理樹「真人がいなくなってから僕の部屋がおかしい」謙吾「ほう」 (38)

理樹部屋

理樹(真人が怪我で入院した。なんでも原因は階段からすっ転んでしまったという真人らしい理由だ)

謙吾「階段から落ちたにしては結構な怪我だったな…」

理樹「うん。命に別状はないらしいけどね…」

謙吾「それで?今日はどんな用で俺を呼んだんだ。まさか1人が寂しいという訳でもあるまい」

理樹「ごめん。割と当たってる」

謙吾「なに?」

理樹「実はさ、真人がいなくなってから部屋の様子がおかしいんだ」

謙吾「………ほう」

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理樹(始まりは一人暮らしになってからすぐのことだった。僕の部屋の私物が______正確に言うと枕がなくなっていたのだ)

理樹(もちろん枕はちゃんと使って寝ていた。にも関わらず朝起きたらそれが無くなっていたことに気付けなかった)

理樹(原因は不明でも無くなったものは仕方がない。止むを得ずそのまま寝たら今度はベッドのシーツまで消えてしまった!)

理樹「今度はなにがなくなってしまうのか怖くて1人じゃ寝られなくなったんだ!夜な夜な泥棒が来てるならそれこそホラーだよ!」

謙吾「な、なるほど…俺もお前の立場なら同じことを思っていたはずだ……よし!そういう事なら真人が帰ってくるまで俺がお前の部屋に泊まろうじゃないか!」

理樹「ありがとう謙吾っ!めちゃくちゃ心強いよ!」

謙吾「ふっ…まあ任せておけ。今日は寝ずに交代で部屋の見張りをしよう。そして本当に泥棒紛いの奴が来たら俺がやっつけてやる」

理樹(謙吾がやっつけると言えば本当にやっつけてくれそうな気がした)



理樹部屋

謙吾「それじゃあ電気を消すぞ…」

理樹「うん……」

理樹(こんな時に限って恭介は旅に出ていた。頼れると言えば今は謙吾しかいない。来ヶ谷さん辺りに頼めば犯人諸共何とかしてくれそうな気もするけどそれは流石に情けない。今回は僕らで解決しよう)

謙吾「じゃあ1時間経ったら電話で起こせ。本当に眠くなったらその前でもいいから連絡だけはしろ」

理樹「分かった」





……………………………………





ブーッブーッ

理樹「ん………」

理樹(携帯のバイブが振動している。携帯を開くとちょうど3時だ)

理樹(送られたメールには『変化なし』との文字が。返事を送りドアの見張りを再開した)

理樹「………ただドアをずっと見続けるってのも精神的にくるなぁ……」

理樹(だけどこのまま放置しておく方がずっと心が追い詰められしまうってのも知っている)

『………………』

ササッ

理樹「!」

理樹(今、誰かがドアの前にいた!)

ガタッ

謙吾「待て理樹。どこへ行く?」

理樹(僕が立ち上がると寝ていたはずの謙吾が呼び止めた)

理樹「犯人が今そっちにいたんだ!ドアの隙間から覗き込んで!だから確かめなくちゃ…!」

謙吾「慌てるな!お前が深追いして襲われたらそれこそ本末転倒だ。俺が確かめる」

理樹「謙吾……」

理樹(謙吾はジャンパーを羽織り、寝間着姿のまま出て行った)







ギィ……

理樹「!」

謙吾「俺だ」

理樹「ほっ…無事だったんだね」

謙吾「ああ。だが犯人らしき姿は見えなかった…すまん」

理樹「怪我がないだけで充分さ!」

謙吾「ふっ、理樹は優しいな。そうなると俺も期待に応えなくちゃならん」

理樹(2人だけの作戦会議が始まった)

謙吾「まず盗まれたのは理樹の枕とシーツだ。これに何か思いつく点はあるか?」

理樹「ううん……これといって特には…」

謙吾「だよなぁ。女ならまだしも男の枕なんぞ盗んだところで何の得にもなりはしない。単なる泥棒ならもっと金目の物を盗むはずだ」

理樹「まだこれだけだと犯人の目星は付けられないね」

謙吾「ああ。風紀委員の二木にも伝えて男子寮の警備も配備してもらっていたんだがな」

理樹「謙吾って意外とコネあるよね」

謙吾「他ならぬ理樹の悩みだしこれぐらいはしないとな。だが、意外は余計だ」

理樹「はははっ!」

謙吾「ハッハッハッハッ!」








食堂

理樹「えっ、泊まるのはやめる!?」

謙吾「そうだ」

理樹(眠気が吹き飛んだ。どうして急に…)

謙吾「犯人探しを止めたというわけではない。このまま番犬がいたところであちらは尻尾を引っ込めるだけだ」

理樹(つまり謙吾が見張っていたら犯人も姿を現さないままで終わるといいたいんだろう)

理樹「ひ、引っ込めるさせたままでいいんじゃないかな…」

謙吾「何を言う!もしこのまま出てこなかったとしてお前はお前をつけ狙う犯人に怯えながら暮らすというのか」

理樹「それは……」

鈴「犯人って何の話だ?」

謙吾・理樹「「!!」」

理樹(そうだ、隣にみんながいるのを忘れてた!)

訂正

理樹(2人だけの作戦会議が始まった)

謙吾「まず盗まれたのは理樹の枕とシーツだ。これに何か思いつく点はあるか?」

理樹「ううん……これといって特には…」

謙吾「だよなぁ。女ならまだしも男の枕なんぞ盗んだところで何の得にもなりはしない。単なる泥棒ならもっと金目の物を盗むはずだ」

理樹「まだこれだけだと犯人の目星は付けられないね」

謙吾「ああ。風紀委員の二木にも伝えて男子寮の警備も配備してもらっていたんだがな」

理樹「謙吾って意外とコネあるよね」

謙吾「他ならぬ理樹の悩みだしこれぐらいはしないとな。だが、意外は余計だ」

理樹「はははっ!」

謙吾「ハッハッハッハッ!」








食堂

理樹「えっ、泊まるのはやめる!?」

謙吾「そうだ」

理樹(眠気が吹き飛んだ。どうして急に…)

謙吾「犯人探しを止めたというわけではない。このまま番犬がいたところであちらは尻尾を引っ込めるだけだ」

理樹(つまり謙吾が見張っていたら犯人も姿を現さないままで終わるといいたいんだろう)

理樹「ひ、引っ込めさせたままでいいんじゃないかな…」

謙吾「何を言う!もしこのまま出てこなかったとしてお前はお前をつけ狙う犯人に怯えながら暮らすというのか」

理樹「た、確かに…」

鈴「犯人って何の話だ?」

謙吾・理樹「「!!」」

理樹(そうだ、隣にみんながいるのを忘れてた!)

理樹「こ、こ、これはその!」

鈴「なにか困ってるのか理樹?」

理樹「い、いやいや!ただの世間話で…」

来ヶ谷「ほう。怯えながら暮らす世間か。なかなか興味深いな」

理樹「えっと……」

理樹(謙吾に指示を仰いだがしょうがないと顔を横に振るのみ。出来る限り言いたくなかったんだけどな…)

理樹「じ、実を言うと……」










小毬「り、理樹君の部屋にどろぼー!?」

理樹「………うん」

西園「しかも毎回何かしら盗まれていると」

葉留佳「理樹くんの枕……」

理樹「えっ?」

葉留佳「あっ、ううん!なんでもありませんですヨ!?」

クド「わふー……リキのシーツ…!」

理樹「なんて?」

クド「わ、わふ!なんでもありません!」

謙吾「とにかくだ。いくらおびき出すためとはいえ何もしない訳じゃない。色々と罠を張り巡らせるから安心して眠れ」

理樹(謙吾が耳元でこそっと呟いた)

理樹「罠を張り巡らせるような部屋で寝れるか心配だよ…」

謙吾「なぁに!お前の相棒は100戦無敗…負け知らずの男だ。信じろ」





………………………………………

理樹(今日の昼休み、謙吾も入院した)

病室

理樹「謙吾!」

謙吾「そんな大声を出さなくても聞こえている。しかし、くそ、やられてしまった…!」

理樹「謙吾も階段から転げ落ちたっていう話だけど……」

謙吾「本当のことを言えば学校は混乱するに決まっている。なんて言ったって鉄のようなもので後ろから殴りつけられたんだからな」

理樹「もう警察に言った方がいいんじゃ……」

謙吾「馬鹿野郎!」

理樹「!?」

謙吾「もはやここまで来たら引き下がれん!今日こそ黒幕を暴き出せ!」

理樹「そんなぁ…無理だ!僕には出来ないっ!」

謙吾「甘ったれたことを言うな!お前が襲われた時の恐怖を思い出せ!それとも俺のようなことが繰り返されてもいいのか!?」

理樹「!!」

謙吾「次は我が身だ!俺のことを思ってくれるのなら俺が思うお前を助けてやるんだ!!」

理樹「………分かった……やるよ!僕、必ず黒幕を見つけ出す!」

謙吾「その意気だ理樹…!」

理樹(真人と謙吾は同じ病院に担ぎ込まれた。ここが学校から一番近いし当然といえば当然なんだけど)

理樹「やあ真人。怪我の調子はどう?」

真人「っ!!………な、なんだ…理樹か…」

理樹「今度は謙吾も一緒に入院しちゃったね」

真人「そ……そう…だな…」

理樹(今日の真人はなんだか歯切れが悪い)

真人「えーと、なんだ…そう!怪我だったな!怪我はこの通りもう治りかけだぜ!医者様は念のため2~3日は安静にしておくようにって言ってるがな…」

理樹(真人は包帯の取れた足を軽く小突いて笑ってみせた。だけどなんとなくその顔に不自然なところがあるように見える。具体的にどこがと聞かれると分からないけど…)

理樹「あっ、そうだ。ちょっと真人に聞きたいことがあるんだ」

真人「聞きたいこと?」

理樹「夜、僕の部屋に不審者…怪しい人が現れるんだ…真人に心配をかけたいつもりじゃないんだけど真人が入院する前にそんな人を見かけたりしないかなって。ヒントさえあれば少しは対抗出来そうな気がするんだ」

真人「……………………」

理樹「…………真人?」

真人「あ…ああ………!」

理樹「?」

理樹(突然黙りこくったかと思ったら今度は頭を抱えて両肩を震わせ始めた)

真人「う、うわぁぁああああああ!!!」

理樹「!?」

看護婦「井ノ原さん!どうしました!?」

理樹(慌てて近くにいた看護婦さんが駆けつける)

真人「嫌だ……!!いったい誰なんだお前は!お、俺のそばに近寄るなああーーーっ!!」

理樹「急にどうしたのさ!そっちには誰もいないよ!?」

理樹(真人は明らかに何かがおかしかった。僕も看護婦さんもいない方向を凝視して手をバタつかせて…それはまるで見えない誰に襲われているかのような光景だった)

看護婦「ここは私がなんとかしますからとりあえずあなたは…!」

理樹「あ…はい!」

理樹(言われるがままに病院を出てしまった。今思えば友人として引き返すべきなんだろうけどあの真人の錯乱ようを見てなんとか出来るとは思えない)

真人『いったい誰なんだお前は!』

理樹(真人が言ったあのセリフ……あれはいったい何を示しているんだ?)

理樹(とにかく今は僕自身のことも考えなくてはならない。幸い謙吾が部屋に犯人を捕まえるための道具を揃えたと言っていたけど……)

謙吾部屋

理樹「ぼ、僕の全体写真……!?」

理樹(謙吾の机にはどこから調達したのか等身大まで拡大された僕の写真に『注意:科学部特製』と書かれた粘着テープらしき物が転がっていた。おおかたこの写真を囮に粘着テープでトラップを仕掛けようと思ったんだろう)

理樹「流石にこれは……で、でも無いよりマシか…」

理樹(誰が犯人か分からない_____というか普通に見られても恥ずかしい_____ので人に見つからないようコソコソと自分の部屋に運んだ)










理樹「さて……」

理樹(謙吾も真人もいない今、犯人にとっては今夜が絶好のチャンスのはずだ。今夜は一日中寝ない勢いでいるぞ!)

理樹「コーヒーも飲んだし肝心な時に眠っちゃうことは無いはず…あとは一応このカカシも部屋に置いといてっと……」

パチッ

理樹(さあいくらでもかかってこい!!)





……………………………………


……………………









………………………………

ガサガサ…

理樹「ううん………ハッ!」

理樹(しまった!あれだけ気をつけていたのに寝ていたっ!!)

理樹「また何かを盗まれていたりして……!?」

ガサガサ…

理樹「ん?この音は……」

パチッ

理樹(電気を点けた。そして音の鳴る方へ振り向くと誰かが見事にカカシに引っかかっていた)

来ヶ谷「ぐっ……暗闇で見えなかった…不覚…!」

理樹「えぇ……」

理樹「まさか来ヶ谷さんが犯人だったなんてね…」

来ヶ谷「ふふふ…くっ殺せ。あわよくば辱めとかしろ!」

理樹「言ってる意味が分からない!」

理樹(ただ来ヶ谷さんが強力すぎる粘着テープで身動きが取れないのは分かった)

来ヶ谷「服を脱いでしまえばなんとかなるがそれは君には早過ぎるな」

理樹「年をとればとるほど危ない気もするんだけどね」

理樹(こうなったら全部吐いてもらってごめんなさいしてもらおう)

理樹「まずは来ヶ谷さん。君の動機について喋ってもらうよ!」

来ヶ谷「動機、動機か…別にわざわざ私の口から喋るほど複雑なものでも無い気はするが……ああ、そういうことか」

理樹「どういう意味?1人合点されても何のことだか…」

来ヶ谷「いやいや、君は一つ勘違いしてるってことに気付いたのさ」

理樹「???」

理樹(ますます訳が分からない)

来ヶ谷「つまりは君が”これまでの怪奇現象は全て来ヶ谷さんの起こした事”だと思っているんだろ?」

理樹「ち、違うの?」

理樹(なんだか頭が混乱してきた……)

来ヶ谷「ああ。私はただ単に君が泥棒に度々侵入されているからそれに便乗しようと思っただけさ。私も理樹君の布団とか欲しい」

理樹「『ただ単に』で済む話じゃないよね!?というか僕の寝る用意を全部巻き取っていくつもりだったの!?」

来ヶ谷「シッ、誰か来たっ」

理樹(確かに誰かが僕の部屋に近づいて来た)

理樹「と、とにかく来ヶ谷さんは僕のベッドに隠れて!」

来ヶ谷「うむ」

ガラッ

男子生徒「直枝理樹君だね?」

理樹(ドアを開けると見た事のない生徒が来ていた。身長や顔立ちからして3年だろうか)

理樹「は、はい…」

男子生徒「私は風紀委員長から君の護衛を担当していた者だ。さっき大声が聞こえたようだが…?」

理樹(よく考えるとこの人大きな音がしたってだけでパジャマでここまで来たのか…流石風紀委員だ)

理樹「いや大丈夫です。ただとんでもない悪夢を見て絶叫してしまっただけですから」

男子生徒「分かった。何かあったらその調子でまた大声をあげてくれ」

理樹(それから男の人は顔色をまったく変えず帰っていった)

理樹「………………行ったよ。来ヶ谷さん」

来ヶ谷「もうちょっと眠っていいかい?」

理樹「頼むから起きてよっ」





来ヶ谷「ま、そういう訳で私はたまたま今回犯行に及んだだけで君のいう元凶とは別人だ」

理樹(僕の布団から顔と手だけだしてそういう来ヶ谷さん)

理樹「でも来ヶ谷さんの言ってる事が嘘かもしれない」

来ヶ谷「私を知れ。ここまでされて見苦しい言い訳をするとでも?」

理樹「それは確かに……!で、でもこれでまた振り出しに戻ったよ……」

来ヶ谷「まあこうして捕まったのも運命だ。ここは理樹君にひとつ犯人逮捕の協力をしようじゃないか。ほら、よく言うだろう?今日の敵は明日の友と」

理樹「それはいいから早く布団から出なって!」

理樹(勢いよく布団をめくった。完全に僕のミスだった)

理樹「あ……ああぁ……っ!!」

来ヶ谷「やれやれ、さっき言わなかったか?私が脱出するには服を脱がなくてはいけないと」

理樹(く、く、来ヶ谷さんの下着……!!)

来ヶ谷「それで真犯人についてだが…」

理樹「……………………」

理樹(き、気まずい…)

来ヶ谷「理樹君?」

理樹「あっ、はい!」

来ヶ谷「君自身に危機感がなくてどうする……それとももう眠いか?寝るならそれまで隣で子守唄を歌ってやっても……」

理樹「そ、それはいいから!」

来ヶ谷「ふむ。なら続けるが君はどこに黒幕がいると思う?」

理樹「それが来ヶ谷さんの時もそうだけどまったく分からないんだよね…」

来ヶ谷「なら消去法で行こう。まず理樹君の私物を手に入れて喜ぶのは一部の珍しい趣向の人間を除いて多くは女性だろう」

理樹「お、女の人!?」

来ヶ谷「声が大きい。また風紀委員が来るぞ」

理樹「あ、ごめん……」

来ヶ谷「それで仮に女性が犯人としてその中で自然と男子寮に入り込める程の人間は何人もいないだろう。そう考えれば案外候補は絞れる」

理樹「ごめん。来ヶ谷さんしか思いつかない」

来ヶ谷「普通はそうだろうな。……だが、1人だけ役割上、男子寮の地形にも詳しく更には堂々と入り込める人物がいる」

理樹「だ、誰?」

来ヶ谷「それは…………」

次の日

クド「わふー!リキ、ベリーサンクスなのです!ちょうど来ヶ谷さんからとても立派な変木の置物を貰いまして1人で運ぶには大変だったんです!」

理樹「この間のお茶のお礼さ。それより今度入るのは二木さんの部屋でもあるけど大丈夫かな?」

理樹(クドは小さな声で言った)

クド「今の時間は見回りに行っていると思いますっ。なので運ぶ間なら大丈夫かとっ!」

理樹「それを聞いて安心したよ」







クド部屋

理樹「どっこいせっ…と!」

クド「わふー…重かったですね……」

理樹「これいくらくらいするんだろうね……」







数時間前

来ヶ谷「それは佳奈多君だ」

理樹「ふ、二木さん!?

来ヶ谷「彼女は風紀委員長であることもあり男子寮に用がある時もあれば曲者を捕らえる時の一環として全ての建物の構造を頭に叩き込み、逆にどこが見つかりにくかも分かっているはずだ」

理樹「で、でもあの厳しい風紀委員長が僕の何かを盗むなんて……」

来ヶ谷「現時点では一番考えられる可能性だ。物は試し、行って確かめてこい」

理樹「でもどうやって……」

来ヶ谷「私にいい考えがある」

…………………………………………

現在

理樹「ところでクド、二木さんのベッドはどっち?」

クド「わふ?佳奈多さんのなら右の方ですが……」

理樹「そっか」

理樹(まずは枕の匂いを嗅いでみた。ミントのいい匂いだ)

クド「ってナニをしてるんですかーーーー!?」

理樹「枕は違う…ならシーツは!?」

「そこで何をしているの!」

クド「あっ!こ、これは……」

理樹「…………やあ佳奈多さん」

佳奈多「…………何故あなたがここにいるの?そして何故私のベッドでうつ伏せに寝ているの?」

今日の朝か昼に完結

理樹(枕をもうひと嗅ぎだけしてぬらりと立ち上がった)

理樹「なるほど二木さん…最初は信じられなかったけど君が犯人だったんだね」

佳奈多「!!…………な、なんの話……?」

理樹(ようやく話が飲み込めたようだ)

理樹「クド。悪いけど外でストレルカ達と遊んでいてくれないかな?」

クド「わ、分かり……ました……」

理樹(この部屋の緊張感を察したクドはそそくさと部屋から出て行った)

理樹「二木さん……どういうことさ?なんで君が謙吾を!」

佳奈多「ふ、ふん!さっきから何を話しているのかさっぱり…」

理樹「とぼけるないで!!」

佳奈多「っ!」

理樹(ビクッと目を瞑る二木さん。少し大きな声を出しすぎた)

理樹「あっ!ご、ごめん……でも二木さんだって悪いよっ。ほら、このシーツは僕のじゃないか。他のはミントの匂いがするのにこれだけ僕の匂いだ!シーツの端にあるシミがなによりの証拠さ!」

佳奈多「……なんで私だと分かったの?ここまで来たってことは目星はついてたって事よね?」

理樹「来ヶ谷さんのお陰さ」

佳奈多「なるほど。あの人が一枚噛んでいたって訳ね…」

理樹「まったく…とんだ犯人だったよ。まさかあの風紀委員長だったなんて」

佳奈多「くっ……」

理樹「シーツが足りなくなってたなら最初からそうと言えばよかったのに!」

佳奈多「は?」

理樹「は?って…二木さんは自分のシーツが何かで足りないから僕のを盗んだんでしょ?」

佳奈多「えっ……そ、そう……よ?」

理樹「今度からはちゃんと買ってよ?とりあえず僕には替えがあるからいつかそれ返してね」

佳奈多「あーーー………そ、それなら新品をあなたに渡すわ!」

理樹「い、いやそれは悪いよ!」

佳奈多「大丈夫大丈夫!今回の事件のお詫びというか……そう、お詫び!というかもうこれ私のベッドに馴染んできたし!」

理樹「僕のベッドにも馴染んでたはずなんだけど……まあいいや。そこまで言うならそうしてもらおうかな?」

佳奈多「やたっ」






理樹(こうして事件は幕を閉じた。案外黒幕は拍子抜けするような正体だった。まさか2人といえどちらも知ってる人だったとは………まさに事実は小説より奇なり)



食堂

恭介「真人の退院を祝して……」

みんな「「「かんぱーい!」」」

カーンッ

理樹(心地よいコップがぶつかる音が鳴った。今日は真人と謙吾の退院パーティーだ。同時に恭介が帰ってきたこともあり大いに盛り上がった)

佳奈多「な、なんで私まで…」

葉留佳「いーじゃんいーじゃん!細かいことは気にしなッシング!」

理樹「いやぁ、それにしても2人がこうして無事に帰ってきただけで安心だよ」

真人「へへっ、心配かけたな!なにせ怪我した時は頭の打ち所が悪かったのか前後の記憶が無くなっちまってたからな。気付いたら階段の踊り場で寝てたんだよっ」

謙吾「頭をぶつけて逆に賢くなっているのを期待していたんだけどな!」

真人「なんだとてめぇ!」

「「「ハッハッハッ」」」

真人「ふぃぃ…喋ってたらなんか催してきちまったぜ…ちょっとトイレ行ってくる」

理樹「はーい」

廊下

真人「それにしてもここは男子トイレ2階にしかないから不便だよなぁ……さっさと登って出すもん出しちまうか!」

「……………………」

真人「ん?誰だ…そこで立ってるのは?」




ガヤガヤ

理樹「それにしてもちゃんと謙吾に謝っておきなよ?聴くには硬いもので気絶させたそうじゃないか……いくら元同じ部員のよしみだからってそれは……」

佳奈多「えっ、気絶?」

理樹「ほら、僕の部屋にまた侵入する時に邪魔だからって謙吾を病院送りにしたんでしょ?」

佳奈多「…………怖いこと言うわね。やってないわよそんなの」

理樹「なっ、何だって!?」

恭介「ん?どうかしたのか理樹」



「やれやれね。せっかくあなた達を遠くにやったのに2度も邪魔が入るなんて……これも理樹君のサガって奴なのかしら」

真人「だ、誰だてめえ!」

「………覚えてない?”この間”も同じようなシチュエーションだったんだけど。夜の階段に、2人きり…」

真人「………ま、まさかお前が!!」




理樹「ちょ、ちょっと待って二木さん!それなら何かい?君は謙吾に手を出してないってこと!?」

佳奈多「だからそうだって言ってるじゃない」

理樹「そ…そういえば軽く流していたけど結局僕の枕はいったい誰が盗んだんだ……?」

理樹(僕の錯乱ぶりに気付いた来ヶ谷さんがこちらに駆けつけた)

来ヶ谷「どうした。何があった?」

理樹「は、犯人は……本当の黒幕は……『もうひとりいる』!!」







「ま、それならそれでもう一度あなたを病院に避難させておけばいい話ね。それじゃあ真人君……ゲームスタート」

真人「う……うあぁああああああああああ!!!!」

終わりんこ

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