学校も近かったから、遊び場としても通ってた、大事な大事な思い出の場所
ここは、勝負事・商売繁盛、そして縁結びの神様として有名なんだ
そう、ということは、今の私に必要なもの、全てがまとめられているスーパースペシャルワンダフルなスピリチュアルスポットなんだ!
という訳で、最近ずっとお参りに来ているんだよ
私はこれでもスクールアイドル「μ’s」のリーダーをやっていて、ほぼ毎日のようにランニングを日課にしてるんだけど、そのコースにはここ、神田明神様も含まれてるんだ
今日も日課のランニング
終盤の階段ダッシュを
「うりゃーーっ!!」
ちょっと掛け声はアイドルらしくなかったけど、気合いは大事だからね!
ふうっ、さあ、休憩を兼ねたお参りの時間だよ
いつも通り5円玉を…
「よっと」
2礼2拍して
『神様!どうかμ’sのみんなと一緒に、ラブライブへ出場できますように!』
『あと、穂むらが商売繁盛して、穂乃果のお小遣いがグーンと増えますように!」
「///そ、そして海未ちゃんと、そ、その、こ、恋人に…なれますように」
よ、よし、今日はちゃんと言えた!
最後の1礼を終えた、その時
「ちょっとお願い事、多くない?」
「うわわをぉぉぉーーーー!!!!」
びっくりした!変な声でた!
振り向くと、そこには巫女服の女の子が
「の、希ちゃん!驚かせないでよー!」
私が驚いたからかどうかわからないが、満足そうな笑いをうかべ
「穂乃果ちゃん、驚きすぎじゃない?」
「ま、いいけど」
くうっ、お願いごとの時間が長かったからかな?全然気が付かなかったよ
でも、頭の中でお願い事してたから助かったよ、声に出てたら恥ずかしいどころじゃないもんね!
神様、ありがとう!
私が、神様へ感謝していると、希ちゃんは
「でも、お小遣いアップって商売繁盛と関係ある?あるのかな?ん?わかんないね」
「!んなっ!なんで、穂乃果のお願い事知ってるの!希ちゃんエスパー?」
つ、ついに希ちゃんはスピリチュアルパワーによってエスパー化しちゃったの?
「エスパーじゃなくても、普通に声に出してたら、聞こえるし」
…………えっ?私…声に出してたのぉ!
っということは…
「最後のやつは、多分範疇だと思うんだけど、5円じゃねぇ、サービス範囲越えてんじゃない?」
「そ、そんな―!!」
恥ずかしい上にお願いも聞いてもらえないなんて、私不幸すぎない?
「でも、これって願いっていうか、もう叶ってんじゃん、違うの?」
という希ちゃんの声は全く私に入るはずもなく、ただ私は
「もう今日の事は忘れて~!」
と叫びながら、走り去る事しかできなかった
この時、私は希ちゃんの様子が違うことに気がつかなかった
だってしょうがないじゃん!
恥ずかしかったんだからぁー!!!
次の日の朝、今日はいつもよりちょっとだけ、早起き
と言っても本当にほんのちょっとだけどね
「さすがに今日は遅刻できないもんね〜」
いつもと違ってノンビリと歩きながら並んで歩く親友達に話しかける
「穂乃果が普通に起きてくれれば遅刻なんてしないはずなんですけどねぇ」
うぐっ、痛いところをピンポイントでついてくるラブアローシューターは海未ちゃん
「まあまあ、海未ちゃん?今日は早起きできたんだから、明日からもきっと大丈夫だよ、ね?穂乃果ちゃん」
優しい口調でフォローを入れてくれるとこちらの天使はことりちゃん
性格はあんまり似てないけど、とっても小さい頃から、ずっといっしょの幼馴染
当然、これからもだけどね
いつもの3人、いつものようにおしゃべりしながら学校に到着
すると、校門で見慣れた姿が
『おはようございます』
おっ!やってるやってる
「おはよう!絵里ちゃん!」
そう、そこには我が校の誇る賢く可愛い生徒会長が
今日は生徒会の風紀強化週間の一環で絵里ちゃん達生徒会が、朝から校門でお出迎えしてくれるんだ
そこで絵里ちゃんの応援も兼ねて頑張って早起きしてきたんだよ
「おはよう、穂乃果、海未、ことり」
「キチンと時間通りね、えらいえらい」
絵里ちゃんが素敵な笑顔で褒めてくれたよ!
「おはようございます、絵里、朝からご苦労様です」
「おはよう、絵里ちゃん!あとで差し入れ持っていくね」
海未ちゃんとことりちゃんもご挨拶
「ありがとう、生徒会の子たちも喜ぶわ」
とまたまたにっこり
少し前までは、ちょっと怖い人かと思ってたけど、μ’sに入ってからは本来の優しさが表に出てきて、ただでさえあった人気が更に倍増したんだよ!
あれ?ところで、いつも絵里ちゃんの隣にいるべきあの人がいないね?
「絵里ちゃん、希ちゃんは?」
そうなんだ、いつも隣にいるはずの希ちゃんがいない
ひょっとして、病気かなんかでお休み?
なんて、心配していると
「希は、いつも通りよ、はぁ、困っちゃう」
と絵里ちゃんは深いため息
「?いつも通りなら、絵里ちゃんの隣にいるはずじゃないの?」
私は率直な疑問をぶつける
すると絵里ちゃんはもう一つため息を吐きながら
「何を言ってるの?穂乃果、確かに機嫌がいい時とかはそうかもしれないけど、普段は自由人だから、フラフラとしてるわよ、きっと」
すると海未ちゃんも
「本当に希も困ったものです、やる気がある時とない時の差が激しすぎます」
あれ?そうだったかな?
でもここで、ことり天使のフォローが
「でも、悪気があるわけじゃないし、いっつもニコニコしてるから、一緒にいると元気になっちゃうよね」
すると絵里ちゃんの目が、キラリと光り
「そうなの!もう、希ったら自分の興味のある時だけこっちに来て、ない時はどっかいっちゃって、本当に猫みたいな子よね」
「確かに、困ることも多いけど、元気付けられることが多いし、本当に困ってる時は一番に来てくれるの!一緒になって悩んでくれて、解決すると自分のことのように喜んでくれるの!」
「あとね、希ったら……」
うわわ?なんか始まったよ!
絵里ちゃんって本当に希ちゃんの事好きだなぁ
そんな生暖かい目で目で見ていると
「あーっ!なんかみんないるじゃん!おはよう!」
話題の人がやってきたよ
「おはよう!希ちゃん!」
「おはようございます」
「希ちゃん、おはよう!」
私達はそれぞれに挨拶する
「おはよう!みんなどうしたの?」
「おはようじゃないわよ!希、一体どこで何をやってたのよ?」
おぉっ!さすがに絵里ちゃんおこだね
でも、希ちゃんは意に介さず答えた
「花陽ちゃんとアルパカ小屋にいたよ」
なんで?アルパカ小屋?
「もう、花陽のお手伝いもいいけど、こっちの仕事もキチンとやってよね」
そうか、お手伝いしてたんだ、ならしょうがないかな?
「いや、手伝ってはないけど」
手伝ってないんかい!
「じゃあなんでアルパカ小屋にいたのよ!」
そうだそうだ!
「いや、なんかさ、花陽ちゃんってアルパカと会話してそうじゃない?」
た、確かに…
「いや、そんな訳ないでしょ?」
あれ?そうかな?
「うん、そんなことなかった」
なかったんかい!
「ずっと見てたけど、ただ花陽ちゃんが可愛いだけだったよ」
「で、飽きて戻ってきた訳ね」
「正解!さすがえりち!」
うーん、ザ自由って感じだね
「さすがじゃないわよ!ちゃんとやりなさい!」
あ、激おこになったかな?
でも当人は
「はーい」
明らかに興味ない返事だね、絶対サボるよ、これ
「ところで穂乃果ちゃん、昨日の神社でしてたお願い事さぁ…」
あぁ、早速飽きちゃったよ、また怒られるどころじゃねぇ!何言ってんだこいつは!ちょっと待てはやまるな!
「昨日?穂乃果、明神様で何かお願い事を?」
一番絡んではいけない人が興味を持った!
「い、いや!なんのことかな?希ちゃん?よくわかんないんだけど?」
私は目配せで希ちゃんに合図する
お願い、気づいて、そして私の心を弄ぶのはやめてぇ!
でも希ちゃんは
「?」
可愛く首を傾げている
ダメだー!わかってなーい!
私は公開処刑を覚悟する
「お小遣いアップのための金運上昇のおまじないがあるんだって!」
「そっちかーい!!」
思わず思いっきりツッコミをいれる
ビックリさせないでよぉ〜、と胸を撫で下ろしたその時
「そっちということはもう一つあるのですか?」
しまったーー!!
希ちゃんの馬鹿〜!
これあれだよね?知ってるよ!ヤブヘビってやつだね
「い、いやぁ〜、な、何でもないんだよ?ねっ、希ちゃんってもう居ないし!」
ごまかそうとして振り向いた時には希ちゃんは既に絵里ちゃんの所へ
どんだけ飽きっぽいの!
そんなことより…
「?何か怪しいですね、あなたと希が結託するとあまりよろしくない結果しか想像できないのですが?」
海未ちゃんは完全に疑いモードに入っちゃった
「い、いやぁ、何でもないよ、ヒューヒュヒュー」
私は鳴らない口笛を吹いて誤魔化そうとするも、当然上手くいくはずもなく
「穂乃果、いらない隠し事は身を滅ぼしますよ?」
こうなったら
「何でもないヨーーーー!!!」
取り敢えずダッシュで逃げ出す
「コラー!待ちなさーい!」
海未ちゃんとの勝ち目のない追いかけっこの始まりだ!
追いかけっこの結果は私の勝利に終わり、今は屋上で一休み
えっ?何で勝てたかって?
それは
『うぇ〜〜ん!海未ちゃんのエッチ!』
『えっ?え、あ、あの穂乃果、な、何を言ってるんですか?』
ヒソヒソ、フウフゲンカ…ダンナノボウリョク…コマリガオノウミチャンカワイイヨォ…
『穂、穂乃果、もう怒ってませんから、泣き止んで下さい』
と、いう訳で完全勝利を勝ち取ったのだ
払った代償も大きすぎるが取り敢えず良し、だよ!
「東に向かって、ハラショー!!」
「西に向かって、はーいプシュ!」
「北に向かって……」
「…えみつん、何やってんの?」
「いや、希ちゃんが言ってた金運上昇のおまじないを」
などと、言っているこの金の亡者はえみつん
普段は私の鞄についているディフォルメマスコットだが、実は私に命を吹き込んでくれた恩人らしい
っていうか、そのおまじない1000%嘘だよね
「えっ…ウソ……」
いやいや、どれだけショックなの?
「そんなことより、今度は希ちゃんがおかしくなっちゃった!」
「え?いや……そん、な……」
「どんだけショックうけてんのさ!」
困った、このマモンがこんな感じでは…
「誰が強欲の悪魔か!」
あっ、戻ってきた、っていうか知ってたんだね、このネタ
「失礼しちゃうね!プンプン!」
見た目がマスコットなので、あまり怖くないが、取り敢えずあやまり、今回の中の人情報を聞く
「希ちゃんの中の人は、『楠田亜衣奈』ちゃん」
「みんなは『くっすん』って呼ぶよ」
かわいいニックネームだね!
「ちなみに私が呼び始めたんだけどね」
お前か!かわいいからいいけど
「くっすんはね、デビューが希ちゃんだったんだよ!」
「えっ?そうなの?」
「そう、くっすんはずっと希ちゃんと一緒に歩いて来たんだよ」
「すごい!素敵だね!」
私は素直に感動する
だってそうでしょ!なんか運命的なものを感じちゃうよね!
「そうだね、スピリチュアルだね」
えみつんがニコッと笑う
「それにね、くっすんってすっごくダンスが上手なんだよ!」
「すずと同じくらいかなぁ?いや、くっすんかなぁ?」
おぉっ、三森さんもかなり上手って言ってたけど、同じかそれ以上ってスッゴイね!
「ライブでもいっつもすっごい笑顔で踊ってるの!可愛いんだよ!」
明るい人なんだね!
「ずっと希ちゃんと一緒で、一緒に成長したんだって、言ってるよ」
「まぁ、中々いいことばっかりじゃなかったみたいだけど、それでもくっすん、頑張って確実にステップアップしてるんだよ」
人それぞれ、色々あるんだね
「ちなみにシカちゃんの孫で私の彼女で南條さんのお嫁さんだよ」
「イミワカンナイ!何それ?っていうか聞いていいやつなのかな?それ?」
「あはは、その位みんなに可愛がられてるってことだよ」
「とってもいい子なんだよ!」
なるほど、すぐみんなと仲良くなれるタイプなんだね
「でも、えみつん?」
私は、疑問に思ったことをえみつんに聞いてみる
「朝の様子だとなんかこう、自由人?っていうか、やりたい放題な感じがするんだけど」
「正解!」
あっ、正解しちゃった
「そうなんだよねぇ、自由なんだよねぇ」
「よく暴走してるんだよねぇ」
「えみつんが止めたりしないの?」
そう聞くとえみつんはすこぶる残念そうに
「いやぁ、残念ながら私も一緒に暴走して、りっぴーとかうっちーに怒られる側なんだよねぇ」
なるほどね、確かに残念だね
でも、誰だかわかんないけど止めてくれる人はいるんだね
「くっすんは止まんなかったりするけどね」
「止まんないの!?」
「あっ、でも大丈夫だよ、いざとなったら南條さん呼んだら言うこと聞くから」
「ペットと飼い主か!」
私のツッコミに
「……否定ができないねぇ」
一体どんな人なのか?
わかるどころか、不安が増しただけのような気がするよ
それでも、希ちゃんのために頑張らなくちゃね!
取り敢えず希ちゃんとお話ししてみよう
でも、希ちゃんを制御できる気がしないよぉ〜
お昼を食べながらちょっと考えよう、と思っているところに
「のぞえりラジオガーデン!」
あっ今日はμ’sの生徒会コンビの校内放送の日だ!
今、校内放送で流れているものは、μ’sのスクールアイドルとしての活動の一環でいわゆるウェブラジオっていうやつなんだ!
スクールアイドルの公式のサイトで色んなグループが自由に録音したものを放送できるものなんだけど、この2人の放送はすごいノンビリしてて独特の雰囲気があってかなり人気があるんだ
私も2人のおしゃべり大好きだからちょっと現実を忘れて聞いちゃおう
でも、聞いているうちに不思議な感じ
何だろう?いつもと雰囲気が違うから?
こう、ほのぼのとした中にも面白さがあり、ずっとこの雰囲気の中生きていたい、生きる希望が湧いてくるような気がしてくる
「今回も面白かったね!さすが絵里ちゃんと希ちゃんだね」
ことりちゃんがいうと
「全くです、前回の放送も人気投票で圧倒的に一位でしたが当然の結果と思います」
「い、一位!すごくないそれ!!」
私は思わず叫んでしまった、だってそうでしょ、一位だよ、一位!
「全く穂乃果は、確かに結果は驚きますがかなり前から、それこそ不動の人気となっているではありませんか」
「そうだよ、穂乃果ちゃん、何て言っても一部では『生きる希望』って呼ばれてるんだよ」
うわぁ、私の感想そのままだったよ
ふーん、でもあのノンビリした雰囲気は私の知ってる希ちゃんの感じがしたなぁ
よし、希ちゃんとお話しして色々聞いてみよう!
その後、休憩や放課後の練習の時、希ちゃんにアタックしようとするも、あっちへフラフラ、こっちにフラフラといった形で、結局2人でお話しはできずじまい
仕方ない、明日また挑戦かな?
ん?いや待てよ
そうだよ!希ちゃんといえば…
神田明神様だ!
その日の日課のランニング、いつも通りの通り道
階段をダッシュで駆け上がり…
「到着!」
いつもは休憩とお参りが目的だけど、今日のお目当は……
「あれ?いない」
いつもお掃除したり、おみくじの所にいるはずなのに、今日は姿が見えない
私は他の巫女さんに尋ねてみると
「今日は東條さんは巫女のご奉仕はお休みですよ」
残念!空振りだったよ
お礼を言って立ち去ろうとすると、その巫女さんは
「でも練習はいつもしているから、社殿の裏の方にいると思いますよ」
練習?いつも?そうなんだ
「有難うございます!」
私はお礼を言い社殿の裏にいくと…
本当だ!いた!
そこには一心不乱にダンスレッスンをする希ちゃんがいた
私はすぐに声をかけずに、ちょっと練習の見学
いっつも見られてるんだから別にちょっとくらいいいよね?
と思って見ていたんだけど…
「ダメ、これじゃ駄目だ」
「はぁっ、はぁっ、まだ、全然…」
「頑張らなくちゃ…出来るようにしなくちゃ…」
希ちゃんはとても辛そうに練習していた
疲れとかじゃない、嫌なことを無理やりやっているような、そんな感じに見えた
なんで?楠田さんはいっつも楽しそうに踊ってるって言ってたのに
希ちゃんと同化が始まってるなら、もっと楽しそうにダンスするんじゃないかって思ってたのに…
おかしいよ、こんなのダメだよ!
私はいつの間にか泣いていた
なんでかはわかんないけど、とても悲しかったんだ
「ん?穂乃果ちゃん?」
私が泣いていると、さすがに気づかれたようで希ちゃんがこちらへ声をかける
「えっ?泣いてるの?どうしたの?」
希ちゃんは私の心配をしてくれるがこっちはそれどころじゃない
「なんで、なんで希ちゃんはそんなに辛そうにしているの?」
「そ、それは練習がシンドイからかな?」
「ウソつかないで!なんでそんなに辛そうにしてるの?嫌なことしてるみたいに!」
そこまで言って私は号泣してしまった
あぁ、また泣いちゃった
でも、辛そうな希ちゃんを見ていると…
考えたくもないけど…
まるで、まるでμ’sにいることが辛いみたいで…
そんなの嫌なんだ!
私が泣き止みそうに無かったからか、希ちゃんは観念したかのように話し始めた
「穂乃果ちゃん、ゴメンね」
「穂乃果ちゃんの言う通り、いま、私辛いなって思いながら練習してたよ」
「でもね、聞いて欲しいの」
「これは、私がやりたくて、いや、やらなきゃいけない事なの」
希ちゃんは昼間からは想像もつかない真面目な口ぶりで話してくれる
私はまだ涙が出ているけど、声にならないような声で聞いてみる
「うっ、ひっく、な、なんで、やらなきゃって、イヤなのに?」
我ながら何を言ってるかわからないが、それでも希ちゃんは答えてくれた
「それは、私がμ’sでいるため」
「大好きなμ’s、そしてみんなと一緒に居られるようにするため」
「みんなの輝きを損なわないように、足を引っ張る事のないようにしないといけないから」
「だから私は練習するの」
μ’sを好きでいてくれるのはわかった
でも足を引っ張るなんて、誰もそんな事思ってないのに
「私はみんなと比べると、圧倒的に技量も魅力も足りていないから…」
「ゴメンね、穂乃果ちゃん、私、それでもμ’sでいたいの」
「大好きなみんなとずっとずっと、一緒にいたいの!!」
そこまで言ったとき、希ちゃんも泣き出してしまった
2人して泣いているもんだから、さすがに見かねたんだろうか
えみつんが人間モードでいつの間にか近くにいた
「そこの美少女2人組、なんか悲しい事でもあったの?」
程の悪いナンパみたいな事を言って話しかけてきた
「い、いえ、別にそういう訳では…」
希ちゃんが答える
びっくりはしたみたいだけど、相手が女性である事からそんなに警戒はしてないみたい
私の方はというと
ムスー!!
拗ねていた
えみつんはそんな私を横目に、希ちゃんに語りかける
「おさげのお嬢さん、知ってる?」
「人はさ、楽しんでる奴が最強なんだよ」
「そしてね、最強の奴ってさ、輝いてるんだよ」
「お嬢さんは楽しんでる?」
希ちゃんはフルフルと首を横に振った
「じゃあさ、ダンスがどうのとか、歌がどうのとか言う前に、そんなのどうでもいいからさ、思いっきり楽しんでみなよ」
「お嬢さんが楽しんだら、間違いなく周りのみんなも楽しくなって、みんな一緒に輝けるよ!」
「あなたからみんなにパワー、あげてみたら?」
「…私から、みんなに?」
「そう、あなたなら出来るよ」
「だってあなたはスクールアイドルμ’sなんだから」
「私は、μ’sだから、出来る…?」
「そうだよ、違うの?」
私は居ても立っても居られなくなって、希ちゃんに叫んだ
「出来るよ!できるに決まってるよ!!だって希ちゃんはμ’sなんだから!」
「μ’sが全員揃ったら、できない事なんてないんだ!」
希ちゃんの目を見つめながら私は続ける
「μ’sの輝きは希ちゃんの輝きでもあるんだ、だってみんなと一緒にいるときの希ちゃんはあんなに楽しそうに輝いているんだから」
「他のみんなが輝いて見えるとしたら、それは希ちゃんが輝かせているからだよ!」
「私が…?」
「だから、みんなにその輝きパワーを分けてあげたら、みんなも輝いて、もっともっと自分たちも輝けるよ!」
希ちゃんは目を潤ませたまま
「私に出来るかな?」
と私に問いかける
だから私は笑顔でこう答えた
「希ちゃんにしか、できないことだよ?」
2人はにっこり笑い合う
「私、楽しむなんて考え、ちょっと忘れてた」
「うん!私、もっと楽しんで、周りのみんなも、もっともっと楽しんでもらえるようにするね!」
「希ちゃん!そうだよ!出来るよ!」
「だってもう私が楽しくなってきちゃったもん!」
希ちゃんは満面の笑みで
「うん!」
よーし!希ちゃんの元気も出たし、明日からはスッゴイ楽しくなりそうだね!
こんな私の予感は数日後、大当たりすることとなる…
スピリチュアルやねぇ……
数日後の昼休み
今日は「のぞえりラジオガーデン」の放送日
楽しみにしている人も多いみたいで、いつもはざわついている教室がなんだからちょっと静かだなぁ、なんて思っていると
『のぞえりラジオガーデン!』
始まったね!
この番組では冒頭に、私達のライブと、同じコール&レスポンスがあるんだ
放送でも、ノリのいい子は大っきな声でやってくれるんだよ
おっ、早速始まったね
『は〜い!かしこい、かわいい?』
『エリーチカ!!』
『ハラショー!μ’s絢瀬絵里です』
さすが絵里ちゃん!教室から普通にエリーチカコールが起こるとは
さぁ、続いて希ちゃんだ!
この前の約束通り、みんなを元気にしちゃうはずだよ!
『希パワー、たーっぷり注入!はーいプシュ!』
その時…
『いーただきましたぁーーー!!!』
轟くレスポンス
な、なにこれ?
ライブの時よりすごいんだけど?
私が驚いていると
「穂乃果?どうしたのですか?」
海未ちゃんが尋ねてくる
「ぼーっとしてはいけませんよ、あなたは可愛いんですからキチンとしなくては」
えっ、いま、なんて?
「ほら、パンばかりではなくご飯もたべなくては、私のご飯をあげますね、はいアーン」
えっ?えっ?あ、アーンって私に?
「どうしたのですか?あっ、もう、穂乃果は甘えん坊さんですね、恥ずかしいですが穂乃果のためですから」
「では、口移しでいきますね」
く、くちうつしぃー?
ありがとうございます!いただきます!
という心をギュッと抑えて
「う、海未ちゃん?あ、あの、私お腹空いてなくって…」
本当はお腹空いてるけど…
すると海未ちゃんは
「まぁ、ひょっとして体調が優れないのですか?」
「かわいそうに、私の穂乃果、私がギュッてしてあげますね」
と言って私を抱きしめ始めた
ふわぁ〜いいにおい、やわらかい、しあわせ〜
私がこの世の楽園を味わっていると、視界の端でことりちゃんが
「ほのうみキタァーーー!!」
と言ってなんか写真をガンガン撮っているのが見える
なにしてるのかな?
まぁ、幸せだしいいか、と思っていた時
「こら、穂乃果!いくよ!!」
うわっ、えみつんだ!
私を楽園から引き離そうというのか?
「あなた!私の穂乃果に何をするのです!」
海未ちゃん…私のために…キュン❤
「あー、えっとね園田さんちょっとお耳を拝借してもよろしいかしら?」
と言って何やらゴニョゴニョと
すると海未ちゃんは
「あ、あの、穂乃果…私、身を清めてお待ちしています…」
うわっ!顔真っ赤だし!何言いやがったのかなこいつは
「それじゃ借りていくね!」
そう言うと、えみつんは私を安住の地から引っぺがして走り出す
「う、海未ちゃーん!」
海未ちゃんは夫を見送る妻のように、いつまでもいつまでも、手を振ってくれていた
「もー!えみつんなんなの?あんた一体なんなのさ!私の幸せを返せ!」
「うっさい!この色欲JK!本来の目的を忘れちゃダメでしょ!」
「本来の目的?私の目的はずっと前から海未ちゃんとの甘々な生活だよ!」
すると、えみつんはいつかのいやぁーな笑みを浮かべ
「それなら大丈夫だよ、さっきちゃーんと伝えたから…」
「!な、何を言った!さっき海未ちゃんに何を言ったんだ!」
「変なこと何も言ってないし」
「今日から、もう夫婦みたいなもんなんだからちゃんと旦那の仕事の事も考えてねって…」
「だからお見送りが奥様みたいだったのか!」
でも、確かに私にとって悪いことは特にないかな?
たまにはえみつんも役に立つね
「あと、今日から夫婦って事は今晩は初夜なのか〜って」
「おまえいつか絶対泣かすからな!覚えとけよ!!」
もうこの異変を解決して全てを無にするのが私の心の安寧をもたらす唯一の方法なのですね、神様
とにかく楠田さんと化しているであろう希ちゃんの所に行かねば
他の教室でも何やら起こっている様子で、1年の教室では花陽ちゃんが
「のぞえりは最高です!お姉様達の秘密の花園!あの2人のリアル感は堪りません!!」
と大演説を打っていたり
「凛はこんな風に腐ってるかよちんも好きだよ!いろんな意味で」
と爽やかに危険極まりない発言をしていたりと、なかなかのカオス状態
「ちょっとえみつん!これ一体なんなの?」
と、宿敵(とも)のえみつんに聞いてみる
「これは希ちゃんとくっすんの想いの暴走なんだろうね」
「昨日のみんなにパワーを分けてあげるとか、幸せになるとかいうのを具現化しちゃったんだろうね」
確かにみんなに幸せそうだったな
ん?という事は、海未ちゃんは……
いや、やめよう
まだまだ私は恋に恋する乙女なのだ
なんて事を考えていると、えみつんが
「あれ?そうしたらひょっとしてアドバイスとかした私のせい?」
「……ま、いっか」
「良くないよ!何とかしてよ!」
するとこちらを見つめながら
「穂乃果(とも)よ」
「お前を信じているぞ(ファイトだよ!)」
「意味わかんないルビで誤魔化すなぁー!(ファイトだよ!じゃねーっつーの!)」
希ちゃんの居そうな場所といえば
生徒会室?
「失礼します!」
勢い良くドアを開けると、そこには
「なに?穂乃果、びっくりするじゃない」
あれ?絵里ちゃん1人
「ゴメンね!絵里ちゃん、あの、希ちゃんは?一緒じゃないの?」
「私の希?私の希なら、また何処かフラフラと出かけていっちゃったわ」
「大方中庭辺りで他の子と遊んでるんじゃない?私というものがありながら」
「うん!わかった、ありがとう!」
「廊下は走っちゃダメよ」
私は、はーいと返事して中庭を目指す
絵里ちゃんのセリフに所々おかしな所があったような気がするが、絵里ちゃんだから仕方がないね
中庭を探していると…いた!
けど、絵里ちゃんが言うように誰かと遊んでるわけじゃなくて、花壇のお花に水をあげてるみたい
ちょっと意外、なんて言ったら怒られるかな?
「楠田、さん?」
私が声をかけると
「おぉっ!本物の穂乃果ちゃん!初めて見た!」
「握手して!」
「えぇっ、は、はい、初めまして」
グイグイくる楠田さんにちょっと気圧される
「穂乃果ちゃん!希と私をここまで連れてきてくれてありがとうね!」
「私達、スッゴイ幸せ!」
楠田さんは笑顔で語りかける
「という訳で、私ずっとここにいることになると思うんで、これからもよろしくね!」
さらっと恐ろしい発言をした次の瞬間
「ちょっと待たんかーい!」
と、えみつん登場
「あれ?えみつんじゃん!なんでいんの?」
「それはね、くっすんが悪い事してないか見張っとくためだよ」
「悪い事してないよ、みんなを幸せにしてるだけだし」
「でも、やり過ぎでしょ?」
「少しくらい派手な方が楽しくない?」
「…いや、やり過ぎはやっぱりダメでしょ」
えみつん、一瞬迷ったね
「えーっ!絶対そっちの方がいいって!」
「ねっ?一緒にやろ?ね?」
えみつんは考えた末
「……ちょっと、だけなら『いい訳ないじゃん!!』
「どんだけ意志が弱いんだよ!!」
全く、こっちは世界がかかってるのに!!
なんで考えた結果ダメなほうにいくの!
確かに楠田さんがお願い上手なのはわかるけど…
「穂乃果ちゃんも一緒にやろ!ねっ?」
おぅ、こ、これは気持ちが揺れ動くのもわかるけど、
「そうだよ、穂乃果もちょっとだけなら大丈夫だって」
「なんでえみつんがそっち側についてんの!」
こうなったら、一か八か
「わかりました、南條さんとうっちー?に来ていただいて判断を仰ぐ事とします」
私がそう言うと
「えーっ、南ちゃん関係ないじゃん!」
「う、うっちー来るの?ここに?えっ、い、いや、それはねちょっと……」
おぉっ!2人とも効いてるね、っていうか、えみつんビビりすぎてない?
楠田さんの方はと言うと
「うーん…まっいっか!」
「南ちゃんに怒られるの嫌だし、確かにここは希の世界だし」
「いいよ、元に戻るよ」
あっさり引き下がる
本当にサバサバした性格なんだね
「その代わりお願いあんだけど、いい?」
「お願い?」
「そう、2人きりでお話ししたいな、逃げたりしないから、ダメ?」
と、また、可愛いおねだり
でも今度は我慢しなくてもいいね!
「当然いいよ!希ちゃんもきっと喜んでくれるよ!」
「ありがとう」
楠田さんはそう言うと、希ちゃんの体からもう1人の姿が現れた
楠田さん、いや、くっすんかな
ちっちゃくてとっても可愛い人だね
「それじゃあ、2人とも、またね」
私はそう言うと、未だうっちーに怯えるポンコツと一緒に中庭から立ち去る
「楠田さんも希ちゃんも、キチンと言えるといいね」
私はなんとなく独り言をつぶやいた
2人きりになり、まず亜衣奈が語りかけた
「初めまして、そしてごめんね希」
「私じゃなかったら、もっともっと貴女は輝けたかもしれない」
「でも、私、私なりにだけど、頑張って、希と一緒に輝きたくて、いろんな事ガムシャラに頑張ったの」
亜衣奈は寂しそうに希を見つめる
すると今度は希が語りかける
「そしたら、ウチでごめんね、くっすん」
「私じゃなかったら、貴女はもっともっと、輝けたかもしれない」
すると、亜衣奈は必死な表情で
「そんなことないよ!私は希で良かったし希じゃないといやだよ!!私は希だったから頑張れたんだよ!!」
この言葉を聞いた希は、嬉しそうに笑い、
「うちもだよ、くっすん、同じだよ、気持ちは同じ、つながってるよ、ありがとうな」
と言い、亜衣奈を抱きしめた
「うぅ~、私に演じられていたくせに生意気だー、私のが年上なのに」
「ふふっ、うちのがお姉さんみたいやね」
「くっすん、私に素敵な世界ををくれてありがとう、あなたのおかげでみんなと一緒に夢をかなえられたよ」
「あなたのおかげでこれからもずっとみんなと一緒に歩んでいけるよ、大好き、ありがとう」
亜衣奈も競うように笑い
「希、私をここまで連れてきてくれてありがとう、辛いこともいっぱいあったけど、それ以上に楽しい事もいっぱいあったよ!」
「あなたがいたから頑張れたんだ!」
そう言うと、亜衣奈は笑みをイタズラっぽい笑みと替え
「もっともっと頑張って次会うときは私のほうがお姉さんだって解らせてやるんだから」
「あと言っとくけど、私のほうが好きだから、んーと、千倍くらい?」
「えー、ほなウチは一万倍!」
「じゃあ私一億倍だし」
「ほなウチは一兆倍やでー」
…クスクス『スピリチュアルやね!』
2人の心からの笑顔が花壇の花とともに、キラキラと輝く
「それじゃ、またね、希」
「うん、またね、くっすん」
爽やかな風が、2輪の花をいつまでも靡かせていた
その日の夜
日課となったランニング
いつもの時間
いつもの場所
いつもの神社にいつも通り希ちゃんはいた
「穂乃果ちゃん、ありがとうな」
「くっすんの記憶を共有して知ったけど、色々苦労してるみたいやね?」
希ちゃんは少し申し訳なさそうに、私に話しかけてきた
「穂乃果は全然平気だよ!」
「苦労どころか、みんなのために頑張れるのってすごい嬉しいんだ!」
「凄いんだよ!みんな本当に、心の底からμ’sが大好きなの!」
「希ちゃんもそうでしょ?」
私がたずねると
「うん!そうだよ!」
キラキラ笑顔で答えてくれた
「私もくっすんも、μ’sに居られるように頑張ってたけど、それは間違いだったんだってわかったの」
「だってμ’sは全員揃ってμ’s」
「私もμ’sなんだ、この輝きは私の輝きでもあるんだ」
「だから、私は大好きなμ’sのために頑張るんだって考えたら、なんだか全部の事が楽しくなっちゃった!」
そう言うと希ちゃんは、スピリチュアルやね、と言ってウインクした
「この出会いはきっと奇跡」
「でも、その奇跡はきっとみんなの想いが起こした事やないんかな?」
「だから、私はここに居るんだね」
そして、希ちゃんは空を見上げて語りかけるように呟いた
「ねっ?くっすん」
神田の夜空は明るいけれど、今日は不思議といつもより多くの星が、色んな光でみんなを楽しませている
そんな不思議で楽しい空だった
第6章 「キミののぞみはアイなんだ!」 完
追加分は332あたりになります
駄文な上に投稿ミス
くっすん、希ちゃんごめんなさい
再開します
第7章 「リッピング=リンク」
国立音ノ木坂学院
私たちの通うこの学校はスッゴイ古い学校で、私のお母さんもおばあちゃんもこの学校に通ってたんだ
まぁ、最近はあんまり人気が無いみたいで、入学希望者が少なくなって廃校の危機
なんとか人気を回復しようと私達がスクールアイドルを始め、廃校はなんとか阻止できたんだけど、まだ油断はできない状態
でも学院には、色んな名物がいっぱいあるんだよ
その一つが『体育競技会』
これは地域の人達と一緒になって運動会をしちゃうイベントなんだ
私も小さい頃から参加してて、とっても楽しみにしてるんだよ!
でも、今年はもう一つ、目玉があって…
「…となる為、こちらの公式を使用し……」
今、私は数学とかいう謎の言語との格闘中
全く、日本語で話して欲しいモンだね!
外はいい天気、こんな日は外で思いっきり体を動かしたいなぁ
そんな事を考えつつ、外を見ると
おっ?あれは1年生だね
花陽ちゃんとか、真姫ちゃんが見えるよ
ちょうど競技会の練習をしてるみたい
あっ、凜ちゃんがちょうど走るみたい
「位置について、用意!」
ピッ!
笛の音と共に走り出す
すると…
「うわっ!めっちゃはやっ!!」
やばっ!思わず声を出してしまった!
「…高坂さん、随分と余裕があるようで……」
「い、いや、そう言うわけでは…」
「後で職員室へ来るように、素敵なプレゼントをあげよう」
「うぐっ、はい」
みんなの笑い声と海未ちゃんの怖い目線に晒されながら、うなだれつつ着席する
トホホ
休み時間にはいると
「穂乃果!キチンと授業を受けないからこうなるんですよ!」
「で、でも…」
「でもじゃありません、いいですか…」
「ま、まぁ海未ちゃん、穂乃果ちゃんも何か理由があるんじゃないのかな?」
うぅっ、ありがとうことり天使様
「しかし…」
「海未ちゃん?」
「は、はい、では穂乃果、理由とやらを聞かせて下さい」
凄いねことりちゃん!
昔から、あのおこりんぼ海未ちゃんを問答無用で鎮められるのはことりちゃんだけなんだ
「たまたま、たまたまね、外を見たら凛ちゃんが走るのが見えてね」
「なるほど、それであの一言ですか」
「凛ちゃん凄い早いよね、私も見てたら声でちゃうかも」
ことりちゃんも同意してくれる
「気持ちは解らないでもないですが、授業にも集中してくださいね」
「ごめんなさい」
ここは素直に謝る
海未ちゃんはちゃんと謝ればゆるしてくれるんだ
という訳で私は凛ちゃんの話題に戻る
「でも凛ちゃん凄いよね!またスカウトの人が来てたんだって!」
するとことりちゃんが
「すごーい!陸上部からもいつも誘われてるし、ひょっとしたら将来オリンピックとかに出ちゃうのかなぁ?」
「今年の体育協議会には凛ちゃん目当てに結構人が集まるんじゃないかって、お母さんが言ってたよ」
「近所でも結構有名なんだって」
マジですか!
「これは今の内にサインを貰っておいたほうがいいのかな?」
私とことりちゃんが盛り上がっていると
「凛は今スクールアイドルに夢中ですから、オリンピックよりラブライブの事しか考えていませんよ」
と海未ちゃん
さすが、リリホワ三姉妹
妹の事はよくわかってるってことか
でも、そうか、もったいない様な気がする、けど
「でも凛ちゃんがいないとμ’sじゃなくなっちゃうからこのままでいいね!」
「そうだね!凛ちゃんすっごいかわいいもんね!」
「そういうことです」
という海未お姉ちゃんの同意をもって、この話題は終了となった
次の日
「あづま路の道のはてよりも、なほ奥つ方に生ひ出たる人…」
私は古典とかいう謎の言語との格闘中
全く日本語で話して欲しいモンだね!
いや、日本語かもしれないけど、あくまでも元日本語だから
今を生きる天下の女子高生とはかけ離れたモノなのだ
外はいい天気、こんな日は外で思いっきり体を動かしたいなぁ
そんな事を考えつつ、外を見ると
おっ?あれは1年生だね
花陽ちゃんとか、真姫ちゃんが見えるよ
今日も競技会の練習をしてるみたい
あっ、凜ちゃんがちょうど走るよ
ふふふっ
今日は昨日みたいな失敗はしないよ
私は学習する女なんだよ
「位置について、用意!」
ピッ!
笛の音と共に走り出す
すると…
「うわっ!めっちゃ普通!」
やばっ!思わず声を出してしまった!
「…高坂、余裕だな……」
「い、いや、そう言うわけでは…」
「後で職員室へ来るように、良いもんをやろう」
「うぐっ、はい」
みんなの笑い声と海未ちゃんの怖い目線に晒されながら、うなだれつつ着席する
な、なんでぇ…
休み時間にはいると
「穂乃果!キチンと授業を受けないからこうなるんですよ!」
「で、でも…」
「でもじゃありません、いいですか…」
「ま、まぁ海未ちゃん、穂乃果ちゃんも何か理由があるんじゃないのかな?」
うぅっ、今日もありがとうことり大天使様
「しかし…」
「海未ちゃん?」
「は、はい、では穂乃果、理由とやらを聞かせて下さい」
今日も海未ちゃんはことりちゃんの前に敗北を喫し、私の話を聞いてくれる事となった
「たまたま、たまたまね、外を見たら凛ちゃんが走るのが見えてね」
「それで何故、あの一言なのですか?」
「凛ちゃん走るとき、何かあったの?」
ことりちゃんに質問される
「いつもあんなに走るの速いのに、今日はびっくりするくらい普通だったから…」
『?』
2人の頭の上に大きなクエスチョンマークが浮かぶのが見えた
「凛は走るのはそこまで速いわけではないでしょう?」
「そうだよ、別に遅いわけじゃないけど、普通くらいじゃないかな?」
「えぇっ?だってスカウトの人が来るくらい凄いって…」
私の言葉に2人はますます大きな『?』が浮かべる
あれ?これってもしかして…
「あ、あぁ!ゴメーン!私何か勘違いしてたよ〜!」
うぅっ、我ながら下手くそすぎるごまかしの言葉を吐き出すが、我が幼馴染達はそれなりに納得してくれた様子
まぁ、これはこれで辛いものがあるけど、取り敢えず良し
ホッとしていると海未ちゃんが
「スカウトですか、まぁ、凛はかわいいですから再デビューの話とかも来ているようですし…」
えっ?『再』でびゅー?
「そうだよねぇ〜、小学生の頃は毎日テレビで見てたもんね〜!」
て、てれび!?
「懐かしいですね、『大天才!テレビジョンさん』よく3人で見ましたね」
「そうそう、ことりも『テレビ闘士』になりたかったな〜」
「穂乃果も知ってるよ!その番組!っていうか、今でもやってんじゃん!!」
何で凛ちゃんが『テレビ闘士』やってんの?
「もう!穂乃果!そんなに大きな声でなくても聞こえますよ」
「あっ、ご、ごめんね、懐かしくってつい…」
ど、どうなってんの?
とにかく現状を確認する為に2人から情報を聞き出そう
「い、いやぁ、何で元テレビ闘士がスクールアイドルやってんのかなぁ?」
すると、ことりちゃんも
「ね〜、不思議な感じだよね?」
と同意してくれる
「なんでも本人は芸能界という括りはあまり意識していないようです」
「スクールアイドルは一般の高校生である事が条件ですから、だからそうしているだけということらしいですよ」
…ふ〜ん、海未ちゃんなんか凛ちゃんの事詳しいね
「楽しい事を最優先、何とも素直な凛らしいですね」
海未ちゃんは嬉しそうに笑った
「元芸能人といっても偉ぶるようなこともなく、素人集団である私たちと楽しく一緒に過ごす事を選んでくれるなんて」
「可愛い子ですね」
すると、ここでことりちゃんがなぜか慌てて
「あ、あの!海未ちゃん?と、取り敢えずこの話は置いておいて…」
「そ、そうだ!昨日新しいお店が出来たからその話でも…」
「あぁ、すみません、凛のことになるとつい話し込んでしまいます」
「うふふ、まぁ私にとっては、かわいいかわいい妹みたいなものですからね」
………
私は黙って立ち上がる
ことりちゃんは諦めの表情を見せ、海未ちゃんはポカンと私を見上げる
そして、涙目の私は海未ちゃんに最後通告を言い渡す
「海未ちゃんは今後一切穂むらのお饅頭に触れる事を禁じます」
そう告げるとダッシュで教室を飛び出た
なんだよ!私にはかわいいとか言ってくれないくせにぃ〜〜!!
こうなったら凛ちゃんを研究して私もかわいくなってやるんだから!
待ってなさい!唐変木!!
というわけで1年生の教室に到着だよ!
さぁ!向こうの世界の凛ちゃん!
私をかわいくしておくれ!
そして、あの憎きヘタレラブアローシューターに目にもの見せてやるのだ!
気合十分!私は早速凛ちゃんを探す
すると
「おっ!発見!」
凛ちゃんはすぐに見つかった
明るい子なのは変わらないね!
「かよちーん!これ見て!すごい可愛いんだよ!」
何やら雑誌かなんかを見てるみたいだね
「本当だ、可愛いね」
すぐ隣にいる花陽ちゃんがにこにこしながら同意する
「コレとか絶対いいよね?」
「そうだね、すっごくイイね」
あぁ、癒される…
心が浄化されていく……
私はなんて汚れていたんだ…
ふぅ、りんぱなはイイものだねぇ
おや?凛ちゃんが移動を始めたよ
するとその先には
真姫ちゃん!
「真姫ちゃーん!見て見て!コレすっごく良くない!」
そのままの勢いで抱きつく
「ヴェェェ、ちょっと凛!いきなり抱きつかないで!」
「ゴメンね、真姫ちゃん」
あ、ちょっとシュンとしちゃった
でも、怒られた猫みたいで可愛いかも
でもすぐに笑顔になって
「じゃあ今から抱きつくね!」
「ニャー!」
「ヴェェェェェェェ!?」
なんだよこれ、超可愛いんだけど
そこに花陽ちゃんが合流
「凛ちゃん、真姫ちゃんが困ってるよ?」
凛ちゃんに離れてあげたら?と話しかける
でも凛ちゃんは
「真姫ちゃん、凛にぎゅってされるのいや?」
またシュンとしちゃった
でも今度は真姫ちゃんが
「べ、別に嫌なわけじゃないけど!」
「ちょっとビックリしちゃっただけなんだから!」
イエス!パーフェクトツンデレ!
「やったー!真姫ちゃーん!ぎゅー!!」
「///ヴェェ…」
「うふふ、2人は仲良しさんだね」
「かよちんも一緒だよ!ぎゅー!!」
まきりんぱな最高や!
いやぁ、イイもん見たよ
なんか荒んだ心が浄化されたね
さあ!教室に帰ろうかねぇ
私が歩き始めると
「ちょっとお待ちよ、お嬢さん」
「何か大事なこと、忘れちゃいませんか?」
ポケットから何やら怪しい声が聞こえてくる
「はて?大事なこと?パンを食べ損なった?」
「朝から貪り食ってましたよ」
「漫画の発売日?」
「一昨日2冊買ってましたよねぇ」
「お小遣いの日?」
「それは一週間前でした」
「やれやれ、解ったよ、そうだ、そうだったよ」
「解っていただけましたか」
「明日は学校が休みなんですね!」
「………おバカモノ」
声の主がポツリと呟く
私はダッシュで近くの空き教室に走り込み
「誰がバカなんだよ!」
「穂乃果の事だよ!何しに1年生の教室に行ったのさ!」
「癒されに行ったに決まってんじゃん!」
「この鳥頭!ちがうでしょ!ちょっと前のことも覚えてないの?」
「ちょっと前?えーと、確か…」
そうだ!思い出した!
「海未ちゃんが凛ちゃんのこと可愛いカワイイっていってたんだ!」
「ヒドイよ!私には一回も言ってくれたこと無いのに!」
「えみつんもそう思うでしょ!」
ポケットの中のディフォルメ人形ことえみつんはなぜか涙を流しながら
「うぅっ神様…なぜ、なぜもう少しだけこの子の知力のパラメータを上げてあげなかったんですか?」
「まさか本当に3歩歩いただけでものを忘れるなんて、オーイオイオイオイ」
えっ?なに?私泣かれるほど賢くないの?
ちょっと待てよ
確か海未ちゃんが全くデリカシーというか私の気持ちに無頓着なのは覚えてるよ、うん
その前は…
「あっ!テレビ闘士!」
そうだ!凛ちゃんの過去が変わってたんだ!
あれ?でも…
「なんでいつもと違って、凛ちゃんはいつもと一緒なの?」
そうだ、今まではみんな中の人の影響で明らかに行動原理が変わっていた
なのに今見てきた凛ちゃんはいつもと一緒
「これって本当に異変?」
えみつんに聞くと
「うぅっ、かみさま…どうか、どうかこの子にほんの少しの賢さを……」
ダメだ、なんか立て込んでるみたいだね
うーん?もう少しだけ、様子を見たいかな?
よし!放課後の練習で再確認するよ!
そして放課後
「今日も練習ガンバロー!」
一番に飛び出して行くのは凛ちゃん
「まっ、待ってよ〜!凛ちゃん!」
「ちょっとぉ!引っ張らないでよ!」
花陽ちゃんと真姫ちゃんも引っ張られていく
うーん?やっぱりいつもと同じだなぁ
よし、私も負けてられないよ!
続いて部室を出ようとすると
「あ、あの、穂乃果…」
……
「ちょっとだけ、お話を…」
「……可愛い凛ちゃんはもう行っちゃったよ?」
はい、実はあのままです
海未ちゃんとはあれから目も合わさず、話したのもあれ以来初めてなのです
だってしょうがないじゃん!
なんだか胸がモヤモヤしてヤな気持ちなんだもん!
すると他のみんなは
「また、夫婦喧嘩?全く飽きないわねあんた達も」
と、にこちゃん
「うふふ、今度は何?大方穂乃果がヤキモチでもやいたって所かしら?」
「ウチの占いではすぐに仲直りできるってででるから、大丈夫よ」
絵里ちゃんと希ちゃんはそう言ってにこちゃんと一緒に部室を出て行く
ふ、夫婦げんかとかヤキモチとか、みんな何を言ってるのかな?
海未ちゃんも、なに真っ赤になって俯いてんのさ!
「穂乃果ちゃん?気持ちはわからないでもないけど、もう少しだけ海未ちゃんのこと、考えてあげて」
「海未ちゃんも、穂乃果ちゃんがなんで怒ってるかわかってあげて欲しいな」
ことりちゃんは、じゃあ先に行くねと言って部室を出て行った
………
少しの沈黙の後
「穂乃果、ごめんなさい」
「ことりはああ言ってくれましたが、私、いくら考えても理由がわからなくて…」
海未ちゃんは俯いたまま続ける
「幾つか理由を考えてみたんですが、情けないことにどれもこれも自分に都合の良いものばかり」
「私はこの様な性分です、またどうせ気がつかないままに、貴方に酷い事を言ったに違いありません」
「許してとは言いません」
「ただ、貴方に謝らせてください」
「大好きな穂乃果に嫌われるのは、辛いですが、これもじぶんが『ちょっと待って!海未ちゃん!』
ん?今さらっと重要なこと言ったね
きょとんとする海未ちゃんに
「い、今なんて言ったのかな?」
「え?あ、あの、謝らせて欲しいと…」
「いやいや、そのもう少しだけ後だよ」
「大好きな穂乃果にきらわれ『なるほど!!』
私は海未ちゃんの話を遮る
「ふ、ふーん、海未ちゃんは穂乃果の事、そ、その大好きなんだ」
「そんなの決まっています!穂乃果に嫌われたら、私は生きる希望を失ったも同然です!」
「だから、大好きな穂乃果!お願いです!ずっと私のそばにいて下さい!」
「///うぇっ?そ、そんないきなり!」
こ、これってそういうことだよね?
で、でもここで逃げるわけにはいかないよ!
ちょっと突然だけど、ここで決める!
「///よ、よろしくおねが『穂乃果ちゃーん!!』おわぁぁぁ!!!」
突然ドアが開き凛ちゃんが飛び込んで来た
「2人とも喧嘩はダメだよぉ!」
「みんな仲良く!だよ」
「私が悪いトコあるならスグ直すから!」
私たちが呆気にとられていると
「あれっ?違う理由?なんかことりちゃんとかみんなの話からして私が原因かと…」
「でも!そういう事ならよし!なんか食べに行こう!食べて笑って仲直りだよ!」
「私のお姉ちゃん達が仲良くしてくれないと、私悲しくなっちゃうから」
「そしたら私泣くよ!泣いちゃうよ!いいの?スッゴイ泣くからね?知らないよ!」
これは参った
こんな恐ろしい脅迫を受けたら条件を受け入れざるをえないよね!
海未ちゃんを見ると困った様な嬉しい様な複雑な表情でこっちをみている
「凛ちゃん、ゴメンね!私達ちゃんと仲直りするから」
「凛、ありがとうございます、きちんと仲直りしますから、泣かないで下さいね」
すると凛ちゃんは
「じゃあ握手して!握手!」
と言って私達の手を取り、ぎゅー!
「はい!仲直りね!」
満足そうにニコニコ
私達は
「ゴメンね、海未ちゃん、私ちょっと拗ねてたんだよ、海未ちゃんは悪くなかったの」
「本当にごめんなさい」
私が頭をさげると
「穂乃果、ごめんなさい、きっと私が言葉足らずだったのですね」
「もう貴女を傷つけたりしません、本当にごめんなさい」
と言って海未ちゃんも頭を下げる
そうしていつも通り2人ともニコニコ笑顔
「ありがとう凛ちゃん!こんなに出来た妹を持ってお姉ちゃんは幸せだよ!」
「ありがとうございます、凛、情けない姉ですみません」
2人揃って凛ちゃんにお礼を言うと
「まったくだよ!困ったお姉ちゃんは後6人もいるんだから!」
「妹に迷惑かけない様にしてよね!」
と言って胸を張った
ふふっ、これは確かに可愛いね
海未ちゃんは間違ってなかったよ!
さて、その日の夕方
近所の公園でいつもの様に作戦会議
のハズなんだけど…
「うふ、うふふふ」
「えへへ、全く、海未ちゃんたら大胆なんだから…」
「………」
「私達まだ高校生なのに、どうしよう、高坂海未?園田穂乃果?悩んじゃう」
「………………」
「えみつんも結婚式には参加してね!」
我が愛すべき相棒に幸せのお裾分けをしようとすると
「………………………」
「あれ?えみつん?」
何やらじっとしたまま動かないねぇ
なるほど私と海未ちゃんの愛のオーラに圧倒されてるんだね
なんて幸せ気分で見ていると
「あっ!終わった?」
あれっ?なんで全然違う方から声が聞こえるの?
っていうかコレ唯のぬいぐるみだし!
声のする方を見ると
「いやぁ、今日も饅頭がウマイ!」
ウチのお饅頭を食べながらお茶をすするぬいぐるみというシュールな光景がそこにはあった
「えっとね、凛ちゃんを演じている『ちょっと!えみつん?』
「?」
「?じゃないよ!私と海未ちゃんの幸せラブライフ聞いてなかったの?」
「…きいてたきいてた、チョーおもしろかった」
「とくにあの、ことりちゃんがそらとぶとこ、かんどうしたよ」
「飛ばないよ!どんな話になったらそうなるんだよ!」
「もー!いっつも乙女とかなんとか言ってからかってるんだから、たまには聞いてよ!」
「……………」
「あれ!?もう入れ替わってるし!」
本物は…
「そこだ!!」
「まだだね!まだ終わらないよ!」
「見えるよ!」
「当たらなければなんという事はないね!」
「……!?」
「……!!」
………
「はぁはぁ」
「つ、つかれた」
「お互い無駄な体力消費は避けよう」
そして2人は歴史的和解に合意して、中の人情報の話に移る
「凛ちゃんを演じているのは、『飯田里穂』ちゃん、ニックネームは『りっぴー』って言うんだよ」
「1番年は若いけど、子役からずっと活躍してるから実は1番芸歴長いんだよね〜」
という事は
「あの教育テレビの…」
「その通り!かなり人気だったから名前を聞いて思い出すって人が多いね」
スゴイ!サイン欲しい!
「ちょっと前までグラビアモデルもやっててナイスなバディでもあるんだよね」
久保さんもそうだったねぇ
しかしμ’sってなんかスゴイ人揃ってない?
「μ’sでは最年少だけど1番しっかりしてるし、気がきくし、マジえんじぇーなんだよ!」
そういえば前怒られるって言ってたね、リーダーなのに
「性格的には凛ちゃんにすっごく似てると思うな」
そうだね、正直ほとんど変わんないもんね
「みんなの妹って感じな所も凛ちゃんそっくりだよ!」
「もう本当に可愛いんだから!」
えみつん本当に飯田さんのこと好きなんだね
「苦手な事とか、あるのかな?」
私が質問すると
「なんだろう?あんまりできない事とかのイメージが湧かないなぁ?」
「強いて言えば方向オンチらしいけど、あんまり気にした事ないなぁ」
「まぁ、りっぴーだし、マジえんじぇーだから完璧って事でいいじゃん!」
あ、投げた
うーん、でも多分本当にしっかりさんで明るい人なんだろうな
でも困ったよ、事件を起こす前になんとか元に戻って貰わないといけないのに
「正直何にも対策が浮かばないよ…」
私が頭を抱えると
「よし!こうしよう」
おおっ?何かいい考えが?
「せっかく凛ちゃんとりっぴーという天使同士が同化したのだから、このままずっと眺めて幸せな気分になろう!」
「何か起こったらその時考えようか?」
ダメだこいつ、早くなんとかしないと…
「ダメに決まってんじゃん!」
あ!そうだよ!
「花陽ちゃんだよ!」
「花陽ちゃんに協力して貰おう!凛ちゃんは花陽ちゃんのいう事なら聞くはずだよ!」
私のこのアイデアにえみつんは
「今までならそうなんだろうけど、今の花陽ちゃんにはシカちゃんの影響がでちゃってるからなぁ」
えっ?ひょっとして仲悪いとか?
私の怪訝そうな顔から察したのか
「仲悪いわけじゃないよ?」
「シカちゃんはりっぴーのオモチャだから、りんぱなみたいな感じとはちょっと違うって事」
「…でも、にこりんぱなの力なら、ひょっとして…」
そうだよ!にこりんぱなだ!
「明日にこちゃんと花陽ちゃんに相談してみるよ!」
私の言葉に
「うん、そうだね、あのパワーを持ってすればなんとかなるかも知れないね」
えみつんが同意する
よし!希望が見えてきたよ!
「じゃあ、穂乃果!にこりんぱなの制御はヨロシク!」
「なに言ってんの?えみつんが何とかしてくれるんじゃないの?」
「はっはっはー、本気のにこりんぱなを私が何とか出来るわけないじゃん!」
「今のにこりんぱなを穂乃果に何とか出来るわけないじゃん!えみつんやってよ!」
「…よろしい、ならば戦争だ」
「避けられぬ道なんだね」
私達の戦いは、お母さんからの激怒の電話が鳴り響くまで続くのであった
そして次の日、それはそれは楽しい夢の世界が広がっていた
今日もキチンと早起き
私だってやる時はやるのだ!
決してお母さんに怒られてお小遣い減らされるのが嫌だからではない!
「いってきます!!」
元気な挨拶は基本だからね
気合を入れてあいさつすると
「あんた朝からうるさいよ!」
怒られた…なんでぇー!
いいもんね!ことりちゃんに優しくしてもらって、海未ちゃん見て心を和ませようっと
待ち合わせ場所には早めの到着
まだ2人は来てないみたいだね
よしよし、これで2人に褒めてもらえるね!
思っているうちに向こうから来るのは、
「…海未ちゃん?」
うん、あれは海未ちゃんだね
でもおかしいぞ?
なんで頭の上にウサ耳がついてるのかな?
しかも、なんかオドオドしてるし
「ほ、穂乃果!おはようございます!」
「私、頑張ってちゃんと1人でこれましたよ!」
「さあ!褒めてください!」
えぇっ?ほ、褒めるって?えっ
私が戸惑っていると
「穂乃果?褒めてくれないんですか?さみしいです」
「ウサギはさみしいと死んじゃうんですよ、私が死んじゃってもいいんですか?」
「い、いいわけないじゃん!」
「えーと、よしよし海未ちゃん、よく出来ましたね」
とりあえず頭をナデナデしてみる
すると海未ちゃんは
「///うふふ、頑張って良かったです」
ウフォー!可愛いぜぇ!!
これはこれで癒されるからオーケーだね!
私が癒しエネルギーを充填していると、何やら感じる視線
私がそちらに振り向くと
「ちゅーーーーーーん!!!」
すごい勢いで誰かが突っ込んでくる
っていうかことりちゃんだね
「さぁ、穂乃果ちゃん!そこの可愛いウサギさんを私に下さいな!」
「ことりのおやつにしちゃうよ!」
イミワカンナイ!
何だそれ?
でも、うさうみちゃんには効果バツグンらしく
「穂乃果、助けて下さい!私、おやつにされちゃいます!」
私の腕にぎゅーっとしがみ付いてくる
「はわわわ!だ、大丈夫だよ海未ちゃん!私が守ってあげるから!」
これはいいね!ことりちゃんGJだよ!
私が幸せを堪能していると
ぴろりーん!
ことりちゃんは携帯動画を撮影してるみたい
「ちゅんちゅん、ことりもしあわせ〜」
よく見ると、ことりちゃんも頭に羽根飾りを着けてるね
流行り?
「あ、あの、おはよう、ことりちゃん」
「おはよう!穂乃果ちゃん!海未ちゃん!」
さっきの謎の勢いはなくなり、いつもと変わりなくご挨拶
フルフルと私の腕にしがみついたままの海未ちゃんに
「海未ちゃん?ことりちゃんだよ」
と声をかけると
「こ、ことり!おはようございます」
「実は先ほど恐ろしい猛禽類に襲われまして」
「同じ鳥類なのに、何故みんなことりのように優しくできないのでしょう」
「おかげで穂乃果なくしては学校に行くこともままならない状況です!」
ウサギさんの抗議にその問題の元凶である猛禽類さんは
「全く、同じ鳥類としてなげかわしいよ!」
「海未ちゃんは穂乃果ちゃんから離れちゃダメだよ?」
はい、という素直な返事をするウサギさんにしがみつかれたまま、私は学院へ向かった
さて学院に到着したけれど、やっぱり何らかの動物の髪飾りを着けている人は、その動物の特徴的な行動をとってるみたい
特に1年生は、ほぼ全員が動物さんになってるみたい
言ってる間に真姫ちゃん発見
真姫ちゃんの頭には、ネコ?豹かな?
やっぱり髪飾りを着けている
でも何でそんなに木の陰にかくれてんのかな?
と、そこに
「おはよう!にこちゃん」
かわい〜!パンダにこちゃん登場
「おはようニコ!可愛いパンダさんの登場ですよ〜!」
にこちゃんと挨拶を交わしたその時、視線の端で何か鋭い眼光が光った気がした
「おはよう、にこちゃん、偶然ね」
うわっ!いきなり真姫ちゃんが目前に現れたよ!
「うわっ!ビックリした!真姫、普通に出てきなさいよね!」
「何のことかしら?私、普通に歩いてきただけだけど?」
「そんなことより、にこちゃん、私が一緒に教室までついて行ってあげるわ」
「いや、1人でいける『じゃあ、そういうわけで、3人ともまた後でね』
そういうと真姫ちゃんは有無を言わさず、にこちゃんを引っ張って行っちゃった
「穂乃果、真姫豹怖いです…」
「さすが、真姫ちゃん!狙った獲物は逃さないね!」
狙った獲物は逃さない、cutie pantherとは真姫ちゃんの事だったんだねぇ
クラスに到着して確認すると、やっぱり動物化している人が何人かいるね
他のメンバーの事もちょっと気になるけど、そうも言ってられないよ
「えみつん、行こう!」
「よし!じゃあ昨日の作戦通り、私かわいいえんじぇーを見守ってるから、穂乃果頼んだよ!」
「えぇー!私1人じゃ、何ともできないよ!助けてよぉ!」
私の抗議に対して、えみつんは
「あれっ?穂乃果知らないの?」
「この世の中は気合と根性で8割5分はどうとでもなるんだよ」
何だよそれ!
「知らないよ!じゃあ残りの1割5分はどうすんのさ?」
私のツッコミに対して
「いやぁ、そこは、それ…」
「愛とか勇気とか、その辺の不確定なファクターでカバーだよ!」
投げやがった!
「というわけで、穂乃果!今回もファイトだよ!」
「ファイトだよじゃねーっつーの!」
「っていうかこれ言いたいだけじゃんかー!」
私の青春の主張が学院の廊下にこだました
そんないつもの漫才をしてるうちに、1年生の教室へ到着
さて、凛ちゃんは?
「にゃーんにゃーんにゃーん!」
『にゃーんにゃーんにゃーん!』
おおっ!動物さん達のコーレス!カワイイ!!
「凛ちゃんと言えば〜?」
『イ゛エ゛ロ゛た゛よ゛ぉぉぉーーー!!!』
なんでえみつんまでやってんの?
「はっ?!ついつい、りっぴーマジ天使だね」
どんだけ好きなんだよぉ
そんなことをやっていると
「あっ!穂乃果がいる!しかも本物!」
凛ちゃんこと飯田さんが気づき、こちらにやって来る
「あれ?えみつん?なんで擬態してんの?流行り?」
どんな流行り?意外と天然さん?
「まぁ良いや!そんなのよりもっと似合うキャラにしてあげるね!」
そう言うと飯田さんは
「にゃーんにゃーんにゃーん!」
うわっ!またこの感じ!
なるほど、飯田さんがみんなをカワイイ動物さんにしてたんだね
でも、私達には効かないよ!
余裕の表情でえみつんを見ると
「ふふふ、りっぴー、私達には効かないザウルス!」
効いてたー!!
メッチャ効いてたーー!
しかも語尾がザウルスってなんだよ!
「やっぱえみつんは恐竜だよね!」
飯田さんは満足そうに頷く
「穂乃果は犬かなって思ったんだけど、変わんないね?」
「違うザウルス!穂乃果はクマさんザウルス!」
お前はホントは全然効いてないだろ!
「私には効きませんよ!」
「飯田さん!凛ちゃんを元に戻してください!私たちの大事なお友達なんです!」
私のお願いに対して、飯田さんは
「と言っても、凛ちゃんも一緒に楽しんでるしなー」
何だとぉー!でも余裕で想像できる!
こうなったら……どうしようか?
「解んないよぉ〜!どうしよぉ〜!」
私の叫びに
「穂乃果!あれザウルス!」
あれ?
「そう!例のアレこと、ちゅーザウルスよ!」
「この腐れ恐竜!何言ってんの!私できないよ!」
「違う違う!あっち、あっちザウルス!」
アホ恐竜の指差す先には、のほほんとおにぎりせんべいを食べている小鹿ちゃんが
なるほど!
「花陽ちゃん!ちょっと力を貸して欲しいの!」
「えっ?えっ?な、何?」
「お願い!花陽ちゃん!凛ちゃんとキスして欲しいの!」
「………ええぇぇぇぇぇ?!!!!」
そりゃ驚くよねぇ、でも世界のためだよ!ガンバって!
「花陽ちゃん!さぁ!ぶちゅーっといくザウルス!」
うん、あくまでもそのキャラでいくんだね
「ファイトだよ!」
「ファイトザウルス!」
「え?えぇ?だ、ダレカタスケテー!」
助けはこないよ!さぁ、いくんだ!花陽ちゃん!
何だか悪役っぽいけどしょうがない
しかし、その時
「チョットマッテテー!」
「なに?何者だ?」
「我々の邪魔はさせないザウルスよ!」
私達ザウルス団の前に現れたのは
「にこちゃん!」
「呼ばれた気がしてじゃじゃじゃジャーン!」
「みんなのアイドル矢澤にこ!通りすがりに只今参上ニコ!」
「我々にこりんぱなの前には、多少の悪くらいだったら栄えない!」
「さぁ、凛!花陽!こっちに来なさい!」
「にこ隊長!」
「にこちゃんリーダー!」
3人は息もピッタリに並ぶと
「我々、愛と勇気とお笑いの使者!」
「にこ!」
「りん!」
「ぱな!」
ドドォーーン!!
後ろでフミコ達による謎の爆発演出
『オトノキの平和は私達が守る!』
何だこれ?
っていうか、視界の隅で真姫ちゃんが捕食体勢に入っているけど見なかったことにしよう
「にこりんぱな?面白い!蹴散らしてくれるザウルス!」
えみつんノリノリだね
好きなんだね、何となく解るけど
その後は何だかんだあって
「ぐぁぁ!やられたザウルス!」
あっ、ザウルスやられちゃったね
それじゃあ
「取り敢えず穂乃果もやられたー!」
面倒くさくなる前にやられておこう
「私達の勝利!さあ、勝利のポーズよ!」
「にっこにっこにー!」
にこちゃんの会心のにこにこにーが炸裂するも
「やっぱり寒くないかにゃー?」
「そ、そんなことないよ!かわいいよ、にこちゃん!」
ああ素晴らしきテンプレ
捕食体勢に入っていたはずの真姫パンサーちゃんは、何故か泣いて感動している
泣く場面はどこだったんだろう?
そんな謎の寸劇も終り、にこちゃんは真姫パンサーちゃんに捕まり、しかよちんはおにぎりせんべいの元へ帰っていく
「あーっ、面白かった!やっぱりみんな面白いね!」
「μ’s最高!ねっ?穂乃果ちゃん、えみつん!」
凛ちゃん、いや、飯田さんは満足気に微笑み
「ずっとこうしていたいけど、ダメなんだよね?」
と、私たちに話しかける
「りっぴー、ごめんね?」
えみつんが申し訳なさそうに謝る
「凛ちゃんのまま、ここにいたいけどなー」
飯田さんは残念そうにつぶやいた
私は飯田さんに自分の正直な言葉を告げる
「飯田さんが凛ちゃんのこと、すっごく大好きなのはわかります」
「けど、私達も凛ちゃんの事、大好きなんです!」
「凛ちゃんはとっても元気で、かわいくて、優しくて、みんなの事をピカピカに輝かせてくれる、大事なお友達なんです!」
すると
「わかったよ、…ちょっと出かけてくるにゃー!」
と言って教室の外へ走り去っていく
でも、私もえみつんも追いかけない
だって逃げたわけじゃないからね
「りっぴーって、実は結構恥ずかしがり屋さんなんだよねー」
恥ずかしがり屋さんなら、2人きりの方がいいもんね
里穂は屋上までやって来て
「残念だけど、しょうがないね」
そう呟いた瞬間、凛の体から自分の体が離れていくのを感じた
完全に2人の体が分かれ、初めての挨拶をかわす
「すごい、マジで本物の凛ちゃん!初めまして、凛ちゃん」
「飯田理穂だよ!よろしくね」
里穂は最高の笑顔でご挨拶
「初めまして!私は星空凛!」
「ニャー!すごい!この人が凛のことこんなに可愛くしてくれた人?超可愛いにゃー!」
負けじと凛も最高の笑顔でご挨拶
「えー?凛ちゃんのほうがかわいいよ」
「えー?りっぴーのほうがかわいいよ」
『あははっ』
「私達、ソックリだね!」
「凛達が1番ソックリだよ!きっと!」
凛は続けて感謝の気持ちを告げる
「りっぴー!ありがとう、あなたのおかげで凛はμ'sにはいれて、みんなと一緒にダンスして、みんなと一緒に歌って、サイコーに楽しい毎日が送れてるよ!本当にありがとう!」
今度は里穂が感謝の言葉
「凛ちゃん!私からもありがとう!μ'sに入ってから楽しいことがいっぱいあったよ!みんなとも仲良くなれて、凛ちゃんともずっと一緒にいれて、こんなに毎日最高なのってすごいよ!」
『あははは』
2人の笑いが響き渡る
すると今度は凛が少し顔を赤らめ
「あのね、りっぴー、凛ね、最近やっと自分に自信が持ててきたんだよ」
「まだまだ恥ずかしいけれど、それでも、少しずつ可愛くなれるように頑張るから、だからこれからも凛と一緒にいてくれる?」
里穂はそれを聞くと少し照れながら
「凛ちゃん、私もね、ずっと一緒にいたいな、直接は会えないかもしれないけど、会おうと思えばすぐ会えると思うんだ、だって私たちは1人だもん」
「だから一緒に頑張ろう!次のライブでは一番可愛くなってみんなをびっくりさせちゃおうよ!」
凛の表情かぱぁっと明るくなって
「うん!凛がんばるから!待っててね!」
元気いっぱいの約束
それを聞いた里穂も元気いっぱいに
「うん!凛ちゃんなら大丈夫!だって私たちマジえんじぇーだもんね」
「そうだよ!マジえんじぇーだからね!」
ひとしきり笑いあった後
「…それじゃあ、またね」
「…うん、またね」
今日は雲ひとつない青空
そよ風が2人分の頬を撫でるように、優しく優しく吹いていた
少しして帰ってきた凛ちゃんは
「穂乃果ちゃん!今日帰りにラーメン食べにいこうよ!」
私はもちろん
「うん!もちろん、行こう!」
「やったー!凛、今日はいっぱい練習してお腹ぺこぺこにするにゃー!」
そう言っていつも通り元気いっぱいはしゃぐ凛ちゃんの目は、少しだけ赤かった
その日の練習後、約束通り2人でラーメン屋さんに行った帰り道
「穂乃果ちゃんは何でμ’sを始めたの?」
突然凛ちゃんが聞いてきた
「学院が無くなっちゃうのが嫌だったからだよ」
そう、あの時私は学院が無くなるのを阻止するため、海未ちゃんとことりちゃんを誘ってμ’sを始めたんだ
「学院の為だけにμ’sを始めたの?」
そう言われるとちょっと悩む
「うーん?学院が無くなるって聞いてから、私もそうだったけどみんななんか元気が無くなってきて」
「でも、私、やっぱりみんな笑ってるのが好きだから」
「みんなで元気になれるスクールアイドルをその時初めて知って、それではじめようと思ったんだよ」
これを聞いた凛ちゃんは、納得いったという表情で
「そうだよね!みんなと一緒に笑えるからだよね!」
「わたしね?初めてμ’sのライブを見た時、すっごいキラキラしてて、かわいくて、そして何よりもすっごい楽しそうに見えたんだ」
「凛は髪の毛も短くて、男の子みたいだけど、それでもかわいくなりたくて…」
「その時偶然μ’sのライブを見て、私もこんなに楽しそうに輝いて、かわいくなって、そしてみんなを笑顔にしたいって思って」
「かよちんが入るときに一緒に入れてもらったけど、実は私のほうがμ’sに入りたかったのかも」
ここまで言うと凛ちゃんは顔を赤くして
「あっ!これみんなには内緒だよ!絶対言わないでね!!」
「ねえ、穂乃果ちゃん、凛はちゃんとみんなを笑顔に出来てるかな?」
「りっぴーみたく皆に最高の笑顔、届けられてるかな?」
心配そうな顔で私を見つめる
そんな怒られそうなネコちゃんみたいな顔しないで、凛ちゃん
「凛ちゃんはμ’sでいて楽しい?」
と、私は逆に質問する
「楽しいに決まってるよ!μ’sは最高に楽しくって、最高にかわいいんだよ!」
「だから凛はいつも笑顔でいられるんだよ」
凛ちゃんは訴えかけるように私に話しかけてくる
だから私は教えてあげるのだ
「うふふ、だったら間違いなく大丈夫」
「凛ちゃんの楽しさはちゃーんと皆に伝わってるよ」
「飯田さんも言ってなかった?」
「だって、凛ちゃんは『マジえんじぇー』なんだから」
凛ちゃんは最っ高のキラキラ笑顔で
「うん!!」
空に輝くお星さま、皆が一緒に輝いて
街の明かりに負けないくらい、素敵な光でみんなを照らす
そんな素敵な星空の日だった
第7章 「リッピング=リンク」 完
再開します
第8章「小鳥の羽根は夢色に彩取られ」
私にはとっても大事な幼馴染が2人いる
一人は園田海未ちゃん
園田道場兼日舞家元という家の娘さんで、本人も大和撫子を体現するような見た目の子
性格はおとなしい方で、昔はすっごい泣き虫だったんだよ
今はすっかり怒りんぼになっちゃったけど
でも、とっても優しいし、とってもかっこいい自慢の大親友なんだよ
そしてもう一人は南ことりちゃん
音ノ木坂学院の学院長先生の娘さんで、女の子の中の女の子と言った感じの子
すっごい優しいし、すっごいおしゃれだし、すっごいかわいいしで、穂乃果の目標でもあるんだ
何かあった時は、ことりちゃんに癒して貰うというのが最近のマイフェイバリット
小さいころからのもう一人の大親友なんだ
なお、海未ちゃんに対しては何故か100戦100勝の強さを持ってるんだよ
本人は否定するけど、私たち3人の中で実は一番しっかりしているのはことりちゃんであるというのが私と海未ちゃんの定説なんだよ
そして今回は、そのことりちゃんのお話です
「さあ!今日はライブだ!」
おはようございます!皆様!
本日μ’sはライブの日
しかも結構大きめの会場での単独ライブなんだよ!
なんでもスクールアイドルのネットランキング上位の中から抽選で会場を貸してくれるシステムがあるらしく、にこちゃんが応募してくれてたんだって
さすが部長!頼りになるね
ライブは午後からだけど、準備とかフォーメーションの確認とかやる事は盛りだくさん
だからいつもより早い時間に、学校に集合して、みんなと会場に行く事になってるんだ
私はいつもの待ち合わせ場所に向かうと
ふふっ、わが愛する幼馴染達がすでに待っているのが見える
いつもの光景、いつもと一緒
私はいつも通りに元気にご挨拶
「おっはよー!海未ちゃん!ことりちゃん!」
「おはようございます、穂乃果、今日はキチンと時間通りですね」
海未ちゃんに褒められたよ!
今日は幸先いいね!
そして、ことりちゃん!
今日も私を甘やかしてね
「おはよー、穂乃果ちゃん」
……あれ?終わり?
「お、おはよう、ことりちゃん!」
「何だか今日はいつもと違うね」
今日はいつものホンワカした感じとはちょっと違う気がする
「まぁ、いつもは別々に学院へ行ってるし、そりゃ違うでしょ」
えっ?という言葉が口をつきそうになる
ふふっ、だがこの高坂穂乃果、ついに気がついたんだよ!
こういういつもと違う事があったときは、異変が始まってるって事にね!
『ちなみにもう8人目だよ』
誰だ!頭の中に直接突っ込んでくる奴は!
まあ、いいよ、成長した私は心も広いんだよ
「何で、穂乃果ちゃん1人でドヤ顔してんの?」
あれ?顔にででた?
「まぁ、穂乃果がこうなのはいつもの事ですから…」
海未ちゃんも何気に酷くない?
「ヒドイよ!2人とも!穂乃果の事おかしな子みたく言わないで!」
抗議の意を表明するが
「取り敢えず学院に行こうか?」
「そうですね、行きましょう」
「うわ〜ん!穂乃果の扱い悪くない?」
と、泣く私に
「はいはい、行くよ」
と、ぞんざいな返事しかしてくれないことりちゃんだったけど、その横顔に浮かぶ笑顔は、何故かすっごく可愛いかった
学院に向かう道で気がついたけど、このことりちゃんはちょっと人見知りな感じがするね
距離感がいつもより遠い感じで寂しいよ
でも、穂乃果や海未ちゃんのお話しで笑ってくれる時は、すっごい可愛い笑顔で笑ってくれるの
いつも可愛いけど、いつもとは何となく違う感じかな
あと、特徴的なのが
「大丈夫?私、取り敢えず穂乃果ちゃんの事信じてないからね?」
とか
「まぁ、穂乃果ちゃんのする事だから」
といった感じで穂乃果の扱いがスッゴイ悪い
でもね
「ヒドイよ!ことりちゃん!」ギュ-
なんて抱きついたりしても
「イヤー!」
とか言うものの、ちょっと顔を赤らめつつも本気で嫌がってるわけでもなさそう
うーん、嫌われてはなさそうだけど、ずいぶん勝手が違うなぁ
後でえみつんによく聞いておかなきゃね
そうこうしているうちに、学院へ到着
「さぁ、みんな集まったところで、早速だけど最終の打ち合わせをしましょう」
絵里ちゃんの言葉に
『はいっ!』
みんな声を合わせる
と、その時
「あの!ちょっといいかな?」
ことりちゃんが声をあげる
「あのね、今日のセットリストなんだけど、1回目の衣装チェンジの後、『ススメ→トゥモロウ』を入れたいと思うの!」
ことりちゃんの言葉に
「何言ってんの?今からじゃ変更どころか追加なんて無理に決まってるじゃない!」
にこちゃんが反対する
「そうよ、ことり、あなた達の負担も増えちゃうし、今からというのは少し厳しいんじゃないかしら?」
絵里ちゃんもにこちゃんに賛同する
いつものことりちゃんだったら、間違いなく引くところだけど
「でも、μ’sを知って貰う意味でも、この順番で歌った方が、もっと良いものになると思うの!」
「お客さんも絶対盛り上がってくれると思うし…」
なるほど、さすが、ミナリンスキーの中の人
自分たちの負担どうこうじゃなく、どうしたらお客さんが喜んでくれるか、そして何よりμ’sを好きになってくれるかを考えた結果、こうしたかったんだね
私は海未ちゃんの方を見ると、海未ちゃんも私の方を見て、にっこり笑う
そうだね!ライブはみんなで楽しむものだからね
「私からもお願い!何とかそこで歌わせて欲しいの!」
私が言えば
「私もことりの意見に賛成します」
海未ちゃんも続く
「穂乃果ちゃん…海未ちゃん…」
『お願いします!』
私達の言葉に
「本人達が出来るって言ってるんだし、やって貰ったらいいんやない?」
希ちゃんが賛成してくれる
「まぁ、確かにそっちの方が流れ的にはいいかもね?」
真姫ちゃん!ありがとう!
「ライブにはストーリー性も大事です!私も賛成するよ!」
「凛も盛り上がった方がたのしいし、大賛成だにゃー!」
花陽ちゃんも凛ちゃんも賛成してくれた
「だって、どうする?にこ」
絵里ちゃんがちょっと困った顔でにこちゃんに聞く
「ことりのファンとかライブに懸ける想いはよく知ってるつもりだったけど、ここまでとはね」
「わかったわ、それで行きましょう!」
にこちゃん!
「そのかわり、最高のパフォーマンス、見せてもらうわよ!」
ことりちゃんは本当に嬉しそうに
「ありがとう、みんな!」
「最高のライブにしようね!」
『おー!』
よーし!!気合い入ってきたぞぉ〜!!!
こうして始まったライブは予想以上に大盛り上がり!
終盤一息つけるためのメンバーご挨拶の時間
ワンマンの上、時間があるからこんな事も出来ちゃうんだ!
メンバー各々お客さんを盛り上げていき、ことりちゃんの番
「今日は盛り上がってくれてるけど、さっき柵とかよじ登ったり、倒しそうになってたでしょ!」
「次やったらライブ中止にするからね!」
な、何でお説教?
でも、お客さんは怒ったり、引いたりするどころか
\はーい!ごめんなさい!/
盛り上がってる!なんで?
さらにことりちゃんが挨拶を続けていると
\そのスペル間違ってる/
「うっせー!だまれ!」
\お水おいしい?/
「……普通」
うわわ、流石にそんな事言っちゃダメだよ
取り敢えず、止めなくちゃ
なんて焦っているわたしをよそに、他のメンバーは平然としてる
なんで?
答えはすぐにわかったけどね
\ワハハ!!/
\ことりちゃん最高!/
\ご褒美!!/
お客さんはみんな満面の笑み!
スゴイ!あんなに言いたい放題だったのに!
と、とりあえずこの勢いでライブを一気に最高潮までもっていくよ!
「にゃー!今日のライブはサイコーに、楽しかったね!」
あの後、自分の混乱を紛らわすために、ガンガン煽りまくって一気に突き抜けた結果、初めてのダブルアンコールまでもらって、ライブは大大大成功となった
「穂乃果!終盤の煽り、最高だったわ!」
にこちゃんに褒められたよ
「本当にスゴかったよ!いつも見てただけの私が、こんな凄いライブの舞台に立てるなんて!」
そう言う花陽ちゃんは、ちょっと目が赤くなってる
「でも、ことりちゃんの発言には、ちょっとおどろいたかな?」
私がつい、本音を言うと
「ホントにね、ことりのロックさはブレないわね」
「でも、お客さんはそれを求めてるわけやし、ええんやない?ロック」
と、絵里ちゃんと希ちゃん
「まぁ、ことりらしさが出てていいんじゃない?」
「ことりの想いの強さを感じられて、私も好きですよ、ロック魂」
真姫ちゃんと、海未ちゃんもことりちゃんを褒めると
「///えっ?なに?この流れ、ちょっとパス」
ことりちゃんは照れて、控室を出て行っちゃった
「はい、穂乃果ちゃんいってらっしゃーい!」
「穂乃果、流石にそんなに長時間ここに居られるわけじゃないから、早めにしてね?」
えっ?何?
「で、でも私、ことりちゃんからの扱いが悪いし、私がいっても…」
「何言ってんのよ、ことりのことマトモに扱えんのなんてアンタしかいないに決まってるでしょ」
「さっさと行ってきなさい!」
私は、にこちゃんに控室を追い出される
何だかわかんないけど、任されちゃったみたいだし、ことりちゃんの所に行ってみよう!
ことりちゃんはすぐに見つかった
だって控室を出た目の前の自動販売機の所にいたからね
「ぷふぁー!ひと汗かいた後の水は最高だね〜!」
「ことりちゃん」
何やら満足そうに水を飲んでいたことりちゃんに声をかける
「穂乃果ちゃん、今日のライブ最高だったね」
「ことりちゃんのおかげだよ!」
「ことりちゃんが曲目とか、トークとか、色々一生懸命考えてくれたお陰でスッゴイいいライブになったよ!」
すると、ことりちゃんは
「ありがとう」
「でも、ライブが盛り上がったのは、μ’sみんなの力だよ!」
「そして、穂乃果ちゃんの力」
私を見つめたまま、ことりちゃんは
「また、穂乃果ちゃんに勝てなかったよ」
「スゴイね、やっぱり」
「私のライバル、私の目標」
えぇっ?こんなに凄いことりちゃんにライバルなんて言ってもらえるなんて
私が心を震わせていると
「いやー、お水の飲みすぎで酔いがまわっちゃった!」
「穂乃果ちゃんにも、ちょっとは良いとこあるんだって、感動しちゃった!」
「ただのドジっ子じゃないんだね!」
お水で酔いがまわるのかは知らないけど、元の調子に戻ったことりちゃんは
「帰るよ!穂乃果ちゃん!」
「帰って思う存分お水を飲みまくろう!」
「うん!そうだね!」
その日の夜
いつもの公園でえみつんから情報収集
したいんだけど…
「プイッ…」
なんかスッゴイご機嫌斜め
「あの、えみつん?どうしたのかな?」
恐る恐る聞いてみると、
「あーん?アタイに話しかけてんの?」
ヤンキーだ!本で読んだことある!
「いや、ことりちゃんの中の人のこと、教えて欲しいなって…」
すると、ヤンキー(ぬいぐるみ)は
「人のスケに手ぇ出しといて、何抜かしてんのさ!あぁん?」
見た目がぬいぐるみの為、全く怖くは無いし、言っている意味が全くわかんないけど
「いや、私はただ、あんな凄い人に褒められて純粋に嬉しかっただけで…」
私は、取り敢えず感じた事を素直に伝える
すると
「ん?穂乃果、うっちーの事、凄いって思った?」
なんか食いついてきた
「うん!思った思った!」
「んふふっ、そうか、そうだったのか、穂乃果にもやっぱり解っちゃったのか」
「な、なんかこう、尊敬出来るって感じ!」
「はぁーあ、そうかー、やっぱりなぁ、そうなっちゃうよなぁー」
えみつんは、うんうんと頷きながら、1人納得している
そして、なぜかドヤ顔で
「仕方ないねぇ、今日の事は水に流して、特別にうっちーの凄さとか、可愛さを教えてあげちゃおうかなー!」
メンドくさそうな雰囲気を感じた私は、
「わ、わーい!うれしいなあ!」
「よし!穂乃果に教えてあげよう!私のうっちー事を!」
—こらー!誰がえみつんのだー!−
はて?何か聞こえた気がするけど…気のせいかな?
「ことりちゃんを演じているのは『内田彩』ちゃん」
「みんな『うっちー』って呼ぶよ」
「声優さんとしての実績はμ’sの中でも頭1つ抜けた存在だね」
おぉっ、凄い!
「今でも十分な演技の幅の広さがあると思うんだけど、まだまだ上を目指して、日々研鑽を怠らない、向上心の塊みたいな人なんだ!」
「ちょっと恥ずかしがり屋さんなんだけど、それでもお仕事には真摯に向き合って、妥協せず、常に全力で頑張る、素晴らしい女性なんだよ」
「例えば、ことりちゃんの場合なんて、髪型や色まで完璧に再現して、仕草もどうやったら可愛く見えるかを徹底的に研究したんだ」
「そして遂に、ことりちゃんが具現化したとまで言われた状態まで、たどり着いたの」
「私達と穂乃果達が同化現象を起こす発端は、うっちーだったのかも知れないね」
ス、スゴイ!さすがプロ!
「私は、穂乃果と出会った頃、声のお仕事はまだまだ走り始めの素人だったの」
「この企画が始まって、最初にお客さんの前でイベントをしたのはprintempsだったんだけどね」
おぉっ、そうなんだ!
「本当にお客さんなんて来るのかな?なんて言ってたの覚えてるな」
私達の気持ちと同じだ
「会場はゲーマーズさんの2階でね、80人位のお客さんにお渡し会をしたのね」
80人?私が見た夢はドームが満員だったのに
えみつん達、どれだけ頑張ったんだろう
「その時、うっちーはそのお客さん達の前でこう言ったの」
『絶対ここにいる80人が自慢できるようにするからね!』
か、カッコイイ!
「私はずっとその言葉を覚えてて、恥ずかしいけど、何かあった時の心の支えになってるんだよ」
えみつんは、内田さんの事本当に尊敬してるんだ…
「私はうっちーの事、勝手に尊敬して、勝手に目標にしてるんだけど、中々難しいね!」
「えみつん、そんな事ないよ!」
「だって、ドームを満員にしたんでしょ!それはきっとμ’s全員が成長した証拠なんじゃないかな?」
「穂乃果…」
「まぁ、うっちーに褒めて貰った奴は余裕だわな」
アレ?なぜかまたヤンキーが帰ってきたぞ?
「アタイなんざ、いっつもうっちーに怒られるわ虐められるわで、ちっとも仲が進展しないってのに」
「何が目標だ!あんなのただのリップサービスだよ!わかってんの?あぁん?」
「調子に乗んなよ!後で体育館の裏に来いよ!わかってんのか?あぁん?」
いや、この時間では体育館の裏には行けませんよ、番長
「人のナオンにちょっかい出したら…わかってんの?あぁん?」
ナオン?何語?マジでイミワカンナイ
考えろ、考えるんだ!私!
そ、そうだ!
「私とえみつんは一心同体、つまりは同じ人な訳でしょ?」
「それがどうしたっていうのさ?あぁん?」
「私がもし、評価されたとしたら、それはえみつんが評価されたって事なんじゃないの?」
えみつんの頭の上にピコーン!と電球が浮かぶのが見えた
「そ、それはつまり…私がうっちーに褒められたという事」
「そ、そうだよ!ヤッタね!えみつん!」
「やったー!遂にうっちーがデレた!私は一歩うっちーに近づけたんだね!」
言葉の端々に怪しい単語が出てきているが、ここはスルーしてあげるのがオトナの対応だね
「そ、そんな素晴らしい内田さんの事、もう少し知りたいなぁ!」
「もぅ!しかたないねぇ!そこまで知りたいなら教えてあげるよ」
な、何だか今回はいつも以上にメンドくさいなぁ
「うっちーってば頭の回転がスッゴイ早いのにアドリブ苦手っていうか、大っ嫌いなんだよ」
「変なフリをされた時のあの慌てようとか、変なステップとか、最高にカワイイの!」
「あと、お水大好き!」
「隙あらば、お水を飲んでるイメージ」
そういえば、今日のライブ中もやたらとお水を飲んでたような
「お水と同じくらいお酒大好き!」
「い、一応アイドルだよね?」
「そうだけど、うっちーの場合は大抵ロックだから、で済むから大丈夫」
そっちの方がよっぽどロックだよ!
「ちなみにうっちーとシカちゃんと私は『ぷりんたいず』を結成してるよ!」
ぷりんたいず?前も聞いた気がする
「えみつん?それってprintempsのいい間違えじゃないの?」
恐る恐る聞いてみる
「違うよ!3人でお酒をガブ飲みする時のユニット名だよ!」
「ファンのみんなも知ってるよ?」
なんてロックなアイドルなんだよ!μ’s!
「ここまでやってもファンのみんながロックだからで許してくれてるのは、やっぱりうっちーがファン第1でやってるのを、みんなわかってるからなんだよ」
「やっぱり私はうっちーを心の底から尊敬するね」
ここまでくると愛だね!
「そして出来ればずっと一緒にいて、老人ホームも同じトコに入りたいくらいだね!」
うん、でも歪んだ愛だね!
その後もえみつんはなんやらかんやらといっているが、もうそっとしておこう
どうやら内田さんは一筋縄ではいかないっぽいね
ロックとはよく言ったもので、きっと自分の信念に基づいて行動しているんだろうね
それでも、大親友のことりちゃんのためなんだから、私だって負けないよ!
私も信念ならある
いざとなったらガチンコ、ロック対決なんだから!
「あっ!ちなみに本気になったうっちーは、マジで私に対してドSだから、ガンバってね」
えみつんが嬉しそうにいらない報告をしてくれる
「えっ?それはちょっと…」
私が躊躇すると
「大丈夫だって!だんだんとそれが心地よくなってくるんだって!」
「そんな感覚味わいたくないよ!」
「そんな事言ってぇ、いっつも海未ちゃんに怒られながらも、ちょっと嬉しそうな感じにしてるじゃん!アレだよ!」
「///してないし!何言ってんの?!」
私が全力で否定すると、真面目な顔で
「あなたには才能がある、大丈夫、自分を信じて!」
「自分の中にある、えみつんの部分が全く信じられないよ!」
「いけるって!いこうよ!さぁ!いつものいくよ!」
「いやだぁ〜!」
「せーの!ファイトだよ!」
「うわ〜ん!ファイトだよ!じゃねーっつーの!!」
こうなったらロックだ!私もロックで対抗してやるぅ!
しかし、次の日、私は本当のロックの意味を知る事になる
しぇけなべいべー
「ちーこーくー!!」
なんか久々のこのセリフ
「まぁ、描かれてないだけで、かなりこのセリフ聞いてるけどね」
「うるさい!言わなきゃ分かんないのに!」
カバンにブラブラくっ付いてるだけの癖に!
時間は完全遅刻時間をぶっちぎり、1時間目に突入している
なんで誰も起こしてくれなかったのぉー!
お母さんも雪穂も今日は全然起こしてくんなかったし、海未ちゃんやことりちゃんも全然連絡ないし、穂乃果遂に見捨てられちゃったのぉー?
などと、嘆いていても時間は戻らない
とにかく走って学院を目指せー!
なんとか学院に到着し、校門をくぐった時
「おはよう、穂乃果ちゃん」
えっ?ことりちゃんのお母さん、じゃない学院長先生!
「お、おはようございます!」
「遅刻しちゃいました!ごめんなさい!」
ビックリした!なんでこんな時間に学院長先生がこんなトコにいるの?
「穂乃果ちゃん、この時間に堂々たる登校ですね」
うぅ、怒られる
そりゃ、この時間じゃ怒られるよね
「その心意気、ロックね!さすがだわ!」
「…はい?」
「決められた時間に縛られず、自分の中の確固したものだけで行動する」
「ふふっ、私ももう少し若ければね…」
うん、全くイミワカンナイけど、なんか褒められてるし、ここはスルーだね
「それじゃ、私教室に行きますので」
ことりちゃんのお母さんは、サムズアップポーズで私を見送ってくれた
…明らかにオカシイね
教室にたどり着いた私は、恐る恐る中に入り
「お、おはようございます、高坂で御座います」
静々とあいさつしながら中へ入る
すると、
「高坂、今何時だ?」
先生が笑いながら聞いてくる
「は、はい、9時半です…」
「学校の始まりは何時だ?」
「は、8時30分です…」
うぅ、みんなの前なのに、辛いです
すると、先生は
「解っていてこの時間の登校とは」
ザワザワ
お、怒られるぅ
「さすが!ロックだな!」
えっ?
「みんな!これがロックってヤツだ!覚えとけよ!」
サスガリーダー…カリスマ…ミューズハンパナイ…
あれ?褒められてる?
我が親愛なる幼馴染たちも
「ふふっ、皆さん、彼女こそが我が心の友『高坂穂乃果』です」
海未ちゃん、素敵なドヤ顔だよ
ことりちゃんは…
ニコニコ笑って見てるだけ
でもなんかスッゴイ嬉しそう
うーん、今までのパターンからすると、今ことりちゃんは、内田さんのハズ
ならば次の休み時間が勝負だよ!
あっという間に来た休み時間
なぜかみんなに囲まれて賞賛の言葉をかけられる私だったが目標は
「ことりちゃん、おはよう!朝はゴメンね?連絡も出来なくて」
いつも通りのあいさつで、様子見だよ!
「おはよう、穂乃果ちゃん、流石のロック魂だったね、感動しちゃった!」
「私も穂乃果ちゃんみたくなりたくないけど、頑張るよ!」
少々心にグサリとくる言葉、昨日と変わる所はないような気がする、でも
「昨日のライブのことりちゃんのロックには負けるよ!アレこそが私の求めるロックだよ!」
まだまだ、攻めるよ!
「まぁ、いっつもカミカミの穂乃果ちゃんとは違って、キチンと喋れる位しか出来ないから」
あぅぐっ!心が…でも…もう少し
「そういうことりちゃんのロックな発言こそが、私の原動力なんだけどね!」
ドヤ!私のロック!感じるがいいさ!
会心の笑みでことりちゃんを見ると
オミズチュー
聞いてなーい!
「負けました、参りました、貴方こそが本物のしぇけなべいべーです」
完敗した私はお詫びの言葉をことりちゃんこと、多分内田さんに送る
両手で顔を覆うように笑う姿は、いつものことりちゃんとはちょっと違う
「ここじゃなんだから、また後でね」
内田さんは、みんなには聞こえないように私に言った
そして昼休み
海未ちゃんには
「ちょっとしぇけなべいべーしてくるよ!」
と伝えると
「ふふっ、ロックですね」
といった感じの謎の会話が成立し、ことりちゃんと2人で家庭科室へ
家庭科室に入るや否や
「えみつん、何でずっと隠れてるの?」
ことりちゃんこと、内田さんがえみつんに話しかける
………
なぜかえみつんは無視してるね、なんでだろ?
「ふーん、私のこと、無視するんだ、悲しいなぁ」
ピクッ
あ、なんか反応してる
「私、えみつんはお友達と思ってたけど、違ったのかな?」
「ゴメンね、なんか1人で勘違いしてた」
「違う!違わないけど!違うのうっちー!!」
うわっ!いきなり人間化しないでよ!ビックリするじゃん!
でも、内田さんはそんなに驚くこともなく
「出てきたね、えみつん」
「なんでこんな楽しいこと、1人でしてんの?」
「ズルくない?」
いきなり文句タラタラだ
「ち、違うんだよ、うっちー!」
「これは色々訳があって、本当はこんなになっちゃいけなくて…」
えみつんが一生懸命言い訳を始める
その後もしばらくは、内田さんの文句や罵詈雑言に対して、えみつんがひたすら謝るといった光景が続いた
なんだ、このカップル
最終的には
「ま、いいけど」
という簡潔にして慈悲深き言葉によってえみつんは許されたみたい
「解ってもらってよかったよ!」
「じゃあ、うっちー!ことりちゃんを穂乃果達に返してあげて!」
ふぅ、わかってもらえてよかったね、えみつん
ことりちゃんも元に戻るし、一件落着だよ
しかし、内田さんの答えは
「え?なんで?」
「返すも何も、私はことり、ことりは私」
「何をどうするって?イミワカンナイんだけど」
あれっ?意外とめんどくさい人?
でもえみつんを見ると、まんざらでもないような顔をしている
…大人って複雑なんだね
「うっちー?そんなワガママ言っちゃダメだよ?」
「えー?ワガママじゃないし!」
「で、でもほら、穂乃果が困ってるよ?」
うわっ!こっちに振ってきた!
身構える私に対して内田さんは
「あ、初めまして、穂乃果ちゃん、内田彩と言います」
「ことりがいつもお世話になってます、ありがとうね」
あれ?かなり態度が違う
「こ、こちらこそ初めまして、高坂穂乃果と申します」
「ことりちゃんにはいつも助けてもらってて、ありがとうございます」
私が挨拶すると、内田さんは、はにかんだ笑顔を見せる
…かわいい
「ちょっと穂乃果!何うっちーに色目使ってんの?」
えみつんが絡んでくる
「えみつん?今は私が穂乃果ちゃんと話してるんだけど?」
「はい…」
怒られてる
えみつんに対しては厳しいね
少女マンガファンの私的には、この態度はアレなんだけど
うーん?わかんないや!
そんなことより
「内田さん!ことりちゃんを私に返して下さい!」
「とっても大事なお友達なんです!ずっと一緒にいるって約束したんです!」
「内田さんがことりちゃんのこと、すっごく大事に想ってくれているのはわかります」
「でも同じ位、いえ、もっと大事に想ってるんです!」
ことりちゃんに対する私の想い
私は難しい事はいえないから、心の中の想いをそのまま口に出す
内田さんは「むぅ」と考える素振りのあと
「やっぱイヤ」
「そ、そんな!」
「だって、私ことりだもん!イイじゃん、私すっごくことりになれるよ?」
「ち、違うんです!ことりちゃんは『うっちー!』
えみつんが割り込んでくる
「うっちー、わかるでしょ?ダメだよ」
諭すように内田さんに語りかける
さっきとは雰囲気が違う、真面目なトーン
「…でも嫌だし」
「うっちーが頑張ったの、みんな知ってるよ?」
「頑張った結果、この世界に命が吹き込まれたんだ」
「でも、この世界はもう穂乃果達のものなんだよ?」
わかるでしょ?えみつんは優しく語りかける
「…えみつん嫌い」
内田さんはそう呟く
「私はうっちー好きだよ」
えみつんは微笑みながら内田さんの肩に手を置く
「…ことりと2人でお話ししたい」
「うん、わかった」
えみつんに促され、私たちは部屋を出る
…やっぱり大人って難しいな
部屋に1人残された彩は
「………やっぱりイヤ…」
本当は何が正しいかなんてわかってる
年下の高校生に対して迷惑をかけているのもわかる
でも、それでも心が言うことを聞かない
彩は心の底からことりを想っている
だからこそ、離れたくないという気持ちが強すぎて、自分でもどうしていいのかわからなくなっているのだ
「うぅっ…」
涙が頬を伝うのがわかる
その時
「彩ちゃん、泣かないで」
「大丈夫、ことりは大丈夫だから」
「昔みたく泣き虫な子じゃ無いんだよ」
「彩ちゃんのおかげで、強くなれたから…」
ことりの声が聞こえる
彩が声を出している訳ではない
ことりという1人の少女の声が、確かに聞こえたのだ
「…私の方がオトナなんだけどね」
穏やかな微笑みを浮かべたその時
もう1人の『南ことり』がそこに現れた
「すごい、ことりがもうひとりいるみたい」
ことりが驚くと彩は心配そうに
「私、ことりになれてるかな?すっごい頑張ったんだよ!ことりの魅力をみんなに伝えなきゃって思ったから」
と質問する
ことりは満面の笑みで
「うん!ありがとう!ことりがこうしてみんなと一緒に過ごせるのはあなたのおかげです、ことりが今とっても幸せなのは、彩ちゃんががんばってくれたから、だから言わせてください」
そう言うと、ことりは深々と頭を下げ
「ありがとう、わたしに命をくれて」
「ありがとう、わたしを好きでいてくれて」
「彩ちゃんで良かった、こんな素敵な人に出会わせてくれた神様にも、ありがとう」
すると、今度は彩が深々と頭を下げ
「わたしも、ありがとう」
「衣装すっごいかわいいのいっぱい着たよ」
「すっと夢だったキャクターそのものになるっていう夢がかなったよ」
「ことりと一緒にすっごい成長したんだよ!」
「ことりもみんなと、そして彩ちゃんと一緒に成長できたかな?」
彩はエヘンと胸を張ってこう答えた
「当然だよ、だって私とことりは一心同体2人で1人、これからもずっとずっと一緒に過ごしていくんだから、でも、わたしすっごいスピードで成長しちゃうから、置いて言っちゃうかもしれないよ」
ことりは頬をぷうと膨らまし
「ことりだってまけないよ、すっごい頑張ってあっという間に追い越しちゃうよ」
ふたりは顔を並べて笑いあう
そこに涙は無い
「そしたら、またね、ことり」
「次会うときはもっともっとかわいいことりになっちゃうから、覚悟してね」
「うん、またね、彩ちゃん!ことりももっとかわいくなって彩ちゃんをもっともっとかわいくできるように頑張っちゃうから」
2人で約束の指切り
そしてコツンとおでこを当てながら、挨拶を交わす
『それじゃ、また逢う日まで』
空を飛ぶ鳥達が、まるで2人の未来を応援するように
可愛らしく、そして軽やかなリズムで
さえずり続けていた
放課後
今日の練習は雨のためお休み
みんなはそれぞれ自主練習やライブの準備をしている
私はことりちゃんのお手伝いのため、服飾室にやって来た
…今、ジャマするだけって思ったでしょ!
これでも裁縫くらいは普通に出来るんですー!
部屋の前まで来ると、ミシンの音が聞こえる
でも、今日のミシンの音はいつもと違うような気がする
私はそんな事を考えながら部屋に入る
「ことりちゃん、お手伝いに来たよ!」
私の声を聞くと、ことりちゃんはニッコリ笑って
「穂乃果ちゃん!ありがとう!」
「でも、今日はスッゴイ調子がいいから1人でも大丈夫だよ!」
ことりちゃんがこんな風に断るなんて、珍しい
「…だから、ちょっとことりのお話し相手になってくれる?」
「もちろん!」
そうだよね、色々話したいこと、あるよね
私が同意すると、ことりちゃんはお裁縫を続けたまま、話し始めた
「私ね、最初穂乃果ちゃんがスクールアイドル始めるって言った時、とってもワクワクしたの」
「だって、高校に入ってから3人一緒に何かできることって少なくなってたから」
「またずっと一緒にいられる時間が増えるんだって思ったの」
ふふっ、ありがとう、ことりちゃん
「実際楽しかったし、お友達もどんどん増えて、いつの間にか9人になって」
本当だね
「ライブの時もみんなかわいいし」
ことりちゃんがスッゴイかわいい衣装を作ってくれるからだよ
「私も女の子だから、もっと可愛くなりたいなって思ったんだけど」
「それよりも思ったのは、みんなの可愛いとこ、もっと見て欲しい」
「どうやったらみんなの可愛さを表現出来るのかなって事」
ことりちゃんらしいね、みんなの事まで考えちゃうなんて
「気が付いたら衣装のデザインの勉強を心の底から楽しんでる自分がいるのに気がついたの」
「私、今までずっと穂乃果ちゃんと海未ちゃんの背中を追いかけるのに慣れすぎて、自分でどこに行きたいかなんて考えもしなかった」
「でもアイドル活動を通して、自分の好きな事、やりたい事に気がつけた」
「好きな事に夢中になれるって凄いんだね!」
「ちょっと夢中になりすぎて、迷惑もかけちゃったけど…」
ふふっ、全然いいんだよ
「今日ね、彩ちゃんとお話しして嬉しかった事があるの」
「彩ちゃんは演者として、南ことりはどうやったら可愛く見えるか、どうやって南ことりの魅力を伝えられるのかを必死に考えて、練習して、みんなに伝えてくれたんだって」
「それを聞いてね、私似てるなって思ったの」
「私のみんなの魅力をもっともっと伝えたいって気持ちと同じなんじゃないかな?って」
「それってつまり、彩ちゃんの心が私と繋がってるって事だよね!」
「私は彩ちゃんに命を吹き込まれた瞬間から、彩ちゃんと一緒だったんだ!」
「そしてこれからもずっと一緒にいてくれて、私に勇気をくれる」
「だから私、自分を信じて歩いて行こうって決めたんだ」
「自分で決めた道を歩いて行くのは怖いけど、1人じゃないから」
「だから、穂乃果ちゃんの事もすぐに追い抜いちゃうよ」
「だってことりと彩ちゃんが協力したら、ロックでかわいいスーパーことりちゃんになっちゃうんだから!」
「おぉっ!なんかすごそう!でも、私達も負けないよ!」
「だから競争だ!」
「うん!じゃあ今からいくね?」
「いいよ!じゃあ、せーの!」
『スタート!!』
卵から孵った雛鳥も、もう巣立ちを迎える季節
その羽根はまだまだ小さいかもしれないけれど、それでも懸命に羽ばたいて
抱いた夢とともに、天高くどこまでもどこまでも、自分の信じる道を進んでいく
心に決めた決意とともに
第8章「小鳥の羽根は夢色に彩取られ」完
再開します
第9章 「ほのかな笑みにさそわれて」
『新田さん、今度はこの作品のオーディション受けてみたら』
『結構な大型プロジェクトなんだけど、条件の歌えることっていう項目のウェイトが大きいみたいだから、新田さんにピッタリじゃない?』
「ほ、本当ですか?私受けます!頑張ります!」
『やる気があるのは結構、じゃあ応募しておくわね』
『新田さん!おめでとう!オーディション合格ですよ!』
「やった!ありがとうございます!」
「私が主役だなんて、信じられないよ!」
「『高坂穂乃果』か…」
「よーし!頑張るぞ!」
「お早うございます!高坂穂乃果役の新田恵海です!」
「初めてのレコーディングだ、本物のスタジオ、すごい!」
「緊張したけど、結構歌えたよ〜!」
「私の歌がCDになるなんて、うれしいよ!」
「これがコミケって奴かぁ」
「すっごい人だ、これだけいれば私たちのCDも結構売れるんじゃないかな?」
「…以外と売れないなぁ、ちょっとヘコむ」
「すず!久しぶり!また共演できるなんてうれしいよ!」
「楠田さん!レコーディング以来だね!よろしくね!」
「飯田里穂ってあのテレビ戦士の?すごい!」
「μ’s」
「私たちのグループ名」
「芸能の女神って意味なんだ、カッコいい」
『初めてのイベント…誰も来なかったらどうしよう』
「久保さん…怖いこと言わないでぇ」
『ここに来た80人が自慢できるようにするから!』
「内田さん、すごい!そうだ、私も頑張らなくちゃ!」
「ニコ生?生放送ですか?」
「すずとうっちーと一緒なんだ、この2人と一緒なら…」
「うぅっ、南條さん、初めてのライブ…緊張して吐きそうです」
『そんな緊張しなくても大丈夫だって、楽しんでいこう!』
「アニメになるなんてすごい!」
「穂乃果!私達のやってきたことがついにここまで来たんだ!」
「まだまだ頑張るぞー!」
「えっ?すずニコ生降りるんですか」
「…そうだよね、すっごい忙しそうだもんね」
「pileちゃんが一緒に?もっとお友達になるチャンスだね!」
「アニメロサマーライブ?!知ってます!」
「そこで歌えるんですか?すごい!」
「最近イベントに参加できることも多くなってきたし、2回目のライブも近いし、ひょっとしてこれって凄いことになっていくんじゃ?」
「2回目のライブもみんな盛り上がってくれたし、3回目も決まったし、ノンビリしてられないね、穂乃果!」
「穂乃果が動いてる!喋ってる!歌ってる!踊ってる!」
「凄い!穂乃果が生きてるよ!」
「μ’sのみんなやスタッフさん達の頑張りがこんな風に形になるなんて」
「私も穂乃果として、そして穂乃果のためにもっともっと頑張らなくちゃ!」
「うぅっ、またライブ中に泣いてしまった」
「南條さん反則だよ!」
「私だって泣くの我慢してたのに」
「しかもアニメ2期決定って…普通メンバーとかには知らせてるもんじゃないの?」
「穂乃果もひどいと思うよね?」
「まぁ、メチャクチャ嬉しいけど」
「凄いよ!穂乃果!μ’sはどこまでいっちゃうの?」
「私、置いてかれないようにするのが精一杯だけど、もっともっと、頑張っちゃうよ!」
「だって穂乃果のためだもん!」
「不思議と穂乃果の為なら何でもできちゃうんだよね」
「ファイトだよ!私!なーんてね」
……………
私が目を覚ますと、時間はまだ3時
今の夢は一体…
机の上を見ると、我が愛すべき恩人殿がハンドメイドのミニチュア寝具でグッスリと寝ているのが見える
えみつんの記憶?
いや、ただ私が勝手に想像したものが夢に出た可能性だってある
でも感情の起伏は未だに覚えている
夢にしてはリアル過ぎるし、私にそんなに豊かな想像力があるとは思えない
自分で言ってて悲しくなるが、客観的な考えを持ってすれば当然行き着く結果である
初めてえみつんの夢を見たとき、満員のドームでのワンマンライブという衝撃的な光景が目の前に広がっていた
今見た夢は、そんな衝撃が嘘のような、誰でも経験するような、それこそスクールアイドルのレベルでも手の届く風景
そこでは、えみつんはいつも『頑張らなくちゃ!』と言っていた
自分の為だけでは無く、μ’sや穂乃果の為にいつも頑張っていた
自惚れが許されるなら、私はこう考える
えみつんにとってμ’sや高坂穂乃果という存在は彼女の翼なのだろう
彼女には歌唱力という力はあったが、夢にたどり着く方法がなかった
そこに『ラブライブ!』という名の翼を手に入れたことにより、夢にたどり着く手段を手に入れた
もし、私ならば、あとはガムシャラに羽ばたき続けるだろう
私がそう思うということは、えみつんもそうするのだ
……変な夢を見たせいで変なことを考えちゃったよ
まだ、朝は遠い
私はもう少し、眠ることにした
「うー…眠い…」
昨日は変な時間に起きたからなんか寝不足だよ
それでも寝坊せずに起きられたのは
「やぁ、おはよう!穂乃果ちゃん!」
「爽やかな朝だよ!今日も1日頑張ろう!」
…何で朝からこんなにテンション高いんだろう?
「おはよう…えみつん、なんか元気だねぇ」
我が相棒にして、私に声と命を与えてくれた大恩人、という設定のえみつんに、爽やかな挨拶を返す
「なんか腑に落ちない思いがこもった挨拶だったけど、良しとするよ!」
「…ときに穂乃果」
「なんか変な夢とか見なかった?」
見たよ、やたらとリアルなえみつんの過去の話
私達μ’sの歴史の話
なぜだろう、この時私は本当のことは言えないと感じたんだ
だから嘘をついた
「別に見てないよ、強いて言えば海未ちゃんと結婚したくらいかな?」
「でもこれは必然的な事だし、おかしくないからなぁ」
えみつんはどこと無くホッとした様子で
「ふ、ふーん、穂乃果本人がちょっとおかしな子だから、そんなおかしな夢を見たのに普通だって思っちゃうんだねぇ」
「勉強になったよ」
朝からムカつく言い様だが、明らかに挙動不審
何か隠してるのが私にでもわかる
私は
「わー!何て言ってる間に時間がぁー!」
わざとらしく騒ぎ立て、その話題を打ち切った
私はいつも通りにいつもの待ち合わせ場所へ
そこにはいつも通り、私の憧れの人と尊敬する人が、いつも通りそこにいる
「おはよう!海未ちゃん!ことりちゃん!」
「おはようございます、穂乃果」
「おはよう!穂乃果ちゃん」
いつも通りに学院に行き、いつも通りに授業で居眠り
いつも通りに海未ちゃんに怒られ、いつも通りにことりちゃんに助けてもらう
お昼になるといつも通りにパンを食べ、いつも通りにおしゃべりする
放課後になり、いつも通り部室に行くと、いつも通りに、にこちゃんが1年生組にからかわれて、みんなで楽しくワイワイお話
いつも通りに生徒会組が少し遅れて合流し、いつも通りに屋上で練習
練習の終わりにはいつも通り、絵里ちゃんや海未ちゃんによる、まとめと今後の課題
その後は、いつも通り帰りに寄り道
海未ちゃんはいつも通りに怒りながらも付き合ってくれて、ことりちゃんもいつも通りに新メニューに挑戦する
家に帰るといつも通り雪穂にお茶を淹れてもらってノンビリして、いつも通りお母さんにダラダラするなと怒られる
いつも通りお風呂に入って、いつも通りに自分の部屋でゴロゴロして、いつも通りに夜更かしして、いつも通り眠る
そしていつも通り
「おやすみ、穂乃果」
えみつんが優しくおやすみを言ってくれる
いつも通り、これが今のいつも通りなのだ
……………
「アニメってすごいね、『ラブライブ!』って聞く回数がふえたよ!」
「今日電車でグッズつけてる人見た!」
「ニコ生の再生数もどんどん増えてる!」
「穂乃果!私もっともっと頑張るよ!」
「頑張った結果がこうやって見えると嬉しいね」
「今日もイベントでμ’sみんなと一緒だったよ、みんなでライブできるのは楽しいね!」
「みんな自分のキャラが大好きだから、競争してるみたいだ」
「私だって穂乃果の魅力をみんなに伝えちゃうよ!」
「μ’sがゲームになった!携帯で遊べるからいつでも一緒だね!」
「次のライブは『さいたまスーパーアリーナ』って、ホントにそんなにお客さん来てくれるの?」
「これはもっと頑張れっていう神様からの試練かも」
「よーし私!ファイトだよ!」
「さいたまスーパーアリーナがこんなに一杯…」
「みんなμ’sに会いに来てくれたんだね」
「穂乃果!力を貸して!私達9人で最高のライブにするんだ!」
「ライブは大成功!」
「私達もμ’sとしての仕事も増えて大忙しだよ!」
「これからもまだまだすごい事になりそうだね!」
「アニメ2期も大好評!」
「3年生が卒業しちゃうなんて、って思ったけど」
「劇場版製作決定です!」
「やったよ穂乃果!私達まだまだ一緒に居られるよ」
『来年度でμ’sは1つの区切りをつけようと考えています』
「………」
「穂乃果…私頑張るね、貴方達μ’sはこんなに素敵でこんなに輝いてるんだって、みんなの心に刻み込むんだ!」
「私は高坂穂乃果として、全力でやりきってみせる!」
「ファイト!おー!」
「2度目のさいたまスーパーアリーナ」
「しかもスタジアムモード」
「でも怖くない、だって私達μ’s9人が集まれば、何だってできるんだ!」
「穂乃果達も一緒にいてくれる」
「そんな気がするんだ」
「ライブの評判も完璧!やっぱりμ’sに不可能はないんだよ!なんちゃって」
「…心配だった喉も何とかライブまでは持った」
「この後はNHKに出演も決まってるし、どんどん加速していくよ!」
『1週間は声を出さないでください、本も読まないで、絶対安静です』
「…ごめんね穂乃果、私ちょっとの間お休みしないといけないんだって」
「でもすぐに良くなってみせるよ!だって私は高坂穂乃果!」
「μ’sのリーダーなんだからね!」
「ファンミーティングツアー楽しい!全国のみんなに会いに行けるし、スッゴイみんな近いし」
「何よりμ’sのみんなとずっと一緒にいられるのが楽しいよ」
「夢の9人でご飯も達成できたし、本当に楽しい!」
「オリコン1位!マジで?」
「劇場版公開!泣けるよ!感動したよ!」
「今が最高か、そうだね、今が最高なんだ!」
「穂乃果、いつも最高って言えるように頑張るから、一緒にいてね」
「Mステ出演!マジっすか?」
「紅白出演!そんな嘘はさすがに通用しませんよ、って本当なの!!」
「怒涛の1年だったよ、でもこんなに充実した1年はなかったね」
「μ’sの絆も深まったし、穂乃果ともすっごく近づいたような気がするんだ」
「穂乃果そっくりっていわれる事も多いし、嬉しいな」
「ついにファイナルライブ」
「私は高坂穂乃果として最高のパフォーマンスをするよ」
「そう、私は高坂穂乃果なんだ」
「私達はμ’sなんだ!」
「穂乃果、そしてμ’s、私達に力を!」
始まってしまえばあっという間だった
2日間、合計約10時間に及ぶライブも、時間というのはこんなにも早く過ぎるものなのかと思うほどの、まさに瞬く間の出来事だった
そして最後の曲
僕たちはひとつの光
私達の歌が終わった後、会場のお客さん達がμ’sのために歌ってくれる『僕たちはひとつの光』の大合唱の中
舞台の上で組んだ円陣は、ファンのみんなには悪いけど、私達μ’s9人…じゃなかったね、18人だけのもの
舞台から私達が見えなくなった後、ドームを揺るがすかのようなμ’sコール
みんな、ありがとう
穂乃果…見てくれた?
私、やり遂げたよ…
最後まで……
最後…?
という事は、もう穂乃果に会えない…?
今が最高
その通り、人生の中でもこんなに最高の瞬間はないだろう
しかも1人じゃない
最高の仲間、そして最高のパートナーと迎えることができた
でも、これから先はどうなるの?
仲間のみんなにはいつだって会える
確かにそうだろう
でも私が穂乃果に会うにはどうしたらいいの?
心の中?
そんなんじゃ穂乃果を感じるなんて出来ない
私は高坂穂乃果なんだよ
高坂穂乃果が高坂穂乃果になれるのはラブライブ!作品の中だけ
でも、μ’sの活動は今日で一区切り
私はもう穂乃果じゃなくなっちゃうの?
今、この最高の瞬間を迎えるためにずっと頑張ってきた
楽しい事も、辛い事も、いっぱいあったけど、それでもμ’sのみんなと一緒に前へ進んできた
何より穂乃果と一緒だったから頑張れたんだ
…なのになんで私から穂乃果を奪おうとするの?
頑張った結果がこれなの?
こんな辛い思いをするために頑張ってきたんじゃない
最高の時間をみんなと、そして穂乃果とずっとずっと共有するために頑張ったんだ!
会場から聞こえるμ’sコールの中
私は神様にお願い事をした
それはきっと、本来は叶えられるはずのない、他愛のない願い
そして願ってはいけない、禁忌の願い
お願いです、神様
この最高の瞬間を永遠にして下さい
私を穂乃果とずっと一緒にいさせて下さい
次の瞬間
『えみつん?!大丈夫?』
あれ?頭がぼうっとする
すずがなんか言ってるけど、何を言ってるのかわかんないよ
『ちょっと?えみつん!しっかりして!』
『どうしたの?大丈夫!?』
みんなどうしたの?
なぜかμ’sのみんなが私の事を必死で呼んでいる
『急いで!救急車呼んで!』
『えみつん!えみつん!しっかりして!』
いつの間にか、うっちーに抱きかかえられてる…
こりゃいいね、天国だよ
他のみんなも私の名前を呼んでくれている
だから私はみんなに伝えたんだ
「大丈夫、私達18人はずっとずっと一緒だから…」
私は心がすぅっと軽くなるような感じがしたあと、すごく眠くなって
「…ちょっと眠くなっちゃった……」
「…少しだけ、休ませてね………」
私はそのまま、深い深い闇の中へ
何も見えない闇の中
でも不思議と怖さは無い
そのまましばらくぼうっとしていると、頭の中に知らなかった情報がどんどん入ってくる
『同化現象』
聞いたことある
多くの人に愛された作品に起こる現象だ
あまりにもオカルティック過ぎて信じたこと無かったけど、本当にあるんだ
でもリスクもあるんだね
完成前の世界で同化しちゃうとせっかくの世界が崩壊しちゃう
そりゃそうだ、作品の中に知らないキャラがいたり、性格が変わっちゃったらおかしいもんね
でもある程度の期間が経って世界が固まれば問題ない
もう1つのリスクは
「……なんてことないね、問題ない」
ラブライブ!の世界はもう少しで完成する
いろんな想いが集まって出来た、穂乃果達の世界
私が守ってみせる
穂乃果、ちょっとだけ手伝ってね
この世界が完成すれば、いつでもあなたと一緒にいられる
神様、ありがとうございます
そして、μ’sを応援してくれる皆さん、ありがとうございます
μ’sのみんな、もう少し待っててね
最高の瞬間を永遠に感じることができる、最高の世界
必ずやり遂げてみせるから
……………
私が目を覚ますと、昨日と一緒でまだ外は真っ暗
ただ違うのは
「…えみつん」
元の姿のえみつんが私の勉強机の椅子に腰掛け微笑んでいることだけ
「おはよう、っていうのにはまだ早いかな」
「夢、見たでしょ?」
えみつんはただ淡々と話し続ける
「記憶の同化が始まっちゃったね」
「でも大丈夫だよ」
「少し離れれば元に戻るから」
「あなたと一緒に居られるのが嬉しくて、ちょっと近くに居すぎちゃった、ゴメンね」
少し離れる、という事は元の世界に戻るという事だ
確かに他のμ’sのみんなの時もそうやって別れた後に世界の修正が入った
このままえみつんが帰ると、私の生活は元通り、『いつも通り』になる訳だ
「穂乃果、ありがとうね」
「おかげでみんなの世界は元通り」
「穂乃果達も自分の人生を歩いていける」
「私も安心だよ」
暗くてえみつんの表情はよく見えないけど、口調はとても落ち着いている
「……なんでそんなに落ち着いてるのさ」
私は怒りに震えながら答える
「私夢の中で見たから知ってるんだよ」
そう、夢の中でみた、同化現象のもう1つのリスク
「えみつん…元の世界に戻ったら消えちゃうんでしょう」
同化現象には幾つかの要素が必要だ
演者の強い想い
多くの人々の愛する心
そしてもう1つ
同化現象を願った者の魂
今回の同化現象の原因は、作品への想いが最高潮に達したタイミングに合わせ、その中心人物である新田恵海という人間が強く願った事で起こったのである
途中で引き返す事も出来た
しかし新田恵海という人物はそのリスクを承知の上でこの世界にやって来たのだ
μ’sのメンバーも同化現象を起こしたが、これは自分が願ったわけではなく、結果として同化した形であり、その引き金はやはり新田恵海の願いであった
えみつんは少し離れると言った
とんでもない嘘をつくものだ
今のままで元の世界に戻ればこの世界を構成する礎にたちまち魂を吸い取られる
魂がなくなるという事は存在自体がなくなるという事だ
それが解っていて、はいそうですかなんて言える訳がない
「認めないよ…私が認めない限りこの世界から戻る事はできない」
そう、えみつんが元の世界に戻るには双方の納得が必要なのだ
私が妥協しなければえみつんが元の世界に戻る事は出来ない
「困った穂乃果だねぇ」
えみつんは余裕の表情で答える
「夢で見たなら解ってるよね」
「私がここにいる事はこの世界ではイレギュラーな事」
「例え権限付きでもそれは事実」
「私がこの世界にいると世界は崩壊する」
「結局この世界を守るには私を帰してくれないといけないんだよ」
私は何も言い返せなかった
だってそれは本当の事だから
この世界と私に命をくれた人
どちらを守るか?
そんな選択、私にはできないよ!
うつむく私の側に、いつの間にかえみつんがやって来ていて優しく抱きしめ
「ゴメンね、穂乃果」
「あなたに会えて本当に幸せだったよ」
「心の弱い私を許して」
「私、もう前に進めなくなっちゃった…」
私は涙が止まらない
もうどうしていいかわからない
そんな私にえみつんは
「これは私からのせめてものお詫び」
「私の意思であなたの中の私の記憶を無くしていくね」
「私の事、完全に忘れれば私は元の世界に帰れるから」
「ちょっと時間はかかるけど、悲しまなくていいよ」
な、何を言ってるの?
そう声に出す前に私の目の前が暗くなり
…ありがとう、穂乃果…
私は気を失った
……のか…ほ…か
遠くで誰かに呼ばれてる
夢?だったらほっといてほしいよ
だって今日は日曜日だよ
学院はお休みなんだよ
穂乃果…穂乃果!
ん?だんだんはっきり聞こえてきたぞ
「穂乃果!あんた何回呼ばせんの!?練習遅刻するよ!!」
ふぇ?遅刻?練習?
「そうだ!今日は朝から練習だった!!」
なんとか目を開けて時計を見ると
「うわわわ!もうこんな時間!」
ヤバい!またやっちゃった!!
お母さんに大目玉を食らいながらダッシュで身支度を調えて
「行ってきまーす!」
大急ぎで待ち合わせ場所へ
スクールバッグについてるマスコット達は私の焦りなんて関係なしにユラユラと揺れている
お前達はいいねぇ
待ち合わせ場所に到着すると、海未ちゃんとことりちゃんがお出迎え
「穂乃果!遅すぎますよ!」
うぅっ、怒られたよ、でも
「穂乃果ちゃん、間に合ってよかった〜」
という天使の一言で回復する
「ゴメンね!2人とも!!」
2人に謝り学院に向かう
急いで支度したおかげで、歩いて学院に向かうくらいの時間はあったので、いつも通りにおしゃべりしながら登校する
「穂乃果、昨日も夜更かしですか?」
と海未ちゃんのキキコミが始まるけど
「ち、違うよ!昨日はちゃんと早く寝たもん!」
そうなんだ、昨日は結構早くに寝たのに
「疲れてるの?あんまり無理しないでね?」
優しいことりちゃんの言葉にはいつも癒されるよ
「うん!大丈夫だよ!たっぷり寝たから元気元気!」
と言って2人に笑いかける
「あれ?穂乃果ちゃん、バッグのマスコット増えてるね、カワイイ!」
えっ?
「本当ですね、なんとなく穂乃果にそっくりです」
見ると私のスクールバッグにはいつものマスコットに加え、もう1つ
私にそっくりのディフォルメマスコットが
これって…
「え、えみつん…」
私が声をかけても動いたり、ましてやしゃべる事もない
なんという事だ
昨晩の事なのに
時間にして半日も過ぎていないというのに
忘れていた
えみつんの事、一緒に過ごした日々の事
私は呆然とした
自分の無力さに絶望した
このまま彼女を忘れて、自分だけのうのうと日々を過ごしていくのだろうか
そんなのイヤだ!
でも、どうすれば…
「穂乃果!穂乃果!どうしたんですか?」
「穂乃果ちゃん!大丈夫?具合悪いの?」
私の様子が急変したからだろう
幼馴染達は必死で私の名を呼んでいる
我に返った私の目に2人の顔がうつる
すると自然と涙が溢れる
「海未ちゃん…ことりちゃん…」
「お願い…助けて」
「私、お友達の事…助けたいのに…何もできないの」
「このままじゃ、えみつんは……」
ここまで言って後は涙で言葉にならなかった
泣きじゃくる私に2人は
「わかりました、穂乃果、あなたの力になりましょう」
「穂乃果ちゃん!ことり達に任せて、大丈夫だから」
2人は力強く答え、すぐに行動を起こしてくれる
「まずは部室に向かいましょう」
「みんなの力を合わせれば、良い知恵が浮かぶはずです!」
「今のうちにみんなに連絡しておくから、穂乃果ちゃん、歩ける?」
泣いたまま頷き、学院へむかう
2人とも、ありがとう
部室に入ると他のみんなはすでに到着していた
みんなそれぞれに私の事を気にかけて優しくしてくれる
私もだんだん落ち着きを取り戻し、えみつんとの出会いから今までの出来事全てをみんなに話した
「そんな事が起こっていたなんて…穂乃果、頑張りましたね」
「穂乃果ちゃん、みんなに黙って頑張ってくれてたんだね、ありがとう」
海未ちゃんとことりちゃんが労ってくれる
「すごいにゃー、凛もそんな不思議体験してたんだね」
「穂乃果ちゃん、私たちのために…ありがとうございます」
「全く無茶するわね、まぁ穂乃果らしいけどね」
凛ちゃんや花陽ちゃん、真姫ちゃんもそれぞれに感想を口にする
「真姫の言う通り、無茶しすぎなのよ、アンタ」
「そうやで、ウチらに言ってくれればいくらでも協力してあげられるのに」
「穂乃果には穂乃果の考えがあったのでしょう?」
にこちゃんや希ちゃん、そして絵里ちゃんも優しく話しかけてくれる
そして絵里ちゃんはこう続けた
「でも、もう大丈夫よ、必ず穂乃果と新田さんを助けてみせるわ」
「ありがとう、みんな…」
「こんな話、信じてくれて」
「私、みんな信じてくれないと思って…言えなくて…」
私が涙声でこう話すと、にこちゃんが
「少し前なら、信じてなかったと思うわ」
「でもね、穂乃果の話を聞いて、納得しちゃったの」
「最近、いえ、本当はずっと前から感じていた、自分の中のもう1人の自分の存在」
この言葉にみんなが頷く
すると希ちゃんも
「にこっちの言う通り、もう1人の自分を感じて、最近は何だかその存在が大きくなってきた気がしてたんよ」
「まぁ、その理由がはっきりしたんだから、誰も疑うような事しないでしょ」
と、真姫ちゃんはいつも通りの様子で言ってくれる
「ありがとう、みんな」
私のお礼の言葉に
「まだですよ、お礼はあなたと新田さんを助けた後です」
海未ちゃん…
「で、でも一体どうすれば?」
「えみつんって人がどこにいるかもわかんないし」
花陽ちゃんも凛ちゃんも一生懸命考えてくれる
すると絵里ちゃんが
「私に考えがあるんだけど、いいかしら?」
みんなの注目が集まる
「正直、私たちだけではこの件は解決が難しいと思うの」
「そんな事わかっています!でも穂乃果が困っているのを見過ごすわけにはいきません!」
「まぁまぁ、海未ちゃん?まだえりちの話は途中みたいよ」
興奮気味の海未ちゃんを希ちゃんが諌める
「ふふっ、そうよ、ちゃんと最後まで聞いてね?」
「す、すみません、つい…」
「愛しの穂乃果の一大事だもの、気持ちはわかるわ」
「///」
海未ちゃんが顔を赤くして俯く
ふふっ、ありがとう
「続けるわね、今の私達では解決は困難」
「だから助っ人を呼びましょう」
『助っ人?』
みんなが声を揃えて首をかしげる
「助っ人って誰を呼ぼうって言うのよ?」
にこちゃんの質問に対して絵里ちゃんの答えは
「μ’s」
「もう1つの女神達」
第9章 「ほのかな笑みにさそわれて」続く
再開します
『前回のラブライブ!』
やっとの事で世界に異変をもたらした『同化現象』を解決した穂乃果とえみつん
でも、この異変を引き起こした原因は実はえみつんであり、μ’sを愛しすぎた故と知ってしまった穂乃果
しかもこのままではえみつんは存在が消えてしまう
悲嘆にくれる穂乃果と行方をくらましたえみつんを救うためμ’sが立ち上がる
そこで絵里が提案した内容は
助っ人を呼びましょう
μ’s
もう1つの女神達を
第9章「ほのかな笑みにさそわれて」第2幕
「絵里!?それってどういう事なのですか!?」
海未ちゃんが凄い勢いで絵里ちゃんに質問する
「そのままの意味よ」
絵里ちゃんはすました顔で答える
「それって私達の中のもう1人の自分を呼ぶって事?」
ことりちゃんも興奮気味で話しかける
「そんな事が出来るのだとすれば…スゴイです!これは絶対頼りになります!」
「凛もスッゴイいいアイデアだと思う!絶対力になってくれるよ!」
花陽ちゃんも凛ちゃんも大絶賛
「さすがエリーね、そんなアイデアが出るなんて、凄いわ」
あの真姫ちゃんも手放しで褒めている
「なるほど、確かにもう1つのμ’sなら高坂穂乃果の事も新田恵海の事もよく知っている、認めたくないけどさすが絵里ってとこね」
素直じゃないにこちゃんらしい褒め言葉
「えりち!やっぱりえりちは凄いね、私も親友として鼻が高いよ!」
希ちゃんまで自慢げなのは何だか微笑ましいね
私も何とか泣き止んで、絵里ちゃんにお礼を
「ありがとう、絵里ちゃん!」
「そんなアイデア、穂乃果じゃ浮かばなかったよ!」
「すごいよ!絵里ちゃん!」
絵里ちゃんはにっこり笑って
「お礼なんていいのよ、穂乃果のためだもの、どんなお願いだって叶えてみせるわ」
と言ってウインクしてみせた
…ありがとう
私が感謝の気持ちを絵里ちゃんに向けているその後ろで、なぜか海未ちゃんとことりちゃんは苦虫を噛み潰したような表情で何やらブツブツとつぶやいていた
どうしたんだろうね?
「絵里ちゃん!それじゃ早速みんな呼ぼうよ!」
「絶対みんな喜んで助けてくれるよ!」
私が言うや否や、みんなもこぞって
「善は急げです!」
「早く呼んであげなきゃ!」
「時間は余りないよ!」
それぞれ絵里ちゃんに催促する
でも当の絵里ちゃんは
「?」
かわいく首をかしげる
うん!嫌な予感しかしないね!
「どうやって呼ぶかなんて、そんな難しい事言われても…」
絵里ちゃん、大丈夫、穂乃果は何となくわかってたよ
私の心の慰め、絵里ちゃんに届け!
「ちょっと絵里?まさかアンタ思いつきで言ったんじゃないでしょうね!」
口火を切ったのはにこちゃん
「エリー…まぁ前から知ってたけど、もう少し頑張らないと」
真姫ちゃんの悲しい激励が続く
「うぅっ、絵里ちゃんのしょうもない口車に乗せられるなんて…」
「かよちん、かよちんは悪くないよ!もう!絵里ちゃん早く謝って!」
この2人はピュアな分ストレートな辛辣さがあるねぇ
「えりち…もう少し考えてから発言した方がええかな?」
「そんな!希まで?」
総崩れとなった絢瀬軍に対して、止めの後詰め部隊が出陣する
「絵里ちゃん?今の状況わかってるのかな?」
「絵里、穂乃果が悲しんでいるときに、その体たらく…嘆かわしいを通り越して情けなくなってきますね」
「さっきのドヤ顔、今思えばただのフラグだったんだね、ことり哀しいな」
「あなたはもう少し出来る人間だと思っていましたが…私の思い違いだったようです」
「あっ、でも大丈夫だよ、人の評価って他人の勝手な想像みたいなものだし、実際絵里ちゃんがそうだって訳じゃないんだよ」
「その通りです、別にあなたに非がある訳ではありません、この問題はあなたにとって解決するには大きすぎただけの話です」
あっ、絵里ちゃん泣きそう
「の、希ぃ…みんなが怖いわ」
希ちゃんに抱きついて震えている
「はい、よしよし、大丈夫よ」
慣れたもんだね、希ちゃん
見慣れた風景
楽しいやり取り
ありがとう、みんな
「絵里ちゃんのアイデア、悪くないと思うよ!」
私の声が部室に響く
するとみんなは今のやり取りがお約束コントだったかのように私の事を真っ直ぐ見つめてくれる
「まるでもう1人の私達を呼ぶ方法を知っているみたいね?」
にこちゃんがニヤリと笑いながら聞いてくる
「にこちゃん、質問に質問で返して悪いけど、心の中でもう1人の自分が何だかこう、何かしたがってるというか、話したがってるというか、そんな感覚はないかな?」
「もう1人の私が…」
「私わかるよ!穂乃果ちゃん!」
この質問に最初に答えたのは花陽ちゃんだった
「私、この話を聞いたその瞬間から、心の中というか、気持ち的にというか、何だかわかんないけど、私じゃない私がソワソワして、何とかしなくちゃ!って気持ちになってるの」
花陽ちゃんは自分の言葉で一生懸命、今の気持ちを説明してくれる
すると、他のみんなも
「実は私も、何だか落ち着かないというか、不思議な感じなの」
「凛もそうだよ、何だか早く何とかしてあげたいって気持ちで一杯なんだ」
みんな次々に心の動揺を感じていると打ち明ける
えみつん…みんな心配してるよ…
みんなに助けてもらおう
「それじゃあみんな、心の中で強くこう想って欲しいんだ」
「あなたに逢いたい」
そもそも同化現象とは作品に関わる人々の感情が引き金となり発生する
今回は様々な要因が重なった状況で1人の人間の強すぎる想いが引き起こしたため、このような犠牲を伴う形となったが、本来は安定した状況で起こるとても幸せな奇跡である
原因となった新田恵海以外の人物は、本来の手順に従い同化現象を起こした
ただし、世界が不安定な状況での同化であったため、元の世界へ帰された
恐らくは新田恵海の行動がなければ、世界が不安定な状況での同化現象が一気に起こり、みんなの想いで起こった奇跡の世界が崩壊する結果となっていただろう
結果的に彼女の起こした異常はこの世界を救うこととなった
このような不安定な世界で、当人が元の世界へ帰る方法は、双方の合意、または一方の感情の欠如である
新田恵海以外の8人は双方の合意によって元の世界へ帰っていった
新田恵海は穂乃果の記憶をなくすことにより元の世界へ帰ろうとした
私はえみつんとの同化が進んだことによる記憶の共有により、このシステムを知った
まだ幼い私が理解するには膨大すぎる情報であり、感情的に不安定な状況であったためこの方法には至らなかったが、絵里ちゃんの提案と、みんなのいつものような行動により、落ち着きを取り戻し、この考えにたどり着くことができた
μ’sみんなで力を合わせた結果とも言えるだろう
私の提案した『あなたに逢いたい』という願いは、結果『あなたの帰還を否定する』という事になる
そうすれば彼女達はこの世界に止まらざるを得なくなる
えみつんの事を誰よりも知っているだろう『μ’s』のメンバーならばきっと助けてくれる
少し強引な方法だが、私はワガママなのだ
えみつんの為なら多少のことはやってみせる
私は1人では何もできない無力な人間だ
だからみんなの力を借りてワガママを通すのだ
だってしょうがない
私の半分はえみつんで出来ているからだ
つまりは私の半分は敵それも真の敵でジェノサイダーで暴食の王で悪魔人形で強欲の悪魔でアホ恐竜でヤンキー番長なのだ
しかも私の仲間達はそれを上回る個性の持ち主達
覚悟してね、えみつん!
絶対私達が助けてあげるんだから!!
みんなは私の言葉通り、それぞれの思いを込めてもう1人の自分に語りかけてくれている
『あなたに逢いたい』
みんなの声が、まるで歌のようなハーモニーを奏でたとき、奇跡は再び訪れる
「三森すずこ」
「南條愛乃」
「徳井青空」
「pile」
「久保ユリカ」
「楠田亜衣奈」
「飯田里穂」
「内田彩」
みんなの口から、それぞれの想う人達の名が自然と紡ぎ出される
あまりにも自然で、あまりにも美しい、調和のとれた響の中
最後のピースをあてはめる
「新田恵海」
その瞬間、みんなの体から、もう1人の女神達が現れた
その名は
μ’s
歌の女神達
最初に口を開いたのは
「あれっ?また戻ってきてる!海未ちゃん久しぶりっていうにはあっという間?もう!寂しがりやなんだからぁ」
「す、すずこ!近い、近いです」
三森さんにいきなり迫られて、焦る海未ちゃん
「絵里、久しぶり?さっきぶり?なんか時間の感覚がおかしいな?」
「愛乃、私としてはすごく長かったわ」
南條さんと絵里ちゃんは何だかオトナな落ち着いた感じだね
「クククッ、矢澤にこ…私より面白いアイドルなんていないことを証明してやる!」
「私のライバル、徳井青空!私の方が多くの人を笑顔に出来るわよ!」
何だか知らないけど、徳井さんとにこちゃんがニコニコ対決を始めちゃったよ
「真姫ちゃん!ちょっと早いけどまた会えたね!スッゴイ嬉しいよ!」
「私の方が逢いたくなって呼んじゃったわね、私も嬉しいわ」
いつも素直なpileさんに激レア素直な真姫ちゃん
「花陽〜会いたかったよぉ〜結婚しよう!」
「ピャァァァ!わ、私まだ高校生なので!健全なお付き合いから!」
こっちでは久保さんの謎の求愛(多分ボケ)に真面目に返答する花陽ちゃん
「希!久しぶり?さっきぶり?まぁいいや、また会えちゃったね!運命?大明神の力?」
「ふふっ、スピリチュアルやね!私達やっぱり心が繋がってるんや!」
楠田さんはまるで小動物のように希ちゃんにじゃれついている
「にゃーん!にゃーん!にゃーん!」
「にゃーん!にゃーん!にゃーん!」
「凛ちゃんといえばぁ?」
「イ゛エ゛ロ゛ー゛た゛よ゛ぉ゛—゛—゛!!」
うわぁ!飯田さんと凛ちゃんというより同じ子が2人いるみたいだよ!
「みんな元気だねぇ」ニコニコ
「ほんとだね、すごいね」ニコニコ
癒し空間!究極の癒しの空間があるよ!
でも何で内田さんはお水じゃなくてアルコール的なものをことりちゃんに要求してるのかな?
事件以来消えていたみんなの記憶も戻ったことにより、感動の再会劇
さらに2つのμ’s入り混じっての挨拶大会も始まったよ
…すごい
ホントにみんな揃っちゃった
やっぱり奇跡は起こるんだ
やったよ!えみつん!これであなたの事助けられるよ!
「みなさん!お久しぶりです!」
ワイワイガヤガヤ
「突然ですがお力をお借りしたくてお呼びしました!」
キャッキャウフフ
「あ、あのぉ〜お話を聞いて下さい…」
アレヤコレヤ
………
駄目だ!この自由人達!全く統率できないよ!
個性派集団なのは知ってたけど、実際集まると凄すぎる
えみつん、このチームをまとめ上げてたの?
初めて尊敬したよ!
「あれっ?えみつんいないね?」
内田さん!気づいてくれたんだね!
「…まっ、いっか」
「良くないです!気にして下さい!」
私の悲痛な叫びに
「相変わらずからかい甲斐があるね」クスクス
「ひ、ひどい!」
こんなやり取りをしていると
「何々?うっちー、新しいオモチャかな?」
うげっ、三森さんが嬉しそうにこっちにやってくる
「グフフ…どうしたのかな穂乃果ちゃん?」
何だそのキャラ?
私の中のえみつんの部分が警鐘を鳴らす
ヤバい!この流れは危険だと
「どうした!我々を呼ぶ声が聞こえたぞ!」
「そらまる隊長!ここで穂乃果ちゃんが助けを求めてるよ!」
「私達にこりんぱなを呼ぶとは…さすが穂乃果だね!センスあるよ!」
「呼んでない!呼んでないです!」
猛獣達に囲まれた私は何とか助けを呼ぼうと周りを見渡す
三森さんは
「パイちゃん、こないだ行った店でさぁ…」
「すーちゃまとお揃いのあの服がね…」
もうこっちに飽きてる!はやっ!
満面笑顔のpileさんとおしゃべりタイム
な、ならば南條さん!
「ねーねー、せっかくこっち来たんだからアレやろうよ!フライボード!」
「ぜったいイヤ!」
「えー、何で?いいじゃん!元々アニメの世界だからスッゴイ高く飛べるかもよ?」
「やだよー!逆に怖いし!」
あっちはあっちで楠田さんに絡まれて花園してるよ
う、内田さんは…
「若い子こわ〜い」ニコニコ
楽しんでる!
だ、だったらこちらのμ’sで対抗だ!
「ハラショー!みんな個性的で素敵ね」
「これだけの個性の集まり…向こうの世界のμ’sもやるわね!」
「ウチの占いによると、ここは様子見かな?」
駄目だぁ!完全に観客モードだよ!
「ダ、ダレカタスケテー!!」
私の心の底からの叫びに
『チョットマッテテー!!』
さすがにこりんぱな!完璧だよ!完璧なタイミングと返しだけど私はあなた達から助けて欲しいんだよ!
「ちょっと!前も言ったけどそれって私と花陽のネタだからパクっちゃ駄目だよ」
「花陽もなんか言ってやって!」
「えっ?わ、私?」
あっ、花陽ちゃんが巻き込まれた
「凛もまぜてー!」
当然のごとく凛ちゃんも参戦
こ、こうなったら全員巻き込んで生き延びてやるぅ!
約1時間後
「…つかれた」
猛獣達の空腹は満たされたようで
「ところで何で私らここにいるの?」
徳井さんのこの一言でやっと本題に戻った
っていうか絶対最初からわかってたけど、ほっといた系だよね、コレ
とにかく仕切り直し
私はみんなにお願いをする
「あ、あの!えみつんを助けたいんです!」
「皆さんの力が必要なんです!」
『えみつんを助ける?』
私はここまでの経緯を説明した
一通り今までの経緯と状況の説明を終える
まず南條さんが
「状況は解った、えみつんがあまり良い状況ではないのも解った」
この発言に
「えみつん真面目だもんねー」
楠田さんも同意する
他の皆さんも口々にえみつんについて口にしている
しかし私の安堵の心は次の南條さんの発言によって脆くも崩れ去ることとなる
「でもこれはえみつん自身の望んだ事」
「だから、辛いけど助けるというのは少しおこがましい考えなんじゃないかな?」
えっ?何で…
「でも、皆さんμ’sで一緒にやってるお友達じゃないですか!」
「友達が困ってるのに!そんな冷たい事言わなくても…」
すると、私の発言を遮るように内田さんが
「困ってる?えみつんが?それは違うよ」
「えみつんは自分で選んだんだよ、彼女が選んだ道を遮るなんて事はできない」
「でもこれはえみつん自身の望んだ事」
「だから、辛いけど助けるというのは少しおこがましい考えなんじゃないかな?」
えっ?何で…
「でも、皆さんμ’sで一緒にやってるお友達じゃないですか!」
「友達が困ってるのに!そんな冷たい事言わなくても…」
すると、私の発言を遮るように内田さんが
「困ってる?えみつんが?それは違うよ」
「えみつんは自分で選んだんだよ、彼女が選んだ道を遮るなんて事はできない」
三森さんも内田さんの意見に賛同する
「私達は、仲間で戦友で、そしてライバル」
「確かに友達とも言えるかもしれないけど、それ以上の繋がりだって自負してる」
他のメンバーもこの意見に頷いてる
「えみつんはμ’sのリーダー、圧倒的な精神的支柱」
「μ’sに関しては彼女の行動こそが絶対なんだ」
「まさにあなたのようにね、高坂さん」
南條さんは機械的に私に言い放つ
「まぁ、えみつん本人とかに頼まれたら何だってするけどね」
私は高坂穂乃果、新田恵海ではない
でも私の半分は間違いなく新田恵海なのだ
いつもなら私は泣いているだろう
でも、今は泣いてなんかいられない
何としてでもえみつんを助けるんだ!
でもどうやったら…
悩んで悩んで…でも何も浮かばない
けど、この決意は変わらない
そんな膠着状態の中、意外と言っては何だけど思いがけない所から援護が入った
「よしのんってそんな意地悪だったっけ?」
「南條さん、あんまり悪役似合ってないですよ」
「そうだぞ南條!素直になれ」
にこりんぱなの3人が次々と南條さんに意見する
するとpileさんが私の所にやってきて
「穂乃果、お友達としてみんなにお願いしてみたら?」
と囁く
お友達として…
私の頭の中にえみつんの言葉がよぎる
『南條さんって呼ぶと寂しがるから、みんな南ちゃんって呼ぶよ』
そうか、そうだったんだ
私は自分の半分はえみつんだと言いながら、もう1つの世界を別のものとして考えていたんだ
だから無意識にみんなの事を『さん』付けで呼んでた
私らしくなかったね
もっと自然に、らしく行けばいいだけだったんだ
「みもりん!」
「南ちゃん!」
「そらまる!」
「パイちゃん!」
「シカちゃん!」
「くっすん!」
「りっぴー!」
「うっちー!」
「お願い!私達を助けて!」
「そしてμ’sを守るのを手伝って欲しいの!」
私は声を張り上げ、お願いする
高坂穂乃果として、そして新田恵海として
すると…
「とーぜん!助けるに決まってるでしょーが!!」
南條さん、じゃなかったね、南ちゃんが声を出すと
「よっしゃ!後は気合いで突撃あるのみだ!」
「えみつんめぇ、後でお仕置きだね」
みもりんやうっちーもそれに続く
他のみんなもさっきとはうって変わったようにヤル気マックス
凄い…これがえみつん達が築き上げてきた絆なんだね
「さぁ、私達も愛乃達に負けてられないわよ!」
絵里ちゃんの言葉に
『おー!』
こっちだって負けてないよ!
何て言っても私達だってμ’sなんだから!
「μ’sは18人全員揃ってμ’s」
「18人の女神なんだ!」
えみつん、嫌でも助けちゃうよ
待っててね!もうすこしだから!
第9章「ほのかな笑みにさそわれて」 完
次回 最終章「μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪×2」
694と695はかぶってますね
書き込みミスです、無視してください
再開します
国立 音ノ木坂学院
東京都千代田区の秋葉原と神田と神保町の間にある歴史と伝統ある高校である
近年は少子化の影響もあり統廃合の対象となった
しかし、学院生の有志による廃校阻止の一環として結成されたスクールアイドルの活躍もあり、志願者の増加傾向が見られたため、廃校はなくなり来年度の生徒募集が決定された
そんな新たな歴史を刻んだ女神達
彼女達の名は
μ’s
最終章「μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪×2」
遂に全員の力を合わせる時が来たよ!
これだけのパワーがあれば、あっという間に問題解決
えみつんもすぐに助けられるよ
「じゃあみんな!作戦会議だ!」
私の号令のもと、みんなが机の周りに集まる
部室もこの人数だとかなり狭くてギュウギュウ詰め
でも嫌じゃないから不思議だね
「まず具体的に助ける方法なんだけど…」
絵里ちゃんの発言に続いて、南ちゃんが
「みんなそれぞれ、お互い納得のいく事があったから一旦世界を離れたわけだ」
その通り、同化現象を起こした8人はそれぞれ紆余曲折がありながらも、お互い納得する形で同化が解消された
「えーっ?私あんまり納得してなかったんだけど!」
みもりんが抗議の声をあげる
ヤバイ!
最近すっかり鍛えられた、私の心の中のアラームが警報をあげる
「みもちゃん、なんかいいネタ持ってそうだね〜」
そらまる!なぜ食いつく?
恐ろしい勘だ!
私は慌てて否定の言葉を口にする
「何でもない!何でもないよ!」
「そういうのはプライベートなところがあるから、あんまり人前で言わないほうが『みもりん!私も聞きたーい!』
くすだぁ!
私がくっすんに心のオーラパワーをぶつけているその横から、我が麗しの君からまさかの十字砲撃
「あの、穂乃果、できれば私も聞きたいです」
「私、記憶がちょっと曖昧なところがあって…」
「とても大事な事を忘れている気がするんです」
イヤー!やめてー!
「ヌフフ…いやぁ、これがなかなか、どうしたものか…」
私の嬉し恥ずかしスウィートメモリーが衆人の元にさらされる寸前、天からの助けが
「そんなことより新田さんを助ける方法が先じゃないの?」
端の方で赤い髪の毛を弄りながら救世主が正論を述べる
パイちゃんに抱きしめられているのが説得力を低下させているが、まさにその通りだよ!
「残念ながらその面白そうな話は後で聞くとして、今はえみつんの話に集中しようか」
南ちゃんが仕切り直す
「さて、まずはえみつんを探したいね」
「もしくは何とかして連絡を取れればいいんだけど…」
「穂乃果は心当たりはない?」
私は静かに首を振る
「ごめんなさい、全然心当たりがなくって…」
海未ちゃんはそんな私の手を握り
「謝ることはありませんよ、みんなで考えましょう」
「ありがとう、海未ちゃん」
顔を上げると優しい海未ちゃんの向こうにニヤニヤ笑うあっちのμ’sの面々が…
おのれ、三森すずこ
絶対なんか言ったな
えみつんが見つかったら言いつけてやるんだから
「意外と近くにいるような気がすんだけどなー」
という、くっすんの発言に
「わかるー!実はこの扉の向こうとかに隠れてそう!」
りっぴーも同意する
あははと笑いながらくっすんが扉を開ける
「さすがにいないかぁ、残念!」
と言って扉を閉める
「と見せかけて!」
凛ちゃんが扉を開けると
………いた
「………やぁ」
あまりの出来事にえみつんも扉を開けた凛ちゃんも他のみんなも、そして私も時間が止まる
そんな中、時止めの魔法から一瞬早く回復したえみつんが
「オサラバ!」
すごい勢いでダッシュして逃げていく
「うわっ!ま、待って!えみつん!!」
私が追いかけようとすると
「いいよ追いかけなくて、大丈夫だから」
うっちーがのんびりと答える
「で、でも…」
焦る私を差し置いて、みんな落ち着いている
「みんな何で落ち着いてるの?」
という私の質問に答えてくれたのはことりちゃん
「大丈夫だよ、穂乃果ちゃん」
「えみつんはやっぱり穂乃果ちゃんの近くにいたいんだよ」
この言葉になんだか安心する私
うん、正直嬉しいよ
「さて、新田さんを探す必要がなくなったところで、具体的にどうするかを考えましょう」
再び絵里ちゃんが新たな議題を打ち出す
心の安寧、満足感を与えてあげることが出来ること…何だろう?
ここでパイちゃんが提案
「えみつんの好きな事をしてあげるのは?」
この発言に一部の面々の目がギラリと輝くのがみえた
「えみつんといえば恐竜、大恐竜博を開催すべきである!」
まず、そらまるが先鋒として突撃を敢行する
「いや、えみつんといえばお菓子、お菓子食べ放題を行えば必ず良い結果が得られるはず!」
りっぴーが二の矢としての責務を十分果たす戦果をみせる
「えみつんが好きなものといえばただ1つ、それは内田彩、うっちーがニコリと笑えばそれだけで全てが解決する!」
さすが命知らずで一部で有名なシカちゃん!
本隊の攻撃力を如何なく発揮する
そして後詰が全てに止めをさす
「うん、みんな意味わかんないね、おやつになりたいのかな?」
「すみませんでしたちょうしにのってましたゆるしてくださいなんでもしますから」
うん、全てに止めをさしたね
ここで私からとっておきの提案
「みんな!ライブしようよ!」
『ライブ?』
みんなの揃った疑問の声があがる
そんな中、私の提案は続く
「そう、ライブだよ!」
「μ’sとμ’sの合同ライブ!」
「私達はスクールアイドル」
「スクールアイドルが出来ることといえば歌とダンス」
「えみつんも歌うのが大好きだし、何よりμ’sが大好き!」
「これなら絶対えみつんは満足してくれるよ!」
我ながら素晴らしいアイデア!
他のみんなも
「それってすごい楽しそう!」
「まさかの新たなレジェンド誕生の瞬間を見てしまいました!」
「またライブが出来るの?やったー!」
うん!盛り上がってる!
「でも、それが新田さんを救うことにどう繋がるの?」
真姫ちゃんの冷静な質問に
「あ……あーえみつんがスッゴイ喜んでくれるかなー?って思って…」
助けるというより喜んでもらうことしか考えてなかったよ
やっぱり私バカな子だよぉ
しょんぼりする私
でもここで希ちゃんが
「ええやん!ライブ!」
「そのライブで神様に喜んでもらって、私達のお願い事、叶えてもらお!」
「神様にお願い?」
私が質問すると
「そう、新田さんは神様にお願いしてこの世界に来たんやろ?」
「そしたらもう一回お願いして帰らしてもらったらいいやん?」
「希!そんなこと出来るの?」
絵里ちゃんが立ち上がって質問する
「出来る出来ないじゃなくって、やらなあかんのやろ?」
ね、穂乃果ちゃん、と言って私を見る
「昔から神様は賑やかなのが大好きやん?」
「これだけの賑やかしがいたら、すごい喜んでくれると思うよ!」
えみつんは神様にお願いしてこの世界にやって来たと言っていた
だったら私はこっちの世界の神様にお願いしてえみつんを無事元の世界に帰してあげるんだ!
私は希ちゃんのアイデアに希望を感じる
その気持ちは他のメンバーも一緒みたい
「だったら思いっきり派手で楽しくて可愛いライブの必要があるわね」
にこちゃんが出番とばかりに前にでる
「花陽!最近の合同ライブのトレンド、言えるかしら?」
話を振られた花陽ちゃんは、自信満々のドルオタモードで
「当然です!」
「まずはお約束のお互いの曲交換!まさに王道ですが素晴らしいからこその王道といえます!」
「次に合同楽曲!こちらも王道といえますが全体の一体感を味わえる、まさにその瞬間を感じられる素晴らしいイベントです!」
「そしてこれら王道に、ある意味相反するとも言える、最新のトレンドは…」
「対バン形式のライブです!」
花陽ちゃんの素晴らしいドヤ顔
にこちゃんは満足気に頷き
「流石花陽ね」
「その通り!最新のトレンドは対バン!」
「これは共演のような生易しいものではなく、まさにガチンコ勝負の意味!」
「スクールアイドルの競技としての側面を強く出したライブ形式!」
「お互いの良さを最大限に表現し、お客さんをどれだけ笑顔にできるかの勝負!」
「アイドル研究部部長として、μ’s!あなた達に対バン勝負を申し込むわ!」
「μ’s同士で対バン!?」
「相手はプロなんだよ?」
みんなは突然の提案に戸惑いをみせる
そんな中ゆらりと立ち上がる姿が
「矢澤ぁ…その提案…受けてやるよぉ!!」
そらまるが無駄に熱く叫ぶ
「さぁ!パイちゃん!なんか言ってやるがいいさ!」
「えっ?えっ?」
突然の雑な振りに完全にフリーズするパイちゃん
「えっ?あ、あの…その…」
「………がんばる!」
うん、かわいい
「対バンするって言っても曲もダンスも凛達のほうがすくないよー?」
という凛ちゃんの心配に
「大丈夫!私達はμ’sなんだから、μ’sの曲はμ’sの物!」
りっぴーの太鼓判に続き
「その通り!114だっけか?とにかくそのくらいの曲はμ’sの歌!」
くっすんが適当感満載に引き継いで
「記憶の共有がある今なら歌えるでしょ?」
シカちゃんが確認する
「なんだか押し売りみたいだねぇ」
うっちーのツッコミのおまけ付きだ
なんか本当になんかのセールスみたいに畳み掛けてくる
「場所はどうするの?今から私達が用意できるステージは限られてるわよ?」
「いつかみたいな路上ライブって訳にもいかないだろうし…」
みんなが考えこむ
そんな中、私閃いちゃった
「最高の場所、あるよ!」
『最高の場所?』
みんなの声が揃う
「そうだよ!私達らしいトコだよ!」
『私達らしいトコ?』
「神様にも見てもらえるトコだよ!」
『神様にも見てもらえるトコ?』
「んー?まだわかんないかな?」
私の質問に
「まさか穂乃果…」
「穂乃果ちゃん、ひょっとして…」
さすが大親友
この2人はわかってくれたみたいだね
「ライブの場所は」
「神田明神!!」
『神田明神!?』
みんな声を揃えて驚く
そんなに驚くことかな?
「ちょっと本気で言ってんの?!」
「いや、凄いかもだけど、ちょっと待ってマジで?」
なんて慌てるそらみもがいれば
「聖地ライブ…想像しただけで涙が…」
「これが新たな歴史の生まれる瞬間なの?」
自分の世界に入り込むにこぱなもいる
他のみんなもそれぞれ驚きの色を隠せない
そんなみんなに
「ね?最高の場所でしょ?」
「最高の場所で最高のライブを神様に見てもらおうよ!」
「そしたらきっと神様もμ’sの良さをわかってくれて、お願い聞いてくれるよ!」
「えみつんを助けてっていうお願いがね」
「盛り上がってるトコ悪いけど、神田明神さんが場所貸してくれるとは思えないんだけど」
とシカちゃんが現実的な意見を述べる
でも私はこう答える
「大丈夫!今この世界はまだ不安定なまま」
「この世界の意思決定権の多くは私達にある!」
「私達が出来ると思えば出来るんだよ!」
不安定な世界だって利用してやる
言ったでしょ?
えみつんのためならなんだってするんだから
「μ’sは18人揃ってμ’s」
「えみつんが消えるということはμ’sも無くなるということ」
「結果的にはこの世界も無くなるってことなんじゃないかな?」
「だからやるんだ」
「私達にしか出来ないんだ」
「私達なら出来るんだよ!」
私の言葉に
「なるほど、これが高坂穂乃果か」
「私やるわ、賛成」
南ちゃんがまず賛成する
「凄い大演説ですね、穂乃果」
「私はあなたについて行きます、また新しい世界を見せてください」
海未ちゃんも賛成してくれる
その後は雪崩をうつように
「私も賛成!」
「やろう!やってやろうよ!」
みんなの賛成の声、声、声
絶対凄いライブになるよ!
神様!びっくりしないでね!
その後はトントン拍子にことが運んだ
会場も驚くほど簡単に借りれたし、ステージ設営や衣装の段取りも、学院のみんなが協力してくれて目処がついた
まるで世界が私達にライブを開催させようとしているかのようにも感じた
「後はえみつんをどう呼ぶかだね…」
そう、あれ以来えみつんは姿を見せていない
まだ近くにいるのだろうか?
…会いたいよ
「それに関しては、みもちゃんが素晴らしい方法を考えちゃいました!」
「えっ?普通に嫌な予感しかしないんだけどって痛い痛い!」
「そんな悪い事を言う口はこれかな?これなのかな?」
あぁー、またみもりんとそらまるが漫才始めちゃったよ
みもりんはえみつんのデビュー以来の付き合いだし、他に方法も思い付かない状態で断る理由はない
「みもりん!お願い!えみつんを絶対連れてきてね!」
私のお願いに、みもりんは素敵なドヤ顔で
「さすがえみつんの分身!わかってるね!任せて!」
「すーちゃま素敵!」
パイちゃんがウットリ顔でドヤ顔さんを崇拝している横で、そらまるがため息をつきながら
「ホントに大丈夫かなぁ?」
…大丈夫、だよね?
ともかくえみつんはみもりん達にお任せしよう
絶対来てくれるよね?えみつん…
そんなバタバタのライブ準備が続いている、ある日の帰り道
「なんか怖いくらい順調だね?」
ことりちゃんがこんな事を口にした
「全くです、逆に不安になってしまいますね」
海未ちゃんも同じような思いのようだ
私は2人に
「大丈夫だよ」
と言ってあげる
なんでこう言えるかというと、私は答えを知ってるからだ
だから2人に教えてあげる
「この世界は元々『ラブライブ!』というお話が元になった世界」
「その世界では、未だにちょっと信じられないけど、私達μ’sを中心に世界が回っていた」
「いろんな人の想いが集まって起こった奇跡でここは『本物』の世界になったけど、まだちょっと不安定な状態」
「そんな中でμ’sが全員揃ってライブをしよう!って状況」
「開催出来るっていうイメージしかできないよ」
「だからこれは偶然出来た奇跡の世界の中の必然」
「不思議だけどなんの不思議も無いことなんじゃないかな?」
にっこり笑顔で2人に微笑みかける
「穂乃果…」
「穂乃果ちゃん…」
2人は驚いたような表情で私の名をつぶやく
ふふっ、そんなに驚かなくたっていいのに
なんてちょっとセンチメンタルな気分で2人の答えを待つと、まず海未ちゃんが
「穂乃果…そんな難しい事を考えるなんて…」
「まだどこか調子が悪いんですか?無理してはいけません!明日は少し休んだらどうですか?」
あれっ?期待とは違う反応が…
続くことりちゃんも
「穂乃果ちゃん!ゴメンね!私気が付かなかった!」
「もう元気になったと思ってて、そんな事なかったんだね?ゴメンなさい!」
謝られてるよ?おかしいな?
「ことり!あなただけのせいではありません!」
「いつも隣に居ながら穂乃果の異常に気がつけなかった、私達2人共…最低です!」
いやいやいや!
なんでこうなるのさ!
「ちょっと!2人とも?穂乃果はどこもおかしくないし、しんどくもないよ?」
「でも、そんなに理路整然と理論展開できるなんて…」
「そうだよ、いつもなら大体途中で支離滅裂になってとりあえずGO!みたいになるのに…」
「2人とも私のこと何だと思ってるのさ!」
私の心の叫びに2人は真顔でこう答える
「太陽、永遠に私を照らしてくれる最愛の太陽」
「希望、常に未来を与えてくれる最も尊敬する希望」
「///なっ?!えっ?」
突然の出来事に顔が真っ赤になる私
そんな私を置いたまま2人は続けた
「今までの経験上この記憶もなくなってしまうのでしょう?」
「だからいつもは言えない気持ちを正直に言ってみたよ」
「ふ、2人とも…」
やばい…泣けてくるよ
でも、まだだ
えみつんを助けるまでは泣かないんだ!
私は涙が落ちないように空に向かって叫んだ
「私だって!2人の事!スッゴイ好きで!スッゴイ尊敬してるんだ!」
「そしてμ’sのみんなの事も!大大大だーいすきなんだー!!」
「世界は私達にライブを用意してくれた!」
「後のパフォーマンスは私達次第!」
「神様も、世界のみんなも感動する最高のライブにしよう!!」
えみつん!待ってるからね!
そして遂に迎えたライブ当日
「えみつん…」
えみつんはまだ来ていない
今はまだお昼前
時間はまだあるけど、それでもリハーサルとか色々準備とかを考えるとそんなに待てない
えみつん捜索班の三森隊長といえば
「なぜだ…おかしい…こんな事は許されない…」
セリフはともかく顔を青くして肩を落とす
「みもちゃんに完全に任せたのがマズかったか…」
そらまるの苦言にもみもりんに反応はない
「す、すずこ、そんなに気を落とさないで下さい」
見かねた海未ちゃんが声をかけるも効果なし
「ところでみもりん、どんな方法でえみつんを見つけようと思ったの?」
うっちーが質問する
私も気になるよ
「うぅっ…コレ……」
みもりんが差し出したものにみんな注目する
「ん?チラシじゃん?これ?」
南ちゃんの言う通り
今回のライブ告知用のチラシだ
アキバで頑張って配ったんだよ
「でも、これがどうしたの?」
私の質問に
「………」
みもりんが黙って広告の隅を指差す
「ん?なになに?」
『μ’s18人目のメンバー急募!!』
『詳しくはウェブで!!』
「…なにこれ?」
とりあえず書かれているサイトにアクセスすると
『μ’sメンバー急募!』
『以下の条件を満たす方!是非ご応募を!』
条件がつらつらと書かれているけど、コレ
「えみつんじゃん」
「そうなのよー!なんで?完璧じゃん!えみつん以外応募できないでしょ?これ!」
みもりんは嘆き続ける
「すごいにゃ!凛人選ミスの怖さを初めて知ったよ!」
「ホントにゃ!里穂もなんとなく解ってたけど怖いにゃ!」
この2人は…
その時みもりんが突然顔を上げ
「はっ!ひらめいた!!」
そう言った直後何やら携帯でやっている模様
な、何をしているのかな?
でも、私が聞く前に自己申告してくれたよ
「景品!景品がなかったんだよ!」
「選ばれた人には豪華景品を用意すべきだったんだ!」
「かぁ〜っ!すっかり忘れてたよ!でももう大丈夫!用意したから!」
あれだね、残念美人ってこういう人のこと言うんだろうね
「ところで三森さんや、景品とは一体何を用意したのかな?」
南ちゃんが恐る恐る聞いてみる
みもりんはフンスと鼻息荒く高らかに宣言する
「それはズバリ!えみつんの最も求めるもの!」
えみつんの、最も求めるもの?
いったい何なの?
他のみんなも固唾を飲んで聞き入る
「それは…」
『それは?…』
「何と!」
『何と?』
「うっちーのキッスだぁー!!!」
『………はぁ?』
これは私達の方のμ’sの反応
そしてえみつんの方のμ’sは
『うおぉぉぉぉぉ!!!!!その手があったかぁ!!!』
「え゛え゛え゛ぇぇぇ!!意味わかんないんだけど!!!」
1名以外全員納得の雄叫び
うん、うっちーが正しい
「何みもりん勝手に適当なことしてんの?」
うっちーの猛抗議
「大丈夫、いけるって!」
何だか少しずれた答えのみもりん
「しかも集合場所はココ!死角なし!」
うん、素晴らしいサムズアップポーズだね
「っていうかこんなんでホントにえみつん来るの?」
私の質問にも
「理論的に考えて、こないルートが存在しない!」
堂々とした適当な答え
脳筋にもほどがあるよぉ!
どうしよう?!
私が頭を抱えたとき、くっすんから信じられない一言が…
「あっ、えみつんだ」
『ウソ〜?!』
どんだけなの?
単純すぎるよ!
っていうか私もそうだってこと?
辛いよ!
などど私が自己嫌悪に陥る間もなく
「引っ捕えるのです!」
海未ちゃんの号令に呼応して凛ちゃんが走る
速い!
絵里ちゃんやみもりん、シカちゃんの足自慢も続く
しかしえみつんが気付くのが早く、逃走を図る、が
「残念やけど、逃がさへんよ?」
「スピードには定評はないが力には定評のある徳井さん参上!」
流石!希ちゃんとそらまるが先回り
「うわわっ!!」
えみつんが急ブレーキすると
「捕まえた!」
凛ちゃんが抱きつくようにえみつんを捕まえる
するとえみつんも観念したのかおとなしくなる
かくしてえみつんは私の所に帰ってきたのだった
「えみつん…久しぶり」
「久しぶり、穂乃果…」
お互い目を合わせるのが恥ずかしく、なんかよそよそしい挨拶を交わす
「何で?何で私の前からいなくなったの?」
私の質問は
「感動の再会かも知れないけど、ライブまでの時間がないのよ!」
にこちゃんが現実に引き戻す
そうだ!
ライブだ!
「そうだね!じゃあ面接希望者に面接を開始しようか?」
みもりんが意気揚々と宣言する
うーん、こういうとこ海未ちゃんにソックリだね
「それでは何故貴方はこちらのオーディションに応募したのですか?」
「えーと…たまたまチラシをみて、物凄く興味があって…でも迷惑かけた私がヌケヌケと出て行くのもなんか違う気がして…」
「でもみんなと一緒にまたライブしたくって…」
「気になって気になって、悩んで悩んで、困ってたところに…」
「うっちーとキッス出来るって聞いて…」
マジか?
「ほらやっぱり景品なんだよ!さすが私!!」
みもりんスゲェよ!
さすが昔からの友達
うっちーがすっごいしかめっ面なのを除けば完璧だ!
そんな中、遂に適性試験にはいる
「さて、それでは適性試験を開始します」
「1つでも適合しない項目があれば即失格です」
「面接官は私達8人となります」
「では、よろしくお願いします」
まず、最初の質問は南ちゃん
「貴方は歌に自信がありますか?」
「少なくともμ’sの曲は全て歌っていただかないと困ります」
えみつんは自信満々に答えた
「歌には自信があります」
「μ’sの曲は全て歌えます」
「たとえ南條さんとはいえ、μ’sに関しては負けません!」
南ちゃんは満足そうに笑う
次はみもりん
「さて、次の質問です」
「貴方はダンスはできますか?」
「μ’sのダンスパフォーマンスはとてもレベルの高いものです」
「着いてこれますか?」
この質問にもしっかり答える
「μ’sのダンスは全て踊れます」
「レベルは自分ではわかりませんが、みんなをガッカリさせることはありません!」
みもりんは満足気に頷く
次の面接官はそらまる
「μ’sは強力な個性派集団です」
「この集団を引っ張っていくリーダー性が貴方にはありますか?」
この質問には
「私にリーダー性があるかどうかは私には判断しかねます」
「でも、私はみんなと一緒に前に進みたいといつも考えています!」
「そのために道を切り開くならば何だってやります!」
そらまるは大仰に頷く
次の質問はパイちゃん
「貴方はμ’sのためにどの位一生懸命できますか?」
えみつんは頷きながら
「私の歌の歴史はμ’sと共にあります」
「歌を愛する私は歌の女神の名に負けないように努力してきました」
「この努力の日々は誰にも負けません!」
パイちゃんは嬉しそうに拍手する
続くのはシカちゃん
「我らがリーダーたるもの完璧過ぎてはいけません」
「何にもないところでいきなりコケるくらいのリアルドジっ子ではないといけないのです!」
「さて、貴方はどうかな?」
この質問には少し恥ずかしそうに
「恥ずかしながら何にも無いところでずっこけたり、よく物を落としたり、忘れ物をしたりします…」
穂乃果と一緒だねぇ…
「さすがえみつん、リアル穂乃果だね」
シカちゃんは納得の笑顔を見せる
「次私ね!」
くっすんが手を挙げる
「やっぱり腕相撲!」
「腕相撲強く無いとダメなんだって!」
「最強だって証明して!」
と言って机の上で腕相撲の格好をする
「えーっと…基本事務所NG出てるんであんまりやらないんですけど、今回は本気でやります」
えみつんの宣言に
「えっ?いや、ちょっとは手加減してもいいんだけど?」
くっすんの弱気発言を無視するように腕を組むえみつん
「さぁ!行くよ!」
「いやっ、そんな気合入れなくても…」
「レディー…ゴー!!」
結果は瞬殺だった
つ、つよい
「くっすん、今回の感想は?」
南ちゃんの質問に
「前は肩ごと持ってかれたけど、今回は半身裂かれた感じだったよ…」
「参りました」
全面降伏で幕を閉じた
次の面接官はりっぴー
「私達の仲間だったらやっぱり優しい人がいいのね」
「ちょっと泣き虫位がいいんだけど、貴方はどうですか?」
えみつんは恥ずかしそうに
「いっつもライブ後には泣いてます」
「何だか感動して、みんなでやりきったみたいな感覚があって、いっつも1人泣いてます」
「みんなが頑張ってる姿が好きなんです」
私は知ってるよ
私が泣き虫なのはえみつんのせいだって
りっぴーもこの答えに満足したのか、にっこり笑って
「はい、OKです」
最後はうっちー
「アイドルたるもの人身掌握は基本です」
「それこそタラシと言われるくらいで無いといけません」
「引っ込み思案で自分の心の殻を破れない」
「そんなメンバーがいたとして、貴方はその子の心の殻を破ることが出来ますか?」
えみつんは優しく笑いこう答えた
「私はあまり賢くないので、人との距離を測り間違えます」
「本当は私の事キライかもしれなくても、私が好きなら好きって言っちゃうタイプです」
「私は好きな人がどれだけ素晴らしいかを話すのが大好きです」
「私の事を好きになってくれるかどうかなんて、正直余り興味はありません」
「でも私が好きな人がみんなに好かれるのならば、どんな労力も惜しみません」
「心の殻はみんな持っているものだと思います」
「心の殻を破るのではなく、それも含めてその人素晴らしさだってわかって貰える、そんな手助けがしたい」
「そんな気持ちで好きな人とは接しています」
この言葉を聞いたうっちーは涙を流しながら
「はい、ありがとうございました」
「合格です」
そう言うや否や、えみつんに飛びついて
「お帰りなさい、えみつん」
これを皮切りに他のメンバーも次々とえみつんに抱きつき
「お帰り!」
「待たせすぎだよ!」
それぞれの想いを口にする
えみつんは恥ずかしそうに
「ただいま…みんな」
この瞬間、遂にμ’s全員がここに集結した
私は流れそうになる涙をこらえながら
「えみつん!お帰り!」
「でも今は対バンのライバルだよ!」
「お互い最高のライブをしよう!」
えみつんも流れる涙を拭いて
「穂乃果!ただいま!」
「私達の最高のパフォーマンス、見せてあげるよ!」
「今日のお客さんは全員『ラブライバー』だから、最高のライブになること間違いなし!」
「プロのお仕事!見せてあげるよ!」
なるほど、μ’sにはもう1人メンバーがいる
その名は『ラブライバー』
ライブを完成させる最後のピース
ますます自分たちの力がすべてを決めるって事だね
私達の全力
全ての集大成のライブが今、始まる
最終章「μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪×2」第一幕 完
続く でした
毎回何か間違えますね
申し訳ありません
再開します
「さあ!みんな!遂に来たよ!」
「μ’s初の対バンライブ!」
「相手は『μ’s』私たちのもう1つの姿!」
「向こうはプロだけど、胸を借りるなんて言わない!」
「私達のありったけの力を見てもらおう!」
「貴方たちが与えてくれた命はこんなに輝いているんだって、見てもらおうよ!」
「まずは私達が先攻」
「選曲はにこちゃんと花陽ちゃんのアドバイス通りにいくよ!」
私の声に2人が答える
「任せて!絶対私達が宇宙No. 1だってわからせてやるわ」
「私も頑張ります!全ての知識を総動員して最高のライブを完成させるよ!」
「さあ!いつものいこう!」
「1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「7!」
「8!」
「9!」
「μ’s!」
『ミュージック スタート!』
最終章「μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪×2」
第2幕「伝説 再来」
〜それは僕たちの奇跡〜
さあ…夢を 叶えるのはみんなの勇気
負けない こころで 明日へ駆けていこう!
一方の女神達は完全にリラックスムード
「おぉっ!それ僕かぁ」
「オープニングとしてはいい曲だもんね」
解説者モードの愛乃とすずこ
「向こうにはにこと花陽がいるからね、知識的には向こうが上でしょう」
「くるよ!せーの!」
『chance!for!me!chance for you!!』
「いい曲だ、コレ」
ユリカ、里穂、pileの3人はただのラブライバーと化している
「っていうか、みんな超かわいいんだけど!特に希」
「いや、穂乃果でしょ?」
「ことり!かわい〜!」
亜衣奈、恵海、彩は押しメンという名の自分の分身を全力で愛でている
そんな様子を
「これが親バカか…」
と、青空が納得したような、諦めたような表情でつぶやく
しかし出番直前になるとスイッチが入る
円陣の中、恵海が力強く語る
「とにかくこっちもいくよ!」
「相手は『μ’s』」
「スクールアイドルの頂点」
「でもこっちだって、ドームを満員にまでしたんだ!」
「あの輝きを私達のパフォーマンスを彼女たちに見せてあげよう!」
「今日は純粋に楽しめる、そんな今まで無い機会」
「この会場だけでなく!全てのラブライバーに届けられるように!気合い入れていくよー!」
「1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「7!」
「8!」
「9!」
「μ’s!」
『ミュージック スタート!』
穂乃果達は緊張の面持ちで見守る
「さあ!えみつん達の番だ!」
「向こうの一曲目は何でくるのかしら?」
という絵里ちゃんの発言の直後
「!?このドラムロール!!」
「にこちゃん!これは?」
「…飛ばしてくるわね」
〜Super LOVE=Super LIVE!〜
スーパー ラブ!みんなでスーパーライブ!
LIVE!Are you ready Go!
「お客さんもぶち上がりだにゃー!」
「この歌唱力!ダンス!そして何より表現力!すごいです」
「うっちーすごいかわいい!」
驚嘆の声をあげるメンバー
「…えみつん、凄いよ…」
私も正直圧倒される
でも…
「みんな!私達は私達の輝きを見てもらうんだよ!」
「相手が凄いのなんて解ってる!」
「でもそんなの関係ない!ラブライバーさん達、そしてえみつん達に私達の魂をぶつけるんだ!」
私の宣言にみんなの目付きが変わる
「その通り!お互い宇宙No.1だけど、今日は私達の方がちょっぴりかわいい事を知ってもらうのよ!」
続くにこちゃんの言葉に
『はい!』
さすが、部長
頼りになるね
その後も女神達の競演は続く
お互いがお互いの曲を聴いてから、次の演目を決める
それぞれのメンバーの技量や選曲のセンスが大きく問われるこの方式
穂乃果達にはにこと花陽という知識のアドバンテージがあり、えみつん達には表現力というアドバンテージがある
まさに競演という名に恥じないステージである
休憩前のステージ上で
「デュオとかトリオも見たくない?」
なんちゃんが提案すると
「いいんじゃないかしら?」
珍しく絵里ちゃんが挑発に乗る
「絵里ちゃん!いいの?」
心配の声も上がるが
「絶対大丈夫よ」
信じるよ、絵里ちゃん
先攻後攻入れ替わっての一曲目
「この前奏は!?」
「soldier game!」
「遂にライブで3人バージョンが…」
以前のライブでは披露できなかった完全版が、ここ神田明神ステージで遂に披露される
〜soldier game〜
Three Two One Zero!ここで登場
見てなさい 私の本気
スリルと 美意識で 勝つのよ 必ず
「か、カッコいい…」
「歌、ウマすぎ…」
「ずっと聞いていたい…」
「これは、勝てないかも」
そんな心配をよそに絵里ちゃんは余裕
「絶対大丈夫!私たちに任せてね」
まさか…
歌が終わり、会場が完全に、いわゆるソルゲ組に酔いしれていた、その時
デーデッデー
特徴的なイントロが流れた瞬間、会場から今までで最高の歓声があがる
その曲の名は
~硝子の花園~
ラーラーラーララーラーラー
ラーラーララーラーラー
ユメの迷路 ユリの迷路
「のぞえりキターーー!!!」
「しかも本物だ!」
「なぜ中の人が一番大興奮なのか…?」
青空が冷静につっこむ
「そんなことより凄いよ!正直今までのが全部前座くらい持ってかれちゃったよ!」
今までのリラックスムードが一転する
そんな中
「穂乃果達…スゴイよ」
恵海は心から感動していた
もとより負けん気の強いメンバー達は
「負けてられるかぁ!うっちー!あれいこう!華のやつ」
「アネモネ?いいよ!」
といったように目の色を変え対抗する
このようにデュオ、トリオ合戦も大盛り上がり
中盤にこりんぱなの乱入合戦があり、大荒れの様相を呈しかけたが、直後の脳トロ対決が入ったことによりホンワカ幸せな気分で次のユニット対決に進む
ユニット対決一番手は私達printemps
「なんだかプワプワしてるけど、いってくるね」
「が、頑張ります!」
「花陽ちゃん、楽しんでいこう」
緊張する私達ににこちゃんがアドバイス
「頼むわね!私達の最大の武器を生かせるのはprintempsなのよ!」
「私達の武器?」
一体何だろう?
私達の疑問に答えるようににこちゃんは続けた
「そう、彼女達にはないもの…」
「それは一体?」
「それは…若さ!現役JKとしての!今だけの魅力!最強の武器!」
『な、なんだってー!』
「ビックリするほど俗的だけど、使えるものは何でも使うよ!」
「でも、輝く今を表現するにはピッタリかも」
「最高にかわいい私達を見せてくるね!」
「歌も飛び道具を用意した、後はあなた達の魅力を振りまくのみ!」
にこちゃん!ありがとう!
私達は3人でガッチリ手を組んで
『いってきます!』
〜ぷわぷわーお!〜
君に飛んでけ! スキスキぷわぷわ
スキスキぷわぷわ スキスキぷわぷわしちゃおう!
「ぷわぷわーお!キターーー!!」
「脳がぁ!脳が溶けるよぉ〜」
「スキスキぷわぷわ!スキスキぷわぷわしちゃおう!」
恵海達3人も大興奮
「…ヤバイ、これがJKの脳トロ…」
「くっ!私達にはない彼女達だけの武器…」
動揺?というか魅了されている!
しかし負けてはいられない、恵海は鼓舞するように
「でも負けないよ!ならばこっちはオトナの魅力でメロメロにするよ!」
この言葉に2人は
「オトナの魅力…?」
「誰が?」
冷静な発言
「…くっ!負けない!!」
〜NO EXIT ORION〜
わからない 貴方の気持ちが
約束を忘れたり 間違えたり
「3人ともカッコいい」
「ぶっちゃけ惚れそう」
「歌の内容的にも雰囲気がマッチしてて…やっぱり表現力が並じゃない」
観客と化した3人は素直に曲に聴き入る
「でも、これがprintempsの可能性なんだね」
printempsは、それぞれの特徴を活かしたステージとなり、正に少女と大人の魅力を伝えるステージとなった
続くはlily white
ユニットリーダーの海未は希と凛にある決意を伝えた
「ワガママを言ってすみません、どうしても真っ向勝負をしたいのです」
それは策を弄さず、純粋に自分たちの力のみでパフォーマンスをしたい、という事である
今までのステージでわかった事がある
あの3人は違う
向こうのlily whiteはダンス特化とも聞いた
だからこそ、自分の力を試したい
生真面目な少女の心に生まれた我儘
そんな我儘に2人は
「ふふっ、その気持ち、海未ちゃんだけやないから大丈夫よ」
「その通り!凛達lily whiteは最高の練習量を誇るユニット」
「例え向こうがダンス特化ユニットとは言え、絶対負けないよ!」
力強い言葉を返す
「ありがとうございます!2人とも!」
「日頃の練習の成果、皆さんに見ていただきましょう!」
〜微熱からMystery〜
今年の夏の匂い いつもとは違うみたい
今年の夏の匂い 秘密に酔う香り
ステージ横の控えで3人は出番を待つ
「微熱かぁ、海未っぽいね」
「ダンス上手!絶対メチャクチャ練習やってるんだよ!」
「海未ちゃん鬼軍曹っぽいもんね〜」
それぞれの感想を述べる
そんな中すずこは心底嬉しそうに
「ガチンコで勝負に来るんだね!流石!」
「私達だって最高のパフォーマンス見せちゃうよ!」
「みもちゃん的には堪らないシチュエーションだね」
「まぁ、ウチら基本正面突破だけどね」
マイペースのように見える亜衣奈と里穂だが気持ちはすずこと同じ
「本気出しちゃうからね」
「私も〜!」
「よっしゃ!さぁ!突撃!!」
〜春情ロマンティック〜
始まりですか?
誰も誰も 気づかない
生まれ変わる 恋のために
まさに圧倒的
ダンスパフォーマンスは3人を驚愕させるに十分なものだった
「…すずこ…凄いです」
「くっすんもいつもと全然違う…あのダンスのキレ…」
「りっぴー色っぽい…これがみんなが言ってた表現力なんだ」
完全に魅了される3人
だがその目には諦めや絶望のような負の感情はない
「全く手を抜かず、全力でパフォーマンスしてくれています」
「しかもこれ、絶対お客さんだけでなく私達にも魅せてくれてるね」
「まだだよ、凛達だってまだ上に行ける!」
凛の言葉に海未は大きくうなずき
「その通りです!今はまだ未熟な私達ですが、必ず私達だけのlily whiteになってみせます!」
完成された魅力と未完成の魅力
相反する白百合の花の魅力に会場は酔いしれた
ユニット最後の対決はBiBi
出番前の控え室
「さあ、遂に大宇宙No. 1ユニットの私達の出番なんだけど」
「………」
「………」
「なに2人してガチガチになってんのよ!」
気合の入る、にことは別に真姫と、そして絵里までもが緊張の面持ち
「べっ、別に緊張してるわけじゃないけど…」
「けど?」
「パイちゃんの歌を聴くと私の歌が凄い単調なものに思えて…正直怖い」
真姫は正直な気持ちを伝える
「真姫の言う通り、私も愛乃の歌声に圧倒されているっていうのが正直な感想よ」
絵里も同様の気持ちであるという
しかし、にこはこの言葉に対して冷たく言い放つ
「はぁ〜これだから貴方達はバックダンサー止まりなのよ」
「なっ何ですって!」
「にこ…なにが言いたいの?」
色めき立つ2人に対して、にこは続ける
「彼女達が何故凄いのか?」
「それは自分に自信を持っているから!」
「自分たちが最高のパフォーマンスをしているという自信」
「それが観客にも伝わり、それが歓声となり、大きなうねりとなり、魅力となる!」
「私はいつも自信を持ってステージに立っている」
「貴方達は自信がない、だから私の方が魅力がある、故に貴方達はバックダンサーなの!」
うつむく2人
そんな2人に次は優しく語りかける
「貴方達は私が認めたアイドル」
「私が隣に居たいと願った仲間」
「だから自信を持ちなさい!」
この言葉に2人は顔を上げる
「にこちゃん…」
「にこ…」
にこは満面の笑みで
「さあ!行くわよ!笑顔の魔法!にっこにっこにー❤」
2人は顔を見合わせた後
「イミワカンナイ」
「さすが、にこね」
いつも通りの雑な返し
「何なのよ!あんたら!」
怒るにこだが、表現は笑顔
3人で笑いあった後
「ふふっ、私達らしく、最高のパフォーマンス見せてあげるわ」
「私も、何だか悩んでたのがバカみたくなってきちゃった」
「笑顔の魔法もあながち嘘でもないみたいね」
にこは少し表現を引き締め
「相手にはそらまるもいる」
「必ず何かしかけてくるけど、大丈夫、私に任せて」
「何があってもパフォーマンスを止めずにいきましょう!」
「さぁ!最高のステージ!行くわよ!」
〜Cutie Panther〜
捕まえちゃう!
どこにいるの?ムリよムリよ どこにいたってムリよ
捕まえちゃう!
誰といるの?ダメよダメよ 私以外はダメよ
「cutie panther わ!た!し!」
「パイちゃんノリノリだね」
「この曲すき!楽しいし」
「そうだね、3人ともかわいいし、10ハラショーだよ」
盛り上がるpileと愛乃の後ろで、にこを見つめ続ける青空
「にこ…この場面であのパフォーマンス、スゴイよ」
「だから私も勝ちに行く、手段は選ばない、だって貴方は『強い』から」
「2人とも!付き合わせてごめんね!」
「私、勝ちたいんだ!」
青空の言葉に2人は
「まるちゃん燃えてるね!」
「これが若さか…」
それぞれの言葉で答える
そして青空の仕掛けが始まる
曲も佳境に入った時、観客席からどよめきが起こる
「!?」
ステージ上の3人に動揺が走る
観客席の中心に青空達が現れたのだ
手にはサイリウム
そして
『捕まえちゃう!』
観客とともにコールする
盛り上がりも最高潮!
しかしその盛り上がりはにこ達ではなく、青空達に向けられている
その盛り上がりのまま、もう1つのBiBiのパフォーマンスが始まる
しかもその曲は
〜PSYCHIC FIRE〜
思い込み ただしなさい! 何て言わないわ
好きなこと 好きなだけ 求めてさまよえば
舞台袖、絵里が開口一番
「…やられたわね」
真姫も続いて
「にこちゃん…相手が一枚上手だったみたいね」
しかしにこは不敵に笑い
「2人ともなにを言ってるの?」
「私達のステージはまだ終わってないわ」
絵里と真姫が怪訝そうな表情でにこを見る
「彼女達は私達への歓声を全て持って行った」
「ならば私達は倍返しをいただくのみ」
自信満々に宣言する
絵里は驚いた表情で
「そんなことが出来るの?」
そんな質問に、にこは胸を張り宣言する
「出来るかどうかじゃない!やるのよ!」
「私達はスクールアイドル、彼女達はプロフェッショナル」
「プロがそうくるなら、私達も見習うまでよ!」
「私に任せて!」
その姿に2人も覚悟を決めたようにうなずき
「わかったわ、任せたわよにこちゃん!」
「頼りにしてるわよ、部長」
にこ達のパフォーマンスはまだ終わらない
こちらも曲は佳境を迎える
『ここでBiBiコールを受ければ、私達の勝ちだ!』
青空がそう思った時、先程と同様に観客席からどよめきが起こる
「チョットチョット!BiBiパワーが足りないわ!」
「エリーもBiBiパワーがもっと欲しいわ!」
「イミワカンナイ!」
「さあ!みんな!私達と一緒にステージ上のBiBiにパワーを送るのよ!」
「BiBi!BiBi!BiBi!BiBi!BiBi!」
会場から地響きのようなBiBiコール
確かにステージに向けてのコールであるが、そのパワーは間違いなく観客席側のBiBiのものである
それはステージ上ほど感じられるものであった
曲が終わり舞台袖で青空は肩を落とす
「完全にやられた…ごめん」
「しょうがないよ、そらまる」
「こういうパフォーマンスは向こうが一枚上手だったね」
アイドルを愛する心がプロの力を凌駕した
その後は再びμ’s同士の対決
次々に繰り広げられる女神達の競演は観客達を魅了する
その中で本人達にも不思議な感情が芽生えてきていた
穂乃果と恵海は自然と目を合わせ、そして宣言する
『これからはμ’s全員で歌うよ!』
誰からも異論はない
なぜなら全ての人の気持ちを代弁しただけだから
「それじゃあいくよ!」
「ナンバリング一気にいくから!付いてきてね!!」
全てはここから始まった
〜僕らのLIVE 君とのLIFE〜
白橙の伝説
〜Snow halation〜
キュートなPVも話題となった
〜夏色笑顔で1,2,Jump!〜
バレンタインをモチーフにメンバーの心を表現
〜もぎゅっと”Love”で接近中〜
アップテンポでライブ特化とも言える名曲
〜Wonderful Rush〜
オリコン3位という当時の最高順位を記録した
〜Music S.T.A.R.T!!〜
そしてμ’sラストシングル
〜MOMENT RING〜
次々に披露される名曲たち
それぞれの曲にそれぞれの想いを乗せて
18人は美しい歌を紡ぎ出す
その姿はまさに女神の名がふさわしく、神々しさすら感じさせた
そんな夢の時間も終わりが近づく
アンコールだけでは飽き足らず、ダブル、そしてトリプルコールの中
女神たちは最後の曲を披露する
「この曲は別れの曲ではありません」
「感謝の気持ちと再会の約束をする曲です」
「私達はここで神様にこの曲を捧げます」
「いつかまた、この18人で歌いたいという願いとともに」
「そして私はワガママを言います」
「皆さんも一緒に願ってください」
「みんなの願いを1つの光にして、私達が届けます!」
〜僕たちはひとつの光〜
Ah! ほのかな予感から始まり
Ah! 希望(のぞみ)が星空かけて
花を咲かせる にっこり笑顔は
ずっと同じさ 友情の笑顔
忘れない いつまでも 忘れない
こんなにも心がひとつになる
世界を見つけた
喜び(ともに)歌おう
最後まで (僕たちはひとつ)
ことりの翼がついに大きくなって
旅立ちの日だよ
遠くへと広がる海の色暖かく
夢の中で描いた
絵のようなんだ切なくて
時を巻き戻してみるかい?
No no no… 今が最高
皆と出会えたこと
嬉しくて離れたくないよ 本当だよ
涙はいらない このまま踊ろう
手を振って もっと振って
光を追いかけてきた僕たちだから
さよならは言わない
また会おう 呼んでくれるかい?
僕たちのこと
素敵だった 未来に
繋がった夢 夢の未来
君と僕の LIVE&LIFE
ことりの翼がついに大きくなって
旅立ちの日だよ
遠くへと広がる海の色暖かく
夢の中で描いた
絵のようなんだ切なくて
時を巻き戻してみるかい?
No no no… 今が最高
だって だって
今が最高!
Ah! ほのかな予感から始まり
Ah! 光を追いかけてきたんだよ
曲が終わり、ステージが暗転する
『ありがとうμ’s』
『ありがとう穂乃果』
確かに響いた声とともに、えみつん達は在るべき世界へ帰って行った
「ありがとう、えみつん」
「必ず、また逢おうね」
こうして女神達のステージは終演を迎えた
ライブの後の事はあまり覚えていない
気がついたら自分の部屋にいた
ライブ終わりは大体ハイテンションで大騒ぎしている私としては、非常に珍しい事である
こんな凄いライブはした事がない
なのに終わった後は高揚感ではなく、不思議な満足感と虚無感が残った
心の中の大事な部分が抜け落ちたような、不思議な気分
ぼうっとしながら部屋を見渡すと、カバンには見慣れぬマスコットが増えている
いつの間に付けたんだっけ?
忘れてしまったが、とても大事なものだったような気がする
何だか私はとても眠くなって、いつの間にか寝てしまった
………あれっ?ここどこ?
『ついにファイナルライブ』
だれ?でも知ってるひとだ
『聖地 神田明神様に絵馬を奉納するよ!』
誰だっけ?すごく大事な人…
『えーっと…最高のライブになりますように…っと』
そうだ!この人の名は…
『名前も書かなくちゃだねー』
ふふっ、思い出したよ
『新田恵海、えみつん』
「新田恵海さん、こんばんは」
いつの間にか私は神田明神様の境内に立っていた
そこで見知った人に声をかける
「えっ?うわっ!ばれた?」
1人慌ててバタバタするえみつん
でも私の顔を見ると、ピタッと動きを止め
「えっ?コスプレの人?ですか?」
失礼しちゃうな!
「本物だよ!ひどいよ!えみつん!」
「自分が命を吹き込んだ相手くらいちゃんと覚えててよね!」
私がプンプン怒ると
「ふふっ、冗談だよ」
そう言うとえみつんは私を抱きしめ涙声で
「逢いたかったよ、穂乃果」
「あなた達のおかげで私は帰ってこれたよ」
「何故かファイナルライブの前日だけどね」
私もえみつんを抱き返して
「良かった!みんなの願いが届いたんだね!」
2人してワンワン泣いていると聞き覚えのある声が
「うおっ!海未!うっちー!大変だ!」
「大変な事ですよこれは…ダブル不倫の現場を押さえてしまった!」
そちらを見るとみもりんと海未ちゃん、うっちーとことりちゃんが並んでこちらに向かって来ている
ノリノリのみもりんの隣では海未ちゃんが赤い顔で
「す、すずこ!破廉恥ですよ!」
とたしなめ、困り顔のことりちゃんの隣ではうっちーが
「みもりん?イミワカンナイんだけど!」
と抗議の声を上げている
「みんな!?どうしてここに?」
私の質問に海未ちゃんが答える
「ライブの後、何だか記憶が曖昧のまま眠ってしまって、気がついたらすずこのところに…」
「でもすずこを見たら色々思い出して、一緒にここに向かっているうちに…」
「私たちと合流したんだよね」
うっちーが答えを引き継ぐ
「ことりも海未ちゃんと同じ」
「気がついたら彩ちゃんのところにいて、何だかここに来なくちゃいけない気がしたの」
そうしているうちに
「やっぱりいた!」
「おーい!こんばんは!」
「本当にいたよ」
「良かったぁ」
シカちゃん、花陽ちゃん、りっぴー、そして凛ちゃんが合流する
という事は
「到着!みんないるよ!」
「ね?私の言った通りでしょう?」
パイちゃんと真姫ちゃんが(腕を組んで)やって来た
「ハラショー!夜の神社も素敵ね!」
「そうだね、10ハラショーだよ」
「私の運転テクどうだった?上手?」
「うん、安心して隣に座ってたよ」
絵里ちゃんとなんちゃん、くっすんと希ちゃんも到着
「後はあの子達だけね?」
絵里ちゃんが言った直後、遠くからかしましい声が
「ちょっと!そらまるのせいで遅くなっちゃったじゃない!」
「元々はにこがあんな事言い出すからじゃん!」
「なんですって?」
「なにを!」
『勝負よ!』
「相変わらず仲良しだね」
私の言葉に
『仲良くない!』
揃って答える
こうしてここ神田明神にて、再びμ’s18人が全員集結した
「さあ!とりあえず全員集合したところで!」
『明日のライブが最高のライブになりますように!』
まずお参りだよ!
「ところで何でファイナル前日に戻ったんだろうね?」
多分みんなが思ってる疑問を凛ちゃんが口にする
「私、何となくわかるよ」
「私も何となくわかるかも…」
私とえみつんは顔を見合わせ笑いあう
私は続ける
「きっとこれは神様からの贈り物」
「私達と、私達を好きでいてくれる人達、私達に命をくれた人」
「いろんな人への贈り物」
「だからえみつん達にお願いがあるの!」
「私達は直接はステージに立てないけど、私達の心を一緒に連れて行って欲しいの」
「私達もありがとうを伝えたい」
「これはきっと神様がくれたチャンスなんじゃないかな」
「私はそう思うんだ」
すると、私達の方のμ’sのみんなは私の方に集まって整列する
『お願いします!私達も連れて行ってください!』
今度はえみつん達がみんな笑顔で整列して
『お願いします!私達と一緒に来てください』
どこまでいっても私達は繋がってるんだね
うれしいよ!
こうして迎えたファイナルライブ
私達はえみつん達と同化する形で同じステージに立った
そこで私達は、楽しさ、願い、ありがとうの気持ち、そして少しの寂しさを含め、最高のパフォーマンスを披露する
えみつん達のありがとうの気持ちが私にも伝わる
きっと私達のありがとうの気持ちも伝わってるはず
みんなのありがとうの気持ちを全身で表現する
会場を埋め尽くすサイリウムの光
割れんばかりの大歓声
そんな夢の時間も終わりに近づき最後の挨拶
メンバーが各々思いの丈を綴っていく
そして私の番
じゃなかったね、私達の番
あの時の夢のように迷ったりしない
だって私は高坂穂乃果で新田恵海なんだから
2人の想いをみんなに伝える
「また、逢う日まで『ファイトだよ!』」
うん!ファイトだよ!
ラストソング
僕たちはひとつの光
みんなの大合唱の中、私達は円陣を組む
そこは私達18人だけの空間
そこでの事はみんなには内緒
ゴメンね
ステージから客席が見えなくなるまで、私達は感謝の気持ちを力一杯叫んだ
心の中は感謝の気持ちしかなかったから
客席が見えなくなると、えみつんは私に語りかける
「穂乃果、ありがとう」
「穂乃果に会ってから、私の人生は輝き続けてた」
「あなたの輝きの一部で居られる事が、私の誇りだったよ」
「あなたと過ごした日々はこれからも絶対忘れない」
「本当にありがとう」
つぶやくように語りかける声はとても優しくて、私の大好きなえみつんの声そのもの
私もえみつんにありがとうを伝える
「えみつん、ありがとう」
「私達のためにずっと頑張ってくれて」
「私、えみつんに出会えて良かった!」
「穂乃果とえみつんは似た者同士って言われるのとっても嬉しかったよ!」
「だって大好きな人と似てるって、ちょっとした自慢だもんね」
「あと、えみつん何だかお別れみたいな挨拶してるけど、私達はずっと一緒なんだから」
「いつだって一緒で、いつだって逢えるんだよ!」
「忘れないでね!」
「だって私達は…」
気がつくと私達は元の世界に戻って来ていた
夜の神田明神
えみつん達の世界では見えなかった音ノ木坂が見える
他のみんなも一緒に戻って来たようで、それぞれに想いに耽っている様子
想いに耽る、という事は
「みんな!ちゃんと覚えてるんだね?!」
私の言葉に、みんな笑顔で答える
えみつんがいなくなった時は数時間で記憶が変化した
合同ライブの時なんて、直後の記憶すら曖昧だった
なのに今ははっきりと覚えている
「と、いう事は…」
「世界が安定したんだ!」
「しかも記憶が残ってる!」
みんなの表情が明るくなる
「つまりこれって!」
「またみんなに会えるってことだよ!」
『やった〜!!!』
みんな笑顔だったり涙だったりそれぞれで喜びを爆発させる
奇跡は起こったんだ
みんなの想いは守られたんだ
えみつん!
やったよ!
私達やり遂げたんだ!
ここから見える街の灯り
そこに暮らす人々
最初はたった1枚の絵から始まったこの世界
でも今では数え切れないほどの人達が、それぞれの人生を歩んでいる
正直実感というか、イメージはわかないけど、1つだけわかる事がある
μ’s
女神達の物語は続いていくという事だ
空に浮かぶ月を見上げて、私は独りつぶやく
「えみつん、同じ空を見てるのかな?」
「見てるよね、だって私達は一心同体」
「あの時言ったもんね」
「私達はμ’s」
「18人の女神 だよ!」
最終章「μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪×2」完
ちなみに
プロローグがあるということは
エピローグもあるのです
というわけでこの駄文は
もうちょっとだけ続くのじゃ
再開します
第結章「エピローグ」
皆さん!初めまして!
私、高坂穂乃果
国立 音ノ木坂学院に通う高校3年生
生徒会長をやってます
部活はアイドル研究部に所属していて、スクールアイドルもやってるんだよ!
えっ?
私のことは知ってるって?
ふふふっ、果たしてそうかな?
みんなが知ってる穂乃果は高校2年生だったんじゃないかな?
今の私は『3年生』
つまりみんなの知らない、ちょっと成長した穂乃果なのだ!
と言っても、まだ6月にはいったばかり
正直あまり変わらないと言われればそうだけど…
でも、3月から2ヶ月以上も時が進んだんだよ!
当たり前だ!って怒らないでね
だって本当はこの世界自体、3月以降は存在しないはずだったんだから
それがこうして『普通に』時が流れている
当然その中では、別れや出会いがあったけど、それはしょうがないよね
だって時は進んでいくんだから
未来に向かって
ちなみに今日は、世間一般で言うところの休日
学院はお休み、アイドル研究部も練習は無いんだけど、訳あって部室に向かってるの
なぜかというと…
おっと、お話ししてるうちに待ち合わせ場所だよ
そこではいつも通りに、私の大好きな幼なじみ達が待っていてくれる
「おはよう、穂乃果ちゃん!」
「おはよう!ことりちゃん!」
この子は南ことりちゃん!
私の幼なじみで大親友なんだよ
とっても優しくて、私が困った時は必ず助けてくれるの!
しかもオシャレで可愛くて、それでいてしっかりしてて
恥ずかしいから口には出せないけど、すっごい尊敬してるんだ!
「おはようございます、穂乃果」
「おっはよー!海未ちゃん!」
こちらは園田海未ちゃん
もう一人の幼なじみで大親友
ザ・大和撫子って感じの子
見た目もカッコいいし、とっても優しいからすっごいモテるんだよ
…後輩の女子に
でも本当はすっごい恥ずかしがり屋で、泣き虫で、可愛い子なんだ
実は最近色々あって、親友以上恋人未満な関係になったんだけど、恥ずかしいからみんなには内緒だよ
そんな私達が通う音ノ木坂学院は、1年前廃校の危機に陥ったんだけど、私達が結成したスクールアイドル「μ’s」の活躍もあって、逆に大人気高校に早変わり
数多くの新入生を迎えられて、とってもうれしいよ!
何と言ってもその中には私の妹、高坂雪穂もいるんだからね
アイドル研究部も雪穂を含め、沢山の1年生が入ってくれてとっても賑やか
でも、さっきも言った通り今日は1年生はお休み
私達3年生と、2年生、そして卒業した3人だけの秘密の集まり
この9人は元々スクールアイドル『μ’s』っていうグループで、第2回ラブライブ!で優勝したんだよ!
って、それはみんな知ってるよね
そうこうしているうちに、見慣れた3人組、あれは2年生組だね!
「おーい!みんなー!」
私が呼ぶと
「あっ!穂乃果ちゃーん!」
負けじと大きな声で答えてくれるのは、星空凛ちゃん
アイドル研究部のリーダーで、とっても元気でとっても可愛い女の子
μ’sに入る前は、女の子らしくするのにコンプレックスがあったみたい
でも、2人の親友に背中を押されて一歩進んだことによって、そのコンプレックスも克服
今ではすっごい女の子らしさも増して、魅力倍増だよ!
「2人とも、街中なんだけど…もう少し静かにしてよね」
また、2人とも怒られてしまった
この子は西木野真姫ちゃん
見た目はクールビュティー、つっけんどんな話し方、しかもお嬢様ということで一見怖い印象があるけど…
「ゴメンよぉ〜真姫ちゃーん」スリスリ
「そんなに怒っちゃイヤだにゃー」スリスリ
「ヴェェェ…そ、そんなに怒ってないわよ、ちょっと注意しただけだから…」
こんな風に本当は恥ずかしがり屋で優しい女の子
歌がとっても上手でピアノも得意
アイドル研究部の作曲担当で素敵な曲をたくさん作ってくれるの!
「2人とも、真姫ちゃん困ってるよ?」
やんわりとした優しい声に
「はーい、部長」
「かよちん部長の言うことは絶対にゃ」
「助かったわ、ありがとう花陽部長」
「ま、真姫ちゃんまで…ダレカタスケテー!」
助けを求めるこの子は小泉花陽ちゃん
アイドル研究部の部長さんなんだよ!
前任の部長からの推薦と私達の意見が完全に一致して引き継がれた部長の座
持ち前のアイドル愛と頑張りで部を切り盛りしてしてるんだ
優しい性格で後輩からも大人気
未だに部長って呼ばれるのが慣れないみたいで、今みたいなやり取りが最近のプチブーム
でも、花陽部長ならアイドル研究部は安泰だねぇ
「にこちゃん達は先に学校へ向かうって、さっき連絡があったよ」
花陽ちゃんが携帯の画面をこちらに向けて教えてくれる
「という事は、絵里ちゃんと希ちゃんも一緒だね?」
いつの間にか追いついたことりちゃんが画面を見ながら言う
今名前の出たにこちゃん、絵里ちゃん、希ちゃんの3人を紹介するね
まず矢澤にこちゃん
アイドル研究部の前部長で、花陽ちゃん以上のアイドル大好きっ子
ちっちゃくて可愛くて頑張り屋さんで、でも何だかお姉さんで、みんながすっごい信頼してる子なんだよ
今は近所の大学に通いながら、芸能事務所の養成所に通ってるんだ
夢の本物のアイドルになる為に頑張ってるの
今のうちにサインもらっておこう!
次は東條希ちゃん
ホンワカしてて優しくて、誰よりもμ’sを大事にしてくれる子
でも、凛ちゃんと一緒になっていたずらしたりもするし、中々のミステリアスガール
本人も占いとかのスピリチュアルな事が好きで、高校の頃から神田明神様で巫女さんとしてお手伝いをしてるの
今は大学に通ってるけど、巫女さんのお手伝いはまだ続けているから、しょっちゅう会いに行っちゃう
そして最後は絢瀬絵里ちゃん
今は国立大学の学生さんだけど、高校在学中は音ノ木坂学院の生徒会長さんだったんだよ
ロシアのクォーターで金髪碧眼、スタイル抜群のカッコいいお姉さん
昔はちょっと怖い感じだったけど、μ’sに入って仲良くなってみると、とっても優しくて可愛い女の子だってわかったんだ
小さい頃は賢い可愛いエリーチカって呼ばれてたんだって
今でも十分に賢くて可愛いけどね
子供の頃からバレエをやっていて、ダンスがとっても上手なの
μ’sのダンスレベルが高いのは絵里ちゃんのおかげだよ!
今日はそんなμ’sのメンバーが久しぶりに全員揃う日
全員揃うのって何ヶ月ぶりなんだろう?
えっ?ついこないだ卒業したばかりなんじゃないかって?
確かに絵里ちゃん達は3月まで一緒に入られたから一緒だったけど…
あのね、私達μ’sは9人グループだと思われてるけど実はちょっと違うんだよ
正確には『9人×2』が正解
詳しくは…
もう少しで解るよ!
ほら、学院が見えてきたでしょ
学院に到着すると、私は
「それじゃあ私、絵里ちゃん達の事迎えに行ってくるね」
「一通り周ったら部室に行くよ」
と、5人に告げる
「それでは私達も迎えに行ってから部室に行きますね」
海未ちゃんが答え、ことりちゃんと真姫ちゃんが隣で手を振る
「私達はきっと部室にいるはずだから、先に行ってるね!」
「まっ、待ってぇー!凛ちゃん!!」
凛ちゃんと花陽ちゃんはそう言って走っていっちゃった
ふふっ、みんな逢えるのが楽しみなんだね
わかるけど
さて、それではまず絵里ちゃん達を迎えに行こうかな
私は生徒会室に向かう
今はすっかり慣れたけど、最初は自分が生徒会長だなんて、何だか実感湧かなかったな
何て思っているうちに到着
ドアの鍵は…開いてる
多分絵里ちゃんが借りてきたんだね
さすが前生徒会長!
先生達の信頼もまだまだ厚いみたいだよ
さて、中に入るとお目当の2人、絵里ちゃんと、なんちゃんを発見
なんちゃんっていうのは、南條愛乃さんっていうのが本当の名前
もう1つのμ’sの絵里ちゃん担当で、絵里ちゃんに声と命をくれた人
とっても綺麗な声で歌が上手!ってプロに失礼かな?
しっかり者と怠け者が同居する不思議な魅力を持ったオトコマエな人だよ
「それでね、これが難しくて…」
「それキツイよね〜でもコレって実は…」
2人とも何やら真剣に話し込んでる
…ゲーム画面を映し出すPCの前で
「コラッ!2人とも!学校でゲームしちゃダメだよ!」
「うわっ!ビックリした!」
「穂、穂乃果!?ち、違うのよ?こ、これは愛乃が…」
「ずるいぞ!絵里!いやこれは絵里が教えて欲しいっていうものだから…」
2人が責任の押し付け合いをはじめたよ
「もう!2人とも久し振りなのに!ゲームばっかりしてちゃダメでしょ?」
「穂乃果さんのおっしゃる通りです…」
「穂乃果に怒られる日が来るなんて…」
並んでシュンとしている姿が余りにも似ているものだから
「ぷぷっ、あはは!!」
思わず笑っちゃった
すると2人も
「うふふっ」
「あははっ」
つられて笑い出す
ひとしきり笑った後
「久し振り!お帰りなさい!なんちゃん!!」
なんちゃんにご挨拶
「ただいま、穂乃果」
こんな感じで今日はもう1つのμ’s9人も集まる、同窓会なんだ!
みんなそれぞれ個別には会ってるみたいだけど、なかなか全員揃うのは難しい
だってみんな凄いんだよ!
イベントにライブ、はたまた全国ツアーをする人もいるし
こう考えると、μ’sって本当に凄い人達が集まったんだね
感慨深い感想はともかく、2人と合流したわたしは次の目標
「2人の相方を探そう!」
私の意見に
「相方いうな!」
なんちゃんの抗議に続き絵里ちゃんが
「そうよ!せめてパートナーっていって欲しいわ!」
「いや、それはちょっと…」
「あら?」
絵里ちゃん、相変わらずだね
でも時間もないから
「とにかくしゅっぱーつ!」
「あっ!コラッ!おねえさんの言うことも聞きなさい!」
「2人とも待って〜!」
2人の抗議は無視だよ!
さて、次の目標はどこかな?
「あの子の事だから一所には止まってなさそうな気がするけど…」
と、なんちゃん
「確かにあちこちフラフラしてそうな気がするわね」
こちらは絵里ちゃん
うーん?でも何となくあそこにいる気がする
そんな事を思いながら私がやってきたのは、私達の思い出が詰まった場所
扉を開けると
「おっ!はっけーん!」
μ’sの、そして今もアイドル研究部の練習場となっている屋上に2人はいた
希ちゃんの横で身振り手振りを加えて一生懸命お話をしてるくっすんの姿がみえる
くっすんの本名は楠田亜衣奈さん
くっすんは元気で明るくてダンスがとっても上手なんだよ
「おーい!希ちゃん!くっすん!」
私が声をかけると
「あっ!穂乃果!絵里となんちゃんも!おーい!」
くっすんが元気いっぱい手を振る
その横で希ちゃんも優しく微笑みながら
「お久しぶりやね、と言ってもえりちと穂乃果ちゃんとはいっつも顔を合わせてるけどね」
その通り、希ちゃんは神田明神様で巫女さんのお手伝いをしてるからいつもあってるんだ
ふーん、でも絵里ちゃんも会いに行ってるんだ
おそらくなんちゃんとくっすんも同じ考えなのだろう
3人でニヤニヤ見ていると、2人は顔を赤くして
「ワシワシされたい子達がおるようやね」
「と、とにかくみんなの所に行きましょう!」
『はーい』
ワシワシは嫌だし大人しく従おうっと
それじゃあ次は、家庭科室かな?
「ことりちゃーん!」
扉を開けながら中にいるであろう人の名を呼ぶ
「みんな!久し振りだね!」
ことりちゃんが笑顔満面でお出迎え
その隣では
「休日の昼間から飲む泡の出る麦茶は最高だね〜!」
うっちーが満足気にジョッキを開けている
うっちーの本名は内田彩さん
普段はこんな風にロックな自由人だけど、お仕事に関してはプロフェッショナル
すっごいかっこいい人なんだよ
でも今は…
「うわぁー!うっちー!学校でアルコールはダメー!!」
「生徒会長として認められませーん!!」
私がうっちーからジョッキを取り上げると
「穂乃果ちゃん、それはお酒じゃなくてただの炭酸ジュースだよ?」
「気分だけでも味あわせてぇー!」
うっちーが抗議する
「えっ?ごめんなさい!つい本物かと…」
私は謝りジョッキを返す
そんなやり取りの後ろでは
「さて、くっすんはどう思う?」
「えーっ?私にそれ言わすの?勘弁してくださいよ、先輩」
「…先輩禁止」
…ジュースだよね?
「プハ〜!」
謎の飲み物の正体はうっちーの胃の中に消えたことで真相は不明となったが、とにかく
「次行こう!次!!」
次の子達をお迎えに行くよ!
さて私達のパーティーは音楽室へ
部屋に近づくと、ピアノのメロディーと綺麗な歌声が聞こえてくる
私達は何となく邪魔しちゃいけない気がして扉の窓から覗き込むと
うん!やっぱり真姫ちゃんとパイちゃんだ
パイちゃんっていうのはpileさんのこと
外国の人じゃなくて所謂芸名だよ
歌がとっても上手でファンの事をとっても大事にして、真姫ちゃんの事、とっても好きなんだ
そんな2人は並んでピアノの前に座り、楽しそうに歌ってる
私達はそのまま2人の歌に聞き入る
あっ!歌が終わったみたい
すると2人は楽しそうに談笑を始める
そしてそのまま…
「えっ?あれっ?」
「何だか近くない?2人の距離」
「おぉっ!パイちゃんそんなに抱きしめたら…」
「真姫ちゃんも満更じゃあ無さそうだね!」
「いやん!まきぱいなの?まきぱいの時代が来たの?」
「お水ウマー」
何てそれぞれの感想を述べていると
「!?」
あっ!真姫ちゃんが気付いた
顔を真っ赤にしてこっちに来るとそのまま扉を開けて
「ち、ちょっと!みんないるならいるって言いなさいよね!」
かわいいなぁ、真姫ちゃんは
「いやぁ、なんか邪魔しちゃ悪いかなっておもって…」
「いい雰囲気だったしねぇ?」
すると真姫ちゃんはますます顔を赤くして
「な、何言ってんのよ!?」
「もうっ!パイちゃんからもなんか言ってあげて!」
そのパイちゃんは後ろで頬を赤らめながら
「見られちゃったね…?」
「ヴェェェ…」
この反応に何だか私の後ろでことりちゃんが大騒ぎしてるね
2人が仲良しさんなのは知ってるから恥ずかしがらなくても良いのに
ともかく
「そろそろ集合しようかなって思って、呼びに来たんだよ!」
「一緒に行こう!」
さぁ、部室へむかうよ!
部室へむかう途中、ふと外を見ると
「あれっ?海未ちゃん?」
海未ちゃんが練習着でグラウンドを走ってるのが見えた
「すーちゃんも一緒だ!」
パイちゃんの言う通り、隣ではみもりんも走ってる
な、なにしてんの?
「みもりんトレーニング好きだね〜」
なんちゃんの言葉に
「あのね、みもりんスッゴイの!ファイナルの次の日、朝からトレーニングしてたんだって!」
くっすんが答える
マジか!
本当に性格以外はソックリだな〜
とにかく迎えに行かなくちゃ!
「私、迎えに行ってくるから先に行っててね!」
みんなと離れてグラウンドへ向かう
海未ちゃん、練習着持ってきてるってことは、元からヤル気マンマンだったってことか
グラウンドに着くと、2人ともちょうど走り終えて休憩してるところ
「おーい!海未ちゃーん!みもりーん!」
私が呼ぶと2人は振り返り
「穂乃果、もう時間ですか?」
海未ちゃんが優しく微笑み
「穂乃果!久し振り!」
みもりんも笑顔で返してくれる
みもりんの名前は三森すずこさん
本物のアイドル声優ですっごい可愛いんだよ
お仕事に対してはストイックで、こうして休みの日も色々とやってるんだって
「休日なのにトレーニングなの?」
私が2人に聞くと
「違う違う、休日だからトレーニング!」
「その通り!さすがすずこです!」
「休日だからこそ、自分の思うままに鍛えたいところを鍛えられるんだよ!」
「穂乃果も一緒にやろうよ、楽しいよ!」
「穂乃果は普段がだらしないですから、良い機会ですよ!」
と、2人の勧誘
お休みの日くらいゆっくりした〜い!
「で、でもあの、もう時間だから…」
何とか逃げる方向で口を開く
「あっ、そうか!みんなもう来てんの?」
「なら、行かなくちゃ」
ふう、助かったみたいだよ
そう思う私に新たな危機が…
部室へ向かう途中みもりんが突然思い出したように
「あっ、そう言えば、あの後どうなったの?」
「2人はちゃんとキスした『あああぁぁぁぁ!!!!!』」
相変わらず何でこう簡単に爆弾を投下するんだこの人は!
「なに?良いじゃん!教えてよ!」
しつこく食いさがるみもりん
「///何言ってるかわかりません!!」
私が怒ってぷいっと横を向くとターゲットを海未ちゃんに変更
「ねー、海未ぃ?」
ここまで聞くと
「ふーん、なるほど」
「いやぁー、青春、青春」
何だか納得してる
疑問に思って海未ちゃんを見ると
「///」
顔を真っ赤にして俯いている
うっ、これは確かにもろバレだね…
べ、別に私たちのことはいいの!
「さっさと部室に行くよ!」
私がいうと
「はーい!」
みもりんはニヤニヤ笑いながらご機嫌で返事をする
くそぅ!やっぱり後で言いつけてやるんだから!
やっとの思いで部室に到着
結局学院をひと通り周っちゃったね
部室の前まで来ると中からかしましい声が聞こえる
うん、予想通り
私は最初に部室に来なかった理由がここにある
別にみんなの事は携帯で呼ぶ事も出来た
しかしそれをしなかったのは、この中には猛獣がいるからだ
ターゲットは多いほうが良い
私は前回の悲劇からそれを学んだ
死なば諸共
そのくらいの気概と覚悟がいる相手なのだ
私は覚悟を決めて扉を開ける
「みんな!揃ってる?」
私が部室に入るとそこには予想以上の惨劇が
先行していた絵里ちゃん達は全員壊滅
みんな床の上に崩れ落ちている
ただ1人うっちーだけが椅子に座りニコニコと謎の泡の出る麦茶を飲んでいる
「…うおっ、こ、これは…」
余りの惨状に私が声を失う
やはりにこりんぱなが集まって無事ではすまなかったか…
部室の中心、グラウンドゼロでは謎の対決が続いている様子
「やっぱり強いよ…矢澤にこ!」
おかしいな?そらまるが劇画タッチに見えるよ
「あなたも腕を上げたようね!徳井青空!」
うーん、にこちゃんもいつもと作画が違うような…
何故かこの2人は顔をあわせるたびに何か競争を始めるんだよねぇ
あっ、そらまるっていうのはね、徳井青空さんのこと
青空って書いて『そら』って読むの、かわいいよね
真面目な頑張り屋さんで何をやるにも一生懸命
見てると本当に応援したくなっちゃう!
そして頭の回転が速いっていうのかな?
お話しするとわかるけど、とっても面白くて、楽しいの!
でもその回転が最も生かされるのは、良い方よりも残念な方向だったりするけど
今もその残念な方向に向かってフル回転してると思うよ…
『オリジナル歌合戦よ!』
うわっ?!
ほろびのうたの時間だ!
ところで傍を固めるりんぱな&しかりぴはなにをしてるのかな?
そう思い周りをみてみると…いた!
でも4人とも完全に飽きている模様
「りっぴー!あのね、この前見た雑誌の服がすっごい可愛くてね…」
「凛ちゃんもどんどん可愛くなっちゃうねぇ」
凛ちゃんとりっぴーはガールズトークに花を咲かせる
りっぴーっていうのは飯田里穂さんのこと
元気で明るくてしっかり者で、本当に凛ちゃんとそっくり
子供の頃から芸能界で過ごす、本物芸能人だよ!
なんか一部の人間から『我々のりっぴー』って呼ばれてるらしいけど、よくわかんないや
そしてもう一組の花陽ちゃんとシカちゃんはと言えば
「それでね、このアロマオイルがオススメで…」
「うん、うん」
「この服とか絶対似合うよ!今度見に行こうよ!」
「えー?そうかな?でもシカちゃんが言うなら…」
「そういえばこの前のイベントで…」
「うふふっ、そうなんだ」
カップルだ
すごいカップルしてる
理想の交際関係を築いてるよ!
おめでとう!シカちゃん!
いつぞやのプロポーズが実ったんだね
この幸せそうな笑顔のシカちゃんの名前は久保ユリカさん
元々モデルさんとかしてて、凄くスタイルが良くてかわいくて、絵里ちゃんみたい
しかも、おしゃべりもすっごく上手で、お話ししてると時間があっという間に過ぎちゃうよ
謎の心の闇が垣間見えたりもするけど、花陽ちゃんといる時は発動しないから大丈夫!
とりあえず1人を除いて揃ったみたいだね
少し遅れるって言ってたけど、大丈夫かな?
元の世界には無事戻れたみたいだけど、魂の消耗は避けられなかったみたいで、辛いこともあったみたい
色々大変みたいだけど、それでも私に会うと元気が出るんだって
なんか嬉しいね!
その最後のひとりっていうのはねぇ
「うわわっ!急がなくちゃ!」
慌てん坊でオッチョコチョイで
「うおっ!ぶつかる?!ごめんなさーい!!」
優しくて明るくて
「廊下は走っちゃダメ?すいませーん!」
寂しがりやで泣き虫で
「もうすこしだよぉ!?」ステーン
私の事が大好きで
「いたたぁー、また何にも無いとこで転んじゃった」
私が大好きなひと!
ほら、もう扉の前まで来たみたいだよ!
「ただいま!穂乃果!!」
「おかえり!えみつん!!」
おかえりなさい
私の大好きなひと達
第結章「エピローグ」 完
穂乃果「18人の女神 だよ!」 完
以上でおしまいです
このような駄文にお付き合いいただきありがとうございました
このスレは明日にでもHTML申請します
μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪×2
このSSまとめへのコメント
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