女「依頼が無いならせざるを得ない状況を作るのよ!」男「この悪徳ギルドマスター!」 (100)

女(ギルドマスター)「魔物を誘導して町襲わせるとかどうよ」

男「どうよじゃねえよ。犯罪とかそういう規模じゃねえぞそれ」

女「君がそういうことを言うなんて意外だねえ。誰だっけ?前回いたいけな少年に死刑レベルの罪をなすりつけたのは」

男「お前がそういう依頼を取ってきたんだろうが!」


女「しょうがないじゃない。ここにくるクエストは大抵黒い仕事ばっかりなんだから」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1458954486

男「そもそも俺魔物を操る術も技術も持ってないから」

女「じゃあ何かしらの事件を引き起こしてきなさいよ」

男「断る!っつか仮に事件起こしたとしてウチに依頼が来るとは限らないだろ」

女「それは盲点だった…」

男「このダメ経営者は…」

女「大体だよ?私はギルドを立ち上げれば依頼がドバドバきてガッポガッポと思っていたんだよ」

男「よくそんなフワフワした理由で始めましたね」

女「それがどうだい!この様だよ!」

男「うん、知ってる」

女「何か案を出せ!」

男「…ギルドマスター入れてたった二人のギルドなんかギルドと認識されねえよ。もっと人員増やせばいい」


女「男くん、私はね…君と二人きりでいたいんだよ。私生活でも、仕事でも」顎クイ

男「女…」




男「本音は?」

女「報酬の取り分減るじゃない!給料なんかこれ以上払いたくないわよ!」

男「というか今でさえ7:3じゃないか。せめてもう少し貰ってもいいと思うんだが」

女「そうだね。これ以上人員を増やそうものなら君の取り分がさらに減るよ」

男「鬼!悪魔!魔物!」

女「ふはははは、もっと言いたまえ」

男「そもそもギルド経営者には国から援助金が出ているだろが!7割もぶんどる必要がどこにある!」

女「このギルドは対象外なのよー」

男「嘘つけ!」


女「その代わり私とここで二人暮らし出来るからいいじゃない。食費光熱費全部私持ちよ」

男「……」

女「ほうら言い返せない。分かったらとっとと酒場のクエスト掲示板でも覗いてきなさい。ほらハリアップ、ハリアップ」

普通ギルドには「きちんとしたところに頼みたい」という顧客から依頼が来るためギルド所属員は酒場のクエスト掲示板など利用しない
町民権を得てない流れ者、引っ越してきたばかりの人、冒険者やフリーのハンター、ギルドに所属できない少年等が利用するのが普通だ

つまり俺みたいなギルド所属のハンターが来ると


女将「お、来たわね。乞食ギルド」

男「その呼び方やめてくれませんか!」

さっそくこういう扱いされる。酷い


用心棒「相変わらずのようだな、お前も」

男「ああ、飲まなきゃやってらんないね」

ついでに飲んでしまおうと用心棒を専門としている知り合いのいる卓に座る


用心棒「もういっそやめちまえばいいじゃねえか。お前の腕ならどの大手ギルドでも雇ってくれるだろ。この間も誘われてなかったか?」

男「ふ…俺はあんなクソギルドマスターだとしても女を愛しているからな。一人にはしておけないさ」


用心棒「へー。……で、本当のところは?」

男「通帳と印鑑とハンターバッジと町民証書と盗賊時代の特にヤバイ犯罪の動かざる物的証拠を握られてて逃げられない」

用心棒「詰みじゃねえか」

男「うん、完全に詰んでる」

用心棒「でも美人じゃねえか」

男「そうだよ?」


用心棒「濡れたような美しい黒い髪」

男「吸い込まれそうな深い夜色の瞳」

用心棒「幼さを残しつつ大人びた感じも時折見せる端麗な顔立ち」

男「艶めかしく麗しい唇」

用心棒「抜群のプロポーション」

男「近づくと良い香りもするぞー」

用心棒「妖艶な目つき」

男「俺にしか見せない一面も可愛くてねえ」


用心棒「ノロケ話しか、死ねクズ野郎」

男「はっはっは、羨ましいか?」

用心棒「ぶっちゃけ羨ましい!」

男「じゃあ代わってやろうか?」

用心棒「断る。あの人にこき使われるぐらいならゴブリンの女を娶った方がマシ」

男「だよなあ。俺もオークのメスの方がまだマシだわ」

『ギャハハハハ!』

用心棒「ところで男よ、真後ろ」

男「うん…気配は感じていた」


女「…………やあ、お と こ く ん」


男「用心棒、今すぐ俺に雇われてくれ!銀貨5枚くれてやる!俺を守れ」

用心棒「悪ぃ、俺今日オフなんだわ」

男「この裏切り者!」

女「そんなゲスいことを普通に言えるならゲスい依頼を受けることも出来るよね?」

男「…うわあ、そうなるかあ」

女将「おやいいの?こっちで見合うの用意したんだけど」

男「そっちがいいです!」

女「ダメ。ギルドに直接来た依頼が先決」

男「あーん、クリーンな仕事ー」

女「残念でした。別に仕事ならなんだっていいじゃない。今回は結構楽だと思うし」

男「毎回毎回汚い仕事ばっかりじゃ足を洗った意味ないじゃないか!」

女「誰が足を洗えなんか言った。私は君を拾っただけだよ」

男「縛り付けたの間違えじゃあるまいか!」

ギルド本部(我が家)

男「で、いったいどんなゲスな仕事を持ってきたんですか…」

女「貴族の実子の誘拐だ。依頼主に引き渡すだけの簡単な仕事だよ」

男「身代金目的かな」

女「さあどうかなあ。貴族への復讐とかいって殺す可能性もあるし何しろ美しいお嬢さんだからね…色々されちゃうかも」

男「それあれだよね?じつはその貴族って悪い奴らなんだよね?」

女「いや、善人だよ」

男「善人と思わせておいて裏では悪い奴らなんでしょ?」

女「全く落ち度のない良い人たちだよ。恨まれる箇所なんて地位ぐらいしかないだろうね」

男「実は食い倒れを拾って晩餐に招待すると見せかけて地価の拷問室に連れて行ってリョナるのが趣味の一家とか!」

女「どこの漫画だ!いいかげん現実を直視するんだ!」


男「…嫌な現実だ。ゲスい顔が目の前に」

女「ていっ」ドガッ

男「ぐふぉるばぁっ!」

女「男よ、君はあの時私のために、愛のために悪に落ちると誓ってくれたではないか!」

男「してないです」

女「男、復讐のために悪に落ちると」

男「言ってない!」

女「死んだ君の妹は無念に思ってるぞ!」

男「元々いねえ!」

女「もうコント飽きた―。そろそろ了承してよ」

男「はぁ…結局汚れ仕事か」


女「汚れ仕事なんてかっこつけた言い方しちゃダメだよ。私たちがするのは単純な悪事だ。悪の片棒だ。正当化の余地も全く無いクズの極みだよ」

男「…」

女「悪は死ぬまで悪のままさ、足なんか洗わせてやるもんか。大盗賊の男くんや」

男「…分かってるさ。やるよ」

女「よしっ、これでゲスい仕事への抵抗も消えたね。さあドンドン稼ごう―!!いえーい」

男「…あれ、これ弱みに付け込まれた?いつの間にか誘導されてた?」

男「もしかして俺を拾ったのって犯罪に対して抵抗が弱いからじゃ」

女「そんなことないよー」

男「俺を拾ったのって殺人し慣れてるからじゃ」

女「そんなわけないじゃん。愛しているよ。男」


手を男の頬に当て顔を近づける女


男「すげえ、ここまで信用できない愛の囁き初めて見た」

女「酷いっ!」

男「…俺のことが好きなんですよね?」

女「好きだよ。愛してる。うん、愛してる愛してる」

男「じゃあキスしてくれます?」

女「おっとそろそろ件の客が来る頃だ。依頼の返事と細かい段取りと報酬の話をするからね」

男「あ、逃げた!」

女「はっはっは。安心してくれたまえ。お金はきちんとぶんどっておく」

男「卑怯者!」

―――――
―――

よし、男は隣の部屋に鍵かけて閉じ込めた

あのちんぴらたちを男には合わせたくない
男を知っていたらと思うと怖い。どこで怨みを買っているか分からない過去を生きていただけに

だから依頼主にはめったに男を会わせない

かといって何かありそうだったらそいつらを殺せばいいだけなので特に問題は無いが


依頼主1「で、いいんだな?」

女「ああ、伝えた通りだ。受けよう」

依頼主2「すげえな。本当に金さえ積めば何でもしてくれるんだ」


「金さえ積めば何でもしてくれる」
これは馬鹿共有の自己紹介みたいなもんだ

ギルドの決まりでは依頼主がどんな犯罪者でもそんな犯罪依頼だとしても守秘義務がある
そんな犯罪を助長するようなルールが世界ギルド協会から出ているというのだから不思議な話だ

そんな台詞を吐くのはそんなことも知らない馬鹿だけ。ついでに組織ではなく個人だということも分かる

もちろんその決まりは一般人は知らない。でも犯罪依頼するのならばちょっとは調べておくべきじゃないかと私は思う


女「ただし、口止め料も含めてお高くなるよ?」

依頼主1「ああ、それさえ払えば信頼できるって聞いているからな。もちろん払うぜ」


知らない連中は口止め料と称すれば少々お高くしても怪しまれず恨まれず


ふふ、間抜け面の馬鹿連中相手の商売はやめられない

―――――
―――

ガチャ

女「やあ、終わったよ」

男「毎度毎度閉じ込める必要はどこにあるんだか」

女「ゲスすぎる内容を聞いて君がやる気を無くしちゃわないようにだよ」

男「俺の目の前に見ているだけでやる気が失せそうなゲスい人物がいるんですがそれは」

女「今すぐゲスい拷問をしたくなってきた。さあ実験体に」

男「すいませんでした!」

女「よし、キスしよう」

男「ぶっ!」

女「どうした?君から言い出したんだろ?ほら、チューしろ」

男「その流れでするか!唐突すぎるわ!」

女「ほら、口先ばかりで出来ない」

男「ぐ…卑怯者が」

女「じゃあ私の勝ちってことで」

男「勝ちって何だ勝ちって。勝負なんかしてねえぞ」

女「私はしているつもりだったのよ。君がしてないと思っていてもね」

男「ぐ…ぐ、ぐ・・・ぅ」

女「さあて、優越感に浸ったまま仕事の話でも」


チュ


男「こ、これでいいんだろ。俺の勝ちだ」

女「…いやぁ、私の勝ちだよ」ニマニマ

男「?…あっ!」

女「所詮君は私の掌の上なのだよ」

男「くっそがぁぁあああ!」

女「さて、今回の報酬は8:2だね」

男「いやそれは無い!あってはならない!」

女「さて、話は逸れたけど仕事の話だ」

男「逸れたのは誰のせいだ」

女「セレスティアナ家、かなりの地位の貴族だが、そこのご令嬢を誘拐して依頼主に引き渡すまでが仕事だ」

男「引き渡した後は?」

女「身代金請求らしいよ。良かったね。殺すのもレイプもやるとは言ってなかったよ」

男「言ってない。ねえ」

女「変に正義感や良心の呵責を出すなよ?大盗賊」

男「へいへい。衛兵やら警備兵やらは?」

女「殺しても殺さなくても構わないけど君の盗賊としての腕と本能を抑えられるかな?」

男「無理だな」

女「だろうね」

男「はあ、クリーンな仕事は来ないのか」

女「仕方ないじゃない。ここには」


女「黒い仕事ばっかりが来るんだからさ」

男「じゃ、行ってくるよ」

女「あ、依頼主への引き渡しは私がやるから君は指定の位置まで運んでくれ」

男「俺が渡しに行くからいいよ」

女「ダメだ。私がギルドマスターだ。私の手柄だ!」

男「出たよゲス根性」

女「君に報酬をちょろまかされても困る」

男「あんたじゃあるまいしそんなことするかよ!」

女「そんな…私のことを信じられないっていうの…」

男「信じられたいならまず相手を信じるところから始めようか」

前作はありません
男の現役盗賊時代の話や女との馴れ初めは今のところ書くかどうか未定です

あった
洒落た扉の文様。可愛らしい文字で「勝手に入らないで」と書かれた札がドアノブにかけられている

女の子の良い匂いがする。変態じゃないよ、盗賊の鼻だ。財宝も人も嗅ぎ分ける


開錠魔法は対策されているな
ならピッキングだ

カチカチ、カチっとな

シャンデリアに高級な家具と愛らしいぬいぐるみに囲まれ天蓋付きのベッドに横たわる人形のような少女

眠りを長引かせる魔法をかけてこっそりと連れ出した


あとは慌ただしく駆け回る警備兵を尻目にさっさとおさらばだ

―――――
―――

女「やあ男くん。楽勝だったようだねー」

男「まあな。ほら」

女「お姫様抱っこなんてずいぶん優しいじゃん。私もしてほしいなー」

男「絶対やらねえ」

女「で、殺さずには出来た?」

男「…」

女「ほらね。結局君は無駄な犠牲は出さずになんて善人行動は無理なのよ」クスクス

女「じゃあ後は私に任して。依頼主に渡してくる」

男「俺も行くよ」

女「先に帰ってて」

男「何でだ?」

女「いいから。ギルドマスターとしての命令」

―――――
―――

酒場

男「ってわけでよぉ!こんなん足洗ったって言えるのか!結局殺しまくりなんだよおお」

用心棒「でも楽な仕事だったんだろ?いいじゃねえか別に」

男「楽だからこそだよ。ブレーキかけられずに殺せるんだ!」

用心棒「しかしさっきから聞いているとむしろ武勇伝を語っているように聞こえるぞ」

男「そんな馬鹿な!」

用心棒「なあ、お前本当に足洗いたいのか?」

男「当たり前だ!殺したくない!クリーンな仕事したい!」

用心棒「まあ…諦めろとは言わねえよ。でもな、好きに生きるのが一番なんだ」

用心棒「普通じゃないから何だ。"好き"には良いも悪いも普通も異常もねえんだよ」

用心棒「表面上普通に生きようと取り繕ったって本当に好きなものからは離れられねえ」

用心棒「お前のことは俺だって良く分かってるつもりだ、無理せず正直になれよ」


男「用心棒…」

用心棒「ふ、柄にも無く励ましちま―

男「お前ホモなのか?男の俺にそんな好き好き言って(ドン引き)」

用心棒「人の優しさを何だと思っていやがるんだてめえはあああ!!!」

男「とりあえず俺はお前が好きなわけでも盗賊稼業が好きだったわけでも殺人好きでも無いからな」

用心棒「そろそろ本気でむかついてきたんだが」

男「いやさっきのはお前の言い方が悪い」

用心棒「もう何も言わん。せいぜい悩んで最終的に後悔しなければそれが正解だ」

男「…ありがとな、ちょっとは気が晴れた。今日は奢らせてくれ。そこのチーズだけ」

用心棒「全額とかせめて半額ぐらい言えないのか。しかも一番安いツマミだし」

~数日後~

女「男よ、今日はかなりマジメな話がある」

男「おう。聞いてやろうじゃないか」




女「………」

男「おい、言わないのか」

女「………」


女「…………無い」

男「………は?」

女「生活費が、ビタ一文たりともない」

男「…え」

男「前の報酬は?」

女「使い果たした」

男「その前の報酬も残っているはずだろ」

女「使い果たした」

男「一か月前のでかいヤマだけでも一年豪遊できる金額手に入ったはずだが…」

女「使い果たした」


男「」

女「テヘペロ♪」

男「ふざけるなあああー!何に使った!言え!何した!ギャンブルか!ギャンブルなのか!」

女「違う!違うんだ!ボートレースなんか見に行ってないぞ!!」

男「競艇か!競艇であれほどの金を全額磨ったのか貴様あああ!」

女「違う!私は悪くない!あそこでタイタニックが氷山にぶつかって沈まなければ勝っていたんだ!」

男「何でそんな沈む未来しか見えない奴に賭けたんだよ!というか氷山がコース内にあるってどういうことだよ!本当にボートレースかそれ!」

女「当たれば300倍だったのに…」

男「大穴すぎるわ!」

男「はぁぁあぁぁ…」

女「男、気を落とすな。今すぐ闇金に行って金を借りてくるんだ」

男「何で闇金!?」

女「もうここまで来たらドン底まで堕ちようじゃないか。大丈夫、闇金相手なら裁判起こされる心配ないから安心して踏み倒せる」

男「お前ロクな死にかたしねえぞ」

女「と言うわけで獅厳龍会でも行ってきてね。金貨10万枚くらい」

男「そこ闇金じゃない!裏社会全てを牛耳っている元締めの元締め!カタギの人間が近寄っちゃいけないとこだから!」

女「毒を食らわば皿までだよ。チンピラもヤ○ザもすっ飛ばして大本営まで行っちゃおうじゃないか。ふふふふふ」

男「もはや意味不明!冷静に考えろバカ!」

女「大丈夫、指は10本あるんだ。エンコの一つ詰められようが替えはある」

男「指は10本あってもタマは一つしかねえんだよ」

女「私の名前は絶対に出さないで君名義で借りてきてね♪」

男「てめえが行けクソアm」

~ピンポーン~

男「まさか依頼に」

女「金づるだ!」

男「その言い方やめろアホ!」

「邪魔するぞ」


インターホンが鳴ってすぐにすぐに入ってきたその男

浅黒く長身で、ガタイのいい大男

顔はゴツく、グラサン越しにも鋭い眼光がそれだけで脅しになる程の迫力を放つ

傷だらけの腕にはタトゥーが掘られ、服には獅子と龍の文様が


「俺の顔は知っているな?」


裏世界には知らぬものなし、表世界にすら名を轟かせ、恐れられる存在

獅厳龍会、獄竜組組長「ヴィラン・G・ドレッド」


ヴィラン「最近我が獅厳龍会を嗅ぎまわっている奴がいるって聞いてな」

裏社会ナンバー2、その人だ

女「」
男「」ギャー

男「社長!俺外回り営業行ってきます」ダダッ

女「こんな暇つぶしギルドに外回りも営業もあるわけないだろ!私はちょっとギルド協会から支給品受け取りに行く用事があるけど!」

男「社長はお客様の相手をするべきです!それは俺が受け取りに行ってきます!」

女「ギルドマスターじゃないとダメなの!」

男「そんな決まりねえだろ!」


ヴィラン「おい、何をごちゃごちゃ言っている。俺は依頼しに来たんだぞ」

男「え?」

女「…お話をお伺いいたします(営業スマイル)」

女「なるほどなるほど。その嗅ぎまわってる小ネズミを調べてほしいと」

ヴィラン「ああ、調べてくれれば後はこっちで処理する」

男(ギルドというか探偵業務…)

ヴィラン「ここは金さえ積めば何でもしてくれる―」

女「$$!」

ヴィラン「―と言うと相当高額にぼったくられるという話も聞いている」


女(ちっ)

男(絶対にロクな死にかたしないな…というかこの人に危機感とかそういう概念は存在するのだろうか)

女「ところで一つ聞きたいのだけれど」

ヴィラン「何だ?」

女「そんな超大物がたった一人でこんなところにいることに来ることに疑問を覚えてさ」


いつの間にか表情も口調もいつも通りである。営業スマイルは5分と持たないらしい
不敵というか無謀というか。まあ、よく今まで生きてこられたなと思う


ヴィラン「会長から誰にも何も気取られるなと言われてな」

ヴィラン「大きなギルドだと誰に見られるか分かったものじゃない。かといって俺のような者が探偵社に出向くのも変に思われる」

女「なるほど。それでこんなちっちゃなギルドに」

ヴィラン「ああ、小悪党で知られるギルドだ。何かあっても対処しきれそうだと思った」

女「くふふ、小悪党だってさ?我がギルドのエース君?」

男「」ガーン

女「では任せてくれたまえ。すぐにでも成果をあげてみせよう」

ヴィラン「ああ。やってくれ」

女「金の方は」

ヴィラン「金貨50」

女「もう一声!」

ヴィラン「金貨53」

女「さらに」

男「それでいいです!」

ヴィラン「分かった。金貨53だな。また来るぞ」

女「ちょっと待って!」

ガチャン

男「ふー、行ったか」

女「邪魔してんじゃないわよ!せっかく金貨もっと踏んだくれると思ったのに!」

男「ふざけんな!これ以上俺の寿命を縮めるんじゃねえよ!」

女「しらないわ。私は金よ金!」

男「50あれば充分だろ!馬とセットで高級馬車買えるぞ」

女「ふ、もっと欲に忠実にならないと成り上がれないよ?」

男「お前はもっと堅実に生きないと早死にするぞ」

女「男が守ってくれるんでしょ?」

男「嫌です」

女「ま、仕方ないか。成功報酬として余分に請求しよう。ふひひ」

男「お願いしますこれ以上俺の心臓を攻撃しないでください」

女「本当肝が小さいねえ君は」

男「何でだろう、盗賊稼業やっていた頃よりスリルが強すぎる」

女「人間平坦な人生歩むよりスリルのある人生歩むほうがいいでしょ」

男「そういうレベルじゃない!」

男「ああもう、調査に行ってくるよ。ったく」

女「いやいや、待ちたまえ」

男「ん?」

女「実践や潜入調査は君の方が上だろう。しかし情報戦は私の方が上なんだよ」

男「つまり今回はお前がやると?」

女「そういうことだ。ところで男くんや、君はかっこいい女性は好きかい?」

女「仕事のできるかっこいい女性の姿、見せてあげよう」


そう言って特定の魔法を使わないと開かない隠し扉を開いて水晶を取り出す


男「そ、それは…」

相互連絡伝達用水晶

遠くにいる相手と連絡を取り合い会話できる便利な一般用品

それに女が特別な魔法をかけ、盗聴も探知も会話を聞かれることすら不可能な完璧な品へと改良した
こんなものを作れる人は世界に二人といないぞ!


今なら金貨5枚で売ろう!安い!

二つセットで買えば「これを読めば会話するだけで金貨を100枚単位で騙し取れる話術の本!(著.女)」が付いてくる!これで君も大金持ちだ!

女「ふっふっふー、始めるよー」

水晶が輝く。といってもただの連絡だ


女『やあお久しぶり。私だよ。うん、元気そうで何より』

女『いやいや、そのことじゃないんだ。別に気にしちゃいないよ』

女『まあそう気負うな。返済は一年後だろ?』

男(返済!?)

女『そうそう、利子は気にしないでいい。一年後に全額返してくれればいいんだからね』

男(利子!?)

女「利子が無いとは言ってないけど」ボソッ

女『ん?何も言ってないよ?』

男(うわー…)

女『で、エリア37と38、21-27の監視カメラのハッキングをしたいんだ』

女『簡単な話だ。魔力周波を合わせて入り込む。妨害魔力波長?突破は簡単だよ』

女『そう、魔力周波を教えてくれれば良い』

女『うん、会社の人間としては絶対に教えられないよね?でも個人としてはどうかな?君は私に借りがあるんだろ?』

女『そっかー、私も生活厳しくてお金がねー、そろそろ期日を早めようかななんて』

女『そう?いやあ悪いねえ。はっはっは』

女『じゃ、ばいばい』



男「女、最低だお前は」

女「え、聞こえないなあ?」

男「最低だ!」

女「聞こえなーい」

女「ま、監視カメラの映像だけじゃ足りないよね」

男「まあ確かに」


女『もしもし、久しぶりだね。うん、うん、じゃあまた甘えてもいいかい?』

女『そう、顧客名簿をこっちに転送してもらえればいい。うむ。ありがとう』


男「今度はどんな脅迫を」

女「やだなあ、これは脅迫じゃなくて普通の人脈だよ。さあどんどんいこうか」

女『こんにちわ、社長』

女『やだなあ怯えちゃって。かーわい♡』

女『何言ってんの?あなたが勘違いして一人で盛り上がっちゃっただけじゃない。良かったね、離婚まで行かなくて』

女『さて、証拠写真は色々あるけど?』

女『ふふ、消してほしかったらやれと言ったけどやったら消すなんて言ってないよ』

女『今回の望みを聞いてくれるなら…いいよ?』

女『おけおけ、じゃーよろしく』


女「くっくっくー、ちょろいねえ」

男「…」

女「ヤってないから安心するといい。キスもしてないし手も握ってすらいない」

男「それでどんなヤバいネタ写真を…」

女「知りたい?」

男「結構だ」

女『やあ、警察庁長官殿』

男(なんかとんでもない人物が!)

女『心配しなくていい。君の不正は過去のものであって今更問われるものではない』

女『そうかそうか、負い目に感じているのか。ならそれをチャラにしてあげるから手を貸してくれないかな?』

女『ありがたいねえ。じゃ、これからも正義のために頑張ってくれ。正義のためにね。元不正犯』


男「いつか酷い目に遭うぞ」

女「まも」

男「らない。むしろ逃げる」

女「さて、これで情報は集まった。後は重ねて合わせて間引いて考えて、だね」

男「これ全部汚い手で集めた情報なんだよな…」

女「全部じゃないよ。それに人脈は人脈さ」

男「人脈…ねえ」

女「さあとっとと犯人を当てて成功報酬5倍貰おう!」

男(報告する時は逃げておいたほうが良さそうだな)

後日

男「嫌だぁあああ。逃げるぅぅう」ググググ

女「許すわけないでしょ。ほら私と一緒にいなさい」ギギギギ

男「じゃあ約束しろ。無駄にお金を請求しないと」

女「うん、分かった」

男「あれ、いやに素直だ」

女「必要な程度にしか請求しないよ。元々そのつもりだったから!」

男「信用ならん!」

女「えぇ!?」

女「‥一緒にいてほしいな」上目遣い

男「却下」

女「据え膳食わぬは男の恥じゃ!」

男「俺の目の前にある据え膳には毒が入っているから食えないな」

女「ごめん、もっかい言って」

男「俺の目の前には毒膳しか据えられていないんだが」

女「ごめん、もう一回」

男「毒の入っている飯は食えないよ」

女「もう一回言ってよ」

男「黙れ毒飯!」


~ピンポーン~


男「っ!?」

女「よしっ、もう逃げられないよ!」

男「だっ、騙された!」

女「さて、私はお客様を迎えるから君はお茶の用意でもしていたまえ。キヒヒ」

男「このクソアマ…」

男「お茶が入りました」

ヴィラン「ああ。…死んだ目をしているがどうした」

男「イエ、オキニナサラズ」

ヴィラン「?」

女「それで、こちら等が件のそちらを嗅ぎまわっているネズミの写真になります」営業スマイル

ヴィラン「…まだ少年じゃないか」

女「一応成人はしているようです。よくある"成人しただけで何でもできるような気持ちに思っているアホな若者"でしょう」

男(女だってそれと全く同じノリで起業したくせに)

ヴィラン「それだけか?」

女「いえ、この少年は無償慈善団体"ミシリア"のメンバー。ただしそこの新米メンバーです」

女「幹部に極悪組織として獅厳龍会のことを話したけど何もしてくれないからいっそ自分だけで壊滅させてやろうと考えたとかそんなところでしょうね」

ヴィラン「…小物か、泳がせておいても実害はないな」

女「他にも家族の情報とか弱みとか友達関係とか諸々ありますよ
  これらはちょっと追加料金がかかりますねえ。銀貨5枚上乗せでどうです?ゲヒヒ」営業スマイルoff

ヴィラン「いや、いらん。これまででいい、邪魔したな」スッ

女「えっ、ちょっと待ってどこ行くの。まだ他にもお金を出していただけそうなものが」


そのまま帰ってしまう依頼人

男「いいじゃん金貨53枚もらったんだから。こんな簡単な仕事で」

女「もっと活躍して専属ギルドにしてもらう予定だったのに!」

男「お願いだから諦めて。心臓に悪い」

女「もっと図太く生きようよ」

男「俺にゃ無理っす」

数日後。別クエストの帰り

女「いやあ楽な仕事だったねえ。どいつもこいつも大ミミズ程度にビビりおって。ニヒヒ」

男「戦闘職の奴等が皆巨大怪獣の討伐に向かったからな
  クソっ、何で俺は呼ばれなかったんだ、全員参加の緊急クエストだってのに」

女「何故か病気で瀕死ってことになってたからねー
   まあ全員参加クエストの報酬なんて雀の涙だし他のクエストを受けていたほうが儲かるじゃない」←黒幕

男「まあ汚れ仕事じゃないだけいいか」

女「え、知らないの?あの大ミミズ、山に住んでる原住民には神の使いとして崇められているんだよ?あーあ、可哀想に」

男「」

男「…なんか今何か聞こえなかったか?」

女「うん、頭上だ」

男「…ああ」

<助けてー!


頭上を女の子が待って…いや落ちてきているのか!


女「空から落ちてくる系ヒロインか、最近見ないねえ。最後に見たのは夢食いメリーだったけなあ」

男「そんなこと言っている場合か!つか何の話だ!」

女「怪鳥に攫われたかモンスターに吹っ飛ばされたか気球からおっきちたか飛行魔法途中に魔力が切れたか」

男「いやそれよりどうやって助けるかでしょ俺の使える魔法が対処できないし道具も、えと、えと」

<何でもいいから!早くしてぇぇええええ

女「しょうがないなあ。ほれ、風魔法」


下から吹く風がふわりと降ってきた少女を捕まえ、ゆっくりと地面に連れてくる


少女「た、助かったぁ…」

女「で、どうしたんだい?怪鳥に攫われて途中で落ちたの?」

少女「会長?」

男「ん?」

少女「それよりここどこ?さっきまで私は家で…」

女「…」

男「…」


二人で顔を見合わせる男と女


女「…もしかして」

女「住んでいる場所は?」

少女「東京都江戸川区」

男「…住んでいる国は?」

少女「日本」

女「間違えないね」

男「ああ、異世界転生だ」

少女「え、そ、それってあ、あの…アニメで見た」

女「可哀想だけど、元の世界に戻った事例は私らが知る限りゼロだよ」

酒場

女「というわけで、ミリア、あなたのギルドにこの子住み込みでおいてあげたら?」

少女「え、えと、戦いとか魔法は多分できませんが…えと、その、料理とか掃除は出来るので!」

中型ギルド"シルビア"のギルドマスターが超丁度良くいたので捕まえて交渉しているところである

レイア「それはいいんだけどさ、その代わり訓練してもらうよ。戦闘も魔法も」

レイア「この世界で生きていくにはそれが必要だからね。ま、ゆっくりでいいよ」


優しげに微笑むレイアさん。いいなあ、ウチのギルドマスターももっと優しいお姉さんぽかったら…

女「男、何考えているの?」

男「いえ何も」

女「さあレイアさん、紹介料をもらおうか!」$$

レイア「紹介料言うなら即戦力になる奴じゃないとダメよ。その男君をくれるなら金貨20枚くらい弾むよ」

男(え、何で俺そんな高額なの)

女「却下。2000枚ぐらい無いとあげない」

レイア「そんなの出せるわけないじゃない。そんなに手放したくないの?」

女「そういうこと。いいからその子を紹介した分払いなさい。ほれほれ」

男「あんたら目の前でそういう話しするのやめろよ。少女ちゃん困惑してるぞ」

少女「え、あ、いや…私は……」

レイア「むしろ私が拾ってあげる立場じゃない、逆にその子に紹介料請求したら?
     私はついでに衣食住も保証してあげるしこの世界の知識や歴史も教えてあげるつもりだから」

レイア「ま、そんな境遇の子に請求できるもんならね」

女「お嬢ちゃんお金持ってる?」

少女「元の世界のお金なら」151円

女「ちっ」

レイア「躊躇とか同情心とか無いのあんた!」

男「そんなのあったら熱もありますよ、絶対」

レイア「ちょっとあんた来なさい」

女「え、ちょっ、何、何ぃ?」

レイア「少女ちゃんは先にギルドに行ってきてね。はいこれ地図と書状。書状を受け付けに渡せば何とかなるから」

少女「はい、ありがとうございます。そっちのお姉ちゃんも…えと、いつかお金出しますので!」

レイア「出さなくていいわよ。こんなやつに」

女「あ、じゃあ男君も帰っててね。夕ご飯は任せるよ」

男「へいへい」

レイア「さて、交渉といきましょう」

女「帰るわ」

レイア「待ちなさい」ガシッ

女「分かってるわよ、男は絶対渡さない」

レイア「ふふん、ここに金貨100枚あるわ」

女「却下」

レイア「男くんとお金どっちが好き?」

女「お金」

レイア「男くんとお金どっちが大事?」

女「お金」

レイア「男くんとお金どっちが大切?」

女「お金」

レイア「だったらよこしなさいよ!お金あげるから!」

女「んじゃ、ばいばい」

レイア「一度くらい男くんを答えてあげなさいよ…」

女「心配くてもお金以上の信頼があんのよ。弱みと言う名のねクケケケケ」

レイア「ツンデレセリフなのか本気のセリフなのかいまいち分からないわ」

女「それでいいのよ」

別の日


女「そこどけ!」

男「どかない!」

女「ふざけんな!」

男「お前がだ!」

女「カジノいかせろー」

男「お金大好きなら大切にしろおおおお!」

女「守銭奴とギャンブル中毒は両立できるのよ!」

男「出来るわけないだろ!真逆だわ!」

女「ふっ、君は実に馬鹿だなあ」

男「…じゃあご高説願おうか」

女「あっ、君の後ろに金貨137枚が入った袋が降ってきている!」

男「そんな子供騙し今時子供にすら効かねえよ!?」

男「…部屋の中に金貨300枚が入っている巾着袋が歩き回ってる」

女「うそっ!捕まえて締め上げて吐き出させるんだよ!」



男「よし」


バタン、ガチャ


部屋の中に入ってすぐに鍵を閉める。3重に。ついでに魔法結界も…女には効かないだろうけど


女「いないじゃないそんなの!」

男「いるわけないだろ。この手に引っかかるお前にびっくりだよ。しかもいましがた自分がやろうとした手で」

女「くっ、愚鈍で愚かで間抜けでとんまでアホで馬鹿でとんちきなオタンコナスに嵌められるなんて」

男「何とでも言え。お前はその悪口全部より下だと証明されたのだ」

女「……キス、しよう?」

男「はぁ?」

女「ほぉらぁ、目を瞑って?」

男「やめっ、やめろっ、来るなっ、お前の魂胆は目に見えているんだ…!」

女「そうかな…………………っ精神の動揺は絶好のチャンスだよ!精神掌握魔法!」

男「               」

数時間後

男「…くっそ!やられた!あっ、俺の財布までない…ぐっそぉぉおおお!」

男「この次こそは出しぬかれないように…いっそ魔法の師匠でも探すか…いやそれよりあのギャンブル中毒を矯正できないかと…」


男「…考えても仕方ない。どうせ勝てないんだ。夕飯の支度でもしていよ」

女「ただいまー」

男「おう、負けたか」

女「イエスっ!」

男「爽やかな笑顔と声でマイナスを答えるんじゃない!」

女「男くん、美味しそーな匂いがするよぉ。男くんの作る料理も料理人な男君も大好きだよー」

男「わざとらしすぎて飴にはならんからな!?飴と鞭ならもっと上手にやれよ!」

女「今日、一緒に…寝る?」

男「部屋も別々にしようか」

女「真逆の答えが返ってきた!?」

別の日

女「ただいまー、卵ゲットしてきたよー」

男「おお、じゃあ今日はオムライスにでもしようかなあ」

女「 」

男「どうした?そんな凶悪殺人鬼を見たような顔して」

女「こ、この卵を食べようだなんて…と、とんでもないことを!」


女が見せたそれは人間の頭大もある大きな卵

光沢のある黒にマグマのように脈打つ赤い模様、闇市でさえ見かけない…伝説の…


男「ドラゴンのタマゴ…しかも超希少種…」

女「こんな超貴重なものを食べようだなんて…お母さんそんな子に育てた覚えないわよ」ヨヨヨヨ

男「誰がお母さんだ」

女「さて、オムライスお願い!」

男「無理、絶対無理」

女「ドラゴンの卵ってさ、美味しいらしいんだよ…一生に一度も食べれないよこんなもん」

男「お前さっきなんつったよ!」

男「っつかそれどこで手に入れたんだ」

女「うん、今日の帰りさ?道でおじいさんが『この卵いらんかね。ヒェッヘッヘ』って売ってきたんだよ」

男「買ったのか!?守銭奴のお前が高いであろうお金を出して?」

女「いや、倒してタダでもらった。記憶消去魔法もかけたよ☆」

男「強奪じゃねえか!」

女「記憶消したもん」

男「猶更凶悪だ!」

女「いえいえ、あなた様の昔のご活躍に比べれば…」

男「お前の中での盗賊時代の俺はどれほどの大悪党なんだよ!」

パキ・・・パキ・・・

男「割れてきた!?」

女「わっはあ、調理器具持ってくるね」

男「違うっ!産まれてきているんだよ!」

女「おお、ドラゴンの幼生って食べられるのかなあ?」

男「食おうとするな!」

女「じゃあ売る手配だ!」

男「もっとダメ!捕まるから!」

女「バレないルートならごまんとあるのよ」ウヒヒヒヒ

男「そういう問題ではないです」

男&女「生まれた!」

ドラゴン「きゅぃー!」


高く可愛い声を上げて羽の生えたトカゲのような小さなドラゴンが現れる

黒い岩のような鱗、宝石のような瞳、鋼の爪と牙


ドラゴン「きゅぃぃ」

男「…可愛い」

女「可愛いねえ」


ドラゴン「かおーっ!」

ボァッ


女「」ス

男「あぢゃぢゃぢゃ!」


欠伸のように吐いた炎、被害者は男

男「今俺を盾にしたよなぁ!?」

女「まっさかぁ、運がなかったんじゃない?」

男「違う!お前はしっかり後ろから逃げないように押さえつけてただろ!」

女「竜は人の邪念を察知するっていうよ?」

男「だとしてもお前の邪念だろ!俺は潔白だ!」

ドラゴン「きゅぅ」スリスリ

男「ほら、俺には懐いている」ナデナデ


女「…もしもし、そう、君のルート使って―

男「止めろ馬鹿野郎!」バシン

女「あぁ!高級連絡用水晶が」

男「否認下で粗製乱造量産してるくせに何を…」

女「べーんしょ、べーんしょ」

男「子供か!」

ドラゴン「きゅぃ、きゅい!」

男「結局この子は俺らが育てることになるな。ここまで懐かれちゃあ」

女「ダメ!今すぐ売るの!」

男「ふざけんな!生き物をそんな物みたいな扱いしていいと思ってんのか。しかも竜だぞ竜。ただでさえ俺たち矮小な人間が触れるこt―


女(待てよ…確かドラゴンってつがいがいなかったら無性生殖で子をなせるはず…)

女(はっ)


女(裏ルートで超高価取引できる卵が無限に生み出される)ゴクン

男「お、おいどこ触ってんだよ」

ドラゴン「きゅぃぃ///」

女「…雌だ」スリスリサワサワ


女(金のなる木だ!金のタマゴを産むニワトリだ!)


女「飼うことを許可しよう!成竜になっても飼い続けよう!もちろん餌代養育費は全て君の給料から差し引いておくね♪」$$


男「何か分らんがお金関係の悪巧みをしていることだけは分かる」

別の日・酒場

男「よお暇人」

用心棒&女将『やあ乞食くん』

男「精神攻撃はやめろ!」

女将「言っとくけど紹介できるクエストは無いよ。一応ギルド所属なんだからフリーのハンターに譲ってあげて」

男「へいへい。飲みに来ただけだよ」

用心棒「おーけー飲み比べしようぜ!」

男「よっしゃきた!女将さんつえーのもってこい!」

用心棒「大量に持って来い!」


女将「はいはい、吐くんじゃないわよ」

用心棒「そういやお前と女ってどっちが強いの?やっぱりお前か?」

男「まさか。あいつには到底叶わねえよ…ってか勝てるならとっくに主従逆転させとるわ」

用心棒「へえ、そんなにか」

男「昔一度だけあいつが戦うところを見たことがあったけどな…舐めプで国一つ滅ぼして余裕って笑ってやがった」

用心棒「何それ怖い」

男「だいたい本気は見たこと無いからな…きっととんでもないことが…」

女将「はいそこまで。それ以上その話はしないで」

二人『え?』

女将「思い出したくないのよ。あれと二人でコンビ組んでいた時のこと」

男「マジすか!」

用心棒「女将さんがハンターしていたなんて聞いたこと初耳だぞ」

女将「そしてハンターをやめたきっかけでもあるわ。ずいぶん昔の話よ…」


女将「あれの本気は地獄の悪鬼ですらドン引くレベルよ。私の知らないところですら二度と出てほしくないわね」

女将「…だからこそ、本気出さないように守ってあげられる強い人が必要なの。そう、君ののようにね、男くん」

男「…いったい何なんだよあいつは」

用心棒「なあなあ、一つ聞いてもいいか?」

女将「ん?何だい?」






用心棒「あんたらいったい何歳なんだよ。女将さんも女も」

男「ちょっ、おまっ」


女将「」

女「」ニッコリ

>>93
訂正

×女将「…だからこそ、本気出さないように守ってあげられる強い人が必要なの。そう、君ののようにね、男くん」

○女将「…だからこそ、本気出さなくていいように守ってあげられる強い人が必要なの。そう、君ののようにね、男くん」

その後、用心棒は二ヶ月の間酒場には現れなかった

詳しくは知りたくない




女「何歳かって?」

女将「見た目相応だよ」見た目年齢20代後半

女「そうそう、見た目相応」見た目年齢10代後半


男「そ、そうですね…」

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