最上「まさか、車でも衝突しちゃうなんてぇ!」
最上「どうしよぉ~っ」ビェーン
………………
…………
……
チュン チュン
最上「…………はっ!」ガバッ
最上「…………」
最上「嫌な夢だったな……」ハァ
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最上「うぅ~」ゲッソリ
時雨「どうしたの最上?なんだか元気がないようだけど……」
最上「う、ううん、なんでもないよ!あははは……」
時雨「?」
時雨「まぁいいや、それより今度のピクニックだけど……」
時雨「すごく楽しみにしているよ」ニコッ
最上「うん、ボクも楽しみさ!」
最上「ここ最近は作戦だのなんだので、とても忙しかったからねっ」
時雨「そうだよね……ありがとう、最上」
最上「ん?なんでボクにお礼をするの?」
時雨「だって、車を出してくれるって言っていたからね」
時雨「……君が」
最上「えっ……」
最上(あれ、言ったかな?あれ?)
最上(……思い出した……確かあの時!)
最上(那智さんのお酒に付き合ったあとだったから……)
最上(酔った勢いで、任せといて!とかなんとか言ったような!)ガーン
時雨「免許を持ってるのも、ピクニックの参加者で最上だけだったし……」
時雨「皆もとても喜んでいるよっ」
最上「そ、そうかぁ……あはは」
最上(これは……マズイ事になっちゃったみたいだ!)オロオロ
<ゲイム…アァツ
<90シキハブリキカンダゼ
<アァァァァァァ!
提督「カシワギィィィィッ!」
ガチャ
最上「提督~っ!」
提督「うわなに吃驚した!」ビクッ
提督「俺は今から懐かしのセガサターンタイムに……」
最上「た、助けて~!」グスッ
提督「……はい?」
……
…………
………………
提督「なに……運転を教えてくれだって?」
最上「うん……」
提督「あれ、最上は確か免許は持ってたんじゃなかったかな」
最上「戦争が始まる前にとった奴ね……」シュン
最上「免許を取ってかれこれ二年近くはもう、車の運転なんかしてないんだよぉ」
提督(うわぁ……これは筋金入りのペーパーやでぇ……)ペロッ
最上「お願いだよ提督、皆の命がかかってるんだっ」
提督「それは大袈裟……でもないよな」
提督「うぅ~ん……」ムムム
提督「よし分かった」
最上「ほんと!?」パァァ
提督「……ただし!」
最上「た、ただし?」
提督「俺が行先を決める、それが条件だっ」
最上「行先かぁ……それは構わないよ」
最上「でも、どうしてまた?」
提督「私用で車を使いたいから、最上をダシにするってことだよ」
最上「はっきり言うね……」ガクッ
最上「まぁいいや」
提督「決まり!じゃあ、日にちは……」
……
…………
………………
提督「本日快晴ナリ、素晴らしいドライブ日和じゃないか……アッハァ~ン?」
最上「…………」ガタガタ
提督「当鎮守府所有の車は、ごくありふれた家庭用乗用車……」
提督「いわゆるコンプァクトカァ(ネイティブ発音)」
提督「ただハンドルを握っているだけでは発進しなーい、アンダスタン?」
最上「し、知ってるよ……」
提督「よ~しいい子だベイビィ」ニコッ
提督「だから早くキーを挿したらどうだ」
最上「あ、そっか!」
提督「えぇ……」
キュパパパ
ブォォォォン……
最上「うわぁ……久しぶりの運転だ……」ガタガタ
提督「ホントの本当にそのようだね」
提督「まぁ、あんまり焦んないで行けば、そうそう事故なんかしないよ」
最上「う、うん、がんばるよ」
提督「よしっ……じゃあ出ようかい最上さん」
ブォォォォン!
提督「うぉあ!」ガクッ
提督「タンマタンマ!」
最上「へ?」グッ
提督「敷地内は徐行してくれ~!」グスッ
最上「ふーっ、出られた!」ニコッ
提督(鎮守府を出るまで五分かかりました……)ゲッソリ
提督「とりあえず行先はナビさんに入れといたから、あとは所々で俺が指示するよ」
提督「この先はT字路だから、直線に入るまでに一旦停止してね」
最上「うん、わかったよ!」
最上「ここで停止……っと」グッ!
提督「モルスァ」ガックン
提督「うん、そうそう……」
最上「なるほど、こうやってゆっくり減速すればいいんだね……」
提督「止まるー!って瞬間に、一旦足をペダルから離してもう一度踏んであげるとガックンは無くなるよ」
最上(おぉ……実際に走ってる間はあんまり怖くないや)フフッ
提督「そら、右折レーンへ行くのだ」
提督「指示器指示器っ」
最上「う、うん!」カチッ
チッチッチッ
提督「そら今だっ」
最上「え、でも後ろに……」
提督「大丈夫、大丈夫だから!」
最上「え、えっ」オロオロ
提督「曲がれず直進しちゃったかぁ」
最上「ゴメンナサイ……」シュン
……
…………
………………
最上「踏切は前で一旦止まって……来てないね、行こうっ」
提督「……うん、よしよし」コクコク
提督「始めはどうなる事かと思ったけど、だんだん調子良くなってきたねー」
最上「ホント!?嬉しいなぁ!」ニコッ
最上「ところで提督……ボク達はいったいどこへ向かってるんだい?」
提督「まだ秘密だよーん」フフフ
最上「えぇー?」
最上(なんだよ……気になるなぁ)
最上(まてよ、そういえば……)
最上(よくよく考えてみれば、今……)
最上(車の中にはボクと提督の二人きりなんだよね)
最上(向かってる方角は、人気のない山の方……)
最上(それに、断片的に覚えてるぞ……たしか飲みの席で足柄さんが)
最上(『男は皆オオカミなのよ気をつけなさい』的なことを、ボクに言っていたな……)
最上(その時は冗談だと思って聞いていたけど……まさかっ)
提督「最上さーん」
最上(いやいや!それはないよ!)ブンブン
最上(この人はそんな人じゃないし!)
最上(そもそも、ボクみたいな女っ気のない艦娘が……)
最上(スタイルも良くないし、話し方も女らしくないし……)
最上(……そんなボクが提督のお眼鏡にかなうなんて……そんな……)シュン
最上(…………ってぇぇ、何を考えているんだボクは!)カァーッ
提督「おーい」
ププーッ!
提督「信号青なんだけど……」
最上「ハッ!すみましぇっ」ブォォォン
提督(噛んだな)
最上(うぅ~、またやっちゃった……)
最上(と、とにかく、一応ボクも女の子のはしくれなんだ!)
最上(注意だけは……しておこう)グッ
すこしはなれます
もがみん棒
僕もこうなる気はしたんだゾ
提督「もがみん、音楽かけよう!」
最上「も、もがみん……」ガクッ
最上「……まぁいいよ、自由にかけてっ」
提督「御意」
ヴェェェェェェェイィィィィィィィィィゥゥィィィィイイ
最上「!?」
タ-ンエータァァァァンタァンエェタァァァン
最上「……ねぇ提督」
提督「ヒデキだよっ(裏声)」
最上「なんか……これやめよ?」
提督「そんなぁ」
シェケオッフ シェケオッフ♪
最上「ふふ~ん♪」
提督「女子大生みたいな選曲をしおってからに……」
最上(ボクだって女子だもん)ムッ
ブォォォォォォォォォォォン!
提督「おぉ、すんごいロータリーサウンドだなー」チラッ
提督「今は亡きRX-8か、いいなぁ……」
提督「俺も戦争が終わったら、あんな車に乗ってみたいね」
提督「最上なら分かってくれるよな?男のロマン」
最上「いや、うん……分かんないかな」アハハ…
提督「むっ、最上でも分からないか……」
最上「“でも”って何さ、でもって!」
最上(ボクは異性として見られていない……うん、間違いないね)
最上(なんか……逆に悔しくなってきたぞ……)ムムム
提督「よし、じゃあここで高速に入ってね」
最上「え、こ、高速乗るの……?」
提督「目的地まで60kmあるからねー」
最上「ろ、ろくじゅ……」
提督「実際は下道の方が危ないんだからな?」
最上「そうなんだ……」
提督「ほら、ここ左!」
最上「う、うん……」ビクビク
提督「今から合流だから、絶対止まっちゃダメだよ」
最上「ひえぇぇぇっ!」
最上(怖いよおぉ!)グスッ
提督「よくできましたっ」
最上「ハァ……ハァ……」
提督「合流の時は本線の人も見て避けてくれるから、あまり心配しなくていいんだよ」
最上「ふふふ……それは入る前に言ってほしかったよ……」
提督「まぁいいですやん、これでしばらく直進だし」
最上「それは、そうだけど」
最上(それにしても、行先は山じゃなかったんだ……)シュン
最上(……あれ?ボクはなんでガッカリしてるんだっけ……?)
……
…………
………………
提督「もがみん、知ってる?」
最上「その、もがみんって言うのやめない?」
提督「もがみん」
最上「はぁ……で、何?」ムスッ
提督「この車は高速道路で80キロ以下になると爆発するんだ」
最上「ひいっ!」ビクッ
提督「嘘だけどさ」
最上「――っ!」ポカポカ
提督「でも80キロぴったりで走ってると、少し後ろに気を付けたほうがいいかもねーいたいよ」
最上「……どういうこと?安全なスピードじゃないか」
提督「できれば左を走ってるときは、速度を見るより前方車にスピードを合わせた方がいいんだよ」
提督「遅いと鬱陶しいと思う人もいるからね」
最上「むぅ……難しいなー」
提督(だんだん安心して乗れるようになってきたなぁ)
提督「そうだ、向こう着いたら昼飯奢るよ」
最上「え、そんな、悪いよ!」オロオロ
提督「足になってもらってるんだから、ガソリンと高速代とこれくらいはね」
提督「なに食べたい?」
最上「むぅ、そういうことなら……」
最上(そうだ!ここはひとつ、女の子らしく!)グッ…
最上「お、お洒落なカフェ……とか……」カァー…
提督「あぁ!よく考えたらあそこド田舎なんだよなぁ~」
提督「定食屋か蕎麦屋しかないわ!すまん!」
最上「……おそばで」ガクッ
最上「えへへっ、ボクもだいぶん慣れてきたよ!」
提督「慢心ダメゼッタイ!」
提督「こういう事言い出した時が、一番事故りやすいんだからなー」
最上「はいはい、気をつけますよーだっ」
提督「こやつ……」グヌヌ
ブォンブォンブォオオオン!
提督「ん?」
最上「あっ……」
ブォォォォォォォォォォォォォォォォン!
提督(後ろ、滅茶苦茶煽ってきてんな……)
またすこしはなれます
すみません
提督(左車線だし、別にこっちは変な速度で走ってないんだぞ……)
提督(まったく、どういうつ……げっ!)
ブォォォォォォォォォッォォォォォォォォオオオオオオ!
最上「うわぁ!」ビクッ
提督「わっ、この車の横ギリギリを抜けて行きやがった!」
ブォォォォォォォォォォォォォ
ウゥゥゥゥゥゥゥーーーー!
提督「ほれ言わんこっちゃない、覆面お巡りさんがいたよ」
提督「もがみん、もう大丈夫だ……」チラッ
最上「…………」ブルブル
提督「最上?」
……
…………
………………
ピッ
ガコン
提督「ふぅ……」ヒョイ
提督(ちょうどいい所にパーキングエリアがあってよかった……)
提督「……」チラッ
最上「……」ガクガク
提督「ほい、お待たせ!」
提督「冷たいコーヒーかアイスコーヒー、どっちがいい?」
最上「ふふ……どっちもアイスじゃないか」
最上「でも、ありがとう」スッ…
最上「……」シュン
提督「……」
最上「提督、ゴメン……」
提督「……怖いもんは怖い」
提督「こればっかりはどうしようもない」クスッ
最上「え……」
提督「前世で二回……しかももっと大きな船で衝突事故に遭ってるんだ」
提督「普通ならトラウマもんだし、それであんなことされたら……」
提督「俺なら漏らす自信あるな、うんうんっ」コクコク
最上「……」フルフル
提督「……最上、よくがんばったね」ナデナデ
最上「て、提……督……」
最上「あり……がとう」ニコ
……
…………
………………
提督「よぉし、休憩もしっかり取ったことだし……」
提督「こっからはパp……じゃなかった、俺が運転しちゃうぞー!」
最上「ごめんね、提督……」
提督「なぁに偉そうに言ってる俺も、たまには運転しないとね」
最上「……そう、だね」
最上(……ズルい人だ)
最上(こういう時はなんで……なんでこんなに優しいの……)
提督「お、あの前から斜めに突っ込んでるのがウチの車かー(棒)」
提督「すごい角度だー(棒)」ニタニタ
最上「むぅ、仕方ないじゃないか……」
最上(……違った)
最上(いつも……そういう人だったんだ)クスッ
……
…………
………………
提督「ごめんね、付き合わせちゃって」
最上「ううん、いいんだよ」
最上「提督の私用って、御両親のお墓詣りだったんだね」
提督「うん、ちょうどお彼岸だったし」
提督「今は戦争中だけど……こんな時だからこそ」
提督「親父とお袋に顔出しておかないと」
提督「戦争で万が一この中に入ることがあったら、二人に何を言われるか分からんしね」クスッ
最上「……そか」
最上(提督のお父さんとお母さん)
最上(提督はボクたちが、絶対に守ります)
最上(……ですから安心してお眠りください……)ス…
提督「ん、これであとは帰るだけなんだよなー」
最上「そうだね……」シュン
提督「……」
提督「ちょっと寄り道するか」
最上「え、寄り道?」
提督「今もあるんかな、あそこー?」
最上「あそこ?へ?」
提督「山道だから、怖かったら言ってね」
提督「それーい」ブォォン
……
…………
………………
最上「わぁ~!」
提督「どうだ、なかなかの所だろう」エッヘン
最上「うん!すごいよ!」
二人が辿り着いた場所は、かつてバブル全盛の頃にバカンス地として栄えた、断崖絶壁の高台。
今にもちぎれそうなロープ張りの柵の向こうには、陽の光がきらきらと光る大海が広がっていた。
晴れ渡る空の下、お昼下がり。
最上の輝く目は、揺らめくみなもと打ち寄せる飛沫を映し出していたのか、それとも……
提督「俺たちはいつも、海の見えるところにいるけど……」
提督「見方が変われば、こんなにも違って見えるもんなんだな」
最上「……うん、ボクもそう思うよ」
最上「車が無かったら……ここには来られなかったんだね」
最上「提督、ボクすごく嬉しいよ!」
最上「ふふっ、とても……綺麗だなぁ」
提督(元気、戻ってきたみたいだな)ホッ
ゴロロロ…
提督「あれっ」
最上「なんだか、雲がかかってきたね……」
ピトッ ピトピトッ
ザァァァァァァァァァァァ……ッ
最上「うわぁ~!夕立だ~!」
提督「チクショー、今の今まで晴れてたのにぃ!」グスッ
提督「車まで走れ~っ!」ダッ
バタンッ
最上「はぁ……はぁ……」
提督「ハァ……ハァ……」
最上「うわ~、もう服がビショビショだよ~!」
提督「ほんとだ、俺もだ……」ガクッ
最上「……」ジーッ
最上「……ぷっ」
最上「ぷはははっ!」ケラケラ
提督「な、なに?」
最上「提督、おでこに前髪が張り付いちゃってるよ!」ケラケラ
提督「はわわ~」オロオロ
最上「ちょっとまって、ボクが直したげるから」グイ
提督「そんな、自分で……」
ス…
最上「……提督」
提督「え、もが、ちょ……」
提督(顔、近……っ)
最上「……ていとく」カァー…
提督「え、えぇっ……」ドキドキ
最上「……ん……」ドキドキ
提督「もが……み……」ドキドキ
ププーーーーーーーーッ
「「!!」」ビクッ
提督「あぁ、最上!肘、ひじっ!」
提督「クラクションのとこに当たってる!」
最上「え……あぁっ!」サッ
最上「と、止まったぁ……」ヘナッ
提督「あははは……」
提督「なんか、最上らしいや」クスッ
最上「むぅー、なんか腹が立つなぁ~」
提督「……」
最上「……」
最上「……じゃ、帰ろっか」フフッ
提督「あぁ、そうだな」
最上「提督、帰りはまたボクが運転するよ」
提督「えぇっ、もう大丈夫なの?」
最上「うん!勿論さ!」ニコッ
最上「なんたって今のボクは、とても気分がいいからね!」フフン
提督「……そか」クスッ
最上「あ、ちょうど雨も上がってきたし……」
最上「それじゃ、行くよー!」
提督「安全運転でお願いね、ほんと」
最上「わかってるよー!」ブォォン
提督「いや、ちょっと速……!」
提督「うわぁぁぁぁぁん」
ブォォォォォン…
山に虹のかかった雨上りの午後。
二人を乗せた車は、黒ずんだアスファルトに二筋の水のわだちを残していった
そのとき生まれた最上の新たな感情は、このわだちのように……
長らく平行線を辿っていったのだった。
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24歳、ATです(限定)
ここまで読んでくださった方、楽しく書かせていただきありがとうございました。
学生です(迫真)
バァン!(誤射)
神州丸「おいゴルァ!」(大破着底)
佐倉丸「おいゴルァ!」(大破着底)
龍野丸「おいゴルァ!」(着底)
蓬莱丸「おいゴルァ!」(大破着底)
二号掃海艇「おいゴルァ!」(轟沈)
最上「やべぇよ…やべぇよ…」
今村中将「(誤射も)ま、多少はね?」
みたいな話かと思った
このSSまとめへのコメント
乙です。サターンのガングリフォンとは良い趣味してるなぁ~
?「運転で慢心しては駄目。安全確認を大事にしないと…って、頭の中で何かが…」