【艦これ】提督「えぇっ!お花見行かなかったの?」磯風「あぁ」 (59)





提督「どうしてさ、行けばよかったじゃん」カキカキ

磯風「今夜はこの磯風が秘書艦となっている……そうはいかないさ」

提督「あはは、真面目なんだなー」カキカキ

提督「遠慮なんかしなくていいのに」カキカキ

磯風「遠慮などしていない」


磯風「……司令こそ、久方ぶりの内地なのだから」

磯風「デスクワークもほどほどにして、羽を伸ばしに行ってもよかったのではないか?」

提督「もう司令じゃなくて、提督なんだよなぁ……」シュン

磯風「む、すまない……じきに慣れるようにする」

提督「まぁいいけどさ」ポン






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提督「最近になってようやく、この鎮守府を預からせて頂ける事になったのに」

提督「トップがいきなりお花見に行っちゃうのも、示しが付かないと言うか……」

磯風「まぁ……それもそうか」

提督「そうなのだ」

磯風「…………」

提督「…………」



提督「……で」

提督「お花見に行かなかった本当の理由は?」

磯風「!」ビクッ








提督「ご安心なさい、誰にも言いませんから(裏声)」ニッコリ

磯風「そ、その気持ち悪い声はやめ……」

磯風「…………」ハァ

磯風「分かった……正直に言おう」



磯風「磯風は皆と共に、花見の弁当を作ることが出来なかった」

磯風「それに負い目を感じた……ただそれだけだ」

提督「……へ?そ、それだけ?」

磯風「あぁ、そうだ」








磯風「皆も知っての通り……この磯風、戦闘以外の事に関しては」

磯風「全てが不得手だと自負している……」シュン

磯風「何より、花より団子とはよく言ったものだ」

磯風「花見の大事な食事の席を、磯風の小汚い料理で白けさせてしまっ……」

提督「ストップ!」ブンブン



提督「なんか悲観的スギィ!」

提督「第一、ここに居る皆がそんなことを気にするわけがないだろっ」

磯風「あぁ、皆が優しいのは良く知っている……」

磯風「だからこそ、それに甘えるわけにはいかないのだ」

提督「むむむ……」








磯風「皆には、秘書艦だから残ると伝えている」

提督「……まぁ、なんとなく君の生き様は分かったよ」クスッ

提督「今更どうこう言ってもしゃーないし……」

提督「ここに桜はないけど、俺たちは俺たちでのんびりやろうや」

磯風「む……」

提督「かえって気を遣わせてしまったな……申し訳ない」ペコリ

提督「イイアルヨー」



提督「じゃなんか映画見ようぜー」

磯風「おいデスクワークはどうしたのだ」








提督「あはは……もう、ポーズはいいかなーって」ケラケラ

磯風「あれはポーズだったのか……」ハァ

磯風「……まぁいい、最早なにも言うまい……」



提督「で、何がいい?」

提督「ここに揃ってるDVDなら、なんでもいいぜ」フフン

磯風「……そう言われてもな」

磯風「恥ずかしい話だが、磯風は映画をよく知らぬ……」

提督「なんと」

磯風「だから、司令が見たいもので構わない」

提督「左様かー……じゃあ、これなんかいいかな」スッ








磯風「……」フルフル


提督「見終わった後で言うのもなんだけど……」

提督「ホラー苦手だったら、初めからそう言ってくれれば」

磯風「だ、駄目で、ではない……ないぞっ」

磯風「この磯風、見くびってもらって、ては……困る!」キッ


グググ…


提督「……裾が伸びそうなんですけど」

磯風「……耐えてくれ」フルフル








グゥ-…


提督「!」

提督「……磯風、緊急事態だ」

磯風「なんだ?」

提督「映画を見てたら……腹が減った」

磯風「そうか、では間宮で食事を……」



磯風「……!」

磯風「ま、まさか……」



磯風「……いないのか?」

提督「……」コクリ








提督「間宮さんはおろか、この鎮守府には今……」

提督「俺と君しかいない……!」

磯風「そ、そうだったな……たしかにそうだ」

磯風「……それはつまり」

提督「あぁ……」



磯風「……司令、まだ拙いが……」

磯風「磯風は精一杯頑張る、だから……」フルフル

提督「……いや」








提督「料理は二人でやろう」

磯風「なっ!」



磯風「だが司令……たしか、料理は……」

提督「あぁ、俺は過去に即席麺や卵かけご飯に失敗したこともあるほどの豪傑……」

提督「それはもう磯風と大差ない料理スキルだろう」

磯風(今日で一番傷ついたぞ……)プルプル



提督「だが……力の無い二人が力を合わせ、互いを高め合うことで……」

提督「それはきっと、素晴らしい料理になるに違いない」キリッ

磯風「な、なんだか納得いかないが……まぁいい」ハァ

磯風「何か気付けることもあるかもしれない……やってみよう」



こうして、二人は決戦の夜を迎えようとしていた……




休憩しますにゃんにゃん





――鎮守府 烹炊所――


提督「ひぇ~、ここの烹炊所ってこんなに広かったのか!」

磯風「あぁ、鎮守府の人員全員分の食事を賄う場所だからな」

提督「俺、全然知らなかったよ……」


磯風「だが……今回は我々二人分の食事のみを用意すれば良い」

磯風「ここに貯蔵されている食糧に留意し、作りすぎないよう注意せねば」

提督「そうだな、余りを作ろうものなら皆から末代まで恨まれそうだし」

磯風「……あぁ」シュン








磯風「冷蔵庫の中には、まだ食材が豊富に入っていた……」

磯風「何を作っても、ひとまず問題はなさそうだな」

磯風「では、何を作るか……」

提督「俺肉がいい、肉!」

磯風「司令、野菜もちゃんと摂取しような」

提督「ぐぬぬ」


提督「変なとこだけオカンな奴め……」

磯風「お子様みたいな男が何を言う」フフッ








提督「じゃあ、ハンバーグ!」

提督「それにサラダとかスープなんかをつければ、文句ないだろ」

磯風「ハンバーグか……」

磯風「まぁ良いだろう、やってみようか」フフン

提督「おぉ、自信たっぷりだねぇ」



提督「で……ハンバーグってどうやって作るんだっけ」

磯風「そ、それはだな……」

磯風「……それは……」

提督「…………」

磯風「……ひき肉」フイッ

提督「う、うん」








○準備材料

・合挽肉……500g

以上



コネコネコネ…



提督「……なぁ」

磯風「……うん」

提督「いくら捏ねてもくっつかないんですけど」

提督「どういうことなんだ?」

磯風「あぁ、おかしいな……」








提督(……仕方ない)ハァ

提督「……」ポンポン

磯風「ん……なんだ」

提督「浦風か誰かに、電話で作り方を聞こうか」

磯風「……司令、冴えてるな」フフッ

提督(えぇ……)








――お花見会場――



浦風「んぁー!皆飲め、飲むんじゃー!」ヒック

浦風「ひしょかんの務めで来れんかった、磯風の無念を酒で晴らすけぇの!」アッハハハ

浜風「浦風、ちょっと飲み過ぎじゃ……?」オロオロ

浦風「えっへへ~!」

浜風「いや、えへへではなくて……」


ヴーッ ヴーッ


浜風「ほら浦風、ケータイ鳴ってる」

浦風「んー?」トロン

浦風「おぉ~磯風じゃあ……」








ポチポチ


浦風「もしも~し磯風~っ」

磯風『あぁ、浦風っ』

磯風『お楽しみの所、邪魔をしてすまないな』

浦風「ええんじゃ♪それより、うちらの方こそすまんの」

浦風「磯風一人を置いてってしもうて……」シュン

磯風『ありがとう……でも、それは大丈夫だから気にしなくて良い』

磯風『それより、ひとつ聞きたいことが……』



浦風「なに、提督のためのハンバーグぅ!?」ヒック

浜風「!?」ビクッ

磯風『ばっ……声が大きいぞっ』








浦風「そうかそうか、磯風もついに身を固めることにしたんじゃねぇ……」ホロリ

磯風『おい、一体何を言ってるんだ……』

磯風『そんなことより、早くハンバーグの作り方をだな』

浦風「そんなの決まっとる!愛が全てじゃ、愛!」

磯風『な……!?』

磯風『う、浦風、酔っているのか?』

磯風『こちらが聞きたいのはハンバーグのレシピで……!』

浦風「んじゃ、がんばるんじゃよ♪」

磯風『待て、お』プツッ



磯風「切られた……」ガクッ








磯風「浦風め、あれは完全に酔っていたな……」

磯風「結局レシピは分からずじまいか」シュン

磯風「それになんだ……愛だのなんだの」

磯風「よく分からん……」フイッ

磯風「…………」





提督「おかえり磯風―」

提督「どうだった、レシピは?」

ギュ

提督「……なんで手を握るの?」

磯風「……訳は、聞くな」カァー…




亀ですみませんが、残りは夜にかきます

ほんとすみません





提督「そうか、卵とパン粉でつなぎか!」

提督「さっすが浜風!レシピが無くても、そういうの分かっちゃうんだなぁ」

提督「あははっ、どうしたの磯風~」ケラケラ

提督「顔なんか背けちゃってさー!」

磯風「……何も言うな……」ドキドキ

磯風(なんて馬鹿なことを……)

磯風(酔った浦風の発言を真に受けてあんなことを……!)カァーッ



提督「?」ジーッ

磯風「だから見るなというにっ」ブンブン








○準備材料

・合挽肉……500g
・玉ねぎ……1個
・卵……2個
・パン粉……適量
・水……適量
・塩こしょう……少々



提督「しかし……分量までははっきり教えてもらえなかったなぁ」

磯風「普段、混ぜ分量や味付けは感覚でやっているらしいから、それは仕方のないことだ」

磯風「どうも、自分の手がさじ加減を覚えているらしい……」

提督「へぇ~なんかそれ、かっこいいな!」

磯風「……」

提督「きっとあいつ、将来いい嫁さんになるぞ」ニコッ

磯風「……っ!」



磯風(……磯風だって……そのくらい……)








トントントン

磯風「……」ウルウル

提督「玉ねぎのみじん切りで泣きそうになるなんて何時ぶりだろう……」ブワッ

磯風「司令……もう泣いてるぞ」クスッ

提督「む……」ポロ…ポロ…

トントントン

磯風「……」ポロ…ポロ…

提督「」パシャッ



磯風「今写真を撮っただろう!消せ!今すぐ!」ゲシッゲシッ

提督「オアーッ」








コネコネ

磯風「ほうほう……」コネコネ

提督「なるほど、本当にくっついてきた……」コネコネ

パッ

提督「どうだ、げんこつハンバーグ※だぞっ」ハハハ

磯風「……司令、それは食べ切れるのか?」

提督「…………」

提督「もっと普通のにする」パカッ

磯風「あぁ」コネコネ



※静岡県の某ファミレスは関係ありません








コネコネ

磯風「なぁ……一つ聞きたいことがある」コネコネ

提督「はいな」コネコネ

磯風「玉子かけご飯は……どうやって失敗したんだ?」

提督「…………」

提督「卵がご飯の山からテーブルに流れ落ちていったんだ……」

磯風「そ、そうか……」

提督「…………」

磯風「そう落ち込むな、時にはそんな失敗だってあるさ……」

提督「いそかぜぇ!」グスッ



磯風(よかった、磯風と同じ理由じゃないか)ホッ








磯風「タネが出来上がったぞ」フフッ

提督「このまま冷蔵庫に少し置いておくんだっけ?」

磯風「そうらしい……」

磯風「だから司令、焼くまでの間に付け合せ作りに取り掛かろうか」

提督「ん、了解っ」



提督「あれ、人参の皮剥かないの?」

磯風「え……にんじんも皮を剥くのか?」

提督「えっ」

磯風「えっ」




風呂に入って飯食います

すみません





ストン ストン


磯風「……?」

磯風「司令、それはどういう切り方なんだ?」

提督「いやー、俺たちお花見に行かなかったからさぁ」

提督「せめて人参だけでも花の形にしようと思って……」

提督「でも、なかなか難しいんだよコレ」

磯風「ふむ……」



磯風「面白い、磯風もやってみよう」

提督「む、じゃあどっちが綺麗な花を作れるか勝負だっ」

磯風「望むところだ、かかってくるがいい」フフン








トン トン


提督「できた!」

磯風「こちらもできたぞっ」

提督「……」ジーッ

磯風「……」ジーッ



磯風(花というより……いびつな星形だな)クスッ

提督(なんかバーチャ○ンのア○ァームドみたい)プッ

磯風「今回は磯風の勝ちだな」ニヤ

提督「いや、俺だろ!」








ヤイノヤイノ


提督「……はっ!」

提督「こんなバカなことをしているうちに30分が経ってしまった!」

磯風「あぁ、まったくもって馬鹿な時間の使い方だったな……」クスッ



提督「そろそろ、ハンバーグの焼きに入ろうよ」

磯風「あぁ、そうだな」








ジュージュー…



提督「おぉー、良いにおいするなぁ!」

磯風「……ふふっ」



磯風(何故だろう、司令が付いてくれているからか?)

磯風(いつもよりも自信が湧いてくる……)



磯風(今度こそ……浜風や浦風に負けない料理ができそう……)

磯風(そんな気がするのだ)








しかし……出来上がったハンバーグはひどいものだった。


蓋を開ければ、ハンバーグは小判形を保つことが出来ずに真ん中は大きく割れ、
そこから零れたミンチが鉄板の上で黒く焦げ四散する、そんなありさまだったのだ。



提督「どうしてこうなった!」ガーン

磯風「…………」

提督「……磯風?」

磯風「やはり……な」



磯風(料理など)

磯風(磯風には向いていないかったのだ)








磯風(所詮、磯風は……戦うことしか能のない艦娘)

磯風(そんな磯風が一人前の女性として振舞おうとすること……)

磯風(それ自体が間違いだったということだ……)

磯風(あはは、そんなの……既に分かりきっていたことじゃないかっ)

磯風(あーあ、実に傑作だ……)



磯風(それなのに……なんで)

磯風(こんなに悲しい気持ちになるのだ……)ジワ…








磯風「……」ゴシゴシ

磯風「司令、ハンバーグ……すまなかったな」

磯風「これは責任を持って磯風が食すから、司令は缶詰でも開けて……」



提督「モグモグ……うん!」

提督「磯風、これ形はいびつだけど……」

提督「結構いけるなぁ」

磯風「!?」








磯風「司令、何をやっているっ」オロオロ

磯風「このハンバーグは失敗作なのだぞ!?」

提督「失敗作かどうかは……」

提督「自分で食って確かめてみなって、ホレ!」スッ

磯風「んむっ!?」パクッ

磯風「……」モグモグ



磯風「な、なんだこれは……」

磯風「……お、美味しい……!?」








提督「見た目はともかく、味は全然問題ない!」ニコニコ

提督「味付けしてくれたの……磯風だろ?」

磯風「あ、あぁそうだが……」



提督「いや~、こんなに美味いハンバーグは久しぶりだ!」

提督「ありがとうな!」

磯風「っ!?」

磯風「あ……ありがとう……?」

磯風「い、磯風の……料理に……?」

提督「もちろん!」コクッ








磯風「…………」フルフル…

磯風「……そうかっ!」ニコッ

磯風「ふふっ……!」ニコニコ

提督「……」



提督(俺、知ってるんだよ)

提督(君が浜風たちの料理を見よう見まねで……)

提督(何度も何度も練習していることを)

提督(それが実を結ぼうとしている……それだけのことなんだよ)フフッ








提督(磯風は気付いてないみたいだけど、未開封のパン粉が後ろに転がっていた……)

提督(ハンバーグが割れたのは、恐らくこれの入れ忘れが原因だろうな)

提督(それさえなければ、このハンバーグは完璧だったのか……)

提督(これは俺の担当だったんだ……つまり……)



磯風「~♪」カチャカチャ

提督「あれ、残ったハンバーグを弁当箱に入れて……どうしたの?」

磯風「あぁ、少し……提案があるんだ」








磯風「急にこの弁当を持って……」

磯風「司令、貴方と桜を見に行きたくなった」フフッ

提督「俺と……桜を?」

磯風「あぁ、どうだろう?」



提督「……アハハ、いいなそれ」クスッ

提督「この辺でどっか、咲いてるかな?」

磯風「ふふっ……さぁな」ニコッ









やがて二人は弁当を持って、鎮守府の外へと繰り出し……夜を駆けた。

偶然見つけた野生の山桜の木の下で……。

それはそれは、とても楽しいお花見となったそうな。





提督「あぁ!ご飯炊いて入れるの忘れてたっ!」



終わり



袋麺の味噌ラーメンとスライスチーズの組み合わせはおすすめしません

ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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