めぐり「ベストプライス?」 (102)

八幡(特別棟の一階。保健室横、購買の斜め後ろ。言わずと知れた俺のベストプライス)

八幡(心地好い風が喉を撫で、煩わしい喧騒を背に、ここでは、俺一人で、何も考えないで居られる)

八幡(欲を言えば………隣に戸塚か小町なる癒しを置きたい。が………それはわがままだと言う物だ)

八幡(俺の様な奴は、そうそう癒しを求めてはいけないのだ。そもそもあんな癒しと知り合っているだけで奇跡な訳で………)



めぐり「あ、比企谷君だ」

八幡(………………奇跡)



八幡×めぐり先輩の俺ガイルSSです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459261523

めぐり「久しぶりー」

八幡「………何故ここに」

めぐり「あー、今受験シーズンだからねー。教室がピリピリしててねー。推薦でもう確定した身からしたら居づらくてねー。逃げて来ちゃった」

八幡「………はぁ」

八幡(………まぁ、居づらいだろうな。この人が嫉妬と羨望の眼差しに慣れているとは思えない)

めぐり「比企谷くんはなんでこんな所に?」

八幡「この場所が好きなんです。いつも昼休みはここで昼飯を」

めぐり「へぇー………初めて来たけど………確かに、静かで雰囲気も有って、いい所だね。ここ」

八幡(潮風で先輩の三編みが揺れる)

めぐり「今までずっと独り占めしてたなんて、ズルいなー。比企谷君は」

八幡「………ぼっちだから独り占めせざるを得なかったんですよ」

めぐり「………あはは」

八幡(苦笑いいただきました)

めぐり「………さて、もう時間も無いし、今日はここでお昼にしよっかなー」

八幡「………そうですか。それじゃ」スタッ

めぐり「ちょちょちょ」

八幡「…………なんですか?」

めぐり「なんで行っちゃうの」

八幡「………先輩の邪魔になるかと」

めぐり「なんないよ!なる訳ないでしょ!比企谷くんもここ居ていーよ!」

八幡「………………」

めぐり「むしろ、誰かと食べた方が美味しいしね」

八幡「………なら、もう少しここに居ます」

めぐり(先に居たのは比企谷君のはずなのに………)

めぐり「………比企谷君はいつここを見つけたの?」モグモグ

八幡「登校日初日ですね」

めぐり「はやっ」

八幡「………早く独りになれる場所が欲しかったですしね」

めぐり「………あれ?もしかして私おじゃま?」

八幡「えっ、あ、いや、そういう訳では」

めぐり「良かったー。ここも駄目ならどこに行けば良いのやら」

八幡「………そんなに悪いですか。教室の空気」

めぐり「ここ進学校だしねー。皆気合い入りようが凄いよ。張り詰めてるよ」

八幡「………クラスの癒しがこんな所居ちゃ駄目なんじゃないですか?」

めぐり「………クラスの癒し………そんな大層な者じゃないよ、私は」

八幡「いや、先輩の癒しオーラは凄いですよ。マイナスイオンがドバドバですから。一家に一台欲しいレベルです」

めぐり「………プロポーズ?」

八幡「ち、ちっ、違いますよ」

めぐり「あはは、冗談だよ。可愛いなぁ」ナデナデ

八幡「ぐっ………………」

八幡(可愛いとか初めて言われたぞ………しかもナデナデ付き)

めぐり「うふふ」ナデナデ

八幡(なんというお姉さん力………)

八幡(だが、ここは千葉のお兄さん(自称)としてやられたままには行かない)

八幡「………先輩、口にご飯粒付いてますよ」

めぐり「え、どこ」

八幡「ここです」スッ

八幡(唇に直タッチ!どうだこのお兄さん力!)

めぐり「あ、ありがと」

八幡「いえいえ」

めぐり「あ、比企谷も付いてるよ」

八幡「え」

めぐり「ほら」スッ

八幡(カ、カウンター………!)

八幡「………あ、ありが」

めぐり「んっ」パクッ

八幡「………!?」

八幡(更に食べられた!?)

めぐり「………ふふっ。案外そそっかしいんだね、比企谷君って」

八幡(………………………やっべー、ときめきかけた。中学の俺だったら死んでた。天然ビッチやっべー)

めぐり「………あ、もうお昼休み終わっちゃうね」

八幡「そうですね」

めぐり「今日はありがとね。お話相手になってもらっちゃって」

八幡「………どういたしまして」

めぐり「それじゃ、また今度ねー」スタッ

八幡「………ええ、また今度」

八幡(………また今度。ね。十中八九来ないだろうな。今度なんて)

次の日。



めぐり「比企谷くーん」



八幡(………すぐ来た)

めぐり「えへへ、来ちゃった。横お邪魔するねー」

八幡「………何故」

めぐり「そりゃ、一日経ったからって教室の空気が変わる訳じゃないしー。むしろ日を増すごとに張り詰めてってるしー」

八幡「………そうですか」

めぐり「………それにね?」

八幡「?」

めぐり「比企谷くんと話すの、結構楽しかったからさ」

八幡「………」

めぐり「比企谷くん、お友達になりましょう」



八幡「………………嫌です」

めぐり「えぇー………」

八幡(………さぁ、どう出る?)

めぐり「………なろうよー」

八幡(なんもないんかい)

めぐり「比企谷くんは私が嫌いなの?」

八幡「………そういう訳じゃ、ないですけど」

めぐり「じゃあなんで嫌なの?」

八幡「それは………………」

めぐり「………」

八幡「………………あれ?」

八幡(いつからだっけ。なんでだっけ。なんで俺は『友達』を拒むようになったんだろう)

めぐり「………理由がないなら、友達になっても良いよね?」

八幡「え、いや………その」

めぐり「いーやっ!私が友達って言ってるんだから友達なの!」

八幡「………………勝手にどうぞ」

めぐり「………ふふっ、よろしくね。これから」

次の日。



めぐり「友達らしい事をしよう!」

八幡「………はぁ」

めぐり「友達だからね!友達!」

八幡「解りましたから。………それで、友達らしい事ってなんですか?」

めぐり「一緒に遊ぼう!」

八幡「………はぁ」

八幡(………読めた。どうせ今流行りの『斎藤さんゲーム』(?)とかリア充がやる意味解らん奴だな………。ああいうのはリア充同士でやるから盛り上がるんだ。俺という負のバイブスで盛り下げてやる)



めぐり「………という訳で家からお手玉を持って来ました!」

八幡「マジすか」

八幡(古い………が、確かに………『クラスのお母さん』より『クラスのおばあちゃん』の方が似合う人だよな………無論、良い意味で)

めぐり「私のは赤。比企谷君が青ね。五個ずつ」

八幡「………五個。ですか」

八幡(やってみれば解ると思うが………お手玉を五個というのはかなりの高難易度だ)

八幡「先輩、これ本当にでき………」

めぐり「ほっほっほっ」ヒョイヒョイヒョイ

八幡「なん………だと………!」

めぐり「ふふんっ。『クラスのおばあちゃん』こと私を舐めないで欲しいね!」ドヤァ

八幡(本当に呼ばれてた)

めぐり「私と同時に始めて、先に落とした方の負け………だけど。ハンデが必要かな?」

八幡「ええ………そうですね5対5の所を………6対4で」パシッ

めぐり「そうだね。それくらいの………って比企谷君?それは私のだよ?何をしているのかな?」

八幡「何って………ハンデを付けているんですよ。『俺が六個』で『先輩が四個』」

めぐり「なっ、そんな………」

八幡「スタート」

めぐり「えっ、ちょっ」ヒョイッ

八幡「………………」パパパパパパシッ

めぐり「っていうかうまー!」

八幡「一人でできる遊びで俺に勝てる奴は居ません」

めぐり「なっ、くのっ」ヒョイヒョイ

八幡「………よっ」ズイッ

めぐり「わっ、とっ、ち、近くない?」

八幡「………………」パッパパパッパシッ

めぐり「えっ、えっえっ」

八幡(不規則なリズムを近くで見せ付けることで相手のペースを崩し………更にハンデにより、本来、全て先輩の所にある赤いお手玉が、ひとつだけ俺の所にあることで、自分のがどれか混乱させる)

めぐり「わっわっ、あ、あれ?」

八幡(___結果)

めぐり「あっ」ポロッ

八幡「よっ………俺の勝ち、ですね」パシッ

めぐり「くっ………私の18年間が………」

八幡「人生懸けてたんですか」

めぐり「も、もっかい!ハンデなんか作ったから調子狂っちゃったんだよ!」

八幡「いいですよ」

めぐり「スタート!」ヒョイッ

八幡「………必殺。カタパルト」ペシッ

八幡(説明しよう!カタパルトとは!自分のお手玉と相手のお手玉の軌道を重ねることで、相手のお手玉だけ弾き飛ばすという、俺が小町相手に編み出した必殺技である!)

めぐり「わっ、わわっ」

八幡(………勝った)

めぐり「あっ」グラッ

八幡「危ないっ」ガシッ

めぐり「わっ………」ギュッ

八幡(………しまった、抱きかかえる形に………)

八幡「………大丈夫、ですか///」

めぐり「あ、うん、ありがとー」ストン

八幡「………………」

めぐり「………?」

八幡(先輩全く気にしてねぇし………恥ずかしい………自意識過剰かよ………いや仕方ねぇよ。女性の体の触ったのなんて何年ぶりだ………?確か小五の頃のフォークダンスで………いや、あの時は女子全員と断られたんだっけ)

めぐり「………?どうしたの?」

八幡「………なんでもないです。本当に、なんでもないです」

めぐり「………ふーん?………あっ、ていうか、もっかい!もう一回!あれズルいよ!」

八幡「………いや、もう止めときましょう」

めぐり「えぇー………」

次の日。



めぐり「………」モグモグ

八幡「………」モグモグ

めぐり「………比企谷君って、いつも購買のパンだね」

八幡「先輩はいつも弁当ですね」

めぐり「えへへー、これ卵焼きは私が作ってるんだよー」

八幡「はぁー………自分で作ってるんですか」

めぐり「一品だけだけどねー………他は全部お母さんに作って貰ってるよ」

八幡「それでも凄いと思いますよ。高校生でそこまでできる人なんて………」

八幡(………………居るな)



沙希「へくちっ」

めぐり「そうかな?私凄い?」

八幡「凄いと思います。専業主夫志望として見習いたいです」

めぐり「その設定まだ生きてたんだ………」

八幡「人の夢を設定呼ばわりですか」

めぐり「夢ってそんなに後ろ向きな言葉だっけ………」

八幡「………」

めぐり「………あ、そうだ」

八幡「なんですか?」

めぐり「比企谷君、私の卵焼き食べてみてよ」

八幡「………なんでですか」

めぐり「いやー、お母さん何食べさせても美味しいって言うからね。正直な人に試食して欲しかったんだよね」

八幡「………はぁ」

めぐり「という訳で、お好きなのをどうぞ」

八幡「お好きなのを………って、全部一緒じゃないんですか?」

めぐり「うん。今日は実験的に色々作ってみたんだー。これが甘めでー。これが出汁から………」

八幡「じゃあ、砂糖18gのを」

めぐり「………ごめん。砂糖を使ったのはあるけど、グラムまでは………」

八幡「冗談です。じゃあそれを頂きます」ヒョイパク

めぐり「………どう?」

八幡「………今まで俺が食べて来た卵焼きの中で二番目にうまいです」

めぐり「………わ、わーい?………ちなみに、一番は?」

八幡「ラブリーエンジェルマイシスター小町の卵焼きです」

めぐり「………い、妹さん?………うん、まぁ、家族が一番だよね………」

八幡「いや、なにやら腑に落ちてないようですが、小町についで二番は凄いですよ?サイゼより上な訳ですし」

めぐり「う、うん。そうだよね?今私は誉められたんだよね?」

八幡「そうですよ?凄いと思います」

めぐり「………あ、そうそう。まさか人のご飯がただで食べれるとは思ってないよね?」

八幡「解りました。いくらですか?」スッ

めぐり「流れるように財布に手が!?もう!違うよ!友達同士でそんなにすぐにお金の話になる訳ないでしょ!」

八幡「………はぁ。じゃあ、何を?」

めぐり「比企谷君のパン一口ちょうだい?」

八幡「解りました。今ちぎりますから………」

めぐり「待てませんっ」ハムッ

八幡「!?」

めぐり「………ふふっ。ご飯の交換、友達っぽいね」

八幡「あ、あぁ、そうですね」

八幡(………いや、それより、これ………間接キスじゃあ………)チラッ

めぐり「………?」

八幡(クソッ!また気にしてるのは俺だけか!………いや、そうだよな。これくらいの事を気にしてる方がおかしいんだよな)

八幡「はぁ………」

めぐり「んー、購買のパンも結構美味しいなー」

八幡「………そうですね」

次の日。



八幡「………」モグモグ

八幡「………」

八幡「………遅い」

八幡「………」

八幡(いや違う今のは違う別に先輩を待っているとか寂しいとかそういうのではなく今までの来る時間に先輩が到着していないという客観的事実を何の気なく呟いただけでそもそも別に毎日毎日また明日ねと約束している訳でもないのだから先輩がここに来る理由は無い訳でそれは俺が一番良く知ってる訳でそもそも俺なんかに………………)

八幡(………駄目だ。これ以上何かを考えるのは、駄目だ)

八幡(………………寝よ)

めぐり「ごめーん。ちょっと推薦の事で職員室に行ってたから遅れ………」

八幡「ぐぅ」

めぐり「………あらら、寝てる。せっかく私が来てあげたのに」

めぐり(………あの目の下の隈は体質とかじゃなくて普通に寝不足だったのかな)

めぐり(………ま、寝かせておいてあげよう。お昼寝が趣味の私としては、こんなに気持ち良さそうに寝てる人を起こすのはしのびないし)

めぐり(………結構良い顔立ちしてるなぁ)

めぐり(いつかどこかで聞いた、本当はイケメンって本当なんだなぁ)

めぐり「………………えい」ウニ

めぐり「あはは。うにうにー」ウニウニ

八幡「ぐぅ」ウニウニ

八幡「………」

めぐり「うにうにー」



八幡(………なんだこの状況………)

めぐり「うにうにー」

八幡(先輩が俺の頬をうにうにしている………)

めぐり「うにうにー」

八幡(………やっべぇ。超いい匂いする。俺今マイナスイオンを直に吸ってる。むしろ俺自身がマイナスイオンになりそうな勢い)

めぐり「うにうにー」

めぐり(あ、間違えて指が………)

八幡(………唇に………!?)

八幡「うおっ」

めぐり「あ、ごめん。起こしちゃった?」

八幡「………あ、いや、まぁ、そんな感じです」

八幡(まさかこの数日で二回も唇タッチを喰らうとは………眼を瞑ってたから受け身(?)も取れなかったし)

めぐり「あ、それにごめんね?今日遅れちゃって職員室に用事があってさ。メールしようと思ったけど………メルアド聞いてなかったし」

八幡「………いや、別に、それに………」

めぐり「?」

八幡「………もう、来ないかと思いました」

めぐり「え、なんで」

八幡「………その、別に約束もなにもしてないし………俺なんかの所に来る理由なんか………」

めぐり「………理由ならいっぱいあるよ?」

八幡「………例えば?」

めぐり「教室は居心地悪いしー。ここ空気とか景色とか良いしー」

八幡(………つまり、それは俺がどうとかは関係ないって………)

めぐり「それに、比企谷くんも居るし」

八幡「………」ドキッ

めぐり「………ね?」

八幡「………………また、そういう、誤解させるような………」

めぐり「………誤解?あぁ、うん。そんな誤解がないようにさ。連絡手段が必要だよね?」

八幡(俺が何に誤解したか誤解してるな)

八幡「………連絡手段?」

めぐり「うん。という訳で、メルアド交換しよ?」

八幡「………父がハニートラップには気をつけろと………」

めぐり「私がそんなことする訳ないでしょ!」

八幡「………いや、でも」

八幡(なんか、駄目な気がする。これが最後の防衛線な気がする)

めぐり「………むぅ。由比ヶ浜さんとはメルアド交換してるくせにー」

八幡「いや、あれは同じ部活だからで………」ブブブ

めぐり「………ん、噂をすれば。携帯鳴ってるよ」

八幡「こんなタイミングに誰から………」



『From.材木座』



めぐり「………えっと、その、何?ざいきざ………くん?さん?………とはメルアド交換してるのに私とはしないのー?」

八幡「いいですよ。交換しましょう。メルアド」

めぐり「え、はやっ。でもやったー!」

八幡(………流石にこいつ以下とは言えないからな………)

その日の夜。



八幡「………あ、メール来てる」



『From.めぐめぐ』



八幡(………)ニヤッ

八幡「はっ」

八幡(………何をにやついているんだ俺ぇ………気持ち悪いぞ俺ぇ………こんなのただの社交辞令じゃないか。嬉しがるだけ虚しいだけだ。どうせこれ以上はもう何もないんだって。中学時代に学んだだろ)

八幡(けどやっぱりなんか嬉しい………。女性からのメール一本で舞い上がっちゃうこのチェリー根性が恨めしい………)

八幡(いつか攻略難易度ハードと俺を語った人が居たけれども………攻略難易度ハードのチェリーなんて居る訳ないんだよなぁ………)

八幡(とりあえず、あんまり意識しないようにしよう………)

次の日。



雪乃「………………?」

結衣「?ゆきのんどうしたの?そんな難しい顔して」

雪乃「………今読んでいる本なのだけれど………私の解らない言葉が出てきたの」

結衣「えぇーっ!?ゆきのんでも解らない言葉とかあるんだー!」

雪乃「………当たり前でしょう。私を何だと思っているの………それで由比ヶ浜さん。この言葉の意味を検索したいから携帯を貸してくれるかしら。私の携帯は今家に忘れてしまっているから………」

結衣「うん。全然いいよー。どうぞー」

雪乃「由比ヶ浜さん。『全然』という言葉は否定型で………今の私が言えた物ではないわね。ありがとう由比ヶ浜さん」

結衣「えへ?えへへー」

雪乃「………………由比ヶ浜さん。充電が切れているのだけれど?」

結衣「………えっ?あっ!?ご、ごめんゆきのん!」

雪乃「いえ、あなたが気にすることでは最初からないわ。しかし………どうしましょう」

結衣「あっ、そうだ!ヒッキー携帯貸して?」

八幡「あいよ」スッ

結衣「軽っ」

八幡「なんだよ」

結衣「………い、いや前も言ったけど、良く人に簡単に携帯貸せるよね………」

八幡「お前もさっき貸してただろ」

結衣「わっ、私は見られて困るような物は携帯に入ってないもん!」

八幡「俺の携帯にはあるみたいな言い方やめろ。俺の携帯にもねーよ」

結衣「ま、ありがとね!はいゆきのん」

雪乃「ありがとう由比ヶ浜さん。やはり由比ヶ浜さんは頼りになるわね」

結衣「えへへー」

八幡「おかしくね?」

雪乃「………あら、比企谷君?メールが届いたようよ」ブブブ

八幡「ん?誰からだ?」

雪乃「………見てもいいの?」

八幡「いいぞ別に、迷惑メールか二人の天使かだからな。どっちも見られて恥ずかしい物じゃねぇし」

八幡(材木座はちゃんと着信拒否にしたしな)

雪乃「………あなたがそう言うなら………送り主は………『めぐめぐ』………!?」

八幡(………意識しなさ過ぎた………)

結衣「ヒ、ヒッキー!?誰この人!女の人だよね!誰!」

雪乃「前に似たような………思い出したわ。この『めぐめぐ』さんは、おそらく城廻先輩ではないかしら?」

八幡「………だ、だからどうした」

結衣「………ヒッキーとめぐり先輩って仲良いの?」

八幡「………べ、別に」

結衣「じゃあなんでメルアド交換してるの!」

雪乃「文化祭の時も体育祭の時も特にそういうやりとりはなかったわよね?何故、今になって………?」

八幡「あ、ああいう人は誰とでもメルアド交換したがるからな。前に知り合った時はただ忘れてたんだと。それだけだ」

結衣「………私とはメルアド交換してないんだけど」

八幡「お、俺も偶然会っただけだからな。お前ともどっかで交換すんだろ」

八幡(………何故、俺は言い訳しているのだろう。誰に言い訳しているのだろう)

雪乃「………ふんっ」ポイッ

八幡「うおっ、な、投げるなよ」パシッ

雪乃「………見せなさい」

八幡「………え」

雪乃「城廻先輩からどんなメールが来たのか、見せなさい」

八幡「そっ、そこまでは………」

雪乃「………あのままあなたに返さず無理矢理見ることもできたのよ?そこをあなたに免じて『お願い』してあげているの。『見せなさい』」

八幡「お願いって口調じゃねーだろ………」

雪乃「………どうしたの?やはり見せられないの?人に見せられない様なメールなの?」

八幡「………いっ、いや、そんな訳ねーだろ。いいよ、見せてやるよ!」バッ



『From.めぐめぐ

 道でタンポポ咲いてるよ!凄いね!』



雪乃「………何かしら。これは」

結衣「しかも画像抜けてるからどんなタンポポか解んないし………」

八幡(あの人らしいな………)



『From.八幡

 良かったですね』

次の日。



めぐり「比企谷君おはよー」

八幡「正確にはこんにちは………あれ?先輩今日は弁当じゃないんですか?」

めぐり「うん。昨日食べさせて貰ったパンが美味しかったからさ。たまには購買もいいかなーって」

八幡(………飲み物はいちごオレ………これが一色とか由比ヶ浜ならあざといと罵る所だが、めぐり先輩が持ってると素直に可愛らしいと思える………不思議)

めぐり「パンは比企谷君といっしょだよー。いただきまーす」ハムッ

八幡「………あれ?先輩それ………」

めぐり「………こんな味だったっけ」

八幡「………やっぱり。先輩注文間違えてますよ。俺のはマヨネーズ、先輩のはチーズです」

めぐり「えぇー………見た目が同じの選んだのに………」

八幡「そこらへんも紛らわしい奴なんですよ」

めぐり「じゃあどうしよう………私あんまりチーズ好きじゃないんだけど………」

八幡「………先輩。俺なんかチーズの方食べたくなってきました」

めぐり「え?」

八幡「………えっと、でもですね。俺既にマヨネーズの方を買ってしまってですね。えー、だから、その」

めぐり「………比企谷くんってさ」

八幡「な、なんでしょう」

めぐり「すごいめんどくさいよね」

八幡「えっ」

めぐり「………でもさ、優しいよね」

八幡「………そんなことは」

めぐり「比企谷くんっ!このパン交換してくれない?」

八幡「………どうぞ」

めぐり「………ふふっ」ナデナデ

八幡「………っ。早く食べたらどうですか」

めぐり「もう少しだけー」ナデナデ

八幡(………こういう、体を触られるのはあんまり好きじゃないんだが………)

八幡(………なんでだろう。この人の、めぐり先輩のは、嫌じゃない………)

次の日。



めぐり「文化祭さ、比企谷君達はミュージカルだったよね」

八幡「はい………それが何か」

めぐり「あれ生徒会の都合で私見れなかったんだよねー。比企谷君は何役だったの?」

八幡「いや、特に役とかはもらってませんね。………というか貰える訳ないでしょう」

めぐり「えー。確か演目は『星の王子様』だよね。比企谷君『僕』とか似合いそうだけど」

八幡「………海老名さんにも言われましたが………俺はああいう人前に出る系の物事は苦手ですよ。そもそも文実でしたし」

めぐり「………見えない所で頑張ってくれてたもんね。比企谷くん」

八幡「………バレないようにサボってただけですよ。何もしてません」

めぐり「………そういう所だよ。私が比企谷くんを好きなのは」

八幡「………すっ!?」

めぐり「?」

八幡(………またこれかよ………わざとかこの人)

めぐり「………いやー。でも見てみたいなー。比企谷君の『僕』」

八幡「『でもそんなのは人間じゃない。キノコだ!』」

めぐり「何故わざわざ前後がないと意味が解らない名言を………」

八幡「………そういう先輩は何かミュージカルとかやったことないんですか?」

めぐり「小学校と中学校で『ロミオとジュリエット』をやったよ。小学校の時は、木の役だったけど」

八幡「木の役………ある意味似合ってますよ」

めぐり「むー。どういう意味?」

八幡(マイナスイオンを生成してる所とかそっくり)

めぐり「でもねー。中学校では『ジュリエット』だったんだよ!すごいでしょ!」

八幡「あぁー………三編みとか似合いますしね」

めぐり「『おぉロミオ!あなたはどうしてロミオなの!』」

八幡「『理由なんてないよ。バラが咲くのに理由はいらない』」

めぐり「『星の王子様』で返して来た!?………あれ?そんな台詞あったっけ?」

八幡「………さぁ?俺もうろ覚えですし………まぁ、バラって言っておけば大丈夫でしょう。あの物語の名言の大半はバラ絡みですから」

めぐり「適当だなー」

八幡「………しかし、中学ならまだしも………小学生でロミジュリとは珍しいですね。結構悲しいお話でしょう。あれ」

めぐり「うーん。確かに最初の方はちょっと悲しい雰囲気だけど………最後はハッピーエンドだし、普通じゃない?」

八幡「………ん?」

めぐり「?」

八幡(………まさかこの人、ロミジュリの正しいあらすじをしらない?)

めぐり「どうしたの?」

八幡(………小学生向けにハッピーエンドに改編された奴とかあるもんな………にしても高校生になって正しいあらすじを知らないでいるとは………)

めぐり「ねぇ、私なんか変なこと言った?」

八幡(………言わないでおこう)

八幡「いえ、別に、ほら、小学生には結構難しい劇だと思いまして」

めぐり「あぁー。今思うと確かにそうかも」

八幡(多分、誰からも真実を告げられず、高校生になっちゃったんだろうなぁ)

次の日。



小町「あ、お兄ちゃんの携帯鳴った」

小町(………リビングに起きっぱなしにしてる方が悪いよね?)

小町(結衣さんか雪乃さんかどっちかなー)パッピッ

小町「めぐめぐ………?誰だろ」

八幡「おーい、小町ー」スタスタ

小町「何ー?」スッ

八幡「俺の携帯知らね?」

小町「えぇー?小町が知ってる訳ないでしょー。なくしちゃったの?」

八幡「いや、まだだ、まだなくしてない」

小町「あー、もしかしたらカマクラが食べちゃったのかもね」

八幡「だとすればダブルで大問題なんだが………まぁ、もっかい部屋探すか………」

小町「あ、ちょっと待って」

八幡「あん?どした」

小町「お兄ちゃん『めぐめぐ』ってあだ名の人知ってる?」

八幡「あぁ、知ってるけど。何」

小町(動揺率46………『できれば隠したい』って感じかな………)

小町「いやね?友達のお姉ちゃんの友達みたいでー。もしかしたらお兄ちゃんと同じクラスかもねーって」

八幡「………先輩だよ。そいつ学年間違えてんじゃねーの?」

小町「あっ、ふーん、先輩なんだ………なんでお兄ちゃん知ってたの?」

八幡「………生徒会長やってる人だからな。名前くらいは知ってるよ」

小町「ふーん………どんな人?」

八幡「………なんでそんなこと知りたがるんだよ」

小町「いやー、来年は私もお兄ちゃんと同じ高校に通う訳だし、自分の高校の生徒会長って気になるから。校風とか出てくるし」

八幡「………まぁ、なんだ、癒し系だよ。全体的にほんわかしてて、けどどっか抜けてて、支えたくなる………」

小町「………………好きなの?」

八幡「はぁ!?な、なんでそうなるんだよ」

小町「………あのお兄ちゃんがこの慌て様。確定的だね。それにお兄ちゃんが素直に人のこと誉めてたし、お兄ちゃんがそんな風な態度になるの私と戸塚さんだけだもん」

八幡「だ、だから違うっつってんだろうがあの人とは特に繋がりもねぇし………」

小町「はい携帯。めぐめぐさんからメール来てるよ」

八幡「マジかこいつ………」

小町「お兄ちゃんがメルアド交換するって相当だよね………ね、好きでしょ?好きなんでしょ?」

八幡「ちげーよ。違う違う違う!ちょっとしつこいぞお前」

小町「………ねぇ、お兄ちゃん」

八幡「………なんだよ」

小町「………もう逃げないでね。誰からも、自分からも」

八幡「………だから………」

小町「小町もう寝るー。おやすみー」

八幡「あっ、ちょっ、おまっ」

八幡「………………」

八幡「………逃げたことなんてねぇよ」

八幡(だって、俺を追いかけて来る奴なんてもう。俺を含めて誰も居ないんだから)

次の日。



めぐり「ぐぅ」

八幡「寝とる………」

八幡(無防備な………)

めぐり「ぐぅ」

八幡(………髪綺麗だなー)

めぐり「ぐぅ」

八幡(寝顔………)

めぐり「ぐぅ」

八幡「………先輩が悪い」ナデナデ

めぐり「ぐぅ」

八幡(………これすげぇ)ナデナデ

めぐり「ぐぅ」

八幡(いつまでも撫でてられる………)ナデナデ

めぐり「ぐぅ」

八幡(小町の小さい頃を思いだすな………こうやって寝るまで撫でてやった記憶がある。あの時もいつまでも撫でていられた。あの時と同じ………こう、慈愛の様な物が今、俺の心にある)ナデナデ

めぐり「ぐぅ」

八幡(でも、先輩はもちろん小町じゃない。姉妹じゃない。………先輩は女の人で………先輩は………)

八幡(やはり、小町の言う通りなのか。認めなければいけないのか)

八幡(俺は、先輩のことが___)



めぐり「………んぅ、比企谷くん………?」

八幡「うおっ」ビクッ

めぐり「………………比企谷くん、私の頭撫でてた?」

八幡「あ、すみません」パッ

めぐり「あ、いや別に嫌だった訳じゃないよー」

八幡「………そうですか」

めぐり(………実はちょっとドキドキしてたり)ドキドキ

八幡「?」

めぐり(頭撫でられたのなんてひさしぶりだなー。いつも私が撫でる側だったし。なんというか、年下扱い?されたの久しぶりだ)

めぐり「なーんか、比企谷くんって大人っぽいよねー。年下だけど」

八幡「い、いきなりなんですか」

めぐり「甘えたくなっちゃうなー」コテン

八幡「おわっ」

八幡(肩に先輩の頭が………なんかいつもよりボディタッチ過剰だな。寝惚けてるからか………こちらとしてはたまったもんじゃないが)

めぐり「………あ、ごめん。ベタベタし過ぎた?」

八幡「………いえ、別に」

めぐり「なーんかさー。比企谷くん弟みたいだからさー。私多分、弟か妹が居たらブラコンかシスコンだったと思うんだよねー」

八幡(………弟みたい。か。さっき姉妹じゃないって言ったばっかりなんだが)

めぐり「あ、そうだ。試しに私のこと『お姉ちゃん』って呼んでみてよ」

八幡「………………嫌です」

めぐり「………あ、うん」

めぐり(怒っちゃった………そりゃそうだよね………ちょっと軽率だったかな)

めぐり「………ごめんね?その、からかおうとか思った訳では………ちょっとあるけど」

八幡「………先輩。俺は弟じゃありません」

めぐり「あ、うん。ごめん」

八幡「………本当に解ってますか?」

めぐり「わ、解ってるよ。何も本気で言った訳じゃ………」

八幡「………先輩」ガシッ

めぐり「わっ」

八幡「………先輩、俺は弟じゃないです………」

めぐり「え、あ」

八幡「弟じゃ、ないんですよ………?」

めぐり「わ、わっ、わわ」ドキドキ

八幡「………………」

めぐり「………………」ドキドキ

八幡「………すいません。教室戻ります」

めぐり「あ、うん」

八幡「さよなら」

めぐり「ばいばーい………」

八幡(………クソッ!クソッ!なんであんな意地になってんだよ!先輩も困ってただろ!『あーあちくしょう弟止まりかよ』でいいじゃねぇかよ!さっさと数ある黒歴史の一つにしちまえばいいだろ!何でその先を期待してんだよ!それを期待しちゃいけねぇのは!比企谷八幡!お前が一番よく知ってるはずだろ!)

八幡「あぁ………ちくしょぉ………」

八幡(情けねぇ………………)

めぐり「………」ドキドキ

めぐり(なんだろ。これ)ドキドキ

八幡『弟じゃ、ないんですよ………?』

めぐり「~っ!」キュー

めぐり(あの言い方………弟とかに見られたくないって………やっぱり、そういうことだよね?)ドキドキ

めぐり(私のことが………)ドキドキ

めぐり(ドキドキする。なんか、怖い………体が熱い………息苦しい………初めて………なんだか体が強ばる………喉が渇く………)ドキドキ

めぐり(でも、一番怖いのが)

めぐり(それがすごく幸せってこと………)

めぐり(やっぱ、好きになっちゃったのかな、比企谷くんのこと)

めぐり(………………なんかチョロくない?)

めぐり(そりゃあ、比企谷くんはいい人だと思うし、嫌いじゃないけど。もっとこう、時間がかかると思ってた)

めぐり(私って簡単な女なのかな………)

めぐり「………いや」

めぐり(まだ比企谷くんのことが好きと決まった訳じゃないし、そもそも比企谷くんが私のこと好きかどうかもまだ確信はない訳だし。やっぱり、初めてのことで頭が混乱してるのかも)

めぐり(明日、明日になれば、全部解るよ)



めぐり(……………………………………‥‥‥‥‥…キスとかしちゃうのかな)

次の日。



八幡(………さて、どうしようか)

八幡(昨日あんなこと言ってしまって………どんな態度で接すればいいんだろうか)

八幡(一日経てば元通り………ってほど単純でもないんだろうな。忘れたふりをするような人でもない)

八幡(はぁ………なんか、もう、めんどくさい。もう何も考えたくない。けど、このまま………)

八幡(………いや、この際だ。もうあそこに行くのはやめよう。あの人の前だと、自分が何をするか解らない)

八幡(これでいい。これでいい。先輩も何時か俺を忘れて、俺も黒歴史にして塗り潰してしまえば、それで終わりだ)

八幡「………」ブブブ

八幡(メール………)



『From.めぐめぐ

 今日来ないの?』



八幡「………」

八幡(………返信は意味ない。か)

その日の夜。



めぐり(返信来ない………なんでだろ。やっぱり気まずいのかな………)

めぐり(もう来ないのかな………)

めぐり「………………よし」

次の日。



八幡(………………昼休みってこんなに長かったか)

八幡(久しぶりだな………独りの昼休みは)

八幡(あぁ、慣れっていうのは怖い。人の生き方を変えてしまう)

八幡(でも、きっとまた『独り』にも慣れる。これからもずっと『独り』なんだから)



めぐり「比企谷くん居ますかー?」

八幡「!?」

八幡(なんで教室に!?)

ザワザワザワザワ

めぐり「あ、比企谷くん見っけ」

八幡「あ、あの、なんで」

めぐり「返信来なかったから。何かあったのかなって」

八幡「………」

めぐり「………どうしたの?」

八幡「………いえ」

めぐり「うん。じゃあまたあそこ行こっか」ガシッ

八幡「………………行きません」グッ

めぐり「………なんで」

八幡「もう、先輩と一緒に居るのは嫌です。嫌いです。帰ってください」

八幡(人の気も知らないで)

めぐり「………もー、そんな意地張ってー」

八幡「………嘘じゃないです」

めぐり「大丈夫だから、私怒んないから………」



八幡「嫌だって言ってるでしょう!」バシッ

めぐり「きゃっ」ドンッ

八幡「あっ………………」

ザワザワザワザワ

イマノナニ?ヒキタニガセンパイツキトバシタ?マジ?

八幡「………帰ってください。俺は多分、誰かと居ることが苦手なんです………」

八幡(勝手に人を好きになって。有りもしない幻惑に惑わされて。勝手に悩んで自滅して)

めぐり「比企谷くん………」

八幡(誰かが俺の歪みを『ハリネズミのジレンマ』と呼んだ。でもそれは間違いだ。ハリネズミは二匹も居ない。俺一人だ。鏡を見て、ちっぽけな自分の棘におびえているだけなんだ。一人で。独りで)

八幡「もうあそこには行きません………帰ってください………」

めぐり「………」ギュッ

八幡「えっ」

めぐり「………」ギュー

八幡「………離れてください。また、さっきみたいに先輩のことを………」

めぐり「離れないよ」ギュー

八幡「………先輩!」

めぐり「離れない!」ギュッ

八幡「………っ」

めぐり「………さっきのは事故みたいな物だよ。比企谷くんはびっくりしちゃっただけ。ねぇ、ちゃんと話して?比企谷くんがどんな気持ちなのか解んないけど………私ちゃんと聞くから。捻くれてても、めんどくさくても、比企谷くんが優しいこと、私は知ってるから」

八幡「………………」

めぐり「比企谷くんのこと、好き。だから」

八幡「………………」

めぐり「あっ、いや、今の好きは、その、友達としてというか、いや、友達じゃないほうの好きも、もしかしたらあるのかもだけど、その」パッ



『………もう逃げないでね。誰からも、自分からも』



八幡「………俺も、先輩のことが好きです。付き合ってください」ギュッ

めぐり「え………あ、えと、は、はい!」



ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ



八幡「………………移動しましょうか」

めぐり「あ、うん」

めぐり「………なんか二人でここに居るの久しぶりに感じるね」

八幡「一日しか空いてませんけどね」

めぐり「………それでも、寂しいものは、寂しかったよ」

八幡「………先輩は、どうして俺のことが好き、なんですか?」

めぐり「………言わなきゃ駄目?」

八幡「………俺は、もう意味もなく逃げたりしません。しません、が。それでもやっぱりしばらくは誰かと居ることが苦手のままなんだと思います」

めぐり「………」

めぐり「………」

八幡「だから、その、無粋な話ですけれど、理由が欲しいんです。誰かと居る時。先輩の隣の居る時。俺はここに居てもいいんだって。胸を張って言える、理由」

めぐり「………比企谷くんってさ」

八幡「………はい」

めぐり「やっぱりすっごいめんどくさいよね」

八幡「えっ」

めぐり「………ずっとそんな風に思ってたよ。嫌いじゃないし、好きだったけど『手のかかる弟』って感じ」

八幡「………はぁ」

めぐり「比企谷くんに限らず、男の人皆そんな風に思っちゃうんだ。私。弟とか兄とか。それでちょっとボディタッチし過ぎちゃったり。ナデナデとか」

八幡(………ベタベタするのは恋愛感情がないから………本当に天然ビッチってたちが悪い)

めぐり「………だから、撫でられたのはひさしぶりだったなー。ちょっとドキッてしちゃった」

八幡「………」

めぐり「『弟じゃない』って言われて、初めて、かな。比企谷くんのことそういう目で見たの。そしたらもう、好きにならない訳ないよね」

八幡「………それは、俺が初めてだからですか」

めぐり「………違うよ。もちろんそれもあるけど、やっぱり一番の理由は『比企谷くんだから』だよ」

八幡「………そうですか」

めぐり「あ、あれ。なんか理由になってないね。えっと、私が比企谷くんが好きなのは、えーと」

八幡「いえ、十分です。十分伝わりました」

めぐり「………えへへ、なら良かった」

八幡「はい………」

めぐり「………」チラッチラッ

八幡「………なんでしょう」

めぐり「私は言ったのに、比企谷くんは言ってくれないの?」

八幡「………先輩が優しいからです」

めぐり「えー………なんかふんわりしてる」

八幡「でも………それ以外にないです。先輩は優しいから。いつでもさっきでも優しいから。先輩が好きです」

めぐり「………ふーん」

八幡「まだご不満ですか」

めぐり「………いやぁ、他になんかないの?こう、ほら」

八幡「………?」

めぐり「………行動で示す的な」

八幡「………マジですか」

めぐり「マジ、だよ?」

八幡「………」ドキドキ

めぐり「………」ドキドキ

八幡「………」

めぐり「………や、やっぱりまた今度にしよっか」

八幡「………ですね」



二人は幸せなキスを(保留に)して終了。

雪ノ下?あんな自己中が好きとか付き合った時のことを考えられない童貞。

由比ヶ浜?おっぱいにしか興味のない奴は童貞。

一色?見せかけのあざとさに騙されてる女を知らない童貞。

川崎?ぶっきらぼうだけど家庭的で根はすごく優しい人のために動ける奴が好きとか童貞しかありえない。



という訳で僕はめぐりんが好きです。童貞です。



読んでくださった方々。
ありがとうございました。

プライスではなくプレイスですね。
すみませんでした。
ご指摘ありがとうございます。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月30日 (水) 02:13:43   ID: rayzRWDh

プライス?

2 :  SS好きの774さん   2016年03月30日 (水) 03:31:16   ID: MB23vW_V

題名が残念だな~

3 :  SS好きの774さん   2016年03月30日 (水) 05:58:31   ID: zjzUOUi1


俺ガイルssを書く奴らは八幡に「ひゃい」とか言わせたり、台詞を噛ませたりしとけば良いやと思っているのが多いので冷めるんですよね。でもこのssは八幡がめぐりと話すとき、八幡が台詞を言う前に「…」を付けることによって八幡のめぐりに対する話し方に違和感が無く、非常に読みやすかったです。

4 :  SS好きの774さん   2016年03月30日 (水) 10:04:36   ID: 87Wpm_eV

プライスはわざと?

5 :  SS好きの774さん   2016年03月30日 (水) 12:44:51   ID: tR0XlFSg


>>84で、間違いだったと作者が言ってる

6 :  SS好きの774さん   2016年03月31日 (木) 00:55:18   ID: n4ZEy5NC

登校初日って八幡事故って学校行ってないじゃん

7 :  SS好きの774さん   2016年03月31日 (木) 19:24:11   ID: fCc6lAbY

あー雪ノ下まじでウザい
個人情報を詮索しようとしてんじゃねーよ

8 :  SS好きの774さん   2016年08月31日 (水) 02:58:29   ID: 8GWFQtHR

ベストプライスwwwwwww

9 :  SS好きの774さん   2017年08月12日 (土) 12:00:54   ID: 1bZQF3wq

↑↑八幡の登校初日では?

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom