提督「磯風の手料理が食べたい」磯風「!!」 (63)


磯風「司令、今なんと?」

提督「……」

磯風「聞き違いでなければ、この磯風の手料理を賞味したいと。そう聞こえたが」

提督「聞き間違いじゃあない」

磯風「!」

提督「私は磯風の手料理が食べたい。復唱」

磯風「し、司令は、この磯風の手料理を、食べたい。任務、確かに了解した……うむ、了解は、したが……」


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磯風「なあ司令」

提督「なんだろう」

磯風「その、先刻承知のこととは思うのだが。そして、私にも自覚はあるのだが」

提督「なにをだろう」

磯風「磯風の料理は、その……つまり、だよ。十七駆の他の連中の手を、借りずにはいられないような」

提督「確認」

磯風「む」

提督「私は、磯風の、手料理を食べたい。以上」

磯風「……了解した。秘書艦磯風、全力で任務を遂行する!」ビシッ


磯風「……」


トントントントントン


磯風(なぜだろう。なぜなのだろう)

磯風(この磯風は、望月らが言うところの、所謂『メシマズ』だ。その程度の自覚はある)

磯風(なぜ。なぜ浦風でも谷風でも浜風でもなく、この磯風に、司令は)

磯風「……」

磯風「いや、ない。それはない」


ジュージュージュージュージジジジジジジ


磯風(浦風のような包容力があるわけでもない)

磯風(谷風のような愛嬌があるわけでもない)

磯風(浜風のような健気さがあるわけでもない)

磯風「……」

磯風「武。それしかない」

磯風(私にはそれだけしかない)

磯風(戦闘以外のことを、期待されても、困る)

磯風「だからない。ないんだ。そんなこと、あるはずがないんだ……」ブツブツ


磯風「待たせたな、司令」

提督「待ちました」

磯風「今夜の品書きは焼き鮭、豚の生姜焼き、味噌汁、ほうれん草のおひたし、そして白米だ」

提督「おいしそうだ」

磯風「……一応、浜風らの助言を思い出してだな。この磯風でも製作するに差し障りのない品を」

提督「いただきます」ペコリ

磯風「おい」


提督「まずは焼き魚」モグ

磯風「……」

提督「続いておひたし」パク

磯風「……」

提督「そして生姜焼き」モグモグ

磯風「……」

提督「味噌汁に口をつけて」ズズ

磯風「……」

提督「ご飯を一口」ゴックン

磯風「……」

提督「……うん」コクリ

磯風「」ビクッ




「おいしい」



磯風「」パァァァァァ

提督「……」ニコニコ

磯風「」ハッ

提督「……」ニコニコ

磯風「ま、待て。落ち着け司令」

提督「私は落ち着いている。磯風こそ落ち着くといい」ニコニコ

磯風「磯風は常に落ち着いているさ。皇国軍人はうろたえない」

提督「そうか」ニコニコ

磯風「そうだ」フンス


磯風「……ではなくてだな。司令、世辞はよせ」

提督「世辞?」

磯風「この磯風、己の腕の程は自覚している。無論秘書艦としての責務を果たすため、拙いなりに日々訓練は積んでいるが」

提督「ふむ」

磯風「一朝一夕に解決する問題でないことなど重々承知だ。訓練により多少挽回できていたとしても、満面の笑みで『おいしい』と言ってもらえるほど、満足いく代物ができたとはどうにも」

提督「おいしい」

磯風「……」


提督「磯風の料理はおいしい」

磯風「……」

提督「私は磯風の料理に満足している」

磯風「ん……」

提督「磯風が、私のためだけに腕を奮ってくれた。この上ない幸せだ」

磯風「そ、うか」

提督「それでも磯風が自分に自信を持てないなら、何度でも練習すればいい。私がいつでも、何回でも、食べてあげるから」

磯風「……え、へ」ニヘラ


磯風「! んっ、ん、んん゛!」コホンコホン

磯風「申し出は、有り難い。ただなんと言われようとも、やはり、磯風の料理には客観的な問題があるように思う」

提督「そうか……」

磯風「おいしいおいしいと鸚鵡のように繰り返されても、その、なんだ。困るんだ」

提督「本当においしいと思っているんだけどな」

磯風「あ、うん……ではなく! 少しでも物足りないところがあれば、遠慮なく指摘してもらいたい」

提督「わかった」


磯風「……なあ司令」

提督「なんだろう」

磯風「司令は、この磯風の料理が食べたいんだな?」

提督「何度もそう言っているじゃないか」

磯風「磯風が望めば、毎日でも食べてくれるんだな?」

提督「少し違う」

磯風「え」

提督「私が望むから、私に毎日、磯風の手料理を食べさせてほしい」ニコ

磯風「あ……ん。そう、だな。そういうことだな」

提督「そういうことなんだ」


磯風「なぜだろう?」

提督「好きだから」

磯風「つまりだ。なぜ司令は、そうまでして私の…………………………ん?」

提督「磯風が好きだから」

磯風「……」

提督「……」

磯風「……」

提督「ところで今さらだけど、磯風は夕食、食べないのか?」

磯風「……」

提督「磯風?」

磯風「失礼する」


ガチャ バタン


提督「……」

提督「」ホッペポリポリ

提督「……」

提督「」アタマカキカキ

提督「……」













提督「はぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ……」グッタリ


浜風「あの、磯風?」

磯風「どうかしたのか浜風」

浜風「こちらの台詞だけど……」

磯風「私のなにがどうかしてるというんだ浜風」

浜風「……ええっと」

磯風「なにも言えないなら私はなにもおかしくないということだなそうだなそうだろうそうなんだぞ浜風」

浜風「はあ」

磯風「……」

浜風「……」

浜風(どうして枕を顔の前で抱えたまま微動だにしないんだろう……)

         _______
        /       \
     / ,.. -‐‐- 、   \
     }∠,..艦__これ_ \    \
     /.:.:.:./ \|\:.:.:.\\    ,
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.    i:人| U    U  l:.:.:Λ:‘,/
  <人(          ,':.:./__):.∠ニZ
   /:.个: . __▽__ ,./:∠:._{>o<} <次は大鯨だと約束したな

    {:.:.:‘,( ) ( )__L/´    /:.:.|
   人:.:.:.: (・x ・l ト--{〉   ノi:.:./ <あれはウソだ
    `¨¨´|   |___,.{   、_,.ノ
        |   |   \
        |   |___ __/
       /   | |_|
     ⊂ノ⊂ノ 」.|



はい、というわけで磯風と単縦陣提督スレです
大鯨?なんのこったよ

あ、酉違いますが前作は一応これでした↓
阿武隈「前髪いじるのやーめーてー!」提督「うりうり」
阿武隈「前髪いじるのやーめーてー!」提督「うりうり」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1450/14506/1450604099.html)

このスレにはもう2、3回投下します
ご一読ありがとうございました


ずっと大鯨でさがしてたやんけ
別ので酉変わってんの気づいてよかった

>>24
前スレから誘導しそこねたのは初めてですが、ちょっと後悔してますねー
スレ立てだけでもさっさとやってしまうべきでした


磯風「本日の昼食も磯風が担当した。召し上がれ」

提督「いただきます……うん、おいしい」モグモグ

磯風「口に物を含んだまま喋るものではない。行儀が悪いぞ、司令」

提督「……」ゴックン

提督「申し訳ない。でもおいしい」

磯風「……」

提督「……」モグモグ


磯風「それで?」

提督「?」モグモグ

磯風「なにか言うことは?」

提督「」ゴックン

提督「おいしい」

磯風「他には?」

提督「おいしい」

磯風「……」ジー

提督「……焼き鮭の表と裏の区別が付くようになると、より良くなると思う」クロコゲー

磯風「だよなぁ……」

訂正

焼き鮭→焼き魚


磯風「時に聞きたいのだが」

提督「?」

磯風「司令の胃袋は鋼鉄でできているのか?」

提督「どうだろう。腹を捌いて中身を確かめたことまではないから、なんとも」

磯風「はあ」

提督「ただ子供の時分から、普通の白飯をこんなに美味しそうに頬張る子も珍しい、とはよく褒められていた」

磯風(褒められていたかどうかは……いや、おそらく褒められていたんだな、それは)

提督「……」モグモグ

提督「」ニコー

磯風「」ニヘラー

提督「なにか嬉しいことでもあったかい」

磯風「いや、別に、なにも」


提督「ごちそうさまでした」ペコリ

磯風「お粗末さまでした」ペコリ

提督「……」

磯風「お粗末さまでした」

提督「……」

磯風「……」

提督「なぜ二回……」

磯風「大事(だいじ)な上に大事(おおごと)だったので……」

提督「そんな自虐しなくても……」


磯風「自虐もしたくなるさ」

提督「私は得しかしてないんだけどな。もっと自信を持てばいいのに」

磯風「ううむ」

提督「私は、焦げた秋刀魚を片手に爽やかに笑う、そんな磯風が好きだよ」

磯風「……」

提督「……」


シーン


提督「ごめん、やっぱ今のなしで。TAKE2」

磯風「はあ」


提督「私は得しかしてないんだけどな。もっと自信を持てばいいのに」

磯風「そこからやり直すのか……」

提督「私は得しかしてないんだけどな。もっと自信を持てばいいのに」

磯風(司令も大概、単縦陣しか知らぬ御仁だな……)

提督「磯風」ポンポン

磯風「わふっ!?」

提督「……」ナデナデ

磯風「……司令。そういうことは、私が笑っているうちに」

提督「私は、いつもの、威風堂々としている磯風の方が――好きだよ」

磯風「……」

提督「……」


提督「磯風」

磯風「なんだ」

提督「前が見えない」

磯風「なんと。いったいどうしたんだ」

提督「いや、あの。磯風が」

磯風「磯風がどうしたというんだ」

提督「磯風が、ええっと。精一杯背伸びして、両手で私の目を覆ってしまっているから」

磯風「……」

提督「前が見えない……んだけど……」


磯風「待ってくれ」

提督「え?」

磯風「いいから!」

提督「はい」

磯風「……」

提督「……」

磯風「司令、の」

提督「?」

磯風「司令の望む、磯風に。すぐに、戻るから。だから、今だけは」

提督「……」

磯風「も、も、もう少し……磯風に、時間を、くれっ」

提督「わかった」


チュンチュンチュン


磯風「本日も朝食は、この磯風が担当した。召し上がれ」

提督「いただきます」モグ

磯風「……」

提督「おいしい」ニコ

磯風「そうか」ニコ

提督「うん」

磯風「他に言うことは?」

提督「……」マジマジ

提督「魚の裏表が、わかるようになってる」

磯風「」ドヤァ…


提督「さすがは磯風」

磯風「ふ」

提督「やっぱり磯風」

磯風「ふふっ」

提督「すげえよ磯風は……」

磯風「ふっふっふ」

提督「でもこの白米なんかガリガリいってる」モグッガリッ

磯風「……すまない」ションボリ

提督「でもおいしい。磯風の炊いてくれたご飯だから」ニコニコ

磯風「……」

提督「磯風、前見えない」

磯風「し、知らん!」

以前のような更新速度は望むべくもないなぁ、と我ながら思います
ご一読ありがとうございました


磯風「司令。本日の夕食も、この磯風が……む?」

磯風「」キョロキョロ

磯風「!」

提督「zzz」

磯風「いいご身分だな。人に夕餉を作らせておいて、自分はソファでうたた寝とは」クスクス

提督「zzz」

磯風「まったく。盆はこちらに置いておくぞ」コトン

提督「zzz」

磯風「……」


ストン


提督「zzz」

磯風「まったく。まったく。仕方のない御仁だな」

提督「zzz」

磯風「起きたら説教だぞ。わかっているのか、司令?」

提督「zzz」

磯風「軍の寄る辺は信賞必罰。罰としてその按配の良い肩、磯風の枕として借り受ける」コテン

提督「zzz」

磯風「……」


磯風「司令、起きろ」

提督「zzz」

磯風「せっかくの食事が冷めてしまうぞ」

提督「zzz……」

磯風「白米はふっくら、粒が光り輝いて見えるようだ。洗剤は使ってないぞ。今日は使ってないぞ。だから美味しいぞ」ドヤァ

提督「zzz」

磯風「聞け、司令。『味見』なる調理の一極意、ついにこの磯風も習得したぞ。おひたしだろうが味噌汁だろうが生姜焼きだろうがまとめてかかってくるといい……その分調理時間は三倍増しと相成ったが」タラリ

提督「zzz」

磯風「……貴方が褒めてくれた、焼き秋刀魚。少々季節外れと思うだろうが、最高の出来栄えと自負している。だって、貴方のためだけに焼いたのだから」ニコ

提督「zzz」


磯風「貴方のおかげだ」

提督「zzz」

磯風「貴方が、そうさせたんだ」

提督「zzz」

磯風「誰かに食べてもらうための料理を作るのは、楽しいな。あたたかいな。貴方が教えてくれたんだ。あの、白米をいっぱいに頬張っている時の、あの笑顔で」

提督「zzz」

磯風「司令。いつかの返事、今させてもらうよ。一度しか言わないからな。聞き逃さないように」スゥ…

提督「……」





「これから先もずっと、磯風は貴方だけの担当だ――お慕い申し上げております、司令」




磯風「……」

提督「……」

磯風「司令。なにか言うことは?」

提督「zzz」

磯風「いや、今さらZ旗を並べられても」

提督「……バレてた?」パチ

磯風「柄にもなく小細工を弄するからだ。バレバレだったぞ」

提督「いや、一応『ご飯冷めるよ』のあたりまでは本気で寝てたんだけど」

磯風「えぇ……(困惑)」


磯風「まあいい、食事にしようか。さあ、あっちの席に」


ギュッ


磯風「」

提督「待って」

磯風「……待っても、なにもないだろう。背後からの奇襲とは、卑怯だぞ、司令」

提督「ごめん。でも、言いたいことがあるから、聞いてほしい」

磯風「はぁ。好きにしてくれ」

提督「わかった。好きにする」

磯風「……待て。やっぱり少し心の準備を」





「俺のために、一生、お味噌汁を作ってください」




提督「……」

磯風「……」

提督「磯風。なにか言うことは?」

磯風「私が言うのもなんだが、司令」

提督「うん」

磯風「たまには、単縦陣以外を使うことを、覚えたほうがいい」

提督「はい。ところで磯風」

磯風「どうした」

提督「顔が見たい」

磯風「~~~ッ!! ま、待っ、それは、ちょ」アタフタ


提督「ダメかな」ギュッ

磯風「だ、だって、前は」

提督「ああ、うん。前の時はやめた。我慢した。磯風が嫌そうだったから」

磯風「今だって、嫌なものは嫌で」

提督「今度は我慢できない。見たい。磯風が今どんな顔してるのか、見てみたい」

磯風「……」

提督「ダメかな」ギュー

磯風「……」


提督「」モグモグモグモグ

提督「」ゴックン

提督「おいしい」ニコッ

磯風「司令はいつもそう言うだろう」

提督「今日はいつもの千倍おいしい。だって磯風が私の真正面に座って」

磯風「皆まで言わなくていいから。さあ、次はどれがいいんだ?」

提督「いやいや、次は私の番だ。ほら、磯風こそなに食べたい?」

磯風「……うう///」マッカッカ

提督「」ニコニコ


磯風「楽しいか、司令……?///」

提督「とても。でもなんだかんだ私も恥ずかしい」ニコニコ

磯風「よし、じゃあやめようか」

提督「それはさておき、あーん」

磯風「……」

提督「あーん」

磯風「///」

提督「磯風」

磯風「///」フルフル

提督「私が笑っているうちに、諦めよう。な?」ニッコリ

磯風「」


艦!

         _______
        /       \
     / ,.. -‐‐- 、   \
     }∠,..完__これ_ \    \
     /.:.:.:./ \|\:.:.:.\\    ,
    ,′i:/n    n\i:.:.:.:.i‘,  }
.    i:人| U    U  l:.:.:Λ:‘,/
  <人(          ,':.:./__):.∠ニZ
   /:.个: . __▽__ ,./:∠:._{>o<} <磯風はかわいいなぁ!

    {:.:.:‘,( ) ( )__L/´    /:.:.|
   人:.:.:.: (・x ・l ト--{〉   ノi:.:./ <かわいいなぁ!
    `¨¨´|   |___,.{   、_,.ノ
        |   |   \
        |   |___ __/
       /   | |_|
     ⊂ノ⊂ノ 」.|



特にドヤ顔がかわいいなぁ!
というわけで磯風スレ終了でございます
ご一読ありがとうございました

次回未定ですがそんなに間を空けずに来られそうです
まあ予定は未定なんですが
ではまたいつか

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月29日 (火) 10:23:08   ID: h56b1ZM2

新スレ来た!
今回も砂糖吐かせてもらえるんだろうなー(糖患並感

2 :  SS好きの774さ   2016年04月15日 (金) 00:04:19   ID: wgfAkGXl

待ってた甲斐あったわー
磯風かわええ

3 :  SS好きの774さん   2016年07月07日 (木) 02:09:57   ID: FFVnzQFk

更新こないなぁ…
無事か心配です

4 :  SS好きの774さん   2016年09月04日 (日) 01:54:32   ID: ymCjpvs8

更新まだかな…

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