僧侶「死んでください勇者様」 (26)

勇者「魔王の城まで来れたのはみんなのおかげだ。改めて礼を言おうと思う」


戦士「おいおい…まだ礼を言うには早すぎるだろ」


僧侶「…でもここまで順調に来れたんです。きっと魔王も倒せるはずですよ」


魔法使い「まっ、アタシ達にかかればこんなもんよね」


戦士「負ける気がしないな!」


勇者「…油断はするなよ」


戦士「勇者は心配性だな!そんなんじゃハゲちまうぞ?」


魔法使い「そうよ、勇者。こんな時くらい浮かれても良いと思うわよ?」


勇者「そうだな…」


僧侶「せっかくですから勇者様も一緒にはしゃいじゃいましょう?」


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戦士「二日酔いでなんだか頭がいてぇ…」


魔法使い「大丈夫?もう少し休んだらどう?」


勇者「魔王と戦うんだ。万全の体制で行かないと」


戦士「…悪りぃな。ちょっと休んだらマシになると思うからよ…」


僧侶「回復魔法をかけておきますね」


…しかし戦士さんの体調は一向に良くなりませんでした。

魔法使い「本当に大丈夫なの?」


戦士「大丈夫だ…」


魔法使い「全然大丈夫そうに見えないわよ!ねぇ戦士、病院に行きましょうよ…」


戦士「大丈夫だ…病院には行かなくてもいい」


勇者「さすがに様子が変だな…」


僧侶「…一度近くの村に戻りましょう」

村民「帰ってもらえますか」


魔法使い「戦士の様子が変なの。…このままほっとくなんてできないわ」


勇者「…頼む。村に入れてくれないか」


僧侶「お願いします」


村民「…何て言われてもこの村にお前達を入れることはできない」


村民「悪いが…諦めてくれ」


魔法使い「…どうしてよ」


勇者「…おい、戦士。返事をしろ」


戦士「……」


魔法使い「戦士…。ご飯を用意したよ」


戦士「……」


魔法使い「返事をしてよ。アンタが静かだと…アタシの調子が狂っちゃうわよ」


僧侶「…魔法使いさん」


…魔王の城に着いて四日目の朝、戦士さんは永遠に返事をすることがなくなりました。

魔法使い「戦士…死なないでよ…」


僧侶「…戦士さん…」


勇者「戦士の死体を埋めたら…魔王を倒しに行こう」


魔法使い「勇者…いくら貴方でもそれはどうかと思うわよ」


勇者「…なら、ずっと戦士の死体に縋り付いて生きていくのか?」


僧侶「ゆ、勇者様!それ以上は…」


勇者「俺達は魔王討伐パーティ。…死ぬ覚悟がある奴がなるべきなんだよ」


魔法使い「…ならアンタも死んでもいいって言うの?」


勇者「あぁ…死ぬことで少しでも魔王を倒す確率が上がるならな」


魔法使い「…ッ…アタシだって魔王が憎いわよ」


勇者「魔法使い。お前はここで離脱するか?」


勇者「魔王を倒せそうもない奴は連れて行けないからな」


魔法使い「…行くわよ。アタシも勇者パーティなんだから」


勇者「そうか」

僧侶「…ついに魔王城の中まで来ましたね」


魔法使い「そうね」


…魔法使いさんの口数はとても少なくなり、今ではたまに相槌を打つ程度になってしまいました。


勇者「…魔物が居ないな…」


僧侶「変ですね…」


勇者「…ここが最後の部屋、か」


僧侶「何もありませんね…」


その部屋は他の部屋よりも少し広い程度で、誰もいないようでした。

勇者「…帰るか」


僧侶「そうですね」


勇者「一体どこにいるんだ。魔王め…!」


私達は探しました。何度も何度も…この城の地図を書けるんじゃないかってぐらいに。


…それでも居なかったんです。魔王はおろか、魔物すら。


魔法使い「…戦士…」


魔法使いさんはさっきからずっと戦士さんの名前を呟いています。


僧侶「…魔法使いさん。一旦出ましょう?」


魔法使い「戦士…今行くからね…」


…次の日、魔法使いさんはいなくなっていました。

勇者「魔法使いは見つかったか!?」


私は首を振ります。縦ではなく、横に。


勇者「…戦士に続いて魔法使いまで…」


…私は魔法使いさんと戦士さんが幼馴染だということを知っていました。


戦士さんが死んだらこうなることはきっと分かっていたのに。


勇者「僧侶。悪いが回復魔法をかけてもらっても良いか?…なんだか頭が痛いんだ」


…私はこの時、すごく嫌な予感がしたことを覚えています。







そして六日目の朝…私達は戦士さんに会いました。…死んだはずの戦士さんに。





ー「目を覚ませ」


僧侶「…その声は。戦士さんですか?」


戦士「あぁ」


僧侶「生きてたんですか…?」


そんなことはあり得ないと知りながら、私は聞きました。


戦士「違うよ。俺は生き返ったんだ」


僧侶「…アンデッドの魔物として、ですか」


戦士「…そうだな」


僧侶「私達の敵なんですか。…勇者様はどこに…」


戦士「あまり無駄話をする気はない。…付いて来い」


…私は戦士さんに付いて行くことにしました。

戦士「ここで待っていろ」


まるで牢屋のような場所です。ジメジメしていて…正直こんなところにいたくないです。


僧侶「…魔法使いさん」


…戦士さんがアンデッドとして生き返っていたんです。


…考えたくないですけれど、魔法使いさんもきっと…アンデッドになっているでしょう。


僧侶「…こんなことになるのなら魔王の城になんて行かなければ良かった…」

勇者「お前…アンデッドになったのか」


戦士「そうだ」


勇者「…ならお前も俺の斬るべき敵だな」


戦士「別に斬っても構わないが…その代わり、僧侶も死ぬことになるぞ?」


勇者「!」


戦士「…はは。いくらお前でも僧侶は見捨てられないってか」


勇者「……」


戦士「暴れられると困るからな…少し細工をさせてもらう」


勇者「…好きにしろ」


戦士「言われなくても好きにさせてもらうさ」


戦士「…少し眠ってろ」



…扉の開く音がしました。誰かが来たのでしょうか?


戦士「コイツも牢屋に突っ込んでおいてくれ」


ー「はいはい。全く…人使いが荒いですね」


戦士「お前は人じゃないだろう」


ー「…人の揚げ足をとるのが好きですねぇ」


戦士「お前だってそうだろうが」


ー「そんなんじゃ魔法使いさんに嫌われちゃいますよ?」


戦士「…あいつは関係ないだろ」


ー「そうですか。ま、牢屋に突っ込んでおきますから安心しててください」


戦士「絶対に逃がすなよ」


ー「逃すわけないじゃありませんか。…せっかくのモルモットなのに」


戦士「相変わらず変な野郎だな」


ー「…貴方に言われたくありませんよ。元勇者パーティの戦士さん?」


戦士「…ほっとけ」

…ここは?


僧侶「目が覚めたみたいで良かったです」


勇者「僧侶?確か俺は戦士に…」


勇者「…ここは牢屋か?…とりあえず早くここから脱出しないとな…」


僧侶「勇者様…この牢屋には鍵がありません」


勇者「…鍵がない?」


僧侶「魔力で造られた牢屋のようです。…そして私達は魔力封じの手錠をつけられているので魔法が使えません」


勇者「…この手錠か」


僧侶「どうやら超合金でできているようで…ヒビすらはいりません」


勇者「…くそっ。戦士は一体何のつもりで俺達をこんなところに押し込めたんだ」


戦士「…魔王様の命令だ」


勇者「戦士…!」

僧侶「私達を…裏切ったんですね」


戦士「先に俺を見捨てたのはお前らだろ」


戦士さんにそう言われてしまい、私は黙るしかありませんでした。


しかし、勇者様はそれがどうしたんだと言わんばかりに


勇者「俺達の目的は魔王討伐のはずだろう。役立たずは捨て置くべきだ」


ーと、冷たい瞳で言い放ちました。

俺は少し、期待していたんだ。


ひょっとしたら勇者が…俺とまた会えたことに喜んでくれるかもしれないと。


魔物と化したとしても…仲間だと言ってくれるかもしれないと。


…そんなはず、ないのにな…


戦士「ははっ。そんな怖い顔して睨むなよ」


僧侶「…戦士さんはこんなこと、本当はしたくないはずです」


僧侶「きっと魔王の弱点を暴くために…」


戦士「…相変わらず僧侶はお気楽思考だな」


戦士「俺はお前達に復讐するために魔王様の下へついたんだ」

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