モバP「酔いどれシュガーハート」 (22)
P「いつもの昼、いつもの事務所」
P「いつものように書類と向き合い、いつものようにプロデュースに励む」
P「ただひとつ、いつもと違うところがあるとすれば」
心「あ゛ー……クソッ」
P「(シュガーハートこと佐藤心さんの機嫌が、あからさまに悪いということだけだ)」
心「ケッ!」
P「(怖い。全然スウィーティーじゃない)」
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P「(今日の心さんは朝からずっとこんな調子だ)」
P「(さすがに仕事中はスウィーティーなスマイルを顔に貼り付けていたが、仕事が終わって部屋に戻ってきたら元どおりのしかめっ面)」
P「(正直、触らぬ神に祟りなしというか……)」
心「……」チラリ
P「(まずい、目が合った!)」
心「プッロデューサー♪」ニコニコ
P「な、なんでしょう」
心「最近さー、一緒に飲みに行ってないよねー?」
P「え、ええ。そうですね」
心「今日あたり、一緒にいこうぜ☆」
P「今日ですか?」
心「夜、予定あるの?」
P「予定はないですけど……」
心「じゃあ付き合って☆」
P「でも俺、今日はあんまり飲む気分じゃ」
心「付き合え」
P「は、はい」
P「(ま、真顔だ……いつも見せないぶん相当迫力があるな)」
心「ならばよし♪」
夜 居酒屋の個室にて
心「ぐびぐび」
P「ちびちび」
心「は〜〜っ! やっぱこういう時はお酒が一番☆」
心「気分がすーっとするもん♪」
P「……確かに、ストレスにアルコールはいい薬ではありますね」
心「んふふー♪ おやおや〜? プロデューサーってばペース遅いぞ、もっと飲め飲め☆」
P「そういうわけにもいきませんよ。酔い潰れると困りますし」
心「いーじゃんいーじゃん☆ 明日は休みなんだし!」
P「それはあなただけです。俺は明日も仕事」
心「あれ、そうだっけ? でへへ、勘違いしちゃった〜♪」
心「はぁと大失敗☆ てへぺろ☆」アハハハハ
P「すでに若干酔い始めてますね……」
P「まあ、平常時でもこのくらいテンション高い人だけど」
P「それで、なにがあったんですか?」
心「ん?」
P「今日、ずっと機嫌悪かったじゃないですか。それについての愚痴をぶつけるために俺を誘ったんじゃ」
心「あ〜……べつにそういうわけじゃなくて、単にぼっちで飲むのが寂しかったってゆーか〜♪」
心「でも、プロデューサーがそう言うなら、ちょっと愚痴っちゃおうかなぁ」
P「俺は大丈夫ですよ。アイドルのメンタルケアも仕事のうちですし」
心「……仕事かあ。なんかしゃべる気なくなるなあ」
P「え?」
心「今は残業中じゃないんだぞ? そんな言い方じゃらめぇ☆」
P「………」
P「単純に心配なので、心さんの話、聞かせてもらえませんか?」
心「うんうん♪ サンキュー☆」エヘヘ-
P「……ははっ」
P「母親と喧嘩した?」
心「そう。はじめは、『あんたあんなキャラで客の前に出てるの?』っていう感じの些細な話だったんだけど……」
心「気づいたら、そろそろ売れないとこっちも心配になるーとか、おじいちゃんも『心ちゃんはまだ身を固めんのかのう』ってぼやいてるーとか、そんな話になって」
心「で、こっちも言い返してたらだんだんお互いヒートアップして……」
P「それで喧嘩になったと」
心「うん」
心「最後には、へらへらしてるならやめてしまいなさいって言われた」
P「で、心さんはどう言い返したんですか」
心「ばーかばーか! オタンコナス!って」
P「小学生ですかあなたは」
P「でも、確か心さんの両親ってアイドル活動応援してくれてましたよね」
心「うん……ありがたいことにね♪ でもやっぱり、心配なものは心配なんだろうなぁ」
心「じいちゃんがひ孫を見たがってるのは本当だろうし。もう歳なのも事実だし……妹のよっちゃんも、今のところいい人は見つかってないらしいし」
P「(生きているうちに、孫のウエディングドレスを見たいっていうのも大きいだろうな)」
心「はぁともそれはわかっちゃいるんだけど……いざキツイこと言われると、噛みついちゃうというか」
心「でもアイドルはやめたくないしねぇ……むう」グビグビ
心「ぐびぐびぐび……」
P「……さすがにペース速すぎじゃないですか?」
心「飲まないとやってられないのぉ☆」
P「そうですか……二日酔いまでは責任持ちませんよ?」
心「わかってるって♪」
しばらく後
心「うへへ〜〜、ぷろでゅーしゃーがふたりに分身してりゅ〜☆」
心「片方おもちかえりしちゃおうかなぁ、でへへ☆」
P「完全に酔ってますね……」
心「んだとぉ? はぁとのどこが酔ってりゅっていうんら〜」
P「さすがの心さんも素面でそんなテンションにはならないですし」
心「あ、そうだっ!!」
P「うわっ、いきなり大声出さないでくださいよ」
心「男作ればママもじーちゃんも安心するぞぉ☆」
P「アイドルが男作ったら本末転倒ですよ。というか家ではママって呼んでるんですか?」
心「じゃあキープ! はぁと、ぷろでゅーしゃーをキープしまーす!」
P「そんな無茶苦茶な」
心「むう、乗り気じゃないなぁ? かくなるうえは……ゆーわくだ♪」
心「ほらほらぁ、熟れたないすぼでーに触りたくないかい?」ズズッ
P「い、いきなりなんですか」
心「みてのとーり酔っちゃってるのでー、どうせ明日にはここであったこと忘れてるぞ☆ だから今ならなにしてもなかったことにできるのら!」
P「いやいや」
心「……興味、ないの?」
P「うぐっ……」
P「(頬を赤らめて上目遣い……いつもと雰囲気が違って色気がやばい)」
心「プロデューサー……」トロン
P「………」
P「酔いすぎですよ。落ち着いて」グイッ
心「………」
心「チッ!」
P「なんで舌打ち!?」
心「へーんだ。そうですよねー、もっと若い体にしか興味ないもんね☆ いつも堪能してるし」
P「堪能なんて一度もしたことありませんよ」
心「だって梨沙ちゃんがいつもロリコンロリコンって」
P「誤解です。俺はロリコンじゃありません」
心「じゃあ夜のオカズにいくつの子使ってるか教えてよ」
P「ええっ!?」
心「おやおや〜、答えられないのかなー♪ やっぱりロリコ」
P「失礼な! ちゃんと同い年くらいの女優の………はっ」
心「ほうほう☆」ニヤニヤ
P「し、しまったつい」
心「ねえねえ、週何回くらいやってるの?」
心「ねーねー☆」
P「(ああもう、こうなったらやけだ! どうせ酒の席だし!)」
P「週一ですよ、週一!」
心「週一ぃ? なーんだ、はぁとの三分の一じゃん♪」
P「………」
心「ん? どしたん?」
P「い、いえ。週に三回するんだなって……回数的には普通の範囲ですね」
P「………」カアァ
心「………」
心「……!?」カアァ
P「(自分が恥ずかしいこと言ったことに気づいたな……)」
心「あ、あうぅ」
心「………」
心「ろ、ロリコンじゃないと言うのならそれをここで証明しろぉ!」
P「照れ隠しのために強引に話題を戻してきた!」
心「さあさあ、ここではぁとのわがままぼでーをさわさわして証明しろ☆」
P「そんな無茶苦茶な……うわ、なんで肩を出してるんですか!?」
心「肩甲骨の美しさには自信があるの☆」
P「えらいピンポイントな部分に自信持ってるんですね……じゃなくて、そんなはしたない格好しちゃだめですって」
心「うるさーい♪ ほらほらあ、大サービス☆」アハハハ
P「もたれかからないでくださいよ……酔うとめちゃくちゃなんだから、まったく」
心「よいではないかよいではないか〜♪ ……って、うわあっ!」
P「わ、ちょっ」
どたどたっ!
心「いたた……」
P「大丈夫ですか……っ!」
P「(か、顔が)」
心「(近い……)」ドキドキ
P「……き、気をつけてくださいね。酔ってるからってはしゃぎすぎないように」
心「………」
P「 ……心さん?」
心「ごめん……でも、はしゃいでないと不安だったの」
P「不安?」
心「心配してるのは、ママやじーちゃんだけじゃない………」
心「はぁとだって、本当は不安でいっぱい……将来のこと」
心「もう若くないのに、稼ぎが不安定な仕事して、子どもみたいな夢おっかけて……本当にこれでいいのかなって、たまに思うの」
心「今は、少しずつファンも増えていって上り調子だけど……いつまでもそうとは限らないし」
P「心さん……」
心「ママの言葉にカッとなっちゃったのも、そういう不安を表に引っ張り出された気がしたから。……情けないなあ、自分でワガママ言って無茶させてもらってるのに」
P「………」
心「あ……ごめん、変な空気にしちゃったな☆ しっぱいしっぱ」
P「俺は信じていますよ」
心「……え」
P「もちろん、俺だって不安はあります。けど、それを押さえつけられるのは『自信』だけですから」
P「まずは自分を信じてみないと、アイドルのみんなからも信じてもらえませんしね」
P「そして、俺にとって自分を信じるということは、そのまま担当のアイドル達を信じることにつながります」
心「プロデューサー……」
P「俺は心さんがトップアイドルになれるって信じています。でも、肝心の心さん自身がそれを信じてくれないと、俺も信じられなくなってしまう」
P「俺の道とあなたの道は、重なっていますから」
心「………」
心「プロデューサー……酔ってる?」
P「多分そうですね。じゃなきゃ、こんなクサいこと面と向かって言えませんよ」
心「ふふっ、だな♪」
心「でも……ありがと。プロデューサーのそういうとこ、好きだぞ☆」
P「はは、どういたしまして」
心「ねえねえ、さっきの語りの最後、もう一回言ってくれない?」
P「え? 」
心「ほら、俺の道がどうこうってやつ!」
P「……俺の道とあなたの道は重なっていますから?」
心「えへへ〜♪」テレテレ
心「もっかい☆」
P「俺の道とあなたの道は重なっていますから」
心「えへへ〜♪」デレデレ
P「さすがに言ってて恥ずかしくなってきた」
帰り道
心「おえっぷ……ぎぼぢわるい」
P「だから飲みすぎないようにって言ったのに……吐きそうになったら言ってくださいよ」
心「あんがと……肩貸してくれて」
心「でも、できればおんぶのほうが好みかなぁ、なんて」
P「………」
P「タクシー拾えそうなところまで、ですからね」
心「やった☆」
ブロロロ……
P「心さん。寮に着いたんでタクシーから降りてください」
心「はーい」
心「送ってくれてサンキューな☆」
P「方向同じですし、たいしたことじゃないですよ」
心「………」
心「ねえ、プロデューサー」
P「はい」
心「さっきは、だいぶ乱れてはしたない真似しちゃったけどさ……あれ、本当は」
心「(本当は、三割くらい計算でやってて)」
P「心さん?」
心「……ううん、なんでもない♪」
心「ハートの奥は、秘密だぞ☆」
P「は、はあ」
心「それじゃ、おやすみ♪」
P「おやすみなさい」
心「ふふっ……♪」
翌日
P「………」カタカタカタ
ピロリロリン♪
P「あ、心さんからメールだ。今日は休みのはずだけど」
心『二日酔いできもちわるい』
P「だから言ったのに……お大事に、と返信しておこう」
P「さて、仕事仕事」
P「………」カタカタカタ
ピロリロリン♪
心『あたまいたいよー』
P「………」
P「………」カタカタカタ
ピロリロリン♪
心『ああああああああたまがああああああ』
P「メール打つ余裕あるなら薬飲んで寝ればいいのに……」
ちひろ「プロデューサーさん。これ、頼まれていた資料です」
P「ありがとうございます」
ちひろ「ウェディング企画のお仕事ですか。いいですね」
P「ええ」
P「……ドレスもいいけど、ここは白無垢のほうが、インパクトあっていいかもしれないなあ」
P「あの人のおじいさんの好みは知らないけど」
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
もうすぐ総選挙だと思うので佐藤心さんをよろしくお願いします
少々口が悪い時もありますがとてもいい人なので
あと、このSSとこの前書いた梨沙の地の文ありSSはヴァリアスハートシリーズに含まれます
ついでに過去に書いた他のシリーズも適当に載せておくのでよければ
的場梨沙「アタシがオトナになったら」
モバP「なっちゃんと春休み」
渋谷凛「泉を極限まで甘やかす?」
本田未央「プロデューサーのお嫁さん探し」
新田美波「リレー小説ですか?」 武内P「はい」
新田美波「え、ええっ? 鞭でお仕置きされる役ですか?」
本田未央「バトルスピリッツ!」
南条光「ヒーロー見参!」 龍亞「俺だって!」
モバP「つんでれちえりん」
モバP「俺の妹がこんなに清純令嬢なわけがない」
武内P「緒方さんと飲むことに」 智絵里「甘いジュースが好きです」
渋谷凛「アイドルの可能性」 水本ゆかり「新しい自分を見つけましょう」
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