蜘蛛幼女「きすしてあげよっかー?」男「いらん」 (34)



蜘蛛幼女「えーどうしよっかなー」

男「いらんと言ったんだが」

蜘蛛幼女「けどねぇ……わたしときすしたら」

男「……」

蜘蛛幼女「わたしのよだれが、あなたをドロドロにとかしちゃうのよ?」

男「そうか」

蜘蛛幼女「わたしのくちから、あなたのくちのなかに」

蜘蛛幼女「くちうつしでいっぱい、いーっぱいながしこんだ、わたしのだえきが」

蜘蛛幼女「あなたをからだの中からドロドロにするの」

男「してどうする」

蜘蛛幼女「……たべちゃう」

男「そうか」

蜘蛛幼女「…………それでも、したい?」



男「最初にいらんと言ったが」

蜘蛛幼女「いけずー!!」




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蜘蛛幼女「ドロドロにしてね?」

蜘蛛幼女「ちゅーちゅーすってたべちゃうのよ」



蜘蛛幼女「ちゅーだけに」

男「そうか」

蜘蛛幼女「」


蜘蛛幼女「うわーん!! ひどいひどいひどいー!! なんでかまってくれないのー!!」

男「しずかにしてろ」




蜘蛛幼女「もっとわたしのくちびるに、きょうみをもとう」

男「……そんなに俺が食いたいか」

蜘蛛幼女「え?」

男「腹が減っているならそこらで野兎でもとって食え」

蜘蛛幼女「ひどい」

男「…………俺の血を飲ませてやれるのは、狩りの後だけだ」

蜘蛛幼女「なんで?」

男「そういう、しきたりだからな」

蜘蛛幼女「じゃあ狩り行こう!!」

男「だめだ」


蜘蛛幼女「なんでもだめだめ言いやがってこのだめ男!!」ゲシッ

男「……」




男「そもそもだ。平時、里に下りてくること自体禁止されているはずだが」

蜘蛛幼女「お母さまはいいって言ってるもん」

男「……オオグモヌシ様か。余程禁忌破りがお好きと見える」

蜘蛛幼女「わたしはほとんどヒトと変わらないし」

男「その背中から何本も生えた長い脚をしまえるようになってから言え」

蜘蛛幼女「た、たたんでれば、そんなに目立たないし……」

蜘蛛幼女「したは、ちゃんとヒトになってるし!」


蜘蛛幼女「ほら!!」バッ

男「めくるな。見せるな」




蜘蛛幼女「ぱんつはいてるから」

男「……そうか」

蜘蛛幼女「!」


蜘蛛幼女「見たいのかほれほれわたしのぱんつ」バサバサ

男「やめろ、はしたない」

蜘蛛幼女「わたしのぱんつにきょうみをもとう」

男「……そういうものはな」

男「チラリズムが大事なんだ」

蜘蛛幼女「?」

男「おおっぴらに見えても嬉しいもんじゃない。たまに、ふとした瞬間、おっ、見えるか? 見えないか? という微妙などきどき感が」

蜘蛛幼女「ふーん」

男「男心に興味を持とう」




蜘蛛幼女「ちなみに」

男「ん?」

蜘蛛幼女「このぱんつはわたしの糸であんだものです」

男「そうか」

蜘蛛幼女「まっしろのぱんつです」

男「そうか」

蜘蛛幼女「ほしい?」

男「いらん」

蜘蛛幼女「またまたえんりょしてー」

男「遠慮では」

蜘蛛幼女「てやーっ!!」シュッ!


蜘蛛幼女「というように、いざってときにはこれで相手をつかまえられるの」

男「そうか。……ほどいてくれ」ギチギチ




蜘蛛幼女「はっ! しかしぱんつをほどいてしまったから」

男「……」

蜘蛛幼女「い、いまスカートをめくられたら……!」

男「……」

蜘蛛幼女「いやーん」

男「いいからほどけ」


蜘蛛幼女「あ、そろそろかえらなきゃ」

男「おい」

蜘蛛幼女「じゃーね! またあした!」

男「明日は来るな。今日はこれをほどけ」

蜘蛛幼女「そのぱんつはあげるよ」

男「いや」

蜘蛛幼女「もう……とくべつだからね」

男「いらん」


蜘蛛幼女「そんなことばっか言うからだよばーか!! ちくしょー!」ダッ

男「……」





……


蜘蛛幼女「あれ?」

蜘蛛幼女「いない」


蜘蛛幼女「どこ? どこ行ったの?」

蜘蛛幼女「ご、ごめん。ごめんなさい。しばったまんまにしたの、あやまるからぁ」




……

蜘蛛幼女「ねぇ! 族長さん!! 男はっ」

族長「里の者達と共に、狩りへ行った」

蜘蛛幼女「えっ……」

族長「二つ山向こうの村で、害獣被害が増えてきたらしい。その駆除だ」

蜘蛛幼女「っ……!」ダッ

族長「待て」ガシッ

蜘蛛幼女「はなせこらぁー!」

族長「今から行っても間に合わん。おとなしく帰りを待て」

蜘蛛幼女「……」





……


男「……」

蜘蛛幼女「……」

男「なぁ」

蜘蛛幼女「なに?」



男「なんで俺は吊るされてるんだ?」

蜘蛛幼女「さぁ?」




男「しかも全身ぐるぐる巻きで」

蜘蛛幼女「たべちゃうから」

男「そうか」

蜘蛛幼女「きすしてたべちゃうから」

男「それは困ったな」


蜘蛛幼女「…………わたしを、置いてくから」

男「……」




男「……悪かった」

蜘蛛幼女「!」

男「今回は、お前の力を借りるまでもないと思ったんだ」

蜘蛛幼女「ふぅん」

男「他の連中も、ヌシの子を連れていたからな。たかが猪や狼には、過ぎた戦力だろう」

蜘蛛幼女「……でも」

蜘蛛幼女「連れてってもらえなきゃ、もらえないじゃん。……血」

男「……飲んでかまわない」

蜘蛛幼女「ほんと?」

男「あぁ、今回は、黙って行った俺が悪かった。だから」

蜘蛛幼女「わーい! じゃあほどいてあげる!」



蜘蛛幼女「まちがってひっつくほうの糸で巻いちゃった……」グイグイ

男「いだだ! すね毛がっ」

蜘蛛幼女「ごめんね、ごめんね」ベリベリ

男「あだだだだ!! 痛い痛い!!!」




……


土獣「グォオッ」


男「そこかっ!」ヒュンッ


ザシュッ

土獣「グギャ」ドサッ


土獣2「オォオ」ボコッ

土獣3「ギョオォ」ボココッ


男「! 地面から出たぞ!」


蜘蛛幼女「まかせて! えぇい!!」シュッ!


バサァッ

土獣2「グォオ!?」ジタバタ

蜘蛛幼女「へっへーん、つかまえた。ばっちりわなに」


男「おい! まだっ」


土獣3「グギョォオオ!」グォッ

蜘蛛幼女「えっ……きゃぁあああ!!」


ズシャッ!


土獣3「グ……ゲ」ドサッ

男「ふぅ……」

蜘蛛幼女「ぁ…………」




男「なぜ出てきた」

蜘蛛幼女「ぇ、だっ……て」

男「隠れて罠を引くだけで充分だったはずだ。樹の上にいれば山の根食いの獣に襲われることはない」

蜘蛛幼女「それは……」

男「……そんなようでは、狩りに連れてくるべきじゃなかったな」

蜘蛛幼女「わ、わたしだって! いっしょにたたかいたいの! そばで、いっしょに」

男「なら言わせてもらう」

蜘蛛幼女「……」


男「お前に隠れていろと言うのは、お前が邪魔だからじゃない」

蜘蛛幼女「え……?」

男「お前が大切だからだ」

蜘蛛幼女「え、ぁ」

男「お前に傷ついてほしくない。お前を危険な目にあわせたくないんだ」

蜘蛛幼女「で、でも」

男「狩りに連れ出す以上、それは俺のわがままだ。……だが普段、お前のわがままに付き合っているんだ。少しくらい、お前も俺のわがままを聞いてくれ」

男「お前が……大事なんだ」

蜘蛛幼女「ぅ……う」



蜘蛛幼女「うわああああ! ききたくないききたくない! ずるいずるいずるいぃいい!! そんなん言うなんてずるいよぉおおおおお!!」バタバタ

男「……約束してくれ、俺の血を飲んで」

男「狩りのときでも、無茶はしない。安全な場所からの支援に徹すると」

蜘蛛幼女「ぐ、……くそぅ…………」




蜘蛛幼女「じゃ、じゃあ」

男「なんだ」

蜘蛛幼女「……ちゅーしてくれたら、約束してあげ」

チュッ

蜘蛛幼女「うあっ!? お、おでこじゃだめー! こらー!!」

男「ははは」





……


蜘蛛幼女「見て見て! 脚が!」

男「ん? ……おぉ、ちゃんとしまえるようになったな」

蜘蛛幼女「ほら背中さわってみ! さわって!」

男「すべすべしてるな」サスサス

蜘蛛幼女「ちゃんとヒトに見えるでしょ?」

男「あぁ、きれいな背中だ」サス


チュッ

蜘蛛幼女「うなぁ!?」ビクンッ

蜘蛛幼女「なにしてんの!!?」

男「背中にキスした」

蜘蛛幼女「えぇ!? なにしてんのほんともうなにもう!!」

男「落ち着け」

蜘蛛幼女「うー…………このヘンタイ!!!」


男「お互い変態したな」

蜘蛛幼女「うるさいんだよばーか!!!」ゲシッ




男「しかし出し入れはすぐにできるのか?」

蜘蛛幼女「それは……まだ、これから」

男「……頑張れよ」

蜘蛛幼女「うんっ」





……


蜘蛛幼女「あれ?」

蜘蛛幼女「いない……」


蜘蛛幼女「どこ行ったの?」

蜘蛛幼女「おーい!!」


蜘蛛幼女「……もう置いてかないって言ったのに」

蜘蛛幼女「うそつき」




……

蜘蛛幼女「族長!!」

族長「帰れ」

蜘蛛幼女「っ! なんで!?」

族長「すぐに、自らの住処へ帰れ」

蜘蛛幼女「わたしは半分ニンゲンだよ! ここもこきょうなのに!」

族長「……我々はけものがみと共に生きる」

族長「狩りを共にし、森での暮らしを助けてもらうこともある」

族長「そして我々はけものがみに、血と生贄を捧げ、対価とする」

族長「だが、人の争いは別だ」

蜘蛛幼女「ヒトの……あらそい?」

族長「遠く彼方の人間達が、この地域を征服せんと攻めてきている」

族長「我々の里も、それに応戦するために戦力を出した」

蜘蛛幼女「ヒトと、たたかうの? ヒトが? なんで!?」

族長「人同士の争いには、けものがみの力は借りられない」

族長「お前のような、けものびとも、同じだ」

蜘蛛幼女「なんでっ……なんで!」

族長「それがしきたりだからだ」


蜘蛛幼女「知らない!! そんなの知らない!!」

蜘蛛幼女「どうせわたしはさいしょっから! しきたりをやぶってるんだ!」

蜘蛛幼女「わたしはあのひとをっ」






……


兵士1「はぁあ!」ビュオン!

男「くっ……でぇえりゃ!!」ヒュンッ

ザシュッ!

兵士1「ぐあっ……!」バタッ


兵士2「こいつ!!」

兵士3「うぉお!」

ガキィン!

男「ちっ……!」ギギッ

兵士3「こ、のぉ」ギギギッ


兵士2「そこだ!!」ズガッ!

男「が、ぁっ」

兵士3「とどめぇ!!」

男「っ……ねぇぃや!!」ヒュッ!!

兵士3「ぐぁあっ!?」ガクッ

兵士2「なにぃっ!」

男「はぁ……はぁ」


兵士4「加勢しろ!」

兵士5「やつを仕留めろ!!」


男「……ここまで、か」


??「えぇえい!!!」ヒュヒュッ!!


兵士2「なっ! なんだこれはっ糸がっ」ギチッ
兵士4「ぐぉおっ身動きが」ギチギチ

兵士5「こ、このぉお!!」

蜘蛛幼女「うガぁアアああ!!」


ドシュッ

兵士5「ぁ、が……」ドサッ


兵士2「な……なんだ、あれは……蜘蛛……ばかでかい蜘蛛」
兵士4「人間の体がはえている……ばけもの……化物だ!!」


蜘蛛幼女「つかまって! はやく!!」

男「……あぁ」

シュッー




……


蜘蛛幼女「ここまでくれば」

男「はっ、はぁ……ぅ…………なんで、来た」

蜘蛛幼女「! しっかり! すぐてあてをっ」

男「……傷が、深すぎる。血も……だいぶ流した」

蜘蛛幼女「あきらめないで!! だい、じょうぶ……ぜったい、だいじょうぶ、だから」

男「…………里を、離れて……お前……一人で、逃げろ」

蜘蛛幼女「ぃやっ……やだ…………やだよ」

男「残った血は……全部やる。……だから、俺の、わがままを」

蜘蛛幼女「じゃあっ、じゃあわたしのわがままも聞いてよ!」

蜘蛛幼女「いっしょに逃げよう? どこか、とおくに」

蜘蛛幼女「二人で、いっしょに……どこか、しずかなばしょで」

男「…………れは、……ぅ」

蜘蛛幼女「いやだぁああ! 死んじゃやだぁああああ!!」

蜘蛛幼女「わたしにはっあなたしかいないのに!!」

蜘蛛幼女「お母さまのところにいても、ヒトのすがたを持つのはわたしだけ……ほかのオオヤマグモとはなじめなかった」

蜘蛛幼女「ヒトの里でも、わたしは気味悪がられて、狩りのパートナーもいなかった」

蜘蛛幼女「わたし…………わたしのいばしょは、あなたのところだけだったのに!!!」

蜘蛛幼女「おねがいぃ! おねがいだからっ」



蜘蛛幼女「わたしを…………ひとりに、しないで……」



男「……きろ」




蜘蛛幼女「ぅぁアあああアアアアアぁああアあああアアアァ!!!!!」





……


兵士「予定よりも抵抗がありましたが、無事にふもとまでの制圧が完了しました」

王「ご苦労だった。あとは個別に、小さな集落や部族を屈服させるのみか」

兵士「は。しかし特定の里の人間の中には、化物が紛れているとの報告が」

王「そうか。ならば、その里については、皆殺しにせねばなるまいな。……一人残らず」

兵士「了解致しました」

王「…………化物、か」




けもののひと、蜘蛛の女、完。




前作

男「キミの抜け殻を食べたい」蛇少女「えっ」



これのみで読めるものを目指していますが、
よそで書いている小説の外伝的なものなので、蛇少女や蜘蛛幼女がどうなったかはそちらに書かれています。

気にせず読んで頂ければ幸いですが、気になる方は『けもののひと』で検索を。

では。

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