【ゆるゆり】キズとズキズキとスキ (39)
――家庭科室――
あかり「えへへ、4人で調理実習楽しみだよぉ」
ちなつ「肉じゃがだって、レシピもあるから簡単にできるね」
櫻子「向日葵頑張ってね!
私食べる係やるから!」
向日葵「何言ってるんですの、授業なんだから櫻子も何かやりなさい」
櫻子「えーーーっ!
なんだよけちっぱい!」
向日葵「具材と一緒に煮込みますわよ?」
あかり「あ、あはは…
あかり、野菜切ろうかな」
ちなつ「あかりちゃん包丁使える?」
あかり「うん!
お姉ちゃんとたまにお料理するから、ちょっと自信あるよぉ」
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向日葵「頼もしいですわ、なら私は煮込みと味付け担当で」
ちなつ「じゃあ私は野菜の皮を剥いたり具材の下準備かな
出来たらあかりちゃんに渡すからね」
あかり「うん!」
櫻子「私いらないじゃん!?」
向日葵「櫻子は…そうですわね…
皿と調理道具を洗う係りをお願いしますわ」
櫻子「じ、地味…」
ちなつ「早速始めようか
えっと、ジャガイモの皮を皮剥き器で…」シャッ、シャッ
ちなつ「はいあかりちゃん、ジャガイモ剥けたよ」トサッ
あかり「はぁい」
ちなつ「包丁気を付けてね?」
あかり「もうちなつちゃん、あかり包丁には自信あるってば!」トントン
櫻子「へぇー、あかりちゃん凄い!」
あかり「えへへ」トントン
ちなつ「あかりちゃん、包丁の握りが甘くない?
もっとしっかり持たないと…」
あかり「でもこのジャガイモ小さいから、
こうやって掴まないと…」トントン
ツルッ
ガチャン!
あかり「あわっ!包丁落としちゃった!」
ちなつ「ほらもー、大丈夫?」
あかり「えへへ、早く包丁拾って洗わないと…
よいしょ」ヒョイ
あかり「痛っ!!!」ビクッ
ちなつ「!?」
櫻子「!?」
向日葵「!?」
櫻子「わあああ!あかりちゃん大丈夫!!!?」
向日葵「赤座さん!指から血が!」
あかり「はわわわわ!?
ごっごめんねちなつちゃん!
あかり、ちなつちゃんの言うとおりに包丁使えば良かったよぉ!」ドクドク
ちなつ「あかりちゃん、私に謝る前に自分の心配しなさいよ!」
あかり「ひゃああ!そうだった!
血!指から血が!」アタフタ
ちなつ「慌てないであかりちゃん
こんな傷」
パクッ
あかり「!」
ちなつ「舐めちゃえば大丈夫らよ」チュウウ
あかり「…っ、ちなつちゃん」
ちなつ「んっ、まら痛い?」チュウウ
あかり「えっ…?
う、ううん…」
ちなつ「向日葵ひゃん、絆創膏おねひゃい
教室の端に救急箱あったでひょ」チュウウ
向日葵「………
…はっ!
はい!」タタタッ
ちなつ「櫻子ひゃんはそこのアルコール消毒液取って」チュウウ
櫻子「……」ボーッ
ちなつ「櫻子ひゃん?」
櫻子「はいっ!?
あっ、アルコール消毒液ねっ!」
向日葵「絆創膏持ってキマシタワ」
ちなつ「んっ」チュパッ
櫻子「はい消毒液」
ちなつ「ありがとう」シュッシュッ
あかり「っ!」ビクッ
ちなつ「しみる?」
あかり「ちょっと…」
ちなつ「見た目より傷は浅いね、もう血はほとんど止まったよ」絆創膏ペタリ
あかり「…」ボーッ
ちなつ「さ、料理の続きしないと
櫻子ちゃん下準備担当してもらっていい?
私が野菜切るから」
櫻子「へっ?わ、わかりました」
ちなつ「なんで敬語なの?」クスッ
あかり「ちなつちゃん!
あ…ありがとう!」
ちなつ「ふふ、いいよこのくらい」
あかり「今のちなつちゃん…
凄くかっこよかったよ!」
ちなつ「そう?」
向日葵「ええ…私もそう思いましたわ
不測の事態にこんなにテキパキと動けるなんて…
私も櫻子もアタフタしてただけですもの」
ちなつ「ちょっとやめてよー
恥ずかしいよ…」
…………
櫻子「肉じゃがかんせーっ!」
向日葵「早速いただきましょう」
あかり「美味しそう!」
ちなつ「あかりちゃん
ちょっと待って」
あかり「え?」
ちなつ「はい、あ~ん」
あかり「ええっ!?」
櫻子「!?」
向日葵「!?」
ちなつ「だってあかりちゃん、右手の人差し指ケガしてるじゃない
箸持てないでしょ?」
あかり「いやいやいや!
このくらいの傷…」
ちなつ「ダメ!また傷が開いたらどうするの!」
あかり「うう…
…うう」
ちなつ「はい、あ~ん」
あかり「…あ~ん」パクリ
向日葵(なんですのこの甘ったるい空気は…)
櫻子「…いいな…」ジーッ
向日葵「櫻子?
箸が止まってますわよ?」
櫻子「向日葵~
私にもアレやって~」
向日葵「は、はぁ?///」
櫻子「いいでしょ!私もあかりちゃんみたいにあ~んされたい!」
向日葵「あなたどこもケガしてないでしょう…」
櫻子「いいから!ホラ!
食べさせてよ!」
向日葵「わがまま言わないで自分の箸を動かしなさい!」
櫻子「えっと…
本当にダメ…なのかな…」シュン
向日葵「っ!///
し、仕方ありませんわね」
櫻子「やった!」
あかり「…」モグモグ
ちなつ「美味しい?」
あかり「…うん!
とっても美味しいよぉ!」モグモグ
ちなつ「ふふ、はい、あ~ん」
あかり「あ~ん」
放課後
――部室――
あかり「でねっ!でねっ!
その後なにも出来なかったあかりが皿洗いやろうとしたらね!
『指ケガしてるあかりちゃんに皿洗いなんてさせられないよ』ってちなつちゃんがねっ!」
京子「お、おう」
あかり「調理実習の後の授業もちなつちゃんが『あかりちゃんの分もノートとってあげる』って!」
結衣「う、うん」
あかり「もう京子ちゃんも結衣ちゃんも聞いてるの?
今日のちなつちゃんは本当にかっこよかったんだから!」
ちなつ「…あの
あかりちゃん…流石にそこまで言われると恥ずかしいよ…///」カァァ
結衣「あかり、ケガは大丈夫なの?」
あかり「う~ん、ちょっとヒリヒリするけど、血は止まってるし大丈夫だよ」
結衣「それでも良かったよ
きっと対処が早かったからだね
ちなつちゃん、私からもありがとう」
ちなつ「ッキャーーー!///
そそそんなこと!!!」
あかり「えへへ」
京子「あかりは危なっかしいからな~
ちなつちゃんが側にいてくれて私たちも安心できるよ!」
ちなつ「京子先輩まで…
私は当然のことをしたまでですから」
結衣「いやいや、ちなつちゃんは凄いよ」ナデナデ
ちなつ「にゃ~ん結衣先輩ぃ~///」エヘエヘ
京子「さぁーて、ごらく部の活動でもするか
今日は家からコレ持ってきたんだ~」ゴソゴソ
結衣「お前また学校に遊び道具を…」
あかり「わぁい
何かな何かな~」
京子「じゃじゃーん!
トランプやろうぜ!」サッ
結衣「い、意外と無難だな…
まぁいいけど…」
あかり「あかり、ババ抜きがやりたいなぁ」
京子「ええ?だってあかりババ抜き超弱いじゃんか」ケラケラ
あかり「むぅ
リベンジだよ!リベンジ」
京子「はいはい
じゃあ準備するね」
結衣「手加減してやれよ」
ちなつ「ダメですよババ抜きなんて」
京子「えっ?」ピタッ
あかり「?」
結衣「…ちなつちゃん?」
ちなつ「だってトランプなんて
あかりちゃんの人差し指の傷に触れるじゃないですか」
京子「……あっ」
結衣「…ああ…」
ちなつ「それじゃあ相手のカード引いたり、もしくは持ってるだけで痛いと思います…
…
…?」
京子「…」
結衣「…」
ちなつ「…えっ?
な、なんですかこの空気…」
結衣「い、いや凄いねちなつちゃん…
言われるまでわからなかったよ…」
京子「うん、ゴメンねあかり、今日は違う遊びをしようか…」
あかり「………!!!」パァァァ
ちなつ「!?」ギョッ
京子(うおっ!?
なんて眩しい笑顔だ…!)
あかり「ちなつちゃん凄い!
あかり、自分のことなのに全然気づかなかったよぉ!」キラキラキラ
ちなつ「そ…そう?」
あかり「えへへ…嬉しいなぁ…
ちなつちゃん、あかりのことちゃんと見ていてくれてるんだね…」
ちなつ「ええええっ!!?
別に大したことは言ってないんだけど…」
あかり「ちなつちゃんありがとう!」ギュウウッ
ちなつ「ちょおお!?」
京子「…」ニコニコ
結衣「ふふ…」ニコ
ちなつ「な…なんですかお2人共…
なんですかその表情…?
やめて下さいよ…」
京子「もう~
あつあつ…!」ニコ
結衣「そうだな…!」ニコ
ちなつ「ええっ…!?
やめて下さいよっ…!
誤解ですよ…誤解っ…!
その…何か…
微笑ましいモノを見るような目……!
やめて下さいっ…!」
あかり「…♪」スリスリスリ
ちなつ「…」ゲッソリ
結衣「お疲れ様、ちなつちゃん
結局あの後ずっとあかりに懐かれてたね」
ちなつ「はい…嫌ではないんですが
私は本当に普段通りに接したつもりで…」
結衣「わかってたよ
ちなつちゃんは細かい所まで目が届くいい子だね
ただちょっとあかりの心に響き過ぎただけなんだ
明日になればいつものあかりに戻るから」ナデナデ
ちなつ「…ですね
すいません、帰りに呼び止めちゃって」
結衣「いいよ」
――赤座家――
あかり「ただいまー!」
あかね「お帰りなさい
どうしたの?なんだか機嫌が良いみたいね」
あかり「あ!お姉ちゃん!
聞いて聞いて!今日ちなつちゃんがね……!」
――風呂場――
ザバーッ
あかり「ふぅ
お姉ちゃんにもちなつちゃんのこといっぱい話しちゃった…」
ワシャワシャ
あかり「痛っ!」ズキッ
あかり「…っつ…
ケガにシャンプーがしみるよぉ…」
あかり「…」ズキズキ
あかり「…えへへ」
――あかりの部屋――
あかり「むにゃ…
くー…
くー…」
モソモソ
あかり「ふぅん…」
モソモソ
ズキッ
あかり「っ!
あっ
絆創膏…剥がれてた…
ちなつちゃんがつけてくれた絆創膏…」
あかり「…えへへ
痛いのは嫌だけど、その度にちなつちゃんのかっこいい顔が浮かぶから
なんか…いいかも…」ズキズキ
翌日
――教室――
櫻子「フッフフ~ン」ソワソワ
向日葵「櫻子?何かご機嫌ですわね」
櫻子「うん!あかりちゃん早くこないかなー!」
向日葵「赤座さん?」
櫻子「この櫻子様は昨日のことを忘れていないのだよ!
これを見よ!」バッ
向日葵「これは…絆創膏ですわね
しかも一箱丸ごと…」
櫻子「フフン!いつもお世話になってるあかりちゃんに恩返しをする櫻子様なのであった!」
向日葵「…はぁ」
櫻子「む、なんだよ向日葵
どーせ向日葵はあかりちゃんの傷のことは忘れてたんだろ?
このはくじょーもの!!!」
向日葵「いえ…幼なじみだと、考えも似るのかと、呆れてましたわ」
櫻子「へ?」
向日葵「…私も…」サッ
櫻子「…絆創膏?」
向日葵「ええ」
櫻子「…
ぶふっ」
向日葵「ふふっ」
櫻子「なんだよ向日葵もかー
あかりちゃんは愛されてるなー!」
向日葵「ですわね」
櫻子「…でもさ
ちなつちゃんにはかなわないよね」
向日葵「…ええ
吉川さんは、いつも赤座さんを見守って…
それでいて自覚がないようで…」
櫻子「見ていてハラハラというかモヤモヤするよね!」
向日葵「ですわね!
ここは私たちが影から支えていかなければ!」
ちなつ「おはよう
なにが?」
櫻子「」ワタワタワタ
向日葵「」アワアワアワ
ちなつ「…?」
櫻子「おおおはようちなつちゃん!」
向日葵「おおおはようございます吉川さん!」
ちなつ「?
変な2人」
櫻子「あれ?あかりちゃんは?
一緒じゃないの?」
ちなつ「あかりちゃんはちょっと家の用事を済ませて来るんだって
遅刻はしないってさ」
櫻子「ふ、ふ~ん」
向日葵「そう…」
ちなつ「あのさ2人共、後ろに何持ってるの?」
櫻子「ん?んふふふ~」
向日葵「なんでもないですわ~」
ちなつ「変な2人」
ガラッ
あかり「みんなおっはよー!」
櫻子「あかりちゃん!」
向日葵「赤座さん、おはようございます」
ちなつ「おはよう」
あかり「えへへぇ
ちなつちゃんおはよう!」
ちなつ「…うん
ん?
あかりちゃん、その絆創膏…」
あかり「あ、これ?」
向日葵「もしかして昨日のままですの?
こまめに取り替えないと、逆に不衛生ですわよ」
あかり「う、うん
でもなんか、もったいなくて…」
櫻子「あ!
あかりちゃん!絆創膏なら…」
向日葵「むっ、赤座さん、私も赤座さんに…」
ちなつ「……はぁ
はいあかりちゃん」
あかり「え?」
ちなつ「絆創膏、家から持ってきたんだけど…」
あかり「わ…わぁ!
花柄の絆創膏!かわいい…」
ちなつ「傷はどうなの?」
あかり「うん、すっかり塞がったよ
ちょっと薄くかさぶたがあるだけかな」
ちなつ「ふぅん…じゃあこの絆創膏いらないね」
あかり「えっ!?いる!
いるいる欲しい!」
ちなつ「そ、そう…」
あかり「えへへ、かわいい絆創膏♪
ちなつちゃんありがとう!
あかり、大切に使うね!」ギュウウッ
ちなつ(あれ?昨日と変わってない…!?)
あかり「あ、えと、櫻子ちゃんと向日葵ちゃん…
さっき何か言いかけてなかった?
それと後ろに何持ってるの?」
櫻子「ん?ん~」チラッ
向日葵「ん~」チラッ
櫻子「いや、なんでもないよ!」
向日葵「ええ、なんでもないですわ
それにしても吉川さん、絆創膏を持ってくるとは、本当に赤座さんのことを思ってるんですのね」
あかり「えええっ!!
そうなのちなつちゃん!?
あかり嬉しい!!!」ギュウウッ
ちなつ「はは、はは…」
(普通に絆創膏持って来ただけでこれ…?)
放課後
――部室――
ちなつ「遅くなりました~」ガラッ
京子「あぁんちなちゅ!寂しかったよ~!!」ガバッ
あかり「京子ちゃんダメ!」サッ
京子「えっ!?」
あかり「ちなつちゃんに抱きついていいのはあかりだけだよ!」ギュッ
ちなつ「ちょっ…!」
あかり「♪」ギューッ
ちなつ「…」グッタリ
結衣「…」ポカーン
京子「…
結衣ぃ…」
結衣「ん?」
京子「あかりにちなつちゃん盗られた…」
結衣「元々お前のじゃないだろ」
結衣「あの、あかり」
あかり「なぁに結衣ちゃん?」
結衣「いや、その、ずいぶんとちなつちゃんと仲良くなったねって…はは…」
あかり「うんっ!
ちなつちゃんは何時もあかりのことを思ってくれてるんだよ!
ちなつちゃんはあかりのヒーローなんだぁ」
ちなつ「えっ、そうだけど、ちょっと違うと言うか…
別に私は普段通りにあかりちゃんに…」
あかり「ちなつちゃんあかりのこと好きじゃないの…?」ウルッ
ちなつ「すっ、好きだけど、それはともだ…」
あかり「本当!?
あかりもちなつちゃんだぁいすき!」ギュウウッ
ちなつ「ぐぇぇ…」
京子「ナニコレ」
翌朝
あかり「ちなつちゃんおはよー!」ダキシメ
ちなつ「ひぃ!?」
あかり「昨日は一晩中ちなつちゃんのことばっかり考えてたよぉ!
だからちょっと寝不足気味なんだぁ」
ちなつ「そ、そう」ゾッ
あかり「でも大丈夫だよね!
もしあかりが授業中寝ちゃっても、ちなつちゃんが助けてくれるもんね!」
ちなつ「ゆ、結衣先輩京子先輩助けてぇぇ!」
結衣「…」
京子「…頑張れちなつちゃん」
完
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